無事風間ファミリーの一員となった衛宮士郎。彼らの想いが詰まった秘密基地で初めての金曜集会―――
「ってことで~土産だ野郎ども~!たんと食いやがれ!」
ガサリ!とテーブルに置かれたビニール袋に入っているのは・・・なんと寿司のパッケージが!
「って、あれ?」
あまりものを貰ってくるとは聞いていたがまさか寿司とは!と驚きキャップが中から取り出したそれを見ると・・・
「だーはっはっは!玉子ばっかじゃねぇか!」
「いつもそうだけど偏るねぇ・・・」
黄色だ。大きいもの一面ほどではないくらい・・・だいたい中くらいの大きさの入れ物に詰められていたのは鮮やかな色をした玉子・・・のみ。
「しょうがねーだろう?あまりもんなんだから偏るんだよ、でも、味は一品だぜ!」
「偏るにしても偏りすぎだろう・・・まぁキャップの言う通り味はいいんだけど」
「まぐまぐ・・・おいしー!」
玉子一色の寿司に大笑いするガクト。そしていつものことだと苦笑するモロ。そして嘆息しながらも早速手をのばす大和。一子は・・・まるで待てを許された犬のようにガツガツつ次々に手を伸ばす。
「ほら士郎も食えよ。早く食べないとワン子とモモ先輩に食い尽くされるぞ」
「ああ。いただくよ」
「なんていうこと言うんだ!・・・でも、今回私は別の獲物を狙っているのだ!」
玉子しかないとはいえ、元となる寿司屋はそれなりの場所であるのか、出汁のきいた玉子が酢飯によく合う。
(でも、まだまだだな。出汁の配分を変えてもう少しシャリを―――)
と、味わいながらも辛口評価をする士郎。流石数多のシェフとメル友(元の世界)になる料理好き。和食・洋食・中華と幅広くマスターした彼の目は厳しい。(ちなみに中華は作れるが滅多に作らない。特に麻婆は。)
「さぁ!この私のためにそのカワユイお弁当を差し出すのだ!」
「うひゃあ!?モモ先輩、やめ、ひゃー!」
「だからまゆっち!隣で暴れるなと・・・!うむぐ!?」
「クッキー!お茶!お茶!」
「しょうがないなー。ご飯はゆっくりたべるものだよ?」
弁当を差し出せといいながら由紀江の体を鼻息荒くまさぐる百代。そしてまたもそのとばっちりを受けて寿司を喉に詰まらせるクリス。ご奉仕ロボであるクッキーはやれやれと首を振りながら彼女に新しいお茶を注いで上げる。
(・・・どう考えても表情豊かすぎるんだよなぁ・・・)
遠坂の作る宝石ゴーレム(通称金食いゴーレム)よりも圧倒的知能であることは間違いないであろう。
「はい、士郎。新しいお茶だよ」
「ありがとう。・・・クッキーは賢いな」
「えへへそんなことないよ~・・・もっと褒めてもいいんだよ?」
ピコピコとしながらも催促する当たり意外と強かだ。
「こいつ、ロボットのくせにご褒美催促してやんの」
「なんだとー!やるっていうならやってやるぞ!」
ガションガションと変形してブオンとビームサーベル・・・らしきものを振りかざす。
「この私が相手をしてやろう!」
「ぬお!それはやめろ!あぶねぇ!?」
「ちょちょ、なんで僕の所に来るのさー!?」
ブンブンとビームサーベルもどきを振り回すクッキーにモロを盾にするガクト。
「ビームサーベル・・・なんだよなあれ?危ないだろ・・・」
「これはビームサーベルではない。対人型用の改造スタンガン・・・問題はない」
「・・・さいですか」
元の口調よりも流麗に喋る紫ロボットにもうツッコむ元気もなくなった士郎はそういうものだと納得することにした。
「おお、ここにあったか~まゆまゆも大人だなぁこんな所に隠すなんて・・・」
「はひゅ~・・・」
「あー・・・由紀江、大丈夫か?」
「大丈夫れす~・・・」
普通に隣にあったバスケットに入っていたのにあんなところやこんなところを探りまわされてふにゃふにゃと崩れ落ちる由紀江に手を貸す士郎。その手を取ってソファに座り直す。
「川神先輩。やりすぎですよ」
「ふっふっふ!まゆまゆがカワユイからいけないのだ。・・・ていうか士郎。私のことはモモ先輩と呼べと言っただろう」
「・・・おや?私の聞き間違いかな?私は権利を与えられたのであって、そう呼べとは一度も言われていないはずだが・・・いやすまない。もしそう言っていたのなら謝りますよ、百代先輩?」
「コイツ~・・・・!さっきはあんなに可愛げがあったのになんて口の悪い!」
「さて何時の事やら・・・私には皆目見当がつかないな」
