真剣で衛宮士郎を愛しなさい!   作:Marthe

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皆さんこんばんにちわ。業務用のでっかい食べ物にはまっている作者でございます。

曲の感想ありがとうございます!本当に色々な曲があるんだなぁと感心いたしました!
私と同じ方もいて非常にニヤニヤ出来ております(笑)

今回は前の話にも出てきた非実在性青少年(これ書きにくい)とご飯食べて引き続き義経と最上パイセンのバトルです。

頑張って他キャラもちゃんと出てくるようにしたいのですが…頑張ります。

では!


会談/腕比べ

何処にでもありそうなちょっと古ぼけた居酒屋に入る。

 

別に高価そうだとか、気品があるとかそういう場所じゃない。いたって普通の居酒屋だ。

 

「いらっしゃいませ!初めてのお客様ですか?」

 

看板娘だろう女性の問いに、

 

「はい。初めてなんですが予約を入れてあります。衛宮です」

 

「まぁ!分かりました!お履き物を下駄箱にしまって頂いてこちらにどうぞ!」

 

案内された個室に居たのは、

 

「おう!久しぶりだなぁ正義の味方!」

 

渋い声で再会を喜ぶ総理の姿だった。

 

「お久しぶりです総・・・いえ、おじさん」

 

「そうそう。下手に役職出すと痛くもねぇ腹探られるからよ。ここは一つそれで行こうぜ」

 

流石に総理、と口にしては後々よくないことになると士郎は呼び方を改めた。

 

「メニューはこちらになります!それと――――」

 

おずおずと、看板娘の女性が白い色紙を出してきた。

 

「あの、失礼を承知ですが、衛宮様、サイン、いただけませんか?」

 

「え」

 

思わず士郎は固まった。

 

「はっはっは!兄ちゃんは人気者だからなぁ・・・あの放送を見ていた奴なら誰だってサインほしがるわな」

 

「え、えっと・・・どうぞ・・・」

 

あの数日の客寄せパンダでいくら書いたか分からないサインを書く。

 

それを嬉しそうに娘さんは色紙を抱いて、ごゆっくり!と立ち去って行った。

 

「なんだかすみません。おじさんを差し置いて俺がサインなんて・・・」

 

「いいってことよ。あの時の英雄は間違いなく兄ちゃんだぜ?俺は身内の馬鹿を蹴り飛ばしてやっただけだ」

 

そう言ってまあ座りなと総理は促した。

 

「それにしても久しぶりだなぁ・・・学校の方はどうだい?」

 

「充実してますよ。というか、色々ありすぎて退屈しないです」

 

事件から起きたことといえば東西戦、義経達の入学、葉桜清楚の暴走などなど・・・この短期間で色々なことがありすぎた。

 

「それは良かったじゃねぇか!なーんも起きねぇ漫然と勉強だけするよりそっちの方がいいと思うぜ、俺はよ」

 

「確かに・・・退屈はしないのですけどね」

 

なにかと重傷を負う羽目になっているので士郎は何とも言えない顔だ。

 

「なんでぇ。不満があるって顔だな」

 

「ええ。ちょっと色々ありまして・・・」

 

それはやはり最上幽斎という人物がⅯという人物だということだ。

 

あのニュースの後、密かに九鬼英雄と忍足あずみとに確認した所、間違いないだろうという返答が返ってきた。

 

「兄ちゃんがそんな顔をするときゃぁ多分、正義の味方として動かなきゃなんねぇことがある、ってことだろう?」

 

ピタリと言い当てるこの人物は流石だなと思う士郎である。

 

「察するにクローンの事だろうが・・・あれには俺らもてんてこ舞いでよ。各国からつつかれて大変だわな」

 

「ちょ、こんな所でそういう話はまずいでしょう」

 

いきなり機密っぽいことをいいだした総理に士郎は焦る。

 

「問題ねぇよ。今のはネットで検索すりゃあいくらでも出てくらぁな。というかニュースでも時折やってるくらいだぜ」

 

「そう、ですか・・・」

 

それは意外だった。考えてみれば、士郎がテレビを見るのは朝食時か晩御飯の時だけだ。見落としても不思議ではない。

 

「それに、あの最上幽斎って奴のやったことは政治としても大問題だぜ・・・第二、第三の最上が出てきたら、それこそ俺らが動かなきゃなんねぇ」

 

そこまで言ってとりあえず注文した飲み物とつまみが届けられた。

 

「はい!こちら川神水と焼酎でーす!」

 

そう言ってテーブルに置かれたのは総理用のお酒と士郎用の川神水だ。

 

「おつまみはこちら、塩キャベツにベーコンのチーズ焼きと串焼き三種盛りです。ごゆっくりどうぞ!」

 

そう言いおいて届けてくれた店員さんは下がって行った。

 

「きたきた。悩み事はあるかも知れねぇが、今はまず飲んで食おうや」

 

「そうですね。では・・・」

 

「おう!」

 

チン!と互いのグラスを鳴らして乾杯する。

 

(へぇ・・・本当にアルコールみたいだな)

 

実は士郎。川神水を飲むのはこれが初めてだったりする。偶然手に入れた大吟醸は弁慶に全てあげる約束をしているので手を付けたことはない。

 

アルコール独特の(ノンアルコールだが)くらっとするような感覚がある。

 

「俺、初めて川神水飲んだんですけど・・・これ本当にノンアル扱いでいいんですかね?」

 

