真剣で衛宮士郎を愛しなさい!   作:Marthe

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みなさんおはこんばんにちわ。絶賛体調不良中の作者でございます。
投稿が遅れて申し訳ありません。本当はもっとペースを上げていきたいのですが体が追いついていきませぬ・・・無念。昔は少々のことでは風邪などひかなかったんですが、どうにも今回、お腹に来たらしく、吐き気と腹痛に苛まれております・・・。

と、私のことはぶんなげておいて、今回は日常メインに書いていきたいと思います。やっと表から追われることは無くなりましたし、裏の人間達も一応撤退したと言うことで、平和を士郎に謳歌してもらおうかなと思います。


得難き日常

――――interlude――――

 

ほとんどの人間が深い眠りについているであろうある深夜。

 

その日九鬼は一大事件に騒然としていた。

 

「まだ見つからんのかッ!」

 

「目下総力を挙げて捜索中です!」

 

「ちぃ・・・あえて留守にして炙り出してやろうと考えたのが裏目に出たか・・・!」

 

陣頭指揮をとっているのは、九鬼の軍事部門を統括する九鬼揚羽。なぜこんな深夜に、彼女達が慌ただしくしているのかというと、九鬼が開発した新型クッキーシリーズの盗難が発生したからだった。

 

「盗まれた機体の一覧は!」

 

「現在確認されているのがこちらです!」

 

従者の一人が完成したばかりであろうファイルを持って走ってくる。それを半ば奪うように手に取り、中身に目を通す揚羽。

 

「小型サイズや中型サイズはともかくとして、70ISまで持っていかれたと言うのか・・・」

 

新型クッキーシリーズ、通称ISシリーズ(アイデアル・サポート)は様々な分野に特化させ、現地で働く人々のサポートを行うことを目的として開発された新しいクッキーシリーズだ。

 

その中でも最大級の大きさと馬力を持つのが70IS。本来海底探査を目的としたその機体は、40メートルの巨体と超高圧の水圧にも耐える頑健さ、そして万が一に備えた持久性と肉弾戦能力の高さが特徴的な特殊型である。

 

そんなバカでかい物体を一体どうやって奪い去ったというのか。真偽はともかくとして事実、九鬼の管理水域にあったはずの機体は忽然と姿を消していた。

 

(唯一、4ISが盗まれなかったのは幸いだが、108ISまで持っていかれたのはまずい)

 

盗まれなかったのは人に寄り添うことを目的としたクッキー4IS。彼女はそれほど戦闘力に富んでいないので盗まれなかったのだろうが、108ISはその特殊性から、下手をすると70ISよりも厄介だ。

 

「あずみ!犯人の特定状況と裏切者の洗い出しはどうなっている!」

 

揚羽が留守、衛宮士郎の元に行った日から密かに行っていた裏切者の洗い出し。

 

川神で暗躍している主犯格が九鬼内部にいると当たりをつけていた揚羽は、自分の留守を餌にしてあずみに九鬼内部を探らせていた。

 

「既に何名か裏切者と隠し工場を抑えました。ですが・・・」

 

「また『М』か?」

 

揚羽の言葉に無念そうに頷くあずみ。その様子に頭を抱える揚羽。

 

(厳重に管理されていたクッキーシリーズに手を出せた以上、間違いなく九鬼関係者だ。だが目的が分からぬ。武器の密輸にならず者の先導。梁山泊から報告のあった衛宮士郎を利用した傭兵界隈の混乱。おまけにこの盗難・・・コイツの目的は一体なんだ?)

 

どうにも意図が読めない。まるで混乱や騒乱自体を目的としているかのような動きだ。しかし、どれもこれもこのМなる人物に、どのような得があるのかはっきりしない。

 

噂では、最近総理大臣となった人物に黒い噂があるのだが、それにしたってМにはなんの得もない。違法取引で私腹を肥やすにしても、わざわざ中国の傭兵騒動や、武器密輸犯のマフィアにまで加担した理由がわからない。

 

もし、それらが全て繋がっていたとしても、それで甘い汁を啜るのは別の人物だ。

 

(ようやくいくつか問題が解決したというのに・・・Мめ、やってくれる・・・!)

