真剣で衛宮士郎を愛しなさい!   作:Marthe

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みなさんこんばんにちわ。やりたいことが目白押しで順番に苦労している作者です。

今回も…サブタイでわかるか…(斬〇刀ではありません)

士郎…うーんどうしようかなぁ…彼女完全に士郎と同じ戦闘スタイルだしなぁ…百代も強くなってるしなぁ…

頑張ります


飛燕の如く

その日士郎はいつもより遅く登校していた。

 

別に遅刻するほどではないが、通常通りの登校なのでファミリーと合流できるかもしれない。

 

「おはよー」

 

「おはよ」

 

「おはよー」

 

「おはようございます!」

 

「おはよう」

 

口々に挨拶をして一緒に歩く。やはりファミリーと合流出来た。ただ今回はその他にも、

 

「おはよう!衛宮さん!!」

 

「おはよう衛宮」

 

「・・・。」

 

「おはよう義経、弁慶。もう一人は初めて、だよな?」

 

話しかけるが彼から返答はない。

 

「あれ?」

 

士郎は首を傾げる。なにかしただろうか?歓迎会の時も話しかけんなスタイルだったなと思い返す。

 

「おい与一。挨拶」

 

「ヒィ!な、那須与一だ!よろしく!」

 

剣呑な弁慶の声に悲鳴を上げて最低限の挨拶をする与一。

 

「あ、ああ。俺は衛宮士郎。よろしくな」

 

なんでいきなり悲鳴を上げたのかは分からないが、とりあえず挨拶に成功する。

 

「――――」

 

「な、なんだ?」

 

今度は黙りこくってこちらを・・・片手で顔を半分隠して見つめる与一に士郎は戸惑う。

 

「お前・・・」

 

「ん?」

 

何かしらを言おうとした与一だが、

 

「お前も特異点か?」

 

「は?」

 

意味の分からん答えが帰ってきた。そして、

 

「うっ・・・」

 

何故か大和が痛そうに胸を抑えた。それをみんなでニヤニヤしながら突いている。

 

(特異点?なんだ、まさか俺が魔術使いということを知っているからか?)

 

この世界に来てまだ特異点と呼べるような場所には出会った覚えがないが――――

 

「1234!さあ声をそろえてッ!!!」

 

『1234!!!』

 

「――――」

 

違った。あそこはある意味特異点かもしれない。とてもむさ苦しい空間が一つ目に入った。

 

「意味わからないこと言わない」

 

ドゴス!

 

「痛い!」

 

「――――」

 

なんだか見覚えのあるやり取りだ。

 

と、

 

ドゴーンと何かが星になった。なんか梁山泊がどうのと言っていたが・・・

 

(そういえば林冲から手紙が来ていたな。もうすぐ来るとか・・・)

 

来るのはいいが彼女は梁山泊の傭兵なのではなかろうかと考える。本業を差し置いてどうして川神に来るんだろう?と。

 

(まあ彼女がいると心強いからな・・・ん?)

 

彼の目が遠方の学園の給水塔の上を捉える。そこにいる人物と目が合った。

 

『!!!』

 

しかし目が合ったショートカットの女性はすぐさま給水塔から降りて姿を隠してしまった。

 

(また新入生か。もう決闘騒ぎはごめんなんだが・・・)

 

こちらの視線に気づいたということはまたもや武士娘ということだろう。編入、新入生共に確実に決闘問題に巻き込まれるので正直もうご遠慮したい。

 

と、チリンチリンという涼やかな音と共に、

 

「おは「士郎~」よう・・・」

 

がばちょと百代が引っ付いてきた。

 

「おい。人の挨拶を妨げるな。というか暑い!もう夏なんだぞ!!」

 

ええい鬱陶しい!と引きはがそうとするが最近彼女はメキメキと腕を上げているのでもう強化無しでは容易に外すこともできない。

 

「モモちゃん大胆だね」

 

顔を赤くして引っ付く百代に声をかけるのは葉桜清楚だ。彼女は何やらハイテクっぽい自転車に乗っている。

 

「あーとりあえず、おはようございます、葉桜先輩」

 

「うんおはよう。・・・すごいね。モモちゃんくっついたまま歩けるんだ」

 

「鍛えてますんで。このくらいのおも「てい!」痛い!」

 

気まぐれな猫ばりに引っかかれた。

 

「お前~早速清楚ちゃんにナンパしてからに~こんな美少女侍らせておきながらなんて不潔な!」

 

「いや不潔なのはどちらかというと百代だと思うんだが・・・」

 

百代はあまり女の子を侍らせなくなった。昔はとにかく女の子を可愛がる(お姫様抱っこ)人だったらしいが、彼がきてから全然見なくなったらしい。

 

「衛宮さんってすごい・・・モテるんですね・・・」

 

義経が何処かしょげた感じで言う。

 

「モテる?俺が?そんなわけないだろ。俺なんかを好きになる人なんかいないよ」

 

((((お前(君)その状態で言うの!!?))))

