今回は日常編です。最上パイセンは士郎と違って回復できないからね。
季節が変わっても相変わらずな士郎を見ていただけたら嬉しいです。
では!
九鬼の病院にて。先の源氏大戦で重傷を負った最上旭は入院しながら事情聴取を受けていた。
「では、貴女は父が何をしていたか知らないと?」
「はい。私が知っているのは暁光計画の事だけです。それ以外の場所で父がどんなことに手を付けていたかなんてわかりません」
「失礼ながらあなたの父は良く家を空けていたとのことですが・・・」
「父はやり手のサラリーマンと聞いていました。よく海外などにも行っていたようですが・・・その辺は九鬼の方が詳しいのでは?」
「確かに。わかりました。今回はこれで以上になります。お早い回復を願っております」
そう言って刑事は病室を後にした。
「ふう・・・」
旭はたまらずため息を吐いた。入院するとどうしても体力が落ちる。その上、聞かされる度に驚く父の所業。確かに試練を与えるのが好きな父であったが、まさか犯罪まで犯していようとは夢にも思わなかった。もっと狭い範囲でのことだと思っていたのだ。
「相変わらず苦労しているようだな」
「揚羽さん・・・」
ノックして入ってきたのは九鬼揚羽だった。
「私もまさか、ここまで手広くやってるなんて思わなかったわ」
武器密輸や先の悪徳総理にも関わっていたとは旭も思わなかった。そうして分かる父の異常性。試練を与えるのはいいかもしれないが、犯罪にまで手を染め、尚且つ望んでもいない人にまで迷惑をかけているのはいくら何でもやりすぎだ。
「とはいっても、私自体、九鬼からクローン技術を盗んで作ったのですものね」
「そうなるな。だが安心せよ。お前に罪を問う気はない。ただし暁光計画とやらと同じことをされても困るのでな。監視はさせてもらうが」
「もうやらない・・・と口で言っても仕方のない話ね。その事に文句はないわ。ところで、士郎は?」
旭の問いに頭を痛めるように揚羽は、
「もうとっくに退院したわ。全身を隈なく突き刺されるような傷がどうしてああもあっさり治るのかさっぱり分からぬ」
「・・・。」
揚羽の言葉にピクリと反応しながらも、ほっと息を吐く旭。
「あの異常な回復も宝具とやらの力なのか?」
「・・・。」
揚羽の問いにやはり旭は答えなかった。
「ええい、なぜお前と衛宮はそんなにも口が重いのか!こちらは色々と面倒を見ているというのに」
「そういうものなのよ。迂闊に喋ってはならない。そもそも秘匿されるべきものなんだから」
それっきり答えることは無いと旭は窓の外を見た。
「最上幽斎のことが気になるか?」
「いいえ。お父様はやってはならないことに手を出していた。だからこうして追われている。そのことはきちんと理解しているし納得もしてる。ただ、確かに人とズレているとこがあったなと思うの」
「人が望みもしないことを試練だと勝手に押し付けるのは確かにな。しかも本人は本当に善意でやっているのがなんとも」
そのズレが彼を非行に走らせたのだろう。そう、納得するしかなかった。
と、
コンコン
「どちら様かしら」
「義経です!弁慶と士郎君もいます」
その声に旭はぱあっと笑顔を浮かべた。
「まぁ!どうぞ!」
「お邪魔します・・・あ、揚羽さん」
「「お邪魔します」」
義経と件の衛宮士郎が現れた。
「これ、お見舞いの品です」
「ありがとう。綺麗な果物の盛り合わせね。義経が選んでくれたの?」
「はい!色々悩んだんですが、やっぱり身になるものが良いかなと思いまして・・・」
「切り花とかも考えたけど・・・義仲さん評議会の人からもらってると思いましてね」
弁慶が棚を見ればそこにはたくさんの切り花が花瓶に入れられ飾られていた。
「予想通りだったね」
