真剣で衛宮士郎を愛しなさい!   作:Marthe

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みなさんこんばんにちわ。どうやら睡眠障害もあることが分かった作者です。

今回から源氏大戦が開幕します。源氏大戦はむしろ最上旭の方が不利の戦いになります。(大体レオニダスのせい)それをどう苦戦させられるのか書けたらいいなと思っています。

では!


源氏大戦開幕

源氏大戦当日。戦いは川神近くの山にて行われることになった。

 

「それじゃあ兵士を配置していくぞ」

 

「大和君。こちらは準備完了ですよ」

 

着々と準備が進められていく中、大和と冬馬は双眼鏡を手に厳しい表情をしていた。

 

「相手に西の十勇士が何人かいるな・・・」

 

「外部助っ人枠ですね。主軸の戦力が二年生に集まっている以上必然ではありますね」

 

確認できたのは二人。毛利元親と長曾我部宗男だ。二人は堂々と陣取っている辺り、主戦力としてぶつかってくるだろう。

 

「十勇士に声をかけたならまだいるな」

 

「ええ。予想としては鉢屋壱助、島右近あたりですかね」

 

「鉢屋は確定だろ。でも十勇士だけで五枠は使い過ぎだ。まだ別方向の助っ人が来るだろう」

 

そう予想を立てて開幕を待つ。

 

(士郎は姉さんにかかり切りだ。俺たちで何とかするぞ!)

 

今回士郎は武神相手で精一杯だろうという事が予想されていた。逆に言えば士郎こそが川神百代のカウンター。

 

彼が敗北すれば全てが瓦解してしまう。

 

だが、誰も彼の敗北を感じてはいなかった。なぜなら――――

 

「・・・。」

 

彼は一人、赤原礼装にて静かに佇んでいた。しかし、その纏う覇気は今まで以上。ヒューム・ヘルシングと戦った時よりも強力な雰囲気を醸し出す彼に敗北は見えなかった。

 

「あれは仕上がってるな・・・」

 

「ですね。武の心得のない私まで震えてしまいます」

 

『それでは源氏大戦開幕に先駆けましてルールの確認を行います。実況は治ったスイスイ号たる私と、』

 

『おじさんこと宇佐美巨人でお送りするぞ。まず初めに――――』

 

あげられたのは事前に伝えられていたルールだ。

 

1.規定にない武器の使用

 

2.勝負がついた相手への暴力行為

 

3.飛翔行為

 

『尚、衛宮士郎氏に関しましては刃引きのされた武具であれば可となっています』

 

『武神相手にハンデが過ぎるからな。大抵の武器は使用可だ。ただし、あくまで武神との戦いだけで他の生徒との戦いに加わる時は縛りが入る』

 

「まぁ当然だな」

 

「私にはよくわかりませんが・・・大和君が納得しているという事はそれだけ縛りが必要ということですね」

 

冬馬の言葉に大和は答えなかった。これはファミリーの約束だ。絶対に口外しない。

 

 

 

「士郎君大丈夫かな・・・」

 

「大しょ・・・士郎なら大丈夫だって。それより主は大将としてどんと構えとかないと」

 

「うん・・・でも心配なんだ」

 

浮かない顔の義経にどうしたものかと悩んだ時だった。

 

「お前はあいつを信じてないのか?」

 

「え?与一?」

 

「どうなんだ?」

 

与一の言葉に義経は一度目を閉じ今日出会った彼を思い出す。

 

『士郎君、大丈夫?』

 

『問題ない。準備は可能な限りした。あとは俺が全霊で挑むだけだ』

 

真っ直ぐに彼方を見つめる彼にブルリと体を震わせ義経は言う。

 

『怪我、しないでね』

 

『約束は出来ない。だが、善処しよう』

 

彼は滅多に約束できないとは言わない。それだけこの一戦に力を向けているのだ。

 

『義経はなんだか不安げだな?』

 

『うん・・・なんだか義仲さん、何か隠してる気がして』

 

その言葉に士郎は静かに振り返った。

 

『なら、義経には彼女が何を隠しているのか暴く仕事があるな』

 

『義経に、出来るだろうか・・・』

 

『義経』

 

不安げに顔を伏せる義経に士郎は肩に手を置き、

 

『昔の・・・いや未来か?とにかく良くも悪くも英霊になった奴の言葉があるんだが』

 

『言葉?』

 

義経言葉に頷いて士郎は義経の肩から手を離し、

 

『イメージするのは常に最強の自分だ。外敵などいらない』

 

『え?』

 

義経はその言葉に目を丸くした。

 

『条件が揃い、実力もある。ならば、後は自分が如何に最強であり続けられるかだ。外敵の打倒など、後からついてくる』

 

『イメージ・・・最強の自分・・・』

 

『義経ならできるさ。忘れるなよ』

 

 

 

そんなやり取りがあったのを思い出した。

 

「ううん。信じてる。義経が最強である限り、義経の軍も最強だ」

 

「おう。なら問題ねぇじゃねぇか」

 

「そうだった。ありがとう、与一」

 

「たまにはいいこと言うじゃない」

 

「たまにはは余計だ。俺は常に深淵を覗いている・・・」

 

「ダメだこりゃ」

 

折角株を上げたのにすぐに下げてしまう与一だった。

 

『それでは源氏大戦開幕となります!』

 

『互いに位置について――――』

 

ゴシャアアン!と銅鑼が鳴らされた。

 

「行くぞお前らッ!!」

 

「応よ!行くぜー!」

 

オオオオオ!!!と両軍が激突する。

 

『おっと、最初は無難な歩兵部隊の衝突から始まったな』

 

