この小説は私の挑戦です。文章がどうのとか文学がどうのとかではなく、自分が思い描いたモノを現実にできるのか?というなんとも愚かな挑戦です。書くだけならばPCメモ機能でも使って好きに書けばいいですが、それではただの私一人の妄想。皆様に、人様の前にさらけ出し、そこにあると他者に認識されて初めて現実のモノとなるのだと考えています。
前置きが長くなりましたがこれからもよろしくお願いします!
今回はあまり人数は出てきません。ですが、彼の一日と彼を想う人の場面が書けたらなと思っています。
『ダメ。君今日から一週間学校休みなさい』
鳥がピヨピョと鳴き、もうすぐ夏が来る頃。日中は夏の到来を肌で感じることが多くなったが、早朝はまだ肌寒い。だが風は適度に流れており勤勉なものには心地よい朝だ。なのだが。
『・・・なぜです?』
波乱の金曜集会が明け、土日を挟んで週初めの月曜日。今日も今日とて学校に登校しようとした士郎は、校門前で待ち構えていた川神鉄心に登校を禁止された。
『色々と言いたいことはあるのじゃが・・・まず何よりその右腕。モモの―――
とあの夜はとても柔和な微笑みを浮かべていた鉄心は言った。
『勉学に支障はありませんが?』
と、もっともそうな返事を返す。だが、
『ばっかもん!!あれでも今代の武神、それもあの一夜で飛躍的に精神を成長させたモモの一撃が擦り傷切り傷程度で済むわけなかろうッ!2-Sのマルギッテからも報告が上がっておる。言い逃れは許さんぞい』
ギラリと目を光らせた鉄心は怒声と共に。士郎に言い聞かせた。
(またマルギッテか・・・やれやれ、あの夜といいこの告げ口といい。彼女は一体何がしたいんだ・・・)
彼女の精いっぱいの心配りに気づかない士郎。彼は自分が嫌われているのでは?と思うのだが、どうにも自分を心配する遠坂の姿とマルギッテが被って、憎めないし、嫌いにもなれなかった。
『それにじゃ。君は普段から働きすぎ。君の献身は非常にありがたいがそれ故に学園内に心配の声と、その献身に甘える者が増えておる。これがどういう意味か、君ならわかるじゃろう?』
『・・・。』
それは、今も昔も、そして
だが、衛宮士郎はそれでもいいと思っている。自分の理想を果たせるのなら、都合よく使い潰されてもかまわない。そう―――
『これから君の献身に対する報酬と、君に甘え、堕落し、腐れている者の対処を行う。その予定期間は一週間。もちろんその程度で全て駆逐することはかなわぬであろうが、それを言ってはキリがないからの。故に君にはこの期間学園に入ることも関わることも禁ずる』
そう思っていたのだが、それはこの学園では許さないと、学園長は言った。
『ではどうしろと?この一週間自堕落に、じっとしてなにもするなと言われるのですか?』
納得のいかない士郎は半ば喧嘩腰に言う。だがそれはばっさりと切り捨てられた。
『知るかそんなモン。自宅で平穏に過ごすもよし、勉学に支障はないんじゃろ?ならば自習するのもええ。腕のことがあるから動くもの全般は無いにしても、考えればいくらでも出てくるじゃろうが』
と至極真面目に言い切られた。
『・・・くっ』
これは動くまい。自分がこの学園生である以上学園長の方針には従わねば筋が通らない。
(・・・仕方ない)
そう諦めて彼は渋々納得することにした。
『・・・わかりました。一週間の謹慎、承知しました』
『だから謹慎じゃなくて休暇じゃと言うとるのに・・・・君は本当に意固地じゃのう・・・』
はぁ・・・・と深くため息をつく鉄心。あの自分でもどうしようもなかった孫を動かしてくれたことには多大な感謝をしている鉄心だが、その変えてくれた本人がまた問題児とは頭の痛くなることだ。
『・・・一つ、どうしてもというなら提案したいことがある。・・・ルー』
『・・・はい。総ダイ』
呼ばれて出てきたのは体育教師のルー・イーだった。
『実は・・・ワタシから君に相談がアルよ』
『先生から相談?一体なんでしょう?』
相談と聞いて素早く反応する士郎。もう藁にも縋るような姿である。
『教師としてではない。ルーは川神院・師範代。その中で孫の一子の面倒をみておる』
『ボクが主にカズコの鍛錬指導をシテいるんだけど・・・』
師範代。そういえば調べた中であったなと思い出す士郎。
武の総本山とも言われる川神院は、その頂点たる総代、主にその代の武神が勤め、その下に幾人かの師範代が存在し、そこからさらに枝分かれして訓練生が存在する。