「そうね・・・みんなこぞってお見舞いに来てくれるからこんなになっちゃって・・・」
沢山の花瓶に旭は苦笑を浮かべる。
「待ってね、果物ナイフが・・・いたっ」
手を伸ばそうとした旭が苦悶する。
「無理をするな旭。果物は俺が剥く」
どこからともなくナイフを取り出して果物の袋を開ける士郎。
「今のも魔術か?」
「さて、どうでしょうね?」
揚羽の問いには答えず、士郎はさっさと果物の皮を剥いていく。
「はあ、また誤魔化すのか・・・あのな。そう秘密ばかりでは守れと言われても守れないだろう」
「知らないことが守ることに繋がるので教えませんよ」
「この石頭め・・・もうよい。それよりお前達、学園の方はどうだ?」
義経の方を向いて揚羽は言った。
「あの後特に変わったことは無いですよ。ただ士郎君が・・・」
「ああ、二人目の武神などと言われているらしいな」
ピタリと士郎の手が止まった。
「そうなの?確かに士郎は百代と戦っていたけれど・・・」
「過大評価だ・・・俺には百代のような力はないというのに・・・」
はぁ、と深いため息を吐く士郎。
あの戦闘後、士郎は武の男神のように祭り上げられてしまって、百代のように挑戦者が絶えない状態となっている。
「もしかして誰かのクローンなんじゃないかなんて噂も立ってるしね」
「ありもしないでたらめだ。何処に俺なんかを量産する必要があるって言うんだ」
ふてくされたようにショリショリと果物を剥くのを再開する士郎。とにかく士郎はここ最近数多の挑戦者相手に戦闘尽くしで非常に疲れていた。
「ただ買い物に出ただけで、やれ真剣に、やれ尋常にと、とにかくこちらの都合を考えず勝負を挑まれるので非常に迷惑してる」
「あはは・・・最近では義経より士郎君の方が挑戦者多いもんね」
「そうなの?流石士郎ね」
「褒められても何も出ないぞ」
「果物が出るじゃない」
旭の言葉にカクリと肩を落として、切り分けた果物を振る舞う。
「どうぞ、お姫様方」
「お、お姫様なんて・・・!」
「あら、嬉しいわ」
「私はお姫様って柄じゃないなー」
「うむ。苦しゅうないぞ」
謙遜する義経に柄じゃないと否定する弁慶に、むしろ乗り気の旭と揚羽。意外と違うとも言い切れないのがすごいところである。
「揚羽様。そろそろ出発のお時間です」
「うむ。・・・っと、行く前に小十郎、お前も衛宮に言いたいことがあったのだろう?」
「はい。重ね重ね、俺の為にありがとうございます!」
と暑苦しく感謝された。
「えっと・・・士郎君と話してたから知り合いとは思ってたけど・・・小十郎さんだったんだね」
「髪型違うと誰だかわからない時あるよねぇ・・・」
髪の毛を立たせていた小十郎は今や綺麗なオールバックである。金髪であることには変わりないが印象が段違いだ。
「外でも話しましたけど大したことはしてませんよ。あの時あずみさんに付いてきたのが運命ということで」
「はい!まだまだ精進していきますのでいつかお礼をさせてください!」
「・・・大したことはしていないって言ってるのに」
「衛宮よ。お前は過小評価過ぎるのだ。いい加減その悪癖をなんとかせよ」
「うん。義経も揚羽さんに同意する。士郎君は凄い人だ」
「だね。大将ほどの男は中々いないと思うよ」
「そうかぁ・・・?」
不思議そうに首を傾げる士郎に一同がそうだ、と頷いた。
「ではな。我は行かねばならぬ故またな」
「皆さま、またお会いしましょう!」
そう言って暑苦しい主従は去って行った。
「・・・やれやれ。魔術を探られるのも気が気じゃないな。これも君のせいだぞ、旭」
「ごめんなさい。あの時は余裕が無かったの。悪かったと思っているわ」
そう言う彼女はあれ以降士郎の事に関しては一切喋らない。なので士郎も一応理解はしてくれてるんだなと納得する。
