真剣で衛宮士郎を愛しなさい!   作:Marthe

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皆さんこんばんにちわ。感想にて認識違いを教えてもらって仰天している作者でございます。

てっきり、剣聖のお父さんを越えたから黛十一段だと思っていたのですがよく見たらお父さん自体が黛十一段でした…この小説を書くまで理解してなかったので大分衝撃です。

今回は義経ちゃん視点です。初対面の士郎になんであんなに好意的なのかとか書けたらいいなと思います。

では!


幕間:源義経

義経が初めて彼を知ったのはあるテレビ中継だった。

 

『ご覧ください!現在総理官邸前に暴徒の集団が押し寄せています!』

 

お父さんとじっとその中継を見ていた義経はこんな時どうすればいいんだろうと困惑していた。

 

(自分は義経だ。英雄、源義経さんならどうしたんだろう・・・)

 

今の自分はあの場所に駆け付ける力が無い。移動手段も、動いていいかの許可さえも下りないだろう。

 

自分は秘密裏に生まれた存在なのだから。お父さんもお母さんも育ての親で生みの親じゃない。

 

別にそんなことはどうでもいい。義経はお父さんとお母さんにたくさんの愛情を注いでもらえたし、なにより感謝している。

 

逆に申し訳ないな、とさえ思う。義経達は秘密の存在。世に出たら賛否両論間違いなしの人のクローン(・・・・・・)なのだから。

 

今は同じ名前の数奇な人物、とでも思われているだろうけど、あまり目立つことが出来ないのが本当の所だ。

 

それが申し訳なく思う。貴方達の娘はこんなにもすごいんだと証明できない。

 

出来ないことは無いけど、どうしてもストッパーがかかる。それだけ、人のクローンというのは重大なことだと義経も理解している。

 

でも。

 

(英雄なら・・・あの最前線に立つべきじゃないだろうか?なのに義経はここでじっとテレビを見るしかできない)

 

彼女の中では他人ごとではなかった。実際に苦しみ、怯える人が居て、それに対して何もできない義経は歯がゆい思いをしていた。

 

そんな時だった。

 

『赤い閃光!?いえ、あれ人だわ!カメラ寄せて!!』

 

騒乱の中、突如現れた赤い外套を纏った人物がカメラに映し出された。

 

「え?」

 

義経はそれが誰だかは知らなかったけど、間違いなく自分と同い年の青年だと思えた。

 

赤髪に上下が分かれた赤い外套。白いラインの走る黒い皮鎧。幾重ものベルトらしきものが付けられたズボンと踵とつま先が鉄板で覆われたブーツ。

 

あの衣装にどんな意味があるのか分からないけれど。あれが彼の戦闘服なのだと理解した途端、なにか得体の知れない感情が義経に沸き起こった。

 

英雄(ヒーロー)だ!」

 

思わず声を上げて義経はテレビに近寄った。

 

「こら義経。そんなに近づいて見てはいけないよ」

 

「主。お父さんの言う通り。少し離れて」

 

ずりずりと弁慶に引っ張られて、また元の位置に戻される。

 

けれど、義経にとってそんなことはどうでもよかった。

 

彼こそが英雄。ピンチに現れるヒーローそのものだった。

 

『すごい・・・たった一人であの数の暴徒を次々となぎ倒しています!』

 

時折こぼれる雪広アナの本音が、如何に現実離れした光景なのかを物語っていた。

 

テレビにはアップで映された瞬間に消え、アウトしたりとにかく忙しい。カメラマンが彼の動きについて行けないのだ。

 

結局、かなり離れた全体映像として中継されることになったが、それでも凄まじい動きだった。

 

 

 

――――一撃の下に吹き飛ぶ暴徒。

 

 

――――今にも鉄パイプで殴られそうな自衛隊員を手に持つ双剣で守る姿。

 

 

――――与一にも劣らない、素早い跳躍からの正確無比な弓の連射。

 

とにもかくにも義経が彼を本物のヒーローとして見るには十分すぎる光景だった。

 

(すごい!すごい!!すごい!!!いるんだ!あんな人が!これから義経が行く場所にいるんだ!)

