真剣で衛宮士郎を愛しなさい!   作:Marthe

24 / 127
皆さんはこんばんにちわ。感想が筋肉してて大変嬉しい作者でございます(笑)

彼の来た経緯に関してはしっかりと書きますのでもう少しお待ちください。私個人の考えなんですが、この渋メンは、某買い物王みたいに自分の名前を隠すどころか、むしろ名乗り上げると思うのです。でもそんなこといきなりしても、コイツなにゆうとるん?ってなっちゃう気がするのでもう少し、隠させてください。

今回は曹一族との決着。そして麻呂の犬探しに奔走するファミリーを書きたいと思います。ではよろしくお願いします。


守るべきもの

「ん・・・」

 

チュンチュンと鳥の鳴く声と妙な重量感に士郎は目を覚ました。

 

「ふぁ・・・なん・・・」

 

だ。と声を上げようとしてぼんやりとしていた頭が突然覚醒した。

 

「Zzz・・・」

 

黒髪の女性が。自分の上に乗っかっていた。

 

「・・・。」

 

辛うじて動く首を横に振り、隣のベッドを見る。

 

「・・・なんでさ」

 

隣のベッドは空だった。確かに。夜少しばかり話をした。だが決して彼女がこんな行動を取る内容ではなかったはずだ。

 

まるで眠る自分を上から覆うように。もう一枚布団を掛けるように。がっしりと自分に抱き着いて眠る女性、林冲は実に幸せそうに寝ている。

 

「あー・・・」

 

今年で29になる彼であるが、彼だってれっきとした男である。人並に三大欲求は存在する。そして、この状態はいささかまずい。

 

自分の胸板に押しつぶされた、女性特有の胸部装甲に目が行きそうになる。それを全力で振り払って、

 

「林冲。林冲」

 

このままでは非常にまずいので必死に彼女に声をかける。とにかくこの状態から脱せねば。

 

「ん・・・」

 

必死の呼びかけに彼女は答えてくれた。まだ寝ぼけまなこだが、目をくしくしと擦り、

 

「・・・。」

 

「まって、林冲。林冲!」

 

もぞもぞとちょうどいい場所を探してまた彼女は寝入ってしまった。

 

 

――――結局、必死に呼びかけはしたものの、気まぐれな猫のように林冲は彼の上でさらに1時間ほど眠り続けていたのであった。

 

 

 

 

「くあぁああ・・・」

 

朝日を浴びて、固まってしまった体をグイグイと伸ばす。余程がっちりホールドされていたのか、関節がボキボキと音を鳴らす。

 

「林冲ーそろそろ朝飯にするぞー」

 

未だ隠れ家の中から出てこない林冲に声をかける。ひょこりとのぞき込めば、こんもりと盛り上がった布団が一つ。

 

「・・・・。」

 

ようやく目を覚ました林冲は、無意識とはいえ随分と大胆なことをしていたことに気づき、こうして布団を被って亀のようになってしまった。

 

「やれやれ・・・」

 

これはしばらく籠城の構えだろう。自分はもう気にしていないのだが、女性の彼女からすれば激しい羞恥心に駆られている、といった所だろう。

 

「あー、先に水浴びしてくるから、落ち着いたら出てきてくれよー」

 

と声をかけるが返事はない。流石にまた眠るほど彼女は気の抜けた女性ではない。そう信じて士郎は近くの川原へと向かった。

 

バシャバシャと顔を洗い、持ってきたタオルで拭う。季節は夏になろうとしているが、川の水は冷たく、木々が生い茂るこの場所は、空気が澄んでいてとても気持ちいい。

 

だが、

 

「・・・。」

 

ピンとセンサーに反応が走った。彼の予想通り、追手はこの場所を嗅ぎつけたようだ。

 

気配探知の結界はかなり遠い場所から仕掛けている。なので今すぐ襲撃されるわけではないがすぐにやってくるだろう。

 

すぐに踵を返して隠れ家へと向かう。扉を開けて装備を整える。

 

「林冲。準備はできてるか?」

 

至極真面目に振り返らず彼は問う。

 

「もちろんだ。いつでも戦闘に入れる」

 

早朝の雰囲気は消失し、彼女は中華風の服に槍を装備し、戦闘準備万端といった所だ。

 

「それは重畳。では、決着をつけるとしよう」

 

バサリと赤い外套が翻る。この世界に来て初めて装備する彼の象徴。その姿に林冲は僅かに目を見開く。

 

「初めてみる装備だ」

 

「なに、個人的な趣向でね。私がするべき戦いにしかこれは纏わないことにしているのだよ。・・・来たようだ」

 

ガサガサと草をかき分ける音がする。

 

「ガスマスクは?」

 

「必要ない。私にとって視界は重要なのでね。それに、このまま籠城するつもりもない」

 

魔力が体を走る。眠っていた回路に魔力を叩きこんで覚醒させる。予想が正しければ、親玉が出てくるはずだ。油断は命取りになる。

 

ガシャン!