「あの、士郎君。士郎君がその魔術使い・・・なのは知ってるんだけどどういうことが出来るの?」
「・・・こういうことさ」
そう言って手に握った果物ナイフが風景に溶けるように消えた。
「き、きき消えた!?」
「うーん絶対便利だよねそれ」
弁慶の棒を出した時はそれほど驚かなかったが、目の前で消えるのを見ると驚かずにはいられない。
「士郎。貴方何処まで自分の魔術を公開しているの?」
「この程度の事、と言えばいいか・・・とにかく気で何とかしてるって誤魔化せそうなくらいだな」
「百代が何でもできるから一応誤魔化せているのね」
「ああ。とにもかくにもこの話は終わりだ。このままだと俺の話で一日終わっちゃうぞ。それじゃあ見舞いに来た意味が無いだろう?義経」
「あ、うん。義仲さん、実は・・・」
何とか誤魔化して話を先に進めた士郎。彼と最上旭はまだ本格的な話し合いをしていないが何とかうまいことやりくりしているのであった。
「ただいま・・・」
「おかえり士郎!」
「おかえりなさい」
「おかえり」
へとへとの状態で士郎が返ってくる。
「士郎怪我してないか!?大丈夫か!?」
「大丈夫だよ林冲。ただちょっと疲れただけだ・・・」
士郎は最上旭の見舞いの帰り道、また挑戦者に挑まれ、いい加減頭に来ていた士郎は割と本気でボコボコにしたのだが、次は俺だ私だととにかくひっきりなしである。
「武神を倒すとはそういう意味を持つだろう。うっかり敗北なぞして期待を裏切らないようにするんだな」
「百代ほどの敵が居ないのが救いだな・・・まぁ、あんなのがポンポンいたら世界の終りのような気がするけど」
嘆息して士郎は荷物を置く。
「これ、何とか買ってきた。今日は橘さんいるかな」
「生憎今日は島津寮です。新しい寮の完成が近いので一層通い詰めています」
「そうか。じゃあ俺も頑張らないとな。夕飯作るか」
「では私が下ごしらえをしましょう」
「私と士郎が仕上げだな。清楚は呼ばなくていいか?」
「彼女はできるだけそっとしておいてあげよう。何せもう秋だ。冬休みを入れればもう川神学園にいる時間は少ない。少しでも選択肢を広げてほしいから」
そう言って士郎は台所に向かう。
「士郎、今日は何にする?」
「そうだな・・・まだ寒くはないけど由紀江の家から北陸の幸が沢山届いたから、鍋にでもしようか。下ごしらえだけで済むからマルに期待だ」
「・・・っ十分対応可能です」
「マルギッテ、無理は良くないぞ。一緒にやろう」
「おいおい、俺もやらないってわけじゃないぞ」
あはははと、笑いが起きる。マルギッテは流石に顔を赤くしていた。
「では、私は読書に戻るとするか。そうだ、少し考えたのだがな。お前も傭兵を雇えばいいのではないか?」
「傭兵を・・・って梁山泊か曹一族からってことか?」
「そうだ。傭兵に雑魚共の相手をしてもらい、勝てたらお前に挑める。どうだ?」
「・・・。」
うーむと士郎は考える。悪くない手ではあるがこの世界の強者は女性の事が多い。士郎としては女の子に守ってもらうなどしたくないのだが・・・
「確かに、現状仕事にも影響が出てるしな・・・」
自分の事だけならばいいのだが、最近鍛造の仕事にも悪影響が出ている。それはつまり九鬼と梁山泊と曹一族にしわ寄せが行くので結局、彼らの力を借りた方が良い。
「士郎。そのことなら私が「だめだ」・・・。」
自分の代わりに林冲が戦いに明け暮れるなど考えたくもない。それくらい、士郎は林冲に心を開いていた。
「豹子頭の言い分はもっともだと思うのだがな・・・やれやれ。ではこうしよう。衛宮邸の誰かが負けたらそいつと戦え。いいな?」
「史文恭、俺は・・・」
そんなことをさせたくない、と言いたかったが、
「では来る奴全てを相手にすると?それが如何に非効率かはよくわかっているだろう。それとも、私達では不安か?」
