前回は紹介回でしたがいかがだったでしょうか?紹介でも描写の無かった部分でニヤッと笑ってもらえたら嬉しいです。
そして遂に東西交流戦に入る訳ですが…うんごめん。色々考えましたがやっぱ結果は悲惨ですわ(笑)だって…レオニダス王が直々に訓練(体育)してるんでっせ…?どうなるかは想像が付いてしまいまする…
では!
川神工業地帯。ここでは現在、東の川神、西の天神館による交流戦が行われていた。のだが・・・
「こうして目にしても信じられねぇぜ・・・ありゃあ反則だろ」
白いスーツに白いハット帽を被ったふくよかな体系の男、天神館館長の鍋島正が言う。
工場地帯の一番見晴らしのいい場所に一人の青年が弓を構えて立っている。
「――――」
その眼は鷹の如く。いくら明かりがあるとはいえ夜の視界が悪い中、彼は戦いが始まって未だ一矢たりとも外していない。
黒い洋弓から放たれる矢は遥か遠く、天神館側の本陣にまで流星の如く降り注ぐ。彼にとってこの工場地帯は全て射程範囲に過ぎない。
もちろん、遮蔽物があるので全てを狙えるわけではないが、それでも戦闘区域全てが射程という馬鹿げた彼の弓の前にバタバタと天神館の生徒達が倒れていく。
「わかっておるわい。彼の弓は神域のそれ。一応ハンデとして彼の矢の数は制限付きじゃ。あれだけ絶え間なく射ればすぐに無くなるじゃろう」
そう答えるのは川神学園学園長、川神鉄心。先代・武神のこの翁をして彼の弓は異常の一言に尽きる。
長距離狙撃できるものは存在する。天下五弓と呼ばれる子らなら可能な者も普通にいるであろう。だが彼はそれどころの話ではない。
彼は長距離所か超長距離狙撃を可能とする。それも狙いは必中。彼が矢を放てば必ず急所へと吸い込まれる矢はもはや何か細工が成されているのではないかと疑うほど。
しかしそれはない。彼の射る矢は全て
――――そう。
そのすべてが致命傷判定。この交流戦で三年生は百代一人というハンデで天神館を破ったが二年生は圧倒的な彼の狙撃に支えられ次々と敵を打ち取っていく。
「・・・士郎、矢が尽きるよ」
同じ位置に弓を構えた京が矢を携えて上ってきた。彼女の言う通り彼の持つ矢は既に数本。しかし鷹の目は油断なく戦場を見渡す。
「大概は一掃した。本陣も壊滅させてあるが・・・大将の姿が本陣にはない。
残り一本となった矢を手で遊びながら彼は問う。
「私が狙えるのはワン子がいる辺りくらい。士郎の弓はおかしい。普通ここから敵本陣まで届かない」
弓と言うのは長距離を狙う長弓でも一キロ先が精々。しかしここから敵の本陣まではその倍以上ある。にもかかわらず彼の矢は届く。そればかりか急所に必中する。
「士郎は見える範囲なら絶対外さないよね。何処まで見えてるの?」
京の質問に視線は戦場から外さず、
「さて、企業秘密と言いたいが・・・そうだな。少なくともここから敵本陣の人間の表情と床の材質、錆びの位置くらいは見て取れる」
「・・・。」
なんだそれは。一体どんな視力をしたらそんな彼方まで見えると言うのか。
先ほど京が言ったが彼は見える範囲では絶対に外さない。準備された矢全てを
「大和!予定通り被害はない!私の加勢は必要か?」
一段下で戦況をみていた軍師に問う。
「・・・いや、必要ないと思う」
「むしろ過剰戦力ですね。なにせこちらには負傷兵も脱落した者もいない」
実はこの戦闘が始まってから川神学園に戦闘不能者も下に脱落した者すらいない。救護班の腕章を付けた生徒が実に暇そうにしている。
軍師は2-Fの直江大和と2-Sの葵冬馬。この交流戦は川神学園と天神館の総力戦なのでクラスの垣根は取り払われている。
「そうか。では私はここで降りるとしよう。京。後は任せたぞ」
そう言って彼は最後の矢に何事かを書いた紙を矢に結び、下の戦場ではなく空へと放った。
「何処に射ったの?」
