真剣で衛宮士郎を愛しなさい!   作:Marthe

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皆さまこんばんにちわ。一山終えて次への妄想でいっぱいの作者でございます。

前回はあんまり見ごたえ無かったかなー…私なりに色々頑張ったんですが結果的にああなってしまい申した。

今回遂にあの子達が入学してきます!


新入生/武士道プランの申し子

その日、川神学園は急遽朝の全体朝礼が行われていた。

 

「えー、皆も既に様々なメディアで知っておるじゃろうが、九鬼の発足した武士道プラン。その申し子達がこの学園に入学する運びとなった」

 

その言葉にざわざわと生徒達が小声で喋りだす。

 

『マスター私もテレビで拝見させていただきましたが、偉人・・・いえ、人のクローン(・・・・・・)を作るなど、許されるのでしょうか』

 

背後に控えたレオニダスが問うてくる。

 

『いいか悪いかで言えば確実に良くはないな。はっきり言って倫理的によろしくない。過去の偉人に学ぼうという目的は理解できるし、私達はそれを批難できる立場にはいないが』

 

既にレオが過去のスパルタ王レオニダスその人であるということは知れてしまっているし、彼は自らの手腕で川神の生徒や市民を鍛えている。

 

彼が存在しなければ過去の偉人に学ぶということの究極系と言えたかもしれないが、クローンどころではなく偉人本人が居るのだから究極、とは言えないだろう。

 

そうなると人の、人間のクローンを作るということが論点になるが、士郎はこれを静観することにした。

 

『実に愚かな行いだと私は思う。だが・・・私達は本来この世界にはいない存在だ。その私達が、この世界の人間達の選択を拒否する権利はあるまいよ』

 

それが士郎が導き出した答えだった。人間のクローン技術は間違いなく悲劇の火種だ。本来の彼なら真っ先に否定し、潰しにかかるだろう。

 

だが自分は元々この世界にはいない招かれざる客。その自分がその世界の人々の未来への決断をどうこうする権利はない。と、彼は結論した。

 

『ただし、暴走を始めたのなら潰すつもりではいるがね。レオニダスとしてはどうかな?』

 

『私も人間が人間を作るというのはどうにも理に反する気がいたします。神への冒涜とも思えますし、やはり悲劇の火種かと。しかしマスターの言い分も理解できます。マスターは異世界人。私などは過去の影法師に過ぎません。その私が未来に意見するのもどうかと思いますな。無論、マスターのおっしゃる通り、手綱が切れたのならば処断する必要があるでしょう』

 

結局レオニダスもほぼ士郎と同じ意見で纏まった。非常に難しい問題ではあるが、今はこの選択をしたこの世界の人々を信じよう。

 

そしてもし、悲劇となるならばこれを処断する。後手に回る形とはなるが、それがベターだと思えた。

 

「それでは編入する6人の生徒を紹介するぞい。3-S組『葉桜 清楚』。挨拶せい」

 

「私のクラスか。この時期に物好きな者もいるものだな」

 

「なんだSクラスかー私達F組には来ないのかー」

 

鉄心の言葉に、はい。と返事をして壇上に上がる一人の女性。その姿に一層ざわめきが増した。

 

しゃなりしゃなりと歩き、壇上に上がる姿はとても清楚な立ち振る舞い。

 

男子達もほーっというため息が漏れた。

 

「?」

 

しかし、士郎は何処か違和感を覚えた。

 

『マスター、いかがされましたか?もしやッ!一目ぼれですかなッ!?』

 

『たわけ脳筋。そうではない。君は彼女に何も感じないのかね?』

 

「こんにちは、初めまして。葉桜清楚と申します。皆さんとお会いするのを楽しみにしていました。これからよろしくお願いします」

 

そう言って一礼する彼女の姿は立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花という言葉が相応しい女性であった。

 

『・・・確かに妙ですな。とても戦士・・・ああいや、戦いを得意としているようには見えないのですが・・・何故か、スパルタの素質があるような・・・』

 

『君は一々スパルタかどうかを見るな。仕方ないことではあるが。とにかく私も同意見だ。妙に戦闘の空気というか気配というか・・・そういうものを感じる』

 

士郎がその違和感の正体を探ろうとしている中、周りの男たちはその容姿にすっかり虜となっていた。

 

「やっべー、名前からしてめっちゃ清楚なんですけど!」

 

「なんか文学少女ってイメージだね。いい感じ!」

 

「あーあーみんな色めきたっちまって。まぁ無理もないけどね」

 

「ハイハーイ!気持ちはわかるけど静かにね!」

 

と、教師陣から注意が入った。のだが・・・

 

「が、学長!質問がありまーす!!」

 

ヨンパチが鉄心に名乗り出た。

 

「全校の前で大胆な奴じゃのう。言うてみぃ」

 

その活きや良しと鉄心は質問を許可した。その質問とは・・・

 

「是非3サイズと彼「ゴン!」ぐはっ!?」

 

バタリとヨンパチが何かを食らって昏倒した。

 

「馬鹿が。女性に聞くことではない。少しは欲望を抑えろ!」

 

後方に並んでいた士郎が投影したゴム玉を投げつけたのだった。

 

「衛宮ナイスだ!みんなすまない!私の生徒が!この俗物が!!」

 

バチィン!