「不安かそうでないかで言うなら不安だ。みんなが俺を心配してくれてるように、俺もみんなが心配だ」
士郎はそう本音を口にした。その言葉にニヤリと史文恭は笑い、
「ならば同じことだ。とにかく、そうして数日追い払えば挑むバカも幾分減るだろうさ」
それだけ言って史文恭は背を向けた。その背中に、
「史文恭。・・・ありがとう」
と、礼を言って彼女は振り返らぬままヒラヒラと手を振った。
「話しは纏まりましたね。こちらも戦闘準備をしておきます」
「私もだ。士郎は私が守る」
「林冲・・・マル・・・」
何とも心苦しいが現状はそうしてもらう他無かった。
次の日、史文恭の案は強烈な効果を発揮し、その日士郎に挑む人間は居なかった。
「なんだか急に静かになったな」
休み時間、大和がS組からやってきて平和に過ごす士郎を見て言った。
「ああ。家のみんなが俺と戦う人間を捌いてくれてるんだ」
おかげでこっちに集中できると士郎は壊れた物の修理を行っていた。
「士郎の家の人ってあれだろ?S組の林冲さんにマルギッテ」
「あと葉桜先輩もいるな」
「お姉さまによく似た女の人もいたわよね?」
「・・・無理ゲーじゃね?」
ガクトがズルリと椅子から落ちた。
「それが狙いだ。とにかく俺への挑戦をやめてもらうのが目的だから」
「マスターは確かに百代嬢を下しましたが・・・だからと言って何でもできるわけではないのですから良いことかと」
少しでも士郎の心が浮かばれるように言うレオニダス。かく言う彼も士郎への挑戦者をけちょんけちょんにして追い返している。
そして士郎が迷惑がっているという噂を大和が学園中に情報を流していた。
「マルさんはいい肩慣らしだと言っていたぞ」
「林冲もじゃ。最近とんと戦闘をしていなかったので丁度良いとな」
「心。よく来たな」
「べ、別にお前の事が心配で来たわけじゃないのじゃ!此方の友達とだな・・・」
「・・・女子、今いないけど」
「・・・。」
「「「・・・。」」」
「ええい!心配で来てやったのじゃ!悪いか!」
「潔い開き直りだな!?」
ガンと士郎の向う脛を蹴り飛ばすが、
「いたー!?」
あまりの硬さに心がピョンピョン跳ねて悶絶した。
「そりゃ士郎の足なんか蹴ったらそうなるわ・・・」
「人がピンポン玉みたいに飛んでいくからねー」
「というか士郎ならバットくらい余裕じゃない?」
「・・・ちょっと見てみたいな」
周りで好き勝手いう仲間達に士郎は苦笑を浮かべる。
「好き勝手言うんじゃない。あと、できなくはないけどやらないぞ」
そう言ってチャイムと同時に直し終えた依頼品をしまって士郎は次の科目の準備をする。
「話し過ぎたな。不死川、戻ろう」
「次は人間学じゃったな。ではな。・・・士郎」
そう言って大和と心はS組に戻て行った。
「次なんだっけ?」
「ガクト殿!!次は!次の科目は数学ですッ!!いついかなる時も数学を忘れてはいけませんッ!!」
「先生は数学好きだからなー・・・俺様、全然分かんない」
「私もー・・・」
「お前らは全部そうだろうが」
彼らも少しは勉強を頑張ってほしいものだ。
「今はいいかもしれないけど将来困るぞ」
「わかってるけどうまくなれないの!」
「そうよぅ・・・数字がああしてこうなって・・・キュウ」
プスンと煙を上げてショートする一子に士郎は頭を抱える。
「この子らは大丈夫なんだろうか・・・」
仲間の先行きが不安になる士郎であった。
昨日とは雲泥の差の放課後、士郎は宇佐美巨人の依頼で売春行為の元締めを懲らしめに向かっていた。
「まさかこんなことまで依頼に上がるとは。いくら何でも危険すぎやしませんか?」
「おじさんもそう思うけどね。一応単独で取り締まりをするよりいいでしょってことなんだろうよ。・・・うちの生徒、血気盛んだから」