 

ガラスを割って何かが投げ込まれる。それを合図に二人は隠れ家から飛び出す。

 

晴天の青空の元、激闘の火ぶたが切られた。

 

 

――――interlude――――

 

所変わり川神。こちらでは風間ファミリーが、学園の依頼をこなすべく市内を駆けまわっていた。

 

「いたぞ!あそこだ!」

 

クリスが依頼の目標である、やたらと個性的な犬・・・綾小路麻呂の犬を発見する。

 

「そこ!」

 

京が装備していた弓で矢を放つ。が、

 

「ワフェン~~!」

 

なんと、空中で体を捻って矢を回避する。しかもビルとビルの間の壁を蹴って屋上まで駆け上がる。

 

「ちくしょう、またか!キャップ!そっちは!?」

 

京の矢を回避するどころか恐ろしいまでの身体能力を持つこの犬。見つけることはそこそこ難しくない・・・どころか、こちらをおちょくるように姿を見せることがままある。

 

だが、余程特殊な訓練を受けているのか、犬の癖にやたらと逃げるのが巧い。屋上に待機していたキャップに連絡を取る大和。

 

『ビンゴだ!けど、あ!この!ぐは!』

 

喧嘩にも滅法強いキャップでさえもあしらってしまう。戦闘能力までもつこの犬はここ数日、大和率いる現地部隊をことごとく撒き、挙句の果てには島津寮に逆に潜入してきたり(大和とキャップがボコられた)

 

彼らの怒りも大分頂点に達している。

 

「この先だ!」

 

「わか・・グエ!」

 

木材の間をすり抜けようとした大和を踏み台にしてクリスと京、そして百代が木材を飛び越える。

 

「痛ってー!なにすんだ!」

 

シャキン!

 

由紀江の刀が阻んでいた木材を両断する。

 

「サンキュー!まゆっち!」

 

「いえ、行きましょう!」

 

そこからはとにかく犬を追いかけ、建物の隙間から大通り。挙句には店の中にまで走り回る犬を追いかける。

 

「やっぱワン子がいないのはでかいか・・・!」

 

彼らの戦力である一子は、まだ気のコントロールが安定していないのでガクトとモロと共に秘密基地からの情報収集に分担されている。

 

代わりにキャップがいるが、やはりあの犬の戦闘力的に抑え込むことが出来ない。

 

「武道を納めているなら容赦はしない!川神流・指弾弐式!」

 

ビシュン!!!

 

百代の手から超高速のスーパーボールが発射される。

 

「!!」

 

さしもの犬も危険を感じたのか直線的に逃げていたのを直角に曲がり、壁裏に隠れる。

 

ボシュ!

 

当たった壁に少しの窪みと焼け跡を残した。

 

「ちょ、姉さん!殺しちゃまずい!」

 

「あいつは私の裸を見たんだ!ここで仕留めてやる!」

 

「いやだから仕留めちゃ駄目だって!」

 

「モモ先輩に同意。私の裸を見ていいのは大和だけなんだッ!」

 

パシュンパシュン!

 

京の放つ矢もレプリカとはいえ、とんでもない威力になり始めている。しかし、犬はそれすらも回避するのだからほんとこの犬はなんなんだろうか。

 

「自分は・・・その・・・」

 

「足止めんなー!クリ吉ー!」

 

「クリスさん走って!」

 

もはや目的が滅茶苦茶だが、とにかく彼らは走って走って・・・工場地帯の倉庫に犬が入っていったのを確認する。

 

「いいか、チャンスは一度だ。・・・行くぞ!」

 

大和達が一斉に倉庫内に飛び込む!

 

「くらえ!」

 

クリスのレイピアが無数の刺突を放つ。

 

「ワフン!」

 

それをジャンプ回避した瞬間、

 

ダダダダ!