そう言って腕を組み、馬鹿にしたように皮肉気に笑う士郎。それを百代は真に受けてまた闘気を滾らせる。
「士郎、そこまでにしとけよ。姉さんを煽ると・・・大変なことになるぞ」
「ほう・・・どう大変になるのか実に興味があるな。だがまぁ、我らが軍師がそういうのだ。今回はこの辺にしておくとしよう」
「・・・!!!」
やれやれとあからさまに肩を竦める士郎。それを見てついに言葉も発せず闘気と殺気をぶつける百代。しかし当の士郎は涼し気に気にした様子もない。
「ガクガクブルブル・・・」
「ほらワン子―大丈夫だからねーこっちおいでー」
「クゥ~ン・・・・」
百代の殺気に当てられてガクブルする一子を京がよしよしと撫でる。
「愛犬、っていうのには賛成できないけど、見事な連携じゃないか大和、京」
「そう!私たちは身も心も以心伝心!さぁ大和、士郎もこう言ってるし結婚届を「お友達で」むぅ・・・」
相変わらず隙あらば爆速で関係を作ろうとする京。そしてそれをすげなく断る大和。
(お似合いだと思うんだけどなぁ)
と自分のことは棚(大棚)に上げてそうごちる士郎。とはいえ、これだけのアプローチを断るのは彼なりになにか思う所があるのだろうと口には出さない士郎。
「なぁなぁ。なんで士郎はたまにそうやって喧嘩吹っ掛けるような喋り方するんだ?」
無邪気に聞くキャップ。
「それは自分も気になっていた。・・・初日のことは自分が悪かったが、正直、その喋り方は嫌いだ」
「そうだな・・・まぁ、これが俺にとって最適な戦闘技法だからだよ。大和なんかよくやってるだろ?相手を挑発・翻弄してできた隙をつく。俺はそんなに強くないからな。いろんな方法を試して・・・最終的にこれが最も効率がいい。それだけだよ」
そう言ってズズっとお茶を啜る士郎。対する百代はまだビリビリと殺気を向けているがやはり歯牙にもかけない。
「ようするに、大和にモモ先輩を足して二で割った感じなわけね。・・・あれ、俺様、今かっこいいこと言った?」
「今ので台無しだけどね・・・・」
「たして・・・にで・・・わる・・・?」
「足して二で割る。お互いの特徴を足して足りない所を補うの」
自信満々に言うガクトだが自らその成果を地に落としてしまう。一子は一子で頭の上にクエスチョンマークをぴょこぴょこと浮かべ、見かねた京が教える。
(なんかいいな、こういうの)
なんとなく・・・本当になんとなく、この空間が居心地良いなと感じる士郎。・・・まぁ、背後の武神なる女性を除いてだが。
「なるほどねー。やっぱりお前は面白い奴だよ!」
「むぅ・・・自分は納得がいかない。騎士道に反する」
賞賛するキャップと頭の固いクリス。相反する意見に一つ彼は懸念を覚えた。
(キャップは己の勘を頼りすぎる傾向があるな。クリスは・・・頭が固すぎる)
それを懸念して一つ彼はアドバイス・・・助言をすることにした。
「二人とも、少し軽率だぞ。キャップは勘に頼りすぎだ。君の幸運具合は正直驚きを隠せないが、それだけではいつか足元をすくわれる。そしてクリス。君は頭が固すぎる。もう少し柔軟に考えたまえ」
腕を組んで再び口調を変えて言う。
「そう!それ!ああもう自分に向けられるとイライラする!お前には騎士道精神というものがないのか!」
百代だけでなくクリスまで怒り出す始末。元から大和とも気が合わない彼女はなおさら怒りを露わにする。
(戦場では基本中の基本なのだがな・・・あの親バカの弊害か。よほど蝶よ花よと育てられたと見える)
彼女の父親は軍人だ。この程度のことは百も承知であるはずだが・・・どうにも彼女には愛だけ向けて世の中の厳しさというものを教えてこなかったのだろう。
そこで彼は一つ例を出した。それも彼女にとっては極上のモノを。
「戦場でその考えは通用しないぞクリス。それに騎士道というが、かの騎士王でさえ、戦場では己の武器を隠して戦い、陽動や戦略を駆使して数々の勝利を収めている」
「な、なに!?それは本当か!?」
騎士王。騎士の頂点とも言える名前が出てきて思わず狼狽えるクリス。
「事実だ。何なら図書室に行って見てみると良い。アーサー王・・・
「あの騎士王が・・・」
士郎の言葉にクリスは何時しか怒りを失い、ストンとソファに座り込んだ。それは背後で殺気を放っていた百代もだ。