 

「あう・・・!うっ・・・」

 

さらに梅子の鞭が炸裂し、ビクリと痙攣して今度こそ彼は動かなくなった。

 

『はっはっは!福本少年は変わりませんなぁ』

 

『同級生として恥ずかしいわ!全く、先ほどまでの違和感が分からなくなってしまった・・・』

 

性的欲望丸出しのヨンパチだが、レオニダス的には実に健康的と判断している。男性ならば、特に年頃ならばこれくらい些細な事ということだろうか。

 

「ええ?」

 

しかし彼女からしてみればプライベートもいい所なわけで。顔を赤くして戸惑っている。

 

「アホかい!・・・まぁ3サイズは・・・いや、何でもないわい」

 

スッと見えるようにゴム玉を掲げた士郎をみて鉄心は言うのをやめた。

 

「おいジジイ死ね!!」

 

流石の孫娘は何を言おうとしたのか分かったので罵声を浴びせる。

 

「わし、これでも学園長なんじゃがのう・・・」

 

散々な扱いにトホホと嘆く鉄心。自業自得なので仕方がない。

 

「え、えっと、ご想像にお任せします・・・」

 

と控え目に言って、

 

「実は私は他の三人とは違って誰のクローンなのか自分自身ですら教えてもらってないんです。葉桜清楚というのはイメージでつけた名前です」

 

「そうなのか。自分が誰だかわかんねーのか」

 

キャップがどこか興味深そうに言う。

 

「25歳くらいになったら教えてもらえるそうです。それまでは、学問に打ち込みなさいと言われています」

 

(学問に打ち込め・・・?Sクラスに入れるような頭脳を持ちながら?いや打ち込んでいるからSクラスに入れたのか?どうにもちぐはぐだな)

 

25歳と言えば大学を卒業してさらに2年か3年といった所だろう。自分から進んでやるならまだしも指示されているというのは半ば強制されているようなものだ。

 

九鬼がなんの理由もなくそんな人の人生を縛るようなことをするだろうか?

 

(まぁ、英雄と切磋琢磨するというのが目的だから分からなくはないが・・・)

 

やはりどうにも違和感の拭えない士郎であった。

 

大体にして英雄と切磋琢磨しようというのに正体は秘密。それでは武士道プランとして破綻しているように思える。

 

先ほども言ったが25歳といえば下手をすれば既に社会人だ。会社の競争力を上げて経済を育てる・・・?

 

(これは、最上先輩並にろくでもない気がしてきたな)

 

あの常に気配を絶つ振る舞いをする先輩を思い出す。彼女も3-Sに所属していたはずだ。

 

「それで、英雄。彼女は誰のクローンなのです?」

 

冬馬の問いに英雄は首を振った。

 

「わが友トーマよ。彼女に限り、我も知らぬのだ」

 

「へぇ。英雄が聞かされてねぇってのは珍しいな」

 

東西戦で大戦犯を起こしたハゲが不思議そうに言う。

 

「私は本を読むのが趣味なんです。だから、清少納言あたりのクローンだといいなと思っています」

 

ザリザリザリ――――

 

(ぬ・・・?)

 

知らない記憶(記録)が脳裏を走る。

 

――――超カラフルな頭髪、現代よりの服装、そしてはっちゃけた言動・・・

 

(ええい誰だこれは!あの馬鹿(アーチャー)は一体どんな出会いをしている!?)

 

と、見知らぬ、というか信じられん清少納言の記録に赤い奴に罵声を浴びせる。

 

『マスター、どうされました?』

 

『すこし記憶(記録)が混じりかけただけだ。問題ない』

 

誰が信じよう。ハロウィンやらサマーキャンプやらで大いにはしゃぐサーヴァント達など。

 

「清少納言かぁ、そうならイメージ通りだよね」

 

(・・・すまんモロ。多分お前の想像しているような人物ではないと思う・・・)

 

もちろん垣間見えたのは赤い奴の記録なのでこちらの世界ではどうか知らないが。

 

「皆、テンションが上がってきたようじゃな。良いぞ良いぞ。二年に入る三人を紹介じゃ。全員が2-Sとなる」

 

「ほう、此方達のクラスとは命知らずな奴」

 

「まず源義経。武蔵坊弁慶両方女性じゃ」

 

『『!!!』』

 

ザリザリザリ――――

 

――――我らの存在は人類史の存続にて報われる・・・牛若丸に憧れてくれた子供が1000年後にいた、その事実だけで私は戦える。仮初の命を賭ける価値があるッ!

 

ダン!

 

「!?どうした士郎!」

 

「衛宮!大丈夫か!?」

 

士郎が片膝を付き、頭が痛むのか片手で頭を押さえている。

 

皆の声が遠い。知らない記憶(記録)が脳を掻きむしっている。

 

『マスター・・・すみません・・・私も・・・記憶(記録)が混乱しています・・・!』

 

『俺もだ・・・すまない・・・この・・・!』

 

なんとかこの脳裏を走る記憶(記録)を止めようとするが、それはザリザリと脳を削るように、砂嵐に風景がちらつくようなビジョンを目に移す。

 

――――荒野を埋め付くす■■の群れ

 

――――それに抗う■■■の人々

 

――――邪神相手に■化をものともせず戦う■■経

 

――――邪神再来を一人止めるレオ■■ス

 

――――黒■した彼女を命がけで■める■■坊■慶

 

――――冥界に現れた■の■

 

「くっ・・・がっ・・・!!!」

 

知らない。こんなもの(記録)は知らない。これは俺の記憶ではない。出ていけ。これは俺には必要のない情報(記録)だ・・・!

