真剣で衛宮士郎を愛しなさい!   作:Marthe

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皆さまこんばんにちわ。頭をフラフラさせながら眠気と戦っている作者でございます。寝るのを我慢しているわけではありません。眠気があるのにいつまでも意識が落ちないまま朝を迎えているだけです(白目)

と前座はこのくらいで今回は体育祭が終わった後の期末考査になります。

川神学園は珍しいことに中間考査が無いみたいなんですよね。嬉しい…のかなぁ?その分うっかりFより上の組から落ちると早々戻れないんですよ。だって中間考査無いから。他にもテストの類はあるのでしょうが、組み分けに関するテストはほとんど機会がないんでしょうね。そう考えるとS組ってやべーなって思います。

ではよろしくお願いします。


編入と転落

水上体育祭が終わり遂に期末考査である。

 

前週の金曜集会でみっちり三日漬け?をした風間ファミリーは何とかかんとか赤点を免れていたようだ。

 

「ほー・・・今回も何とか赤点回避・・・最初は嫌だったが大和と士郎のおかげだな」

 

「まさか毎回あんなギリギリで回避してるとは思わなかったけどな・・・」

 

金曜集会で大和が勉強を言い出した時はそんなこともやるんだ、良いファミリーだなと思ったのだが。

 

いざ勉強を始めるとそれはもう酷い有様だった。

 

ガクトを筆頭に一子と百代、そして意外なことにクリスが日本史は問題ないのに他が怪しいという何とも言えない状態だった。

 

さらに、

 

「期末考査・・・ですか?つまりこの日まで学んだことをきちんと活かせるか、ということですね!?これはいけません!至急勉学に打ち込まねば!!!」

 

とレオニダスまで勉強をし始め、対期末考査勉強大会となったわけである。

 

「いや、お前は受けなくてもいいんじゃないのか?」

 

「何をおっしゃいます!日々の予習復習も大事ですが、こういう実戦訓練も重要なのです!」

 

「実戦訓練て・・・いや、そう言えなくもないけど」

 

勉強の実戦という意味では間違っていないが、どうしてそういう表現になるのか、このスパルタ人は。

 

「何とかセーフ!大和、京ありがとう!」

 

「いや何とかじゃなくてこのくらいはせめて自力でやってくれ」

 

「そうよ、あなた、どうします?」

 

「ご褒美準備してたけど無し!」

 

「クゥ~ン!!」

 

と愛犬を躾ける大和夫妻(仮)。

 

「うわ~ん士郎~!」

 

「ってなんでこっちに来るんだ一子・・・」

 

「あらあなた!うちの子が隣の衛宮さんちに!」

 

「そろそろその手には乗らないぞ?」

 

と夫婦漫才を繰り広げる二人は置いといて、泣きつく一子はどうしたものか。

 

「うーん・・・あれ?」

 

ふっと成績の貼り出されたボードを見ていた士郎はあることに気が付いた。

 

「一子。この成績表に違和感が二か所ある。それに気づけたら・・・そうだな俺の弁当をやろう。どうだ?」

 

「ほんと!?士郎のお弁当!!!」

 

小柄な体を活かして一子は成績表がよく見える位置に潜り込んでいく。

 

「士郎の弁当って・・・士郎自身はどうするんだよ」

 

「別に食券を使えばいいだけだろう?食券余ってるんだよ。こういう時にでも使わないとな」

 

彼は基本的に弁当を持参しているし、食堂を切り盛りする一人でもあるので、食堂の味を定期的に確かめる為に使うのだがそれも一カ月に数回あるかないか。

 

そして依頼や校内アルバイトなどをこなしている彼は食券をもらうことが多いが、使うのは先ほども言った通りだ。

 

そこにファミリーとしての依頼もあるのでとにかく余りまくっているのである。

 

「羨ましい限りだな・・・と、士郎の言う違和感ってあれか?」

 

大和は見つけたようである。

 

「当たり。京は当然見えてたよな?」

 

「うん。あれは片方は予想通り。片方は大事」

 

彼女も問題ないようだ。

 

そして一子が人垣からぎゅむりと出てくる。

 

「見つけたわ!り――――」

 

「小さな声で。見ればわかるが一応配慮は必要だぞ?」

 

唇を人差し指で止められた一子はうんうんと頷いて、

 

「じゃあ答え合わせだ。二つの違和感は?」

 

「えっとね――――」

 

一子は見事正解を言い当てられたので士郎のお弁当にありつけることになった。

 

「まぐまぐ・・・美味しい~!」

 

「ってもう食べてるのか?早弁にもほどがあるだろう・・・」

 

まだ成績が貼り出されてすぐだ。つまり登校してすぐである。

 

前日、前々日の二日に分けて行われた期末考査で出た結果がこうして朝から張り出されているのだ。

 

一子の事だからまた早朝から鍛錬を行っていたのであろう。

 

今では打ち上がることも無くなり、ある程度の気のコントロールが出来るようになったので、基本のおさらいと新技の習得に力を入れているらしい。

 

「しかし意外・・・いや、必然か?」

 

