真剣で衛宮士郎を愛しなさい!   作:Marthe

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みなさんこんばんにちわ。最近fateのBGMが頭の中でループしまくっている作者です。

今回は戦後処理ということでほのぼの&説明会です。みなさんが気になっていた22話、魔術師のその後の話と、なぜレオニダスが居て現界し続けているのかを書いていきます。

精いっぱい書かせていただいたものですが、想像以上に楽しんでいただけたようで私感動しております。今回はほのぼのですが激戦後の残心とでもいいますか・・・とにかくほんわかしてもらえたら嬉しいです。


激闘を終えて

「はいはーい押さないでー!沢山ありますからねー!」

 

あの激闘の後。被害を受けた近隣住民に炊き出しが行われていた。

 

配給を担当する九鬼の従者さんが大鍋から豚汁をよそって手渡す。

 

メイド服も相まって、とても様になっている。

 

「レッドの兄ちゃーん!」

 

その横で衛宮士郎はというと、

 

「サイン!ください!」

 

元気いっぱいに色紙を差し出してくる少年に困ったようにサイン(揚羽に考えてもらった)をする。

 

そして小さな手と握手をし、去り行く少年に手を振る。彼は今、赤原礼装のままこの被害があった地域にいる。

 

それというのも、彼が多数の暴徒を相手に孤軍奮闘していた姿が大々的にテレビで放送されてしまったので、平和を守った英雄として赤き英雄だの、

 

赤い閃光だの、レッドの兄ちゃんだの、いわゆる客寄せパンダになっていた。

 

「やれやれ・・・本当は自衛隊員もいたのだが」

 

嬉しそうにサインされた色紙を友達に自慢する男の子に思わず苦笑してしまう。自分はそんなに立派な人物ではないというのに。

 

「そう言うな。あの場で戦力として数えられたのは間違いなくお前一人だ。自衛隊なぞ、戦車やライフルまで持ち出しておきながら、お前に守られるただのお荷物だったであろう?」

 

そう言うのは彼の隣に立つ九鬼揚羽だ。本来、経済などの分野は弟の英雄が担当しているらしいが、

 

今回は大規模戦闘の事後処理として九鬼の軍事を預かる彼女が現場責任者としてここに来ていた。

 

「そうは言うが、彼らがいなければ疾の昔に門を突破されていた。私など、所詮彼らのアシストをしたに過ぎない」

 

「はぁ・・・お前はどうしてそう自己肯定感がないのか・・・あまり自分を卑下しすぎるのも時には相手への侮辱になると知れ」

 

自分のしたことは、あくまで大したことないのだと言う彼に揚羽は頭を悩ませる。

 

事実、彼の起こした行動は英雄と呼ばれるにふさわしい。

 

あの絶望的な戦力差の中、たった一人戦線を維持し続けたのは紛れもなく衛宮士郎の功績だった。

 

「あの騒動の後、自衛隊員達はそれはもう大目玉を食らったそうだ。あれだけ武装し、訓練まで積んでおきながら素人の暴徒相手に何をしているのか、とな」

 

「それは・・・彼らにも限界があるだろう。他国ならまだしもここは日本だ。そう安々と暴徒とはいえ市民に発砲などできないだろう」

 

外国、特にアメリカなどでは、あまりに反抗的な暴徒や犯罪者には当たり前のように発砲許可が下りる。

 

しかし日本にその文化はない。銃で発展した国ではない、あくまで自衛を目的とした集団が自衛隊なのでそうポンポン発砲などできない。

 

「あほか!撃たぬ銃に何の意味がある!せめて威嚇射撃くらいせねばそこらの棒きれと変わらんわ!ましてや奪われでもして逆に撃たれては本末転倒もいいところよ」

 

「・・・。」

 

そればかりは否定できなかった。事実、暴徒の中には自衛隊員が落とした銃を手にしようとした者は少なからずいた。

 

もちろん、士郎はそういう輩を率先して潰していたのだが、いくら彼が強いと言っても戦場を隈なく見通していたわけではない。

 

こればかりは、あの板垣竜兵という男の、拾えば撃たれるという警告に感謝しなければなるまい。

 