 

英雄たらんと常日頃思う義経は一目で虜になった。別に男女の、とかじゃなくてあの素晴らしい英雄の様になりたい。なるべきだと激しく思ったのだ。

 

でも、

 

「悲しいな、彼は。あんな泣きそうな顔で戦っている」

 

「え?」

 

お父さんの言葉に急激に熱くなっていた心に冷や水をかけられたように芯が冷えた。

 

「よく考えなさい、義経。彼が守ろうとしているのは誰だい?」

 

「それは、町の人と自衛隊さんと・・・」

 

あとは総理官邸の誰かだろうか?それで正しいはず。でも、なにかつっかえた。

 

(あれ?なんでこんな気持ちになるんだろう?)

 

お父さんの言う通り義経は急にあのカッコいいヒーローが、雨に濡れた子犬のように思えてしまった。

 

「町の人・・・それはあの暴徒も含むんじゃないか?」

 

「!!!」

 

そうだ。お父さんの言う通りだ。赤いお兄ちゃん(そのくらいに見えた)は町の人を守りながら町の人を傷つけている。

 

あの人はそれが嫌なのだろう。だから基本峰打ちで仕留め、尚且つ何処からともなく消えては現れる弓と矢も矢じりがゴム製のものになっている。

 

しかも何故か剣が爆発するのだけど、わざわざ爆発するぞ、足元を見ろと暴徒に教えるのだ。

 

「んー・・・何がしたいんだろうねぇこの兄ちゃんは。あんな回りくどい戦い方をして一体何の得になるんだか」

 

本当なら剣は刃があった方が良いはず。矢だって義経は見たくないけどきちんとした矢じりで仕留めた方が手間が無くて済む。

 

爆発だって教えないで爆発させた方が効果はてき面だろう。

 

それをしない。彼は10分経っても30分経っても、1時間経っても。絶対に人を殺めなかった。

 

もちろん怪我をした人はいるだろう。でもそれはいずれ治るもの。

 

むしろ、今この時は動かないでくれという必死の慟哭だった。

 

「義経。彼の様になってはいけないよ。でも、彼から沢山学びなさい」

 

「それってどういう・・・」

 

「反面教師にしろ、ってことじゃない?」

 

弁慶の言葉はあまりしっくりこなかった。お父さんもそのようで、

 

「そうじゃない。彼はもちろん素晴らしい人だ。・・・でも、あの戦い方で危機に瀕した彼を一体誰が助けてくれるのだろうと私は思ってしまうよ」

 

「あ――――」

 

そうだ。あんな非効率な戦い方がいつまでも続くはずがない。

 

彼のやっていることは細い細い針に糸を通すようなものだ。もしくは蜘蛛の糸での綱渡りか。

 

きっとコンマ一秒でも歯車が狂えば彼はたちまち暴徒の餌食となる。

 

あの中で唯一助ける側の彼に援軍はない。自衛隊だって銃を持ち出しているし、戦車だって出てる。

 

味方の様に見える自衛隊員もあの場では彼にとって中立の第三勢力に過ぎない。

 

もし発砲命令など下りたら彼の戦いは全て水泡に帰す。

 

救うべき人が別な救うべき人を殺めることになるそうなったら――――

 

「――――」

 

ゾクリとしたものを義経は感じたが、結局そうはならなかった。

 

それどころか何処からともなく学生たちが集まり、さらには古代ギリシャのレオニダス王という英雄まで出てきてしまったのだから義経はまた胸に火が灯った。

 

その後。川神市に無事入った義経は東の川神学園と西の天神館の戦いである東西交流戦で密かに出番はないかと夜を舞っていたのだが。

 

「うわぁ・・・」

 