 

ギチリと思わずファイルを握る手に力が籠る。ただでさえ巨大プロジェクトと、可愛い妹の入学が間近に迫っているというのにここにきてまた問題発生だ。

 

(これは、彼らにも協力を仰がねばなるまいな。彼の報告書ではこの手のトラブルにも何度か直面した経験がある。戦闘力面でも申し分ない)

 

彼ら、とはもちろん衛宮士郎とレオのことだ。武神を片手間に相手をし、腕利き揃いの梁山泊と曹一族をはねのけたその実力は間違いなく一級品。

 

そして彼の持つ不思議な力、『魔術』は逆転の切り札になりうる。あの話し合いのあと、魔術師なる人物、あるいは集団を表裏含め探したが、やはり存在しなかった。

 

もちろんまだ隠れ潜んでいる可能性がないとは言えないが、少なくとも魔術師が大きな実験をしようとしても、調べた限りではできるような状況もなく、痕跡もなし、それらしき被害もない。

 

「報告です!強制停止信号の受信を確認!盗まれたISシリーズの強制停止に成功しました!」

 

「そのまま順次内部プログラム削除を行え!見つけられずとも、使えなくしてしまえば悪用の危険は下がる!あずみ!お前は引き続き裏切者の洗い出しと、衛宮士郎への協力を取り付けろ!」

 

「わかりました!」

 

そう言ってあずみはその場から姿を消す。

 

―――一難去ってまた一難。ようやく平穏を謳歌出来そうだった衛宮士郎は、またしても混乱へと巻き込まれるのであった。

 

 

――――interlude out――――

 

 

「・・・っと、これで終わりかな」

 

それまで中腰で作業をしていたので固まってしまった体を解すように体を動かす。

 

土にまみれた軍手を外してこぼれる汗を拭う。空は今日も晴天。心なしか暑くなってきたのを感じて、もうじき夏だなと思う。

 

「そろそろ来る頃だと思うんだが・・・迷ってないかな」

 

準備していたやかんの冷えたお茶を、口にそのまま運ぶ。行儀は悪いが、火照った体にすうっと水分が染み渡っていくのが心地良い。

 

と、

 

「おーい!士郎ー!」

 

元気いっぱいに手を振ってこちらに駆けてくる一子を見て、無事着けたかと安心する。

 

「おう!みんなもよくきたな」

 

「ご招待ありがとさん!と!へぇ広いな!」

 

「マジでこれがあの川神幽霊屋敷か?全然雰囲気違うんですけど」

 

「本当だねー。前に肝試しに来た時はなんかこう、どんよりしてたんだけど」

 

「そうなのか?ここまで全然怖い感じとかしなかったんだが」

 

そう口々に感想を言い合うのは風間ファミリーだ。

 

夜の密談会の一件以来、ここら一帯に巣くっていた怨霊の類を士郎が一掃したことを耳にした九鬼揚羽は、長年手付かずだったこの地を買い上げ、新しい住宅街として復活させようと動いていた。

 

もちろん、すぐに人が住み始めるわけもないのだが、

 

『お前がここに住み続ければ、いずれ人が集まるだろうさ』

 

と、揚羽は言っていた。なんでも、長年いわくつきの土地だったので様々な好待遇やサービスを受けられる住宅街として売りに出すらしい。

 

なので、この川神幽霊改め新・衛宮邸までの道のりに張ってあった人払いの結界は解除してある。もちろん、有事の際の為に外敵感知の結界はそのままだが、今では普通に来られるようになっている。

 

「はいこれ。ちょっとしたお土産」

 

「悪いな大和。気を使わせちまって」

 

「礼ならまゆっちに言ってあげてくれ。それ、まゆっちのご実家からのお裾分けだから」

 

「本当か!ありがとうな由紀江。すごく嬉しいよ」

 

「いいい、いえいえいえつまらぬものですがどうかおいしくいただいていただけたらと思いまして!」

 

「ついでにまゆっちもいただいていいんだぜ?」

 

「松風なんてことふぉ!」

 

「こらまゆまゆー。抜け駆けは禁止だって言ったろー!この!この!」

 

「あわわわ!」

 

サラッと大胆なアピールをする由紀江にすかさずちょっかいをかける百代。いつも通りのみんなの様子に安心感を覚える士郎。

 

「さ、いつまでもここで立ち止まってるのもあれだし、中に入ってくれ。お茶とお菓子は用意してあるから」

 

「お菓子!もちろんピーチジュースもあるよな?」

 

とそれまで由紀江を弄り回していた百代がぎゅむりと士郎に抱き着く。

 

「ぶわ!いきなり抱き着くな!暑いし、泥がつくだろ!」

 

「そんなことより早く中はいろーぜ!」

 

「中に入るのは初めてだからなぁ・・・」

 

「モモ先輩それは抜け駆けでは!?」

 

「抜け駆けはんたーい!」

 

「私はこっちから入る―!」

 