その師範代が自分に一体何用か?随分と言いにくそうにしているがなにか深刻なのは間違いない。
『・・・やはりお主からは言えぬか。もうよい。実はの――――』
そうして語られたのはルー師範代が一般人から上り詰めたこと。一子は百代に憧れて師範代の座を目指していること。同じ、武家ではない所から上り詰めたということでルーが面倒を見ていること。そして―――
――――一子では、師範代にはなれないだろう、ということ。
『酷な話じゃがの。わしらの元では一子が夢を叶えることは不可能じゃ。・・・だから師匠たるルーは悔しくて仕方ないんじゃよ』
『そ、ソウ代!そこまで言わなくてもイイじゃないですか!』
心境まで暴露されて狼狽えるルー。
(・・・なるほど。だからあんなに鍛錬に必死なのか)
日常の一部一部で常に鍛錬する姿を見ていた士郎はようやっと納得がいった。どこか鬼気迫るそれは、幼き頃の自分と似ている。そして届きもしない夢を―――
(・・・いや、違う)
と一瞬己と重ねすぎたことを自覚し、反省する。一子の夢は自分のような夢物語ではない。師範代という
ならば。現実に存在する高みなら誰であろうとも辿り着ける。そう士郎は思っている。
『ボクは・・・これイジョウ一子を強くすることがデキない。だから、キミの力をカリたい』
それは、己の不甲斐なさを含んだ慟哭だった。ならば衛宮士郎が取る行動は決まっている。
『指導者である貴方がそう言われるのならそうしましょう。ただ、一つ、貴方たちには
士郎は威圧するように言った。
『一子が師範代になれない。それは事実ではない。貴方たちが己の物差しで測った推測に過ぎない』
『じゃが―――』
何か言おうとした鉄心を士郎はその眼で黙らせる。
『確かに貴方たちの物差しは大きく大抵の者を図れるだろう。だが―――それは万能ではない』
そして、英雄と、夢の通過点を通った彼は断言する。
『一子の夢は絵空事ではなく現実に存在するもの。ならば届く。見えているのならば、手に取ることができるものならば。あとは己次第』
そう。あまりにも貧弱なくせに、神話の戦いに介入するという自殺行為を行う中で・・・・非常に癇に障るが、唯一あの赤い背中が自分にした助言は―――
『一子のトレーニングを一覧にして提出してください。そして、師範代の条件を提示してください』
そう言って
彼は自分の連絡先をメモに記して立ち去った。
―――――interlude―――――
立ち去るその背中を見て川神鉄心は、思わず跪き、拝みそうになった。
「武の頂とはまだまだこんなにも―――」
おおおお・・・と涙を流す川神鉄心。
あの歳に似つかわしくない鋼のような背中は武神の先を行く。否、武神と、自分たち人如きが神、と名乗る偽りの壁を越えてあの背中ははるか遠くを歩んでいる。
そして鉄心はあの眼に屈した。なにも言うことが出来なかった。威圧されたのではない。あの眼がいったい何を見ているのか。果てしない何かを彼の眼は視ていた。
「ルーよ・・・」
「ハイ・・・」
渡されたメモをもらったままに彼も涙を流していた。
「わしらも・・・まだまだじゃなぁ・・・」
「・・・ナニも言うことが出来ません」
そう二人は言ってその場を後にした。
その手に小さな希望を手にして―――――
―――――interlude out―――――
「さて・・・どうしたものかな」
学園への登校を禁止(休暇)された士郎は何をするか考える。
「・・・やること、ねぇ・・・」
思いつくことはある。ただそれはどうしたって右腕を使わねばならない。
骨折などしたことのある者はわかるかもしれないが、人間というのは五体満足でないと急速に不便を感じるものなのだ。片腕が使えないだけでも相当に生活に支障が出るし、不便を感じる。
「―――
座禅を組み、魔術回路を起動する。そして己の体、特に損傷した右腕に目を向ける。
―――血流良好
―――体表面損傷70%
そう。実は傷自体はもうほぼ治っているのだ。もちろん万全とまでは行かないが・・・
「セイバーに感謝だな」
ぽつりと呟く。それは彼女の鞘の効果。本来返還すべきはずのそれは今だ衛宮士郎を守護している。
自分の中に彼女の鞘があることを知った時、彼は彼女に返そうとした。だが彼女は、
『・・・いえ、それはそのままに。なにせ士郎はすぐに戦いの場へと赴く。いいですか?私があのいけ好かない魔術師に忠告されたのは決して剣ではなく、鞘を手放してはならないということです。私はそれを破ってしまった。故に己の命を落とすことになったのです』