「かもね。義経と弁慶、与一に最後の一人がS組に入ったから多分油断してたんじゃないかな」

 

S組にはトップの50人しか入れない。

 

その内4枠が突然取られたことで4名の脱落者が出ることになる。

 

士郎は彼女等の編入時ぶっ倒れていたので知らないが、弁慶は常に3位以上をキープしないと退学になるという。

 

「その代り川神水を飲めるんだったか・・・」

 

「そういえばあの後どうなったの?」

 

ビーチバレーに勝利した士郎は一子がいらないと言ったので総取りとなってしまったのだが・・・

 

 

 

 

 

 

 

『川神水、ねぇ・・・料理酒、って酒じゃないんだった。豆腐でも作るか?』

 

と、よりにもよってそのまま味わうのではなく料理の下味か豆腐を作る際の材料として使おうとしたところに弁慶がズシャア!!と滑り込んできた。

 

『待った!ちょっと待った!負けた私が言うのもなんだけどそれを味わわないで料理酒にするのだけは!というか豆腐にしようなんてなんてことを!!』

 

と弁慶が懇願するので、

 

『なんだ、これ好物なのか?』

 

『YES!!!これこの通り!ひょうたんの中は川神水!』

 

『すまない士郎君。弁慶は川神水には目が無くて・・・』

 

困ったように言う義経に士郎はふーむと考える。

 

『そういうことなら譲ってやろうか?』

 

『ふ、ふおおおお!!』

 

『ま、待ってくれ!義経達は一応負けた身なんだ。はいそうですかって受け取れ『主ぃ~~!!』うわああ!』

 

断ろうとする義経を弁慶が押し倒してコチョコチョしている。

 

『だ、だめだ弁慶!あはははは!!』

 

『今回だけは!今回だけは!!!』

 

と必死にくすぐって義経の口を封じて何度も頭を下げる弁慶。

 

『わ、わかった!わかったから顔を上げてくれ!周りがすごい目で見てるから!!』

 

とはいえ義経の言う通りはいどうぞ、では格好がつかないのも道理だ。

 

ということで、

 

 

 

 

 

「学食の手伝いを条件に全部あげたよ」

 

「ええ!?あれすっごいレアものだぞ!?飲まなくても売ってお金にすればよかったじゃないか!」

 

「あーそれはそれでもったいないな。折角もらったもんだし、好きな奴に呑ませてやった方が本望だろうさ」

 

それより、と士郎は教室に目を向けた。

 

そこにはまだ新しい生徒の姿はない。

 

(まぁA~Fの間に落ちるんだからここにくるわけじゃないだろう)

 

その眼にはしっかりと映っていた。

 

 

――――林冲 総合10位

 

――――不死川心 総合53位

 

――――番外 レオニダス王 総合25位

 

朝礼の鐘がなり、朝のHRが始まる。

 

「期末考査ご苦労だった。今日は期末考査の結果F組に入る者を紹介する」

 

と、梅子はテスト結果に労いの言葉をかけてから紹介する。

 

「では、入ってこい」

 

梅子の声に中々反応が無い。

 

「ん?おい不死川心(・・・・)!入ってこい!」

 

「「「・・・え?」」」

 

ピキ、と空気が固まった。

 

(なん・・・だと・・・)

 

(不死川・・・?)

 

皆が一様に混乱している。だが実は一番混乱しているのは士郎だった。

 

(あれ!?確かに総合得点はS組クラスだったけど林冲は俺のクラスに来るって言ってたような・・・というか不死川?なんで?)

 

実は事前に士郎は林冲から手紙をもらっており、つい先日衛宮邸の人払いの結界に惑わされて涙を浮かべてオロオロしている所を保護していた。

 

そうこうと混乱している間に着物姿の不死川心が死んだ魚のような眼をして教室に入ってきた。

 

「ほら、挨拶くらいしないか!」

 

「・・・不死川心じゃ・・・」

 

「「「・・・。」」」

 

悲惨な姿に皆何も言えない。確かに彼女はトップ50からこぼれた。

 

だが、よりにもよってなぜF組なのだろうか?

 

「先生ーなんで不死川がF組なんですかー?」

 

とヨンパチが直球の質問を投げかけた。

 

「うむ。実は私の受け持つF以外の組は定員オーバーなのだ。従って空きのあるここに受け入れとなった」

 

(なるほど。そういうパターンもあるのか)

 

よくよく考えてみればあり得る話だ。

 

今回の不死川心のようなパターンがないと一つのクラスに生徒が集中なんてことになる。

 

順位で分けられてはいるが、同率やほぼ同じ成績というパターンもある。

 

それに上の50人からクラスに入れていけば自然と空きはFしかない。

 

(でもそうしたら林冲はなんでS組に行ったんだ?)