「あ!ワン子ずりい!俺もそっちからいくぜー!」

 

と、玄関組と縁側組に分かれて居間へと入る一行。今日は、適当に遊んで士郎の心づくしを食べて帰るというなんともアバウトな予定だ。

 

「やっぱ広いなー」

 

「ザ・武家屋敷だな!」

 

「庭も広いわー!ねぇねぇあれなになに?」

 

「土蔵でしょうか・・・珍しいですね」

 

「その奥にあるのは?なんだか炉みたいのがあるけど・・・」

 

と、とにかく賑やかな一同に士郎は苦笑。何から説明したらいいものやら。元気さと好奇心旺盛なファミリーは物珍しそうにあちらこちらを見て回る。

 

「由紀江の言う通りあれは土蔵だ。中にはガラクタしかないから気を付けろよー。奥のは鍛造所。主に剣を打ったりしてる。みんなに渡したペンダントもあそこで作ったんだぞ」

 

「鍛造所!?士郎、お前剣作れんの!?」

 

「ああ。ちょっとした趣味だよ」

 

「趣味で剣作れる人見たことないよ・・・」

 

「あああの!出来れば作ったもの見せていただけないでしょうか・・・?」

 

「なんだ、由紀江興味あるのか?」

 

「これでもまゆっち剣士だからさー」

 

「そういうことなら自分も気になるぞ!日本刀とか見てみたい!」

 

ウキウキと鍛造所に突撃しようとするクリスに待ったをかける。

 

「待て待て一旦落ち着け。鍛造所も作ったものも逃げやしないからまずは落ち着いて茶でも飲め。これからなにするかも決めてないだろ?」

 

そう言って彼は台所に引っ込む。それならばと、由紀江も彼についていき、お茶菓子と人数分の冷たいお茶を準備する。

 

「で、今日はなにする?」

 

「まずは探検!その後はのんびりカードゲームでもするか?」

 

「だなぁ・・・今日は特に暑いし、たまには涼しい所でのんびりしてぇな」

 

「あとは士郎の秘密お披露目会、だな。今日こそは教えてくれるんだろう?」

 

大和の言葉に苦笑を浮かべる士郎。

 

「約束したからな。ただし絶対口外禁止だ。いつか大和が推察した通り、危険なものでもある。もし噂が広がりでもしたら、俺は川神に居られなくなるからな」

 

冗談抜きでこれは本当だ。一応この世界に魔術師はいないらしいので、封印指定だなんだと追いかけまわされることはないだろうが、

 

この力欲しさに追いかけまわされる羽目になるのは、もうご遠慮願いたい(梁山泊の一件)ので彼らがもし吹聴して回るのなら、自分はまた身を隠すしかないだろう。

 

「大丈夫だ、と言いたいが、内容が内容だからな」

 

そう言ってお茶(ピーチティ)を飲む百代。彼女は既に揚羽とマルギッテ、林冲と共に彼の秘密を知っているので特に慌てた様子はない。

 

「さてそれじゃ、まずは家の紹介と行くか。ついてきてくれ」

 

それから士郎は家を案内すると仲間達を連れて家の敷地を回った。必要最低限のものしかないというのに、仲間達は部屋一つ一つに、一喜一憂し、

 

「家庭菜園まである!」

 

「だから来た時軍手を持っていたのか」

 

「土蔵だ!」

 

「残念だが、本当にガラクタしかないぞ?」

 

「でもこういうのワクワクするぜ!お宝はどこだ!」

 

「だからガラクタしかな・・・うおわ!?」

 

ガシャーン!

 

「ここが鍛造所かぁ・・・」

 

「資料なんかで見るのと全然違うな」

 

「色々専用にいじってあるからな。で、こっちに作ったものが置いてある」

 

「こ、これ本当に士郎先輩が作ったんですか・・・?」

 

「なんかすごいオーラ感じるんですけど・・・」

 

「綺麗だなぁ・・・」

 

「見るのはいいけど下手に触るなよー?一歩間違えば指くらいポロリだからな」

 

「ちょ!そういうのは早く言えって!」

 

「全部真剣なんだね・・・」

 

とにかく愉快に衛宮邸を堪能し、

 

「っしゃあ!上がり!」

 

「俺もだ」

 

「自分は後一枚・・・!」

 

「まゆっち、ババどっちか教えてほしぃなぁ・・・友達だろ?」

 

「友達作戦は卑怯ですー!」

 

「まゆっちの純情を利用するなー!」

 

「クック・・・断れないのを利用して責める大和も好き!けっこ「お友達で」またダメだった・・・」

 