「はっはっは!俺も最初飲んだ時は同じこと思ったぜ。こんなに酔えるならアルコールも何も関係ねぇじゃねぇか!ってな」

 

確かにこれほど強烈にアルコールのような感じのする飲み物はアルコールが無かろうと酒であるように思う。

 

だが、確かに旨味のようなものがあり、水とは思えないものだ。

 

(ま、この程度でへべれけにはならないから問題ないけど)

 

ロンドンに留学時、なにかといがみ合う遠坂とルヴィアが飲み比べバトルまでしだし、それに巻き込まれる形で士郎と桜も相当に飲まされた。

 

とにかく意地を張ってべろんべろんになっても飲み続ける二人は、結局セイバーによって毎回引き分けとして強制的に眠らされ(気絶)ていた。

 

やかましく相手を罵り合いながらカパカパとワインやら日本酒やらを開けていく二人とは違い、あっちは美味しかった、こっちはあの料理に合いそうだと、ルヴィアの執事、オーギュストさんと喋りながら飲んだのはとても楽しかった。

 

ちなみに、酒に一番強かったのは意外にも桜である。

 

士郎も結構飲んだが、意識が混濁する前にやめていたので、あの勝負は結局桜が一位だったりする。

 

それはそれとして、

 

「料理も美味しいですね」

 

「だろう?ここは昔から世話になってる店なんだけどよう、見た目とは違っていい味してるんだ」

 

「見た目は余計ですよ!はい追加の料理です!」

 

「おっと。聞かれちまったぜ」

 

はっはっは!と総理は笑い、士郎はのんびりと川神水と料理を楽しんだ。

 

「ところでよう、正室、側室のニュースは見ただろ?あれ見てお前さんはどう思った?」

 

「ごふっ!?」

 

いきなりの爆弾に士郎は思わず吹き出しかけた。

 

「それこそここで話していい内容じゃないんじゃ?」

 

「馬鹿野郎。あくまでどう思うか聞いただけだ。お前さんがこういったから俺がどうこうするって話じゃねぇ。で、どうよ?」

 

つまり、政治界ではなく一般人の一人としての意見が聞きたいということだろう。

 

「今のところ賛成でも反対でもないですね。レオニダスが言っていたんですが、仮にそれが現実となっても一人を愛したければそうすればいい。しかしやるならしっかりした法を敷かねばならない。という意見に俺は賛成ですね」

 

「レオニダス王か。確かにその通りだわな。その辺が機能しなくなったから昔の日本はお家騒動で死人が出たりしていたわけだ。いい所突いてるな」

 

グイっと焼酎を煽って総理は追加を注文した。

 

「少子高齢化には抜群の効き目があるだろうが・・・やっぱりその辺が難しいな・・・」

 

「そういえば、なんでいきなり正室、側室の話が出てきたんです?」

 

「そいつは・・・まぁ大丈夫か。それこそ、お前さんのいる川神学園に義経達が来たからだ。折角の血筋を絶やさないってのと、俺たちも昔の人間に学ぶかね、ってところだ」

 

確かに、昔の正室、側室のシステムは優秀な血筋を絶やさないことを目的としていたわけだ。

 

それを今回は少子高齢化という年齢層の傾きに使い直そうということなのだろう。

 

「何せ初めての試みだからよ。昔の文献みて考えることも多いし、新たに作らなきゃならねぇ法律も多い。なかなか前に進まなくて俺もじれてきてるぜ」

 

と総理は本音を語った。

 

「でも、最後までやってくれるのでしょう?」

 

「あたりめぇよ!ここで投げ出したら、それこそ兄ちゃんに申し訳ねぇ。あの時兄ちゃんが守ってくれなかったらここまで別な話に気が回らなかっただろうからな」

 

もしあの巨大兵器が街を滅茶苦茶にしていたらそれどころの話ではなかっただろう。

 

街の再建だけでも彼の任期は終わっていたかもしれない。

 

もちろん九鬼のバックアップはあっただろうが、それでも甚大な被害は免れなかっただろう。

 

「でよ、嫁さんにしたい候補はいんのか?」

 

「げっふ!?」

 

今度こそ士郎は川神水を吹き出した。

 

「おうおういい反応じゃねぇか!いいねぇ青春じゃねえか。こりゃあ俺も張り切らないとな!」

 

その後も他愛もない話をしながらその日はお開きになった。

 

 

 

 

「本当に送らなくていいのかい?」

 

「ええ。酔い覚ましに丁度いいですから。今日はお元気な姿が見れてよかったです」

 

「こちらこそ、だな。兄ちゃんと話して大分スッキリしたぜ!また付き合ってくれよ」

 

「俺なんかでよければ是非とも」

 

そう言って総理は付き添い人の車で去って行った。

 

「俺も帰るか」

 

酔い覚ましとは言ったが士郎は既に素面に戻っていた。どうやら『場酔い』とはその名の通りらしく、宴が終わればすぐに覚めるようだ。

 

あまり見ない深夜の街を見ながら士郎はゆっくりと歩く。

 

(こうしてのんびりするのも久しぶりな気がする)

 

美味しい物を食べて、美味しいお酒(ノンアル)を飲んで、風に当たりながら帰るのもこういうことの醍醐味の一つだ。

 

そんな風に思っていた矢先。

 

「士郎?」

 