『本来のルールにある旗の占拠がありませんので大将さえ取られなければ良い戦いとなっています』

 

まずはガクトを中心とした歩兵隊がぶつかった。遅れて一子の部隊が追い打ちをかける。

 

「いくわよー!!!」

 

「「「応ッ!!!」」」

 

一子が率いるのは重装歩兵。機動力を生かす彼女らしからぬ編成だが堅実な守りが彼女の防御力の低さを補っている。

 

「ふふっ・・・予想通りね。お願いするわ」

 

「おう!」

 

ちゃきりと何かが構えられた。

 

「いっけぇえええ!!!」

 

ズドーン!!!と砲弾が発射される。

 

「うげ!西の爆撃娘だ!!」

 

「盾を!」

 

「「「応ッ!!!」」」

 

雨あられと降り注ぐ砲弾を円盾で防ぐ。これは既に東西戦で経験済み。だが、

 

「ぬ、ぬあああ!!」

 

ドゴーン!と盾を構えた生徒が爆撃に耐え切れず吹き飛び始める。

 

「まずい!ワン子に伝令!一度下がれ!!」

 

「英雄!彼女を守りつつ後退です!」

 

山の上から見ていた大和と冬馬の目にはあっさりと後ろに引いていく敵軍。

 

この砲撃の正体は西方十勇士、大友焔の大筒だ。

 

しかし以前とは違い、爆発力と連射力を上げられた短筒での連続射撃。しかも山の上から打ち下ろす形が威力を数段上げていた。

 

「一子殿!我と我の部隊が砲撃を防ぎます!!お下がりください!」

 

「九鬼君・・・ごめん!」

 

そうしてスタートは最上旭に軍配が上がった。

 

「一子殿の為なら喜んで・・・!お前達!気合を入れよ!」

 

「「「応ッ!!!」」」

 

そうして必死に盾で砲弾を防ぎながら前線が下がっていく。

 

「前線が下がったわ!再度突撃!」

 

「大友は左か右かを警戒していればいいのだな?」

 

「ええ。貴女の砲撃はここからなら存分に敵を蹴散らせるはずよ」

 

これで大和達は迂闊に突撃出来なくなった。突撃すれば見晴らしのいい山の上から爆撃されることになるからだ。

 

「参りましたね。三人目の十勇士・・・それも砲撃を得意とする子のようですね」

 

「だけどあれをするには自分の隊も下げないといけないはずだ。慌てず処理するぞ」

 

そうして戦いは意外な激突から始まった。

 

 

――――interlude――――

 

戦場では阿鼻叫喚の様相を呈している中、士郎はゆっくりと山の中心に向かって歩いていた。

 

「まさかの絨毯爆撃か。旭さん容赦ないな」

 

どうにも規定ギリギリな気がしないでもないが、事前に申請は通っているのでありなのだろう。

 

それにしても主戦力の二年生の代わりに西の二年生を持ち出してくるとは中々大胆なことをする。

 

「あれはルール上問題ないのか?なぁ百代」

 

士郎の問いに頭上から声が届いた。

 

「ちゃんとジジイに許可はもらってる!問題なし!」

 

「火薬の量も含めて審査したんだろうな?派手に吹き飛んでいる所を見ると以前より爆発力が向上しているようだが」

 

「大丈夫だって!それより私達も始めよう!」

 

ウキウキとした様子で木上から降りてくる百代。

 

「川神院川神百代!参る!」

 

ドンと踏み砕かれた音速の踏み込み。それを

 

ギィン!

 

「まったく、手荒にもほどがある」

 

黒剣・干将で受け流した士郎はそのまま莫耶を振りかざす。

 

「なんだよー楽しく踊ろうぜー」

 

キン!とそれを弾き拗ねたように百代が剛拳を繰り出す。

 

「生憎踊り方を知らないものでね。ご希望には添えないな」

 

それを躱し左右からの鋭利な一撃。

 

「そう言いながらも踊ってるじゃないか」

 

百代はもう一度弾きさらに連打を加える。

 

「こんな武骨な武踏はなかろうよ」

 

さらに両手の双剣で連打をいなす。

 

互いに舞い踊るように入れ替わり立ち替わり激しい舞踏が始まる。

 

こうして二人の戦いは静かに、激しく始まったのだった。

 

 

――――interlude out――――

 

 

山を震わすほどの地鳴りが聞こえてきて、誰もが衛宮士郎と川神百代の衝突を感じ取れた。

 

「彼も戦いを始めましたね」

 

「ああ。流石士郎だよ。この感じからして並の武術家ならもう決着がついてる」

 

山が震えるなどなんの冗談か。しかし事実、地鳴りは今も続いている。

 

『さあ衛宮士郎氏と川神百代嬢の激突が丁度山の中央で始まったようです!』

 

『正直、流れ弾とか来ないかおじさん心配だね』

 

百代は遠慮なく気弾まで放っているようでそこかしこで爆発が起きている。

 

「俺たちもやるぞ。まずは・・・」

 

そう言って大和は敵陣を見据えた。

 

「はっはっは!大友の国崩し(改良版)に穿てぬものはないぞ!」

 

高らかに笑って爆撃の為に引いた左翼にドンドン!と絨毯爆撃をする焔。

 

だが――――

 

「おうおう。英雄様にえらい目合わせやがって。ただじゃおかねぇ」

 

「なに!?」

 

静かに後ろに現れたのは忍足あずみだった。

 

「覚悟しな」

 

「ぬう・・・!いつの間にここまで――――」

 

ザン!と大筒を切り裂かれ気絶させられる焔。

 

「忍者なんだから当たり前だろ」

 

そう言い捨ててあずみはその場を立ち去る。

 