 

「!?」

 

犬を拘束するように京の矢が放たれ、ようやく犬は身動きが取れなくなった。

 

「やった!」

 

「っしゃー!依頼達成だぜ!」

 

パン!とハイタッチする一同。だが・・・

 

ゴリ

 

「ん?」

 

大和が何かを踏みつけた。妙な硬さのそれを拾い上げると先端の尖った鉛のようなもの。

 

「これは・・・」

 

弾丸だ。それもレプリカではない。本物の重火器のものだ。

 

「こっちも見てください!」

 

「武器満載だぜー!」

 

「こっちもだ!これは、やべーもんみつけちまったぜ・・・」

 

見渡せば辺りは武器を納めているだろう木箱がそこら中にある。拳銃、ライフル、ミニガン、果てにはロケットランチャーまで。どれもこれも日本では違法物品だ。

 

「なんでこんなものがここに・・・「下がれ大和」!?」

 

百代の言葉に大和は慌てて周りを見る。すると拳銃を構えた黒服の男たちが自分たちを囲んでいるのに気付いた。

 

「これは、ちとまずいんじゃね?」

 

キャップが油断なく構える。だが相手は拳銃を構えている。百代やクリス京と由紀江ならば問題ないだろうが・・・

 

ガション、ガション、ガション、

 

「なんだあれは!?」

 

黒服の後ろからさらに黒い人型の何かが歩み出てきた。

 

「ロボット・・・!?」

 

「来るぞ!」

 

百代の言葉と共に一斉に黒服たちが拳銃の引き金を引く。

 

パパン!パパン!

 

それを百代が拳で弾き、

 

「はぁあ!!」

 

クリスがレイピアで男たちの腕を穿つ。さらに京が矢を放ち、男たちを仕留めるが、

 

ブオン!

 

「あぶねぇ!」

 

咄嗟にキャップが大和に飛びついて光の剣を避ける。

 

「はっ!」

 

光の剣を振るってきたロボットを由紀江が両断する。

 

「足止めんな大和!こいつらのはクッキーのと違う!」

 

焼き切られた倉庫の壁を見てキャップが大和に警告する。どうやらアレはクッキーの持つ対人用スタンガンなどではなく、正真正銘のレーザー兵器らしい。

 

「わかった!みんな!あいつらの武器に注意してくれ!」

 

「わかってる!だが、くっ!」

 

四方八方から撃たれる銃弾と振るわれるレーザー兵器。銃弾は何とかなるものの、レーザー兵器が厄介だ。アレは熱で対象を焼き切るもの。つばぜり合いや、拳を合わせたりしたら焼き切られてしまう。

 

おまけに今回ワン子がいないため、素手の大和とキャップは完全にお荷物だ。

 

「ちっ!このっ!」

 

ガツン!

 

キャップがレーザー兵器を躱して蹴りを放つが、当然金属でできたボディには効果がない。

 

「黒服は大体倒した!」

 

「後はこのロボットどもだ!」

 

「大和とキャップは下がれ!あれはお前らには荷が重い!京!矢は!?」

 

「あと3本しかない!それにこのレプリカじゃ金属を貫けない・・・!」

 

必死に応戦する大和達。だがロボットに有効打をあたえられるのは百代と由紀江しかいない。クリスのレイピアではあのボディを相手にするのは不可能だ。京の矢も残弾がない。

 

万事休す。ゆっくりと追い詰められていく大和達。そして、

 

ガシャン!!!

 

残りのロボットたちが一斉にボディを開き、その中から無数のガトリング砲がでてくる。

 

「やべーぞ!!」

 

あれだけのガトリング砲に撃たれては如何に百代と由紀江が迎撃しても他のメンバーを守り切れない。

 

「くっ・・・!」

 

ここまでか、そう思って大和は目を瞑った。

 

――――interlude out――――

 

 

 

キン!ガッ!

 

 

相手の短刀を白剣、莫耶が弾き、その首に干将の柄を打ち込む。ドサリと襲撃者が倒れる。約20人ほどだろうか?彼が打ち倒した人数はかなりの数に及ぶ。

 

「流石、精鋭部隊という所か。これまでの雑魚とは少々違う、なっ!!」

 

ギキン!パシュン!

