真剣で衛宮士郎を愛しなさい!   作:Marthe

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皆さんこんばんにちわ。キーボードを新調して実に快適な作者です。

今回はハロウィンの話が書ければなと思います。ついでに爆弾も投下したい所です。

では!


Trick or Treat!

「「「Trick or Treat(トリック・オア・トリート)!」」」」

 

元気なファミリーの声に士郎は苦笑を浮かべて菓子を渡す。

 

「悪戯するなよー」

 

「こんなお菓子貰ってするわけない」

 

「ワン!美味しそうなお菓子~」

 

「士郎のお菓子は楽しみにしていたんだ!」

 

「バレンタインと違って男の俺様達も貰えるのがいいよなぁ・・・」

 

「士郎のお菓子を貰えるのは役得だよね」

 

「士郎先輩!Trick!Trick!です!」

 

「おおー?まゆまゆやるじゃないかー。だが私のものだ!」

 

おわー!と何故か菓子を上げたのに襲われる士郎と士郎の絶品の菓子を堪能するみんな。

 

今日は10月31日。いわゆるハロウィンだ。今は秘密基地に集まっているが士郎の菓子を堪能したら仮装して街に繰り出す予定である。

 

「すげぇ、かぼちゃのケーキまで作ってくるとか・・・」

 

「クッキーだけかと思ったらこんなのまで出てくるなんて」

 

「パーティだね」

 

口々に驚きの言葉を上げながら士郎の菓子を口にする。

 

「ぬあ!・・・ふう、みんな仮装はどんなものにするか決まったのか?」

 

由紀江と百代を押しのけて聞く士郎。

 

「犬はもちろん犬だろ?」

 

「犬じゃないわ、狼よ!そう言うクリは何にするのよ」

 

「自分はこれだ!」

 

バーン!と出てきたのは騎士甲冑。

 

「クリス、なんで騎士なんだ・・・?」

 

「仮装だけど、ハロウィンではない・・・」

 

「新しい調度品かと思ったぞ」

 

「秘密基地にこんなの置けるか!」

 

「な、なんだ!いいだろう!?カッコいいだろう!?」

 

そう言う問題じゃない、という事でかぼちゃの被り物を追加した。

 

「ガクトはフランケンシュタインか・・・」

 

「体的にぴったりだからな。そういう士郎はどうするんだ?」

 

「一応狼の被り物を持ってきた」

 

「「「・・・。」」」

 

その言葉に一同は固まった。

 

(士郎が狼とかシャレにならなくね?)

 

(本当だね。本物の狼だもの)

 

モロとガクトがコソコソと言い合う。何せ数多の女性を落とすフラグ建築士なのでなんとも言えない。

 

「なんだよ、普通だろ?」

 

「「「似合いすぎ」」」

 

「ええ・・・」

 

まさかのブーイングに士郎は困り顔。

 

「じゃあ百代はどんなのにするんだよ」

 

「これだニャン!」

 

黒猫の耳を付けた百代が出現したが、

 

「・・・サーベルタイガー?」

 

「おいー!!!」

 

士郎の言葉に怒声を上げて襲い掛かる百代。

 

「士郎って時々頭悪いよね」

 

京の言葉にうんうんと頷く一同。

 

「っとと・・・今日はクッキーも行くんだろ?」

 

「うん!僕はこの・・・」

 

ガションガション。

 

「パンプキンゴーストプログラムで行く」

 

「普通のクッキー2じゃん」

 

「ここにこうして」

 

カポリとかぼちゃの被り物を被る。

 

「ついでにランタンも持つ」

 

「おお・・・意外と迫力あるわ・・・」

 

「ボディ紫だけどな」

 

「マジックで塗ればいんじゃ『ブオン』はい。すんません」

 

「まぁ色々ありそうだけど問題なしという事で」

 

ちなみに京は魔女の仮装だった。本を読んでるのも相まって違和感がない。大和とモロはドラキュラの仮装。狼はワン子だろうという事で避けたそうだ。

 

「キャップは・・・なんだそれ?」

 

破いたシーツをすっぽりとかぶった姿はゴーストだろうか。それにしてはやけに装飾が多い。

 