「それで、私はいつまでこうしていればいいのかね?私にも学園に通う必要があるのだが」

 

話しが堂々巡りになるのを感じて話を変える。だが、これも実はかなり重要だったりする。

 

なにせ、通い始めて早々に一週間の謹慎(休暇)。梁山泊、曹一族撃退の為に休校。そしてこの客寄せパンダの為にまた学園を休んだ。

 

成績は金では買えないというのが川神学園の方針だ。いい加減進級するための単位が危ぶまれる。

 

「なにを今更。実年齢29歳。しかもロンドンに留学経験まであるお前が今更高校生に交じって授業を受けるなぞ笑い話にもならんわ」

 

「いや、この世界に来た時に体は18になってしまったのだが・・・大体、その学歴も前の世界のものだ。この世界で高校中退では今後に差し支える」

 

「そうなったら九鬼で雇ってやる。それよりも、宝具の話をせよ」

 

それこそどうでもいいとばかりに彼女は話を変えた。

 

「宝具か・・・さて、どう説明したものか・・・」

 

そう言ってまた頼まれたサインをして喜び飛び跳ねる少年の頭を撫でて見送る。

 

「また誤魔化すのか?」

 

「そうではない。宝具とはこれと言って明確な形を持たないのだよ」

 

そう言って彼は例を上げる。

 

「宝具とは、必ずしも武具などのアイテムであるとも限らず、英雄を象徴する攻撃方法、身にまとった呪い、技、技術、逸話を反映した能力など、あり方は様々なのだ。例えば、私の放った螺旋剣はそれそのものが宝具だが、レオニダスのように、過去に行った偉業そのものが宝具となることもある」

 

そう言って離れた場所で子供たちをその逞しい腕にぶら下げ、広い肩に乗せて笑う男を見る。

 

「レオニダス王か・・・初めて見た時はなんの冗談かと思ったのだが」

 

そう思って揚羽は彼が召喚されたあの夜を思い出す。

 