 

飛んできた手裏剣を叩き落し、お返しにと夫婦剣を投げつける。白と黒の短剣は木々を両断しながら襲撃者に飛来し、

 

 

「――――壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)

 

 

その内に秘められた魔力が暴走し、強力な爆発を引き起こす。かなりの人数が今の爆発で宙を舞ったが、まだ気配は多い。

 

「まったく。しつこい連中だ。いい加減貴様らの相手も飽きてきた」

 

――――投影、開始(トレース・オン)

 

もう何本目になるかわからない双剣を投影して攻撃に備える。

 

「有象無象しかいない所を見ると、本命は彼女の方に行ったか。やはりこの一件。裏で手を引く者がいるようだな」

 

本当に自分を捕らえたいのなら、最大戦力を自分に向けるはずだ。それに、奴らの武器は刃引きなどされていない。狙いもそこそこ正確で、当たれば確実に死を迎えるだろう。それでは本末転倒にもほどがある。

 

故に彼らの役目は自分をこの場に釘付けにすること。もしくは始末すること。これまでとはやり口が違う。皆似た見た目をしているが中身は違う勢力ということだろう。

 

「悪いが加減は無しだ。死にたくなければ必死に足掻け!」

 

――――工程完了。全投影、待機(ロールアウト・バレット・クリア)

 

赤い外套が翻り、中空に浮いた27本の剣弾と共に疾駆する―――!

 

――――停止解凍、全投影連続層写(フリーズアウト・ソードバレルフルオープン)………!!!

 

ダンダンダンダン!!!

 

ガン!キィン!

 

 

如何に相手が精鋭であろうとも、彼らが相手にするのは幾たびの戦場を越えた、錬鉄の英雄。彼の力の前に襲撃者達は儚く散るしかない。

 

ただ一つ、懸念があるとすれば林冲の方だ。彼をここに足止めしたいのならば本命は林冲。一秒でも早く彼女の元に駆け付けねばならない。

 

焦りはない。彼女は強い。きっと彼女は自分が行くまで持ちこたえる。そう信じて彼は最速で襲撃者達を蹴散らす。

 

 

 

 

 

 

 

 

ガン!

 

「やああ!!」

 

シュンシュンシュン!!!

 

振り切られた巨大な棍棒、狼牙棒を弾き返し、神速の突きを目の前の女に繰り出す。だが、相手の目がギョロギョロと動き、自分の槍を正確に捉え、

 

「そら!」

 

ドゴン!

 

見切った上で巨大な狼牙棒を振り落としてくる。

 

「くっ・・・ああああ!!!」

 

だが林冲とて負けてはいない。数秒先を見る眼を総動員して敵の眼力に対応し、槍を繰り出す。

 

「槍雷千烈撃ッ!!!」

 

気を練り、強力な突きの連打を目の前の女に叩き込む―――!

 

 

ガカンカン!!!

 

しかし相手はそれさえも凌ぐ。あの眼、通称『龍眼』は、鍛え上げられた戦闘技術と経験により会得した、天然の眼力だ。

 

「随分と腕を上げたじゃないか林冲。ここまで私が本気になるのは、お前と相対して久方ぶりではないか?」

 

「史文恭・・・なぜお前がここにいる?」

 

目の前の女、史文恭に問う。彼女は梁山泊のライバル、曹一族の武術師範だ。彼女が出張ってくることは分かっていたが、こうして自分と相対している理由が分からない。

 

「そんなもの決まっているだろう。衛宮士郎を奪うのが目的ではあるが、お前がいたのでは今後非常に邪魔なのでなッ!!!」

 

そう言って彼女は狼牙棒を振りかざす。林冲は未来予知し、振り下ろされる一瞬を狙う。相手の武器は巨大。そしてその重量からして、横に振るか、大上段から振り落とすかに限られる。

 

狙うのならば振り切った後。史文恭は自分の槍とは違い、すぐに切り返すことはできない。だと言うのに―――

 

「そらこんなのはどうだ?」

 

振り下ろし、地面に落ちた先端を軸に、一回転。鋭い蹴りを放ってくる。それを予知した(視た)林冲は攻撃をキャンセル。すぐさま槍を防御に回す。

 

ガコン!

 

「くっ!」

 

防御はしたものの威力が強く地を削りながら吹き飛ばされる。だが、彼女は冷静に状況を見て気を練り上げ、攻撃と防御に割り振る。

 

まさに剛に対する柔。相手がその重量と巨大さで圧してくるのに対し、彼女はしなやかに受けながし、あるいは衝撃を逃がす。

 

戦闘が始まって約一時間。既に彼女は限界を迎えようとしている。如何に衝撃を受け流そうと、ダメージは0にはならない。

 

蓄積した疲労とダメージは彼女の槍を鈍らせ始めていた。

 

「その強さは今までのお前との戦いで最大だ。賞賛に値する。・・・だが、もはや限界と視た。あと一撃が精一杯という所だろう?」

 

「・・・。」

 

彼女の推測は正しい。気も底をつき、眼力の使い過ぎで頭痛が酷い。腕は今すぐ槍を手放したいと悲鳴を上げている。けれど―――

 

「私は彼を守る。頼まれたんだ。自分では守れないから守ってほしいと。だから―――!!!」

 

豪!と気が溢れる。いままでは定まらなかった、ただ守りたいという想いが、たった一人を守りたいという想いに変わり、彼女は己の限界を突破する。

 

「梁山泊極技―――!」

 

「くるか!ならば全力で答えよう!!!」

 

林冲は静かに、この一撃にすべてを込める。残り一撃。されどこの一撃は最大の一撃として放つ―――!