「マル?」

 

なんとマルギッテと出くわした。

 

「なぜ貴方がこんな夜遅くに?」

 

「それはこっちのセリフだろう?マルだって女の子なんだから、不用心だぞ」

 

「・・・ッ!」

 

士郎の言葉に顔を赤くするマルギッテ。

 

「私は部下との打ち上げです。貴方は?」

 

「俺も知り合いと飲み・・・じゃなかった、川神水を飲みながら話してきたんだよ」

 

どうにも川神水をノンアルと思えない士郎である。

 

「なるほど。大人の方にお付き合いしていたというわけですね。よいことです。ですが、あまり遅くになるのはいただけませんね」

 

「だからなんでマルが言うんだ・・・」

 

折角だから送って行こうと士郎は言う。マルギッテとしてはまたとない二人きりの時間なので、

 

「いいでしょう。私はまだ少しほろ酔い気分なので、送られてあげます」

 

でもやっぱり、下手には出れないマルギッテであった。

 

「怪我の具合はいかがですか?」

 

「もう治ってるって。ちゃんと医者にギプス外してもらったんだから当然だろ?」

 

なんとも過保護だなぁと思う士郎であるがこればかりは仕方ない。何かというと大怪我を負う男であるので、油断するとすぐに命の危機に陥っているのだ。

 

「それよりマルは?時折任務に出てるみたいだけど怪我とかしてないか?」

 

「優秀な私が早々後れを取る訳が無いと知りなさい」

 

とか言いつつ心配されて嬉しいマルギッテである。そっぽを向いているが耳が赤い。

 

「・・・。」

 

「・・・。」

 

((会話が、繋がらない・・・))

 

士郎は純粋に困ったなーと思っているのだが、マルギッテはなんとかアプローチをしようと必死にグルグル考えている。

 

(俺はよくマルギッテを怒らせてるからなぁ・・・嫌われた?)

 

(絶好の機会です!何とかするのです!マルギッテ・エーベルバッハ!!)

 

しかし悲しいかな。目的地のホテルにはすぐ着いてしまった。

 

「ここです。見送りご苦労様です(ああ、着いてしまった・・・)」

 

士郎はホテルを見上げて首を傾げる。

 

「マルはホテルに泊まってるのか?」

 

「え?ええ。クリスお嬢様と比較的近い場所がここしかなかったので」

 

クリスは寮に入っているので衣食住共に困っていないがマルギッテは少々難儀していそうだ。

 

そしてマルギッテは絶好のチャンスを活かせなかった代わりに最高の結果を得ることが出来るのだった。

 

「・・・余計なお世話だと思うけど、それならうちに来るか?任務ってことだからホテル代は軍が出してくれるんだろうけど、どうせなら経費はかからない方がいいだろ?」

 

「――――は?」

 

マルギッテは何を言われたのか分からないと固まった。

 

「ああ、すまん。やっぱり嫌だよな。一応林冲と・・・こっちは秘密で清楚先輩もいるからマルギッテも一人になら「なんですって!?」おうわ!?」

 

士郎の言葉が理解できなかったマルギッテだが、聞き捨てならない単語と言うか名詞が出てきて彼女は食いついた。

 

「もう一度いいなさい。誰と誰が士郎の家にいると?」

 

「え?だから林冲と清楚先輩だよ・・・清楚先輩の事は秘密だぞ、色々複雑な事情があるんだ」

 

「・・・。」

 

マルギッテとしてはそんなことは問題ではない。問題なのは女性二人(・・・・)と暮らしているという今の衛宮士郎のお家事情だった。

 

(これは、今乗らないでいつ乗りますか!!!)

 

乗らずにはいられない。このビッグウェーブに!とばかりにマルギッテはズイっと踏み寄った。

 

「女性二人と同棲していると?」

 

「同棲って・・・まぁ意味としては分かるけどホームステイって奴だよ。林冲は祖国が中国だし、清楚先輩は・・・訳ありで九鬼と離れたがってるんだ。変なとこ行くよりは俺の家っていう場所が分かってる方がいいだろうってことでな」

 

「つまり貴方は私が貴方の家にホームステイしてもいいと?」

 

まるで事実確認のようだなぁと思いながら士郎は頷いた。

 

「ああ。だってここからじゃ手間だし何より金がかかるだろう?マルの懐は痛まなくてもドイツ軍の経費は痛む。だから「わかりました」お、おう・・・」

 

食い気味に理解していくマルギッテに士郎は一体どうしたんだと首を傾げる。

 

「明日、荷物を纏めて伺います。部屋はあるということでよろしいのですね?」

 

「あ、明日!?いいけど豪華な部屋は想像しないでくれよ。屋敷は広いから部屋は心配しなくてもいいけど」

 

「問題ありません。では、また明日」

 

そう言って彼女は足早にホテルへと帰って行った。

 

――――interlude――――

 

士郎と別れたマルギッテは借りている自室へと戻ると、

 

バフ!