 

非常に残念だが、不死川心には次のクラス分けテストまで頑張ってもらうとして。

 

 

 

~~~~S組~~~~

 

「それじゃ新入生を紹介するよ。はいどうぞ」

 

「り、林冲・・・です(あれ!?士郎は!?士郎がいない!!)」

 

「ふははは!不死川が落ちた代わりにお前が入ってきたのか!」

 

「これは素敵な方ですね。どうですか?お食事など・・・」

 

「こらこら話しが進まないからね。とりあえず・・・マルギッテの後ろに座って」

 

「は、はい・・・」

 

しょんぼりと肩を落として歩く林冲。

 

「S組に来るのは意外でした。あれだけ士郎に執着していたお前が士郎とは違う組に来るとは」

 

「ち、違う!私は士郎と同じ組に入るつもりだったんだ・・・」

 

またもしょんぼりと肩を落とす林冲にマルギッテも首を傾げる。

 

「?ではなぜF組に行かなかったのですか」

 

「士郎はF組なのか!?だってすごく物知りだし知識もすごいし・・・それにロンドン留学までしたのに・・・」

 

「・・・もしや、士郎があえてF組に居座っていることを知らなかったのですか」

 

「え、えええ?なんでだ?」

 

「士郎は優秀なS組でしのぎを削るより、仲間達のいるF組でのんびりと過ごしているのです。聞かなかったのですか?」

 

その言葉に目を白黒とさせた林冲は机にべちゃっと倒れた。

 

「・・・絶対S組だと思ってたから聞かなかった」

 

「はぁ・・・お前は何処かそそっかしいですね。よくそれで梁山泊で傭兵などできたものだ」

 

とマルギッテもため息をついた。

 

 

~~~~S組 終~~~~

 

 

「では次の授業から本格的に一緒に活動することになるからな。皆思う所はあるだろうがイジメなどは許さないから覚悟しておけ」

 

と締めて梅子は朝のHRを終えた。

 

「・・・ッ!」

 

ガタッ!と終わると同時に不死川心が教室から出て行った。

 

「あーあ。ありゃあ相当きてるな」

 

「だろうぜ。散々俺らの事を猿だなんだと馬鹿にしてきたからな。いい気味だぜ」

 

「でもああいうのいると正直困るのよねー。むしろ早くSに帰ってくれないかしら」

 

とキャップの声を皮切りにガクトと千花が言った。

 

「ダメですよ千花ちゃん!同級生なんですから仲良く行きましょう?」

 

「でも散々馬鹿にされてきたんだよ?そう簡単に許せないよ」

 

モロがそう言った。彼は仲間、友達を脅かす存在にはかなり冷たくなる。

 

(自業自得と言えばそうなんだが・・・彼女にはこれを良い機会に変えてほしいな)

 

なんとなく根は悪い子ではない気がするのだ。

 

ただあまりにも箱入り過ぎて周りが見えていないというか、傲慢になってしまっているだけだと士郎は思っていた。

 

「不死川嬢がF組へですか。確かに彼女は我らのクラスに度重なる暴言を吐いていましたが・・・それは井の中の蛙だっただけのことだと私は思うのです。ですからお嬢さん方、ここは私の顔を立てて勘弁してやってくれませんかな」

 

レオニダスが腕を組んで真面目な顔で千花やガクトに言った。

 

「まぁ先生がそう言うなら・・・」

 

「レオニダスさんにそう言われちゃうとね。確かにそうかも」

 

「ありがとうございます!レオニダスさん!」

 

委員長でもあり、F組の良心である真与がレオニダスを見上げて言う。

 

「いえいえなんの。私も最初から王で、なんでも手に入る地位にあったならあのように傲慢になっていたことでしょう。スパルタでそれはあり得ないと思いますがね」

 

「そういえばレオニダスさんはどうして王様になったんですか?」

 

「今まで聞いたことなかったな。どうしてなんです?」

 

と皆が聞き耳を立てる。

 

なにせ古代ギリシャで王様になった本人からの証言だ。

 

その辺の学術書など全く意に介さない真実が本人から聞けるのだから。

 

「私が王に、いや優れた指揮者になった理由?簡単です――――」

 

(あ、やべ)

 

士郎は致命的(歴史的に)なことを言おうとしていることに気が付くが、時すでに遅く。

 

「スパルタには私以外に、計算の出来る男が居なかったからですよ」

 

「「「・・・え?」」」

 

(言っちゃったよ・・・)

 

後に一部の人間が提唱する、なぜレオニダス王は王となったのかという質問の回答に、『彼しか計算のできる男がいなかったから』と答える者が多数増え、大口論となるのはまた別なお話。

 

(それはそれとして、まずは林冲と合流するか)

 

今頃彼女も何事かと混乱しているだろう。

 

とりあえずそう結論を出して士郎はS組へ向かうことにした。

 

50位内に入っていたので恐らくそこだろう。

 

「なになに、S組に行くの?」

 

「俺たちも行こうぜ!」

 

「新しく入った奴確認しとかないとな」

 

大和達が一緒についてくるようだ。ここはレオニダスに任せてS組に向かうとしよう。

 

「一体どんな子なんだろうねー」

 

「綺麗な女の子だといいなぁ・・・」

 

「早速決闘してみたいな!」

 

「・・・。」

 

言えない。知り合いで、しかも梁山泊の凄腕なんて言ったら絶対決闘になる。

 

(後はガクトがなーまた大反応するだろうなー)

 

林冲は身内贔屓しなくても美しい人だろう。少し涙もろいのだが。

 

