「う・・・うぅん・・」
「お、目ぇ覚ましたぞ」
ベッドで眠るクリスを看病するため集まっていた風間ファミリー一同。1年の由紀江ことまゆっち、3年の百代も一緒だ。
「あ、あれ?みんな・・・そうだ!決闘は―――」
「「「・・・・。」」」
「クリス。お前の負けだよ」
皆が押し黙る中、百代だけが結果を告げた。
「そうか・・・んぁー!悔しい!衛宮のやつ最初はいいやつだと思ったのに・・・」
「人が変わったように挑発してたよね・・・僕もああいうのは苦手だなぁ」
ベッドの上でジタバタとするクリス。そしてそれを見ていた師岡卓也ことモロも嫌悪感を口にしていた。
「なんつーか、大和をもっと性悪にしたような感じだったな。」
「ちょっと昔の大和を思い出したよな!」
「やかましい!・・・でも、あいつは巧いと思うよ。的確にクリスが怒るように仕向けてたみたいだし」
「あんなのがウチのクラスに入るのか・・・まるでS組のやつがきたみたいだな」
昔のことほじくりだされ怒る大和だが、彼はファミリーの軍師的存在。戦うなら知略で挑み相手の嫌なことを突き詰めるタイプだ。それ故に今回の戦い。クリスが完全に乗せられていたという感想だった。
ガクトは彼の言動的に受け付けない・・・という感じだ。
しかし、
「あの・・・本当に衛宮先輩はその・・・悪い方なんでしょうか?」
おずおずと由紀江が手を上げる。
「どういうことだ?」
ガクトが不思議そうに腕を組む。
「私もなんか悪い人に思えないわー。なんかこう・・・クリと戦う前とそれ以外の印象が違うのよねー」
「そういえば、今は何時なんだ?みんながいるってことは・・・」
「もうお昼休みです。衛宮先輩はすぐ目を覚ますだろうってここにクリスさんを寝かせてくれたんですよ」
「おれっち達も心配ですぐ様子見にきたんだぜーそしたら・・・」
「そしたら?」
「「「・・・。」」」
「なんだ!なにかあったのか!?」
バババ!っと打たれた首や自分の体を確認するクリス。
(いえないよなぁ・・・)
(思いっきり爆睡してたなんて・・・)
そう。初めこそ心配だったファミリーなのだがホームルームが終わり、1時限目の授業後集ってみると幸せそうに寝言をいいながら爆睡する彼女がいたのだった。
「なんだ!?なんなんだ!?」
「いやー・・・ほら!今はまず衛宮君のことでしょ!」
まさか本当のことも言えずモロはあからさまに話題を反らした。
「衛宮の?」
「ああ。キャップのやつがなぁ・・・」
「あいつ、絶対面白いと思うんだよ!だからファミリーに入れようぜ!」
うずうずとしていたリーダーである風間翔一、通称キャップがテンションアゲアゲで言った。
「私は反対。・・・ていうか前にクリスとまゆっちで最後って話さなかった?」
ぺらりと本をめくりながら京が明確に反対票を入れる。
「そうだけどよう・・・なんつーか、あいつだけは
「キャップの勘は外れたことねぇからなぁ・・・俺様は様子見だな。俺様もなんとなく悪い奴じゃねぇ気がする」
「それはガクトが最初の授業で早々に助けられたからじゃないの・・・?」
「うぐっ・・・そんなことはねぇぞ!」
「私は賛成だ。もちろん、これ以上ファミリーを増やすのは反対なんだがな?キャップの言う通り絶対面白い奴だと思うぞ」
「どうせ強い奴が来たとかでしょ?」
あきれたように嘆息する大和。それをみた百代はにやにやとしながら大和にしな垂れかかる。
「なんだ~弟~やきもちか~?」
「違う!」
「お姉さまが賛成なら私もかな。やっぱり悪い人に思えないもの。それに!師範代クラスの友達がいたらもっともっと強くなれると思うの!」
「師範代って・・・川神院のか?」
驚いたように聞く大和。一子ことワン子が下す評価は今までとは違うものだった。彼女は川神院師範代になるべく日夜血を吐くほど努力している。そんな彼女は軽々しく他人を目標の人物たちと重ねることは決してない。
