真剣で衛宮士郎を愛しなさい!   作:Marthe

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こんにちわ(ばんわ)投稿の遅い作者でございます。たくさんの感想ありがとうございます。正直、最近ちょっとご指摘が辛くて思い悩んでおりました。でも同じく感想に励まされこうして書き続けられている所です。

なので私は決心いたしました。もういけるとこまでぶっちぎります!ここは好きに見れるとこなので気に入らないなら読むんじゃねぇ!というスタンスでいきます。ぶっちゃけ評価とか気にしてないので。もちろん高かったら嬉しいですけれども。

ということで本編始まります。大冒険から帰ってきたキャップが持ち帰ったものとは?表裏に挟まれた士郎はどうするのか?書いていこうと思います。


大冒険の秘宝

梁山泊との戦闘が明け、一子と百代の訓練に付き合い、ついにやってきた二度目の金曜集会。会場である秘密基地に向けて風間ファミリー一行は歩いていた。

 

「なぁなぁ士郎。モモ先輩とワン子なーにやってんだ?」

 

秘密基地に向かう道すがら、仲良く手をつないで一定間隔でぴょこんぴょこんと撥ねる二人を見てガクトが士郎に聞く。

 

「鍛錬だよ」

 

「鍛錬??」

 

もう一度少し後ろを振り返るガクト。

 

「よっ!ほっ!それ!」

 

「いいぞーワン子!ほら1、2!」

 

「さん!しー!」

 

ホップステップジャンプと言わんばかりにスキップする二人。傍から見れば、仲良く愉快に遊んでるようにしか見えない。

 

「ぜんっぜん見えねえ」

 

「ううん・・・僕にも遊んでるようにしか見えないな・・・」

 

「どういうことなんだ?士郎」

 

一般人のガクトやモロ、大和にはさっぱり分からないらしく、士郎に再度説明を求める。

 

「大和達には見えないか。京はどうだ?」

 

と大和の向こう側にいる京に問いかける。

 

「・・・ワン子の気が信じられないくらい膨れ上がってる」

 

「お。ご名答」

 

と士郎がパチパチと手をならす。

 

「あ、あの、それでなんでスキップ・・・なんですか?」

 

おずおずとまゆっちが手を上げる。

 

「それはな―――」

 

と士郎が説明しようとしたその時。

 

ドシュン!

 

「にゃああああああ!!!」

 

「うほー!」

 

奇妙な悲鳴と楽し気な声と共に後ろの二人が消えた。

 

「い、犬とモモ先輩が消えたぞ!?」

 

「消えたんじゃない。上だよ上」

 

そう言って空を指さす士郎。

 

「上?・・・あ!」

 

言われて見上げると何やらひゅるひゅると落下してくる二人の人影が。

 

「にゃああああ・・・っと!」

 

「イェーイ!」

 

シュタッ!と陸上選手のように決めポーズを取るワン子と百代。

 

「な、ななななんだ!?一体どういうことだ大和!」

 

クワンクワンと隣にいる大和を揺さぶるクリス。

 

「まてまてまて!わかんない!わかんないから!」

 

ブンブンと振り回されて段々と気分が悪くなってくる大和。

 

「あれは恐らく・・・気がコントロール出来ていない・・・のでは?」

 

「おー流石由紀江。やっぱり京と由紀江は目が冴えてるな」

 

「ちょ、士郎!自分だってそのくらい・・・」

 

「見えなかったろ?」

 

「ぐぬぬ・・・」

 

ぐうの音も出ないとはこのことか。小さく唸って萎んでしまうクリス。

 

「・・・なんでもいいけどクリス。そろそろ大和放して」

 

「ん?大和?大和!?」

 

「うぁー・・・」

 

クリスに襟元掴まれていた大和はゾンビのように顔を青くし、うめき声を上げていた。

 

「ちょ、大和!誰か!うあー!じ、人工呼吸!」

 

「させないッ!それは!大和とのファーストキスは私のものなんだッ!」

 

「き、きききキス!?ち、違う!自分はただ・・・」

 

顔を真っ赤にするクリスと唇を奪わんとする京に引っ張られて、今度は両端から引っ張られるという事態に見舞わられる大和。

 

「京はともかく・・・なんか大和、クリスと仲良くなってないか?」

 

そんな光景を遠めに見ながら士郎はガクトとモロに問う。

 

「ああーそうか。士郎いなかったんだもんな」

 

「うん。実はね・・・」

 

と二人の話を聞くと、なにやら自分のいない間に大和とクリスの間で喧嘩が勃発し、大和は知力を振り絞り、クリスは己の武力を振り絞る大決闘があったらしい。

 

「決闘って・・・好きだなぁ・・・川神学園」

 