「士郎!!!」

 

「おう!林ちゅおわあ!?」

 

いきなり抱き着いてきた彼女に驚く。

 

「大丈夫か!?怪我してないか!?」

 

「落ち着け林冲!まだ朝のHR終わったばかりだぞ!?」

 

そんなにすぐ大怪我してたまるか!と士郎は思う。

 

「なんだよ士郎の知り合いか!」

 

「あれ?確か前にお姉さまが言ってた人だわ」

 

「なに?それじゃあモモ先輩も知ってるのか?」

 

「つーかてめぇ!こんな美人と知り合いとか一体どういうことだよ!」

 

「ああもう!林冲もガクトも落ち着け!それよりも林冲、どうしてというか・・・なんでS組に?」

 

血涙を流すガクトと怪我がないかペタペタ触ってくる林冲をとにかく落ち着けてなぜ彼女がS組に行ったのか聞く。

 

「そうだ!なんで士郎がF組だって教えてくれなかったんだ!?てっきりS組だと思って勉強してきたのに!」

 

「なんでって・・・聞かれなかったからてっきり知ってるもんだと思ったんだよ」

 

そもそも彼女は自分を追いかけてきた時、衛宮士郎の情報を洗っていたはずだし、学年やクラスに関しては特に隠してもいなかった。

 

さてなんでこんなことになったのだろうか。

 

「大体、手紙にも俺が二年F組だって書いてあっただろう?」

 

「えっ?手紙に?」

 

「・・・。」

 

どうやら見落としたようだ。きっと二年生という所に目が行ってクラスを見落としたとかその辺だろう。

 

「林冲・・・君は本当にそそっかしいな・・・」

 

「う、う~・・・」

 

実を言うと、林冲は士郎の手紙が来るたびに嬉しさでベッドの上をゴロゴロしながら何度も読んでいた。

 

だが、嬉しさのあまり手紙の内容がきちんと頭に入っておらず、士郎がどんな生活をしているとか、どんな体験をしているかなどは一字一句逃さず覚えていたのだが。

 

肝心の士郎自身のステータスの事を彼女は見逃していたのだ。

 

それもそのはず。彼女は士郎の周りにいる人間の中で最も彼と秘密の会話をし、濃密な時を過ごした人間だ。

 

故に士郎の事は既に知っているつもりでいたのが今回の原因だ。

 

「気にするな、と言っても気になるだろうから、むしろおめでとうと言わせてもらうよ。この学園のテストは厳しい。その中で総合10位なんて中々取れるもんじゃない」

 

涙目の彼女の頭を撫でながら苦笑をこぼす士郎。

 

「・・・次のテストは無回答で提出する」

 

「それはやめなさい。いくら何でも問題過ぎる。それは君の経歴に傷をつけることになる」

 

「でも士郎はF組にわざといるんだろう?」

 

先ほどマルギッテから言われたことを問い詰める。

 

「そうだよ。でもこれは俺がそうしたいからそうしているだけだ。本当のことを言うなら今回の期末できちんと上を目指すべきだったんだろうさ」

 

「「「!」」」

 

川神学園S組の学歴はとても大きいものだろう。なにせマンモス校である川神学園の学年50人しか入れないクラスに滞在するということは常に高学歴を維持し続けているということだ。

 

他のクラスが何人なのかは分からないが、大抵25人か50人だろう。FとSを除くとA~E組まであるとして全てのクラスを50人で分けたら350人の同学年生徒がいることになる。

 

350人中50人の中に入るのは相当な努力が必要になるだろう。

 

しかも少しでも油断すれば今回の不死川心のように真っ逆さまになるのだ。

 

「もちろんF組に50人も生徒がいるわけじゃないから違いは出てくるけどな。今後の事を考えるなら間違いなくS組を維持した方がいい」

 

「それじゃ士郎を守れないじゃないか」

 

それでも納得がいかないと林冲は不満げだ。

 

「そういうことなら、尚更林冲にはS組に居てほしいな。何かとFとS組は対立することが多い。だから味方である君が相手の懐にいるのは凄く助かる」

 

これが生死をかけた戦いならいざ知らず。ただの組み分けなのだからこれくらいは彼女の気持ちをずるく使わせてもらってもいいだろうと士郎は苦虫を嚙み潰したように思った。

 

当然、彼女の気持ちを利用しているということに腹が立つが、こうでもしないと彼女は本当に次の試験で無回答提出をするだろう。

 

それでは余りにもよろしくない。彼女が梁山泊としての活動を続けるのかは分からないが、傭兵稼業以外で生活しようとすると学歴は一つの切り札になってくる。

 

それをむざむざ捨てるのは良くないだろう。

 

(なあなあ。もしかしてこの林冲・・・ちゃん?京と同じ人?)

 

(そうねー完全に士郎の事しか頭にないって感じ)

 

(ぐぬぬ・・・自分だって大和の事・・・)

 

(だろうね。だからガクト、ナンパはやめときなよ。絶対酷い思いするよ)

 

(私は大和がいればそれでいいから)

 

(ちくしょー!なんでこう士郎ばっかもてるんだよ!!!)