 

ちなみに遠目に見ていたファミリーと義経一行、葉桜清楚が以心伝心した。

 

「そういえば葉桜先輩は随分とハイテクな自転車に乗ってますね」

 

「え?あ、うん・・・スイスイ号っていうの」

 

百代を引っ付けたまま何事もなかったかのように話を進める士郎に清楚は困惑している。

 

(スイスイ号・・・確定だな)

 

ふむ。と士郎は一つの予測が確定したことを悟った。

 

「ほら、挨拶して?」

 

「はい。皆さん初めまして」

 

となんだか聞き覚えのある声で挨拶する・・・自転車。

 

「おお!こいつ喋ったぞ!」

 

(喋る機能必要か・・・?)

 

非常に疑問になる所である。

 

「なあなあ!俺も乗っていいか!?一緒に風になろうぜ!」

 

「断固拒否します」

 

「あ、拒否するんだ」

 

なんとも不思議な自転車。どうやら彼の中で選抜試験があるようだ。

 

「そう言うなよ!いくぞー!」

 

とキャップが強引に乗ろうとした時、

 

「その汚ねぇケツを乗せるんじゃねぇ(ビキッ)」

 

「うおおお!?大和!この自転車怖い!」

 

「ジョークですよ。ジョーク」

 

(いや今マジだったろう・・・)

 

なんともツッコミどころの多い自転車である。

 

「なんでこうも九鬼製のロボはキレやすいんだ」

 

(そういえばクッキーもやたらキレやすかったなぁ)

 

とどうでもいいことを考える。

 

と、

 

猛スピードでこちらに走ってくるバイクを発見した。

 

「――――」

 

あれはダメだ。速度違反だし何より、

 

「狙いは義経ちゃんだな」

 

「ああ。ということで、百代、少しどいていてくれ」

 

彼女は面白そうに引っ付くのをやめた。

 

「義経。ちょっとこっちに来てくれ・・・そうそう。そこでストップ」

 

「え?う、うん」

 

士郎の指示通り中ごろまで来て義経が止まる。

 

「どうするんだ?」

 

接敵まで後一秒、一応証拠は掴まねばならない。

 

「なに、簡単なことだ」

 

そう言って彼は自然体で立つ。そして、

 

「義経ちゃんの鞄ゲット「たわけ」!?」

 

すれ違いざまに義経の鞄を強奪しようとした馬鹿の服の襟首をつかむ。

 

「ぶるるるあああああ!!?」

 

ドゴン!とアクセル全開だったことが災いし、急に体だけ下方向に引っ張られた馬鹿はそのまま地面に叩きつけられた。

 

「え?え!?」

 

義経は何が起きたのか目をぱちくりさせている。

 

「お前なに鞄とられてんの?」

 

「よ、義経の鞄は取られてない・・・ぞ?」

 

義経は自分の鞄と叩きつけられた馬鹿を交互に見る。

 

「一応確認は取った。処理を任せてよろしいかな?」

 

士郎の言葉にスッとクラウディオが現れた。

 

「もちろんでございます。現行犯逮捕として処理させていただきます」

 

いつもの柔和な表情はそこにはなく、問答無用で地面に叩きつけられた馬鹿は連行された。

 

「すっげー。今のどうやったんだ?」

 

「別に大したことじゃない。ひったくりをする以上片手はハンドルから離さなければいけない。それもアクセルは全開の不安定な状態でだ。後は首根っこを掴めば慣性に従って勝手に無防備になってくれる」

 

バイクと言うのはかなり重量があり、しっかりと両手でハンドルを握って跨らないと簡単に倒れてしまう。故に不安定な状態や、きちんとした運転をしなければ乗っている人間が酷い怪我を負いやすい。