またもや決闘かと頭を抱える士郎。

 

「それで?」

 

「決闘内容は障害物競争。グラウンドと校舎を使った本格的なものだったよ」

 

「随分広いなおい・・・」

 

川神学園は中々の大規模な敷地を誇る学校だ。それもグラウンドと校舎全てを含めたのなら相当な範囲になる。

 

「最初は、やっぱりクリスが有利だったんだけどよ」

 

「そこは大和、色々と頭を使ってね」

 

障害物は実に様々。走る、跳ぶ、投げると言った身体能力を図るものから、ものを借りてくる、誰かを連れてくる、教師の考えた問いに答えるなどなど・・・それはもう派手にやったらしい。

 

「まぁ普通に戦ったんじゃ今の大和ではクリスに太刀打ちできんだろうし、いい采配と言えばそうだな。由紀江も参加したのか?」

 

「は、はい!事前に力を貸してほしいと言われたので・・・」

 

「まゆっちは友達想いのいいこなのよ・・・」

 

「いや、その友達同士で争っていたんじゃないのか・・・?」

 

松風という名の本音を漏らす由紀江に思わずツッコミを入れる士郎。

 

「それでどっちが勝ったんだ?」

 

「もちろん大和だよ」

 

モロはどこか嬉しそうに言った。

 

「ほう・・・確かに大和は頭を使うのが上手いとは思っていたけど・・・」

 

感心したように驚く士郎。

 

「どうやって勝ったんだ?」

 

「色んなやつらの手を借りたり、罠を仕掛けたり・・・」

 

「問題出す教師を事前に知っててうまく采配したりだね。でも最後は大和とクリスの一騎打ちになって・・・」

 

最終的にゴールまで走るデッドヒートになり、最後の最後で根性を見せた大和の勝利となったそうだ。

 

「やるなぁ・・・大和」

 

彼が常に人脈作りに走り、本来ならS組にだって入れるだろう知識を身に付け、俺のいない間から続けているという京と百代監修のトレーニングを積んでいる、というのはこの僅かな期間であるが、仲間達が教えてくれた。

 

それにしても、土壇場とはいえ彼が発揮した力はただの学生とは思えないものだろう。

 

(まぁ・・・それを言ったらここにいる全員もとんでもないだが・・・)

 

誰が見ても強い風間ファミリーの女の子達に隠れがちだが、ガクトは一般人としては常人離れした腕力を誇る。そこいらのチンピラなど寄せ付けやしないだろう。モロは戦闘能力こそ皆無だが、その情報収集能力は軽いハッキングさえ可能という立派な技術を持っている。あとはキャップだが―――

 

(なんかやらかすような気がするんだよなぁ)

 

根拠はないが。あの行動力と自由(フリーダム)性は誰とも比べられない一級品。しかも彼の意味不明な剛運具合がそれに拍車をかけ、奇跡的な何かを起こさせる。そんな気がするのだ。

 

「っと、仲良く取り合うのはいいが、そこまでな」

 

トトン!と引っ張り合う二人の手に手刀を軽く落とす。

 

「「!!?」」

 

それだけで二人はまるで力が抜けたように大和から手を放す。

 

「!?おい士郎今なにしたんだ!?」

 

「なんか一瞬ピリっとした・・・」

 

二人は不思議そうに手を握ったり開いたりして手の感触を取り戻そうとする。

 

「ちょっとした気の応用、あとは技術だな」

 

本当は気なんか使えないので魔力をほんの少しだけツボに流しただけだが。

 

まさかそんなことは言えない(ツボはいいけど魔力は言えない)ので適当に誤魔化す。しゃがみこんでドシャリと倒れこんだ大和に声をかける。

 

「おーい大和ー大丈夫かー」

 

「・・・。」

 

返事がない。ただの屍のようだ。

 

「ってそんなわけないわな。由紀江、これちょっと持っててくれ」

 

「は、はい!」

 

そう言って手に持った新しいバスケットを由紀江に渡して、

 

「よっ!」

 

グキッ!