 

頭を掻きまわすこの映像を断ち切るべく全力で魔力を流す。

 

 

瞬間、ブツンと。

 

 

――――たった一人■■クに残ったギル■■ッ■■と黄金の―――

 

その光景を脳が写したのを最後に、彼の意識は途切れてしまった。

 

――――interlude――――

 

「士郎・・・」

 

朝礼後、保健室に運ばれ、ベッドで眠る士郎の手を百代がぎゅっと握っていた。

 

「士郎、一体どうしちまったんだ?」

 

「まるで酷い頭痛に襲われてるようだったけど・・・」

 

「士郎先輩・・・」

 

ファミリーが授業を放り出して皆ここに集まっていた。

 

そこに、

 

「皆さん。ここは私が見ております故。学業にお戻りください」

 

まるで景色に突然現れるように出てきたレオニダスが言った。

 

「けど・・・!」

 

「今、マスターは自身の記憶と英霊の記録に脳をかき乱されているのです」

 

「!レオさんはどうして士郎がこうなったのか知ってるのか!?」

 

百代の問いに彼は静かに頷いた。

 

「偶然なのです。本当に奇跡のような巡り合わせが、マスターの記憶をかき乱している。私も同じ症状に見舞われましたが、その時の私はそれほど長く存命出来なかったようなのでこうして回復しております」

 

「記憶をかき乱してる?その時は長く存命出来なかった?一体どういうことなんだレオニダスさん」

 

大和の問いにレオニダスは困ったように言った。

 

「申し訳ございません。大和殿、百代殿。仲間の皆さん。ここはまずお引き取り願えませぬか?マスターが目覚めるには長き時がかかりましょう。説明も、私の一存ではできません。しかし確実に言えるのは、マスターは必ず目を覚まします。このまま眠り続けたりは致しません」

 

それが彼の精一杯なのだろう。それきり彼は口を閉じてしまった。

 

「・・・嫌だ。ここにいる」

 

「姉さん・・・」

 

「モモ先輩・・・」

 

士郎が倒れた時、誰よりも取り乱したのは彼女だった。一歩でも早く、一秒でも早く駆けつけんと並み居る生徒をなぎ倒して士郎の元へと向かった。

 

しかしそれを九鬼の従者、クラウディオとヒュームが全力で彼女を抑え込み、必ず彼の元に届けるから取り乱すなと言ったのだ。

 

結果、運ばれていく士郎を見送り、新入生紹介が行われたが、皆全然頭に入ってこず、朝礼が終わったと同時にこうして集まっていた。

 

「マスターはお優しい方です。自分の為に皆さまの貴重な時間を失わせてはマスターは己の事を責めるでしょう。ですから、マスターの事を想われるのならば。まずは学業を終えて、またここにいらしてください」

 

「・・・嫌だ。ここにいる」

 

それでも百代は彼の言葉を拒否した。

 

「困りましたな・・・皆さまも百代殿と同じ意見ですか?」

 

レオニダスは悲痛な面持ちでファミリーに問いかけた。

 

「・・・いや。俺は戻るよ。終わったら必ずここに来る。そうしないと士郎は自分を責める」

 

「そうだな・・・先生がそう言うなら俺様も戻るぜ。んで、終わったらここに来る」

 

「僕も。士郎は優しいから、きっとこうしてたら自分を責めると思う」

 

「だな。キャップ命令だ!残るのは二人!後は学校が終わり次第ここに来ようぜ」

 

妥協案としてキャップは二人残ることにした。

 

「それならば、私が残ります」

 

「まゆっち・・・」

 

「私も、士郎先輩の傍を離れたくありません」

 

「OK。じゃあ残るのはまゆっちとモモ先輩。俺らは戻る。レオさん、それで勘弁してくれないか?」

 

キャップの申し出にレオニダスは深く頷いた。

 

「よろしいでしょう。私もここにおりますのでご心配なきよう」

 

そう言って彼は近くの椅子を取り、ベッドの傍に座った。

 

そうして百代と由紀江以外は保健室を退室した。

 

それからしばらくの時間が経ち、昼休み。保健室のドアを静かに開けて誰かが入ってきた。

 

「フハッおっと。大きな声を立ててはイカンな。九鬼揚羽、降臨である」

 

「お邪魔します」

 

「えっと・・・お邪魔します」

 

「お邪魔します、と」

 

現れたのは九鬼揚羽とマルギッテ。そして新入生の源義経と武蔵坊弁慶だった。

 

「揚羽さん・・・」

 

「衛宮が突然倒れたと連絡を受けてな。理由は分からぬが魔術絡みではないかと思った。故に我が来た」

 