 

今回彼がやったのはすれ違い様に逆に相手の襟首をつかんで軽く下に引いただけ。片手運転した瞬間に下に向けて引いただけである。

 

襟首を掴まれると急激に首が閉まる。

 

そうなると咄嗟に残された片手も反射的に放してしまい、無手となり急停止させられた体を置いてバイクはそのまま走ってしまう。

 

跨る部分の無くなった馬鹿はそのまま地面に叩きつけられた。ということである。

 

「それにしたって物凄い握力と腕力がないと出来ないぞ」

 

「そこはそれ、柔道や合気道の応用だ。私のそれは二流だが、こういう馬鹿相手には十分というわけだ。一子、勉強の意味は分かったかな?」

 

「うん!多分勉強してなかったらスゴイ力でやったのかなーと思ってたけど、柔道と合気道の勉強したからわかる!」

 

順調に一子の武術に対する知識が高められているようでなによりである。

 

「でも義経を囮にしたのはちょっと納得いかないね」

 

「こればかりはな。きちんと現場を押さえないとあの手合いはいくらでも無駄口を叩く。だが、すまなかった、義経」

 

「う、ううん!結果的に衛宮さんに助けてもらったし!」

 

「そう言ってもらえると助かる。それと、衛宮でも士郎でも好きに呼んでくれ。同級生だろ?仲良くしてほしい」

 

それまでの剣呑な雰囲気を無散させて士郎は義経に言った。

 

「じゃ、じゃあ士郎君!改めてよろしくお願いします!」

 

生真面目な義経に苦笑を浮かべながら、

 

「ああ。よろしく。義経」

 

と笑顔を浮かべて言った。その笑顔に義経は顔を赤くして俯く。

 

(出たよ衛宮スマイル)

 

(あれで落とされた女子が何人いることか)

 

(大和の所にも来てんのか?)

 

(毎回士郎に会わせてほしいっていう女子がいるくらいだよ。人脈作りには丁度いいけど)

 

と彼の知らぬところでコソコソと喋るファミリーである。

 

――――interlude――――

 

士郎たち一行が登校する中、一人学園の給水塔の上にいた女性、新入生の松永燕は背筋に冷たいものを感じていた。

 

(あれがテレビの英雄かぁ・・・まさかあそこから見られるとは思いもしなかったな)

 

依頼のあった川神百代をここから観察していたのだが、それを衛宮士郎に発見されたのだ。

 

(ここからあそこまで約1キロメートルちょい・・・つまり彼の射程はそれを越えてくる)

 

川神に現れた神域に達するという弓を扱う少年。噂では彼は見える範囲ならば絶対に外さないという。

 

そして彼はあの多摩大橋から自分を完全に視認していた。多分、自分の驚く顔も、立っていた位置さえも寸分違わず見えていたことだろう。

 

なにせこの距離で発見されたのではなく、目を合わせ(・・・・・)てきたのだ。

 

ピンポイントで目を合わせられた瞬間、見えているぞ、と言われた気がした。

 

「これは、武神よりも厄介かなー」

 

そう言って彼女は向かうべき教室に戻る。

 

――――彼女の予想は現実のものとなるのだが。

 

 

 

――――interlude out――――

 

教室に着き、朝のHRを受けていると何やらグラウンドが騒がしくなっていた。

 

「なんの騒ぎだ?」

 

「なんかモモ先輩と新入生が決闘するらしいぜ」

 

決闘、と聞いて士郎は思わず顔を顰める。

 

(またか・・・もう恒例行事だな)

 

幸いなことに今回自分は蚊帳の外。戦うのは百代だが彼女は既に悪癖を卒業し、新たなステージへと進んでいる。

 

心配などする必要もないだろう。

 

(一応見ておくか・・・)

 

大々的な決闘の場合は見学が許可されているので士郎は机に頬杖をついて窓の外を眺める。

 

「あれが西の武士娘。松永燕か。まさに技のデパートだな」

 

小島梅子が言う通り、松永燕なる女生徒は事前に準備された多種多様な武器で百代とやり合っている。

 

だが・・・

 

「あれじゃ無理だと思う」

 

「そうだな。正直、士郎の方が厄介だ」

 

「なんか士郎の劣化版みたいね」

 

戦力筆頭たる京とクリス、一子の評価は辛辣だった。

 