最後の矢を放った士郎に代わり京が狙いを定めながら聞いた。
「なに、出番を待っている
そう言って彼は大将である九鬼英雄の前に降り立つ。
「流石衛宮よ!姉上が認めるその腕前、我も感服の至りだ!」
そう労う彼の横に腕を組んで立つ士郎は肩を竦めた。
「大したことではない。私の弓が無くとも、今の川神学園の生徒に負けは無い」
「折角英雄様がお褒めになったのに無下にするんですかー?」
ちゃきりと短刀を士郎の首に付きつけるが彼は特に気にした様子もない。
「一々短刀を学友に付きつけるものではない。それより、上からくるがいいのかね?」
「!?」
その言葉に奇襲をかけようとしていた敵が動揺した。
「あずみ。疾く片付けよ」
「かしこまりました英雄さまぁああ!!」
タン!と忍足あずみが地を蹴る。
「鉢屋か!一人で来るとか、西の乱破は頭悪いのか?」
士郎の警告にワンテンポ遅れる形であずみが蹴り飛ばす。
「どうする九鬼。私も行くかね?」
互いに分身したり、体術と短剣を交わしながら戦う姿に士郎は英雄に問う。
「必要ない!あずみであればあの程度の輩、すぐに成敗しよう!」
その言葉に呆れたように溜息を吐く士郎。
(やれやれ。これは本当にやらかしてしまったな)
なぜこんなにも傾いた戦力バランスになっているのか。その原因は間接的とはいえ士郎にあった。
「大友秘伝!国崩しぃいい!!!」
ドゴーン!と大筒から砲弾が放たれる。だが・・・
「・・・なんと!?」
煙の晴れたそこにいるのは円盾と槍(先は布で包まれている)を持った集団。
「たっはー・・・流石に驚いたわ。でもアタシ達の敵じゃないわね!!」
『応!!!』
と応じるのは誰であろう、士郎のサーヴァント、レオニダスが鍛えた川神の生徒。その中でも機動力ではなく、彼の得意とする
彼らは右手に槍を持ち、左手に円盾を構え、自分と槍を構えたことで開いてしまう右側を隣の人間が守る。まさに人間要塞と化した現代のスパルタ兵達である。
「この・・・!大友に弾切れはない!でりゃああ!!」
ズドーン!とさらに爆撃が迫るが、
「よ、ほっ」
一子は砲弾をひょいひょいと躱し、現代式スパルタ兵達はその堅牢な盾を持って爆撃に耐える。
「そらそらいくわよー!!!」
「くう・・・!」
大筒を武器とする大友焔は近接に滅法弱い。仮に撃てたとしても自分まで爆破してしまう。なので咄嗟に大筒で迫り来る薙刀を防ごうとする。だが、
「盾を!!」
『応!!!』
別な声に反応したスパルタ兵達が一斉に盾を掲げ、盾でできた道とする。そこを走破し、大友焔に飛び掛かるのは赤髪の女性、マルギッテ。
「しまった!?こちらは囮か!?」
「そうでもないわよ!」
振り下ろされた薙刀が大友焔の大筒の一つを半ばから両断する。
「!?大友の大筒を一撃で・・・!?」
一子の薙刀はそのまま地面のパイプに衝突する。その反動に身を任せてくるりと宙返り。
「次は私ですッ!!」
大筒はその名の通りサイズが大きい。故に構え直すのは容易ではない。防御は完全に間に合わない。
「トンファー・マールシュトロームッ!!!」
トンファーの連撃が彼女に炸裂し、大友焔の意識を刈り取った。
「む、無念・・・」
――――西方十勇士、大友焔撃破。
「サンキューマル!」
「その呼び方は止めるように。まだ貴方達に心を許したわけではありません」
「でも士郎には許してるんでしょ?」
「!?彼は・・・その、特別です・・・」
一子の言葉に顔を赤くするマルギッテ。
(わー士郎って本当にモテるのねぇ)
その様子を見て彼女もまた、姉と同じく士郎を取り合う一人なのだと知った。
「それよりも、来たわ!」
「盾を!!!」
『応!!!』
マルギッテの言葉に一斉に盾を構え直す。次の瞬間彼女らが居た場所に矢が降ってきた。しかしそれも虚しく構えられた円盾に弾かれる。そして、
ヒュンッ!ドゴーン!!!