「昔冒険に行った時に買ったやつだ!どうだ?本格的だろ?」

 

ちょっと血らしきものがついているが本当に大丈夫なんだろうか。

 

「それ呪いのアイテムだったりしない?」

 

「大丈夫だって!さ、菓子も食ったし行こうぜ!」

 

そうして風間ファミリーは出陣した。

 

 

 

 

街中では様々な仮装の人でいっぱいだ。かぼちゃの飾り物もあちらこちらに置かれており、お祭り状態だった。

 

「いつもの街並みと違うから新鮮だな」

 

そう言って士郎はキョロキョロと辺りをみる。

 

「お!あっちでお菓子配ってるぜ!」

 

「お菓子ー!」

 

無料で配っているお店の前には人だかりが出来ていた。

 

「「「Trick or Treat(トリック・オア・トリート)!」」」」

 

「はい!一人一つまでだよー」

 

そう言って小さな袋に入ったクッキーを貰ってくる一子達。

 

「まぐまぐ・・・美味しいけど士郎の程じゃないわねー」

 

「先に士郎の食べるのは失敗だったかな?」

 

「好き勝手言うねー、お前達」

 

と苦笑を浮かべる士郎。

 

「川神では毎年こんな感じなのか?」

 

「ああ。ハロウィンや縁日なんかもこんな感じでお祭り騒ぎだぞ」

 

「そうなのか・・・なんか同級生に出会いそうだな」

 

そんなことを言っているそばからパシャパシャと写真を撮りまくるヨンパチの姿が見えた。

 

「いたわ・・・」

 

「みんな来てると思うぜ。この日限定のアルバイトとかもあるしな」

 

「なるほど。それは盲点だった」

 

よくよく考えればお祭り騒ぎなのだから店の方も書き入れ時だろう。人手を募集するのは確かにそうかもしれない。

 

「あ、士郎くーん!」

 

そうこうしている内に義経に出会った。

 

「義経。それと旭?」

 

「ええ。士郎、ごきげんよう」

 

義経は狼の仮装、旭は椅子に座って魔女の仮装だった。

 

「義経達はバイトか?」

 

「うん!マープルにお願いしてやらせてもらってるんだ」

 

「私はただのお飾りよ。まだ傷が回復しきってなくて」

 

義経が屋台のようなものの中に立ち、綿あめを配っているようだ。旭は本調子ではないので椅子に座って本を開いている。

 

義経もそうだが旭も十分美人なのでとても目立つので良い客寄せとなるだろう。

 

「義経は初めてのバイトか?」

 

「う、うん。実を言うと、とても緊張している」

 

「もう、義経は十分に出来ているのだから大丈夫と言っているのに」

 

困ったように言う旭に士郎は笑って、

 

「はは。なら俺も綿菓子を貰おうかな。よろしく頼むぞ」

 

「ありがとう!じゃあ・・・」

 

ザラメを入れてくるくると回すと・・・

 

「お?色付きか」

 

淡いピンク色に染まった綿あめが出てきた。

 

「はい!これ九鬼の新機種なんだ。こうして色を手軽に付けられるんだけど・・・どうかな」

 

「ああ。これは赤にするつもりだったのかな?」

 

「うん。士郎君と言ったら赤だから・・・迷惑だった?」

 

「そんなことない。嬉しいよ。ありがとうな義経」

 

えへへ、と笑う義経の獣耳が実際に動いたように感じる士郎だった。

 

「旭もあんまり無理するなよ」

 

「ええ。私は途中で弁慶と交代だから大丈夫よ。それより士郎こそ戦闘に巻き込まれないようにね」

 

「・・・こんな日に戦闘なんて御免だな」

 

最近の調子だとあり得そうで怖い士郎である。

 

「大和ーどう?フランケンシュタイン」

 

「似合って・・・ると思います・・・はい」

 

「ぬぬ・・・大和~・・・」

 

「・・・。」

 

戻ると何やら修羅場に遭遇した。

 

「弁慶か。義経がそこで綿あめを配っていたからいるとは思ったけど・・・あれはどういう状況だ?」

 

なにやら弁慶が大和に迫り、クリスと京は悔し気に見ているというなんともな状態だった。

 

