真剣で衛宮士郎を愛しなさい!   作:Marthe

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見てくださっている皆様おはこんばんにちわ。もとからあった腰痛が強くなってきておじいちゃんの如くなっている作者でございます。

前回は説明ばっかりの描写で申し訳ありませんでした!もうね。頑張って省略しようとしたけど、あれも説明しなきゃ…これも説明しなきゃと積み重ねに積み重なってしまってあんなことになってしまいました…。

そして、前回のフラグですが、回収しないわけじゃないんですが回収はかなり先になります。それと揚羽との契約の話でちょっと歪になってしまったのかな?戸籍ねーのになんで学校いけたん?っていう質問がありました。

過去の話しを読み返してもらうとわかると思うのですが、戸籍や自宅や敷地の所有権などの最低限は魔術で誤魔化して取得しています。ですが、揚羽やマルギッテが言っていたように詳細な経歴がない。つまり中抜けやないかコイツ、怪しいで!と士郎の雑(本人としては精一杯)なところで悶着していた感じですね。

今回も少し時間が飛び、林冲と士郎がメインです。ほのぼの(女難の相は発揮されたまま)になると思いますので安らげたらなぁと思います。interludeも必見なのでよければ楽しんでいってください!


林冲の心

シュッ!

 

木の上から放たれた矢が正確に獲物の急所を射抜く。矢で貫かれた野生の鹿は、悲鳴を上げる間もなくビクリと痙攣し、倒れて動かなくなった。

 

ガサガサ

 

鹿が動かなくなったのを確認して雑木林から現れたのは黒い中華風の服を着た女性、林冲。

 

「成功だ!」

 

彼女の嬉しそうな声にシュタッと降り立つ影。その正体は木の上にて気配を殺していた射手。衛宮士郎だ。

 

「今日も一発で仕留めた。士郎は本当にすごい」

 

早速鹿を解体しながら彼の腕を褒める林冲。しかし彼は特に誇った様子もなく、

 

「これくらい大したことない。最初から中るのが分かってるんだから外すわけない」

 

と黒い弓を片手に何でもないように言う彼だが、当然その言葉はおかしい。どこの世界に最初から的に中ることを確信し、あまつさえ本当に的に寸分違わず的中させる者がどこにいると言うのか。

 

しかし彼はそれをやってのける。平然と緊張も不安も感じることなく彼はそれを淡々とこなす。この辺りを森林に囲まれた林冲の知る隠れ家で生活を始めてから、野生動物から川魚に至るまで、一矢たりとも彼は外していない。

 

気になった林冲は、なぜそんな正確に射ることが出来るのかと聞いたが、彼が答えたのは先ほども言った通り、中るのが分かっているからそこに矢を放っているだけとしか答えない。とても常人には理解できないがそれが彼の真実らしく、

 

そんなに聞かれてもこれ以上答えようがないんだと困ったように士郎は言った。

 

「解体、手伝うよ。・・・なかなか立派なものを仕留められた」

 

そう言って血にまみれるのも構わず、二人で自分たちの糧となる命に祈りを捧げて解体を始める。そして取れた戦利品を近くを流れる川に持っていき、血抜きと体に着いた血と汚れを洗い流す。

 

なぜこんな山の中で半自給自足のサバイバルを行っているのかというと、彼こと衛宮士郎が中国の傭兵、梁山泊と曹一族にその身を狙われることになってしまったからだ。

 

林冲は梁山泊から派遣されてきたのだが、彼の力量を測るため仲間三人と挑んだが惨敗。彼を予言の人物と認め、梁山泊に迎え入れようとするが彼はその申し出を拒否した。

 

しかし、梁山泊としては強制的に連れ去るつもりはないらしいのだが、彼を狙うもう一つの傭兵集団、曹一族は梁山泊にとって長年のライバル。彼らに士郎を取られるわけにはいかないと、

 

林冲は彼の護衛を申し出る。さらに最近、彼の住む川神に怪しい動きがあり、そこに中国の傭兵とМという謎の人物が関わっているということで、士郎は事件解決の一手として、己を囮にした作戦を提案。

 

結果、林冲と二人、この山の中の隠れ家で生活をしているわけだった。

 

「士郎はなんでもできてすごいな。私なんか槍を振るうことしかできない・・・」

 

