真剣で衛宮士郎を愛しなさい!   作:Marthe

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皆さんこんばんにちわ。やりたいことが多すぎて私の書く士郎はどこぞの賢王の様に目を覚ましたら冥界に居そうな感じの作者でございます。

今回はあの人物との再会と…最近少なかった風間ファミリーとのことを書きたいと思います。バトルは…ある…かも…?


思わぬ再会/仲間達と

日が長くなり、早朝五時でも十分に明るくなったこの頃。

 

士郎はいつもの様に鍛錬をして、皆が起き出す頃に朝食が出せるよう準備する。

 

「おはようございます」

 

「ああ。おはよう、マル」

 

今衛宮邸には三人の同居人が居る。梁山泊の林冲。九鬼から家出した葉桜清楚。そして士郎が苦労するくらいならと呼んだマルギッテ。

 

一人の頃に比べ、大分賑やかになってきた衛宮邸であったが女性の比率が多い(一応レオニダスもいる)のでこれ以上は増やすのやめようと思う士郎である。

 

「朝の鍛錬ですか。毎日しているとは感心しました」

 

「俺はそんなに強くないからな。きっちり鍛えとかないと後で後悔したくないから」

 

「貴方が強くないというのは誤りだ。あの川神百代と戦える貴方が強くない訳がない」

 

マルギッテは賞賛してくれるが、最近の百代はもう手を抜けない相手なのだ。

 

「褒めても朝食に生卵くらいしかでないぞ?百代は真面目に鍛錬に励むようになってからぐんぐん成長してるからな。油断してると一子にも抜かれちまう」

 

一子も今ではかなり腕を上げている。まだどうしても気のコントロールに時間制限があるが、それも通常戦闘であれば問題ない所まで来た。

 

今では二人で鍛錬しながら新しい川神流を作っているらしい。

 

「確かに川神一子の成長は油断できませんね」

 

「ああ。それに、得物も新しくしたいって依頼も来たからな」

 

一子が使っている薙刀だが、もう今の一子の全力について行けなくなっているらしい。

 

そこで士郎に依頼が来たわけだが、士郎への依頼は正直もう一杯一杯で、順番待ちが随分先まで埋まっている。

 

とはいえ、仲間の成長を助けられるならと士郎は今、放課後の依頼をすべて断り、夜遅くまで武器を作っている。

 

防音の結界が無かったらうるさくて叱られるところだろう。

 

「貴方は仕事を抱え込みすぎです。学校のはあくまで依頼なのですから仕事に差し支えるようなら断りなさい」

 

「マルの言う通り、今は断ってるよ。なにせこれで食ってるわけだからな。こっちを優先させてもらってるよ」

 

なので朝の多摩大橋の見張りも今はレオニダスに丸投げである。元々九鬼の従者達が見張ってはいるのだがそれでも変質者は絶えない。

 

「さて、そろそろ朝飯を作るか。そろそろ二人も起きてくるだろうし」

 

「・・・。」

 

そう言って縁側から室内に戻る士郎を追いかけるマルギッテ。

 

この朝の士郎の鍛錬を密かに見守り、朝食を一緒に作るのが今のマルギッテの至福の時だ。

 

ただ、ちょっと弱点が出来てしまった。

 

(士郎と鍛錬しようと思ったのですが・・・)

 

本当は彼女も見ているだけではなく士郎と共に鍛錬を、時には摸擬戦でもしたい所なのだが、あの真っすぐな眼に見られるとマルギッテは心を乱してしまうようになっていた。

 

(くっ・・・猟犬ともあろうものが情けない・・・)

 

と思いながらもやっぱり士郎を見逃すことはしないマルギッテであった。

 

 

 

 

 

 

朝の鍛錬を終えて朝食を四人で取っていると――――

 

ガランガラン!

 

「「「!!!」」」

 

「え?今のなに!?」

 

衛宮邸の外敵感知の結界が反応した。

 

「こんな朝早くに敵?」

 

「今は何処の勢力にも狙われていないんだがな」

 

「食事中ですが、仕方ありませんね」

 

そう言って三人はすぐさま戦闘態勢に入る。

 

「あ、あの、今の音はなんなの?」

 

「そうか。清楚先輩には教えてなかったか・・・すまん、マルギッテ。ここを任せていいか?」

 

「いいでしょう。士郎と林冲がオフェンス。私と葉桜清楚がディフェンス。士郎以外すべて近接職なのがいただけませんが」

 

本来なら士郎が屋根の上から援護射撃をするべきだろうが、この結界が反応するということは外敵は衛宮邸の位置が分かっていない。

 

なぜならこの家には宝具級の人払いの結界が張られているからだ。大抵は見つけられなくて殺気や敵意を飛ばしてくるのが精々であるのだ。

 

それなのに遠距離射撃などしたら逆算して場所が割れてしまう。人払いはあくまでも意識を逸らすものであり、そこにあると認識されてしまうと効果を失う。

 

正確には無くはないが、効きづらくなるのだ。

 

「いくぞ。林冲」

 

「ああ。士郎は私が守る」

 

そう言って林冲は新しい槍(士郎の魔術謹製)を携えて外に出る。

 

 

 

 

 

 

新しい建物が立ち並ぶ中、ゆっくりと道沿いを歩いていくと――――

 