『でも、それなら尚更・・・』
『なにを言っているのですか!今の私はサーヴァントです。よほどの、それこそ聖杯戦争のように英霊と戦うような状況でない限りこの身は怪我一つ負いません。それとも士郎は私がそんな不覚を取るとでも?』
最後の方はもう額に青筋が出るんじゃないかという感じで言っていたので結局士郎の中に鞘はあり続けている。そして、
『それに良いのです。私はこうしてここにいて、貴方は私の鞘としてここにいる。どんなに姿形が変わろうとも。こうして共にあるのならば同じことなのですから―――』
そんな、懐かしい記憶が頭を過っていた。それが妙に嬉しくて、そして切ない。
「―――。」
それはそうと、鞘の防御能力はまだしも、治癒に関してはセイバー自身が傍に居なければ発動しないはずであった。
だが―――
「―――。」
スゥっと己の内に目を向ける。奥の奥。衛宮士郎の根幹に存在するそれにゆっくりと魔力を注ぐ。
小さな、ほんの小さな光が右手から発せられる。チリチリと傷が疼く。
しかしそれに構わず魔力を注ぎ続ける。光は変わらず小さい。決して大きくなったり輝きが増したりしない。ただ小さな輝きがずっと灯り続けていた。
――――interlude――――
「今日は士郎の奴休みなんか」
普段であればもういるであろう士郎の姿を探すガクト。
「そりゃああれだけの怪我だからな・・・今頃病院じゃないか?」
大和も心配そうに空いている席へと目を向ける。
「無事だといいね・・・」
仲間想いのモロ。特にあの夜一番士郎の傷を心配し続けたのは彼だ。
「・・・大丈夫、だと思うよ」
心配する二人に京がぺらりと本をめくって言った。
「京、士郎の行った病院とか知ってるんか?」
ガクトの問いに京は首を振る。
「じゃあなんで士郎が大丈夫だって思うんだよ」
妙に自信ありげな京に大和も首を傾げる。
「・・・マルギッテは多分、士郎がまた私達をごまかしたりしないように一番酷い例をあげたんだと思う」
そう彼女は言った。
「なるほど・・・確かにあの時マルギッテは最悪としか言ってなかったな」
「そうだね。これも本当の話に情報の欠落をもたせる・・・かな?」
「・・・すまん、俺様今一意味が分からないんだが・・・」
「そうだな、例えばだ。このケースの中にシャープペンと消しゴムが入っていると言う」
大和はそう言って中身の見えないペンケースをガクトに渡す。
「・・・そんで?」
「ガクト。開けてみろ」
「お、おう」
ジーっとチャックを開けて中身を出す。
「確かに入ってるな」
出て来たのは言われた通りシャープペンと消しゴム。
「そこが肝だ。ガクト。そのペンケースに入ってるのは
大和に言われてガクトはもう一度、ペンケースを見る。
「なんだ、ボールペンが入ってるじゃねぇか」
大和が勉強で使っているのだろう何色かのボールペンが出てきた。
「そういうことだ。ペンケースにシャープペンと消しゴムが入っているとは言ったが、そこにボールペンが入っているとは言ってない」
「あ、あー・・・なんとなくわかったぜ」
スッキリしたのかムンとビルドアップするガクト。
「これをだ。さらに発展させると、ガクトはもう一つ、俺の言葉に引っ掛かかってる」
「うえ!?なんだよ・・・」
これ以上なんかあんのかと嫌な顔をするガクト。
「・・・あ、わかった」
モロが閃いたのか声を上げた。
「・・・ガクトはシャープペンと消しゴムが入ってるって言われた。それを確認してシャープペンと消しゴムを出した」
「そんで?」
「ああもう・・・じゃあ聞くけどなガクト。なんでシャープペンと消しゴムだけ取り出したんだ?」
この脳筋め、と大和はガシガシと頭を掻く。
「それは大和が・・・あ。」
そこまで言われて気づいた。そう。シャープペンと消しゴムという言葉に意識がとらわれて一緒に入っていたボールペンを、あたかも
「・・・なんか怖えなこれ」
脳筋ではあるが直感はわりと働くガクトは難しい顔をして言った。
「実際恐ろしい手法だよ。もしこれが、このペンケースには何も入ってないって嘘言ったら、ガクトは確認して中身を全部出してたはずだ」
「・・・この場合隠したかったのはボールペン。二重の意味でガクトは大和に騙された」
「うう・・・大和の例えが簡単だったからわかるけど、頭が混乱してくるよ・・・」
「つまり士郎は、こういうのを色々な場面で応用してる。それだけ頭がいいし、話し方も巧い。それを戦闘や口論になった時にも使ってるわけだ」