 

「黒豹疾駆―――!!!」

 

それは梁山泊の極技であり彼女の最大の技。残りの全てをこの一撃に込めて。黒豹となった彼女は史文恭と激突する!

 

キィン!!!

 

「・・・。」

 

「・・・。」

 

激突の結果は、

 

ドシャ!

 

林冲が、倒れた。そして握られていた槍が半ばから無くなり、地面へと突き立った。残心を解いた史文恭はゆっくりと彼女に迫る。

 

「見事だ。あと少し。ほんの僅かでも何かが違っていたら立っていたのは私ではなくお前だった。お前の名わが身に刻むとしよう」

 

そして倒れた彼女へと狼牙棒を振り下ろす。

 

「さらばだ。豹子頭の林冲―――!」

 

ヒュ!

 

その一撃を持って幕切れ。彼女の想いは果たされることなくここで散る。

 

 

 

 

――――そのはずだった(・・・)

 

 

 

 

 

――――“後より出でて先に断つもの(アンサラー)

 

 

 

それは因果逆転の奇跡。相手の一撃より後に発動されるにも関わらず、相手より先に当たる切り札殺し。

 

 

「な――――」

 

史文恭はこの先永遠に忘れないだろう。もはや彼女を救うことなどできないこのタイミングで。自分より先に(・・・・・・)攻撃が当たり、潰されるはずの彼女が無事で、自分は何かに抉られるという不可思議な光景を。

 

 

――――“斬り抉る戦神の剣(フラガラック)!!!”

 

 

その言葉をキーとして。儚く散るはずだった林冲への攻撃は無かった(・・・・)ことにされ。

 

 

「ぐあっ!」

 

青白い閃光が彼女を貫いた。

 

 

 

 

――――interlude――――

 

(父さん・・・母さん・・・!!)

 

発射される銃弾。それを前に大和はこれまでの記憶が脳裏に走る。走馬灯という奴だろう。思考が停止したまま銃弾は彼らを――――

 

「いけませんなぁ・・・!」

 

「え?」

 

聞き覚えのある声にそっと大和は目を開ける。そこに立っていたのは、

 

「レ、レオさん!?」

 

彼らの前に立ち塞がるのは金の肩鎧と赤いマント。金の兜を身に付け、槍と盾を構えた士郎の残した頼みの綱。

 

「大和殿。貴方は思考をするのがお得意のはず。軍師である貴方が思考を止めてしまえば全てが瓦解いたします。故に。最後まで己の筋肉とッ!!頭脳を駆使するのですッ!!!さすればぁ・・・・!」

 

ドンッ!!!

 

轟音を立ててロボットが吹き飛んでいく。

 

「むりゃぁっ!」

 

ゴヒュン!!!

 

黄金の槍が一度に五体のロボットを切り裂く。

 

「ほうるぁ!」

 

横一線にした勢いを殺さず一回転。さらに五体切り裂き、風圧で残りのロボットもあらぬ方向を向く。

 

「ぬぅああぁおっ!」

 

さらに勢いを殺さずに飛び上がり袈裟切りに叩き切り床を粉砕する。

 

「むぁだまだぁっ!」

 

片手に握った盾で目の前のロボットを激しく打ち据え粉砕し、

 

「滾ってきたぞぉぉっ!!」

 

黄金の槍を投擲して複数のロボットを串刺しにする。

 

「さあ皆さんッ!!共に反撃と参りましょうッ!!!」

 

股間を黒いブーメランパンツだけが覆い、残りは全て裸身をさらしているガチムチの渋メンがいた。

 

「へ、」

 

「「「変態だぁああ!!?」」」

 

しかしその凄まじい戦果を評価されることはなく、彼らの言葉は辛辣だった。

 

「何と!!何ということをッ!!わが筋肉を否定するとはこの私ッ!!涙で運河が出来てしまいそうですッ!!」

 

とか言いながらも、槍を投げて無手となったと言うのに、殴り壊し、盾で粉砕し、投げつけた槍を引き抜き、また一閃する。もはや彼一人が凶悪な暴風となってロボットを蹂躙する。