「史文恭?」

 

「なんだって!?」

 

士郎は見えた人影に首を傾げた。

 

「曹一族はもう士郎を狙っていないはずだ!」

 

「ああ。だからあの様子なんだろう」

 

士郎はそう言って無造作に彼女に近づいていった。

 

「久方ぶりだな。衛宮士郎」

 

「史文恭。どうして君がここに?依頼のものは問題なく届けているはずだが・・・」

 

彼女等曹一族との一件以来、士郎は彼女達曹一族にも武器を提供している。もちろん台帳とギアスはかけられた上でだが。

 

「それはもはや私には関係ない。見てわからんか?」

 

だらりと下げられた右手には狼牙棒が。左手には大きな段ボールを抱えて、大きめのボストンバックをかけている。

 

「戦う気が無いのは分かったが、なぜ殺気を?」

 

「それは単純にお前達の家が分からなかったからだ。真っすぐ進んでいるはずなのにいつの間にかここに戻ってくる。嫌らしい結界だな」

 

「お前達の家って・・・まさか!」

 

林冲は目を白黒させながら槍を構える。

 

「おいおい。戦う気はないと言っただろうが。そっちがその気なら私は構わんぞ」

 

ドスン!と段ボールとボストンバックを置いて狼牙棒を構える史文恭。

 

「まてまて!林冲!槍を下せ!史文恭も闘気を出すな!こんな早朝から殺し合いなぞするんじゃない!」

 

いらぬ戦いを起こそうとしている二人に士郎は間に入るように二人を止めた。

 

「私の家が目的なんだろう?なぜ私を訪ねてきた?」

 

とにかく目的が分からねば始まらぬと士郎は問いかけた。

 

「この通りだが。お前はそんなに鈍い男だったか?」

 

「いや、なんとなく想像は付くが・・・君は曹一族の武術指南役じゃないのかね?」

 

荷作りしている時点で彼女も我が家へのホームステイが目的だと分かるが、彼女は曹一族でもかなり上の人物のはずだ。

 

そんな彼女が曹一族を抜けるとは考えにくいのだが。

 

「ああ、そのことなら問題ない。私は曹一族をやめてきた」

 

「「はぁ!?」」

 

林冲と二人驚きの声を上げる。

 

「や、やめてきたって・・・」

 

「そうか。豹子頭はあの時気絶していたんだったな」

 

そう言って彼女は下着が見えるのも構わず右肩をみせた。

 

そこにあるのは何かに貫かれたような傷跡だ。

 

「一応戦えはするのだがな。古傷で戦闘力が落ちた以上、いつまでも居座ることは出来ん」

 

それは彼女なりのプライドなのだろう。武術を指南する自分が、戦う力を多少なりとも落としたのであれば上に立つべきではないということだ。

 

「それで私の家に厄介になりに来た、というわけか」

 

「なぁに。九鬼に聞いてみたら三食食事付きで多数の家内を養っている器の大きい男がいると聞いてな」

 

「家内って・・・私は結婚していないのだが」

 

頭が痛そうに士郎は頭を振る。言ったのは恐らく揚羽あたりだろう。

 

「それより、私を受け入れる気はあるのか?それともこのまま放り出すのか?」

 

史文恭の言葉に嘆息する士郎。

 

「はぁ・・・その言い方は卑怯だろう。部屋はあるが立派なものは期待するなよ」

 

「士郎!?」

 

「世話になる。丁度いい、持ち上げるのが一苦労なのでな。それを持ってくれないか?」

 

ニヤニヤと笑いながら史文恭は段ボールを指さした。

 

「仕方あるまい・・・ぬ?」

 

片手で運んでいたので衣類でも入っているかと思えばそうではないらしい。

 

というか非常に重い。よくこんなものを片腕で長時間持ち歩いていたものだ。

 

「一応聞くがこれは一体なんだ?」

 

「女性の持ち物を検分するのか?」

 

「冗談ではない。この重さからして衣類の類ではないだろう?物騒なものを持ち込まれても困るのだが」

 

「シャレのきかぬ奴よ。ただの本だ」

 

「本!?」

 

この重さからして一体何冊あるのだと言いたいのだが事実らしく史文恭は持ち上げていた左腕をぐるりと回した。

 

「私は読書が趣味でな。本に囲まれていることに幸せを感じる。それはまだ読んでいないものの一部だ。お前の住所がはっきりしたら残りも郵送させるつもりだ」

 

「・・・。」

 

これは、普通の部屋では収まり切らないかもしれんと部屋の拡張を考える士郎だった。

 

 

 

 

 

 

今日は恒例となった金曜集会だ。いつも通り摘まめるものとデザート(百代の希望で桃コンポート)を手に秘密基地へと歩く。

 

「この前モロとナンパしに行ったんだけどよー・・・」

 

「言わなくてもわかるこの感じ」

 

「うるせい!しっかし大和といい、士郎といい、選り取り見取りで羨ましい限りだぜ」

 

「士郎は分かるけど俺が含まれてる理由が分からないぞ」

 

「京とクリスと弁慶。三人も誑し込んでるじゃねぇか!」

 

「おま!でかい声で言うな!デリケートな問題なんだよ!」

 