 

そのままベッドに倒れ込んだ。そして

 

「――――ッ!!!」

 

ゴロンゴロンとベッドの上を転がる。

 

(ああ・・・まさかこんな日が来るなんて・・・私は本当に良い部下達を持ちました・・・)

 

マルギッテは暴走しているが、部下たちは決してこの展開を読んでこの日に打ち上げを手配したわけではない。

 

士郎もまたこの展開を読んでいたわけではない。何せ相手は総理大臣なのだから。時間の都合をつけるのは士郎の方である。

 

つまり今回の邂逅は完全に偶然でありマルギッテに女神が微笑んだようなものだ。

 

(これで川神百代より先んじられる。ですが)

 

ピタリとマルギッテは止まった。

 

(林冲がホームステイすることは予測できていましたがまさか葉桜清楚まで同居しているとは・・・)

 

流石にそこまでは予想できなかった。

 

なにやら九鬼の人間と剣呑な話をしているのは聞こえていたが、戦いに出る前に士郎が負けの無い勝負へと引きずり込んだのでよくわかっていなかった。

 

(最近では不死川心もF組に落ちたことで士郎と馴染んでいます。これは急がねば・・・)

 

なにやら一夫多妻制の話が日本では出ているがそれはそれだ。

 

なにより自分を一番に愛してほしい。その気持ちは変わらないのだから。

 

「――――ッ!!」

 

またゴロンゴロンとベッドの上を転がるマルギッテ。実に彼女らしくない光景である。

 

「とにかく準備です。こうしてはいられません」

 

それほどない荷物を纏めいつでも行けるように準備をする。

 

興が乗りすぎて、というか暴走しすぎて朝方まで準備に費やしてしまったのは彼女の気持ちを考えるとしょうがないのかもしれない。

 

――――interlude out――――

 

翌日。マルギッテがホームステイしてくるという話を朝二人にしたのだが、

 

「・・・。」

 

「・・・。」

 

じろりと二人に見られてしまった。

 

「士郎は女子寮の管理人でも目指してるのか?」

 

「そうだね。士郎君はいつもこうだよね」

 

「ど、どういうことだよ?俺はただ、困ってそうというか、不便そうだから言っただけなんだけど・・・」

 

士郎の弁明に、はぁ、と二人はため息を付く。

 

(ライバルが一歩踏み出してきたな)

 

(士郎君はすぐ女の子口説くんだもん・・・。そろそろ俺が喝をいれてやるべきだろうな!)

 

結局何も言わぬまま黙々と朝食を食べる二人。一瞬清楚の目が赤くなったがなにがあったのだろうか。

 

『現在巷では話題となっている正室・側室システムに関して様々な意見が寄せられています』

 

『折角源義経が現代に復活したんだから血筋は絶えてほしくないねぇ』

 

『複数人との結婚が道徳的にどう思われるのか気になります』

 

『雪広アナ結婚してください!・・・おわ!』

 

『と、実に様々な意見が寄せられています。今後どうなるかに期待ですね』

 

なんだかニュースでも変な奴が出現していたが、とりあえず総理の改革は可もなく不可もなくと言ったところらしい。

 

「本当に可能なのかな?」

 

清楚が思わず朝食を食べながら言った。

 

「士郎は昨日総理と会食してきたんだろう?その辺は聞かなかったのか?」

 

「会食じゃなくてただ居酒屋で飲んで食べただけだよ。それに、そういう話はうかつには出来ないし、変に話すと痛くもない腹を探られる、って言ってたから」

 

「ええ?士郎君、総理大臣とお友達なの?」

 

「あ、今の秘密です。テレビで見たかもしれませんが、総理とは色々あったので・・・」

 

流石に直通の連絡先交換をしているというのはまずい。宛先名もそれ故に非実在性青少年なのだ。

 

「確かに、私もあの放送は見たけど・・・そっか。総理官邸前で戦ってたんだもんね。凄くかっこよかったよ」

 

「いや、俺はただやれることをやっただけだから・・・」

 

そう言って士郎は恥ずかしそうに頬をかいた。

 

「その放送は私も見ていた。士郎は本当に無茶をする」

 

「そう言われてもな・・・それが俺なんだから仕方ないだろう?」

 

とんでもない開き直りであるが、否定できないのもまた事実だった。

 

「それより、早く食べちまおう。今日も朝から色々しないといけないんだ」

 

「また頼まれごとか?」

 

「それもあるんだが、多摩大橋の見張りもだな。どうにも義経達だけじゃなく木曾義仲まで出てきたせいで武芸者やら変質者やらが多い」

 

今は九鬼の従者部隊とレオニダスが橋を警護している。最近レオニダスが朝の調練を断っているのはそれが原因だ。

 

それ故に貴重な彼の訓練を受けられない者達が怒りを爆発させているらしい。

 

(大丈夫かな川神・・・いつの間にかスパルタ国にならないよな・・・)

 

なんともし難い問題であるので士郎は頭痛を堪えるしかないのだった。

 

 

 

 

 

 

学園に着くとすぐに最上旭と出会った。

 

「おはようごさいます」

 

「おはよう、士郎」

 

「!?」

 

林冲がいきなり名前呼びしてきた旭に警戒感を抱いた。

 

「ああ、衛宮君、林冲君おはよう」

 

「京極先輩、おはようございます」

 

「おはようございます・・・」

 

「どうしたの、彦一」

 

「君目当ての記者や武芸者といったものが少々過激になってきているのでね。諫めてこようかと。それと、彼女は基本名前呼びだ。気にしなくてもいいと思うが・・・」

 

「なるほど。今までは周りに合わせて衛宮と呼んでいたわけですか」

 

士郎としては別にどちらで呼ばれても構わない・・・が、どちらかというと名前呼びの方が親しみを感じるし、なによりあの赤い背中を思い浮かべなくて済むのでそちらの方が良い。