 

コソコソと二人の邪魔をしないようにファミリーは密談する。

 

(まぁいつものことじゃないか。・・・そろそろ士郎、背中からズタズタにされそうだけど)

 

大和はそう思うことにした。

 

「とにかくそういうことで一つ頼む。だけど戦場でそういうことは絶対しないし、してほしくないから忘れないでくれよ。今回はただのクラス分けだからだ」

 

「・・・わかった。授業以外は士郎と一緒だから我慢する」

 

と林冲は何でもないように言ったが、

 

「「「授業以外?」」」

 

「あ!」

 

やべぇと思ったがまたもや時すでに遅し。

 

「ああ。士郎の友達のみんなだな。うん。私は士郎の家にホームステイしてるから・・・」

 

「士郎」

 

「くるぞ」

 

「お姉さまと」

 

「まゆっちが」

 

「それと」

 

「死ねッ!!!」

 

見事な連携で言葉を紡ぐみんなに士郎は頭を抱えた。

 

(これは非常にまずいのでは・・・?)

 

何故百代と由紀江が来るのかは分からないが、とりあえず美少女のホームステイ先が青少年が一人で住んでいるところというのはまずかろう。

 

「衛宮士郎!今の話は本当ですか!?」

 

「し・ろ・う~!私も詳しく聞きたいにゃ~!!」

 

「うおおお!?マルに百代!?なんでここに・・・というか百代!お前どうやってここに来たんだ!!!」

 

物凄いスピードとイイ笑顔で現れた百代と、既に眼帯を外してガチで追いかけてくるマルギッテに士郎は思わず逃走する。

 

「こうに決まってるだろ!モモワープ!」

 

「その技はもう見切った!」

 

一瞬ブレーキをかけ、廊下を直角に曲がる士郎。

 

百代は士郎が減速した地点に現れた。

 

「チッ!もう私のワープを破るなんて手癖の悪いやつだ!」

 

「手癖もなにもあるか!!目標座標に物理法則無視して飛んでくる方が手癖悪いだろ!!!」

 

ワープである以上、A地点と飛ぶ先のB地点が無ければ成立しないのはよく考えればわかることだ。

 

・・・物理法則とか慣性の法則とかとっても大事な物を無視してだが。

 

結局、士郎は休み時間の度に百代に(マルギッテは林冲に事実確認をしていた)追いかけまわされる羽目になるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

そうしてやっとこさやってきた昼休み。

 

今日も今日とて衛宮定食は大繁盛である。

 

「衛宮定食!」

 

「はいよー。大将!定食一人前!」

 

受付に立った弁慶が後ろの厨房にいる士郎に注文を飛ばす。

 

「だから大将はやめろ!ほら上がったぞ!」

 

文句を言いながら士郎は高速回転で定食を仕上げていく。

 

弁慶がなぜこうして受付をしているのかは、先ほども話したように川神水大吟醸を貰うためだ。

 

一度に全部渡しても良かったのだが、弁慶がなくなりそうな時、その都度貰いに行った方が楽しみだということで、全て渡しきるまで彼女はこうして士郎の手伝いをしていた。

 

「いいじゃん。定食だけとはいえもう小料理屋みたいなもんでしょ?もしくは居酒屋」

 

「それでもこっぱずかしいんだよ!というかなんで居酒屋なんだ!」

 

そこはまだ料理所とかにして欲しかった士郎である。

 

「ふはは!我、顕現であるぞ!」

 

「遂に紋ちゃんも来たかー。やっぱり衛宮定食?」

 

「もちろんである!あと、初めての人間はデザートがもらえると聞いたぞ!」

 

「そうだったね。大将ー!今日のデザートはー!?」

 

大将じゃない!デザートは特別出店のミニくずもちパフェだー!

 

と奥から声が飛んできた。

 

「だって。紋ちゃんくずもちパフェ好き?」

 

「大、大、大好きである!嬉しいぞ!」

 

「ほう。ついに川神の名産品も取り込んだのか。衛宮士郎め、やるな」

 

「おっと、ヒューム爺さんもいたんだよね。二人ともデザートは良いとしてトッピングは?」

 

音もなく紋白の背後にいる金髪執事に驚く弁慶。

 

「納豆、ふりかけ、生卵があるよ。ただ初回はデザートが付くから無い方がいいって大将が言ってたけど」

 

「なら我はノーマルでもらおう!ヒュームは?」

 

「私は生卵付きで」

 

「了解ー生卵も一個ねー!」

 

おーう!と声が飛んできたのを確認して紋白たちには横にずれてもらう。

 

「次の人どうぞー!」

 

「衛宮定食、生卵付きです」

 

「えーとマルギッテ、だよね。了解ー大将ー!生卵付き一丁!」

 

と、受け付け嬢が現れたことで注文は大加速。

 

裏で調理する士郎はてんてこ舞いである。

 

とはいえそこは士郎。大量の注文も素早くこなしていく。

 

ましてや今回はミニのくずもちパフェまで盛り付けなければならないのでとにかく忙しい。

 

「士郎は大丈夫ですか?」

 

マルギッテの問いに弁慶は少し困った顔をした。

 