「見てのとーり」

 

「大和も隅に置けないよね」

 

「俺にはさっぱりわからん。何が楽しくてそんなに沢山女を落とすのか」

 

「キャップには一生わからねぇと思うぜ・・・」

 

女性には興味のないキャップには謎の光景として映るだろう。

 

「大和はモテるんだな」

 

「「「お前が言うな」」」

 

ツッコミをいれても首を傾げている士郎だった。

 

 

 

 

 

街を練り歩く中同級生とも何度か出会い、その度に士郎は菓子を配っていないのかと聞かれるが、残念ながら無いということで道行く知り合い達にいたずらされる士郎。

 

「なんで俺ばっかり・・・」

 

「そりゃ日頃の行いだろ」

 

「そうそう。士郎の料理は絶品だからね」

 

「理不尽だ」

 

こんなことならクッキーを余分に作っておくべきだったと後悔する士郎。

 

そんな時だった。

 

「あれは・・・」

 

カラフルな提灯が飾られている町の一角にでた。

 

「げ。みんなあそこはスルーだ」

 

「京極先輩のお店じゃない?」

 

「本当だ。ハロウィンでなにか売り出してるのかな」

 

そんな言葉とともに駆け寄っていく一子。

 

「ああっ!ワン子やめとけって!」

 

百代の静止も構わず一行は京極の店を訪れた。

 

「おや、これは珍しいじゃないか。武神が私の店を訪れるとは」

 

「別によりたくて寄ったんじゃないですー。こいつらが・・・」

 

「へぇ!色んな色の提灯がある!」

 

「これ!かぼちゃの形だ!和風もいいなぁ・・・」

 

「はっは。確かに武神が来たというよりは後輩たちが物珍しさに来たという感じかな」

 

「京極先輩は提灯を作って長いんですか?」

 

士郎の問いに興味深そうに京極は頷いた。

 

「ああ。私の家は代々提灯屋だ。ここにあるものも大体は私が手掛けたものだ」

 

「京極先輩って言うと、言霊がすぐに思い浮かぶけど、提灯屋だったんだなー」

 

そう言って手近な物を手に取るキャップ。

 

「決めた!俺これ買う!」

 

「キャップ!?」

 

キャップは様々な冒険で品を買ってくるが、彼の眼鏡にかなうものは中々ない。なのでこれは相当にレアなケースだった。

 

「毎度あり。末永く使ってやってくれ」

 

「キャップが買うクオリティかぁ・・・」

 

「俺も買うぞ。京極先輩、珍しいものとかあります?」

 

「士郎も?」

 

「こちらに置いてあるものは特殊な染料で着色したものだ。他ではあまり見ないものではないかと思う」

 

「どれどれ・・・本当だ~色合いが素敵ね!」

 

「なんだよ、みんなして。こんな人でなしに構っちゃってさ」

 

「武神が私を忌避するのはいつもの事だが、こうしてみると結局仲間達からは離れがたいと見える」

 

「そりゃあファミリーだからな。興味持った相手しか見ないお前とは違うんだよーだ」

 

いー!っと威嚇するが京極はそれも何のその。手元の作りかけの提灯に目を向けたままだ。

 

「京極先輩。これとこれ、もらえますか?」

 

士郎が指さしたのはハロウィン限定商品だろう、かぼちゃの提灯と、淡い赤色の提灯だ。

 

「構わない・・・お代は確かに。・・・ふむ。ちょっとしたサービスでもしようか」

 

代金を払った士郎の顔を見て京極はふと思いついたように言った。

 

「衛宮君。酷い女難の相が出ているぞ。あまりおいたはやめておいた方が良い」

 

「は?」

 

意味が分からんと首を傾げる士郎だが、仲間達は大爆笑だった。

 

「がっはっはっは!言われてやんの!」

 

「京極先輩、もっと言ってやってください」

 

「確かにありそうだよね。・・・背中から刺されそうなの」

 

「士郎はモテるからなー」

 

「おい京極!これ以上ってなんだ!まだ増えるっていうのか!?」

 

「おい。増えるとはなんだ」

 

黙って聞いていれば酷い言われようである。

 