「否定しないあたり大和も罪作り・・・」

 

「大和坊やるじゃねぇか・・・」

 

「口の悪い後輩はこうだ!」

 

「あー!松風ー!」

 

「俺っち回る回るメリーゴーランドゥ!」

 

「こらこらやめないか」

 

きちんと一部ではなく全体を掴んで壊さない程度にぶん回される松風を士郎が救出する。

 

「ありがとうございます士郎先輩!」

 

「一応大丈夫だと思うけど一々取られないようにな?」

 

というか携帯ストラップなのだから携帯にぶら下げたらいいんじゃないかと士郎は思う。

 

まぁ言ったところで、

 

「松風は付喪神なので(キリッ)」

 

としか返答は返ってこない。

 

(どう頑張っても一人芝居なんだよなぁ・・・)

 

友達がいっぱいできれば松風は喋らなくなるんだろうか?

 

(いや、もう松風という友達が由紀江の中では出来上がってるんだ。友達がたくさんできてもこのままだろうな)

 

士郎はそれでもいいと思った。かなりトリッキーなやり方ではあるが松風が内気な由紀江の本音をばらしてくれるので、見た目はともあれあれも特殊なコミュニケーションと思えば悪くはない。

 

見た目を考慮しなければ、だが。

 

「ねぇねぇ士郎。今日は何を作ってきたの?」

 

保冷ボックスを持つ士郎の周りを一子が犬の様にくるくる回る。

 

「ガクトに嚙みついたら教えてやるぞ」

 

「ガルルル!!」

 

「ぬお!?てめ、士郎!うおおお!」

 

「犬は最近メキメキと力を付けてるからな・・・ガクトの腕なら嚙みちぎれる・・・か?」

 

「そんなこと言ってないで止めるの手伝ってよ!士郎もなんでガクトにけしかけたのさ!?」

 

「不穏な話をしてたから」

 

ただでさえ史文恭までホームステイしているので色々と危険なのだ。

 

油断するとすぐにヒエラルキーが最下層になる。

 

「この!この!噛ませなさいよ!」

 

「誰が好き好んで噛みつかれるか!俺様の進化した筋肉を舐めるなよ!」

 

ガブガブ!と噛みつこうとする一子をガクトが上手くいなしている。流石、スパルタ化した第一人者。

 

武士娘相手にも中々にやり合っている。

 

「それはそうと士郎ー。桃のコンポートは準備してきただろうにゃん?」

 

くてりとしな垂れかかる百代を暑そうに払いながら、

 

「どうだろうな?もしかしたらイチゴかもしれないぞ?」

 

「なんだってー!?お前この美少女の頼みを無下にするのか!」

 

「いや季節ってもんがあるだろう?まぁ桃の方が旬だけど」

 

いちごは4~6月頃。対して桃は7~8月頃なので今が丁度旬の季節だ。

 

「それにしてもどれだけ桃が好きなんだよ。こんなモノ初めて作ったぞ」

 

「ということはあれが出来たのか!?ひゃっほう!」

 

と百代は喜んで飛び跳ねた。

 

「お、おいモモ先輩飛んで行っちゃったぞ!?」

 

「どうせすぐ戻ってくる。・・・んんっ。あー保冷バックがー」

 

「なんだって!?」

 

ビシュン!と戻ってきた。

 

「ほらな」

 

「士郎も中々姉さんの扱い分かってきたな」

 

「そりゃこれだけ絡まれればな・・・」

 

今の一言で百代はまた士郎に引っ付いた。

 

「おい士郎!保冷バックには傷一つついてないだろうな!」

 

「ついてないから離れろ!暑いわ!!」

 

七月過ぎて今は八月。夏真っ盛りである。ベタベタくっ付き合ったら暑くてしょうがない。

 

「なんだよー役得だろー?」

 

「何がだよ!いいから離れろ!暑いんだって!」

 

「ナニが、だよねー」

 

「モモ先輩ずるいです・・・」

 

「だー!いい加減放せこの犬!」

 

「犬じゃないわ!猛犬よー!ガルルル!」

 

「もう滅茶苦茶だよ・・・」

 

そんなこんなで秘密基地。

 

「みんなー!いらっしゃい!」

 

「クッキー!今日も出迎えサンキューな」

 

グイグイとロボアームと握手する士郎。

 

「えへへ。皆が来るの待ってたんだよ?マイスターがいないから寂しかったんだ」

 

「マイスター?そういやクッキーのマイスターって・・・」

 

「俺の事だぁ!!!」

 

ドン!とキャップが後ろからやってきた。

 

「なんだキャップなのか。苦労しそうだな・・・」

 

「いつもは京が僕の事を大事にしてくれてるんだよ」

 

「それで京になついてるのか。キャップももったいないことするなぁ・・・」

 

こんなスーパーご奉仕ロボいないだろうに。

 

「でもよーそいつすぐキレるからなぁ」

 

「なんだよ!僕になんか文句でもあるのかよー!」

 

ガションガション。

 

「いつでも相手になるぞマイスター」

 

「そういうところだぞ!」

 

すぐさまキャップは士郎を盾にした。

 

「おい!なんで俺を盾にする!」

 

「だって一番切られなさそうだし」

 

「ぬう・・・これは仕方ない。士郎ごといくしかない!」

 