汚れを落としながら肩を落とす林冲だが、

 

「そんなことはないさ。林冲の腕前は超一流だ。俺は所詮二流止まり。一つを極められなかったから沢山のことに手を伸ばしたに過ぎない。俺には林冲こそ、すごい人だと思うよ」

 

そう言って彼は笑顔を向ける。

 

「・・・ッ!」

 

その笑顔に林冲は胸が高鳴るのを感じ、慌てて目をそらす。

 

(その笑顔は反則だ。それに・・・)

 

数日のサバイバルを経て、彼は林冲に心を許したのか年相応の言葉使いで話すようになった。

 

最初は相手を挑発し、動揺を狙うような巧みな話術の口調だったのが、今自分に向けられているのは年相応の少年のそれであり、時折浮かべる彼の笑顔はとても綺麗だった。

 

「これで内臓系もよし。折角の命だ。無駄にしないようにしないとな」

 

そう言って彼は汚れの落ちた黒いズボンとブーツ、それに両腕の肩から先がない黒い皮鎧を身に付ける。

 

いつもの学生服や私服ではないのは、いつ襲撃されてもおかしくないため。自身を守るためなら、宝具級の結界の張られた屋敷から出なければいいが、それでは事件解決にならんということと、

 

自分が川神に居続ければ曹一族はずっと川神に蔓延ることになる。それを解消するための作戦として彼は川神を出てここにいる。

 

「血抜きはまだ時間が掛かるから高い所に移して・・・林冲、先行くぞ?」

 

「あ、ま、まって!私もすぐ行くから・・・」

 

ぼーっと彼を目で追いかけていた林冲はバシャバシャと残りの汚れを落とし、慌てて後を追う。

 

この数日で襲撃はまだ一度もない。しかし、ここを嗅ぎつけられるのは時間の問題だろう。ここには彼が張るような人払いの結界は施されていない。

 

(できればもっと続けたいな・・・)

 

サバイバルは何度も経験したが、こんなにも頼もしく、安心できる男が傍に居てくれるのは初めてだった。いつかは終わりが来るだろうが少しでも長く、彼と居たいと林冲は思うようになっていた。

 

「肉はこれで良し。魚もそろそろ焼きあがるな。林冲、サラダはどうだ?」

 

「こっちも大丈夫だ。士郎が言う通りあく抜きや臭み取りもできた」

 

「米も・・・炊きあがったな。よし、メシにしよう」

 

流石梁山泊、とでも言うべきか、最低限の暮らしができる家具家電は取り揃えてあった。そのおかげで特に不自由することなく生活が出来ている。

 

「それじゃ、いただきます」

 

「いただきます」

 

二人で手を合わせてサバイバルとは思えないご馳走を口にする。

 

「美味しい・・・!」

 

「ああ。美味いな。ジビエは久しくやってなかったからな。うまくいってよかったよ」

 

そう言って彼はご飯とジビエ肉、山で採れた山菜を口に運ぶ。生憎スープまでは作れなかったのでインスタントだが、それでも半自給自足ということを考えれば豪華な食事だ。

 

「最初士郎が慣れた手さばきで鹿を解体していたのには驚いた。元々経験があったのか?」

 

林冲の問いに士郎は昔を思い出すように目を閉じる。

 

「そうだな・・・昔は色々な所に行ったからな。何もない紛争地帯から、ジャングルの中にある民族のもとまで・・・とにかくそこら中を行き来した」

 

懐かしそうに彼はそう口にした。

 

「それは・・・前の世界で・・・か?」

 

控え気味に林冲は問う。彼の秘密はもう聞いている。本来こことは別の世界から来た魔術使いだと。そんな彼だが未だに分からないことがいくつかある。

 

「そうだな。正義の味方としてあらゆる所をある二人と回った。俺は別に食事が些細なものになっても良かったんだが・・・」

 

そう言って彼は、もう会うことが出来ないだろう彼女達の言葉を思い出す。

 

 

 

『シロウ!今日の食事はなんですか?まさか、またカエルの脚だのといった雑なモノではないでしょうね!!』

 

『セイバー。貴方もサーヴァントなのですから食事は必要ないのでは?』

 