「状況的には大丈夫じゃないんだよねー。なにせ大将一人で回してるから。でも嬉しそうにやってるから文句も言えないのさ」

 

彼の定食は本当に人気であるが数は50名分しかない。

 

50名と言うとクラス上限であるので一クラス分を出したら終了し、残ったデザートは食堂のお姉さま方に託すのだが、今回はパフェということもあり、今日は放課後も士郎がやらねばならない。

 

「くずもちパフェですか・・・お嬢様も好んで食べていると言っていましたがあれは確か、仲見世通りにあるカフェのものでは?」

 

「うん。なんかよくわかんないけど、宣伝してくれって頼まれたらしいよ。いつもは大将お手製のゼリーやらコンポート、プリンとかなんだけどね」

 

「なるほど。それでミニくずもちパフェですか。今日の放課後はそこまで決闘騒ぎにはならなそうですね」

 

マルギッテの言う通り、今日は放課後のデザート大決戦はほとんど無いだろう。

 

なにせ仲見世通りに行けば大きな本物を食べられるのだから。だが、現金ではなく食券で何とかしたい者達からすればまたとない機会かもしれない。

 

「お待ちどうさん!衛宮定食ノーマルと生卵付きと初回デザート二つ、あと普通の生卵付きだ!」

 

ぱっと裏から出てきた士郎が三つの定食をもってやってくる。

 

「お?なんだ初回の人って紋白ちゃんとヒューム爺さんか。確かに初めてだったな。マルギッテはいつも通り、だな」

 

「お、おおお!本当にくずもちパフェである!大きいのもいいがこのちっちゃいのも良いな!」

 

「待たせすぎ、ではないな。むしろ早い。それにこのクオリティ・・・宣伝を依頼されるわけだ」

 

「いつもながら見事です。ですが無理はしないように」

 

いつも通りの忠告をしてマルギッテと紋白とヒュームは去って行った。

 

「弁慶何だかんだ受付嬢、板に付いてるじゃないか」

 

次の準備をしながら士郎は言った。

 

「まぁね。バーでアルバイトとかしてみたいし、その予行練習と思えばなんでもないよ」

 

「バーねぇ・・・本当にお前は飲兵衛だな。20になったら何を一番に呑むのか考えておいた方がいいんじゃないか?」

 

今は川神水で我慢しているが、飲める歳になったら間違いなくカパカパ酒瓶を開けそうだ。

 

「ふっふーそれはもうやってる。クラウ爺とか従者さんにお願いして空になった酒瓶をコレクションしてるのさ」

 

「酒瓶をコレクションって・・・」

 

これは相当の好き物である。本来なら逆に飲みたくなって仕方ないだろうに。

 

「こう、こんな味なのかなーあんな味なのかなーとか肴はこれにしようかなーとか考えるのが良いのさ」

 

「なるほど。確かにバーや居酒屋向けの思考だな」

 

居酒屋などの酒をメインに取り扱う店ではうってつけの好みだろう。客層に合わせてオススメや説明も出来るし、何より本人が酒の味にこだわりを持っているのだから。

 

「さて、話はここまでだ。そろそろ次の分がすぐ出せる。あと少しだから頑張ってくれよ」

 

「もちろんさ!マルギッテとかも言ってたけど無理はしないでよ、大将」

 

「だからそれはやめてくれ・・・」

 

苦笑をこぼしながら、卒業したら道楽で店をやるのもいいかもしれないと思う士郎だった。

 

 

 

 

 

そして放課後。予想通り今日のデザート争奪戦はそこまで激戦ではない。

 

「とはいえ、やっぱりやってるんだから本当に決闘が好きな学園だ」

 

食堂でぼーっと決闘の結果待ちをしている士郎は考える。この学園に来てもうすぐ半年だ。

 

最初はどうなることかと思ったが、何とかやっていけてることに、そして得難き仲間が出来たことに感謝する。

 

「ささ、お座りください。今日は私がご馳走しますので。マスターのデザートは絶品ですよ」

 

「うむ・・・」

 

と、相変わらず似合わない学生服のレオニダスと、着物お団子ヘアーの不死川心が食堂にやってきた。

 

(これは、追加で何か作っておいた方が良いな)

 

視線を合わせてくるレオニダスに頷いて返事をし、士郎は二品別にデザートを作り始めた。

 

本来ならこんなことはしないのだが、今回ばかりは特別だ。彼女の落ち込み具合は大分酷いものだ。少しくらい元気づけてやっても罰は当たらないだろう。

 

「お待ちどうさま。くずもちパフェは出せないけど、特別にこんな物を作ってみたぞ」

 

それはくずもちではないがイチゴと生クリームに、急遽用意したバニラアイスとスナック菓子を盛り付けたいわゆる普通のサンデーパフェだった。

 

「おお!これは実に美しいですな!果実の彩にこの白いミルクベースの菓子!我がマスターながら結構なお手前で」

 

「そう言ってくれるとありがたい。それよりどうしたんだ?レオニダスと不死川が一緒なんて珍しいじゃないか」

 

自分用にインスタントコーヒーを持ってきて一緒に座る。

 