「よし。爆撃が止まった」

 

「はい。でも最初の被害が大分痛かったですね。後方支援を潰す切り札のあずみさんも使ってしまいましたし」

 

本当はもう少し温存しておきたかったのだが、これは使わされてしまったと言わざるを得ない。

 

「二度は通じないだろうからな・・・こっちの後方はどうだ?」

 

「こちらと同じく鉢屋さんが来たようですが弁慶が見事に撃退したみたいですよ」

 

「あずみさんを傍から離すとやるぞっていうメッセージだろうな」

 

情報によれば大して被害を与えられぬまま鉢屋の部隊は撤退したらしい。

 

「弁慶!無事か!?」

 

「問題なし。挨拶みたいなもんだろうね。さっさと逃げて行ったよ」

 

撃退した弁慶はぴんぴんしているがどうにも釘を刺された感じだ。

 

「私は引き続き義経の護衛を続けるよ。あれはまた来るだろうからね」

 

「うん。よろしく頼む」

 

こちらは危なげなく抑えられた。

 

前線では、

 

「よし!爆撃が止んだぞ!押し上げよ!」

 

「「「応ッ!!!」」」

 

あずみが大友焔を仕留めたのを機に後退していた英雄が前に出始めた。

 

「弓兵構え・・・」

 

しかし、爆撃が止んだとて相手には弓兵もいる。また英雄の位置は左右の上から打ち下ろせる形だ。

 

「美しく斉射!」

 

矢の雨が降り注ぐ。それを、

 

「盾を!」

 

「「「応ッ」」」

 

一斉に盾を構えて備える。爆撃ならまだしも弓矢ならばまだ何とかなる。

 

「ぐ・・・だが動けんな」

 

苦虫を嚙み潰したように顔を顰める英雄だがそこに彼の光が差し込んだ。

 

「九鬼君!!」

 

「一子殿!?」

 

盾の傘の下を滑るように一子が駆けて行く。

 

「!前進せよ!盾で矢を防ぎながら前に出るのだ!」

 

一子の隊は既に壊滅している。なので一子は重しが取れたというように加速し合間を縫って駆け上がっていく。

 

英雄はその姿を見て一子の援護を決め、矢の雨が降り注ぐ中強引に道を作った。

 

その甲斐あって一子は弓兵を指揮する毛利元親の元までたどり着いた。

 

「っ・・・美しく撤退・・・」

 

「させないわ!」

 

ヒュンと薙刀が閃く。が、

 

ガツ!

 

「うおっ・・・随分と重い一撃だな」

 

「!確かガクトの言ってた――――」

 

「長曾我部宗男。推参!」

 

「長曾我部・・・」

 

「ここは俺に任せて引きな毛利」

 

長曾我部を殿に毛利たちは引いていった。

 

「折角九鬼君達がつないでくれたのに・・・!」

 

「それは俺たちも同じことよ。俺が毛利を繋ぐ・・・」

 

そう言って腰の瓶からばしゃりとオイルを被る長曾我部。

 

「うわぁ!?」

 

「ヌルヌルだ・・・いくぞ!」

 

「気持ち悪い!」

 

「なっ・・・れっきとした競技だぞ!?」

 

「新・川神流!島流し!」

 

「なっなんだ!?ぬおおおお!!」

 

新川神流・島流しは相手を受け流し吹き飛ばす技。威力はそれほどないが、強力な吹き飛ばし効果で濁流に流されるようにたたらを踏んで流される技である。

 

「うえー!オイルが飛んできたわー・・・」

 

ずーんと技を炸裂させたはずの一子が気分を落とす。

 

「一子殿!こやつの相手は我がします!我の隊を率いて弓兵を追ってください!」

 

「・・・九鬼君、ありがとう!」

 

ここで指揮権を交代し、一子達は長曾我部の軍を押しのけるように進んでいく。

 

「お前が九鬼英雄か・・・俺は「ホアチャ!!」ぬうう!?」

 

強烈な英雄の蹴りが炸裂した。

 

「お、お前!名乗りぐらい・・・」

 

「既にしたであろうが。大体、もう少しで一子殿が武勲を上げられるところを貴様・・・」

 

ゴゴゴと英雄の気炎が燃え盛る。

 

「貴様はこの九鬼英雄が仕留めるッ!覚悟せよ!!」

 

九鬼英雄はこれでも中国拳法の使い手だ。

 

「いいだろう!最高のオイルレスリングをしようじゃないか!」

 

英雄の中国拳法と長曾我部のオイルレスリング。どちらが勝つのかはまだ分からない。

 

 

 

――――interlude――――

 

ズダン!という地面を易々と破壊する跳び蹴りを寸前で後ろに飛んで躱す士郎。

 

お返しとばかりに空中で体を捻り弓を三連射。

 

「ふっ!!!」

 

それを丁寧に弾きさらに間合いを詰める百代。

 

「チッ・・・」

 

足止めにもならぬかと舌打ちする士郎。

 

こちらの二人は互いに決め手がないまま乱戦を続けていた。

 

「どうした士郎!こんなものじゃないだろう!?」

 

「そうだがな!正直お前の気弾があらぬ方に飛んでいきそうで気が気じゃないのだよ!」

 

士郎は彼女の気弾にとても苦労させられていた。

 

「川神流!致死蛍!!!」

 

「くっ・・・!だから少しは周りを気にしろというのに!!!」

 

本来ならば受け止める必要などない。だが、一発でもそこいらに弾けば瞬く間にクレーターだらけの荒れ地になってしまう。

 

ここは山だ。迂闊に彼女の攻撃を許せば倒木の危険もある。現に、何本も倒木が起き、二人の間合いだけ綺麗に空白が出来てしまっていた。

 