「ねぇねぇ、なんでそのきしおう?様の剣は折れちゃったの?」
一子が不思議そうに聞く。
「・・・状況はわからない。その辺は書かれていないからな。本題だが・・・ある人物を背後から切りつけたらしい」
「ええ!?」
「そんな馬鹿な!?」
驚く一子とクリス。アーサー王の伝説は輝かしいものの印象が強い。だが、彼が、彼だけが知る記録ではそうなっていた。
「曰く、騎士道に反した行いをしたために、選定の剣は永遠に失われてしまったとされている。その後に湖の精霊から与えられたのが聖剣・エクスカリバーだ。こちらの方が知名度としては断トツだな」
ズズっともう一度お茶を啜る。そして、
「その後は最初に話した通りだ。故に忘れるな。間違うな。騎士道とは何なのか。君の持つそれは勇気なのか。それともただの蛮勇かをな」
彼はそう、締めくくった。
静かに夜の帳が落ちようとしている中、士郎は、少し風に当たってくると席を外していた。
「あいつ歴史に詳しいんだな」
士郎のいなくなった部屋でポツリと大和が言った。
「そうだね・・・。アーサー王伝説なんてなかなか見ないからね」
そういうモロはどこか楽し気だった。それはオタクと呼ばれる彼が、好きなゲームや漫画の題材として出てくるからかもしれない。
「・・・。」
しかし何やら京の様子がおかしかった。
「京、どうかしたのか?」
さっきまで怒り心頭だった百代が京に問う。
「士郎の言ってたことは正しいよ。私も本で読んだことがあるし・・・でも」
違和感。何か得たいの知れない違和感を彼女は感じていた。
「・・・なんだろう。なんだか
そう困ったように京が言った。
「実話って・・・アーサー王伝説って架空の話だよな・・・あれ?でも・・・」
京の言葉を聞いて大和も違和感を感じ取った。
「どうした弟」
頭の回る大和までが考え始めたのを見てさらに百代が問う。
――――『かの騎士王でさえ、戦場では己の武器を隠して戦い、陽動や戦略を駆使して数々の勝利を収めている』
――――『何なら図書室に行って見てみると良い。アーサー王・・・
そうだ。なにかおかしい。アーサー王伝説に登場する戦いで使われた剣は
だが――――
「・・・アルトリア・ペンドラゴン。これだ」
大和はそう確信をついた。
「・・・うん。そうだね。大和の言う通り」
京も納得がいったと頷いた。
「おいおい、二人で納得してねーで説明してくれよ」
「わかってる。まず、アーサー王が剣・・・武器を隠して戦ったという話は聞かない」
「なに!?では嘘だったのか!?」
ガタリと立ち上がるクリス。
「まぁ落ち着け。あながち間違いでもないんだ。アーサー王の振るった剣は眩い光を放っていたと書かれることが多い」
「眩い光・・・つまり光っていて見えなかったということか?」
「そう取れもする。だが重要なのはそこじゃない」
「じゃあなんなんだよーもったいぶるなよー!」
大和の隣に映ったキャップが大和をゆする。
「わかった、わかったから揺するな!・・・アーサー王の名前はアルトリア・ペンドラゴンじゃない・・・いや正確にはこの名前じゃダメなんだ」
揺さぶるキャップを押しのけて大和は言う。
「・・・アーサー王の名前はウーサー王とか色々ある。その中で士郎が言ったアルトリア・ペンドラゴンに最も近いのは
京が大和の回答を後押しするように付け足す。
「あるとりうす、ぺんどらごん?」
「名前が微妙に違いますね・・・」
一子と由紀江が首を傾げる。
「架空の人物なんだろう?なんでそれが駄目なんだ?弟」
「綴りだよ。アルトリウス。トリウスっていうのは男性形の名前だ」
手近な紙を手に取りボールペンでArtoriusと書く。
「でも士郎が言ったのは
そうして書かれた文字はArtoria。
「アーサー王の話はたくさんある。だけどアーサー王が
彼は違和感の正体にたどり着いた。
「つまり女王ってことか」
「そうなるね。でも確かにおかしいよ。こういう古い物語って・・・」
「モロの言う通りだ。アーサー王伝説がどれだけ古いかは調べてみないと分からないけど、こんな古い王っていうくくりの中で実権を握っていたのは日本でいう卑弥呼だけだ。なぜならそれは―――」
―――どんな歴史でも王は、
それは歴史の勉強をそれなりに受けていればわかることだった。
――――かの有名な戦国の大名・織田信長、豊臣秀吉、徳川家康。いずれも男性。それどころか日本だけでなく世界を見ても古い時代はほぼ男尊女卑。