『ライダーは黙っていてください。いいですかシロウ。兵糧の有無は士気に直結します。明日も過酷な場所を越えねばならないのですから・・・シロウ!聞いているのですか?』

 

『・・・貴女が美味しいものを食べたいだけではないですか』

 

『なにか言いましたかライダー!』

 

どうしても場所と状況によっては、雑にならざるをえない食事にもの申すセイバーと、さらっと毒を吐くライダーを思い出してクスリと笑ってしまう士郎。

 

 

「む・・・なにか変なことを言ったかな、私」

 

「いや、違う違う。懐かしいことを思い出しちまって。ただの思い出し笑いだよ」

 

そう言って彼は思い出をそっと心の奥にしまい込んで目の前の食事にてをつける。

 

「正義の味方か・・・士郎は本当にそれを目指して行動していたんだな」

 

これも前に川神に居たとき彼から聞いた話しだ。夜、トラウマを思い出してしまってなかなか寝付けない彼女に、士郎は自分の経験した旅の話を子守歌変わりに傍でしてくれていた。

 

「ああ。正義の味方として、とにかくがむしゃらに走った。ついてきてくれた二人に悪いとは思ったけど。彼女達が居なかったら救えなかったことが多くあってな。・・・ほんと、頭が上がらない」

 

彼女達。その言葉に林冲はむっとしたがもう会えないのだからそれに腹を立てるのは可哀想だと飲み込んで、気になったことを聞いた。

 

「士郎は前の世界で沢山のことを覚えて活動したみたいだけど・・・今いくつなんだ?」

 

そう。彼の経験と過去の行動は、18年の月日などとっくに過ぎていなければおかしい。逆算したらそれこそ生まれてもいないことになる。

 

「ん?えーっと今年で29だな」

 

「29!?」

 

自分より年上だとは思っていたがまさかそんなに年上とは思わなかった。

 

「全然見えない・・・」

 

「あー・・・実はこの世界に来た時肉体年齢だけ若返っちまって・・・なんでかは聞かないでくれよ?俺もわからないから。身長がそのままだったのは嬉しい誤算だったけど」

 

実は士郎。元々の世界で18歳だった頃、身長が低いことがコンプレックスだったりする。正しい魔術の鍛錬を遠坂凛に教わってから、ぐんぐん伸びたことで、長年続けていた間違った魔術鍛錬(自殺行為)が体に負荷をかけて、身長が伸びづらくなっていたのは悲しい現実だった。

 

「そうか。だから士郎は学校に通ってるのか」

 

「そういうこと。戸籍上は18歳だからな。義務教育じゃないとはいえ高校に通っていないのは体裁が悪い。それに、この世界が異世界と分かったから、色々知識を集め直さないといけなかったからな」

 

そう言って残りのご飯を掻っ込み、おかずも全て食べてしまう。

 

「さ、食べ終えたら少しゆっくりして寝よう。昔話はまた今度でもな」

 

日は既に沈み、綺麗な星空が浮かんでいる。今日もまた襲撃はない。もちろん夜闇に紛れてくることも考えられなくはないが、林冲の仕掛けたトラップと、士郎の仕掛けた敵意あるものに対して知らせる仕掛けも施してある。

 

気は抜けないが、何もない状態よりは気も体も休めることが出来るだろう。

 

(俺の予想では明日あたりか・・・上手くいけばいいが・・・)

 

食器を片付けながら襲撃の予想を立てる。川神で自分を嗅ぎつけた期間を考えればもうすぐ気づくことだろう。

 

(チャンスは一度だが・・・まぁ上手くやってみせるさ。・・・・それよりも)

 

士郎は最近新しくできた(誕生した?)不安に想いを馳せる。

 

(頼むから余計なことしないでくれよ・・・)

 

士郎は懸命に、川神に残してきた問題児が何事も起こさないように願っていた。

 

 

 

―――願いはしたが。それが叶うとは限らないのだが・・・

 

 

 

 

 

 

――――interlude――――

 

士郎が川神を離れてから、川神には実は大きな影響が出ていた。別に悪いものではない。むしろ武道が盛んな川神としては嬉しい影響なのだが・・・

 

 

「やべぇ!起きろゲン!次は『体育』だッ!!!」

 

ガクトが次の時間の科目が体育だと知って思わず近くで寝ていた源忠勝を叩き起こす。普段の彼なら逆にキレてもおかしくないのだが・・・

 

「っんだとッ!?なんでもっと早く起こさねぇんだ!!他の奴らは!?」

 

「とっくにグラウンドに行っちまってる!急げ!もし遅れでもしたら何させられるかわからねぇ!!!」

 

ガクトの切羽詰まった声に忠勝も鬼気迫る勢いで着替えて廊下を全力疾走する!