「――――投影、開始(トレース・オン)

 

投影するのは黒鍵。それを指に挟んで連続で投擲する。

 

標的は気弾のみ。黒鍵を百代に投擲しては万が一のことがある。だというのに――――

 

「!?」

 

「私はここだぞ!!」

 

気弾に紛れて百代が突進してきた。当然黒鍵の直撃を受けるが、

 

「川神流!瞬間回復!」

 

受け流したことで切り裂かれた腕をすぐさま回復してしまう。その光景に士郎は顔を顰めた。

 

「便利な術だが、褒められた行為ではないな」

 

わざわざ当たりに来なくても彼女にはもっとやりようがあったはずだ。

 

(これは直してもらわないといけないな)

 

回復があるからと防御が薄くなっている。いや、意識から外れているのだ。

 

「さあ、もっと楽しもう士郎!私は楽しくてしょうがないぞ!」

 

「・・・。」

 

彼女は手を抜いたりはしていない。昔の彼女のような悪癖はない。故に士郎は苦戦を強いられている。

 

そもそも無傷で取り押さえることが自分の能力では難しい。

 

「学長!私の武装はどこまで許可を貰えるのかね!」

 

ギイン!と拳の連打を弾きながら士郎は叫ぶ。

 

「・・・命にかかわらぬのならOKじゃ。お主の武器では怪我をしない方が難しいからの」

 

「なんだジジイ!大盤振る舞いじゃないか!」

 

「その代り我らで天陣という結界を張る。それまで二人とも停戦じゃ」

 

「そうか」

 

「なんだよー・・・でもこれで周りとか気にしなくて済むな!」

 

「そんな便利な技があるなら初めから使ってほしいものだ・・・」

 

ふう、と士郎は息を吐く。戦いはまだ始まったばかり。これから士郎も徐々にギアを上げていかねばならないだろう。

 

「「「川神流・天陣!」」」

 

キン!と二人を囲う結界が張られる。

 

「これで大抵の物理は耐えられるじゃろう」

 

「・・・維持するのに随分と修行僧が頑張っているようだが」

 

「心配ない。九鬼も審判に加わっておるからの」

 

「そう言う問題ではない」

 

そう言って士郎は干将と莫耶を百代に投げつけた。

 

「ふん・・・なっ・・・」

 

ガアアン!と軽く弾いたはずの百代が大きく弾かれた。そして天陣の壁にぶつかる。

 

「「「ぬおおおおッ!!!」」」

 

結界が切り裂かれ干将と莫耶は木々をなぎ倒して見えなくなった。

 

「これは・・・」

 

「御覧の通りだ。この程度の結界では百代どころか私の一撃も受け止められん」

 

「ははっ!マジか士郎!天陣の壁を突き破るとか・・・楽しくってたまらないじゃないか!!!」

 

ドン!と地面を踏み抜いて突っ込んできた百代。それを再投影した干将・莫耶で受け止める。

 

ギシィ!と激しいつばぜり合いになる。だが、

 

「・・・。」

 

士郎は受け流すように体を半身傾け、両手を柄から離した。

 

「っとと!?ははっ!スゥー・・・瞬間回復!!」

 

また彼女は自分にできた傷を回復する。つばぜり合いとはいえ素手と夫婦剣だ。

 

刃は引かれていても押し込める力が強すぎて彼女の拳を傷つけていた。

 

(仕留める武装はいくらでもある。が、どれも殺傷力が高すぎる。)

 

どうにも自身の怪我を物ともしない戦い方に士郎は活路を見出すが、それだと彼女の命が危ぶまれる。

 

そうしてぼやぼやとしていればこちらはスタミナ切れを起こして終わりだ。

 

(万事休すか・・・いや、まてよ)

 

士郎は少し前の大怪我をした時の戦いを思い出した。

 

「可能性があるならば、そこだな」

 

攻め方は決まった。

 

「百代。少々痛い目を見てもらう。覚悟しろよ」

 

「面白い!やってみろ!!」

 

「ぬう・・・こちらも引き続き天陣じゃ!少しでも流れ弾を抑えるのじゃ!」

 

「「「応ッ!!!」」」

 

戦いは激しさを増すばかりであった。

 

 

――――interlude out――――

 

「こちらも遅れは取らぬで候!」

 

毛利が退却したことによって旭の布陣が片翼を縮め無ければならなくなった。

 

そして長曾我部は九鬼英雄が相手をしている。だが、もう片翼を任せられていた矢場弓子の部隊が掩護射撃を行っていた。

 

「弓兵諸君!君たちの矢は力強く敵を撃ち抜く!」

 

そしてこの人、京極彦一の言霊で強化された矢が降り注ぐ。英雄から隊を引き継いで前進した一子は盾で防ぎながらその場から動けなくなっていた。

 

「うう、この矢異様に強いし遠くまで飛んでくるわ・・・」

 

今は何とか盾で防いでいるが、いつまでもこのままでは埒が明かない。

 

「ここにいたか犬!もう少し耐えろ!」

 

「クリ!?強襲に向かったんじゃ・・・」

 

「現在進行形だ!もう少しで――――」

 

うおおおお!!!と雄たけびが上がる。

 

「矢が止まったわ!」

 

「キャップとマルさんがあちら側を背後から突いたんだ!白の隊、行くぞ!」

 

「私達は九鬼君が心配だから下がるわ」

 

「うむ!なかなか苦戦しているようだ。行ってやってくれ」

 

そうして一子は開いた後方に転進。気づけば両翼を挟み込む挟み撃ちの様相を呈していた。

 

「よっしゃー!ガクトが踏ん張った分俺たちもやるぜー!」

 