確かに彼女は巧い。油断のない百代とよくやり合っている。だが、こうしてやり合えているのは百代が相手を殺さないようにしているからに過ぎない。

 

それに彼女のバトルスタイルは限りなく自分に近い。多くの手段と戦略を駆使して勝ちに行く万能系アタッカー。

 

既に士郎は川神院で何度も百代と手合わせしているので彼女からすれば実に退屈極まりないだろう。

 

現に彼女は最初こそ楽しそうな顔をしていたが、今では退屈そうに攻撃を捌いている。

 

(これはタイミングが悪かったな。俺が色々な武器で百代と戦ってしまったから明らかに不意を突く意図がズレてしまっている)

 

所詮自分の戦闘は二流止まり。だがその技量は様々な経験と研鑽により一流一歩手前まで来ている自信はある。

 

なにせ彼女達と自分とでは本来10年の開きがあるのだ。こればかりは致し方ない。

 

いずれ彼女も自分と同じ戦い方を目指すのかも知れないが、現時点では士郎の劣化版と言われてしまっていた。

 

(だが妙に戦い方がズレているように感じるな。あれは本来の戦いをしていないと言ったところか)

 

どうにもあれは隠し玉を持っている気配がする。

 

それがなんであるかは分からないが、恐らく特殊な武器を念頭に置いた動きなのだろう。

 

未熟、というのではなく、あちこちにズレや違和感があるのだ。衛宮士郎の投影がある魔術からこぼれ落ちた副産物に過ぎないのと同じような気配。

 

(まぁ、それが何であるのかは知らないが敵対することはなかろう)

 

どうやらそもそもは百代の実力の様子見なのだろうが、予想以上に百代が本気で打ってくるので松永という先輩は既に余裕をなくしている。

 

「なぁ、士郎は松永先輩と会ったことあるのか?」

 

あまりにもバトルスタイルが似ているからだろう。大和が聞いてきた。

 

「いや?初対面・・・というか今初めて戦っているのを見た。随分と物好きな人間もいたもんだな」

 

「士郎の戦い方は特殊だからなぁ・・・なんつーか、挑発してこない士郎みたいな」

 

「どうかな。あれは多分必要ならやると思うぞ。どっちかって言うと大和に近いかもしれないな」

 

本気の彼女なら恐らく躊躇いなくなんでも使って勝ちにくるだろうと士郎の心眼は見抜いていた。

 

(予見が甘かったな)

 

勝敗は決していた。百代の一撃を避けきれなかった松永燕が地に叩きつけられるのをもって、決闘は終了した

 

 

 

 

昼時。今日は昼の後に体育があるとあって人一倍賑わっている。

 

「衛宮定食だ!」

 

「おうよ!」

 

士郎も提供の回転率を上げる。

 

キツイ訓練前に大量の食事をとるのは一件悲惨なことになりそうに思えるが、実際はしっかり腹に溜めておかないとエネルギー切れになるのだ。

 

その点衛宮定食は量も丁度良く、栄養供給には持ってこいである。

 

「俺様もキター!」

 

「ガクト!お前もすっかり常連だな」

 

レオニダスの訓練を受けるようになってからガクトは人一倍強くなった。

 

当然筋肉がついて鈍足になったわけではない。ただ隆起させる筋肉から動くことを前提としたアスリートの筋肉だ。

 

「先生オススメだからな!それに安価で栄養満点!逃す手はねぇ!」

 

「あまり食いすぎるなよ。せめて、プロテインジュース一杯にしとけ」

 

忠告は承知の上、ということだろう。今日のガクトは大盛とは言わなかった。

 

「次!」

 

「初めまして!松永燕です!」

 

と、いきなり挨拶と共にカップ納豆を出された。

 

「初めまして。2-F組衛宮士郎です。納豆は今後検討させて頂くということで」

 

彼女はただの西の武士娘ではなく、納豆こまちと呼ばれるいわゆる商品広告アイドルもやっているらしい。

 

松永納豆は通常の納豆よりも栄養価が高く人気も高いとか。

 

「ぶー。そう簡単に採用とはいかないか。今なら格安提供だよ?」

 

「そう言われても、献立との兼ね合いもありますからね。ご注文は?」

 

「むー。衛宮定食を頂きますー」

 

と唇を尖らせる松永燕。戦闘は置いておき、とりあえず百代と仲良くしてくれそうなことに安心する。

 