「私は元からここに来るつもりでした。来る途中、どうしてもと言われて二人を連れてきましたが・・・」

 

マルギッテはそう言って後ろの主従を見た。

 

「衛宮さんは・・・義経は、なにかしてしまったのだろうか・・・」

 

「主。そう自分を責めない。衛宮は私達の姿を見て気絶したわけじゃない。そうでしょう?」

 

義経、という少女よりも背の高い女性、弁慶が優しく問うように言った。

 

「無論です。決してあなた方のせいではありません。先ほども言ったのですが・・・偶然なのです。それも万に一つ、いえ、本来あり得ない奇跡が悪い形でマスターに起こってしまった」

 

「ほら。義経のせいじゃないってさ。だからしゃきっとしないと。憧れの英雄さんの前だよ?」

 

「うん・・・。でも、義経は無関係じゃないと思う」

 

そう言って彼女は自分の数倍はある偉丈夫に話しかけた。

 

「あの、レオニダス王さん・・・ですよね?テレビで見ました。義経は源義経のクローンです。本当に、義経は無関係なのでしょうか」

 

その姿をみてレオニダスは心底困った、というように、

 

「貴女のせいではありません。少々ややこしいのですが、貴女ではなく、正確には貴女のもととなった・・・源義経公に問題があったといいますでしょうか・・・」

 

「座興はよい。真相を話せ。なぜお前たちはそう回りくどいのだ」

 

「こればかりは魔術、神秘に関わるものの定めです。話すこと、知られること自体が当人や周りに被害が出る可能性が常にあるのです。故に、私の一存では申せません」

 

「・・・お前たちの話しを聞いて魔術師の存在を常に探しているがやはり存在は確認されておらぬ。それでもか?」

 

「――――」

 

レオニダスは答えなかった。それ即ちそれでも駄目だということだろう。

 

「それでは話が進まぬな・・・やれやれ、当人が起きるのを待つしかないか」

 

そう言って揚羽は由紀江の隣に椅子を準備して座った。

 

「お前たちもそう遠巻きに突っ立ってないでこちらにこい。何かの拍子に逃げられてはかなわぬからな。取り囲むとしよう」

 

「はは・・・マスターは幸せものですな」

 

苦笑を浮かべて人数分の椅子を用意するレオニダス。

 

「ほら主。憧れの英雄さんだ!よーく顔を見ておきなよ」

 

「べ、弁慶!お、押さないでくれ!うわわ!!」

 

トン、と眠る彼に覆いかぶさるように手を彼の胸のあたりについた時だった。

 

――――体は

 

ポツリと。士郎が何かをしゃべった。

 

「士郎!?」

 

「士郎先輩!」

 

「士郎!」

 

目が覚めたのか、そう思って詰め寄る百代と由紀江とマルギッテ。そして、

 

「これは・・・!?」

 

「む!?」

 

咄嗟にレオニダスが弁慶と義経を引き離そうとする。だが救えたのは弁慶だけだった。

 

残りの五人はまるで気絶するようにベッドに倒れて意識を失ってしまった。

 

「義経!」

 

「いけません!無理に起こしては何が起こるかわかりません。大丈夫です。恐らくマスターの元へ行ったのでしょう」

 

「マスター・・・?衛宮の?」

 

「はい。恐らく義経嬢が令呪に触れたせいでしょう。意識だけマスターの元へ導かれたのだと思います」

 

そう言って彼はそっと士郎の上に倒れ込んだ義経を、士郎を少し横にずらして同じベッドに横にさせた。

 

(意識だけとはいえ向こう側(・・・・)へと導かれましたか・・・これでは奇跡の安売りですな)

 

自分はなにも出来ない。それを歯がゆく思いながら残されたレオニダスと弁慶は静かに彼と彼女等を見守った。

 

――――interlude out――――

 

「・・・ん?」

 

ふと、百代は硬い大地の感触に目を覚ました。

 

「ここは・・・?」

 

「うう・・・」

 

「いた・・・」

 

「ゲホっむ?」

 

「ここは・・・」

 

五人がそれぞれ目を覚ました。そして自分たちが保健室ではない何処かにいることを知る。

 

「なんだ・・・ここは」

 

あまりの光景に彼女達は己の目を疑う。

 

――――茜色の空

 

――――空に回る巨大な歯車

 

――――地平線の彼方まで突き立つ無数の剣

 

そして、

 

「し、ろう・・・?」

 

この無限に剣の立つ丘の上で座り込む銀髪の赤い外套の男。

 

「おや、こんな場所に何の用向きかな?それも五人も・・・本来、人がこの様な場所に訪れるわけないのだが」

 

士郎によく似た男は驚いたように言った。

 

「お前は何者だ。随分と衛宮に似た風貌をしているが、その口ぶりからしてそうではあるまい?」

 

揚羽が油断なく丘の上の男に問いかける。詳細は不明だが、この男は揚羽の言葉で何かを悟ったようだった。

 

「・・・なるほど。あの未熟者を通じてここに迷い込んだわけか。その様子だと、随分と私に迫ったと見える。一体、いつまで続けるのやら」

 

立ち上がり、皮肉気に言う男は士郎そっくりだった。しかし、その雰囲気は何処か空虚で虚しい。

 