「だから確定だ。士郎が嘘をついていなければ、士郎は―――アーサー王が実は
その結論に一同は黙った。
「嘘・・・ついてるように見えたか?」
ガクトが問う。
「わからない。でも士郎は嘘をつく奴じゃない。それにあれだけスラスラアーサー王の話が出来てわざわざ名前だけ女性にする意味がない」
「私も大和に賛成。士郎はむしろ隠し損ねたんだと思う」
「それはつまり―――」
――――自分たちには言えない秘密を持ってる。
それが一体何なのか聞いてよいものなのか。それとも駄目なのか。判断のつかないファミリーは皆口を閉ざした。が、
「ま、いんじゃねーの?人間誰しも知られたくねぇ秘密の一つや二つあるだろ」
「それもそうだな。士郎の奴がなに隠してんのか知らねえけど、もうこうしてファミリーに受け入れたんだしよ」
キャップとガクトは気にすることはない。そう判断した。
「・・・そうですね。あまり聞かれたくないことを聞くのも・・・・」
「僕もまゆっちと同意見かなぁ・・・士郎は嘘をつくような人じゃないと思うよ」
由紀江も遠慮がちに、モロも彼は嘘つきではないと信じて。
「自分は・・・少し考えてみることにする。その・・・士郎の言っていた騎士道が自分の信じていた騎士道とはあまりに違いすぎて・・・」
ある意味自分の信念を揺るがされたクリスは戸惑い気味に言った。
大和と京も特に問題なし。一子は元から疑っていないので問題なしとしたが・・・
「・・・。」
「姉さん?」
一人だけ。そわそわと普段とは違う様子の人物が居た。百代である。
彼女は嘘を嫌い、嘘をつかない。自分に正直な女性。そんな彼女が今の話を聞いて、いても立ってもいられないとばかりに、
「・・・ちょっと行ってくる」
頭をガシガシと掻いて飛び出していった。
「モモ先輩どうしたんだろう?」
「わかんない・・・でも、初めて士郎と摸擬戦してからお姉さますっごく士郎のこと気になってるみたい」
と一子が明かした。
「それは・・・士郎が強いからじゃないのか?」
と大和がいう。実を言うと彼は、士郎が現れてからあまり自分に絡んでこない彼女のことを何処か寂しく、そして切なく感じていた。
そして大和は気づいてしまった。
(あれ・・・俺もしかして・・・)
―――姉さんのこと好きだったのか。
長い付き合いになる彼女をいつの間にか親愛から恋愛対象になっていたことに気づいた大和。だからか。士郎があの姉と対等の立場に居て苛立っていたのは。今こうして自分ではなく彼に心惹かれているのであろう彼女に切なさを覚えるのは。
(~~~~馬鹿だなぁ)
チャンスはあった。それこそいくらでも。きちんと彼女を見て、自分の気持ちに目を向ければ。
「どうしたの?大和ー」
「あー・・・なんでもない!」
気づけば酷いほど後悔の念が渦巻く。だが、
(・・・うん。士郎なら)
あいつならいい。そう思えた。彼なら、自分では満足させられなかった彼女を満足させられる。
確証はないが、直江大和はそう思ったのだった――――
はい。ごめんなさい。詰め切れなかった・・・話は進みませんでしたがいかがだったでしょうか。きちんと風間ファミリーできていたでしょうか?
今回士郎は助言は助言でも墓穴を掘りました。一応伏線のつもりですが・・・すいません頑張ります。
アーサー王の件はめっちゃ調べながら書きました。そしてfateプレイヤーの皆さん、カルデアのマスターの皆さんが一度は体験したであろうこのサーヴァントは誰?&何クラス?というあの推測するぜーみたいな感じを風間ファミリーでやってみました。
そして本来の主人公、直江君家の大和君、あえなくモモ先輩ルートから脱落の巻。これは前々から考えていて、知らないうちにモモ先輩ルートじゃなくなるんじゃなくて自覚して落ちてもらいました。その方が後々にも彼を光らせられるかなと思っています。
次はすいません幕間です。話がすすまねーじゃねぇか!と思われる方申し訳ありません。でも私には必要なことなので・・・見当はつくかと思いますがここでは語りません。
日常パートって難しいですね・・・というかこのキャラ数を同時展開する原作者のタカヒロさん本当に尊敬します・・・
まだまだこれからの私の小説ですが少しでも楽しんでいただけたら幸いです。どうぞよろしくお願いします!