「いくしかない!じゃないわ、たわけ!」

 

前言撤回。少々問題を抱えすぎている気がする。

 

そんなこんなでようやく皆席に着きお茶やらポップコーン、士郎の持参のおかずで軽く打ち上げである。

 

「やっぱり士郎のメシはうめぇわ・・・」

 

「ガクト毎回言ってない?」

 

「でも本当に美味しいのよねー。栄養価もばっちり!」

 

「それより今日のデザートはなんだ士郎!」

 

ウキウキと聞くクリスだが、残念なことに、

 

「今日は一人分しか持ってきてないぞ」

 

「えっ!?」

 

「仕方ないだろう?収まらなかったんだから」

 

そう言って士郎はもう一つの保冷バックを開けた。そこから出てきたのは・・・

 

「よいしょっと」

 

ドドン!とでっかい瓶に入った桃のコンポートである。

 

「「「え」」」

 

その迫力に一同は固まった。

 

「士郎、もしかして二つ保冷バック持ってたのって・・・」

 

「コレの為だよ。いやー苦労した。まさかバケツプリンみたいなものを作ることになるとは思わなかった」

 

そう。コンポートが収められている瓶は通常のデザート用の瓶ではない。ホームセンターとかに売っているデカい漬物とかを作る瓶である。

 

「約2Lの桃のコンポートだ。百代がどうしてもっていうんでな。作ってきた」

 

「鬼のケーキといい、なんでもありだな・・・」

 

「普通作ろうと思わない」

 

「頼むモモ先輩もモモ先輩だ」

 

「クリ吉は言えないんじゃないかなぁ」

 

「松風!シーッ!」

 

「だから保冷バック縦にして持ってたのか・・・」

 

「そりゃあみっちり詰まってるとはいえ型崩れしたら嫌だろう?作るの大変だったんだからな」

 

作るのならば見た目もこだわるのがこの男である。

 

「味は保証する。けど――――」

 

「「「「異議ありッ!!!」」」」

 

全員が吠えた。そりゃそうである。これが全部一人のものなんて納得いくはずがない。

 

「ほほう・・・私のピーチに手を出そうとはお前達、どうなるかわかってるな?」

 

フオン!と闘気を高める百代。こちらもどうやら真剣らしい。

 

「やるなら外でやって来いよー。俺はここで涼んでる」

 

「「「上等ーー!!」」」

 

だだだ!!と皆が一斉に外へと駆け出した。

 

「まったく、騒がしいねぇ・・・」

 

「だな。クッキー、ポップコーンくれないか?」

 

「いいよ。士郎は冷静だね」

 

「そりゃ自分で作ればいいからな」

 

一度に作る量がすごいだけで士郎からしてみれば小瓶に分けるかデカい瓶に一つにするかの違いである。

 

結局、百代含め順にバトルロイヤルで上位三名にのし上がった者が食べられる権利を得られたようだった。

 

「ちぇー。折角独り占めできると思ったのに・・・」

 

「いや、それでもすごい量だからな?」

 

「そうねー・・・あ、でもくどくないからスルスル食べれちゃう!」

 

「うめぇなこれ!流石、衛宮定食の士郎だな!」

 

「ぐぬぬ・・・ここで負けるとは・・・」

 

「キャップなんで勝ってんだよ・・・」

 

「そりゃバトルロイヤルだからだろう?上位三人に入るまで逃げ回ればいい話しだ」

 

それもまた戦略である。バトルロイヤルで逃げに徹するというのも意外と難しいのだ。

 

「あとは運だな!」

 

「本当にそれで生き残るから困る・・・」

 

何とキャップは百代の一撃でさえ博打で避ける。とにかく運だけは凄い男だった。

 

「土日どうする?」

 

「何して遊ぼうか」

 

土日の予定を話し合う一同に、士郎は告げた。

 

「悪いけど、仕事が詰まってて遊ぶ暇がないんだ・・・むしろ手伝ってくれないか?あれがもう少しで完成しそうなんだ」

 

「あれって・・・あれか!」

 

「本当に出来ちゃうんだね・・・」

 

「興がのってな・・・前住んでいた家よりも広いから想像力が湧く」

 

「だからって普通自分で露天風呂なんて作らないよ」

 

モロの言う通りである。職人でもなければ出来ないところだが・・・

 

「確かに浴槽を作るのは大変だけど、そこさえ何とかしちまえば後は循環させるだけだろう?そんなに苦じゃないさ」

 

自分で作ればかかるのは材料費だけだが、いくら何でもやりすぎである。

 

「じゃあ土曜は士郎の家の手伝いだな。報酬はくれるんだろ?」

 

「ああ。食券でいいか?」

 

「問題なーし!」

 

「士郎はめちゃくちゃ食券持ってるからなぁ・・・今から何喰うか迷うぜ」

 

「私は今度こそ巨大瓶の桃のコンポートの独り占めだ!!」

 

「おいおい、当日に出来るわけじゃないんだからな・・・?」

 

色々手順を踏まないといけないのである。というか、手が足りないから借りるのであって当日に作っている余裕などない。

 

「あと、一子の薙刀の材料も一緒に作っちまおう。そうすれば少しでも早く提供出来るはずだ」

 