 

「あと何秒だ!」

 

「見る暇なんかあるかよ!!」

 

とにかく全力で走る。体育。それは恐怖の時間。新しく学園に現れた同級生?によってそれまでの体育とは激変してしまった。

 

「コラ!島津に源!廊下を走るなッ!」

 

鋭い声が目の前にいた女性、担任の小島梅子から発せられる。だが・・・

 

「すんませんッ!止まれないっす!!!」

 

「鞭打ってくれていいんで見逃してくれ!!!」

 

教育的指導として彼女はよく鞭を振るう。そもそも彼女自体、小島流鞭術の使い手という一級の武芸者なのだ。その鞭は問題児を指導するだけでなく、暴力に反対する親たち、所詮モンスターペアレントすら、危ない道に覚醒させてしまうほどのものなのだが、

 

二人は鞭を覚悟でそのまま全力疾走する。

 

「いい覚悟だ!ならばくらえ!」

 

バチン!ベチン!

 

鞭が走り、二人の体を打ち据える。だが二人は意に介さず疾走を続ける。

 

「痛てぇ!」

 

「こんなもんアレにくらべりゃましだろ!とにかく走れ!!!」

 

しっかり鞭を食らって彼らはグラウンド(死地)へとひた走る。それを見た小島梅子は複雑な表情で、

 

「逞しくなったものだ。・・・逞しくなっているんだが・・・」

 

どうにもここ最近、武道の家系が多い女子はともかくとして、特に男子たちが恐ろしく鍛え上げられている。ただ、ちょっと行き過ぎな感じもしなくもない梅子はため息を吐く。

 

「そうか。次は体育か。それで鬼気迫っているのだな」

 

最近名物になりつつある川神学園の体育。それにもう一度ため息を吐いて梅子は呟く。

 

「いい奴だ。悪い奴ではない。のだがなぁ・・・衛宮もとんでもない人物を紹介してきたものだ・・・」

 

彼の経緯は学園にも知らされている。被害を出さないようにと表向きは干渉しない構えだ。なのだが、

 

「まぁ悪いことではない。強くなればそれだけ被害は小さくなるのだからな」

 

そう言って小島梅子は次の授業に備え、職員室へと向かうのであった。

 

 

 