一子達の頭上を通過した京の矢が標的に当たり爆発した。
「相手も容赦ないからね。こっちもそれ相応にする」
――――西方十勇士 毛利元親、撃破。
「流石京!士郎にも負けてないわね!」
「私はクリスお嬢様と合流する。お前も、前線に行きなさい」
「望むところよ!さあ敵将取るわよー!」
気勢を上げて一子がスパルタ兵を連れて突撃する。進軍はやや遅めだが、確実に敵の領土を侵略する。
「これで川神学園のネットもハッキング完了・・・」
西方十勇士、大村ヨシツグがノートパソコン片手にそう告げる。
「我々は川神学園を完全に破壊する。その足掛かりが―――」
できた、と言おうとした西方十勇士、島右近であったが、
「なに!?ハッキングし返されただと!?しかも早い!!ゲッホッゴッホゴッハアア!」
バタリと大村ヨシツグが倒れ伏した。彼は一応病弱・・・らしい。
「病弱では十勇士は務まらぬか・・・」
――――西方十勇士 大村ヨシツグ、撃破。
「鉢屋、と言ったか。中々やるな」
英雄の護衛役であるあずみは元傭兵だ。その彼女と渡り合う人物はそう見ない。
「くっ!なぜ奇襲に気づいた!」
「そいつはただの運だよ。あの赤い英雄様は、私らでも相手にならねぇ化け物だ」
そう言って彼女はちらりと主である英雄の横に立つ衛宮士郎を見る。
(鉢屋クラスの隠形をあたいより先に気づくとかほんとあいつヒューム級じゃねぇのか?)
揚羽がスカウトを続けているが一向に九鬼に入ることを拒む青年。英雄も何度かスカウトに行ったがことごとく断られた。
現在彼は目立つ赤い装束と黒い皮鎧に身を包んでいる。いつぞやの事件の時着ていた赤い外套だ。赤き英雄が味方に居れば士気も向上するということで今回無理やり着せられている。
「それより、そろそろ終わりにするか。英雄様が見てるんでな!!」
「ぬう!?」
「忍足流、剣舞五連!」
高速の五連撃が鉢屋を襲う。しかし、
ボン!
「!変わり身か!」
黒い忍び装束と丸太が残される。
(気配を絶って何処かに身を潜めた?いや、このタイミングは・・・!)
「狙うは大将のみよ!!!」
変わり身であずみを巻き、一直線に英雄へと向かう。だがそれは悪手だ。
「!?」
眼前に迫った黒い何かに視界が覆われる。そして次の瞬間、
ドゴッ!!!
「ごはっ!?」
鉢屋の小柄な体が反対方向に吹き飛んだ。英雄の隣にいた衛宮士郎の放った蹴りが炸裂したのだ。
「手を出すつもりは無かったんだが。忍足あずみ!君、サッカーは得意かね?」
組んでいた手を下ろして自然体を取る衛宮士郎。
「けっ!そんなら蹴り縛りといこうか!」
ドキュ!
「ぐあ!?」
再度蹴り飛ばされた鉢屋が衛宮士郎の方へ飛来する。
「そらッ!」
ドゴン!
「ぐふっ!」
飛来した鉢屋を彼は上に蹴り上げた。
「逝っちまいなッ!!!」
それを上空に待機していたあずみが海に向かって蹴り飛ばした。
「ぐあああ!!!」
ドボン!!!