「ここは何処ですか?私達は士郎先輩と保健室にいたはずです」

 

由紀江の問いに男は困ったように答えた。

 

「ここは時間と空間から外れた世界。その末端・・・と言った所か。君たちにとっては一時の夢のような場所だ。本体が目を覚ませば忘れてしまう」

 

「はっきりしませんね。せめて貴方が誰なのか教えてほしいところですが」

 

マルギッテは恐れずに男に問う。

 

「言っただろう?一時の夢だと。私がここで名乗ったとしても夢から覚めれば覚えてなどいない。それでもと言うのなら・・・そうだな。ただの弓兵(アーチャー)だよ」

 

「弓・・・兵?その割には弓も矢も持ってないですよ」

 

油断ならぬ雰囲気の男に義経は腰に下げているはずの己の刀を探すが、そこにはなにもない。

 

「なに、私は少々特殊な弓兵でね。必要とあらばこれこの通り」

 

と、いつの間にか黒い洋弓が握られていた。

 

「それは士郎の・・・!」

 

間違いない。あれは彼が戦闘時に使う黒い洋弓。そしてあの突然手に現れる現象は彼の使う投影魔術だ。

 

義経以外はその種を知っている。だが、弓兵ならば弓だけでなく矢が無ければ意味がない。矢は一体何処に――――

 

「矢が気になるのかね?それならば、そこかしこにいくらでもあるだろう?」

 

「・・・まさか」

 

最悪の予想に言葉なく五人が背中合わせに周りを警戒した。

 

辺りにあるのは地平の彼方まで突き立つ剣。もし、もしこの剣全て(・・・)が彼の矢だとすれば。

 

今自分たちは完全な死地にいる。どうやって彼方にまである剣を矢とするのかは不明だが、間違いなく言えるのはここはこの男にとって都合のいいフィールドということだ。

 

「心配しなくとも私に君達を害する気はない。こうして弓を見せたのも聞かれたからに過ぎない。起きれば忘れる夢なのだから大人しく夢から覚めるのを待ちたまえ」

 

そう言って彼は丘の向こうに行こうとする。しかし、その背中を百代が呼び止めた。

 

「まて!士郎が倒れた原因はお前だろう!良くは分からないがお前が士郎になにかしてるんだろう!?」

 

レオニダスが言いづらそうにしていたことから適当にあたりを付ける百代。

 

「私があの未熟者に?酷い勘違いだ。奴は勝手にここを通って勝手に私の記録を持って行ったにすぎない。お嬢さんが言う士郎というのが衛宮士郎(・・・・)を指すのなら当然の報いだ」

 

彼は他人事のように、それもどうでもいいように言った。

 

「理由はまだわかりません。ですが貴方が原因だということはわかりました」

 

「そうよな。大事な契約者をここで失うのは惜しい。ということで覚悟してもらう」

 

そう言って彼女達は各々拳を構えた。

 

「やれやれ、随分と好戦的なことだ。私に争う気はないというのにわざわざ死にに来ることはないだろう?」

 

「言ってろ!お前をぶちのめして全部吐かせてやる!!!」

 

百代が気を滾らせる。他の四人も同じく拳を構えて戦闘態勢に入る。

 

「やめておけ。ここは私の世界だ。私に戦いを挑むということはこの世界そのものを相手にするのと同義だ」

 

彼が言うなりすべての剣がひとりでに浮き上がり、その矛先を彼女達に向ける。

 

まさに物言わぬ無限の兵に取り囲まれた形の百代達。百代と揚羽は何とかなるかも知れないが、マルギッテと由紀江、義経は得物が無い状態でこの死地を潜り抜けるのは無理だろう。

 

「一応警告するが。これは夢だが特殊な夢だ。現実性のある夢とでも言えばいいか。ここでの死は現実での死と同じだ。分かったのなら拳を抑えたまえ。私は無益な殺生は好まない」

 

「くっ・・・」

 

「ではどうしろと?このまま士郎が倒れたままお前を見過ごせというのですか」

 

「それは出来ません!衛宮さんと義経はまだ何も話していない!沢山話して、沢山教えてもらいたいことがあるんです!」

 

とマルギッテと義経は叫ぶ。その言葉に男は興味を持った。

 

「義経?君は義経と言う名前なのか?」

 

「そうです!義経は源義経のクローン。源義経だ!」

 

「――――」

 

その言葉に男は何を想ったのだろうか。一瞬空気が凍るほどの殺気が放たれたがすぐに無散した。

 

「愚かな。人間が人間を作ろうなどと。愚行極まりないな」

 

「それはお前一人の意見であろう?我らは過去の偉人に学び前に進もうと考えた。それにな、もうレオニダス王という偉人本人が我らの世界にはいるのだ。クローンが出てきたからと言ってなんだというのだ」

 

「私の意見は非常に危険な判断材料なのだがね。・・・まぁいいだろう。必要になればどうせ無理やりそちらに私が呼ばれる。それまで精々、悲劇を生まぬことだな」

 

結局彼は興味を失った様子だった。

 

「おい。待てって言っただろ。聞きたいことは山ほどあるんだ。キリキリ話せッ!!!」

 

ドン!