 

「京極先輩が行くなら今日は不要ですかね」

 

「君の弓があれば尚いいとは思うが、君は少々働き過ぎだ。今日くらいは大人しく過ごしなさい」

 

そう言って京極は去って行った。

 

「ほぼ毎日屋上から矢を射っていたものね」

 

「まぁ・・・どうにもあの橋は鬼門かなにかのようなので」

 

とにかく変態が現れるのである。もちろん普通の武芸者も現れるが、彼らもかなり気炎を上げているので実に危険極まりない。

 

変態の橋とはよく言ったものである。

 

 

 

 

教室に着くと、なぜか松永燕が居た。

 

「士郎ー私もいるぞー」

 

・・・武神もいた。

 

「なんで百代と松永先輩が?」

 

ここは二年のクラスであって三年生のクラスではない。

 

「燕がな?」

 

「おっと。モモちゃん、その先は私が言うよん」

 

そう言って一歩前に出た松永燕は、

 

「川神式鍛錬をお願いしまーす!」

 

「――――は?」

 

言っていることが分からないと、士郎は固まった。

 

 

 

 

 

HR後。松永燕からの決闘というか鍛錬の申し出を受けたと梅子に告げた士郎は事実確認後グラウンドに立つことになった。

 

(なぜこうも川神の人間は好戦的なのか)

 

いつぞやと同じことを思った士郎はとりあえず思考を戦闘に切り替える。

 

「じゃあよろしくおねがいしま~す!」

 

元気よく準備運動をしていた燕が頭を下げる。

 

「・・・。」

 

だが、士郎は黙って相手する彼女を見ていた。

 

(うわ~・・・これやばい。下手するとモモちゃんより強敵)

 

まるで鷹の目。こちらの動きを見落とさんとばかりに鋭い眼光が自分を貫く。たったそれだけで、全てが見透かされてる気分になる。

 

(・・・ううん。気のせいじゃない。多分本当に見抜かれてる)

 

視るに彼は間違いなく自分と同じ、あらゆるものを使って勝ちにくるタイプだ。

 

「ソレじゃあ始めるヨ」

 

「「・・・。」」

 

軽口はもう叩けない。間違いなく彼は格上。一瞬でも油断すれば情報を得るどころか瞬殺される。

 

「レーッツ、ファイ!!!」

 

瞬間、地面が爆ぜた。

 

「!!!」

 

意外にも攻めたのは衛宮士郎。

 

「っつあ!?」

 

右拳の一撃を辛うじて防ぐ。しかしその威力を完全には殺しきれず、宙を舞った。

 

「こんのお!」

 

空中で体勢を立て直し追撃に備えると共に反撃を考える。

 

「てや!!」

 

空中からの一撃。しかしそれはなんでもないように一歩下がることでよけられた。

 

逆に鋭い回し蹴りが迫る。

 

「!!」

 

それを腕を交差することで防ぐ。だが、やはり威力を殺せず吹っ飛ばされた。

 

「っつつ・・・強烈だなぁ・・・女の子には優しくしないとダメだよ?」

 

激しく吹き飛ばされながらも距離を開けたことによって幾分か余裕が戻ってきた。

 

「さて、手加減がお望みならそうするが。それで鍛錬になるのかな?」

 

あきれたように笑う彼。その表情にはそれならそうするが?という挑発がこもっている。

 

「うっわー・・・可愛くない。一応私、先輩だよ?」

 

「ほう。今時の先輩は後輩に刃物を叩きつけてくるのが流行っているのか?物騒なことだな」

 

(流石に乗ってこないか・・・それにあの余裕。実力差を実感するから余計に悔しいね)

 

額に汗が滴り落ちる。柄にもなく焦っている。はっきり言おう。彼を前にしてたった数合で勝てそうなビジョンが消えてなくなった。

 

「それよりいいのかね?折角武器を用意してもらったのだ。使わなければ用意してもらった皆に申し訳がないだろう。鍛錬の趣旨も武器の扱いの鍛錬だったはずだが?」

 

さっさと武器をとれ。そう言わんばかりに彼は不敵に言った。

 

「それじゃお言葉に甘えて・・・」

 

まずは足元にあった槍を拾う。

 

「それじゃ、いってみますか!」

 

槍を片手に疾走する。依然勝利のビジョンは見えないまま。それでも少しでも食らいつこうとする彼女だったが・・・

 

「はっ・・・はぁっ・・・はぁ・・・」

 

数分後、仰向けに転がっていた。

 

「ここまデ!いや、二人ともいい試合だったヨ!」

 

「・・・ふむ」

 

ルーの一言で試合は終わりを告げる。というよりも、自分が動けなくなった時点で彼は攻めるのをやめていた。

 

「しかしすごイネ!あれだけハイレベルな戦いをして息も乱していない」

 

「まぁ体力には自信がありますので」

 

そう言って燕に近寄る士郎。

 

「大丈夫ですか?」

 

戦闘中とは打って変わった優しい声が上から降ってくる。

 

「はぁ・・・大丈夫に見えるかな?あれだけケチョンケチョンにしておいて」

 

負け犬の遠吠えと分かりながらも言わずにはいられなかった。

 

(全然・・・通じなかった)

 

拳も、剣も、槍も、棍も。何一つ、一切通らなかった。

 