「ああ。衛宮は間違いなく師範代クラスだよ。クリスとの闘い、あいつ本気どころか1%も力を出してない。なにせクリスの刺突を
「それは―――」
否定しようとしてクリスは口を噤んだ。誰でもない相対した自分こそ感じていたのだ。途方もない壁。あの鋭い鷹を思わせる眼。すべてを見透かされているんじゃないかという恐怖感。口の悪さはあったけれど、あんな気高い眼を持つ彼がはたして悪人であるのか・・・
そんな折、
ガラッ
「失礼します・・・ん?お邪魔だったか?」
件の衛宮士郎が姿を現した。
「いや?ちょうど一息ついたところさ。どうしたんだい?」
さっと猫を被る大和。ファミリーもここは軍師にまかせようという判断なのか黙った。
「ちょっと様子を見に来たんだ。怪我はないと思うけど一応さ。クリスティアーネさん・・・だったよな。あの時は手荒な真似をして悪かった」
そう言って彼は頭を下げた。
「おいおい・・・そんなことのために来たのか?あれは決闘。きちんとした形式で行われたものだ。それで謝るのは逆に失礼だぞ」
ピリッと闘気が走る。お前は彼女を侮辱しに来たのか―――そう言わんばかりの雰囲気が走るが、
「侮辱に来たわけじゃないさ。でも、もう少しやり方があったろう?俺は不意打ちで決闘をさせられることになったんだ。一応、本人の了承あっての決闘なんだろう?」
「ん?どういうこと?」
「あ、」
まずい、とクリスが思わず声を上げた。
「聞いてなかったのか・・・」
そうして彼から伝えられた今回の顛末。学園長とクリスのコンビネーションでの不意打ちだったことが明かされる。
「そういうわけで俺は今回の決闘はそもそも不服だった。ろくにこの学園のルールも知らないし、俺は戦いは好きじゃないんだ。だから、決闘じゃなく摸擬戦や鍛錬目的なら俺にも否はなかったさ」
「「「クリス・・・」さん」」
「あう・・・」
皆の責めるような視線に小さくなるクリス。
「なるほどね・・・それで謝罪ってわけね」
「ああ。それとこれ。食堂の人に厨房を借りて昼食を作ってきた。今から行ったんじゃ満足に食えないだろう?よければ食ってくれ」
「スンスン・・・!いいにおいがする!」
ダー!っと一子が近寄ってきて包みからする香しい匂いに釘付けになる。
「それなりに満足のいくものにできたはずだ。食堂でも好評だったから大丈夫だと思う。・・・それじゃ、様子も見れたし俺は戻るよ」
そう言って彼は包みを一子に渡し保健室を出て行った。
「・・・な?無傷なのわかっててここまでやるやつ他にいるか?」
「「「うう~ん・・・」」」
キャップの言葉に皆一斉に唸る。
と
グゥ~
「ち、違うぞ!決して!自分じゃ!ない!」
「これがやっぱりクリ吉だよねー」
「うるさいぞ馬!」
「馬とはなんだー!おれっちには松風って立派な名前がある!」
「ま、松風!そんな風に言っては・・・」
フー!と威嚇するクリスとやたら流暢にしゃべる馬・・・の人形である。
「そんなことより早く食べましょう!」
いそいそと包みを開ける一子。
「って犬!それは私のだ!お前たちはもう食べてきたんだろう!?」
「すっげーなこりゃ。これほんとに男が作ったんか?」
「いいにお~い!野菜にお肉・・・うん!栄養満点って感じね!」
「彩も豊かです・・・これは・・・」
「落ち込むなーまゆっちー!お前も負けてないぞー!」
「ほほう。まゆっちも認める弁当か。よし私が味・・・毒味してやろう!」
「今味見って言おうとした!ああー!」
結局、ファミリーのみんなで少しづつ食べたお弁当は絶品で。送られた本人がそれほど食べることも出来ず食いつくされてしまうのだった。
風間ファミリー編入フラグです。ですが彼がファミリー入りするかどうかはちょっと考えてます。
百代と一子が師範代クラスと言っていますが実際は違います。なぜ彼が強いと感じるのか、なぜ彼が百代にまだロックオンされないのかなど書けていけたらいいなと思います。