 

~~~~22話魔術師~~~~

 

土蔵へと飛び込んだ士郎が赤い光に呑まれ消えてしまってから数分。光る赤い魔法陣と成人男性の腰ぐらいの高さに開いた空間の穴。

 

それが、彼が元の世界で巻き込まれたという第二魔法の発現だと思い至るのに随分とかかってしまっていた。

 

「士郎は、士郎はどこに行ったんだ!?」

 

「わかりません!ですがあの空間に開いた穴。間違いなく彼の言っていた第二魔法とやらでしょう!」

 

「それが本当ならば近づくな!衛宮がこの世界に飛ばされたように、我らも別な世界に飛ばされかねんぞ!」

 

「けど!士郎が!!」

 

動転する百代をマルギッテと揚羽二人がかりで押しとどめる。もしかしたらもう二度と会えないかもしれないと彼女は乱心していた。

 

すると、

 

「あ!士郎!!!」

 

いち早く気づいたのは百代。抑える二人を振り払って、まるで黄金の砂が彼の姿を形創るように現れたのを彼女は見た。

 

「おい!士郎!士郎!!」

 

まるで死体のようにピクリとも動かない彼を必死に揺さぶり起こそうとする百代。その声が届いたのか、彼はゆっくりと目を開ける。

 

「百代?あれ、俺は――――」

 

「士郎!!!」

 

気が付いた彼を強く抱きしめる百代。もう離さないと言わんばかりに彼を締め上げる。

 

「いつつ・・・百代、痛い」

 

「馬鹿!もう会えないかと本当に思ったんだからな!!!」

 

そう言って尚彼を抱きしめる彼女の肩はガタガタと震えていた。それをあやすように頭を撫でる。

 

「悪い。心配をかけた。一応無事みたいだ。確かにあいつ(アーチャー)に心臓ぶち抜かれたはずなんだけど・・・」

 

「心臓!?どこだ!みせろ!!!」

 

ビリィ!!!

 

「いや服を破るな!?」

 

「大丈夫だ・・・傷はない・・・でもなんか赤い字が・・・」

 

「赤い字?」

 

そう言って彼が自分の心臓のある位置に目を落とすと、

 

「れ、令呪!?」

 

そこには、複雑な円形模様の字が浮かんでいた。彼の記憶に間違いが無ければこれは令呪。聖杯戦争において聖杯に選ばれた者の体に浮かび上がる聖痕。

 

「でもなんだこれ。まるで一画しかないみたいな形だ」

 

円形模様のそれは一筆書きで書かれたように書かれた令呪。冬木の聖杯戦争では複雑であっても最低、三画に分けられていた。

 

しかしこの令呪らしきものは全て繋がっていて、分けることが出来ない作りになっている。これでは召喚された英霊に絶対命令権として発動できない。

 

正確には発動できなくはないが、その瞬間マスターとしての資格を失うので結果的に一発こっきりの弾丸みたいなものだ。

 

つまり、万が一にでもバーサーカーや、自分を殺しにかかる英霊を呼び寄せてしまった場合、暴走を止められず自爆テロのようになってしまう。

 

「それよりも聖杯だ!百代!そこの箱を取ってくれ!!」

 

「は、箱!?どれだ!?」

 

「これではないですか?」

 

マルギッテが離れた場所に置かれていた木箱を手に取った。

 

「それだ!慌てるなマルギッテ、お前は今、爆弾を持っている!」

 

「そう言われて慌てない者がどこにいますか!?」

 

まさかの爆弾を持たせられたマルギッテはピキリと固まってしまった。

 

「大丈夫だ!聖骸布で封印してあるから大丈夫!多分・・・!」

 

「多分!?多分って言いましたね貴方!?」

 

「いいから早くこっちにくれ!とにかくそいつを何とかしないと大変なことになる!」

 

ピキリと固まったマルギッテが恐る恐る木箱を起き上がった士郎に渡す。渡された木箱から慎重に崩れかけた聖杯を取り出す士郎。

 

(落ち着け!聖杯は必ずしも聖杯戦争という形を取るとは限らないと聞く。それに既にこの手に目標物である聖杯がある以上、聖杯戦争にはならないはずだ)

 

そう。実は聖杯自体は必ずしも聖杯戦争で奪い合わなければならないわけではない。冬木の聖杯は厳密に言うと第七百二十六号聖杯という726個目の聖杯。

 

その儀式の真実は召喚された七騎のサーヴァントの魂を魔力に変換し、その膨大な魔力によって願いを叶える。もしくは貯蔵された小聖杯からその魔力を世界の外側へと解き放ち、できた穴を大聖杯の術式で固定。

 

その穴から引き出した魔力が願いを叶えられる力の正体だ。

 

(こいつにどれだけ魔力が蓄積されているのかは分からない。願いを叶える方法論にしても冬木の聖杯のように汚染されている可能性がないわけでもない。ならばいっそ―――)

 

封印の為に厳重に巻かれていた聖骸布を外す。それだけでボロボロといたるところが崩れる。それを――――

 

「はっ!」

 

開いた穴へと投げ込んだ。

 