 

~~~~グラウンド~~~~

 

「ッシャア!間に合ったッ!!!」

 

「ギリギリだが問題ねぇはずだッ!!!」

 

ズシャア!!!と二人がグラウンドに飛び込んでくる。

 

荒い息を上げている二人だが、グラウンドにいる他の生徒たちもまだ授業が始まっていないというのにみんな汗をかいて息が上がっている。

 

準備運動をしていたのだが、はっきり言って準備運動どころではない。でもこうでもしなければ現在の体育についていけないので、皆必死である。

 

キーンコーンカーンコーン・・・

 

授業開始の鐘がなる。それと同時に、

 

ガンッ!!!

 

何かが強く地面を叩く音が鳴り響く。

 

「セイレェェツゥ!!!!」

 

その言葉を合図に一糸乱れぬ動きで隊列を組む2年生。

 

バッ!と集まり均等に間隔を一瞬で取り直立するその姿はもはや軍隊かなにかだ。

 

「ふむ・・・計算通りです」

 

ぶっとい腕に巻かれた時計(九鬼の特別製)としっかり準備運動を行ったであろう一同を見て彼はそう呟いた。

 

「完璧だ・・・では、体育(訓練)を始めるッ!まずはぁ・・・腕立て伏せ各自50回ッ!その後は個人個人に指導致します!!!」

 

赤髪を刈り上げたガチムチのその男は、なんか字がおかしいような気がするけどもとにかく丁寧に指導をしてくれる。

 

「ルゥー先生!!それでよろしいですかな!?」

 

「う、うん。一応ボクも回るからネー!ムリはしないよーニ!」

 

そうしてまず腕立て伏せが一斉に始まる。

 

1!2!3!

 

声まで乱れなく上げる生徒達。いつもはいがみ合うF組とS組すら乱れぬ統率の取れた動きである。

 

「素晴らしい!!!この熱気!そして躍動する筋肉!!!良い調子です!」

 

槍を(なぜか)持って腕立て伏せをする一同の間を回るその男は、感嘆の声を上げてその光景を見る。だが、

 

よくよく考えてほしいのだが、腕立て伏せ50回というのはそれなりに鍛えていても結構キツイ。故に、乱れぬカウントについてこれなくなるものが途中で出てくる。

 

「20・・・だめだっ!」

 

ゴシャッ!とヨンパチが崩れ落ちる。それを聞きつけたガチムチは、

 

「おお!よくぞここまでがんばりましたな!!50回には到達できませんでしたが貴方の地力を考えれば!十分頑張ったと言えるでしょうッ!!」

 

そう言って責めることはしない。このガチムチ。かなりキッツイトレーニングを課してくるのだが、それが出来ないからと言って責めたりは決してしない。

 

「じゃ、じゃあ・・・」

 

「ではぁ!!貴方は他の方々より先行して足の筋肉を鍛えましょうッ!!スクワット20回ッ!!ゆっくりと息を吸い!ゆっくりと息を吐く!これが重要ですぞ!!!」

 

「ひ、ヒエエエェェ~~・・・・」

 

悲鳴を上げて今度はスクワットを始めるヨンパチ。

 

「俺は体育会系じゃねーんだ、っよ・・・」

 

ゴシャ!

 

今度はスグルが倒れ伏す。それをガチムチはすぐさま発見し、

 

「良し!実にいい!!貴方は筋肉だけでなく頭脳で!!己の体の限界を超えたのですっ!!さあ!貴方はお腹周りの筋肉が不足していますッ!!腹筋20回!関節を壊さないよう寝転がって自分のお腹を見るようにッ!体を起こす必要はありません・・・覗く程度でよろしいっ!」

 

「だから地味にキツイだっての・・・」

 

とはいうものの決してできないことを彼は課さない。なので渋々ではあるが言われた通りにやるスグル。

 

「30・・・う~ん・・・」

 

ゴシャ!

 

モロが崩れ落ちる。当然ガチムチはすぐさま彼の元に行き、

 

「素晴らしいッ!!師岡殿はマス・・・ああいや、士郎殿から!!体を動かすことが苦手だと聞いておりましたのに30回も!順調に腕の筋肉が発達しているようですッ!!!」

 

「あ、ありがとうございます・・・」

 

褒められて悪い気はしないモロ。無理やりやらされるなら嫌悪感を出すだろうが、このガチムチは絶対に強要しないので彼も嫌いにはなれない。

 

「失礼・・・うむ。師岡殿は実によく頑張りました!!ですが無理はいけません!!折角鍛えた筋肉が傷んでしまう・・・師岡殿は30秒ほど休み、福本少年と同じスクワットを10回ッ!!目指してくださいッ!!」

 

「は、はい・・・」

 