「そりゃあ手を抜きすぎたら鍛錬にならないでしょう」

 

どの口がいうのか。はっきり言って彼には鍛錬の気はしていないだろう。精々、体を動かした程度だ。

 

「それにしても鬼畜すぎ。全部同じものを当ててくるなんて」

 

そう。彼は自分が取った得物と同じ得物を使ってくる。自分が剣を捨て、槍を取れば彼も槍をとる。

 

「そのほうが鍛錬になるのではと思ったので」

 

本来であれば自分に有利なように武器を選べばいいものを彼は必要以上に燕に合わせてきた。戦闘を仮定しているならそんなことはしないだろうことを考えると、錬度を上げたいという要望に答えてくれた形ではあった。

 

おかげでそれなりには使える、と思っていた自信は粉々に砕かれたわけだが。

 

「どうぞ」

 

今だ起き上がれない彼女の近くにコトっとおかれるスポーツドリンク。

 

「どーも。あ・・・」

 

どうにも悔しさの抜けない彼女はちょっとした仕返しをすることにした。

 

「誰かさんが徹底的にいじめたせいで立てないんだよね~誰か休めるとこに運んでくれないかなぁ~?」

 

「・・・。」

 

自分もペットボトルを空けていた彼は仏頂面ながら参ったというような気配を出していた。

 

(あ、意外と可愛いのかも)

 

顔に出づらくはあるが困ったような雰囲気を出すのはなんともギャップを感じさせる仕草だ。

 

「・・・やれやれ」

 

そう言って彼はなんでもないように燕をひょいと横抱きに・・・いわゆるお姫様だっこした。

 

おおおー!と黄色い声が上がる。

 

その声にますます顔を顰める彼。

 

(あはは。困ってる困ってる)

 

してやったり。そう想いながらも実は彼女自身の顔も赤かった。

 

(・・・やばい。ちょい自爆かも)

 

お姫様抱っこされて校舎に向かう。そんな姿をまだ残っていた生徒がニヤニヤしながら見てくるのは非常に恥ずかしい。

 

(しかもなんか・・・)

 

こうして抱かれてみて分かるが、かなり鍛えられている体だった。体幹がいいのか自分を支える彼は暖かく、人一人抱えて歩いてもピクリともしない。見上げればその視線はまっすぐと前を見据えていて・・・

 

「・・・ずるいよねぇ~~・・・」

 

はっきり言ってかっこよすぎた。

 

 

 

 

 

 

放課後、義経に案内された一室に入る。

 

「士郎君すごかった!あんなにたくさんの武器をすごいレベルで扱えることに義経は感動した!」

 

「ベン・ケーちゃんもあれには感心したよ。七つ道具どころじゃないじゃないか」

 

「そうは言ってもな。あれは所詮二流止まりだよ。一流の相手には通用しない」

 

士郎は嘆息する。多くを修めたからこそわかる一流との差。

 

やはりその差は衛宮士郎の異能を使わなければ太刀打ちできないのだと痛感する。

 

「それより、与一は?」

 

源氏トリオの一人が見当たらないことに気付く士郎。

 

「あいつは大将の真似をして大橋に矢を射ってるよ。あれでも長距離射撃が持ち味だからね。・・・大将には敵わないけど」

 

赤原猟犬を放ってから、時折与一は謎の行動に出る。

 

ただの怪しい呪文らしきものを唱えたり、技名を叫んでみたり。

 

あと時々すごく感動した目で見られる。

 

「そ、そうか・・・じゃあ後は旭を待つだけ・・・」

 

といった所で室内の扉が開いた。

 

「ごめんなさい。ちょっと遅れてしまったわ」

 

「いえ!義経が士郎君と話したくてちょっと早く来ただけなので・・・」

 

「士郎と?ああ、燕との戦いのことね。あれは見事だったわ。ゾクゾクしちゃった」

 

そう言って熱い視線を向けてくる彼女に士郎は何処か居心地が悪く感じられた。

 

(なんなんだろうな・・・嫌ってわけじゃないんだけど色々知られているような嫌悪感を感じるんだよな)

 

不可思議な感覚に心の中で首をひねる士郎。どうして彼女はこうも自分に好意を向けてくるんだろうか?

 

「今日は腕相撲でどうでしょうか」

 

「腕力を試しておきたいのね?いいわよ」

 

どうやら今回はジャッジ役をしなくて済みそうだ。

 

「士郎、行司を頼めるかしら」

 

「わかった」

 

言われた通り二人の手を組ませて力が入らないように少し二人の手を振る。

 

そして、

 

「レディ――――ゴッ!」

 

「ふっ!!!」

 

「はっ!!!」

 

ギリギリと二人の手が力み合う。だが、

 

「あ、あら?」

 

徐々に徐々に最上旭が押されていく。そして、

 

「せい!」

 

義経の手が最上旭の手を押し倒した。

 

「おお。義経おめでとう」

 

「ありがとう!でも、これはちょっとずるかったな」

 

「ずるかった?なんでさ」

 

士郎は義経の言う意味が分からず首を傾げた。

 

「レオニダス王だよ。私達、体育他の人と違うでしょ?」

 

「ああ・・・そういうこと・・・」

 

とても複雑な思いだった。まさかの源氏とスパルタの夢のコラボが実現していたことに今気づいた。

 