(どんな形でもいい!ここではないどこかへ行け!俺には守りたいもの(・・・・・・)があるんだ!!)

 

それは一種の決別と、もしかしたらあるかもしれない犠牲への謝罪だった。この穴はどこに通じているか分からない。そもそも穴は開いているが貫通している(・・・・・・)とは限らない。

 

この機会を逃せば元の世界に戻ることは永遠に失われるかもしれない。だが、聖杯は大抵ろくでもない結果しか生み出さないのだ。余程のレアなケースでしか魔術師が望むようなものにはならない。

 

であれば次元の狭間にでも捨ててしまえばいい。そこでどんな形で発現しようともこの世界には影響しない。仮に冬木の聖杯と同じく呪い殺すことでしか願いを叶えられないとしても、次元の狭間に住む人間などいない。

 

また、この穴に飛び込んだ所で元の世界に通じている保証もないのだ。そもそもこの術式はここではないどこかに向かって人間一人分の、それもこぶし大ほどの魔力を打ち上げるものでしかない。

 

そんな中途半端な術式で第二魔法が成功していたなら遠坂はとっくに魔法使いどころか大魔法使い、ないしは死徒にでもなっている。

 

幸か不幸か聖杯だったものは士郎の予想通り穴に吸い込まれ、何も起きなかった。だが、

 

「!?」

 

ビリビリと穴の先から何か大きな者がやってくるのが感じられた。

 

「まさか何か逆流しようとしてるのか!?百代!マルギッテ!離れろ!何か出てくるぞ!!!」

 

「「!!!」」

 

士郎の言葉に即座に戦闘態勢を取る二人。士郎は立ち上がろうとしたが、

 

(このタイミングで魔力欠乏だと!?ふざけるな!)

 

恐らく魔法陣に魔力を奪われたのだろう。立ち上がろうとした腕に力が入らず、視界がグルグルと回っている。

 

「くそッ!せめてこの穴だけでも!!!」

 

魔術回路が焼き付くのも構わず宝具を投影しようとするが一歩遅かった。

 

カッ!!!

 

視界が眩い光で埋め尽くされる。咄嗟に腕で目を覆ったがそれでも輝きが視界を覆い尽くす。

 

そして――――

 

 

「サーヴァント、ランサー。スパルタ王レオニダス!!ここに推参!!!」

 

 

「・・・。」

 

「「・・・。」」

 

筋肉だった。とにかくマッスルだった。暑苦しくむさ苦しかった。

 

「・・・おや?守るべきものがあると呼ばれたので、はせ参じたのですが・・・なにか間違えましたかな?」

 

そして意外と紳士だった。いや、金の肩鎧に真っ赤なマント。黄金の兜に黄金の槍と円盾そして黒いブーメランパンツ。

 

それ以外は筋肉を誇示するように全てむき出しというHENTAIスタイルであったが。

 

「えっと・・・なんだ、とりあえず、服、着てくれ・・・」

 

頭痛が痛いとはこのことか。とにかくグルグル回る頭で出たのはその一言だった。

 

「マスター・・・ですな?僭越ながら申し上げますと、マスターも何かお召しになられた方がよろしいかと。もちろん!その鍛え上げられた体にはとても感心いたしますがッ!」

 

「あ・・・」

 

そういえば自分も百代に破られたんだったと、今頃になって気づいた。

 

 

 

魔力欠乏に陥り、這う這うの体で縁側から室内に戻り、ランサー(早々にスパルタ王と判明)に予備の士郎の服(ピチピチ)を着てもらって茶の間に着く。

 

「えーっと・・・何処まで話したっけ・・・とりあえず、これが魔術、英霊召喚です・・・」

 

「「「・・・。」」」

 

色々すっ飛ばし過ぎて納得いくかこの野郎状態である。当の本人は兜を脱いでしっかり正座してお茶を啜っている。

 

「あー・・・悪い。正直俺、いや、私も想定外でね・・・まず確認しなければならないことができた。先にそちらを片付けていいだろうか?」

 

「構わぬ。我らも状況が読めぬ。さっさと状況を解明せよ」

 

額に青筋を浮かべながら言う揚羽に少々ビビリながらも必要なことを確認する。

 

「まず初めにランサー。君の真名はスパルタの王、レオニダス王ということでよろしいか?」

 

「このように人前で申してよろしいのでしょうか?ああ、既に名乗ってしまいましたが。はい。この身はスパルタを治めたレオニダスと申します」

 

「ご丁寧にありがとう。私は衛宮士郎。訳あってこの異世界に飛ばされてきたのだが・・・レオニダス王。貴方はどうやってここに?」

 

そう。先ほど表と裏、双方で魔術も魔術師もいないと確認した。

 

もちろん確実な情報ではないが世界を統べる巨大企業と裏の巨大な組織の一角である梁山泊をして、一つも痕跡が無いとは考えずらい。

 

「異世界・・・?私はただ、守りたいものがある(・・・・・・・・・)という願いと、この故郷によく似た土地に呼ばれたのですが・・・」

 

「・・・。」

 

つまりあれか?あのボロボロの聖杯は願いを、適した人物を呼ぶ(・・・・・・・・)ことで叶える亜種聖杯だったのだろうか?

 