「ほんと!?よーし!やる気湧いてきたわよー!」

 

最近一子は薙刀を壊さないように気を張って使っているらしく、成長の妨げとなっているようだ。

 

それはそれで鍛錬になりそうなものだが、やはり伸び伸びと振るえる方が武器として正しい形だろう。

 

「じゃあ日曜は――――」

 

次の日は何をして過ごそうか、そんな話題で盛り上がりながら夜が更けていくのだった。

 

 

 

土日明けて月曜日。どうにかこうにか衛宮邸の露天風呂は完成し、武器の作成依頼も少しは捌けたということで今日は気持ちゆっくり目に登校する。

 

別にいつもの時間に登校してもいいのだが、何かとお前はやりすぎだと言われるので一応自重した形である。

 

「今日は一緒だね」

 

「清楚先輩と登校するのは久しぶりの気がします」

 

「清楚とは時間をずらしていたからな」

 

いい加減ほとぼりも冷めたろうということで一応ホームステイは秘密だが、こうして登校するのは問題ないように思えた。

 

「おはよう、士郎」

 

「おはよう旭さん」

 

「「!!」」

 

のだが。早朝早々の爆弾に二人は硬直した。

 

「何時も早いのに今日は幾分遅いのね?」

 

「ああ。色んなところからお前はやりすぎだって言われてさ。少しは自重しようってわけで・・・二人とも、どうした?」

 

話しの最中に固まっている二人を見て士郎はどうしたのかと首を傾げた。

 

「今、旭さんって・・・」

 

「ああ、実はかくかくしかじかでな・・・」

 

勝負の件を話して士郎は二人を落ち着かせた。

 

「・・・それでこの前姿をくらましていたのか」

 

「え?いや、林冲には先に帰ってもらっただけだろう?」

 

(どうして俺の虞はこうも人を焚きつけてしまうのか・・・)

 

と清楚は目を赤くしながら思うのだがこれが彼であるのでどうしようもないのである。

 

「今日も義経と勝負を?」

 

「ええ。今日は――――」

 

「おはよう!士郎君!」

 

「おはようさん」

 

「いい朝だな。友よ」

 

義経達が登校してきた。

 

「おはよう、義経ちゃん」

 

「おはようございます葉桜先輩!」

 

「どうしたのさこんな所で固まって」

 

「ああ。丁度俺たちも来たところなんだ。そんで――――」

 

「おはよう、義経。士郎が来たから今日の勝負の話をしようと思ってたのよ」

 

そう言って旭はある場所に放課後来るように言って去って行った。

 

「士郎君、怪我、してない?」

 

「え?してないぞ?昨日のなら義経が止めてくれたろ?」

 

「士郎君は気づくと大怪我してるから・・・それなのにプールは辛いかなって」

 

「・・・俺も好きで怪我してるわけじゃないんだけどな」

 

なんとも微妙な気持ちになる心遣いである。

 

「そればっかりは大将が悪いね。この前のだって私が悪いとはいえ、わざわざ直撃貰おうとするくらいだからね」

 

「傷は男の勲章・・・だが、お前は命を落とすにはまだ早い」

 

「あん?誰が命を取るって?」

 

「いでででで!!アイアンクローはやめろ!頭蓋骨が砕ける!」

 

ぷらーんと与一が片腕で持ち上げられているあたり本当に力自慢である。

 

「それじゃ、俺たちも各々教室に行きますか。他の奴等も登校してくる頃だしな」

 

見れば大分登校してくる人影が多くなってきた。

 

もうしばらくすれば大和達も来るだろう。

 

(勝負もだが、今日は大和のS組合格発表だな)

 

結局大和はS組の編入試験を受けることにしたらしい。その結果が恐らく今日だ。

 

 

 

 

朝のHR。

 

「みんなおはよう。欠席者は・・・いないようだな。今日も勉強に励むように。直江大和と不死川心はこちらに・・・」

 

「先生ーS組のテスト発表ならここでしちゃってもいいと思いまーす!」

 

「それもそうね。結局みんな直っちと心に聞くと思うし」

 

仲間想いの彼らは心と大和のテストに対する妨害工作への対応など様々な協力をしていた。

 

もちろん報酬ありきだったらしいが、学生のテストとは思えないほど妨害工作があったらしく正直士郎としては不愉快に感じたものだ。

 

(突然の腹痛に、ネットの掲示板への誹謗中傷。各先生の傾向分析・・・まるで戦闘だな)

 

今回士郎は食べ物、飲み物の提供をしていた。なんでも、試験当日に腹痛や体調不良に陥った者が多くいたらしい。

 

一人二人ならまだしも、複数人同じ症状となるとどうやら盛ってる奴が居たようだ。

 

ネットの掲示板など士郎は見ていないが相当な誹謗中傷だらけだったらしいのでそちらもモチベーションダウンを狙ったものだろう。

 

「それでは、不死川心、直江大和、共にSクラス試験合格だ!おめでとう!」

 

「「!!!」」

 

「おめでとう!」

 

「おめでとうございます!」

 

「ま、俺たちがあれだけ協力したんだからな」

 

「そうだなぁ・・・大和がSクラス行っちまうのは正直なんとも言い難いけどよ。おめでとさん!」

 

「おめでとうございます!更なる飛躍を願っておりますぞ!」

 

クラス一同の拍手で祝う。

 

「ありがとう、ありがとう!」

 

大和は嬉しそうに、照れながらも拍手に応えた。一方、心はというと、

 

「・・・。」

 

何故か、複雑そうな顔でいた。

 

(嬉しい・・・はずじゃないのか?)