 

「おわああああ!?」

 

背中のツボを突いて喝を入れる。途端大和はビクーン!と起き上がり息を吹き返した。

 

「ほい蘇生完了と」

 

「すげぇなんだ今の」

 

「士郎はもうモモ先輩ばりになんでもありだね・・・」

 

なんとも失礼なことを言うモロ。

 

「なんてこと言うんだ。あんな地上最強生物じゃないぞ、俺は」

 

途端、

 

「かーわかーみーはッ!」

 

だいぶ危険なワードと共に拳圧が飛んでくる。

 

「あぶなっ」

 

と首をひねって避けた士郎だがドゴン!と着弾したそれは地面を軽く抉った。

 

「危ないだろ!こんなん後頭部に当たったら死ぬだろうが!」

 

と拳圧を飛ばしてきた百代に怒鳴る。

 

「うるさい!こんな美少女になんて言いぐさだ!」

 

ギャーギャーとお互い言い合う士郎と百代。その様子を見てモロは嘆息する。

 

「見えてないのにモモ先輩の一撃躱してるんだから同じようなもんだよ・・・」

 

「俺様も同感」

 

はぁ、とため息をつくガクトとモロ。なんだかここ最近ため息を吐くのが増えてきたように思う二人であった。

 

 

 

秘密基地に着き、各々が席へと着く。そこにクッキーが現れて出迎えてくれた。

 

「いらっしゃいみんな!士郎は久しぶりだね」

 

「ああ。クッキー久しぶり」

 

嬉しそうに言うクッキーにしゃがみこんでロボットアームと握手する士郎。

 

「ふー・・・やっぱり落ち着くなぁ・・・」

 

「そうだね。今日もお菓子持ってきたけど・・・士郎、何か作ってきてくれたんだよね?」

 

「ああ。約束したからな。摘まめるおかずと・・・デザートなんか作ってみた」

 

「デザート!?」

 

「士郎はお菓子も作れるのか?」

 

「あわわ・・・」

 

「出遅れてるぜーまゆっち・・・」

 

「食べて良い?食べて良い!?」

 

「・・・ワン子、ステイ」

 

「クゥ~ン・・・」

 

約束を果たしただけだというのにこの賑わい。思わず笑ってしまう士郎。

 

「大丈夫だ。キャップの分は別に用意してある。食べていいぞ」

 

その言葉をきっかけにわっとみんなが出された品々に手を出す。

 

「うめぇ!」

 

「うん!こっちのもすごく美味しいよ!」

 

「食堂を魔改造しただけあるな・・・流石士郎」

 

「まぐまぐがつがつ!」

 

「やるなぁ・・・流石私の男だ」

 

勢い良く飛びつく皆に満足そうに士郎は頷く。

 

「よかった。こっちも是非食べてみてくれ。桃の―――」

 

「ピーチ!?」

 

桃と聞いてドヒュンと士郎の元に瞬間移動する百代。

 

「お、おいおい無駄に高度な技でこっち来るなよ・・・」

 

「いいから!いいから早くそれを寄越せ!」

 

目をキラッキラさせてバスケットをのぞき込む百代。

 

「わかったわかったって!む、もがもが・・・!」

 

もう辛抱たまらんと士郎の持つそれに手を伸ばす百代。体をかなり乗り出しているため、その凶悪な胸部装甲に士郎の顔が埋もれる。

 

胸に埋もれジタバタする士郎とそんなこと気にしないとばかりにバスケットをまさぐる百代。その光景をみたガクトは・・・

 

「料理はうめぇけど・・・やっぱり士郎、てめぇは死ね・・・!」

 

「だからガクトそういうとこだって・・・」

 

「んなこと言ったってよう!大和といい士郎といい、自然とハーレム作りやがって・・・!」

 

「ううん・・・それは否定できないなぁ・・・」

 

「俺様もハーレムに浸りてぇ・・・」

 

「・・・そういうこと言ってると絶対できないぞ」

 

「うるせぇ!お前が言うなっ!」

 

嫉妬をあらわにするガクトに言う大和だが、ガクトは逆に吠える。

 

「んぬぬ・・・!ほらこれ!これだよ!」

 

「おおうピーチッ!!」

 

そう言って士郎が掴み上げたそれを奪い取りそのまま食べる百代。

 

「んー!この瑞々しい桃の味!最高!」

 

「おいこの状態で食べるなっ!」

 

「うう、ううう~~~!!」

 

「大丈夫だまゆっちー!お前にも魅力的な胸部装甲がある!!」

 

「ああっ!それ旨そうだ!早くくれ士郎!」

 

「わかってる!けど・・・!」

 

いつの間にかがっしりホールドされてしまった士郎は残りの桃のコンポートを差し出すことができない。

 

「ふっふっふ。幸せだろう?こんな美少女にこんなに密着されて」

 

「美少女は・・・こんなこと・・・しない・・・だろうが!」

 

いい加減窒息しそうな士郎は無理やり百代を引きはがす。と

 

ふよん。

 

「あん!」

 

「あ・・・」

 

がっしりと。たわわに実った果実を鷲掴みしてしまった。

 

「聞いたか?いまモモ先輩があんって―――」

 

「忘れろッ!」

 

ギュルン!グキ!ガツ!