思わず声が出るほど圧倒的だった。

 

レオニダス王が鍛えた生徒たちは精強でしかも衛宮君(後で教えてもらった)の弓はテレビで見た時の様に正確無比。

 

負けるはずのない戦いになり、義経はどうしようかと困っていた。

 

そんな折だった。彼から矢文が届けられたのは。

 

こんなにも強い学園に入学するんだと改めて義経は胸が高鳴った。

 

だけどそんなこともつかの間、義経が入学したその日、衛宮君は突然倒れてしまった。

 

原因は不明。決して義経達のせいじゃないとは言っていたけど、なにかの要因だということは分かった。

 

いてもたってもいられず、彼が運ばれた保健室に行った。そこで義経は不思議な体験をしたけど、あまり記憶に残っていない。

 

ただ、右肩に刻まれた剣の文様が彼との繋がりだと知らされて、破棄を勧める彼には申し訳ないけどこのままにすることにした。

 

それからは怒涛の展開だった。あのヒュームさんと本気の戦い。折角目覚めたというのにすぐに病院行きになったり。

 

水上体育祭で川神水をかけてビーチバレーで圧倒されてしまったり。

 

衛宮定食を食べに行ったり、体育で一緒になったりしたけど彼はとにかくすごい。身体能力もさることながらとても頭がいい。

 

なぜF組にいるのか分からなかったほどだ。でも後から聞くと、F組に友達が集まっているらしくそれで彼も留まっているのだという。

 

なんだか義経は仲間外れにされている気分になった。

 

それは申し訳ないが弁慶が知らせてくれるからだ。

 

弁慶は水上体育祭で手に入れられなかった川神水大吟醸を貰うために士郎君とお昼に働くようになった。

 

それからというもの、弁慶は士郎君の事を大将と呼ぶ様になり、仲良く会話するようになったのだ。

 

そして葉桜先輩の家出。西楚の覇王、項羽ということが明かされた日。何かをきっかけに先輩はその・・・攻撃的になってしまった。

 

それをあずみさんの頼みを受けて九鬼君を護衛しながら眺めていた。

 

九鬼君たち、特にマープルさんに激しい憎しみを露わにする先輩に、これからどうなってしまうんだろうと心配になった。

 

しかも、マープルさんは何を思ったのか学園生に報酬は思いのままだと言って先輩にけしかけたのだ。

 

『・・・。』

 

あの時のマープルさんには強い嫌悪感を感じた。

 

確かにマープルさんには生み出してもらった恩があるけど、あのやり方には義経も疑問を感じた。

 

でもそれを収めたのはやっぱり士郎君だった。

 

足に大怪我を負っているのに先輩に鬼ごっこを提案した。

 

ルールは単純明快。士郎君が追いかける。先輩が逃げる。捕まえた方の勝ち。

 

足を怪我している士郎君がバイクに乗った先輩に追いつけるとは思えない。

 

けれど義経はまたも恐ろしい奇跡を目の当たりにした。

 

構えられた黒い洋弓。番えられた金属質の禍々しい矢。

 

赤雷を発生させて今か今かと出番を待つその矢の名前は『フルンディング』。

 

義経も詳しくは分からないけどベオウルフという人の振るった魔剣の名前らしい。

 

構える士郎君の目は鷹の様だ。与一がよく猛禽のような目をするというけれどそれ以上に鋭い。

 

『与一、あそこから狙える?』

 

『いくら姉御でも馬鹿言うな!?何キロ離れてるんだよ!それに相手はあの暴走マシンだぞ!』

 

ヒュームさんに急かされてあずみさんが準備していたヘリに乗って上空から見ていたが、先輩の姿はもう義経達の目には見えない。

 

それでも士郎君の目は一度もズレない。ある一点をずっと目で追いかけてる。

 

義経は二つの意味で悪寒が走っていた。

 