「・・・そうだな。とにかく必要事項を潰していくことにしよう。まず、私と貴方は契約関係にある、これはいいだろうか?」

 

「ええ。衛宮士郎殿とのパスを感じます。貴方から流れてくる魔力は微量ですが、別な所から大量に流れてきているので問題ありませんな」

 

「別な所?」

 

はて。聖杯もなく、英霊を現界させられるほどの魔力リソースが何処から補給されているのだろうか。

 

「はい。ここ・・・正確にはこの土地そのものですかな。そこから大量に供給されております。あまりの供給量に私の筋肉もマシマシと言ったところですッ!」

 

ムン!と力こぶを出すレオニダス王。・・・パチンとボタンが一個弾けた。

 

「この土地・・・そうか、霊脈か!確かにあの魔法陣は霊脈と繋げていた。呼んだのが聖杯。維持は霊脈。楔は私。そう考えれば一応筋は通る」

 

ある意味逆転の発想だ。聖杯があるから英霊が呼べるのではなく、聖杯を使ったから英霊が来た。そして聖杯を投げ入れた時次元に穴が開いていたため、英霊の座と繋がったと考えてもおかしくはない。

 

なにせ、聖杯の願いを叶える機能とは、理屈や仮定をすっ飛ばして結果を得るというのが基本構造だ。

 

つまり偶然穴が開いていたので英霊が呼ばれたのであって、穴が無ければ世界のどこからか適した人物が呼ばれたのだろう。

 

「・・・。」

 

「なんだよ。離れないぞ」

 

ちらりと自分に引っ付いたままの百代を見る。もしかしたら、未来の、最強状態の百代が呼ばれた可能性もあったわけだ。

 

「まあいい。それで、貴方は聖杯戦争をする気があるのかな?」

 

士郎の問いにレオニダスは少し考える素振りを見せた。

 

「まず初めに申しておきたいことが一つあります。確かに貴方はマスターですが、私は、納得のいかないことは、絶対に拒否します」

 

ギシリと空気が締め付けられるような雰囲気だ。少々、危険性があるかもしれない。

 

「わかった。私も貴方と争いになるようなことはしたくない。聡明なスパルタ王を相手取るなど考えたくもないからな」

 

これは本心だ。なにせ相手はたった300の兵で20万の大軍を退け、彼の死後には1万の兵で30万の敵を全滅させた国の王だ。

 

そんな相手と戦うなど考えたくもない。

 

「それで、先ほどの問いには答えていただけるだろうか?」

 

士郎の問いにやはり彼は思考の間を開ける。

 

「マスター。もしや貴方は感じておられぬのかもしれませんが・・・恐らく、聖杯戦争はないかと考えます」

 

「聖杯戦争が、ない・・・!?」

 

それは一体なんの冗談だ。彼は聖杯にかける願いがあるから召喚に応じたのではないのか?

 

「待ってくれ、レオニダス王。貴方が聖杯に望む願いをお聞かせ願えるか?」

 

「聖杯の運用ですか?歴史の逆転に興味はありませんが、もしも・・・の世界を、見てみたくはありますね。しかし、それは即ち歴史の逆転となりましょう。ですので"諸国漫遊"と言った所でしょうか」

 

「・・・。」

 

なんとある意味人間らしいというかなんと言うか。まさか聖杯への望みが世界旅行がしたいと来た。

 

(ますます分からなくなってきたぞ・・・)

 

彼が言うには聖杯戦争は起こらない。そして彼の願いは現状難しいかもしれないが願い自体はいくらだって叶えられるもの。

 

なにせ船もあれば旅客機もある。その気になればその日のうちに地球の反対側、ブラジルにだって行けるだろう。

 

昔とは違い、この地球はマリアナ海溝を除けば隅々まで行くことが出来る。もはや人が立ち入って居ない場所の方が珍しい。

 

「随分とお悩みのようですな。まぁ、本来サーヴァントは聖杯戦争の為に呼ばれるか、人理の危機に呼ばれるかのいずれかでありましょう。と言っても、私が聖杯にかける望みなどその程度のこと。進んで聖杯戦争などには参加いたしませんな」

 

「では貴方はなぜ・・・いや、そうか。私が聖杯に願ったからか」

 

ここまできてようやく彼は理解に至った。

 

つまりこの英霊は、自分の守りたいものがある(・・・・・・・・・)という、ちっぽけでささやかな願いを聞き入れて来てくれたのだ。

 

(これがスパルタ王か・・・)

 

その器の大きさに士郎はすっかり脱帽した。王と言えばセイバーやギルガメッシュと会ったわけだが、二人ともきちんと聖杯にかける願いの方向性というものがあった。

 

――――セイバーは選定のやり直しを。

 

――――ギルガメッシュは自分に相応しい人類の間引きのため。

 

しかしこの王は違う。言ってしまえば彼は己の願いの為ではなく、衛宮士郎の願いの為に来たのだ。

 

「納得していただけましたかな?」

 

「ああ。貴方の気持ちに感謝する」

 