「なるほどね。これでも自信があったのだけどあっさり負けてしまったわ。これは間違いなく実力の差ね」

 

レオニダスが居なかったらこの勝負どうなっていただろうか?考えても仕方のないことだが、ついつい考えてしまう。

 

「一対一の同点ね。・・・そうだわ。士郎も私とイッパツしましょう?」

 

「イッパツ?勝負ってことか?」

 

「男の子なのだから、ちょっとくらい動揺してくれてもいいのに・・・」

 

どうやらからかっていたらしいが、この男にそういうのは素で通じないので無駄である。

 

「勝負か・・・腕相撲は男の俺と旭さんじゃな・・・」

 

「あら、私はそれでもいいわよ?」

 

随分と自信ありげに彼女は言う。だが士郎はその辺意固地なので、

 

「いや。そうだな・・・鬼ごっこ、とか?」

 

これなら俊敏性を競うことになる。力よりも逃げるルートと脚力がものをいうだろう。

 

「いいわよ。時間は五分。どちらが鬼?」

 

「コイントスで決めればいいかと」

 

そう言って士郎は500円玉を取り出し、

 

「俺は裏。旭は表で――――」

 

ピン!と親指で上に弾いた瞬間、

 

「!」

 

最上旭は一目散に逃走した。

 

「ありゃ。決める前に逃げちゃったよ」

 

「そういう戦略だろう。俺がコイントスする以上、トスして確認するまで時間がかかる。表だろうと裏だろうと逃げた方が得策だ」

 

そう言いながらもゆっくり士郎は500円玉をしまう。

 

「あれ?結果は確認しないの?」

 

「先輩が逃げた以上俺が鬼だ。まずは――――」

 

近くの空き教室を調べる。

 

「見つかっちゃったわ」

 

「気配を駄々洩れさせて見つかったも何もないだろう?」

 

「そうね。それじゃ改めて・・・!」

 

窓を開けて飛び出す最上旭。

 

「それはちょっと危険じゃないかね!」

 

そう言いながらも士郎も窓から跳び出す。だが・・・

 

「!?」

 

飛び出した先に最上旭の姿は無かった。

 

(飛び出したように見せかけて窓枠に掴まっていたか!)

 

振り返ると彼女は窓枠にぶら下がっていた。

 

「これはやられたな、っと!」

 

着地と同時に地を蹴り、今度は上へ上昇する。

 

「!?壁を直で上がってくるなんて冗談じゃないわね・・・!」

 

実際には垂直ではなく、そこらの足掛かりにできそうなものを蹴って上に上がっているだけだが、士郎の目測が早すぎてまるで垂直の壁をジグザグに蹴り上がっているように見える。

 

ガラ!と最上旭は教室のドアを開けて廊下を疾走する。

 

「これはまた、お転婆な先輩だな・・・!」

 

今度は躊躇なく階段を踊り場から踊り場へ跳躍している。一つ間違えば大怪我だというのに彼女は楽し気に飛び跳ねていた。

 

(木曾の山育ちだったか・・・なるほど、軽快なのは理解できた)

 

相手は山育ち。あの様子から見ると、木から木に飛び移るようなことまでしていたと見える。

 

(ならば遠慮は無しだ)

 

――――同調、開始(トレース・オン)

 

一瞬にして全身に魔力が行きわたる。

 

「ふっ!」

 

疾風の如く士郎はその場から消え失せる。目指すはお転婆な先輩。

 

「!!!(本気で来た!)」

 

強化を施した彼のスピードから逃げるには全力を尽くさねばならない。

 

単純な一本道では一瞬で捕まるだろう。

 

故に、

 

「お邪魔しますっ!」

 

中の様子を確認せず彼女は教室に入った。

 

「お、旭ちゃんだ」

 

「モモちゃん、早くしてよねん」

 

どうやら補習授業中の百代が居たらしい。

 

「なんだ、決闘か?」

 

「勝負の最中なの!補習、がんばってね!」

 

そのまま最上旭は窓から飛び出した。

 

「やれやれ。そうポンポンと窓から飛び降りないでもらいたいのだが・・・」

 

「士郎!」

 

「モモちゃん集中!」

 

「うぐ・・・」

 

「騒がせてすみません」

 

「構わんよ。勝負であるなら全力で取り組みなさい」

 

百代が逃げないように見張っていた鉄心が楽しそうに言う。

 

「失礼しました。・・・百代。10問中7問間違ってるぞ」

 

「ええ!?」

 

「もう、モモちゃん・・・」

 

「モモは本当に頭は弱いのう・・・」

 

「やかましい!」

 

士郎の一言で説教を食らう百代であった。

 

「あ!士郎君大丈夫?」

 

義経達が追いかけてきた。

 

「中々に苦戦している。まさか補習授業中の教室にまで飛び込むとは・・・」

 

うーむと士郎は考える。

 

「もう3分だよ。そんなに悠長に構えてていいのかい?」

 

時間は後2分。120秒しかない。

 

「仕方ない。奥の手を使うとしよう」

 

――――投影、開始(トレース・オン)

 

士郎の手に現れたのは・・・

 

「あと2分・・・流石の英雄さんもここまでかしらね」

 

最上旭は意表を突いて最初の教室へと戻っていた。

 

ガラ!っと扉が開けられる。

 

「さて、鬼ごっこは終わりだ」

 

「それはこちらのセリフ。あと90秒で私を捕まえられるかしら?」

 