 

「うがっ!?」

 

「グエッ!?」

 

士郎の首を軸にしてガクトの後頭部にソバットをかます百代。

 

「ああああ!士郎先輩!」

 

「シロ坊の首がー!」

 

「士郎・・・いい奴だったよ・・・」

 

「いいから!はやく自分にも渡せよっ!」

 

悲劇が悲劇を生みもはや大惨事。士郎は首をへし曲げられ沈黙。ガクトは百代の蹴りにて撃沈。嫉妬と悲鳴をあげる由紀江に自分にも早く寄越せとねだるクリス。

 

「カオスだわ・・・」

 

「あはは・・・」

 

「・・・しょーもない・・・」

 

そんな、とても平和な風間ファミリー(キャップ不在)であった。

 

 

 

 

 

――――interlude――――

 

九鬼本社ビルにて。

 

「それでは報告を」

 

はい。と従者部隊の一人が立ち上がり、報告を開始する。

 

「最近、どこからか武器の密輸事件が相次いでいます。それも本格的な装備です。武器の一覧は資料をご覧ください」

 

そう言われて目の前の書類へと目を通すのは九鬼の経済・人事・軍務の中の軍務を担当する九鬼英雄の姉、九鬼揚羽である。

 

「確かに・・・これは相当な装備よな・・・まるで戦争でも始める気なのかと言いたいほどだ」

 

「逐一摘発を行っていますが、かなり大規模で巧妙な手口が使われています。摘発された中にはダミーと思われるものが含まれているほどです」

 

「それと、最近裏町のならず者の動きが活発化しています。警備を強化して対応していますが、何者かに指示を受けているのか、ならず者とは思えない動きを見せています」

 

二つの報告に揚羽は顔を顰める。

 

「繋がりがないとは思えんな・・・。情報を吐かせることは出来なかったのか?」

 

揚羽の問いに別な従者が立ち上がり応答する。

 

「武器密輸に関してはマフィアだけでなく中国の傭兵が関与しているようです。それ以上のことは吐きませんでした」

 

「相手もプロということか。裏町については?」

 

「こちらもあまりいい成果を上げられていません。ただ、いずれも『M』と呼ばれる人物が何らかの形で動いているようです」

 

少ない情報の中唯一出てきた黒幕らしき名前に揚羽は思考を巡らせる。

 

(M・・・か。随分と厄介なことをしてくれる・・・)

 

恐らくこの二つの事案にはMという人物が関わっている。それも相当頭のキレる人間だ。大規模な二つの動きを先導するなどそうそうできるものではない。

 

(なぜよりにもよってこのタイミングなのか・・・いや、これを狙っての動きか?)

 

九鬼では近々大きなプロジェクト、武士道プランが発足されようとしている。これはまさに世界を揺るがす大きなものとなるだろう。その混乱に乗じて力をつける気なのか、あるいはすぐさまテロリズムを行うつもりなのか・・・

 

(もしこのタイミングを狙ったのならば、我々の中に内通者がいる可能性もあるな)

 

そう結論付けた揚羽は指示を出す。

 

「警備をさらに強化せよ。武器密輸もそうだが裏町についてもだ。そしてMなる人物の動向も探れ」

 

「はっ。・・・しかし、これだけの範囲に展開いたしますと一つ一つの防衛力が手薄になる可能性がございます」

 

いくら巨大な九鬼財閥と言えど人は有限。広く分散しすぎれば足元が疎かになる。

 

「仕方あるまい。だが手は打つ。まずは川神院への協力要請を。それから――――」

 

次々と指示を出し、一人、また一人と従者達が会議室を立ち去っていく。残ったのは揚羽と彼女の従者の小十郎。それと弟の九鬼英雄である。

 

「姉上、お疲れ様でございました」

 

「よせ。まだ終わりではない。あずみ」

 

「はい」

 

呼ばれた忍足あずみが前に出る。

 

「例の・・・衛宮士郎・・・だったか?奴の情報はどうなった?」

 

「依然情報が出てきません。ですが恐らく彼の住居らしき場所は特定いたしました」

 

そう言って川神の地図がモニターに映し出される。

 

「この場所は・・・川神幽霊屋敷か!」

 

英雄が驚いたように地図を見つめる。

 

「なるほどな。人気が無く放棄された家屋も相当にある。隠れ家とするにはもってこいの場所だな。だがここは・・・」

 

そう言って思案顔になる揚羽。それもそのはず。ここは幽霊が住むだの不審死をするだの、所謂いわくつきの場所。年に数度、川神学園3-S京極彦一に言霊で霊を静めてもらう依頼をしている場所だ。

 

「確かに隠れ家としては最適であるが・・・ここは実際に被害者が出ている場所であるな?あずみ」

 