そうして士郎は深く頭を下げた。これはもう奇跡と言っても過言ではない出会いだ。

 

(キャップには感謝しないとな)

 

本来であれば彼が手にしたのだから彼が願いを叶える権利があったはずだ。それを危険性が高いという理由で半ば奪ってしまった。

 

「話が纏まったようだな。では我らにも説明してもらおうか」

 

「構わない。まずは英霊・・・からか?」

 

「それはよい。名称からして想像が付く。それよりも霊脈、ということと、その男が本当に古代ギリシャのスパルタの王なのか、というところだな」

 

「了解した。レオニダス王。まず貴方の今の状態と霊脈の状態から把握したい」

 

「構いませぬ。必要でしょうからな」

 

その後、彼の今の状態は衛宮士郎を現世の楔として、必要な魔力は川神の霊脈から大量に供給されているので問題ないこと。さらに、

 

霊脈からは魔力とは別の生命力のようなもの、恐らく『気』が流れていること。

 

そして魔力に関しては全くの手つかずなのでこの先100年だろうが1000年だろうが彼が吸い続けても枯れはしないことが分かった。

 

星は生きているのだ。それ即ち魔力を生成しているということ。地球という巨大なタンクから英霊一人分を賄った所で枯渇などしないということだろう。

 

ただし問題はいくつかあった。まず霊体化。彼は受肉しているわけではないので霊体化できるのだが・・・

 

「き、きき消えた!幽霊!?幽霊じゃないか!!」

 

百代がビビる。それはもう盛大に。どうでもよさげだがこれでもコロニーレーザーぶっ放すとんでも少女なのでうっかり驚かすと甚大な被害が出る。

 

次に屋敷について。

 

「川神・・・幽霊屋敷・・・ですと・・・!?いや私には筋肉がッ!あああすみませんマスター!私!幽霊が滅法苦手だと告白いたしますッ!!!奴らは私より計算が早い!!ヒィ!!」

 

レオニダスがビビる。それはもう盛大に。おめえが幽霊じゃねぇかと言いたいがとにかく幽霊が駄目らしい。なんでも彼は自称理系らしく、物理攻撃が通用しないことと、自分より計算高く行動するかららしい。

 

「レオニダス・・・君幽霊だからね・・・ちゃんと物理通るでしょ・・・?」

 

「それでもヒヤッとするのですッ!!そして奴らは私よりも計算高く行動する!!マスター!!怨霊が駆逐済みとは本当でしょうなッ!?」

 

大丈夫だ、問題ない。と返答して次。彼の行動範囲について。

 

基本川神市内であれば問題ないようだ。ただし、魔力供給が川神の霊脈からなので川神から離れれば離れるほど魔力が足りなくなり、恐らく他国などに行こうとすれば士郎一人にその比重がのしかかる。

 

魔術師としてへっぽこ、というか、本来英霊をなんの補助もなしに魔力供給して現界させ続けるのはほぼ不可能なので自然と彼は川神近辺しか動けないことになる。

 

「後はそうですな・・・なにかあるでしょうか?」

 

「私としては特にないな。九鬼揚羽、貴女からは?」

 

士郎の問いにそれまで黙っていた彼女が口を開いた。

 

「では、我から問おう。スパルタの王よ。お前はこの川神にスパルタを再建したいのか?」

 

「!」

 

それはつまり、川神を新たなスパルタとしてまた王に君臨する気があるのか、ということだろう。

 

「あっはっはっは!!気丈なお嬢さんですな。答えは否です。私は所詮歴史に埋もれた影法師のようなもの。確かにかつては王でありましたが、私の時代にあった流血はこの時代には必要ありません」

 

「しかしお前は王なのであろう?また玉座に付きたいとは思わぬのか?」

 

「思いませぬな。私が王に、いや優れた指揮者になった理由は簡単です。スパルタには私以外に、計算の出来る男が居なかったからですよ」

 

「「ぶふっ!!」」

 

静かにお茶を飲んでいた揚羽とマルギッテがお茶を吹いた。

 

「お、お前はそんなことで王になったのか!?」

 

まさかの事実に揚羽が前のめりになって聞く。

 

「ええ。全く!スパルタ兵達は脳筋で困る!私がいなければ、どうなっていたことか・・・」

 

「これは、とても歴史書には書けませんね・・・」

 

「我も知りたくなかったわ・・・」

 

「ちなみにいいだろうか?」

 

静かに話を聞いていた林冲が手を上げる。

 

「どうぞ、お嬢さん」

 

「貴方の好きなものは?」

 

なんとも普通の問いだった。しかしレオニダスは、

 

「数学はいい・・・計算が正しかった時の、満ち足りた気分・・・」

 

「「「・・・。」」」

 

マジかよコイツという顔である。

 

結局、九鬼の契約書に更なる項目が追加され、レオニダス王といきなり名を出しては混乱が生じるということで、衛宮士郎の知人、レオとして表の世界に彼は出ることになるのだった。

 

 