 

「と、とにかく私達もいくぞ!!」

 

まさかの奇跡と、まさかの変態降臨に、混乱する彼らだが、とにかく百代はこの好機をものにすべく、川神流・畳返しで立ち上げたコンクリの床を粉砕して突撃する。

 

「わ、わわ私も行きます!!」

 

銃弾を切り裂いて防いでいた由紀江も後に続く。のだが・・・

 

「なんかもうあの人一人でいいんじゃ・・・」

 

思わずクリスがそう呟く。確かに百代もすごいし由紀江も奮戦しているのだが、インパクトが。インパクトが凄すぎて、それまでの緊張感がなくなってしまったのだった。

 

 

 

 

 

色々あったが警察に通報し、犬を特別製の檻に入れて帰り道を歩く大和たち。

 

「あの、レオさんありがとうございました」

 

「あんたが来てくれなかったら、モモ先輩達はともかく俺と大和はハチの巣にされてたぜ・・・」

 

あの瞬間を思い出して大和とキャップはブルリと震えた。

 

「なんのこれしき。私は士郎殿から、あなた方を守ってほしいと頼まれていたのです。少々想定外の事態となりましたが、再計算が間に合ってよかった」

 

「け、計算・・・なのか?」

 

「普通に暴れただけじゃ・・・」

 

「な、なにをおっしゃいますッ!わが筋肉と、頭脳、あなた方の日ごろの鍛錬がッ!実を結んだのですぞッ!」

 

「いや戦ってる時のレオさん完全に脳きn「おおっと!もうこんな時間になってしまいましたッ!!私、用事がありますのでこれにて失礼いたしますぞッ!!」ん・・・」

 

いつの間にか装着した学生服を着て走っていくレオ。その後ろ姿を見送って大和達ははぁ、とため息をついた

 

「なんだったんだろうなあの武器とロボット・・・」

 

「警察が言うには密輸犯の仕業だって言うけど・・・」

 

「まぁなんにせよ、無事に依頼達成できたことだし!打ち上げでもしようぜ!」

 

「そうだな・・・ん?」

 

キャップの言葉に皆賛成、と声を上げた所で百代の携帯が鳴る。

 

「お、士郎からだ」

 

「おお?帰ってくるって?」

 

「ああ。士郎の方も無事終わったみたいだ」

 

「そうか。んー!疲れたー」

 

クリスの言葉を最後に大和達は秘密基地へと凱旋するのであった。

 

――――interlude out――――

 

 

血を吐いて倒れる史文恭。その姿を確認した士郎が林冲を優しく抱き上げる。

 

「すまない。遅くなった」

 

ボロボロになった林冲を見て悲しみの表情を浮かべる士郎。

 

「大丈夫。士郎は大丈夫・・・?」

 

彼の言葉に、もう立つのさえ辛いであろうに、健気にも士郎を心配する。

 

「ああ。林冲が頑張ってくれたおかげだ。こうして無事だ」

 

そう言う士郎だが、彼の体にも無数の傷が刻まれていた。彼女の元に駆け付けるため、無理やり敵を突破してきた代償だった。

 

「少し休んでいてくれ。後は、任せてほしい」

 

「うん・・・」

 

そう言って彼女は気を失った。気を失った彼女を近くの木に優しく寄りかからせるように下す士郎。

 

「・・・。」

 

思わずギリィと奥歯を噛み締める。もっと早く彼女の元に辿り着ければ。そう思えてならない。

 

(不甲斐ない。だが今は・・・)

 

まだ戦いは終わっていない。敵の主力を撃破し、林冲も倒れた。ここからが勝負だ。

 

「いつまで隠れているつもりだ?そんなお粗末な隠形が私に通じるとでも?」

 

ガサガサ!

 

士郎の言葉にまた複数の隠密集団が現れ、彼と林冲を取り囲む。

 

「やれやれ・・・相当数倒したつもりなのだがな。一匹見ればなんとやらか」

 

「黙れ!少しでも動いてみろ。貴様もろともその女を消し炭にしてやる」

 

口元は隠されているがニヤニヤと笑っているだろうことが見て取れる。

 

「それは怖いな。手負いの男一人と無力な女性一人に大した人数じゃないか。恥ずかしくないのかね?」

 

「なんとでも言え!これで梁山泊も曹一族も力を大きく失った。後はお前を亡き者にして行方不明とでもすれば、梁山泊と曹一族は勝手に共倒れしてくれる」

 

そう言って手に武器を構える襲撃者・・・第三勢力の傭兵集団、といった所か。

 