こうしてきちんと個人の限界値を把握・・・計算し、休息も与える。とにかく効率よく、そして無駄なく彼は基礎トレーニングを指示する。

 

そうして個人個人を回って(もちろん女性も)基礎トレーニングを行う。実はこのガチムチ、女性からも人気があり、筋力トレーニングだけでなく、女性が気にする腰のくびれを作るためのトレーニングなども熟知しており、筋肉ではなく、体型維持したいのだと言えばそれに対応するトレーニング法を指導してくれる。

 

そして何度も言うが決して無理はさせない。なので、

 

「よ!ほ!は!」

 

ギュンギュンと一子が扱えるようになった気も使って体に負荷をかけて基礎トレーニングをするが、

 

「いけませんッ!!!一子殿!!それは貴女に無駄な負担をかけていますッ!!貴女は実に素晴らしい土台があるのですから冷静にッ!!冷静にゆくのですッ!!師岡殿と同じく30秒!!休息し今度はゆっくりと!!筋肉だけではなく頭脳も使って!!体を鍛えるのですッ!!」

 

「あう・・・はい」

 

このように逆に無理をしている者を発見するときちんと止めてくれる。突如現れたこのガチムチ男。見た目は意外と渋いイケメンで、その容姿も女性から人気がある。ただしガチムチの筋肉野郎なのだが。

 

「なんでッ!あの人はッ!筋肉でモテるのに!俺様は!ダメなんだよッ!!!」

 

同じマッスルタイプのガクトは、自分よりも物凄い筋肉を持つ彼がなぜ怖がられない理由がわからず、嫉妬を露わにする。

 

「あの人意外と紳士だからな!この前も!貧血で倒れそうになった女子を助けたり!してたぞ!」

 

大和も流石、京と百代にトレーニングメニューを課されていただけあって結構必死についてくる。

 

「しかもあの人結構頭もいいよね・・・特に数学とか」

 

休息を指示されたモロはさっきの授業を思い出す。ちょうど前の授業が数学だったのだが、このガチムチ渋メンは、体育以外の授業時にはきちんと制服(特注品)を着て生徒に混ざり、好奇心旺盛に分からない場所を聞いたり、この場合はどうするのかなどの質問を積極的に行う。

 

また、放課後などは体育会系の部活動に指導をお願いされたり、武道系の部活に呼ばれたり。結構引く手数多の人気人物である。

 

ただし、彼はあまりダラ気ているのを見ると、急に言葉少なくなり、教育的指導(筋肉)を実行に移すので割と注意が必要である。

 

ちなみに、最初の犠牲者は日本史担当の綾小路麻呂。平安時代の話しかしない彼に、なぜそこしかやらないのかと質問をぶつけ、平安時代を布教したいからという彼のエゴが発覚した際、

 

鉄心が思わず戦闘態勢で飛び込んでくるほどの怒気を発して、無言のまま麻呂を担ぎあげて鉄心と共に職員室に強制連行したことがある。

 

なので、今の日本史担当教師は別な人物に変わっている。そういう実直というか曲がらないというか、とにかく品行方正で、挫けず、阿らない性格もあって男女問わずとても人気のある人物である。

 

 

 

そうして放課後。大和から連絡を受けた風間ファミリーは秘密基地に集まっていた。

 

「くーっ!今日もきつかった~・・・」

 

「本当だねぇ~・・・」

 

ぐったりとしたガクトとモロ。モロはともかく普段から鍛えているガクトまで疲労感を出しているのはここ最近みる不思議な光景だ。

 

「みなさんお疲れのようですね・・・」

 

「あの体育すごいからなー」

 

「でも確かに体が鍛え上げられてるのを感じるぞ!」

 

「そうなのよねー川神院にもたまに来るんだけど、あの人すっごく強いの!訓練生20人ぐらい一斉に相手して一瞬で倒しちゃうんだもの」

 

「・・・図書室にもたまにくるよ。なんか難しい本読んでる」

 

「まじか!強い上に頭もいいとか士郎みたいじゃねぇか!」

 

「ちょっと暑苦しい性格の人だけどね・・・」

 

「流石士郎の紹介してきた人って感じだな。そういえば姉さん、士郎は?」

 

招集に唯一来なかった士郎のことを百代に聞く大和。

 

「あいつかー?今頃、山の中できれーなねーちゃんとイチャイチャしてんじゃねー?」

 

そう言ってぶすーっと唇を尖らせる百代。なにか知っているようだが、百代は士郎の家に行った日からこうしてむつけているのだ。

 

「そういえばモモ先輩、士郎の秘密暴くって言ってなかったっけ?」

 

キャップの言葉に百代は今度は困ったように、

 

「聞いてはきたんだがな?まだちょっと言えない」

 

