その日、川神学園2-Fでは転入生の話題でもちきりだった。
「転入生かぁ・・・また女子がいいなぁ・・・」
だらしない顔で鼻の下を伸ばす福本育郎・・・またの名をヨンパチ。
「サルがまたいやらしい顔してるんですけどー」
「福本君もかわりませんねー・・・・」
本人を目の前に臆面なく罵倒する小笠原千花。
相変わらずのことなのか嘆息する甘粕真与。このクラスの委員長である。
「さぁはったはった!男か女か!」
教室のど真ん中で賭けを始める行動力の塊のような少年、風間翔一。
「クリスが来た時みたいだね・・・」
「本人が居たら、またなんか言いそうだけどいないからねぇ」
「というか狙ってたんだろ・・・どっちにしろ俺は三次元に興味はない」
控え目に苦笑いを浮かべる師岡卓也、のんびりと言うふっくらとした熊飼満ことクマちゃん。
そしてなにか致命的なものをこじらせてしまったような大串スグル。
「で、大和、どっちなんだ?毎回の如く知ってるんだろ?」
「ノーコメント。キャップに怒られるからな」
「なんて言いながら賭けに参加してる大和のダークな一面も好き。結婚して「お友達で」むぅ」
F~Sクラスに成績分けされる中で仲間たちと一緒にいるためにわざとF組にいる頭脳明晰、かつ様々な人脈をもつ直江大和。そして何とか賭けに勝とうと彼に迫る島津岳人。
そして強烈なラブコールを送る椎名京。
「強い人がいいわねークリスの時は負けちゃったし、今度こそ勝つ!」
そう言いながらフンフン!と腕立て伏せをしているのは川神一子。通称、ワン子である。
「強いかどうかはわからないけど・・・源さんはどう思う?」
「・・・話しかけんじゃねぇ・・・夕べ遅くてねみぃんだ。・・・多分男じゃねぇのか」
不良のように睨みながらもきっちり答える健全なヤンキーこと源忠勝。
そんな彼らの属するこの2-F組は最も成績の悪いもの(一部例外あり)が集うクラスである。
この川神学園は成績による区別をすることで競争心をつけさせ、実力で以って評価をするという少々特殊な学園であった。
その中でも直江大和を中心とする風間ファミリーなる仲良しグループがあるのだが、それは後程。
「静粛に!先生が来たぞ!」
そう言って堂々と教室に戻ってきたのはクリスことクリスティアーネ・フリードリヒ。
日本に多大な勘違いを持っている一見優秀ながらも温かい目で見られるドイツからの留学生の少女だ。
そして、その後ろから妙齢の女性、このクラスの担任である小島梅子が現れた。
「皆揃っているな。」
その手になぜか鞭(教育的指導目的)を持ちながらクラス内を見回す。今回は転入生のこともありその餌食になるものはいないようだ。
「話は聞いているかと思うが新しい転入生がこのクラスに入る。―――入ってこい」
(イケメン・・・!イケメン・・・!)
(美少女!美少女!)
静かながらもんもんと邪念が渦巻く中現れたのは、
「初めまして。今日から皆さんにお世話になる衛宮士郎です」
キャー!!!
あああああああ!!!
黄色い歓声と地獄の遠吠えで彼を迎えた。
「静かに!まったくお前たちはすぐに・・・ああ長くなってしまうな。転入生の衛宮だ。急遽転入ということでFクラスに入る。衛宮、何か簡単な自己紹介を」
半ばカオスな空気を感じ取っている士郎だが、最初の印象は大事と色々なものを飲み込んで、自己紹介する。
「名前は衛宮士郎です。得意なことは・・・料理と機械の修理。修理はよほど特殊でなければ大体は修理できる。あとは・・・まぁ色んな人の助けになれればと思います。これからよろしくお願いします」
と無難な自己紹介に笑顔を乗せる。
本人は無難なつもりだがそれだけで黄色い歓声が悲鳴に変わったが。
「イケメン・・・!待ちに待ったイケメンがこのクラスにも!」
「しかも家庭的!これは・・・いくべき・・・なの!?」
わいわいと女子生徒が華やぐ中、男共といえば怨念のようにぶつぶつとつぶやいていた。
「席は・・・川神の前が空いているな。まずはそこに座れ」
「わかりました」
そう言って彼が歩き出した瞬間、
ピン―――
と、小さな、本当に小さな緊張が走る。
(((この人できる)わ))
それに気づいたのか気付かなかったのか。彼はごく自然に席に座る。
「さて、今日のホームルームだが―――」
「はいはいはい!」
恒例の質問タイムといくのだろうがここは普通の学園ではない。
「川神流で
とワン子が川神学園のエンブレムを掲げて言った。その意味をまだ知らぬ士郎は困惑するが、
「はぁ・・・お前は変わらんな川神。だが今回のホームルームは別な者の先約があるので放課後にしろ。クリス!」
「はい!」
それまで黙って・・・いや、うずうずとしていた彼女が元気よく返事をする。
「今回のホームルームは衛宮とクリスの決闘とする。各自校庭に集合だ」
そう告げて教室を出る梅子。
「「「ええええええええーーーー!!?」」」
かくして転入早々、この学園のしきたりに巻き込まれる衛宮士郎であった。
ようやく編入です。意外とクラスの主要人物のフルネームを覚えてなくてなかなかに大変でした。そして対戦相手を選ぶのも。もっともっと書きたいものがあるけれど今の自分ではこれが限界でした。