 

百代が荒れた大地を蹴った。しかし

 

ダンダンダン!!!

 

「!?」

 

彼への進行を断つように降り注いだ剣に後退を余儀なくされた。

 

「だから言っただろう?私に挑むということはこの世界に挑むことだと。強情なお嬢さんだ。それにここでの会話も起きれば忘れてしまうと何度も言っているのだが」

 

呆れたように腕を組んで肩を竦める男。そのしぐさが一々戦闘時の彼に重なる。

 

「それでも我らはなんの成果も無しにここを立ち去るわけにはいかぬ。ここに来たのは偶然ではない。魔術とはそんな生易しいものではないのだろう?」

 

揚羽の言葉に彼は感心したように、

 

「ほう?魔術を語るか。あの未熟者め。本来秘匿する物を堂々と口外しているのか。愚劣極まりないな」

 

「士郎先輩の冒涜はゆるしません・・・!!」

 

今度は由紀江が突撃する。だが今度は、

 

ダン!

 

「きゃっ!」

 

高速でこちらに打ち出された剣を慌てて回避した。

 

「まゆまゆ!」

 

「大丈夫です・・・!当たっていません!」

 

そう言って彼女は四人の元へと後退した。

 

「年端も行かぬ少女にしては随分といい動きをするな。当てる気は元から無かったが、良い反応速度だ」

 

そう賞賛する彼の後方には無限とも言える剣弾が控えていた。景色が黒く見えるほどの数。一体何本あればこんな景色になるのか。

 

「どうする。あれだけの数、到底防ぎきれぬぞ」

 

「私なら無理やりにでも突破できる。けどそれじゃあマルギッテさん達がアウトだ」

 

「気に食わないセリフですが事実ですね。トンファーがあれば・・・いえ、あったとしても彼の後方だけではない。四方にある全ての剣がこちらを向いています。確実に防ぎきれません」

 

「万事休すか。レオニダス王が居ればなんとかなったかも知れぬが」

 

彼の宝具炎門の守護者(テルモピュライ・エノモタイア)は守護に重きを置いたカウンター宝具。あれでガードしてもらえば突破できるかもしれないが彼はここにはいない。

 

まさに詰み。彼の言う通り現実の自分が目を覚ますのを待つしかないのか。

 

そう考えたところで、目の前の男がまた興味を示した。

 

「レオニダス王がいると言ったな。それと源義経のクローン。・・・なるほど。大体読めた。推測だが、そこに武蔵坊弁慶のクローンもいたのではないかね?」

 

「!?なぜ弁慶のことまで・・・」

 

「愚か者!わざわざ教えてやる必要などないというのに!」

 

「うわわ・・・すみません」

 

揚羽の怒りに義経は小さくなった。

 

「そう怒ることはない。何度も言うが私に戦う意思はない。だというのに挑んでくるから迎撃しているに過ぎない。・・・そうだな。一つ余興をするとしよう」

 

彼がそう言うと五本の剣を残して残りすべてが大地に突き立った。

 

「なんのつもりだ?」

 

「余興と言っただろう。ここでの出来事は目を覚ませば忘れてしまう。だが、記憶に直接刻み込むのならばある程度残るだろう。ただし相応の苦痛を伴うが。挑戦するかね?」

 

挑発するように言う男に百代は獰猛な笑みを浮かべる。

 

「いいじゃないか。乗ってやる!」

 

「百代!一人で決めるな!」

 

「交渉の大事さを貴女は理解しなさい!」

 

揚羽とマルギッテが批難する。だが男は構わず余興のルールを告げた。

 

「答えを得る機会は一人一回だ。それ以上は君たちの脳が持たない。私が放つ剣を弾く、もしくはいなすことが出来れば答えを五人すべてが得られよう。だが、気を付けることだ。これは本来あり得ない強硬手段。五回チャンスはあるが、五回全て受けたとして無事で済むとも限らない。これ以上は無理だと判じたならば大人しく回避することだ。そうすれば答えは得られないが苦痛を伴うことはない」

 

そう言って彼は宙に浮かぶ剣の一本をこれから放つぞと言わんばかりに前に出す。

 

「さて、誰からやるかね?」

 

「・・・いいだろう。ただし一つ融通してほしいのだが。我と百代は素手でも構わぬが他の三人は武器が要る。どれでも構わぬから武器を三本よこせ」

 

男の問いに揚羽は待ったをかけた。

 

「そのくらい構わない。あくまで余興なのでね。何が必要かな?武器ならば大抵準備できるが」

 

「では刀を」

 

「義経も刀を」

 

「トンファーを」

 

三人がよどみなく己の武器を告げる。

 

「まずは緑髪の少女から。それを使うといい」

 

「え?ひゃ!?」

 

言われて由紀江は初めて気づいた。自分の足元に一振りの刀が突き立っていた。

 

(長さも重さも丁度いい・・・でも、恐ろしい名刀と見受けました)

 

地に無造作に突き立っていた刀を何度か素振りして感触を確かめる。

 

「あの、これは誰の作ったものでしょう」

 

自分の持っている刀とは比べ物にならない存在感を放つそれを振るって彼女は問う。

 