キッと車が止まる。
「あそこだ。目標は中にある目録の回収と実行犯を取り押さえること。衛宮だけじゃ抑え込みきれないだろうから風間たちが今下準備してるぞ」
『こちらキャップ!配置についたぜ!』
『弓兵もOKだよ』
『こちらピーチ!これよりカワユイ女の子を確保しに行く!』
「いや、居たらまずいんだって」
思わずツッコミを入れる士郎。今回の依頼は川神学園の生徒の関与が疑われるので内々に処理をしたいという事だった。
『こちら筋肉!これから卓世ちゃん投入するぜ!』
卓世ちゃんとは女装したモロの事である。モロは中性的な印象の少年なので意外と本物に見えるのだ。
(何気に最前線で一番に突入するモロは勇気あるな)
もちろん罠ではあるのだが、いかつい男達に囲まれて一室へと入っていくのは中々の恐怖だと思うのだが。
「士郎。姉さんが正面から行くから遊撃頼むぞ」
「任された。こちとらやっと決闘騒ぎから解放されたんだ。とっとと片付けて仕事しないとな」
ゆっくりと百代が廃棄された建物に行く。そして、
見張り番の男の首をゴキリ!と変な方向に回して嬉々として突撃する。
『そこでのたうち回ってろ』
「おいおい殺すなよ?」
『殺してないーちょっと・・・すごく痛いだけ』
いわゆる半殺しという奴である。
わざわざ無線で返事をするあたりなんとものんきなことである。
「いくわよー!川神一子、見参!」
「不逞の輩を排除する!クリスティアーネ・フリードリヒ推参!」
「黛由紀江、参ります」
名乗りを上げて次々と突入していく。
「なんだこのガキども!?」
「おい!撃て!そいつは飾りか・・・グェ!」
拳銃を持っている輩がいる為、士郎と百代で率先して潰していく。
「ヒッ!コイツらあれだ!山を荒れ地にした武神二人だ!!!」
「おい、一体誰が武神なのかね?」
ガス!と蹴り飛ばして苛立たし気に士郎は言う。
「なんだよいいじゃないか。武神デビュー」
「こういう輩が絡んでくるからごめんなのだが」
そう言ってまるで暴風のように不逞の輩を一掃していく。
「こっちはだめだ!」
そう言って窓の方に向かっていくが、
「いらっしゃい」
「・・・。」
ドーン!と効果音が鳴りそうな感じでガクトが待ち受けていた。
「たすけ、あぶぎゅ!」
バチーン!と張り手を食らって建物内に張り飛ばされる。
「一階は片付いたな。京、二階は?」
『問題なし。今日は私の出番無かった・・・』
どうやら屋上から逃げ出そうとする輩はいないらしかった。
「みんなはそいつらを縛り上げてくれ。俺は証拠やら名簿を探す」
「OK!」
「自分達も縛り終えたら手伝おう」
「私も士郎先輩と証拠探しをします」
「おー?抜け駆けかまゆまゆ?」
違います!とギャーギャー言いながら必要なことを済ませていくファミリー。
「あった。これが名簿だな」
「こっちにもありました」
「生意気に電子管理してんじゃないよもう・・・洗うのが大変じゃないか」
ぶつくさと言いながら巨人は捕まえた輩の一人を一室へと連れて行った。
「あれは?」
「当然尋問だろ」
「これだけ広範囲だとな。尋問した方が間違いは減る」
台帳がある程度ならばよかったが今回はPCを使って人数管理をしているので証拠を逃さず集めるのは中々難しい。
「PCがあるなら任せて」
「お、卓世ちゃんの見せ場?」
「ていうかいつまで女装してるんだ」
いい加減着替えてもいいのだがそのままでいる辺りモロも演劇が身に付いてきたのかもしれない。
しばらくして、巨人が一室から出てきた。
「ここにあるのはそのPCにあるものだけらしい。他は専用のサーバーに保管しているそうだ」
「任せて。それならハッキングをしかけて・・・」
カタカタと素早くタイピングをして逆ハックをかけるモロ。