 

士郎はいち早くその表情に気付いたが、

 

「――――ッ!」

 

心は顔を伏せて教室を飛び出して行ってしまった。

 

「不死川!?」

 

梅子も突然のことに反応が遅れてしまった。

 

「先生。彼女は俺が追いかけます。とりあえずHRを。レオニダス、後から教えてくれ」

 

「了解いたしました」

 

そう言って士郎は素早く開け放たれた教室のドアへと向かう。

 

「こ、こら衛宮!誰も許しを出していない!」

 

流石の梅子も二度目はないと鞭を走らせるが、

 

「ふっ!」

 

鞭の先端を弾くことで士郎は行ってしまった。

 

「――――ッ!私の鞭さえこうも簡単にあしらうか。出鱈目な男だ・・・」

 

「あちらはマスターに任せておけば問題ありません。小島先生、HRをお願いします」

 

「・・・はぁ、わかった」

 

どっしりと構えたレオニダスに促されて、梅子は仕方なくHRの続きを始めるのだった。

 

 

 

 

 

「この辺だと思うんだけど――――」

 

下駄箱の方まで追跡してきた士郎だったが、丁度このあたりで逃走が止まった。

 

恐らく何処かに・・・

 

「いたいた」

 

特に隠れもせず端の方で泣いていた。

 

「どうしたんだ心。急に教室飛び出したりして」

 

そう言ってポンと士郎が頭を撫でると、

 

「――――ッ!」

 

「おっと」

 

がばっと心が士郎の胸元を掴んで抱き着いた。

 

「・・・泣き顔を見られたくないのか」

 

士郎の問いにぐしぐしと顔を上下に動かす心。

 

「わかった。誰にでも泣きたい時はあるさ。でもみんな心配してたぞ。急にどうしたんだってな」

 

士郎の言葉に声をしゃくりあげながら心は言った。

 

「・・・嬉しいはずなのに悲しいのじゃ・・・折角Sに戻れるのに、戻ったら友達が居なくなってしまうのじゃ・・・」

 

「・・・。」

 

なるほど。と士郎は納得した。

 

心はSに戻れる喜びとSに行くことでやっとできた友達と離れ離れになることに苦しんでいるのだ。

 

今までずっと選抜クラスだった彼女には存在しなかったことがF組で起きた。故に、この感情をどう整理すればいいのか分からないのだろう。

 

「なにもそこまで思いつめることはないだろう?クラスが違っても友達は友達だ。壁を何枚か挟むだけだよ」

 

士郎の言葉に心は首を振った。

 

「S組に戻ればきっとみんな此方の事が嫌いになるのじゃ・・・前にS組に行ったとき気持ち悪いと感じたのじゃ・・・」

 

「それは――――」

 

常に競争社会のS組ならではの感覚なのだろうか。

 

家柄も随分といい人間が揃っていると聞く。そんな中には、F組の和気あいあいとした雰囲気ではなく、ドロドロとしたものを感じたのだろう。

 

その辺を上手く乗りこなしている九鬼英雄や、葵冬馬達を見習ってほしいが、彼女の友達はF組。なかなか同じようにはいかないのだろう。

 

「そうだな・・・じゃあ、S組の俺の友達を紹介する。その子と何とか過ごして昼休みなんかはF組に来ればいい。こういうのはどうだ?」

 

「士郎の友達・・・?」

 

「ほら、たまにF組に来てた女性が居ただろう?林冲ていうんだけど彼女も多分孤立してるんだ。だから彼女の友達として一緒に過ごしてほしい」

 

林冲は自分を守るという言葉に強い感情を抱いている。士郎としては、危機はもうないのだから自由に過ごしてほしいと思うのだが。

 

そうやって彼女の気持ちを利用して不安定だったのを安定させた為に、士郎には今更自由にしろ、なんて言えないのだ。

 

「・・・士郎も、友達でいてくれるのか?」

 

「当たり前だろう?あ、でもあれはダメだぞ。F組のみんなの事サルだなんだと言ってただろう?あれは許せないな」

 

「もう言わぬ!此方にはもう言えぬ・・・」

 

それもそうだろう。これだけ友達を大事に思っているならもう罵倒など出来まい。

 

士郎はそう結論付けて、

 

「よし。じゃあ戻ろう。このままだと小島先生に大目玉を食らうからな」

 

何気に来るときに鞭を弾いた左手がジーンと痺れているのであった。

 

「ただいま・・・「遅いわ!」ぐわっ!?」

 

戻ってきて早々梅子の鞭が今度こそ炸裂した。

 

「痛い・・・」

 

「当たり前だ馬鹿者。それで、ちゃんと連れ戻してきたんだろうな?」

 

「ええ。この通りですよ」

 

ちょこんと士郎の袖を掴んで恥ずかしそうに後ろにくっついている心を見て、梅子も安心したようだ。

 

「それでは不死川にも罰を与えねばな。お前達!」

 