「赤の隊!このまま矢を斉射し続けながら前進!お嬢様の隊と挟撃します!」

 

彼らがここまでこれたのは中央のガクト達歩兵隊が爆撃で大打撃を受けながらも踏ん張り続けたからだった。

 

「島津岳人は大したものです。あれだけの劣勢でありながら援軍を固辞して私達を攻めに回すとは」

 

「ガクトはレオニダスさんのおかげでめっちゃ強くなってるからなー。それに――――」

 

『劣勢?んなもん一人十人倒しゃいいだろうが!俺たちはまだ負けちゃいねぇ!!』

 

「って。言ってたからなー」

 

完全にスパルタ兵と化したガクトである。しかも宣言通りガクトは一人で二十人以上打ち取っており、今もまだ、ボロボロでありながらも前線を維持していた。

 

「レオニダス王直々の鍛錬を積んだ者だけありますね。――――お前も遅れず行きなさい!」

 

「応よ!黒の隊行くぞー!!」

 

こうして両翼を押しつぶされる形となった最上軍は撤退最中の毛利軍を打ち倒し、矢場弓子を打ち倒した。

 

「チッ!京極先輩取り逃がした!」

 

「ですが彼は本人が強いタイプではありません。率いる隊が全滅した今どうすることも――――」

 

「立ち上がれ!諸君は敵に劣らぬ勇猛な(つわもの)也――――!!」

 

「あれは!?」

 

「最上旭の本隊!?今度は本隊を率いるというのですか!?」

 

「それだけじゃねぇ」

 

キャップが面白くなさそうに近場の木を見た。

 

「あの本隊、大将が居ねぇ」

 

「なんだと!?最上先輩は一体何処に・・・」

 

「なんでもいいけどお二人さん来るぜッ!それも強化済みのとんでもねぇのだ!」

 

場は大混乱。京極率いる最上軍本隊・風間、クリス、マルギッテの混成軍・最上軍前線、そしてガクトが奮戦する義経軍前線の四層からなる挟み挟まれの大乱戦となってしまった。

 

 

 

その頃九鬼英雄は。

 

「ぬうん!」

 

「なんの!」

 

長曾我部が掴みかかろうとするところにタイミングを合わせ、

 

「ハッ!」

 

ズパァン!!と激しい音が鳴り当身によって長曾我部が吹っ飛んでいく。

 

だが・・・

 

「・・・チッ。オイルか。中々に厄介だな」

 

オイルで当たった体が滑り、今一力が伝わり切らなかったことを感じる英雄。

 

「っとと、強烈だな・・・」

 

クラリときたのか長曾我部が頭を振る。

 

「しかし、一子殿の言う通りこのオイルは気色悪い。いくらオイルレスリングが得意だと言っても貴様かけすぎではないのか?」

 

「な、なにを言う!由緒正しきオイルレスラーの俺に向かって!」

 

肉体での攻撃を主とする英雄も、攻撃の度にオイルが体についてヌルヌルになっていた。

 

「気色悪いものは気色悪いのだ。いっその事大雨でも降ってほしいところだ」

 

「ええい、どいつもこいつも!汚名は実力で覆す!」

 

「また体当たりか。いい加減相手をする我の事も考えよ」

 

長曾我部の体当たりを躱して振り返りざまに延髄に手刀を入れる。

 

「ぐが・・・」

 

そしてようやく長曾我部は倒れた。

 

「やれやれ・・・こんなにも辛いと思った戦いは初めてだ。早く一子殿の所に――――」

 

オイルを払って歩き出そうとした英雄だが、

 

ガシ、と足を掴む感触に英雄は慌てて下を見た。

 

「足元注意ってな・・・」

 

「貴様・・・!ぬわっ!」

 

ズデン!と英雄も地面に倒れる。

 

「・・・取った」

 

「ぬう!?」

 

倒れた所に突きつけられる短刀。

 

「貴様は十勇士の・・・」

 

「鉢屋壱助。九鬼英雄の首、打ち取ったり」

 

勝負は決した。これは確実に戦闘不能判定だろう。

 

「・・・いつから潜んでいた?」

 

「最初の襲撃からずっと潜んでいた。長曾我部ならば必ず機会を作ると思っていた」

 

「それでは最初から踊らされていたわけか・・・無念」

 

無念そうに目を閉じる英雄だが、鉢屋が短刀をしまうと同時に足元の長曾我部へと目を向けた。

 

「そうでもない。長曾我部は戦闘不能だ」

 

「なに?」

 

言われて自分の足を掴む長曾我部を見ると足を握り締めたまま気絶していた。

 

「あと一歩違えば俺はお前と直接戦闘をしなければならなかった。それを、長曾我部は覆した」

 

「・・・こやつの執念も大したものだな」

 

そっと手を振りほどくと英雄の足首には赤い跡が残っていた。

 

「そういう男だ。お前も、流石九鬼の嫡男と言ったところだ。長曾我部相手に善戦した」

 

「互いに健闘した。ということだな」

 

そう言って英雄はオイルまみれの上に土やら木の葉やら酷い姿で立ち上がった。

 

「これではどちらが勝者か分からんな」

 

「勝者はお前だ。だが・・・ぬ?」

 

「九鬼くーん!!」

 

「一子殿・・・」

 

「!その様子・・・」

 

「うむ。我はこやつに打ち取られた」

 

「鉢屋壱助だ。川神一子と見受けた・・・!」

 

「十勇士の忍者ね!大和から聞いてるわ!いざ!」

 

「勝負ッ!!!」

 

ここに、もう一つの戦いが始まった。

 

 

――――interlude――――

 

「はああ!!」

 

「ふっ!!」

 