~~~~22話魔術師 終~~~~

 

 

とまぁこんな経緯があったのである。その後士郎は梁山泊と曹一族の騒乱に巻き込まれ不在になってしまったので、ストッパーの存在しない暴走列車というか、ツッコミがいないボケというか。

 

そんなこんなで今に至る。

 

「ねぇねぇおじちゃん。どうしたらおじちゃんみたいに強くなれるのー?」

 

肩の上に乗る子供が無邪気に聞く。

 

「この筋肉が欲しいのならば・・・ひたすら、トレーニングですぞ」

 

「とれーにんぐ?」

 

「たとえばー?」

 

他の子どもたちも興味津々に聞く。

 

「では!共に筋肉を邁進しましょう!まずはぁっ!裸で豹と戦うのです!!」

 

「「やめんかッ!!!」」

 

「おっと失礼、つい昔の癖が」

 

やっぱりこいつも脳筋じゃねぇかと思う士郎。しかしながら彼は学園の授業、特に数学の成績(?)がとてもよかったりする。

 

気を抜くとすぐにスパルタの癖がでる彼であるが普段はとても紳士なのでちょっと注意すればとても頼りになる。

 

「おう!やってるなぁ」

 

そんな彼をどこかハラハラとしながら見守っていると、現れたのは総理だ。

 

「おや、総理大臣殿。ご就任おめでとうございます」

 

「よせやい!一度は引退したロートルだ。ま、任せられたからには全霊でやるけどよ」

 

彼は今回の事件で、総理大臣に再就任という異例の結果を残した。現在も国会で先頭に立ち、新たな議員達と意見をぶつけ合っている。

 

「被災地の視察ですか?」

 

揚羽の言葉に総理はなんとも言えない顔をした。

 

「一応これも仕事だからよぉ・・・本当なら、お前さん達に交じって給仕したいぜ」

 

「総理がそんなこと言ってはいけないでしょう。どうですか?丹精込めて作った豚汁です。良ければ食べていきませんか」

 

実はこの豚汁。配っているのは九鬼のメイドだが、作ったのは士郎である。どうせ炊き出しをやるならと彼が九鬼の調理場で腕を振るった一品だ。

 

「おうこいつはありがてぇ。ちょうど何も食ってなくてよこの匂いはすきっ腹に響かぁな」

 

そう言って総理も渡された割りばしを使い豚汁を啜る。

 