「はい英雄様。過去に大規模放火事件があり、すべての住民と家屋が焼け落ちました。その後、他社が土地を買い取り、新しく住宅街として復興させようとしたようですが・・・その後、実際に不審死が相次ぎ、誰も近づかない禁止区域になっています」

 

「そのような場所に衛宮が・・・にわかには信じがたいが、登下校するには場所としてはいい。だが魑魅魍魎の類を纏わせている雰囲気はない。むしろ衛宮が存在する場所は逆に活気が溢れるほどだ」

 

同級生として、そして経済を回すものとして彼を見てきた英雄は、彼が正体不明の人物とはいえ、悪人には見えんし、むしろ他人の為にと心身共に尽くしているのは英雄自身の目で見ている。なにせその人物の為にならんと断じればきちんと断りもしている。ただむやみやたらに与えているわけではない。

 

「ふむ・・・まだこうして生きて住んでいることを考えれば何らかの・・・それこそ言霊のような特別な力を持っているのかも知れんな」

 

なにせあの百代を簡単にあしらうどころか、男に興味を失い、戦いに飢えていた彼女を惚れこませる男である。いずれにしても只者ではない。

 

「仮に学園で話せと言っても、のらりくらりといなされてしまうであろう。実際今までそうであったしな。そこで一つ一計を案じることにしよう」

 

ニヤリと揚羽が笑う。その笑みはどこか悪戯を思いついたと言わんばかりの顔だ。

 

「あの・・・姉上。衛宮は一子殿の仲間であります。あまり手荒な真似は・・・」

 

自身の我が儘とはわかっているが、衛宮が現れてからの一子は本当に光り輝くようだった。それを無下にするのはどうしても気おくれしてしまう。

 

「なに心配するな。ようは、彼にとって得ではないから隠すのだ。ならば、彼が自分から話してもよいと思うものを用意すればよい。確か、彼の貢献にどう報いればいいか、学園から相談が来ていたな?」

 

「はい。一部褒賞を与えたということですが・・・最近は学園だけでなく川神院としても彼の恩に報いたいという相談が来ています」

 

「うむ。衛宮は休暇に入った後も川神院に出入りしていた。そこでも存分に力を振るっていたのであろう。なにせ一子殿がまるで花開いたようにさらに輝いていたからな!」

 

何度も頷いて満足げな英雄。本当にそれでいいのか?と思わなくもないがクッキーというハイテクロボをプレゼントしたくらいの奴である。納得するしかない。

 

「交渉には我が赴こう」

 

「姉上が!?いくらなんでも危険では・・・!」

 

「いや。我こそが適任なのだ。案ずるな。それとは別件であずみ、お前にも頼みたいことがある」

 

「はい!」

 

そうして九鬼の会議は遅くまで続けられることとなる。水面下で大きく蠢く何かに備えながらも、九鬼として大胆に、そして威厳を携えて会議は過ぎる

 

 

――――interlude out――――

 

 

 

時変わり夕暮れ時。秘密基地に集まった面々は今日帰ってくるはずのキャップを待ち続けていた。

 

「遅いなキャップ」

 

「ほんとなー。モロ、連絡つかねーの?」

 

「さっき川神院前を通ったってメールが来たよ。もう少しじゃないかな」

 

「キャップさん今度は何を見つけてくるんですかね」

 

「ひとつなぎの大秘宝とか夢があるよねー」

 

「おいやめろ。それは危険なワードだ。・・・で、なんで百代はまだくっついてんの?」

 

何処かもうやけっぱちの様子で好きにさせている士郎である。

 

「なんだよー幸せだろーこんなに愛してやってるのに」

 

「愛してるって・・・さっき殺されかけたんだが・・・」

 

そう言ってため息を吐く士郎。ちなみにさっき首をひねられた時切嗣(じいさん)が川向うで手を振ってるのが見えたような違うような。

 

「うーん俺様、なんか重要なこと忘れてる気がすんだよなー」

 

「・・・やめときなよ。次は多分、記憶だけじゃ済まないから・・・」

 

「大和はいつでも私にくっついていいんだよ。何なら服脱ぐ?」

 

「キャップはいつもなんかとんでもないことしでかすからなー・・・」

 

「ぬー・・・じらしプレイ?そんなSな大和も好き!結婚「お友達で」ダメだった・・・」

 

「大和くっつぎすぎだぞー!ハレンチだ!」

 

「俺動いてないんですけど!」

 

「おいクリス。百代にも言ってやってくれ」

 

「それは無理」

 

「なんでさ!」

 

「なんだ~?もっとくっついてほしいのか~?そ~れ」

 

ギュイイイ!