もう何度目になるか分からない激突。夫婦剣と百代の拳が激しくぶつかり合う。

 

強烈なぶつかり合いに天陣の壁が波打つ。

 

「ぬうう・・・!二人とももう少し加減をせんか!」

 

「したいのは山々なのだがね!攻撃を捌くにも限界がある!」

 

「モモ!加減をせぬか!」

 

「冗談だろジジイ!この戦いで手なんか抜けるか!」

 

百代の攻撃を受け流しても結界は綻び、迎撃する士郎の攻撃で砕ける。

 

その度に張りなおしているが二人の常軌を逸した戦いに修行僧たちが持たなかった。

 

「ぐぬぬ・・・」

 

やはりこの二人の勝負を許したのは失敗だったか。そう考えずにはいられない鉄心。

 

だが、救いの手は士郎から差し伸べられた。

 

「まったく君のお転婆にも困ったものだ。これ以上は被害が拡大しすぎる。決着と行こうじゃないか」

 

「「!?」」

 

百代相手に迎撃に専念していた士郎が初めて攻勢にでた。

 

「んっは!お前から来てくれるか!」

 

「はああ!!」

 

裂帛の気合と共に夫婦剣が舞う。上下左右、縦横無尽に剣が走る。

 

「いいな!いいぞ!私も――――」

 

だが百代はここで違和感に気付いた。自分は常に士郎の出来てしまう隙に攻撃をしていた。なのになぜ彼は今だに健在でこうも激しい攻撃をしてくるのか――――

 

(誘導されてた?この私が!?)

 

楽しくて気付きもしなかったが彼女は既に彼の術中に嵌まっていたのだ。

 

「っ・・・だが!私はお前を――――」

 

そう思った矢先、夫婦剣が投げつけられる。

 

「何度投げようと――――!」

 

ガァン!と、とても普通に投擲したのではない音を立てて一対の双剣が弾かれる。

 

 

――――鶴翼、欠落ヲ不ラズ

 

投げつけた双剣と同じものをさらに投げつけてくる士郎。その動作を見て百代はいつかの由紀江との戦いを思い出した。

 

 

――――心技、泰山ニ至リ

 

 

「流石に一度見た手は効かないぞ!川神流――――」

 

 

――――唯名 別天ニ納メ

 

空を舞う両翼は二対。切り込んできた士郎と合わせ逃げ場はない。相手を強制的に隙だらけにし、確実に相手を切り捨てる絶技。

 

しかし、百代はこの絶技を一度見ている。故に、

 

「人間爆弾!!」

 

後ろと左右から襲い来る双剣を自らが大爆発を起こすことで退けた。川神流・人間爆弾は文字通り術者が爆発を起こす技。

 

無論ダメージを負う技だが百代には瞬間回復がある。なので実質ダメージは無いに等しい。

 

しかし、

 

「川神流・瞬間回復!」

 

 

――――両雄、共ニ命ヲ別ツ・・・!

 

 

それでも士郎は爆炎を抜けて切りかかってきた。手には巨大な翼のようになった干将と莫耶。

 

「絶技破れたり!だ――――」

 

改めて迎撃しようとした百代は突如背後に悪寒を感じた。

 

「なっ・・・」

 

慌てて振り返り弾いたのは夫婦剣。おかしい。投げつけてきた二対は人間爆弾で消滅したはず。

 

ではこの夫婦剣は一体何処から?

 

「破った、のではないのかね?」

 

「ぬ、ぬああああああ!!!」

 

あまりに背後に近付きすぎた一対を弾いたことで迎撃が出遅れた。

 

そのまま百代は巨大化した夫婦剣に切られてしまう。

 

しかし彼女とて何もせずに攻撃を受けたりしなかった。鋭い正拳突きが士郎の腹を直撃した。だが、

 

(!?なんだ?鉄でも殴ったかのような・・・)

 

手に伝わってくる感触がおかしかった。確かに彼は革鎧を着ているが、とても革とは思えない硬さなのだ。

 

これはダメージが伝わらなかったと百代は看破する。

 

「いいのかね。止まっていて」

 

「!!!」

 

士郎の斬撃で硬直していたところで彼の声が響く。

 

 

「川神流、瞬間――――」

 

回復、と。傷を回復する百代だがそれは悪手だった。彼相手に足を止め、悠長に回復など。

 

戦術を得意とする彼にはそれすらも織り込み済み。

 

――――投影、開始(トレース・オン)

 

投影するはインドラが悪龍を討伐する時に使ったとされる神の雷。

 

猛り狂う雷神の鉄槌(ヴァジュラ)ッ!!!」

 

「ぐあああああ!!!」

 

強烈な雷撃が百代の体を走る。それは灰にならないのが不思議なくらい強烈な光だった。

 

どさりと百代が崩れ落ちる。雷撃の残滓が彼女の体を未だ走り、ピクピクと痙攣している。

 

「・・・学園長」

 

強化で防いだはずの腹部を抑えながら士郎は問う。

 

「うむ。モモの敗北じゃ」

 

粉々に砕かれた結界を維持していた修行僧まで反動で気絶してしまい。鉄心は完敗だというように告げた。

 

――――interlude out――――

 

 

「はっ!」

 

「やあ!」

 

短刀と薙刀が激しくぶつかり合う。英雄が敗北してからは一子が鉢屋と激突していた。

 

「川神流・大車輪!」

 

「その技は十分に見た!」

 

回転から繰り出される大振りに合わせて鉢屋がクナイを投擲する。だが、

 

「からのー!新・川神流、百舌(もず)落とし!」

 

「なにっ・・・」

 