「それが、ですな・・・不死川嬢がどうしても今回のことに納得がいかぬと申しておりまして」

 

「・・・。」

 

分かっていたことではあるがやはり、と言うべきか。

 

黙って俯く彼女は本当に生気がない顔だ。

 

(これは、もしかしたら学長の所にも行って直談判して断られたな)

 

士郎の予想は当たっていた。朝のHRが終わった後、彼女はすぐさま学長の所に行き、不服を申し立てたが、

 

『成績は金では買えん。それがこの学園の流儀じゃ』

 

とすっぱり断られたばかりか相手にもされなかったのだ。

 

(ふむ・・・こうした時はどうしたものか)

 

恐らく彼女はS組であること、そして自分がいわゆる金持ちの貴族階級であることに相当な自信とプライドを持っていたのだ。

 

それがちょっとした油断で一番下のクラスに落とされ、家柄を重視することも相まって尚更自身がF組になったことに納得というか、心の整理がつかないのだ。

 

(普通なら誰にだって起こりうることだ、これをバネに立ち上がれ、とでもいう所だろうが・・・)

 

この様子から見るに、その辺はもうレオニダスが言っていることだろう。

 

そこで士郎は切り口を変えてみることにした。

 

「不死川心。君に聞きたいことがあるのだが、いいかね?」

 

「・・・。」

 

返事はない。だがのっそりとこちらに顔を向けた。とりあえず話は出来るようだ。

 

「辛いのは見てわかるのだがね。君は家柄を特に重視していると聞いた。間違いないかな?」

 

「・・・(コクリ)」

 

「ふむ。そしてF組の人間は大した家柄のものもおらず、S組のようなエリートではなく雑兵にすぎない。と捉えていることも間違いないかな?」

 

「ま、マスター・・・!」

 

流石にこれはF組のメンバーには聞かせられない内容だが、好都合なことに今学食には士郎とレオニダス、不死川心以外誰もいない。

 

そして彼女はもう一度頷いた。

 

「では聞こう。不死川心、仮にだ。君は家柄や頭脳で相手を見下したりしているようだが、君が今もS組にいたとして、周りすべてが九鬼の人間・・・あるいは自分より遥かに発言力のある家柄だった場合、君はどうするのかね?」

 

「え・・・?」

 

それまで感情の無かった彼女に初めて戸惑いの声が発せられた。

 

「もう一つ聞こう。君がS組で常に50番だった場合はどうかな?確かにS組には居るが、常にその中の最下位だ。その場合は?」

 

「それは・・・」

 

今まで考えたこともなかったのだろう。すぐに返答は返ってこなかった。

 

「君のそれは、不特定多数の人間を敵に回す行為だ。それを自分より発言力の高い人間・・・まぁ、九鬼くらいだろうが、彼らだけ(・・・・)に囲まれていた場合君はどうする?」

 

「・・・。」

 

考えているようだが答えは出ないのだろう。また俯いてしまった。

 

「君の事だ。対等に渡り合おうとするだろうが間違いなく相手にされないぞ。理由は二つある」

 

そう言って一度コーヒーを飲んで喉と口を潤わせた。

 

「一つ。君が今F組に抱いているのと同じことをS組の人間全てが君に対して思うからだ」

 

「う・・・」

 

自分のやっていることだ。容易に想像できたのだろう。顔が青くなった。

 

「そして二つ。君は不死川家のご令嬢だが、君自身はなにか成果や結果を出しているのかな?」

 

「成果や結果?」

 

今度は本当に分からないと彼女は首を傾げた。

 

「ある人物が言っていたことがあるのだが・・・『生まれた時から、初めから持っていた財や権力になんの誇りがあろうか。有難いことではあるがそれは自分の成果ではない。既に持っているだけのものを見せびらかして何が楽しいのか』とね」

 

言っていたのは当然九鬼揚羽だ。彼女は九鬼のトップではあるが一流のビジネスウーマンである。

 

ただ九鬼家の長女として生まれたからではなく、とにかく自分に任された仕事に誠実に、そして新しいことに挑戦していく彼女に聞いたことがあるのだ。

 

既にそれだけの財や地位を持ちながらそれ以上何を求めているか、と。

 

結果はさっき言った通りだ。結局、持っている持っていないではなく、自分の成果や努力の結果生み出されたものこそ誇るべきであり、最初から持っているものを誇示した所でなんの価値もないということだ。

 

「君の立ち振る舞いを見ればわかるが、貴族のご令嬢としての厳しい訓練は積んだのだろう。だが、この世の中に対し君はなにか自分の成果と言えるものを出したのか?」

 

例えば九鬼英雄だが、彼は成績がいいだけでなく、きっちりと九鬼の経済部門統括として様々な仕事をこなしている。

 

それも学園に通いながらだ。寝る暇などほとんど皆無だろう。学園に日中のほとんどを費やし、成績を維持するために勉強し、さらにミスの許されない仕事の管理だ。

 

どう考えても彼は一日が24時間では足りない類の人だ。

 

では不死川心はどうだろうか?彼女は不死川家を、その地位と財を誇示するほどの何かを彼女はしたのだろうか?