「はい。初めての方用デザートもどうぞ」

 

このデザートはいつぞやの試作品だ。

 

厨房のお姉さま方からの評判も高く、正式導入となったが、数に限りがあるので初めての方用と、放課後に半食券一枚と交換できるようになった。

 

「おお!これが噂の衛宮定食。栄養バランスも量も丁度よさげだねん」

 

「それが売りですから。それと、デザートは大きな声では言わないように」

 

一応忠告しておく。このデザート。

 

義経達の歓迎会の際に士郎が鬼のケーキを作ったことでこのデザートも絶品なのではと噂が立ち、実際絶品ということで放課後はこれを取り合う決闘が勃発することがあるくらいなのである。

 

特に桃で作った場合、百代がガチで決闘に混ざるので大変なことになるが、それもまた努力と研鑽ということで特にストップはかかっていない。

 

「ありがとねん!それじゃ!」

 

定食を受け取ってさらりと彼女は居なくなった。

 

宣伝の仕方も心得ているということだろう。

 

「衛宮定食、生卵付きです」

 

あいよっとマルギッテに答えて準備する。

 

「生卵付きで大丈夫か?次体育だぞ」

 

「この程度で無様なことにはなりません。それより、貴方の傷は大丈夫なのですか?」

 

もう完治しているというのにマルギッテは心配そうに言う。

 

「この通り問題ない。もちろん体力もな」

 

あれから随分経ったというのに彼女は心配性だ。

 

「心配してくれるのはありがたいけどちょっと過保護じゃないか?」

 

「何を言うかと思えば・・・貴方が事あるごとに無茶をするからです!」

 

「おおう・・・悪い悪い。俺が悪かった」

 

グワリと食い気味に言うマルギッテに思わずのけぞる士郎。

 

「今のところ決闘騒ぎもないし平和に過ごさせてもらってるよ」

 

「当然です(一体私がどれだけ走り回っていると思うのですか)」

 

本当は士郎への決闘は少なからず希望者がいるのだが、そのほとんどがマルギッテに防がれているのだった。

 

それもこれも彼が無茶をしないため。

 

決闘を好かない彼は何かと無理や無茶をしやすいのだから。

 

「マルには感謝しても足りないな。ありがとう」

 

「・・・ッ(その笑顔はやめなさい!)」

 

顔を赤くして彼女は定食を受け取って去って行った。

 

「さて次は・・・お」

 

「え、士郎君定食!」

 

「主。衛宮定食」

 

「そ、そうだった!」

 

義経主従だ。彼女達も今回が初めてなのでデザートを付ける。

 

「トッピングはどうする?卵とふりかけ、納豆が選べるけど」

 

一応この三種類は初期から準備されていた。といっても、結構味を濃いめにしているので選ぶ生徒は少ない。

 

しいて言えばマルギッテの様に卵を選ぶ生徒が多い。濃いめにはやはり卵が合うのだろう。(マルギッテは生卵をそのまま食べるのだが)

 

「えっとどうしようかな・・・」

 

「今回は初回だからデザートが付く。だからノーマルがいいと思うぞ」

 

「ちくわはないのかい?」

 

弁慶がちょっと幸せそうな顔で聞いてくる。大和から聞いたのだが、彼女はちくわが何よりの好物らしい。

 

「奇遇だな。揚げ物がちくわ天だ。中にもちょっとしたものを仕込んであるから感想を聞かせてくれ」

 

奇遇とは言ったがちくわをおかずに考えたのは大和に教えてもらったここ最近からだ。

 

そう言えば結構応用が利くなと思ったのだ。天ぷらとしても美味しいし、空洞の筒の中にポテトサラダなんか入れると結構ボリュームもある。

 

キュウリなどと和えて酢の物にもイケる。酢は体にいいので定食のおかずとしてとても都合がよかった。

 

「それじゃあそのままで・・・うわあ!このデザート美味しそう・・・」

 

「あまり大きな声で言わないようにな。強奪されるぞ」

 

「ええ!?」

 

「そういえばデザートがうんぬんで決闘がしょっちゅうあるらしいね」

 

「もとは試作だったんだけど随分と人気が出ちまって・・・放課後、初回の人に渡した残りを売りに出したんだけどこれがまた・・・」

 

もう新しい名物となってしまった幻の衛宮定食のデザート。初回の人間が大分減ったのでやめようかとも思ったのだが。

 