「やるじゃないか」
「チッ!あたいだけで始末するつもりだったのによ」
「それは君の油断だろう。私は一応、総大将を守ろうとしたのだがね?」
「言ってろ。・・・一つ借りだ」
パン!と士郎とあずみが手を鳴らす。
「うむ!見事な連携!華麗な足さばき見事である!!」
「ありがとうございます英雄さまああああ!!!」
ビシ!と笑顔で敬礼するあずみ。
――――西方十勇士 鉢屋壱助、撃破。
「あれ?おい、こんな所に誰か倒れてるぞ?」
ヨンパチが外縁部で倒れている人影を発見した。
「んー?こいつテレビで見たことあるな・・・あ、エグゾエルの―――」
「マジ!?イケメンなら即食い系だし!!」
ヨンパチの声に反応した羽黒黒子が後ろから猛スピードで駆け寄ってくる。
「・・・ん?ここは「唇寄越せよ!!」どわあああ!!」
「あいつ、衛宮の矢で気絶してたのか。・・・災難だったな」
襲われる彼に背を向けるヨンパチ。背後は・・・悲惨だった。
――――西方十勇士 龍造寺 隆正、いつの間にか撃破。
「流石共にレオニダス王の鍛錬を潜り抜けた兵だな!このまま本陣を落とせそうだ!」
「いやー多分衛宮がとっくに全滅させてるんじゃないかねー?ずっと奥の方に青い光飛んでたし」
意気揚々と進軍を続けるクリスと井上準。彼らはスピード重視の部隊だ。一子の部隊とは違い、盾を持っておらず武器もあまり長いものではない者達だ。
「せいほうじゅうゆうし、あまごさんじょう!」
チャキン!とかぎ爪を装備した小柄で日に焼けた少年が現れる。
「「「うおおおお!!!」」」
そして彼を取り巻く尼子衆が猛然とクリスの隊に殺到する。
「随分数が多いな。だが!」
クリス達は持ち前の突破力で一団を突破する。
「クリス!お前は先に行け!」
「井上お前・・・」
「ここまでいいとこ無しなんだ。カッコつけさせろよ」
ニヒルに笑う井上にクリスは頷き、
「わかった。一つ借りだ!いくぞ!」
突破したクリス達が本陣制圧に向かう。・・・と言っても。井上準の予想通り、とっくに壊滅しているのであるが。
「なんだこのたこ、わたしとやるきか」
「一見ショタだけど・・・俺にはわかるぜ。お約束がよ」
そう言って気持ち悪いくらい優しい目になる井上準。今更であるが、この男。真正のロリコンである。目の前の少年が実は女性だと見たのかとても・・・優しい目をしている。
「わたしはおとこだー!」
「いいねお約束だね、可愛いよマジ天使」
しかし突然彼は俯き、
「でも、可愛いだけに、それだけに、こんな戦いに駆り立てられて・・・なんて可哀想な・・・おおおっ・・・」
急に泣き出した。
「あんまりだあああ!!!」
「なんだこの気持ち悪ぃハゲは!消えろ!」
泣き叫ぶ井上に屈強な尼子衆が襲い掛かる。しかし泣き叫ぶ様子が一転。ハゲ頭に筋を浮かび上がらせ、
「てめぇらは邪魔だぁぁぁ!!スパルタ式!!芯竜ーーー拳!!!」
一撃で屈強な一団を吹き飛ばした。
「ロリが絡んだ戦闘空間では、俺の能力は3倍になる」
かっこいいように言っているが、ただの変態である。
「じ、じまんのへいたいが・・・」
「もう君は戦わなくていいんだ。俺が保護してやる」
そう言って少年に迫る変態。大事なことなのでもう一度言うが、
「くっくるな!つめできりさくぞ!」
と尼子なる少年が必死に反抗するが、変態は止まらない。もうどちらが悪かわからない状態だが、
「おーいへんたーい!!」
「なに!?ゆきごふぁ!」
飛んできた榊原小雪に蹴り飛ばされた。
「え?え?おまえ、なかまじゃないのか?」
「うん。でも準は変態だから」
ゲシゲシと蹴り飛ばす小雪。
「それとー君は飛んでっちゃえー」
ドカ!!
「うわあああ!!!」
小雪の鋭い蹴りを食らって海に飛んでいく尼子。
ドボン!!
「よしー冬馬のお使い完了ーいくよーハゲ―」
「ゆ、雪・・・尊いロリになんてことを・・・」
「だから何言ってるのさー。あの人男だよ?」
「・・・え?」
何を言っているのか分からないと言った様子のハゲ。
「だ・か・ら・!男の子!だよ?」
「・・・。」
ドシャ!!