また窓を開ける最上旭だが、

 

バサッ!と、赤い布が走った。

 

「え?」

 

まるで意思でもあるかのように彼女を捕らえた赤い布の先にいるのは士郎。

 

「よっと」

 

グイっと赤い布を引っ張るとくるくると最上旭をグルグル巻きにして戻ってきた。

 

「はい、捕まえた」

 

「・・・。」

 

最上旭は呆然として固まっているが、勝利は決してしまった。

 

「士郎君!その赤い布は・・・?」

 

「ん?ちょっとした秘密兵器だ。用途が違うからただの赤い布だけど」

 

士郎が投影したのはマグダラの聖骸布だ。カレンが持つそれは、本来男性に対する絶対捕縛権を持つのだが、女性に使用したらあまり意味がない。

 

聖骸布なので彼女が吸血鬼であったならまた違っただろうが。

 

「そうね・・・貴方には聖骸布があったのだものね。これは油断したわ」

 

「旭さんが授業中の教室にまで逃げるからだ。ていうか、今聖骸布って――――」

 

「この勝負は貴方の勝ち。だから・・・そうね」

 

そう言って最上旭は無抵抗に士郎の方に倒れ、

 

「おっと、何を――――むぐっ!?」

 

「ん・・・」

 

「あああ!!!」

 

「あらま」

 

受け止めた士郎にそのまま口づけした。

 

「はぁ!ちょ!最上先輩!?」

 

思わず抱き上げて口を放す士郎。

 

「勝利の報酬よ。私の初めてだからね?」

 

「・・・尚更俺なんかにしちゃ駄目でしょう」

 

士郎は本当にこの先輩はどうしたものかと困り果てる。

 

「・・・。」

 

義経がなんとも言えない顔でこちらを見ている。

 

「主を悲しませるとは・・・滅!」

 

「え?俺じゃないぞ今の!?」

 

「でも貴方が一番役得でしょう?」

 

「・・・。」

 

そういう問題ではないのだがこういう時は何を言っても自分が悪いと分かっているので黙るしかない。

 

「次の勝負は私が決めるわね。また会いましょう」

 

そう言って彼女は去って行った。

 

「・・・。」

 

「ど、どうしたんだよ義経」

 

じーっと見てくる義経に思わず問うが、

 

「・・・。」

 

悲しそうに目を伏せてしまった。

 

「おいぼうずー主をイジメるんじゃない!」

 

「なにもしてな、ぬわ!?」

 

錫杖の連打が飛んでくる。それをパシパシと素手で弾く。

 

「ここで長物を振り回すな!危ないだろう!」

 

「主を泣かせるのが悪い」

 

「泣いてないだろうが!?」

 

本当に泣いてはないが、義経はとても胸が苦しそうだ。

 

「――――ッ悪かった。なんだか分からないが俺が悪いんだな?」

 

そう言って士郎はピタリと動きを止めた。

 

「あ、ば――――!」

 

士郎ならこの程度何でもなく避けるだろうと思っていたので弁慶はそれなりに力を込めていた。

 

(流石にこれの直撃はやばい!)

 

なんとか逸らそうとするがもはや錫杖は突き出されている。それを士郎は無防備に受けようとして――――

 

「!!!」

 

キィン!と鋭い刃が走った。

 

「義経?」

 

「弁慶。今のはやりすぎだ」

 

義経には珍しい剣呑な声に弁慶はゾクリとしたものを感じ、

 

「申し訳も・・・」

 

のらりくらりと誤魔化さず謝った。

 

「急にどうしたんだ義経?」

 

「士郎君!!なんで弁慶の一撃を避けなかったんだ!」

 

「だって俺が義経になにか悪いことをしたんだろう?」

 

「そんなことない!士郎君は自分で言っていた通り急にき、キスされただけだ!義経は確かに胸が締め付けられたけど・・・」

 

「それじゃあ「それよりも!!」ぬ・・・」

 

ぐわりと食って掛かってくる義経に士郎は後退を余儀なくされる。

 

「あの時義経が割って入らなければまた士郎君は大怪我をするところだった!なんで避けなかったんだ!」

 

「それは、俺がなにかを義経にしてしまったんだろう?」

 

「そんなことない!義経がはっきりしないのが悪いんだ。だから士郎君が怪我をする理由になんかならない!」

 

「・・・。」

 

どうにも自分は悲しませるだけじゃなく義経を怒らせてしまったようだ。

 

「すまなかった。俺には正直なにに義経が悲しんで怒っているのか分からないけど、とにかく俺が悪かった、ってことなんだろう?」

 

「そうじゃなくて!ああ、もう・・・!」

 

と義経は一時間ほど士郎に説教をするのだが、肝心な義経の気持ちという部分が抜けた上に、多少の怪我は必要と割り切ってしまう士郎には通じないのであった。

 




結構珍しいメンツで書けたんじゃないかなと思います。

松永先輩はねぇ…どう考えてもあの結果にしかならなかったです。想像力が足らなくて申し訳ない。

さらに義経はレオニダスブートキャンプ(体育)で強化されているので原作通りとはいきません。後付けの士郎対最上パイセンも士郎にとってはそこまで焦るものではなかったですね。原作でもパイセンなんでもありって言っちゃってるのでそうなったら士郎に負けはないです。

次回は夏休み前に何か挟もうかなと。では!
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