「おや、君たちは曹一族ではないのか。てっきり、私を捕まえようとしていた者達だと思ったのだが。随分と用意周到なご来場じゃないか」

 

「ふん。その憎まれ口もいつまで続くかな。もはや我々の計画は成功した。後は力を失った梁山泊と曹一族を根絶やしにし、我らが傭兵のトップとなるだけよ!!」

 

もう勝ちを確信しているのだろう。よくもまぁベラベラと喋ってくれる。こんな三下共では到底、梁山泊と曹一族が倒せるとは思えないのだが。

 

「ま、確かに君たちの計画に上手く利用されてしまったのは事実だ。最後に聞きたいことがあるのだが、いいかね?」

 

諦めたように肩をすくめて彼は言った。

 

「いいだろう。冥土の土産に教えてやる」

 

「この見事な策略を君たちに教えたのは誰かね?少なくとも、曹一族に情報を流し、梁山泊と戦うように仕向け、君たちに漁夫の利を取らせるように仕向けた人物がいるように思うのだが?」

 

彼の問いに周りの者たちは一斉に笑い出した。

 

「残念だったな。我らも『М』という名しか聞いておらぬので貴様の知りたい情報は皆無だ!」

 

ゲラゲラと笑う者たちに心底呆れる士郎。情報の秘匿すらできんとは、とんだ阿呆共の集まりだ。

 

「最後の望みも虚しく散ったな!では「ということらしいが。君達としてはこの場合どうするのかね?」なに・・・?」

 

自分たちではない誰かに話しかける士郎に、醜く笑っていた者たちが止まる。

 

「ああ・・・実に興味深い話を聞けた。こんな間抜け共にいいようにされたとあっては、曹一族の名折れよ」

 

そう言って倒れ伏していた史文恭が立ち上がる。

 

「ば、馬鹿な!貴様は確かに―――」

 

「そうだな。そこの男の一撃で死にかけた。だが、こうまでコケにされたとあっては、おちおち眠ってなどいられぬわ」

 

ペッと血の塊を吐き出し、狼牙棒を握る史文恭。その様子に襲撃者達に動揺が走る。

 

「先ほどの問いだが、この場合はどうするか・・・取り合ずは―――」

 

豪!と狼牙棒を負傷した右腕ではなく左腕で振り上げる史文恭。

 

「目の前の阿呆共の始末、ということで構わないかな?」

 

そう返した士郎の手には既に夫婦剣が握られている。

 

「もちろんだ。―――ゆくぞ!」

 

史文恭と士郎が同時に疾駆する。最後までいやしく潜んでいた阿呆共は、あっさりと二人に蹴散らされてしまった。

 

 

 

 

ギリギリ。

 

阿呆共を縛り上げ、自害できないように布も噛ませ(こいつらにそんな度胸はないだろうが)しっかりと拘束する士郎。

 

「これで一件落着、と言いたいのだが。まだ何か御用かな」

 

じっと縛り上げる様子を見ていた史文恭に問う士郎。その眼に敵意はないが、聞きたいことがあると物語っていた。

 

「貴様のあの一撃。止めを刺すはずの私が確かに死を覚悟した。だがこうして私は生きている。あれは一体なんだ」

 

あれ、とはつまり逆行剣の事だろう。自分も初めて食らった時(じゃんけん)はあまりの理不尽さに涙を飲んだものだが。はたして言っていいものだろうか。

 

「・・・。」

 

話すまでは帰さぬという意思を感じるので仕方なく言うことにした。

 

「あれは相手の切り札の後に発動し、因果を逆転させ、相手の攻撃より先に当たることで相手の攻撃を無かったことにする秘密兵器だ」

 

「因果の逆転・・・だと?つまり貴様の攻撃が先に当たったという事実が、止めを刺されるはずだった林冲を救ったと?なんだその眉唾物の話は」

 

到底信じられんと否定する史文恭だが、あの不可思議な光景は、今でも彼女の脳裏に焼き付いている。振り下ろされるはずの狼牙棒。潰されるはずの林冲。自分を貫く光。

 

現実離れしたあの光景は真実だと彼女の経験が語っている。

 

「相手の攻撃より先に当たると言ったな。つまりお前は私を殺すことが出来たということだ。こいつらに吐かせることが目的だったのだろうが、なぜ手を抜いた?」

 

プライドを傷つけられた。と言わんばかりの彼女に嘆息する士郎。

 

(どうしてこう、この世界の人間は好戦的なのだろうか)

 

本来なら死ななくてよかったと喜ぶ所だろうに。

 