どうか無くさないでほしいという嘆願書が学園に提出されて結局数量限定ということで放課後に出しているのだ。

 

「ラッキーだね主」

 

「うん!美味しくいただきます!」

 

「おう!味わってくれ!」

 

そうして義経主従はテーブルへと向かっていった。

 

「今日も大繁盛。ありがたいことだな」

 

と士郎はつぶやく。食べる皆が笑顔なのが実に嬉しい。

 

 

 

 

 

 

こうして昼休みを終えるといよいよ体育(訓練)なのだが・・・

 

「今日は基礎トレーニングを軽めにしてバスケットボールなるスポーツを致しますッ!!!」

 

と集合した体育館でレオニダスが言いだした。

 

(バスケか。皆が現代式スパルタに染まってるのもあるが、レオニダスも十分現代に染まって来てるなぁ)

 

彼の時代にあった競技といえばオリンピア祭が有名だが、そこにバスケットボールなどの種目は無かったはずだ。

 

それもそのはず。バスケットボールの発祥の地はアメリカだ。彼のいたギリシャとは遠い場所。

 

レオニダスはその好奇心を遺憾なく発揮し、数学などの勉学だけでなく現代の知識もギュンギュン吸っているのだろう。

 

「今回も個人に合わせたリストバンドを装着していただきますが、通常より軽めを設定いたします。でないと関節を痛めますからな!」

 

と事前に準備されていた九鬼製の重りの仕込めるリストバンドを各自が付ける。

 

だが今回はそこにレオニダスが立っており、いつも通りの重量から彼の計算に基づいた重量へと変更している。

 

すでに何度も使っているのでレオニダスから増量の指示が無い生徒はもう自分の設定重量を覚えているので個人への伝達が必要ということだろう。

 

そうして各自リストバンドを装着(指示によりしない者もいる)した中でチーム分けがされ、

 

「ではッ!5分間1クォーターとします!始めッ!!!」

 

赤と白に分かれたチームによるジャンプボール。だが、

 

「ぬお!?」

 

「くっ・・・」

 

互いの選手が予想以上にジャンプできずに低空でのボールの取り合いになった。

 

(それはそうだ。基礎トレーニングならまだしも運動となれば体幹がズレる)

 

かく言う士郎もこのバスケはキツイ。

 

走るだけなら何とかなるがドリブルやシュートとなると重りによる体幹のズレも計算に入れないと思ったように飛べないどころか、あらぬ方向にボールが飛ぶ。

 

「こっち開いてるぜ!!」

 

と白いビブスを付けたキャップが素早くマークを外して出てくる。

 

(流石キャップ、この状況で早々に攻め上がってくるか・・・!)

 

残念ながら士郎は赤いビブスを着た赤チームなので彼の進撃は好ましくない。

 

「ガクト!」

 

「まかせなさい!!」

 

ドン!とガクトが大きな体でディフェンスに入る。彼は今回士郎と同じ赤チームだ。

 

「いくらキャップでも抜かせねぇぜ!」

 

「ちっくしょ・・・重りで上手く動けねぇ!」

 

普段の彼ならスピードを活かしてフェイントなどで突破するだろうが中々そうはいかない。

 

「そのボールもらった!」

 

パン!と士郎がボールを奪う。だが、

 

(想像以上にやりづらいなこれは!)

 

意識が強制的に体の安定に向かせられるのでボールの扱いが疎かになる。ならばと士郎は3ポイントシュートを狙う。

 

「リバウンド!!」

 

「おりゃあああ!!!」

 

ゴール下にいた両チームが外れることを狙って跳ぶ。

 

だが士郎とて曲がりなりにも弓兵を頂く手腕を持つ。弓とは違うが弓が手となり矢がボールとなっただけ。

 

何度か使用したカレーシスターの得意とする投擲技術の応用で上手くボードに当ててシュートを入れた。

 

「やるじゃねぇか士郎!」

 

「ガクトのディフェンスがあってこそだ。お前がそこに居てくれると安心する」

 

パン!と互いの手を鳴らし、再度ゲームへと戻る。第一クォーターは赤5点白4点の接戦だ。

 

五分という本来の半分の時間だが、かなり消耗が激しい。第二クォーターは女子が務めるので男子は五分間見学だ。

 

「キッツイなこれ!」

 