変態は倒れた。
「あのままだと準が犯罪者になっちゃうから冬馬に言われて来たんだよー。もう早くいくよハゲー」
ドゲシ!と蹴り飛ばす小雪。ここに悪は成敗された。
――――西方十勇士 尼子春、撃破。
――――ついでに川神学園初の負傷兵一名。
ちなみに本陣へ突撃したクリスはというと、
「ぬあーーー!!!既に全滅してるじゃないか!!!士郎ー!!!」
と、死屍累々の敵本陣で暴れていた。
「ヤキ!入れたるーー!!」
「敵襲!」
『応!!!』
最終防衛ラインには当然の如く現代スパルタ兵が待ち構えていた。
ドガガガガガ!!!
相手は怪力が自慢なのか、
「槍を!」
『応!!!』
英雄の言葉に一斉に槍による突きを繰り出す。
ガガン!
「!?ウチの攻撃を受け止めた!?」
「ふっはっはっはっは!その程度では我らの守りは崩れんぞ?崩したければその三倍は持ってこい!!!」
「・・・。」
高らかに笑う英雄だが、士郎はとても複雑な気持ちである。やっちまったとは感じていたのだがやっぱりとんでもないことをしてしまった。
川神学園の生徒、特に二年生がもう完全に現代式スパルタ兵である。攻撃はともかく耐久力がやばい。学生が持つ耐久力じゃない。
そしてこの連携。
一人が転んだりすればそこから一気に瓦解するため、繊細なコントロールと連携が大事なのがこの隊形の肝なのである。
それを二年生は平然とやってのける。もう完全に手が付けられない。
「くっ!敵総大将に一騎打ち申し込んだるわー!!」
「たわけ。貴様程度、我でも打ち倒せるが、総大将として相手はしてやれぬ」
「流石です英雄様ぁぁあああ!弱小兵にも慢心しないお姿!!素敵ですうぅぅ!!」
「いや、それもどうなのだ・・・?」
当然この九鬼英雄も体育(訓練)を受けているので元から学んでいた中国拳法の素養も相まって、わりとマジで強くなっている。
間違いなくこの怪力のみを取り得としているっぽいふくよかな女性では九鬼英雄は倒せない。崩拳か鉄山靠あたりで吹っ飛んでいくだろう。
「なんじゃ、退屈しておった所じゃし、此方が遊んでやろう」
そう言って現れたのは戦場に似つかわしくない着物姿の不死川心だ。
「フハハ不死川か。よいぞ遊んでやれ」
「その余裕ごっつムカつくわー・・・!」
そう言って女性はハンマーを振り上げる。だがそれは彼女にとってあまりに鈍足過ぎる。
「不死川流柔術をくらえーー!!」
着物姿とは思えぬ速さで間合いに入り、重心を下げ、相手の体重を利用しての背負い投げ。
ズドン!
「いっぽーん!此方が敵将打ち取ったのじゃー!」
相手を華麗に投げ飛ばし無邪気に喜ぶ不死川心。
「ああいう手合いは投げに弱い。相性が良かったな!」
「まぁそういう運も実力に含まれてますからね」
「素直に此方を褒めぬかーーー!!!」
英雄とあずみの辛辣な言葉に泣き叫ぶ不死川心。
「ふむ。君は実に巧みに柔術を使いこなすな。今の一本背負い、とてもいいキレだと私は思うぞ」
そう言って一人真っ当に評価をする士郎。ついでにちょうどいい位置にあるお団子ヘアーを崩さないように撫でる。
「・・・。」
(あ、こいつまた女誑し込んでやんの)
顔を赤くしてもじもじとする不死川心の顔はとても他人には見せられないほどニヨニヨしていた。
――――西方十勇士 宇喜多秀美、撃破。
ついでにフラグ建築。
「さて、加勢は必要ないと軍師は言っていたが・・・どうにも軍師の方に残りの十勇士とやらが行っているな。少々荷が重そうだ。少し行ってくるよ」
「うむ!大勢はもう決した!存分に暴れてくるがいいぞ!」
英雄の言葉にクッと笑ってその場から士郎が消える。
「あ・・・」
撫でられていた頭を寂しそうに抑える不死川心。
「フハハハ、不死川よ、お前も衛宮に心を撃ち抜かれたか?」
「ち、違うのじゃ!!こ、これは、そう!下賤な猿に触られて気持ち悪かっただけじゃ!」
「ならこうして上げますねー!!!」
グシャグシャ!!