「さあ一発芸やるのは誰かな?」

 

「俺はメシの準備でもしようかな・・・」

 

「そういうことなら私も!「隙あり!」あああ!?」

 

「それ!・・・うー!京今すり替えたな!?」

 

「よそ見する方が悪い」

 

「やばい俺様全然上がれそうにない」

 

「ガクトすぐ顔に出るからね・・・」

 

「モロロはその辺うまいよなぁ・・・名演技だ」

 

「そ、そうかな?」

 

「意外な才能発見」

 

「ただの機械オタクじゃなかったんだな」

 

「ただのってなにさ!ただのって!!」

 

「上がりです!しし士郎先輩!僭越ながらお手伝いを「その手には乗らんぞまゆまゆー!」ひゃわああ!?」

 

「今の!今の微妙にエロくね?」

 

「僕に聞かないでよもう・・・」

 

「さぁクリス。それはババだ。本当にそれでいいのか?」

 

「ぐぬー・・・ええい!ここで引いては騎士の名折れ!・・・ぬあー!大和ー!!!」

 

と、カードゲームでは大いに盛り上がり、

 

「さぁメシだ。お代わりもあるからたんと食ってくれ!」

 

「うめぇ!」

 

「まぐまぐがつがつ!お肉と野菜のバランスも最高ね!」

 

「これが衛宮定食の本気か・・・!」

 

「そうだね(バッサバッサ)」

 

「み、京?調味料はそこに準備してあるんだが・・・」

 

「やめとけ士郎。アレは味覚がぶっ壊れてるんだ」

 

「うん・・・前に罰ゲームでガクトが食べたとき、二週間入院したからね・・・」

 

「それはもはや食べ物の形をした兵器じゃないのか!?」

 

「そんなことない。これでも今日は抑え気味」

 

「・・・ちなみに京、麻婆豆腐とか好きだったりするか?」

 

「?大好物だよ?でも一番は大和の「いわせねーぞ!!?」ちぃ・・・」

 

「時と場所を考えてくれ・・・」

 

とにかく騒がしく、愉快に一日が過ぎていく。最近まで精神的に追い詰められていた士郎はこの光景を眩しそうに見つめる。

 

(ほんと、なんでか楽しいんだよな・・・)

 

自分なんかがこんなに幸せな場所にいていいんだろうか?と罪悪感が湧く。でも、士郎はそれが、自身の歪みから生じる本来感じないはずの感情だと受け入れる。

 

そうして次第に日が落ち、茜色に空が染まる頃。遊びに遊んだ一同はお茶を飲みながらゆっくりとしていた。

 

「はぁー楽しかったぜー」

 

「だな。まさか幽霊屋敷がこんなに居心地のいい所だとは思わなかったぜ」

 

「最初は姉さんの気が狂ったのかと思ったからな」

 

「おい弟ーなんてこと言うんだお前ー」

 

ビシュン!

 

「あぶな!」

 

「こら!室内でスーパーボールをあ痛!」

 

注意しようとした士郎の後頭部に見事クリーンヒットする。

 

「いたたた・・・百代!一々無駄に高火力なツッコミするな!」

 

「なんだよー今のは大和がー」

 

「だから変に技使うな!家具が壊れるだろう!」

 

「ぶー」

 

ギリィ!!

 

「だからって俺に八つ当たりするな!?」

 

いつぞやのようにがっちり士郎をホールドして締め上げる百代。最近、彼女のツッコミが回避されると何故か被害を被る士郎である。

 

「あわわ・・・モモ先輩ずるいです・・・」

 

「ずるい!?由紀江!この状況見て!ずるい!?」

 

「士郎の鈍感は、死んでも治らないんだろうな」

 

「俺様いい加減、嫉妬するのも疲れたぜ」

 

「むしろここまでくると、モモ先輩とまゆっちが報われんよなー」

 

はぁ、と一斉にため息を吐くファミリー。

 

「それはそれとして、そろそろ士郎の秘密とやらにも手をつけないか?」

 

大和の言葉に皆が頷く。

 

「・・・一応再確認するけど、本当に聞くんだな?」

 

そう問う士郎にやはり皆は頷く。

 

「大丈夫だよ士郎。私達は絶対約束を破らない」

 

と優しく囁く百代。耳元でささやかれてぞわぞわしたものを感じながら、やはり士郎は迷う。

 

(きっと、みんなは約束を守る。けれど・・・)

 

知らない方が、安全なことだってあるのだ。この先、彼らが自分のせいで標的にされたらと思うと寒気が止まらない。

 