「別に手を抜いたわけではない。言っただろう。相手の切り札(・・・)に対し効果を発揮すると。君が林冲を、何かしらの必殺技で仕留めようとしたのならば、逆行剣は君の心臓を貫いていた」

 

「なるほど・・・技ではなく、ただ狼牙棒を振り下ろそうとした私の行動が私を救ったわけか。随分と皮肉が効いているな」

 

「そう言われてもな。アレはそういうものなので、別に君を馬鹿にしたわけでも、手を抜いたわけでもない。あの状況ではアレを使うのがベストだった。それだけだ」

 

もっとも、このイタチごっこを終わらせるには彼女を殺すわけにはいかなかったので、別な手段が取れればそちらを選んでいたことは伏せておく。

 

「いいだろう。納得してやる。林冲が目覚めたら伝えておけ。こちらから梁山泊に遣いを出すとな。それと―――」

 

「他になにむぐ!?」

 

急に、口を柔らかい感触が覆う。それに驚き士郎はバックステップで距離を取る。

 

「な、なにをする!?」

 

「初めては血の味か。悪くない。ではまたいずれ機会があれば相まみえるとしよう」

 

クック、と笑って史文恭は姿を消した。

 

「・・・。」

 

彼女の唐突な行動に思考が停止する士郎。ふっと唇の感触を思い出しかけ、ゴシゴシと腕で拭った。

 

「さ、林冲。帰ろう」

 

先ほどのことはなかったことにして彼女を抱き上げる。が、

 

「むー・・・」

 

「・・・。」

 

いつの間にか目を覚ましていた彼女は頬を膨らませていた。

 

「り、林冲?」

 

「士郎、史文恭とキスしてた」

 

「!?」

 

ビキリと固まる士郎。林冲はそんな彼の腕からぴょんっと飛び降り、

 

「士郎のバーカ」

 

そう言って彼女は隠れ家の方へと走って行った。

 

「なんでさ・・・」

 

その後ろ姿を呆然と眺める彼にはやっぱり女難の相が付きまとうらしい。

 

 

 

~~~空港~~~

 

「それじゃあまたな」

 

一度梁山泊に帰国することになった彼女を見送りに、士郎と百代、マルギッテ、揚羽が空港に揃っていた。

 

「うん。色々ケリが付いたらまた来るから。・・・それまで抜け駆けは禁止」

 

「・・・。」

 

「・・・。」

 

林冲の言葉に無言になる二人。誰とはいわないが。

 

「はっはっは!英雄色を好むか。それはそれとして、例の件、頼むぞ?」

 

その様子を実に愉快と笑う揚羽だが、きちんと確認すべきことはする。

 

「わかってる。Мについて何かわかったら知らせる。それじゃ・・・」

 

「ああ。また来るのを「チュッ」!?」

 

待ってる。と言おうとした彼の頬に軽いキスがされ、

 

「じゃあまた!」

 

彼女は颯爽と空港内に消えていった。

 

「・・・ええと」

 

キスされた頬を抑えながら士郎は渦巻く闘気に後ずさりする。

 

「むーー!!姉ビンタ!!」

 

「百代は姉じゃなぐはっ!」

 

「トンファーキック!!」

 

「トンファー関係なグエッ!」

 

嫉妬に燃える二人にボコられながらも、なんとか乗り切ったなーと思う士郎。

 

 

 

 

――――川神に胎動する闇はまだ残っているが。まず大きな一つの節目を迎えた士郎であった。

 




投稿が遅くなりすみません。一日一話を目指しているのですが、体調を崩してしまい、寝込んでおりました。

この渋メン、黒いブーメランパンツ一丁に赤マントと肩と頭だけの鎧姿って、普通に変態ですよね(笑)FGOや映画のスリーハンドレットでも同じなので忘れがちですが、普通に警察に連行されそうです。映画の監督も本当なら多分鎧着てるよね、とコメントしたとか。

interludeはスーパー渋メンゲーと化していましたが、しょうがないよね、相手飛び道具だからね、多分アーチャー判定だよねってことにしといてください。

これで一応少し日常に戻れるかなーと思います。渋メンに関しては色々な予想を立てられておりますがもう少しお待ちくださいね。

逆行剣に関しては本文でもありましたが、史文恭が技使ってたら死んでました。ホロウでじゃんけん、死ねー!で士郎がぶっ飛ばされたのと同じ現象と捉えていただけると嬉しいです。

では、私まだちょっと回復しきれていないので次回遅くなるかと思いますがまたよろしくお願いします。では
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。