と、百代は頭をガシガシと掻いて、

 

「でももうすぐ言えるようになると思うぞ。ちょっと面倒ごとに巻き込まれてそれの対応中だ」

 

「確かに、メールでしばらく来れないってことと、何かあったら、あのレオさんを頼れって連絡は来たけど・・・」

 

うーむと悩む大和。

 

「ねぇねぇ大和、今日はなんの招集なの?」

 

それまで静かに気のコントロール鍛錬をしていた一子が聞く。

 

「ああ。学園の依頼を落としてきたんだ。内容は麻呂の犬探し」

 

「麻呂・・・まだ学校に居たんだな」

 

「レオさんが連れて行ったもんね・・・」

 

噂では解雇されたとか、懲罰室みたいな所に入れられてるとか様々な噂が立っている。

 

「そんで?依頼料は?」

 

「一人頭食券15枚。計150枚の依頼だ」

 

「随分高値で落としたなー!」

 

「最大じゃない?」

 

学園の依頼としてはかなり高額な依頼だ。

 

「最初の時点で高額だったんだよ。それにS組代表が参戦しなかったのもある」

 

「へぇ、珍しい。そんで?どうするんだ?」

 

「とりあえず役割分担していこう。士郎の分に関しては要相談ということで」

 

「ま、士郎なら要らないっていいそうだけどな」

 

「衛宮定食人気だからね・・・」

 

「そうそれ!俺まだ食ってないんだよー俺が帰ってきてから士郎いなくなるし!」

 

そう言って悔しがるキャップ。

 

「・・・。」

 

だが一人、百代がなにか思案顔だ。

 

「姉さんどうしたの?」

 

「いや、たいしたことじゃないんだが・・・大和、最近の噂聞いてるか?」

 

と百代が切り出した。

 

「怪しい人が出てることと、ならず者の?」

 

「そうそれだ。多分、依頼料が高いのは危険性があるからじゃないか?」

 

「・・・確かに。危険手当ってことかも」

 

「そうか。一応拒否してもいいことを言われたからそうかもな。みんな、どうする?」

 

大和がみんなに問うが、特に拒否する人間はいなかった。

 

「よし。なら十分注意して探そう。深追いは無しだ。じゃあ分担は―――」

 

大和を中心に役割分担をしていく。探すのは日中のみということで役割分担がされていく。

 

その姿をそっと見守る人物が一人。

 

(これは、マスターの懸念が当たりそうですな・・・)

 

 

万が一、彼らが巻き込まれそうになったら―――

 

 

そう彼に士郎は頼んでいたのであった。

 

――――interlude out――――

 

 

 

 

所変わり士郎と林冲は着替えて寝床に入り、眠っていたのだが、

 

「ルオ・・・ルオ・・・」

 

「・・・・。」

 

また彼女が涙を流して悪夢にうなされていた。それを見た士郎は、

 

「林冲。林冲・・・」

 

肩を揺らして優しく起こす。片手は彷徨っていた手を握って。

 

「・・・あれ?私・・・」

 

「悪夢にうなされていた。起こしてすまない」

 

そう言って彼女の手を優しく両手で包む。

 

「ううん・・・ありがとう」

 

そう言って涙を拭う林冲。その様子をみて、

 

(これは、話しをした方が良さそうだな・・・)

 

「林冲。君は知らないかもしれないけど、度々こうして悪夢にうなされている」

 

「・・・。」

 

「よければ話してくれないか?何がしてやれるか分からないけど、話すだけでも人は楽になれる」

 

それは彼が正義の味方として、そしてこの世界にきて改めて学んだことだ。

 

人はとても脆い生き物だ。何かの拍子に心が壊れてしまうことは当然のようにあるのだ。彼女はその典型と言えるだろう。何かの心の傷が癒されぬまま他の感情で必死に蓋をしている。

 

一時はいいかも知れないが、そのままでは徐々に傷が開いていく。いずれ崩壊してしまう。その前に、何らかの救いが彼女に訪れなければならない。そう、士郎は思った。

 

「わかった。実は・・・」

 

そうして林冲は語りだした。幼少期の梁山泊でのこと。親友のこと。亡くしてしまったこと。そして、眼を託されたこと。内容はとても辛いものだった。

 

(俺も・・・こうなっていたのかもな・・・)

 

自分には藤村大河がいた。そしてあの災害の時の記憶はそれほど残っていない。死の充満した匂いと助けを請う黒い何か。黒い太陽。そして自分を見つけた衛宮切嗣の安堵の顔。それくらいしか彼には残っていない。

 