「さて、誰の作だったか。少しばかり、雷を断ち切ることの出来る太刀だが」

 

「ら、雷切!!?」

 

――――雷切。雷または雷神を斬ったと伝えられる日本刀。複数あると言われているが立花道雪が『千鳥』という刀で雷の中にいた雷神を切ったとされている。それ以降、道雪は千鳥を『雷切丸』と名を改めたと言われている。

 

「小柄な君は源義経のクローンだったか。ではそれを抜くといい」

 

「え、ええ!」

 

いつの間にか義経の傍に突き立っていたのは『薄緑』。同名の刀を義経は九鬼から与えられていたが、手に取ったそれは九鬼から与えられた物以上にまるで初めから義経に吸い付くように手に馴染んだ。

 

「馬鹿な・・・本物の薄緑だというのか?」

 

初めて触ったというのに手足のように、それが一番自然であるかのように舞う義経。

 

「贋作だよ。ただし、本物と寸分違わぬものだがね」

 

「贋作・・・にしては出来過ぎだと思いますが。私のは普通の・・・いえ、これも何か存在感のあるトンファーですね」

 

マルギッテが取ったのは黒い警棒のようなものではなく、金と赤で装飾された中華風のものだった。

 

「では始めるとしよう。誰からやるのかね?ああ、一つ忠告しておくが五人一度にやるのはお勧めしない。脳が破裂してもいいのならば構わないが」

 

余興だといいながら忠告をしてくれるあたり本当に衛宮士郎にそっくりである。

 

「では我が行こう」

 

まずは九鬼揚羽が先陣を切った。

 

「最初から当てる気はないのでね。そのまま立っていれば脇を通り過ぎるだろう。では、君は何を問う?」

 

男の言葉に揚羽はしばし考えた。

 

(魔術については少なからずもう知っている。英霊に関してもレオニダス王に聞いた。であるならば・・・)

 

「ここは何処か」

 

ダン!

 

問うと共に剣が発射される。彼の言う通りこのまま立っていれば顔の横を通り過ぎる弾道。それを揚羽は、

 

「はあっ!」

 

その場で一回転し、裏拳を叩きこんで剣を粉砕した。だが、

 

ザリザリザリ――――

 

「うっ・・・!!」

 

「ぐあっ!」

 

「きゃあ!」

 

「うあああ!」

 

「ぐうう!!!」

 

脳が直接かき回されるように知らない情報(記録)が無理やり頭に叩き込まれる。

 

 

――――■■座。■■結界、無限■■製。衛■■郎に許された唯一の■術。心■風■の具現化。■法に最も■い大■術。

 

「がっ・・・これが・・・情報だと・・・ほとんど分からぬではないか・・・!」

 

「しかもこの脳を直接かき乱されるような痛み・・・衛宮士郎はこれで・・・!」

 

一撃。たった一本砕いただけで彼女らはダウン寸前だった。

 

「だから言っただろう。本来あり得ぬ強硬手段だと。英霊とはただ伝説となった人間ではない。英雄が死後、祀り上げられ精霊化した存在。世界の法則から解き放たれている存在だ。その記録を生身の人間が得ようなどとおごりにもほどがある。全て読み取れないのはそれが貴様らの限界ということだ。それ以上得ることを貴様ら自身が拒んでいるだけだ」

 

これは必然だった。必要のない行為だった。それ故に愚かな選択をした彼女らに彼は辛辣な言葉を投げかける。

 

「それで、あと四度チャンスはあるが。やめるかね?」

 

頭を抱えて息を荒くする五人に彼は問う。

 

「私が、いきます」

 

「まゆまゆ・・・」

 

由紀江が痛む頭を抱えて前に出る。

 

「そうだな。あまり無茶な問いをしないことだ。神秘の度合いが深ければ深いほどその苦痛は大きくなり、得られる情報も欠落するだろう」

 

と、彼はアドバイスをするように言った。

 

「では、士郎先輩はどうして倒れたのか」

 

ダン!

 

(情報)が飛んでくる。一発であの痛み。恐怖を振り切って彼女は雷切で剣を切り払った。

 

ザリザリザリ――――

 

――――英霊の記憶(記録)の流入による脳への■■荷。記憶と■録の混濁への■抗

 

「うう・・・」

 

「さっきよりはマシだな・・・」

 

「意味もなんとなく理解できました」

 

「だがこの頭をかき回されるのは慣れんな・・・」

 

「衛宮さんはこれで倒れたんですね・・・」

 

フラフラとしながら彼女達はそれでも膝をつかなかった。

 

「何度も言うがこれは夢だ。本来あり得ない夢。じっとしていれば何事もなく覚めるというのに何をそんなに意固地になっているのかね」

 

「そんなこと、決まってます・・・!」

 

義経が前に出た。

 

「衛宮さんのこと、もっと知りたいから!あんなかっこいい英雄(ヒーロー)いないから・・・!」

 

その言葉に男は嘆息した。

 

「それで、君は何を問うのかね」

 

「英雄の条件とは」

 

ダン!

 

(情報)が飛ぶ。それを薄緑で弾く!