一子は振り切った勢いを使いさらに前へ踏み込んだ。さらに全身と気を使った暴風にもまれクナイがあらぬ方に飛んでいき、

 

「てやああああ!!!」

 

「ぐあああ!!」

 

投擲体勢故に動けなかった鉢屋を切りつけた。

 

「士郎ほどじゃないけど、アタシにも出来るんだから!」

 

油断なく薙刀を構えて一子は堂々と言う。

 

新・川神流、百舌落としは初めて士郎が川神院で使った川神流、大車輪をもとに考案された技。

 

どうしても士郎の一撃の下に相手を絡めとり倍返しする技を身に付けたかった一子が膨大に膨れ上がった気と大車輪の追撃技として昇華したのがこの技だ。

 

まだまだ改善点はあるが、十分に技として強力な力を秘めている。

 

そんな技を受けた鉢屋はというと、

 

「ぐっ・・・」

 

苦しそうに呻きながらもボン!と煙幕を焚いた。

 

「効かないわよ!」

 

シャキン!と一子の一閃が煙幕を切り払った。しかし鉢屋の姿はない。

 

「そこよ!」

 

「!?」

 

一子は巨木を躊躇なく切り払った。そこに擬態していた鉢屋が慌てて倒れるように回避する。

 

「なぜわかった!?」

 

「そんなの気を探れば一発よ!」

 

一子は戦えずにいた時、気配を探る修練をしていた。その経験が生きた。

 

間違いなく一子は昔よりも強い。今の鉢屋ではどうにもならない相手だった。

 

「終わりよ!」

 

「ぬぐあああ!!!」

 

今度は空蝉も出来ずに切り捨てられた。

 

「九鬼君、怪我は?」

 

「問題ない。怪我はないが死亡判定だ。すまない一子殿・・・」

 

「ううん。ありがとう!九鬼君のおかげで先輩を打ち取れたのよ!誇った方が良いと思うわ」

 

「一子殿・・・」

 

英雄は感動したように一子を見る。よくよく考えると彼女と英雄がきちんと話したのは初めてだ。

 

しかし一子は英雄を苦手としているので何とも言えない表情で話している。

 

「じゃあ私は行くから!九鬼君ありがとう!」

 

「ご武運を!」

 

手早く話を切り上げて一子は次の戦場へと走って行った。

 

「・・・うむ」

 

その姿を英雄は眩し気に見ていた。

 

 

 

 

 

戦況は大乱戦の様相を呈しているが義経達はというと、意外な相手から奇襲を受けていた。

 

ギィン!

 

「くっ・・・!なんで義仲さんがここに・・・!」

 

「私の軍は彦一が率いてるの。私の目的は貴女よ」

 

「しかもこっちはこっちでとんでもない人が来たもんだねぇ」

 

弁慶が額に汗を流して相手をしているのは外部助っ人の最後の一人。

 

「フハハハ!さしものお前達も我が来るとは思っていなかったようだな!」

 

外部助っ人の腕章をつけたのは九鬼揚羽。最上旭は揚羽を味方に引き入れていたのだ。

 

「確かに思ってませんでしたよ。しかも軍を抜けて単騎駆けしてくるなんて、ね!!」

 

ガツン!と弁慶の棒と揚羽の拳がぶつかり合う。

 

「だって今の二年生は強すぎるんだもの。持って行けたとしても五分(ごぶ)。なら私にできることは――――」

 

キィン!と旭の刀が閃く。義経は自分のペースを乱されて防戦一方だ。

 

「なんて無謀な・・・!義経の軍が残っていたらどうする気だったんです!?」

 

「どうもこうもないわ!揚羽さんと私にかかれば雑兵なんか目じゃないもの!現にこうなっているでしょう?」

 

「ぐ・・・」

 

旭の言葉に黙らざるを得ない義経。大将として失格だと思わず思ってしまうが、

 

「それは大将としてどうなんですかね!自らの軍を捨て石にするなんて!」

 

「捨て石になどしておらん。最上旭の軍がここまで奮闘したからこそ我らはここにこれた。さあどうする義経!敵は目の前ぞ!」

 

「・・・。」

 

義経はどうしても最上旭のやり方が気に入らなかった。だが、勝負は勝負。奮戦してくれている皆のためにも義経は負けられない。

 

「言いたいことは山ほどあります。でも今は――――」

 

すべてを飲み込んで、義経は決意を新たに刀を握り直す。

 

「お相手仕ります――――!」

 

「いいわ。それでこそ義経ね」

 

最上旭も今一度刀を構え直す。義経は立ち直った。ここからが本当の勝負だ。

 

 

――――interlude――――

 

「うう・・・」

 

うめき声を上げながら百代が目を覚ます。そして痺れる体を動かし辺りを見渡す。

 

「ここは・・・」

 

「戦闘区域外じゃよ」

 

「ジジイ・・・」

 

「負けじゃな、モモ」

 

「ああ。完敗だ」

 

クタリと力の入らない体を見て百代は笑う。

 

「こんなに楽しかったのはいつ以来だろう」

 

「さて・・・お前がまだ幼かった頃、そんな風に笑っていたような気がするぞい」

 

百代を見る鉄心の目は暖かく、二人で空を見上げた。

 

「ジジイ。私、最強になる」

 

「・・・なってどうする?」

 

鉄心の問いにやはり百代は笑って。

 

「決まってる。誰よりも強い自分って奴になるんだ。なって、あいつの横にいる」

 

今だビリビリと痺れる体を振り絞って手を握る。

 

「でも、なんだろうな・・・わかってたけど、負けるってこんな気持ちなんだな」

 

「そうじゃろう。どうじゃ、また味わいたいか?」

 

「まさか!もうこりごりだ」

 