 

「ギブギブギブギブ!!!」

 

「なんかすっかり絡む相手が士郎に変わったなー」

 

「弟もいいが、もうこの体は一人だけのものだからな」

 

「それどういう意味だよ・・・大体、百代は美人なんだから引く手数多だろ?」

 

不思議そうに首を傾げる士郎。

 

(なんで)

 

(お前が)

 

(言うん)

 

(ですかー!)

 

またもや以心伝心する一同。

 

「なんだよー私が別な男の所に行ってもいいのかよー」

 

「だからどういうことだよ・・・こういうのはほら、好きな奴が出来たときにしてやれよ」

 

そう言って引きはがそうとする士郎。

 

(いい加減気づけアホンダラ!!)

 

(鈍感もここまでくるとすごいね・・・)

 

(うう、わわわ私ももっとくっつくべきでしょうか!?)

 

(いけーまゆっちー!お前の体でシロ坊をメロメロにしてやれー!)

 

(・・・でもまぁ、姉さんを直で受け止められるのは士郎だけだし・・・)

 

(うーん、自分も大和と・・・)

 

(モモ先輩とまゆっちは落ちたのにまさかクリスが敵になるとは・・・)

 

コソコソヒソヒソと密談する三人と自問自答(松風)する三人。

 

「そういやワン子静かだなー寝ちまったか?」

 

「違うぞ。ちょっとした鍛錬中だ。そっとしといてやってくれ」

 

そう言って引きはがすのを諦めた士郎が言う。

 

ちなみに百代は一人、偶然(自業自得)降って湧いた嬉し恥ずかし状態で、構うのをやめられないという変なスパイラルに陥っているだけである。

 

とそんな和やかな雰囲気の中一子が、

 

「・・・きたわ」

 

「おお?」

 

「もしかしてキャップ?」

 

「やっとかー」

 

一子が言うのがキャップだと知ってやっとかと皆脱力する。

 

「ふへぇ・・・これって疲れるのねー・・・」

 

「でもワン子、上手だったぞー範囲も中々だ」

 

クテッと横になる一子を優しく撫でて労う百代。

 

「ワン子の鍛錬ってキャップを見つけることだったの?」

 

「ああ。気が沢山使えるようになった・・・というか増えてな。それを利用して探知の訓練をしてたのさ」

 

「いつもはモモ先輩が教えてくれてたもんな」

 

「ってことは今回姉さんは探知してなかったの?」

 

大和の問いに百代は、

 

「いや?ちゃんとしてたさ。ただ私が言っちゃったら鍛錬にならないだろ?」

 

「すごいですね一子さん・・・」

 

「由紀江も本気になればできるだろう?」

 

「ええっ!まゆっちもできるのか!?」

 

士郎があっさりとばらすが、本人は、

 

「め、めめめ滅相もありません!私などではそのー・・・」

 

「ううん~・・・なんか自分だけ置いて行かれてる気分だ・・・」

 

「そんなことないさ。クリスにも膨大とは言わないが素質はあるよ。正しい鍛錬をすればできるようになる。それより大和、ここに歩いてきた時の様子からわかると思うが・・・」

 

そう言って士郎は大和に目配せする。それを正しく受け取った大和は、

 

「わかってる。気が安定しないと満足に戦えないんだろう?」

 

「ああ。なにせ急に膨れ上がったからな。今までミニカーに乗ってたのがレーシングカーに突然乗り換えたようなもんだ。戦闘自体は可能だろうが即自爆する可能性が高い」

 

「まじか。ワン子が戦えなくなるなんてよ」

 

「で、でもいずれはまた元気に動けるようになるんだよね?」

 

「ああ。時間はかかるがちゃんとコントロールできるようになればな。一子は今、体を必死に慣らしてるんだ。だからみんなも手伝ってやってくれ」

 

「手伝うのはいいが、具体的に何をすればいいんだ?」

 

「それは―――」

 

ダダダダダ!

 

バン!

 

「ようお前らー!久しぶりー!!!」

 

「キャップ!」

 

「「「おかえり」なさい」」

 

待っていたとばかりにみんなが口をそろえた。

 

「いやー今回も大冒険だったぜー!」

 

「何処に行ってたの?」

 

モロの言葉にキャップは・・・

 

「わからん!!!」

 

と堂々と答えた。

 

「いやわからんて・・・」

 

「キャップ自転車で行ったんだよな・・・?」

 

「一体どこまで行ってきたんだよ・・・」

 

ガクリと一同は肩を落とした。

 

「いやー今回はよ。どこに行くーとかじゃなくてとにかく勘に従って走ったんだわ。そしたらようー」

 

「そしたら?」

 

「なんかよくわかんねーけど山抜けてー川渡ってー・・・そんで洞窟に着いた」

 

「山・・・」

 