親がどんな人だったのかも、どんな風に生活していたのかも、彼には残っていない。それはある意味救いだったのかも知れない。大事な人を目の前で失う恐怖も覚えていないのだから。

 

そして切嗣は最後に自分の願いを士郎に残した。それ故に士郎は痛みにも恐怖にも気づかず走り続けられた。

 

しかし彼女は違う。目の前で親友を引き裂かれ、その記憶()をずっと刻み付けられたままだ。

 

(なにをしてあげられるんだろうか――――)

 

方法は三つしかない。忘れるか、乗り越えるか、それを身の内に抱えるか・・・いずれも彼女しか彼女を救えない。

 

(そう・・・だな・・・俺も)

 

衛宮士郎に藤村大河が居たように。自分が藤村大河のような存在になれないだろうか?

 

それは風間ファミリーが自分を案じてくれるように。自分にとっての彼らのような存在になれないだろうか?彼女にもそういう存在がいればいいのではないだろうか。

 

(それが当たりかどうかわからない。自分なんかがなれるかわからない。けど、)

 

きっと、なにもしないよりいいはずだ。

 

「林冲はこの事件が解決したら梁山泊に帰るのか?」

 

「え?」

 

彼の問いに林冲は真っ白になった。

 

「梁山泊が家なんだろう?これが終わったら帰って、また傭兵やるのか?」

 

「だってそれしか私には――――」

 

ない。そう言おうとしたが言えなかった。だってこの暖かさを知ってしまった。このあり方を知ってしまった。

 

「頼みがあるんだ」

 

彼はそう言った。

 

「俺は自分を救いの勘定に入れられない。本当なら人はみんな自分が一番大事だ。なのに俺は、自分より他人の方が大事だって思っちまう。体がそう動いちまう」

 

それは衛宮切嗣が残した願い。皆が幸福でありますようにという美しい願い。なにも無くなった『士郎』というガラクタに宿った唯一の行動理念。

 

「でもさ。この世界に来て―――いや、前の世界でもそうか。俺が居なくなると悲しむ人がいるんだ。でも俺は自分を守れない。だから―――」

 

俺を守ってくれ――――

 

それが彼が初めて口に出した新しい願いだった。

 

壊れてしまった自分はもう直せない。だから彼女に守ってもらう。

 

卑怯だなと思った。彼女を利用している気がする。でもきっとそうじゃないのだ。誰かが誰かを守る。その誰かがまた別な誰かを守る。そうして行ったらきっと―――

 

「ずるいな士郎は・・・」

 

そっと自分の手を握ってくれていた手に自分の手を重ねる。何度戦ったんだろう。何度傷ついたんだろう。その手は傷だらけで、暖かった。

 

「わかった。士郎が士郎を守れないなら。私が士郎を守る」

 

「ありがとう。俺は林冲を守る。仲間を守る。大切な誰かを守る。だから、頼んだぞ」

 

それはきっと呪いだ。切嗣(じいさん)が衛宮士郎に残したものと同じだ。でも、それで彼女が救われるのなら―――

 

 

―――――その約束は、この先彼が果てるまでずっと守られる約束。少しずつ変わってきた衛宮士郎の新たな形。そして林冲という少女に宿った新しい願い。




投稿がおそくなりすみませんいかがだったでしょうか?キャッキャウフフしてたでしょう?(ニチャァ)

赤髪の渋メン一体何ダスなんだ・・・まぁカルデアのマスターの皆さんはすぐにわかると思いますが(笑)彼の登場も最初から予定に入っておりました。

所で、皆さんはマジ恋のアニメは御覧になったことありますか?見てない方は是非最初と最終話だけでも見てみてください。川神の人間がいかにスーパー川神人なのかわかりますよ(白目)ちなみにまゆっちはライフルの弾丸を目の前に銃口がある状態から回避します。ら〇ねーちゃんよりすごいです(理解不能)

この渋メンを書くにあたり史実を色々調べたんですが…なにこの戦闘民族って感じです。住民の十倍奴隷抱えてる!→反乱されたらやべぇ!→一人当たり十人分強くなればいんじゃね?(意味不明)とか、渋メンが殺された!→野郎ぶっ殺してやらぁ!(集まったの1万人)→敵30万人→大勝利!!(もう意味が分からないよ)

興味ある方は調べてみてください。ちなみに女性もとんでもねーです(もうこいつらなんなの…)

長くなりましたが次回もよろしくお願いします!
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