ゆっくりと百代が起き上がる。

 

「しかし宝具というものは危険じゃのう・・・モモを撃ち抜き天陣の壁を抜け、この有様じゃ」

 

周りには天陣を張っていただろう修行僧達が横たえられていた。

 

「・・・死んでないよな?」

 

「もちろんじゃ。その辺の加減を衛宮君がせんわけないじゃろ。ただ、全滅じゃが」

 

聞くところによると、自分を貫いた雷撃の余波が天陣の壁を伝って皆に流れたとのこと。幸い余波程度だったため軽く痺れたくらいであるようだった。

 

「士郎は?」

 

「モモと違って戦闘不能ではないが、あれだけ強力な攻撃はルール上どうなのかということで衛宮君も戦闘不能扱いにさせてもらったわい。もちろん勝敗はモモが感じている通りじゃが、あれが一般生徒に向けられないと言い切れんからな」

 

「馬鹿なことを。士郎がするはずないじゃないか」

 

ふんっと鼻で笑って百代は言った。

 

「ていうか、こうなることを織り込み済みで私の参戦を許したんだろう?」

 

「・・・まあの。モモを戦闘不能に出来る攻撃なぞ、どう考えても一般人の致死率が高すぎる。いや、100%生きてはいられんじゃろうて」

 

「ジジイならどうした?」

 

百代の問いに鉄心は首を振った。

 

「わしも、敗北しておったじゃろう」

 

彼は攻撃力だけで言えば完全に自分達を殺しうるのだ。それでも尚何とかしようと彼は試行錯誤していたのだから。

 

「ヴァジュラ、インドラの雷か・・・モモは悪龍かの?」

 

「可愛い孫に悪龍とか言うなっ!」

 

ズビシ、と力のない手が鉄心の額を打つ。

 

「百代は目を覚ましましたか?」

 

と、士郎が近寄ってきた。

 

「ああ。すまんのう君も負傷しとるというのに」

 

「士郎!」

 

「自分でやっといてなんだけど、大丈夫か?百代」

 

「大丈夫だ。力は入らないけど無事だぞ」

 

そうか、と士郎は頷いて横たわる百代の横に座った。

 

「こういうのはもう無しだからな」

 

「えー・・・私はもっと・・・」

 

「ダメだ。俺はもう百代を傷つけたくない」

 

「ぶー・・・」

 

むくれながらも悪い気はしない百代。如何に士郎が自分を大事にしてくれているかがわかる。

 

「最後のあれ、宝具なんだろ?」

 

「ああ。インドラが使ったとされる雷だな」

 

「なんであれを選んだんじゃ?わしが思うに、モモを倒す宝具は他にもあったじゃろう?」

 

「・・・癒えない傷を与える槍、不死の怪物を殺す剣などありますが?」

 

使えるわけないだろう?と言わんばかりに士郎はジト目で言った。

 

「そりゃあ駄目じゃな」

 

「瞬間回復あってもダメじゃないか・・・」

 

「百代は瞬間回復に頼りすぎだ。正直、回復は俺には意味がない」

 

そう言って士郎は百代の肩に触れて、

 

――――同調、開始(トレース・オン)

 

と魔力を流して解析する。

 

「なんだ?ははっくすぐったいぞ」

 

「ちょっと我慢してくれ。今状態を見てる」

 

 

――――損傷なし

 

――――雷撃による細胞の麻痺、不活性化あり

 

――――回復までの予想時間、一時間

 

 

「やっぱり電撃が弱点だったか」

 

「ああ、そうみたいだ。私も知らなかった。どうしてわかったんだ?」

 

百代の問いに士郎は特に悩んだ様子もなく、

 

「百代の瞬間回復は何度も見た。恐らく細胞を強制的に活性化させて傷を塞ぐ技だと当たりをつけていた。なら、体を一時的に麻痺させることが出来れば勝機はあると思った」

 

「でも私に毒とかは効かないぞ」

 

「だからだ。麻痺毒が使えないなら後は感電くらいしかない。気を付けろよ。多分スタンガンなんかでも似たことが起きるぞ」

 

「そうか・・・うーん。私の最強伝説が・・・」

 

そんなことをのたまう百代にビシっとデコピンを打つ。

 

「最強なんて意外と簡単に崩れるものだぞ。それを如何に維持するかの方が大事だ」

 

「わかってるよ。もう・・・」

 

ぎゅっと士郎の腕を抱いて百代は目を閉じる。

 

「・・・百代。色々当たってるんだけど」

 

「当ててんだよ」

 

温もりを感じるように百代はそのまま眠ってしまった。

 

「眠ったか。衛宮君、わしらは君に感謝せねばならない」

 

「感謝?」

 

「左様。百代に敗北を教えてくれてありがとう。これでモモは大きな成長をするじゃろう」

 

「・・・俺がやらなくても誰かがやっていたと思いますよ。意外と身近な人が」

 

「そうかそうか。モモにもライバルがいて本当によかった」

 

満足そうに頷く鉄心に、もうやりませんからね、ともう一度釘を刺す士郎だった

 

――――interlude out――――

 




まずはここまで!色々ごちゃりそうだったので一旦区切ります。

百代戦で使ったのはfateの原作にある宝具辞典?から引っ張ってきたものです。夏の風紀委員長の奴ではありません。

いやもうほんとに一杯一杯です。何がって、士郎に縛りが多すぎる!流石聖杯戦争で英霊相手に特攻する主人公だなと感じています。殺傷力ありすぎ。でもかっこええから頑張って書くよ。

次回は義経ちゃん達が主軸ですね。あと何気に頑張ってるキャップ達も書かないと。

それでは次回お会いしましょう。

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