 

冷たい言い方だが貴族令嬢の振る舞いなど出来て当然なのだ。その世界にいる限りは。

 

そこにいるだけで必要となる絶対条件というものがこの世には存在するのだ。

 

傭兵なら戦力、戦闘力を。情報屋ならば売った情報から常に身を守る保身を。政治やビジネスならば売り込みのテクニックや情報収集など多岐に渡る。だが、必ずその世界ごとの最低条件というものが存在するのだ。

 

不死川心が陣頭指揮をとった何かがあるとは一度も聞いたことが無い。あるのかも知れないがこうして彼女の口から出てこない以上、無いのと同じだ。

 

「不死川心。君がいるここは学園だ。正念場ではない。ここは通過点だ。どのような通過点を通ろうが構わないが、私は様々な経験が出来る通過点をオススメするがね」

 

「様々な経験・・・?F組で一体なんの経験が・・・!」

 

ようやく目に光が戻った。それが怒りであろうが何だろうが構わない。まずは気を持ち直させることが重要だ。

 

「視野が狭いぞ。S組とF組のそもそもの違いは?」

 

「成績が良いか悪いかじゃろう?それくらい知っておるわ」

 

「ではS組にいることのメリットとデメリットは?」

 

「それは・・・常に競争できること・・・デメリットはそれにかかり切りになること・・・か?」

 

「君はそう考えるのだな。もちろん正解などないので君がどう感じているかが問題だ。ではF組のメリットとデメリットは?」

 

「それは・・・頭の悪い者達と同じ場所にいること・・・あれ?」

 

ふと、不死川心はポカンと口を開けて固まった。

 

「そら。もう既に一つできたじゃないか」

 

「本当じゃ・・・S組ではなかった時間(・・)がある!」

 

S組は確かに後に高学歴を示すことが出来るが、同時にそれは勉学にかかり切りになるということ。

 

もちろん全ての人間がそうではないが基本的にはそうである。

 

ではF組はどうか。F組は成績が悪いという代名詞が付くが、その代り有り余るほどの自由な時間が与えられる。

 

「時間とは何にも代えがたいものだ。過ぎた時間は戻せない。だが、時間をどう使うかは好きに決められる。なら、やりたいこと、やれることの幅が飛躍的に広がるのではないかね?」

 

そう言って士郎は二人のパフェを示した。

 

「そら、話しをした時間でパフェが良いころ合いだぞ?」

 

「おお、これは――――」

 

一番上で溶けたバニラアイスが下に流れていい感じに具材とミックスされている。

 

「これ以上はクリームもなにもグチャグチャになってしまうだろう。まずは目先のものから片付けてはどうかな?」

 

「むむ・・・」

 

何処か納得がいかぬという顔をしながら彼女はパフェにスプーンを刺した。

 

そして、

 

「・・・!」

 

ぱあっと笑顔を浮かべて黙々と食べ始めた。

 

「これは良いですな~!疲れた頭脳に糖分が実に心地いい!それにこのイチゴ・・・酸味と甘みのバランスが至高です!!」

 

もともと酒よりミルクが大好きなこの男的に言えば意外と好物の塊だろう。バニラアイスも生クリームも元は牛乳からできているのだから。

 

「喜んでくれたようで何よりだ。折角時間が出来たのだから色々やってみると良い。S組に戻りたい気持ちが強いだろうから勉学に励むのもいい。それ以外にも友達を作るなり、家の仕事に関わらせてもらうなり、アルバイトをして社会経験をしてみるのもいいだろう。S組から落ちたのは残念だが、その代り君には膨大な時間の自由が約束された。無駄にするのは愚の骨頂というものだ」

 

士郎はカップを持って立ち上がった。

 

「さて、私は厨房に戻らせてもらうよ。なにせそろそろ決闘が終わるころだろう。甘味を求めて人がくるのでね。なにか悩みができたらまた勝手に独り言を喋ろう。では――――」

 

そう言って去ろうとする士郎に、

 

「待て!」

 

心から待ったがかかった。

 

「なにかな?」

 

「その・・・えっと・・・ありがとう・・・なのじゃ」

 

その言葉にクッと笑って、

 

「どういたしまして」

 

と、返して今度こそ彼は厨房に戻った。

 

 

――――再会した者とイカロスの如く落ちて来たもの。二人の入れ替わりは神の悪戯か、本人達の実力の結果か。まだまだ学園生活は半ばに入ったばかり。これからも騒動には事欠かないだろう。

 

 

 

 

 




今回はなんとか早めに投稿できました。

感想、誤字報告本当にありがとうございます。誤字ははもうね、頑張ってるんですけどね…PCで書いてるとこの漢字どう書くんだっけーは無いんですけど、やべぇ候補がめっちゃあるどれが正解?なんてことがあったりして。その辺を直している内に「っっ」とか「~にに」とかなっちゃってて…ほんと書くの難しいですね。

次回は士郎が葉桜先輩に約束した通りの場面になります。

え?林冲ちゃんと心がソフトタッチだろうって?大丈夫ですだって今2年生ですから(笑)では!
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