「よっしゃあ!」

 

「やるぜ!」

 

「いくわよー!」

 

「せーのっ!」

 

合格おめでとう!と心を胴上げするFクラスの皆。

 

「にょ、にょわあああああ!?」

 

「はっはっは!あの特徴的な叫び声も聞く機会が減ると考えるとなんだか寂しいですな」

 

「一番彼女に寄り添ってたのはお前だもんな、レオニダス」

 

「いえいえ。最初こそそうでありましたがその後はほとんど不死川嬢が頑張ったのですよ。むしろ的確なアドバイスを必要な時にしてくれたマスターこそ、彼女には大きな存在なのではないでしょうか?」

 

「そうだったら、いいな」

 

誰かの為に。そう願い続ける自分が本当の意味で役に立てたのなら。それは衛宮士郎にとって快挙だろう。

 

「そういえば京は今回なんでいかなかったんだ?」

 

胴上げには混ざらず静かに本をぺらりとめくっていた京に問う。

 

「今回は大和のバックアップに専念した。次の試験でSに行くよ」

 

「なるほど」

 

一応彼女もSクラス並の試験結果だったそうだが、もう一人のS志願者に負けたらしく、そちらの人物がS入りしたそうだ。

 

流石の京も大和のバックアップの片手間ではS組入りは難しいのかもしれない。

 

(知力による闘争って感じだな。これはこれでいいのかもしれない)

 

なにかと戦いを好む川神学園だが、何も武力だけが戦いの場ではないのがこの学園のいいところだ。

 

 

 

 

 

大和達のS入りを発表されたその日の放課後。士郎はプールに来ていた。

 

「今日は水泳対決か・・・」

 

「そうよ。しっかり準備運動しておいてね?」

 

「いや、俺は勝負しないからな?」

 

スクール水着姿の旭にそう返して、士郎は構わず準備運動をする。

 

勝負しないとはいえ、この炎天下の中プールを前にして見学は避けたい。

 

「士郎君!義仲さん、お待たせしました!」

 

義経達もやってきたようだ。

 

「義仲さん綺麗ですね・・・」

 

「あら、義経も綺麗よ。ねぇ士郎、どっちが綺麗か選んでみて?」

 

「っ!(こうなるだろうから見ないでいたのに!!)」

 

抵抗も虚しく女性の美しさ選びという最大級の爆弾に晒された士郎はどうしたものかと考える。

 

(二人とも白い肌に黒髪・・・)

 

うぬぬ・・・と困る士郎。困るということは二人をジロジロ見るということで――――

 

「・・・。」

 

「・・・。(モジモジ)」

 

(・・・どうしよう)

 

完全に思考が固まってしまった。この状況でどちらか一方を褒めるなんてできない。

 

そんな時、

 

「おや、大将が美少女二人をジロジロと舐め回すように「人聞きの悪い言い方をするな!」おおっと」

 

弁慶がゆらーりと更衣室から出てきた。

 

(!1もだめ2もだめなら3だ!!!)

 

「弁慶の勝利!!」

 

ドドンとはっきり宣言した。

 

「うまく逃げたわね」

 

「うう~・・・士郎君・・・」

 

「おお?なんかかちましタコわさ」

 

(義経、すまないが今君を見ることはできない!)

 

三十六計逃げるに如かず。士郎にはどちらが美しいかなど決められなかった。

 

「でも、そうよね。士郎は弁慶くらい魅力的じゃないと判断できないわよね?」

 

「んな・・・なにを言ってるんだ!?」

 

流石にそんなことは無いと言いたいが、どう頑張ってもこの舌戦は負けなので士郎は深くため息を付いた。

 

「美少女二人を前にため息を吐くなんて失礼よ、士郎」

 

「誰のせいだ・・・」

 

士郎は天を見上げる他なかった。

 

「ぷはっ!義経、すごいフォームで泳ぐのね!」

 

「イルカくん達に教えてもらいましたので!」

 

確かに。義経の泳ぎはまるで全身をしならせるかのようなフォームだ。

 

あれほど天然に近い泳ぎ方は無いかもしれない。

 

「次は長距離ね!士郎!」

 

「はいはい。レディー――――」

 

ゴ。と言おうとした時だった。

 

「しーろーうー!!!」

 

「なっどわあ!?」

 

ドバッシャン!!!と百代がプールに落下してきた。

 

「お前~アキちゃんと義経ちゃん、それに弁慶ちゃんまで侍らして何してるんだよー」

 

「侍らせてない!俺はジャッジを頼まれただけだ!というか何処から跳んできた!?」

 

水しぶきの上がり方からしてとんでもない高さから飛び降りてきたのはすぐに分かった。

 

「そんなん決まってるだろう~教室からだ!!」

 

「自信満々に言うな!第一戻る時はどうするんだ!」

 

「窓開けといてって燕に言っておいた」

 

「閉められてたらどうするんだよ・・・」

 

あの小悪魔系の先輩ならやりかねん。

 

「いらっしゃい百代。あんな高さからダイビングなんてすごいわね」

 

「そうでもない。よく美少女をラスボスだの言う不届き者をあそこから投げてるからな」

 

「いや、投げるなよ・・・」

 

いくら水とて高さによってはコンクリート並の硬さの衝撃になるのだ。

 