「どうしても不安が拭えないって感じだな」

 

「ならアレ、いっとくか?」

 

「アレね!」

 

「アレだな!」

 

「アレだね!」

 

皆が一様に頷くのを見て士郎は首を傾げる。

 

「なんだよ、アレって」

 

「私達の魂。川神魂だ!」

 

そう言って皆が立ち上がる。

 

「川神・・・魂?」

 

「ああ。それはな―――」

 

そうして百代の口から語られたのは、

 

―――光灯る街に背を向け、我が歩むは果て無き荒野

 

 

奇跡もなく、標もなく、ただ闇が続くのみ

 

 

揺ぎ無い意志を糧として、闇の旅を進んでく。

 

 

「「「勇往邁進!!!」」」

 

 

そう言って皆の腕が振り上げられる。

 

「これが私達の覚悟だ。お前の秘密がどんなに危険なモノでも私達は―――」

 

そう言って士郎を見た百代は固まった。

 

「――――」

 

それがどんな感情だったのかは分からない。悲しみだったのか。寂しさだったのか。後悔だったのか。あるいは怒りだったのか。

 

ただその瞳の奥に、まるで、無限に剣の立つ荒野を一人歩いていく彼の姿が見えた気がして―――

 

「そうか―――そんな立派な覚悟で、みんな毎日を過ごしてたんだな」

 

眩しそうに。眩いものを必死に見るように。彼は自分たちを見ていた。

 

 

 

 

夕暮れ。楽しかった一日ももう締めくくり。また明日から忙しい日々だ。

 

「それじゃまた明日な!」

 

「約束絶対守るぜ!」

 

「ああ!また明日な!」

 

「また明日!!」

 

口々に別れの挨拶をして去っていく仲間達に手を振り、また明日、と答える士郎。

 

去り行く仲間達の姿が見えなくなるまで彼らの姿を見送った彼はふぅ、と息を吐く。そんな彼の姿を見守っていた従者は、

 

「本当に、よかったのですか?」

 

そう、その背中に問う。

 

「良かったのかどうかで言ったら、間違いなく良くなかったんだろうさ」

 

その声に振り向くことなく士郎は答えた。

 

「でも、彼らの気持ちは本気だった。それに俺も答えたいと思った。ただそれだけなんだ」

 

そう言ってもう一度彼らの魂の言葉を思い返す。そして、もしかしたら自分がこの世界に来たのは偶然なんかじゃないのかも知れないと思った。

 

「勇往邁進。よい言葉です。我々の時代とは違う勇敢な者達ですな」

 

「そうなのか?お前だって―――いや、勇敢さで言ったら、貴方の右に出る者はいないでしょう?」

 

士郎はそう、敬意をこめて言った。その言葉に彼は大きく笑った。

 

「我らはただただ必死だっただけですよ。彼らのように、最初から己の信念に準じたわけではありません。勇敢であれと、自分に言い聞かせて恐怖を押し込めて戦った。もちろん、全ての者達が勇敢でありましたがそれは、流血と屍の上に築き上げられたものです。この時代に、そのようなものはもう必要ない」

 

その言葉に士郎は強く頷いた。

 

「ああ。―――すまない。貴方には面倒をかけることになる」

 

そう言って士郎は振り返り、目の前に立つ、歴史上類を見ない程に勇敢な戦士に手を差し出す。

 

「とんでもありません。私はマスターの守りたいという願い(・・・・・・・・・)に応じて参上したのです。例えそれが何であれ。どれ程の劣勢であれ、守ってみせましょうぞ」

 

差し出された手を彼はしっかりと握り返してくれた。圧倒的不利を覆した守護の英霊。彼にそう言ってもらえて士郎は安心することができた。

 

 

――――尊い平和な一日がまた一つすぎる。川神に暗躍する闇は未だあれど、彼と、この守護者がいればきっと乗り越えられる。そう、信じて明日も生き抜く。

 

 




はい。日常と言いながら早々に不穏な空気を出す話でした。

川神魂なんですが、これを聞いた士郎はどう思うんでしょうね。私はfateの後にマジ恋をプレイしたので、この言葉が出てきた時は本当にドキリとしました。

しかし読んでくれてる皆さまには失礼かと思うのですが、前書きやあとがきという名の私の言い訳コーナーまでしっかり見てくれていて驚きやら恐ろしいやら嬉しいやら。嬉しい悲鳴です。

今回は短くなってしまいましたが、良ければ川神魂を聞いた士郎がどう思うかとか教えてくれたら嬉しいです。それでは
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