はぁ・・・と大和はため息をつく。これだけでもファミリーの軍師を担当する彼にとっては士郎に、一杯どころか、一生気づかないままになるほど食わされた。
(軍師として失格だな・・・)
これは完全に彼の得意とする土俵だ。それでこれだけ完敗させられたんじゃ目も当てられない。
「・・・士郎は強い。武術も知恵も。でもだからこそ―――」
「・・・うん。京の言う通りだね。僕たちがちゃんと見てないと」
結論としてそう考えるに至った四人は一層気を引き締める。
(士郎は特化じゃなくオールラウンダーだ。でも俺より巧い。当面は士郎の知識をモノにして軍師として強くならないとな)
(俺様はとにかく筋トレだな。あーでも、空手とかボクシングやってみんのいいかも)
(僕は情報収集をもっとしよう。意外と士郎、身近なことで知らなくて困ってることあるし)
負けてもただでは起きないのが彼らの美徳だ。彼らは衛宮士郎という新たな存在で新しい一歩を踏み出そうとしていた。
ちなみに。
(・・・弓で勝てるかどうかわからないけど。すでにモモ先輩とまゆっち・・・そしてマルギッテまで落ちてる・・・ここは無理せず慎重に・・・クフフ)
別方面で一段と邁進している者も一名いるがそれはそれこれはこれである。
「そういやキャップの奴もみねぇな」
「今朝がた宝の気配がするから行ってくるって置手紙を見つけたぞ」
「えええ・・・キャップ本当に自由だなぁ・・・」
「また昼のテレビに出たりしてな!」
ガハハハ!と笑うガクトに三人はなんとも言えない顔になってしまうのだった。
―――――interlude out―――――
時は移り変わり日が落ちた夜更け。もうだいぶ日が長くなってきたのか太陽は茜色を残して西に沈もうとしている。
「―――あれ」
衛宮士郎は土蔵で眠りこけていた。
「んー・・・?ああ、そうだった。鞘を使い続けてそのまま―――」
己の内に埋没し、ずっと鞘に魔力を送り続けていた士郎はいつの間にか日が落ちようとしていることに気づいた。
「まずいな・・・これはやりすぎた」
魔術の鍛錬にもなるからと延々こんこんと鞘に魔力を送り続けた士郎は酷い魔力不足に陥っていた。
「おっとと・・・」
ふらふらとしながら土蔵を出ようとする。その時、
ガシャーン!
「あいたっ!」
ずてーんと無様にすっころんだ。
「いっつつ・・・」
体を走る鈍痛に酷い眩暈。そして体の怠さ。これはいよいよまずいとひっくり返って態勢を整える。
「すぅ・・・ふぅう・・・」
集中。己の内に目を向ける。
「―――
―――血流良好
―――右腕損傷 軽微
―――魔力欠乏
「傷を治してたのに、頭打って死んだとあっちゃ遠坂になんて言われるか・・・・」
あの笑ってない笑顔を思い浮かべてブルリとする。
「・・・っし。だいぶ楽になってきた」
まだ軽い眩暈と体のダルさはあるが動けないほどじゃない。今度は転ばないように、慎重に土蔵を出る。
(晩飯・・・どうしよう)
そんなどうでもいいことを考えて彼はその場を後にする。
―――ジワリと。魔法陣が一瞬光ったのを見逃して。
今回は少し短めです。ただし色々フラグは立ちました。
まずは士郎。マジ恋の最強は百代ですが、ここまで読んでくださった皆さんはお分かりかと思いますがぶっちゃけ百代なんか一蹴できます。もちろん何でもありになれば、ですが。なので強さの見え方というか、高さが違うといますか・・・まぁなんにせよ、本来のマジ恋の尺度なんかじゃぁ語れない所に士郎は居て、ジジイは神様みた気分にさせられたというわけです。
あとルー嫌い!この人言葉の中にカタカナ入れるから書くの大変!タカヒロ先生すげぇ!(笑)
大和たちは改めて士郎の強さと危うさを再確認。そして強化を図ります。ペンケースの例ちゃんと伝わるといいなぁ・・・(そして約一名大和の○○で強くなっちゃうんだよなぁ・・・どうしよう)
キャップは大冒険に行きました。何拾ってくるんでしょうね(キリっ)
士郎の治癒ですが、セイバーの鞘は本来セイバーがいないと反応しません。ですが、オリジナルとして、正式に譲渡、あるいは貸出の関係にあるため微小ながら効果を発揮します。ずーっと魔力込めればじわじわ回復していきます。ただし、fateで語られていますが彼本人は元来魔力が少ないです。まぁ強強士郎なので底上げしてますが。
それでもぶっ倒れるまで使い続ける士郎ってやっぱイカれてます。
感想いつもありがとうございます。誤字報告もとても助かっています。これからも必死に書いていきますのでよろしくお願いします!