「・・・やるじゃないかモロ」
士郎はその手腕に感心したようにモロの手元を見る。彼のそれはまさにプロ級の腕前だ。
「よし、データは全部吸い出せたよ。ついでにバックドアもしかけたからいつでも探れる」
「今ここで壊してしまった方がいいのでは?」
クリスの問いに士郎が首を振った。
「そうしたら新しいサーバーを立ち上げて終わりだ。そうなるとまた一から探さないといけない。それよりわざと残して使わせた方が大元に辿り着く」
「・・・おじさんが言うのもなんだけど君達手慣れ過ぎじゃない?」
「士郎の入れ知恵ですよ」
「そうそ。士郎の戦術は一級品だからね」
「・・・自分が指示しました」
やりすぎたかなぁとポリポリと頬を掻く士郎。
「まぁいいけど。情報は洗い出せたみたいだから後はおじさんが手配するよ。報酬は後日ね」
「よっしゃー!依頼達成!」
「喜ぶのは後だ。すぐこの場を離れるぞ」
「っと、そうだった」
イェーイ!とハイタッチしていた皆が士郎の言葉に慌てて撤収作業を行う。
「なーんかあっさりしすぎたなぁ・・・」
「そりゃあモモ先輩に士郎にまゆっちまで居ればこうなるわな」
「なんたって二人の武神あいてじゃなーある意味同情するぜ」
「あのな・・・一応拳銃持ってる奴等が居たんだから危機感を持て」
前の世界では考えられない学徒の逞しさである。
「拳銃くらいならもう何とでもなるしな・・・」
「そうねー撃たれても切れば大丈夫だと思うわ」
「君達ね・・・」
もう士郎は頭痛が止まらない。
(本当に武闘派な世界だよなぁ・・・)
何とも言えない感情を抱く士郎であった。
「ただいま」
「おかえり、士郎」
「おかえりなさい」
「おかえり」
依頼を終えて帰ってきた士郎にやはり一番に林冲がおかえりを言ってくれる。
「今日も大丈夫か?もう怪我してないか?」
「してないよ。所詮雑魚だったからな。それよりみんなありがとう。劇的に減って大助かりだ」
「私達はいい運動になる。一石二鳥じゃないか」
「確かにな。あ、でも怪我した奴はいないか?」
「お前が言うのか・・・」
「誰も怪我してないよ士郎君。・・・俺があの程度の雑魚に後れを取る訳が無い」
と自信満々に言う覇王は心配だが他の三人は特に怪我も無いようだ。
「よかった。今日はみんなが俺を心配してくれる気持ちが分かった気がするよ。見えない所で怪我をするかもしれないのはこんなにも心臓に悪いんだな」
そう言って士郎は改めて頭を下げた。
「みんないつもありがとう。俺は幸せ者だ」
「ほう。士郎もようやく自覚が持てたようですね。まぁ、これだけの人間に毎日心配されれば気づきもするでしょうが」
「だがここまでやってようやっとだ。これは骨が折れる男だぞ」
「「「同感・・・」」」
はぁ、とため息を吐かれて士郎は苦笑する。
「それはそうと、みんなかぼちゃの菓子食べないか?今日沢山貰って来たんだ」
「かぼちゃですか。確かハロウィンがもうすぐですね」
「いささか早いが折角だからご相伴にあずかろう」
「かぼちゃのお菓子か~士郎君は作れるの?」
「作れますよ。菓子全般も大体行けますし、ハロウィンが来たらみんなで作ろうか」
「賛成!義経ちゃん達にも作ってあげたいから教えてね?」
そうして士郎は衛宮邸の皆のおかげで日常に戻れるのであった。
はい。日常編でした。ささやかなバトルもありましたが風間ファミリーがすでに強いのにそこに士郎まで投入したらそりゃあっさり味にもなるわけで…目玉はどちらかというと卓世ちゃんのハッキングですかね?
次回はハロウィン!まだ最上パイセンはこれ以上出せません。だって原作で義経の攻撃で骨がバキバキに折れてるらしいので…冬休み前か冬休み入ってからかなー
という事で次回もよろしくお願いします。