「にょわあああ!?やめるのじゃああ!!」
整えられたお団子ヘアーがあずみにグシャグシャにされる。
(あいつ、一体何人誑し込めば気が済むんだ?背中から刺されそうだぜ)
と不死川心をいじくりまわしながら思うあずみであった。
「残りの十勇士は三人。こっちに来てるぞ」
「ですね。ですが予定通り、本陣壊滅の知らせが行きわたって軍が戻ってきています。然程問題ないかと」
大和が残りの十勇士を確認し、葵冬馬は携帯を開いていた。
「――――いきなり後ろから現れるとは」
携帯を開いたまま冬馬は背後に立つ偉丈夫を見る。
「ぬははは!海を泳いで後ろから回り込んできた「貴様らは後方から襲うことしか能がないのか?」な、ぐっは!!!」
ドゴス!と偉丈夫がぶっ飛ばされた。
「これは赤き英雄殿。助かりましたよ。この借りはそうですね、後日食事でも?」
「謹んでお断りするよ。君の誘いはとても危険を感じるのでね」
「それより士郎。加勢は必要ないって言ったじゃないか」
葵冬馬の誘いをすっぱり断り、大和の方を向く士郎。
「いや、実に個人的な感情なのだが、こうも人の後ろばかり狙われると私も頭にくる。少しばかり懲らしめてやろうかと思った次第だ」
「少し、ね。その割には結構吹っ飛んでいったけど?」
「敵が来なくて暇をしている仲間がいるだろう?彼にも活躍の場を与えようかなと」
「あの位置は・・・ガクトか!」
その通り、と士郎は頷いた。丁度パワータイプのようだし彼には持ってこいの相手だろう。
「となると残りは二人ですね。来たようです」
冬馬の言葉通り残りの二人が現れた。
「っとう・・・俺は一体なにをされたんだ?」
いつの間にかぶっ飛ばされていた長宗我部 宗男は危うく海に沈みかけた所を這い上がっていた。
「あん?大和から連絡があったのはお前か?」
そう言ってガクトが姿を現す。
「ん?こりゃあいいぜ!後ろは後ろだが、いい場所に飛ばされたみたいだな」
彼がいるのは救護班の防衛線だ。ここからならさらに総大将の元へ奇襲をかけられる。
「おいおい待ちな。ここには漢って壁があるんだぜ?」
ムンとファイティングポーズを取るガクト。
「いいぜ最高のオイルレスリングをみせてやるぜ!」
そう言って彼は壺からオイルを自分にかけた。
「げ、お前大和が言ってたオイルレスラーか!気持ちわりぃなぁ・・・」
ちょっと飛んできたオイルを振り払うガクト。
「ヌルヌルだ。さあ、力比べといこうじゃないか!」
「オイルだらけになんのはごめんだが、力比べと来ちゃあ引けねぇな。来やがれ!!」
ガクトが深く腰を落とす。その様子を見た長宗我部は渾身のスタートを蹴り、
「ぬん!」
ガツン!とガクトにぶつかった。だが・・・
ギリィ
(な、なんだこいつ!?びくともしねぇ!!!)
彼は十勇士の中でもトップを争うパワーファイターだ。しかし彼の力をもってしてもガクトはピクリとも動かない。
「あー?ちゃんと力込めてんのか?まさか俺様相手に手ぇ抜いてるんじゃねぇだろうな?」
対するガクトは来るだろう衝撃が、予想よりも軽いことに苛立ち、手を抜かれていると思った。
「ぐっ!ぬあああ!!!」
気合を入れるがガクトはやっぱりピクリとも動かない。
「なんだまだ全力じゃなかったのか?でも、俺様も暇・・・してたんだが舐められるわけにはいかねぇんでよ」
グオン!