一つはあの矢。金属の塊のあの矢が普通の弓で飛ぶはずがないのに義経はあの矢が葉桜先輩を確実に捉えるのがわかった。

 

そしてあの矢に狙われたが最後、絶対にあの矢は外れない。そんな恐ろしい予感があった。

 

もう一つは士郎君と繋がったことで分かる士郎君の状態。

 

平然と戦闘態勢を取っているが士郎君は命の危機に晒されている。

 

士郎君との間にできたパスというものから常に彼の存在を感じられるのだけど、それが段々と弱くなっている。

 

きっと表情には出さないだけで士郎君には激痛と失われる血で死の気配が忍び寄っているのだろう。

 

このままでは士郎君が死んでしまう、そう確信してしまったから。

 

この感覚は前にもあった。ヒュームさんと激突した時だ。左腕から刃のようなものが生え、ヒュームさんがなんとか加減した一撃で背中を切り裂かれた時。

 

あの時も義経は徐々に弱くなる士郎君の感覚を感じていた。

 

すぐに治療がなされたから義経がハラハラするだけだったけど、今は違う。

 

確実に早く適切な治療をしなければ命が危ないというのに、そんなことはどうでもいいと言わんばかりに彼はじっとその時を待っている。

 

そして、その名前と共に放たれた矢はズドン!という音の壁を食いちぎる音を立てて先輩に放たれた。

 

『ちょっ・・・今のソニックブームって奴?音速超えたの?』

 

弁慶が言う通り、後からあの矢のスピードはマッハ6は出ていたとのこと。しかも距離は最低でも4キロはあったらしい。

 

その距離を一瞬で踏みつぶしてあの矢は飛来した。しかも何度弾かれようとも方向を変え、必ず先輩を追いかける。

 

何度も先輩は弾くけど結果は同じ。あらぬ方へ飛ばされたはずの矢は先輩を追い立てる。

 

なんて凄まじく恐ろしい光景だろうと思った。もしあれが自分に放たれていたらと考えると恐怖で身が竦む。

 

その後、学園に戻ってきたら矢がいきなり大爆発を起こし、バイクはAI部分を残して消失し、先輩もいつもの先輩に戻っていた。

 

でも、あの攻撃的な先輩は別人格なんかじゃなく、先輩の一つの側面らしい。

 

九鬼に帰ってきた時は重苦しい雰囲気を漂わせて荷物を纏め、すぐさま出て行こうとする先輩に義経は何も言えなかった。

 

ただ、

 

『ごめんね。義経ちゃん、弁慶ちゃん、与一君。私、ここにいるの嫌だから』

 

それだけ言って先輩は出て行ってしまった。

 

一応、従者さんが止めに行ったけど、項羽としての先輩を止めることが出来ず撃退されてしまったらしい。

 

最終的にヒュームさんとクラウディオさんの二人で止めに入ったけど、先輩の意志は固く、秘密だけど、士郎君の所に住まわせてもらうつもりとのこと。

 

それならば仕方あるまいとヒュームさんは許可してしまったそうだ。

 

士郎君と一緒に住む。そのことに義経はまた一人置いていかれたように感じた。

 

そして義経は一つ我が儘を言わせてもらうことにした。その日は通常より早く登校し、武芸者の相手をする。

 

その代り、空いた時間に士郎君と戦わせてほしいとお願いをした。

 

結果として義経はその我が儘を聞いてもらえたが、実際は酷い有様だったと義経は羞恥する。

 

士郎君はしなくてもいい戦いに駆り出されたというのに相手をしてくれているどころか、今の義経に合わせてくれている。

 

おまけに士郎君にも打ち込んできてもらいたいとお願いまでして彼はそれに付き合ってくれたのだ。

 

今までの置いていかれたような気持ちを発散したくて嬉々として刀を交えた。

 

でも義経は士郎君の忠告を無視した。その結果義経の刀は折れてしまったのである。

 

士郎君に罪は無かった。最後の一振りは義経が繰り出し、士郎君は普通にそれを短剣でガードしただけだ。

 