「川・・・」

 

「洞窟・・・」

 

「そりゃ場所なんか分からんわな・・・むしろよく帰ってこれたな」

 

あまりの道のりにあきれ返るファミリー。

 

「キャップっていつもこうなのか・・・?」

 

士郎は困ったように自分より馴染み深い皆に聞く。

 

「う~ん・・・いつもは割と場所自体はちゃんとしてるんだけどね」

 

「前は箱根温泉行く前日に行きたくなったからつって、わざわざ行って帰ってきて、また俺たちと行ったよな」

 

「そういえば名古屋で動けなくなったーとか言ってた時もあったわよね?」

 

「な、名古屋!?自転車で!?」

 

「動けなくなったのが名古屋だから実際はもっと行ってる」

 

「・・・うん。だってその時キャップ、自転車パンクして動けなくなったって言ってたから」

 

「嘘だろどんな脚力してんのさ・・・」

 

もはや理解不能の行動力に頭を抱える士郎。

 

(行動力のあるやつとは知ってたけど、こんなに規格外とは・・・・)

 

確かに初めて会った時から初対面の自分にグイグイ来て、何か眼鏡にかなうものがあればその俊足で飛びつき、何か作り始めれば一切妥協せずに寝ずにやり続けるとは聞いていたが。

 

(川神って・・・怖い)

 

思わずそう思ってしまう士郎。

 

「でよー・・・ん?ワン子、どうしたんだ?」

 

いつも元気なワン子がクテリ、としているのを見てキャップが問う。

 

「あ、ああ・・・実はな・・・」

 

頭痛が痛いとはこのことかと頭を抱えながらワン子のことについて説明する士郎。

 

「マジか!ワン子もっと強くなるのか!」

 

「時間はかかるけどな。さっき大和とも話したんだが・・・」

 

「当分の間ワン子は戦力外だ。でもま、キャップが帰ってきたし、姉さんより強い士郎がいるし、総合的な戦力は相当高いよ」

 

「そうだな。でも弟ー。士郎が私より強いっていうのは納得がいかないぞ」

 

ユラァっとベキベキ指を鳴らしながら立ち上がる百代。

 

「実際の所どうなんだ?士郎はよくモモ先輩をいなす所をみるけど・・・」

 

クリスの問いに士郎は腕を組み、

 

「昔・・・っても二カ月前か。その時ならともかく今は少し厳しいかな」

 

と真面目に答える。

 

「あの時の百代は相当油断してたし、最初から本気を出さないっていう悪癖もあったから余裕があったけど・・・今は、こうしてしっかりしてるからな」

 

「うう~・・・褒めてるのかけなしてるのかどっちなんだよー」

 

ギシィイ!

 

「だから一々くっつくなって!キマってる!キマってるから!!」

 

ギブギブー!と腕をタップする士郎。

 

「で、でも!勝てないとは言わないんですね!」

 

「モモ先輩相手に・・・流石シロ坊やで」

 

「あー・・・まぁ・・・なんでもあり(・・・・・)ならな」

 

と士郎は困ったように言う。

 

「よく言った!今度は本気でやろうじゃない、かッ!」

 

ギリィ!!

 

「だからキマってるって!」

 

パアン!と腕を上にかち上げる士郎。

 

「!?今の感触は・・・?」

 

「だはぁ・・・はぁ・・・もういいだろう?この話は無しだ。それよりもキャップの話を聞こう」

 

荒く息を吐きながら士郎は言う。

 

「・・・また話そらしたね」

 

「だな。自分は士郎のそういうとこ、感心しないぞ」

 

という京とクリス。対する士郎は苦虫を嚙み潰したように、

 

「だから戦いは嫌いだって言ったろ?折角仲良くなれたのに仲間内で戦いたくなんかないぞ俺は」

 

「それはそれ、これはこれだ!それに今妙な術使ったろ!なに隠してるんだ!吐け!」

 

ババババ!

 

興奮した百代が拳の連打を繰り出す。

 

「ば、馬鹿!秘密基地を壊す気か!?」

 

慌ててそれをいなし、衝撃を全力で逃がす。そうしないと拳圧で室内を破壊しかねなかった。

 

「わかった!わかったから!今度話すから!今はまだ言えないんだ!納得してくれ!」

 

その言葉にピタリと百代の拳が止まる。

 

「本当だな?」

 

「・・・ああ。約束するよ。とにかく今はまだダメなんだ。安全が確認出来たらきちんと話すから、な?」

 

苦し紛れに約束する士郎に百代は一応納得したらしく、大人しくなった。

 

「安全ってことは危険なのか?」

 

「・・・すまん。それも含めてなんだ。とにかく準備が出来たら話すから。みんなにも約束する」

 