「ああ・・・流石先生だ。かなり負荷かかるぜ・・・」

 

「僕はなにもつけてないけどそれでもついていくので精一杯だよ」

 

「そう言うな。モロだってシュート入れたろ?」

 

実は士郎の入れた3ポイントシュートとモロが入れた2点が男子一回目の成果だ。

 

白はやはりキャップがいるのが大きい。彼は先導力もあるので油断するとすぐに懐に入られる。

 

「女子も接戦だな」

 

「義経と弁慶がいるけど、彼女等もこの体育(訓練)はキツイだろうな」

 

女子もレオニダス監修のもとリストバンドを足や腕に付けている。いかな英雄のクローンや実力者の多い武士娘達もこの体育は辛いだろう。

 

「こっちです!川神一子!」

 

「OKマルー!」

 

赤チームの一子が同じチームのマルギッテにパスをするが、

 

「それは甘い」

 

パシン!と白チームの京がカットした。

 

「ああっ!?」

 

「クック・・・勝利を大和にッ!」

 

今回白チームに大和がいるので京は特に張り切っている。

 

だが彼女も大粒の汗を流していることからみてかなり消耗しているだろう。

 

「レオニダス、これが終わったらすぐ男子か?」

 

士郎の問いにレオニダスは首を振った。

 

「いえ。私の計算が正しければインターバルを通常より3分多く取るのがいいでしょう。この競技は実に体を酷使しなければなりませんからな!」

 

本来ならば1クォーターと2クォーターの間にインターバルを取るが、男子と女子の入れ替わりなので2クォーターと3クォーターの間にインターバルを取る特殊ルールとするようだ。

 

「それはありがてぇな。正直5分でもクタクタだぜ」

 

「でもこれいいね。運動が不得意な僕らでも勝ちを狙いに行けるのが新鮮だよ」

 

「大抵俺らは競り勝てねぇからな。リストバンドはねぇがしっかり走らねぇとおいてかれる」

 

「この体育やるようになってから俺の体にも筋肉がついたぜ・・・」

 

モロやスグル、ヨンパチなども順調に体が鍛え上げられているようである。

 

「源氏式!バックシュート!」

 

と白の義経が3ポイントを狙うが、

 

ガツン!

 

とリングに弾かれる。

 

「「リバウンド!!!」」

 

「おりゃああ!!」

 

「せい!!!」

 

赤の一子と白のクリスが競り合うようにジャンプする。小柄で一見不利な一子だが、気のコントロールを始めた頃の飛び上がる現象を応用したのか若干クリスより手が伸びている。

 

「取ったわよー!」

 

「くっ!僅かに届かなかった!」

 

速攻とばかりに一子がレーザービームのようなパスを遠方に放る。

 

そこにいたのは赤の弁慶。

 

「けだるい・・・でも負けはやだねっと!」

 

俊敏な動きでドリブルし、そのままダンクシュートを決めた。

 

「ぬぬ・・・流石弁慶・・・」

 

褒めつつも悔し気な義経。今回義経主従は敵対してしまったので素直には喜べないのだろう。

 

「重りつけたままだとシュート難しいからね。直接突っ込んだ方が確実」

 

とユラリユラリとしながらピースを決める弁慶。

 

「やるなぁ・・・重りつけてダンクかよ」

 

「ガクトはイケそうか?」

 

「うーんちょいキツイ。普段なら余裕だけどよ。これ着けてるとなぁ・・・士郎はどうよ?」

 

「出来ないことはないけどファウル取られそうだな。今の一子みたいに速攻だったなら狙ったかも」

 

と男子もお互い意見交換をする。そんな様子を上のガラス窓からのぞくのは他学年達だ。

 

レオニダスの体育は今のところ2年生にしか行われていない。

 

理由は簡単でレオニダス自身が勉学の授業を受けたいからだ。

 

学園側としては体育の教師として雇いたいくらいなのだが、彼の意向も汲む形で卒業後要検討となっている。

 

彼が英霊、本来幽霊というのは鉄心と一部の教師陣しか知らない。なのでいついなくなってもいいのなら、とレオニダスは告げていた。

 

しかし、彼の行う体育(訓練)は学園生徒を飛躍的にパワーアップさせているので、見学したいものは事前に申請しておけばある程度許される仕組みになっている。

 

百代は言わずもがな、葉桜清楚と京極、そして松永燕も今回見学していた。

 