「なっ!!!」
それまで動かなかったガクトが長宗我部を軽々と持ち上げた。
(ば、馬鹿かコイツ!?身長190ある俺をこんなに簡単に!?)
身長もさることながら筋肉は脂肪よりとても重い。しっかり鍛えられた彼の体は体重100kgを越えているだろう。その彼を持ち上げるガクトのパワーに彼は恐れを抱いた。
「もっと力いれねぇと!先生はこんなもんじゃねえぜ!!!」
ドゴン!!!
持ち上げた長宗我部を全力で床に叩きつけた。
「ごっはああ!!!」
それっきり、彼は気を失ってしまった。
「んだよ。力自慢みたいだから期待したのによ。これじゃただオイルまみれになっただけじゃねぇか」
そう言って彼は服に着いたオイルを落とそうとバシャバシャと海で洗っていた。
(世界は広い・・・な)
――――長宗我部 宗男、撃破。
「よしこのエアポケットまでくれば安全だ」
十勇士筆頭の石田三郎は死角となるエアポケットに島右近を連れて隠れていた。
「まさか東の連中がここまで圧倒的とは・・・出世街道を行く俺には少々目障りだな」
「この戦は負けでありましょう。しかし御大将が無事ならば時間切れに持ち込めます」
「十勇士がこうもあっさり壊滅とは・・・正直、信じられん」
そう言って彼は背中に冷たいものを感じた。
「だがこのスポットは、俺のように小狡い保身に長けた男でなければ見つけられまいよ。無論、俺は他にも兼ね備えているがね」
「小狡い保身ね・・・お前だけがそうとも限らないんじゃないか」
ピィー!
「なにやつ!?」
帰ってきた返答に島が槍を構える。
「ここがわかるとは・・・貴様何者だ」
「直江大和だ。確かにここは死角だけど、俺たちがなんの下見もせずにここに来たとでも思ってるのか?」
「ほう・・・だが一人で来るとは阿呆だな、直江!!」
島が槍を石田が刀を構える。状況は一体二。完全に不利だ。だが、
「おーっと!あんたはあたしが相手するわよー!」
笛に呼ばれた一子が薙刀で島へと襲い掛かった。
「ぬ!」
低い声と共に一子の一太刀を受け止める島。
(重い!これほど小柄でありながらこの一撃、なんという重さ!!)
薙刀と槍が鬩ぎ合うが力比べは一子の勝利だった。
ガキン!
「ぬあ!?」
弾かれた島が大きく隙を晒す。
「川神流・・・」
その瞬間を逃さず一子は勝負に出る。
「顎!!!」
高速の上下の斬撃が島を襲う。
――――川神流・顎。高速の上下斬撃で相手を嚙み殺すように繰り出されることから名が付いた川神流の奥義の一つである。
昔の一子では習得出来なかったが、急成長を遂げた彼女はこの技を完全にものにしていた。
「ぐはああ!!!」
まるでかみ砕かれるように上下から斬撃を食らった島はその場に崩れ落ちた。
「やったわー!敵将、打ち取ったりー!」
と拳を上げる一子。
「さ、後はあんただけだ。覚悟はいいか?」
「くっ・・・いいだろう。総大将たるこの俺が戦い方を教えてや・・・ぐっ!」
スラリと刀を抜いた石田に工場の隙間を縫うように飛来した矢を受ける。
「愛しの大和は私が守る」
士郎に負けたとはいえ彼女も立派な天下五弓。遥か後方から放たれたにも関わらず狙いは精密だった。
「弓兵だと・・・!貴様、一対一だと言ったではないか!」
「いつそんなことを言った?俺は
ドカッ!
と大和はひるんだ石田の左ひざに蹴りを入れた。
「参った、って言っちゃいなよ。そうした方が楽だぜ?」
「大和すっごい悪い顔してるわ・・・」
最近大和は士郎の話術を勉強し、かなり腹黒くなっていたりする。
「満面朱をそそいで言おう・・・断じてNO!!」
「あっそ」
大和の返答はあっさりしていた。
「西方十勇士の怒りを―――なに!?」
気を高めようとした石田が不自然な体勢で宙に浮く。
「き、貴様・・・なにを・・・!!!」
「なにって、当然手ぶらで来るわけないだろ?」
よく見ると。四方にピンと張られた糸のようなものが見えた。
「俺、結構あやとり得意なんだよね。というわけでワン子」
「あいさー!」
ドカ!!!