大和の問いに頭を下げる士郎。

 

まだ言えない。まだ言えないのだ。この世界に魔術師と魔術が存在するのか確認できなければ彼らを危険に晒してしまう。ましてやもう裏の人間が接触してきているのだ。事は慎重に運ばねばならない。

 

「よーしキャップ命令だ!必ずお前の秘密を教えること!いいな?」

 

「ああ。了解した」

 

そうしてとりあえずその場は収まった。

 

 

 

 

 

「それで?洞窟に着いてどうしたんだ?」

 

頃合いを見計らって大和が話を切り出した。

 

「それがよ!矢が飛んでくるわ火の玉が飛んでくるわ、落とし穴が開いて下は槍衾になってるわ、大岩が転がってくるわで大変だったぜ!」

 

聞けば、とにかく命を奪われかねないトラップだらけだったということ。

 

「よく生きてたな・・・・」

 

「親父も冒険家だし、俺も卒業したら冒険家志望だからな!これくらい楽勝だぜ!っていいたいけど、今回は流石にきつかったけどな」

 

といつものキャップらしからぬ様子である。

 

「で?なんかお宝でも見つけたのかよ?」

 

ガクトの問いにキャップはこれまた微妙な顔をした。

 

「んー・・・一番奥にそれっぽいものがあったんだけどよう・・・・」

 

「なんだか微妙な言い方だな?一体何があったんだ?」

 

大和の問いにキャップは背負っていたバックから今回の戦利品を取り出した。

 

「これだ」

 

それは随分と黒ずみ、元は何かの金属だったようだが錆びついてその面影はなく。土や泥にまみれた何かであった。

 

「なにこれ?」

 

「なんか優勝カップみてぇな形してるな」

 

「でも随分劣化してる。本当にお宝なのか?」

 

みんな一様にそのカップの形をした何かを見つめる。

 

「あの、これはカップではなく杯・・・ではないでしょうか?」

 

「さかずき?」

 

「ああー言われてみればそうかも」

 

「でもボロボロだし、宝石とかついてないし・・・正直微妙ね」

 

「それに穴も開いてるぞ?本当にお宝なのか?キャップ」

 

と一同がキャップを見る。

 

「ああ。奥にはそれしか無かったしな。隠し扉とかでもあんのかと思ったけどなかった。でもよー俺の勘はこれが宝だって言ってるんだよ。・・・微妙だろ?」

 

キャップの言葉にみんな微妙な顔する。

 

だが―――

 

「・・・馬鹿な」

 

ただ一人。顔を青くし、ガタガタと震える人物がいた。

 

「?士郎どうした?」

 

そのただならぬ様子に百代が心配げに士郎を見る。

 

「ふざけるな・・・!なんでこんなモノがここにある・・・!!」

 

それは恐怖か、怒りか、はたまた悲しみか。とにかく今まで見たこともない表情をした衛宮士郎がいた。

 

「キャップ!!!」

 

ガタン!と立ち上がり士郎はキャップに掴みかかった。

 

「お、おうどうしたんだ?」

 

「これは!これは一体どこで見つけたッ!!!」

 

ただならぬ様子の士郎に思わずファミリー全員が立ち上がる。

 

「し、士郎先輩!落ち着いてください!」

 

「士郎落ち着け!」

 

「落ち着きやがれ!」

 

「士郎!」

 

キャップに掴みかかる士郎を慌てて引き離そうとするガクト、大和、京、由紀江。

 

だが彼は万力の如く力をこめ、

 

「なぜ・・・!!なぜここに聖杯(・・)なんかあるんだ・・・ッ!!!」

 

それは、彼にしか分からない心の奥底からの慟哭だった。

 

事態は急変する。和やかに終わるはずだった二回目の金曜集会は、今まで一度たりとも動揺などしなかった士郎の慟哭で締めくくられるのだった。

 




はい。キャップが拾ってきたのは天地を揺るがすどころかひっくり返すものでした。実際にそれを目にした士郎はどう思うんですかね・・・自分も正直分からないです。

それと九鬼の会議ですがうまく書けていたでしょうか・・・いまいち九鬼の会議シーン・・・というか九鬼の関係者さん全般のイメージが分かりずらくて・・・

そして川神に段々と暗雲が立ち込めて参りました。私個人としては、すぐさま山の翁(キングハサン)にM野郎を告死天使(アズライール)してもらいたい所です。誰か晩鐘鳴らして!(作者の首が飛ぶ)

前書きにも書きましたがもう私止まりません。暴走列車の如く、バサクレスの如く「■■■■■ッ!!!」という感じで進んでいきます。

それでも見てくれる方、これからもよろしくお願いします。
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