 

ザリザリザリ――――

 

――――英雄とはその人物を他人が評価したものに過ぎず。条件など存在しない。

 

「あれ?」

 

「痛みがほとんど来ないぞ」

 

「魔術関連の問いではないからか」

 

「これは、一文字違っていたら危険でしたね」

 

万が一、義経が英雄になる条件ではなく、英霊(・・)になる条件とでも聞いていたなら大激痛だっただろう。

 

しかし彼女は魔術のことも英霊のことも深く知っているわけではない。これは質問のしようがなかったという所か。

 

「あと二本だ。慎重に言葉を選ぶことだ。今のでわかっただろうが質問によって苦痛の度合いも刻まれる情報も変わる。今の問いは神秘に対する問いというより、私への意見でしかない」

 

「つまり今のは貴方の考えということか」

 

「そういうことだ。ある意味、貴重な機会を逃したとも言えるし、死なずにすんだとも取れるな。では次は?」

 

「私が行きましょう」

 

そう言って次はマルギッテが出る。

 

「衛宮士郎の願いの根幹は」

 

ダン!

 

(情報)が飛ぶ。残り二本。これは神秘への問いというより士郎への問いだろう。

 

ザリザリザリ――――

 

「うう!?」

 

だが、その代償はかなり大きかった。

 

 

――――大災害で体■、全てを■った『士郎』■いう少年を■けた衛■切■の己を■った安堵の■に憧■た。切嗣の死の■際彼の■いを受■継■と誓っ■。

 

「ああああ!!!」

 

「な・・・んで!」

 

「ぐうう!!!」

 

走る激痛にいっそのたうち回りたくなる。

 

「それはある意味禁句だからだ。衛宮士郎の行動理念はいずれ辿る神秘に直結する。特に、ここへの問い(・・・・・・)としては最悪の部類だな」

 

そして残るはあと一本。もう彼女達は限界だった。脳がこれ以上情報を得ることを拒んでいる。本能が、理性がこれ以上は耐えられないと全力で警鐘を鳴らす。

 

「最後は・・・!私・・・だ・・・!」

 

それでも彼女は前に出た。これは彼を知る最大のチャンス。それを棒に振ることはどうしても出来なかった。

 

「これ以上は限界だと思うがね。死にたいのか?」

 

「うる・・・さい!とっととそいつ()をよこせ!!!」

 

「強情な小娘だ。責任はとれんよ。君の一言で他の四人が死ぬ可能性だってありうる。それでもやるのかね?」

 

「――――」

 

百代はちらりと後ろを見る。もうみんな限界だ。自分も正直全て諦めて倒れたい。

 

でも彼女は諦めたくなかった。諦められなかった。唯一自分と対等に立ってくれた男の・・・自分の歪みを正してくれたたった一人の男を諦めたくなかった。

 

「ごめん。みんな、義経ちゃん。多分死ぬ」

 

彼女は直感していた。この問いは劇物だ。致死毒だ。痛みなんかで収まる訳が無い。本当に脳が破裂するかもしれない。いや、その可能性の方が高い。

 

それでも彼女は聞かずにはいられなかった。この衛宮士郎の面影の残る男の――――

 

「ええい、ここまでくればヤケだ!この我の頭を吹き飛ばしたらただではおかぬぞ!」

 

「私は覚悟が出来ています。士郎先輩のことなら命だってかけます・・・!」

 

「私も黛由紀江と同意見です。まったく、祖国にはどう詫びれば良いか」

 

三人は覚悟を固めた。残るは義経だが・・・

 

「義経ちゃん、ごめん」

 

「・・・いいんです。義経も衛宮さんのこと知りたいから。初めての憧れの英雄(ひと)だから!!!」

 

 

――――覚悟は決まった。

 

 

「では、これで君達と会うこともなかろう。さらばだ」

 

ダン!

 

最後の(情報)が飛ぶ。一秒後の死が見える。剣は当たらない。何もしなければ通り過ぎる。だが、百代は去り行く赤い背中に叫ぶように。

 

「お前は・・・!一体誰だーーーッ!!!」

 

バキィ!!!

 

渾身の拳が、最後の剣を砕いた。

 

ザリザリザリ――――ッ!!!

 

「「「「「うああああああああ!!!!!」」」」」

 

 

――――耐えられない。

 

 

 

――――■霊・■ミヤ。奇■を対■に世■と■約した■護■。

 

 

――――視界が歪む。目が機能していない。

 

 

――――衛■士■の理■の果■。世■の■機に呼び■され■抑■力

 

 

――――体の感覚が崩れていく。圧倒的な情報()が全てを壊して回る。

 

 

――――人■世■を■続させる■めの――――

 

 

ザリザリザリ――――!!!

 

 

――――バツン。

 

 

と、テレビの電源が落ちるように。それ以降は読み取れなかった。

 

 




はい。すみません。もっと先に進もうと思ったんですけどダメでした。思った以上に長くなってしもうた・・・

全然話進んでないのに1万4千字。どうしてこうなった。

一応百代達は生きてますよーここでいきなりヒロインを悲劇のヒロインにはしませんので(笑)というか私、ハッピーエンドしか書くつもりないので。悪は問答無用で告死天使(アズライール)しますが。

それでは次回お会いしましょう。
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