それだけで義経の刀はバキリと酷い音を立てて折れてしまったのだ。

 

それに義経は酷く落ち込んだ。自分はなんて酷いことを相棒にしてしまったのだろうと。

 

けれどそれを士郎君は自ら新しい物を準備すると言ってくれて内心義経はとても嬉しかった。

 

折れてしまった刀には申し訳ないけど、これでまた一つ、士郎君との縁が出来たと義経は喜んでしまった。

 

その後義経の髪の毛を特殊な製法(本物の魔術だと言っていた)で作った結晶で作り上げられた刀は本当に素晴らしい物だった。

 

義経はもうこの刀じゃないと違和感を感じてしまうほどだ。それだけ、この刀は身近に感じる。

 

きっと目隠しをされて当てられるか試されても義経は間違わないと思うくらいだった。

 

それからは刀に宿った新たな力を習得するべく、鍛錬や摸擬戦、武芸者との戦い等などを繰り返す日々。

 

とにかく義経はこの刀を振るう度、士郎君との繋がりをより強く感じられてとても嬉しいし、活力が満ちた。

 

でも、一つ問題が起きた。それは本当の自分を隠していた義仲さんとの腕比べの時だった。

 

義経と義仲さんの腕相撲を終えた後、士郎君とも戦おうとする義仲さん。当の士郎君は困惑気味に鬼ごっこ、と提案した。

 

今度は本当に鬼ごっこらしく、鬼を決めようとしたけど、その隙を突いて義仲さんは脱兎のごとく逃げ出した。

 

それを苦笑を浮かべて鬼役となった士郎君はゆっくりなのに的確に義仲さんを追い詰めていく。

 

そして最後は士郎君の秘密兵器、赤い布によって拘束されてしまった義仲さんは士郎君にキスをしていた。

 

まさかそんなことをされるとは思っていなかったのだろう。士郎君も驚きと困惑で慌てていた。

 

その時だった。義経の胸が強く締め付けられる感覚に陥ったのは。

 

『勝利の報酬よ。私の初めてだからね?』

 

義仲さんの言い分は分かったけれど、義経はその姿を見てとても苦しくなった。

 

でも、義経はこの時、なんでこんなにも悲しいんだろうと考えてしまった。

 

その考えた時間がまずかった。本気の弁慶の錫杖が士郎君を責め立てていたけど士郎君は義経の顔を見て回避するのをやめた。

 

『――――ッ悪かった。なんだか分からないが俺が悪いんだな?』

 

『あ、ば――――!』

 

弁慶の悲鳴も虚しく、錫杖が士郎君に迫る。それをみて義経は自然と体が動いた。

 

『あの時義経が割って入らなければまた士郎君は大怪我をするところだった!なんで避けなかったんだ!』

 

とにかくあの時何もしなければ士郎君は当たり前の様に負傷していた。だというのに。

 

『すまなかった。俺には正直なにに義経が悲しんで怒っているのか分からないけど、とにかく俺が悪かった、ってことなんだろう?』

 

そんなことをのたまう士郎君に怒りがわく。どうしてこの人はいつもこう、自分を犠牲にというか自分の事を守ろうとしないのか。

 

義経は、なにか危険な勘違いをしているんじゃないかと思った。

 

あの後一時間くらい怒っていたけど結局伝えたいことは伝えられなかったと思う。

 

「弁慶・・・義経はなんでこんなに怒ってしまったんだろう・・・」

 

もう少し冷静に話せば伝わったんじゃないかと思う。

 

「それは、主が大将の事が大事・・・というか好きだからじゃない?」

 

「・・・え?」

 

弁慶が言ったことが義経には分からなかった。

 

「あれ?気づいて無かったの?」

 

「義経が・・・士郎君のことを・・・」

 

好き。好意を持っていること。特別な男性として意識していること。

 

「え、ええええ!?」

 