石田の延髄に薙刀を叩きこんだ。それによってあっけなく石田は気絶した。
――――西方十勇士 島右近、撃破。
――――西方十勇士大将 石田三郎、撃破。
「これで俺たちの勝利だな」
「ええ。完全勝利・・・だったのですが」
葵冬馬は珍しく心底申し訳なさそうに言った。
「一名、脱落者がでまして・・・」
「ええ?あの状況で誰が―――」
そこまで言って大和は途中、榊原小雪が井上準の元に行ったのを思い出した。
「・・・変態か」
「はい。あのままだと犯罪になりそうだったので・・・」
結局、負傷者は居れど脱落者無しの完全勝利のはずが、まさかの味方の危行の強制停止の為にニアピン賞となるのだった。
――――interlude――――
時間は少し戻る。士郎が単騎で射撃をしていた時。彼女は密かに工場地帯を飛び跳ねながら状況を見ていた。
「ほ、本物だぁ・・・本物の英雄さんだ・・・!」
空を流れる流星の如く矢が放たれていく。その矢を辿ると一番見晴らしのいい狙撃スポットに赤い装束の青年が黒い弓を構えているのが見えた。
「すごい・・・本当に一矢たりとも外してない!しかもあの服、テレビで見たのと同じ!かっこいい・・・」
彼の凛とした佇まいに彼女は思わず見ほれる。
――――テレビで見た本物の英雄。たった一人で総理官邸を暴徒から守り抜き、大砲の如き一矢で巨大なロボットを粉砕した姿を、彼女はずっと胸に刻んでいた。
と、
「あれ?矢が落ちてくる・・・」
一矢たりとも外さなかった彼の矢が一本だけ山なりにゆっくりと自分の方に落ちてくる。
「――――矢文だ!!!」
それは外したのではなく自分に向かって放たれたのだと気づいた彼女は慌てて空中でキャッチする。
「えっと・・・」
――――新入生へ。過剰戦力。加勢不要。2-F衛宮士郎
と書かれた矢文をみて思わずばっと彼女は顔を上げた。そして一瞬
「――――」
目が、合った。しっかりと自分が矢文を受け取ったのを確認したのだろう。それからすぐ、彼は弓を下ろし、狙撃場所から飛び降りた。
「わあああ!わあああ!」
内容的に君は必要ないと言われたのだが、彼女は誰よりも早く自分を見つけてくれたことに歓喜していた。
まるで大事な宝物のように矢文を胸に握り締めて、彼の言う通り、川神学園が圧倒的な戦場を後にする。
(今回は会えなかったけどもうすぐ登校だから!その時は―――)
一体どうしようと胸をときめかせながら彼女は何もすることなく戦場を去った。
――――これが、彼女と彼の初めての邂逅。とてもいいものではなかったが、互いに悪気はなく、彼女も気を悪くはしていない。
これから波乱の学園生活が幕をあけるがそれは夢と希望に満ちたとても気持ちのいいものになりそうだった。
――――interlude out――――
はい。実に、非常に一方的になりました。言い訳します!だって士郎の弓だけで絶対この戦い勝っちゃうもん!だからって極力士郎の出番削っても、もう川神市民現代式スパルタ兵になっちゃってるよ!原作だともう衣替えしてるんだもん!絶対強化されまくってなきゃ時間計算上合わないよ!というわけで言い訳でしたまる。
最後に大和が使った糸ですが某九鬼ルートのじゃないです。普通にしかけといて指先一つで発動可能状態にあっただけです。
後さりげなくガクトの見せ場作りました。彼が一番スパルタ化してますからね。
鉢屋君ごめんね。一応君現場に出てる人間だからさ…容赦出来なかった。
次回は遂にあの子たちが学園にやってきます!展開どうしようかなぁ…色々妄想が広がっております。ではまた。