「話には聞いてたけど壮絶だねん」

 

「ああ。レオニダスさんはガチのスパルタ人だからな。東西戦でもその力はしっかり発揮されてたし」

 

「衛宮士郎君の弓はあったが彼はほとんど戦闘には参加していない。そう考えるとやはり2年生の自力がとても上がっているということだな」

 

「すごいね。あの重りちょっと持ってみたことあるんだけどすごく細かく調整できるようになってるんだよね」

 

編入したばかりの燕と清楚はびっくりまなこで授業を見ている。

 

驚くのはやはり異常なまでの効率性だろうか。決して無理はさせず、かといって余裕は持たせない。ギリギリを攻めるレオニダスの手腕は驚きの連続だろう。

 

(こんなことしてたら西が置いてかれるのは当然。だって段違いだもん)

 

確かに西も厳しい訓練や運動を自分に課しているが、ここまで効率性と忍耐力を求める訓練を定期的にやり続ける者はいない。

 

休息も自分の飛躍には必要な物。だがそれは人によってまちまちで、しかも厳しくし過ぎれば成長阻害となり、休み過ぎればそれは堕落になる。

 

その点この体育は非常に合理的だ。こんなことを毎日定期的に、あるいは個人指導などでしていればそれは差が付くだろう。

 

そして、

 

「お!士郎がまた3ポイント入れた!!やるなぁ・・・流石私の男!」

 

(衛宮士郎君かぁ・・・厄介なことしてくれたねん)

 

情報にあった川神百代はスロースターターで油断しまくりのどうにかすれば勝てる存在だった。

 

だが朝のHRで戦った彼女は常にミドルギア。ハイでもなくローでもない。自分にとって一番ベストな走り出しをする油断ならない存在になっていた。

 

様子見のはずがあっさりと負かされてしまった原因は間違いなく彼女がご執心の衛宮士郎にある。

 

彼は恐らく自分と同じタイプの人間なのだ。勝つべき時は何を使っても勝ちに来る。それで川神百代は既に変えられてしまっていたと彼女は睨んでいた。

 

(それにあの命中率。まるで束縛が無いみたい)

 

彼は毎回ではないがフリーになると3ポイントを狙う。しかもそれは間違いなく入るのだ。重りで体幹にズレが生じているはずなのに当たり前のように修正してシュートを放つ。

 

バスケットと言うのは全身と体力を激しく使うスポーツ。頭脳だってハイスピードで回転させなければならない上、それを長時間維持しなければならない最も過酷なスポーツの一つと言える。

 

それを重りという負荷をかけた状態でやるなど学生がやるレベルではない。もはやアスリートレベルだ。

 

全ての学校がやっていないわけではないだろうがそれこそ全国大会にいくような部活動をやっている人間がやることだろう。

 

それを一般生徒が体育でやっている。それで伸びないはずはない。

 

(どうしようかなぁ・・・依頼、キッツイよこれ)

 

想定外。何もかもが想定外だ。東のレベルという意味でも、打倒川神百代という意味でも。

 

(だから依頼を蹴ってもいいなんて突然言い出したんだねん。依頼主も相当びっくりしたわけかー)

 

ちらりとガラス越しに体育を見学する小柄な少女と執事をみる。

 

この場には当然一年生もいる。依頼主たる彼女もいるというわけだ。

 

(依頼達成にはまず衛宮士郎君からかな)

 

まだ諦めはしない。諦めは本当にやれることがなくなったその時まで。それが彼女のやり方。

 




あかん。衛宮定食とバスケ(体育)しか書いてない。松永先輩ちゃんと書けてない気がする…でも原作考えるとこのくらいなのかなぁ…神出鬼没でガチのルートにならないとあんまり姿を見せないイメージです。

バスケの話は結構調べたのと、実は私の通っていた学校でバレー部が何故か部活の時間にバスケットをやっていることを目にしまして、なんでか聞いてみた所、体力をつけるならバレーをやるよりバスケやった方が鍛えられるというコーチの方針だったそうです。聞いた時は目から鱗でした。もちろんきっちりバレーの練習もしておりました。

次は水上体育祭かな?一応投票で選ぶと公式サイト様にはありましたがそっちの方が面白そうなので。だって水着できゃっきゃうふふ(バトル)なんて面白そう。

というわけでまた次回お会いしましょう。
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