「ちなみに全員無事なんだろうな?」

 

「当然だろー。私が失敗するなんてありえ「ん?」あんまりない!」

 

士郎の右腕を見て百代は言い直した。

 

「それで本当に何してたんだ?」

 

「だから旭さんと義経の水泳バトルだよ。俺と弁慶は涼んでるだけ」

 

「お構いなく~」

 

弁慶はゆら~りと漂っていた。

 

「ほう。それならこの美少女が居ても問題ないわけだな!」

 

「その辺は旭さんに・・・?義経、どうした?」

 

「・・・。」

 

義経は弁慶と百代を見て自分の胸元を見て・・・。

 

「ちょっと待っててください!」

 

そう言って更衣室に戻って行った。

 

「なんだ?」

 

「これは、ほうほう・・・義経ちゃんも大胆だなぁ」

 

フオンと目に剣の模様を浮かべた百代に士郎は、

 

「やめ「もう食らわない!!」んか!!」

 

垂直に落としたはずのチョップが軌道を真横に変わり、避けた百代の鼻の下、人中にクリーンヒットした。

 

「痛ーーーー!!!」

 

「あれは痛いわね」

 

もちろん手加減の一撃だが急所にチョップが入れば誰だって痛い。

 

良い子は絶対真似しないようにしよう。人中含む人の正中線と呼ばれる中心を通る場所には急所が多く、打ち所が悪いと死もあり得るので絶対面白半分で狙ってはいけない。

 

バッチャンバッチャンと水の上を飛び跳ねる百代から迷惑そうに離れる士郎と弁慶。

 

「まったく。あいつにはほとほと困るな・・・」

 

「でも武神は大将のこと憎からず思ってるんじゃないの?」

 

「そりゃ仲間内だしな。最初の頃はこんなんじゃなかったんだぞ?」

 

今はもう懐かしい初めての金曜集会の事を思い出す。

 

(あーあ。こりゃ最初から鈍いわけか。主もはっきりしないと攻略はダメかなー)

 

と、意外にも冷静に様子を見守る弁慶。彼女としては主に幸せになってほしいがいかがなものか。

 

「お待たせしました!」

 

「おかえりなさい。・・・あら?」

 

旭が不思議そうに首を傾げた。

 

「義経、パットでも入れてきたの?」

 

「ぶっふぉ・・・!」

 

丁度潜ろうとしていた士郎が派手に水を吸い込んだ。

 

「いえ!さらしを外してきただけです!」

 

「え?水泳でもさらしを付けていたの?」

 

「その方が動きやすいので・・・」

 

急なバストアップに士郎はビキリと固まった。

 

「し、士郎君!どうだろうか!」

 

「お、俺に意見を求められても・・・」

 

ジト―っと百代と弁慶に睨まれて士郎は、

 

「あー・・・うん。義経は魅力的だな・・・」

 

「!」

 

なんとかその一言を絞り出すのだった。

 

「あらあら。これは私の負けかしらね?」

 

「頼むから俺に振らないでくれ・・・」

 

面白そうに士郎をからかう旭に士郎は疲れたように沈んだ。

 

そうして旭と義経は様々な種目で争っていたわけだが・・・

 

「おー流石士郎。水上体育祭の時も思ったけど見た目以上に鍛えてるなぁ」

 

「そりゃ、必要だからな」

 

そう言って士郎はバシャりと泳ぐ。その横を旭が通った。

 

(しかし、この炎天下の中、プールは涼しくていいな・・・)

 

川神の夏は暑い。冬木はどうだっただろうかと思い出す。

 

(遠坂達は今頃どうしてるだろうか。無茶なことしてなければいいが・・・)

 

自分がこの世界に飛ばされてかなり立つような気がする。実際は数カ月程度なのだが濃密過ぎて時間の概念を忘れてしまう。

 

(来た頃はこんなにのんびりできなかったっけ)

 

九鬼とドイツ軍と梁山泊と曹一族に追われていて本当に精神をすり減らしていた。あの頃に比べればなんと自由な毎日か。

 

(セイバー達もこの世界に来れるだろうか)

 

そんなことを考えて頭を振る。今回の一件でも封印指定ものだ。今はきっと狙われないよう東奔西走していることだろう。

 

(そう考えると遠坂達には悪いな)

 

危険もあったが今はこうして新たな人生を謳歌している。自分を探し出そうと必死の遠坂達には少し後ろめたいものを感じた。

 

「おい士郎!一人で泳いでないで私と遊べー!」

 

「ぶわ!?」

 

ぼーっとしていた所を飛び掛かられて沈む士郎。

 

 

 

 

―――――まだ見ぬ未来に彼女らの姿があるのか。士郎にはまだ分からない。

 

 

 

 




遅くなりました。ちょっと日常を詰め込み過ぎたかな…でも日常成分が、特に風間ファミリー成分が足りなくなってきていたので精一杯書きました。

バケツプリンならぬ特大瓶の桃コンポートってどうやって作るんだろう、出来ても桃の漬物みたいだなと思う作者でございます(笑)あの超でっかい瓶にどうやって納めるんだろって感じです。

そろそろ戦闘が欲しいかな・・・ということで多分次回からは戦闘三昧になるかと。

では!
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