「本当に気づいてなかったんだ」

 

弁慶がニヤニヤしながら言ってくる。

 

「そっかぁ分からなかったんだねぇ・・・なまじ憧れが最初だったからかなぁ・・・主が大将を見る目はもう女の子そのものだよ?」

 

「義経が、し、士郎君のことを、す、すす好きだなんて・・・」

 

否定しようとしたけど心が叫んだ。間違いなんかじゃない。義経は士郎君が好きなのだと。

 

「~~~~~ッ!!!」

 

「あらま、真っ赤になっちゃって。これからどうしようね?」

 

「それは、今まで通り・・・」

 

出来るはずが無かった。だって、こんな気持ちに気付いてしまったら義経はもう士郎君の顔を見られない。

 

「でもね、主。多分急いだほうがいいよ?大将、いろんな人から好意持たれてるから」

 

「・・・。」

 

弁慶の言う通りだ。多分、義経と同じ感情を持ってるのはかなりの数がいる。

 

川神先輩、黛さん、マルギッテさん、林冲さん、清楚先輩、そして多分、義仲さん。

 

下手をすると揚羽さんもかもしれない。何かと駆けつけてくれる揚羽さんに、必死にアピールするみんな。

 

きっと士郎君は誰も自分の事なんて、って思ってるんだろうけど物凄い人数の女傑に好かれているんだ。

 

「うう、どうしよう、弁慶ぇ・・・」

 

「くーっ!羞恥に悶える主を肴に川神水!最高!」

 

「そんなもの肴にしないでくれぇ・・・」

 

もう義経の頭の中は士郎君の事でいっぱいだった。なのに、具体的に何をするかは全く浮かんでこない。

 

「はぁー・・・そうだね、まずはお父さん達が来るし、紹介でもしとく?」

 

「それは気が早くないか!?」

 

「どこが?むしろ親に了解もらったら主、何歩か前に出れるんじゃない?」

 

「むむ・・・」

 

確かにそれはとても魅力的・・・じゃなくて!

 

「な、なななんでお父さんに許可貰う流れになってるの!?」

 

「え?だって主モーションかけるんでしょ?」

 

「う・・・」

 

それを言われると途端に何も言えなくなる。

 

確かに、自覚しちゃったからには行動に移したくなるわけで・・・

 

「・・・お父さんに反対されたらどうしよう」

 

「そこは大丈夫じゃないかなー。何だかんだ、大将の事よくわかってる感じだったし。その後も新聞とかテレビの放送見て好印象だったしね」

 

「うう・・・怖い」

 

もしも猛反対されたらどうしようと義経は恐怖に慄く。

 

「そしたら葉桜先輩みたいに大将の家に逃避行だね」

 

「・・・そういう意味では先輩に先を行かれてしまった」

 

きっと、真っ先に士郎君の家に行くつもりだったのはそういうことなんだろう。

 

もちろん断られるはずがないっていうのも理由としてはあるだろうけど、選んだのはきっと士郎君の事が好きだからだ。

 

「頑張れー主。応援してるよ。私はのらりくらりと・・・」

 

「そういえば、弁慶は直江君と仲良くしてるんだな」

 

「え!?うん、まぁ、気が合うというかなんと言うか・・・」

 

その夜は二人の恋話しで盛り上がってなかなか寝付けなくなって、弁慶の川神水を飲んだのは秘密だ。




とりあえずこんな所でしょうか。いつもより短めですが、地の文が多いのでかなり読み疲れるかなと思います。

義経ちゃんは原作でも源義経たらんと、英雄として模範にならなければという思想を持って川神に来るので、その前にまさに英雄、と言わんばかりの存在を知ったらこうなっていくのかなぁと思いながら書きました。

短くはなってしまいましたがみっちり書いたつもりです。そして次回からは多分トントン拍子に話が進んでいくと思うのでよろしくお願いします。

それではまた次回お会いしましょう。
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