「こいつはうめぇ!出来れば握り飯と一緒に食いてぇところだぜ」

 

「そう言ってもらえてうれしいですよ」

 

「こいつは兄ちゃんが作ったのかい?」

 

「ええ。よくわかりましたね」

 

ずばり言い当てた総理に士郎は目を丸くする。

 

「九鬼のメイドさんたちには悪りぃんだけどよ。なんつーか、家庭の、心がホッとする味がしたもんでよぉ・・・これは大勢に向けたメシじゃねぇ。一人一人に向けた母ちゃんの味だ」

 

「誰が母ちゃんですか・・・」

 

総理の言葉に苦笑する士郎。しかし、心がホッとすると言われたのが彼には何より嬉しかった。

 

「それよりも兄ちゃん。改めて今回はありがとうよ。おめぇさんのおかげでこうしてまた戦えるぜ」

 

「そんな、俺は・・・」

 

何もしていない、と言おうとして先ほど揚羽に言われた言葉を思い出した。

 

「そう・・・ですね。有難く受け取っておきます。その代り、国の舵取り、よろしくお願いしますよ」

 

「あたぼうよ!壊れちまった町を再建して、積みあがった問題を一個一個解決していくからよ。また力ぁ貸してくれ。正義の味方!」

 

「ええ。いつでも!・・・まぁ、先に学校卒業してからですが」

 

士郎の言葉に盛大に笑った総理は、ご馳走さまでした、と頭を下げて次の視察現場へと赴いていった。

 

「やればできるではないか」

 

「何度も言われてやっとだ。それより、そろそろ揚羽さんも行かなくてはならないのでは?」

 

「そうよな。ここはお前に任せて我は次の現場に行くとしよう」

 

「まだこのままなのか・・・」

 

もう何枚目になるか分からないサインをして、握手をして子供達が去っていく。

 

「正義の味方だろうが!シャキッとせよ!ではな!」

 

そう言って銀髪をなびかせ揚羽は去って行った。

 

「やれやれ、この世界の女性は逞しいな」

 

そう呟いてまた一人、サインをして握手して子供が去っていく。

 

「おーい士郎ー!」

 

「士郎せんぱーい!」

 

「士郎ー!!」

 

「手伝いに来てやったぞー!豚汁食わせろー!!!」

 

「ああ!まだあるから食べてってくれ!」

 

そう言って学校が終わって来てくれた仲間達に手を振る。

 

 

――――被害はあったが笑顔は失われなかった。この大切な一時に彼は感謝する。

 

「おい士郎!桃のデザートはないのか?」

 

ぎゅむりと抱きしめられ強請られる。

 

「あるわけないだろ!くっつくな!暑い!」

 

「も、もももモモ先輩抜け駆け禁止ですッ!!」

 

「いけーまゆっちー!お前もくっつけー!」

 

「俺様達も行くか?」

 

「だね」

 

「だな」

 

「けっ!揃いも揃って何してやがる」

 

「みんな一斉にくるなッ!うおわああ!!!」

 

――――もうすぐ。暑い暑い、夏が来る。収まりを見せた闇の胎動はまだあれど。彼らの笑顔があればきっと乗り越えて行ける。そう思った一日だった。




はい。いかがだったでしょうか。皆さんがとても気になさっていた22話の後半とレオニダスの召喚や維持について書きました。一応ウィキやらピクシブやら色んなサイトをめぐって考えたので筋は通ってる…はず。

色々書きましたが、結局レオニダスは士郎の守りたいという願いに応じて亀裂からやってきた感じです。レオニダスの聖杯への願いからすると、早々聖杯戦争にはこないと思いました。一応召喚に応じるか否か英霊側も選べるらしいですからね。まぁ、槍の先とか聖遺物使ってバーサーカーとかなら来るでしょうが…どこかの時間軸のワカメがそれやって早々に退場したとか(笑)

次回…どうしようかなぁ…もう義経達だそうかなぁ…でもなぁ…東西戦どう考えても士郎無双になるんだよなぁ…だって射程4キロもあるんだもん…天神館どう頑張っても全滅やん…ということで次回お会いしましょう
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