「さて。私は少々聞きかじった程度の知識しかないのでね。増えるかどうかは・・・まぁ、容易に想像ができるが。正室、側室の法案が通るまで自重することだな」

 

「なんでそこでその法案が出てくるんですか・・・」

 

分かり切ったことなのだが士郎だけはさっぱりわからない様子でこれは苦労するなと京極は思った。

 

「武神。獲物は素早く仕留めた方がいいと、私は思うがね」

 

「大きなお世話だ!!」

 

今度こそ声を荒げて言う百代にやっぱり何処か納得のいかない士郎。

 

そんな最後に釘を刺される形でハロウィンは幕を閉じた。

 

 

 

 

「はぁ・・・」

 

秘密基地からの帰り道。士郎は散々イジられて疲れ果てたようにため息を吐く。

 

(なんだってみんな俺がモテるだのハーレムだの言うんだろう)

 

自分は自分にできることを精一杯やっているにすぎないのだが。

 

(仮に複数の女性と結婚・・・考えられないな)

 

元の世界では結婚自体せずに世界を旅した士郎である。当然結婚などという言葉に意識などなく、それも複数人など考えも及ばない。

 

「じゃなー」

 

「じゃねー」

 

「ん?おう。また明日」

 

気付けば島津寮まで歩いていたらしく士郎は去り行く寮組に、また、と返して歩く。

 

「なぁ士郎」

 

スヤスヤと眠る妹をおぶった百代が問いかける。

 

「なんだ?」

 

「士郎に好きな人っているのか?」

 

直球な問いかけだった。いつもなら・・・いや、今も実は赤面している百代だが、

 

「――――」

 

士郎は難しい顔をして黙ってしまった。

 

「士郎・・・?」

 

その姿が恥じらうわけではなく、驚くものでもなく、ただひたすらに困惑が見える百代は何事かと思った。

 

「・・・なぁ百代。俺はそんなに幸せになっていいんだろうか?」

 

「え?」

 

「俺は多くの人を見殺しにしてきた。多くを救うために少数の救いを否定した。もちろん救えたものはあったけれど、そんな俺が普通の幸せを享受していいものか、俺にはわからないんだ」

 

「・・・。」

 

百代は俯いて考えてしまった。自分達は色恋沙汰に一喜一憂しているが彼はそもそもそのステージまでたどり着けていないのだとやっとわかった。

 

「百代はもう知っているだろう?俺の過去を。正義の味方として活動していたことを」

 

「うん・・・」

 

「俺には分からないんだ。好いた嫌った以前に、そんな普通の幸せを得る権利があるのかどうか」

 

「士郎・・・」

 

その姿が、土砂降りの中泣き叫ぶ子供のようで。百代も何も言えなくなってしまった。

 

「すまん。ちょっと暗くなったな。とにかく今俺にその気はもてないんだ。どうしても、罪悪感の方が強くて」

 

「そっか」

 

百代はその言葉を聞いて激しい激情に襲われていた。

 

(言いたい。言ってやりたい。誰よりもお前が、お前こそが幸せになるべきなんだって)

 

しかしそれを口に出来ない。いつもだったら怒鳴り散らしていただろうにそれが出来ない。

 

 

――――脳裏に浮かぶのは。死の匂いが充満した真っ黒な景色。そして救いを求める黒いナニカ。

 

 

彼の心を焼き尽くしたであろうその光景が、百代が口を開くことを許さなかった。

 

「百代?なんで泣いてるんだ」

 

「え?」

 

百代は士郎に言われて初めて自分が涙を流していることに気付いた。

 

「泣きはらし・・・てはないか。どうしたんだよ。急に泣き出して」

 

「これは・・・お前が・・・」

 

(違う。悔しいんだ私は)

 

自分は士郎が好きだ。きっとこの先にない程はち切れんばかりの愛が溢れてる。

 

けれど、自分はこの空虚な男の事を何も知らないんだと思い知らされたのだ。

 

「ついたぞ百代。大丈夫か?」

 

「・・・。」

 

士郎の言葉に百代は答えない。だが、

 

「士郎」

 

「なん・・・ん!?」

 

グイっと首元を引っ張り強引な口づけを交わした。

 

「おま、なにやって・・・!」

 

「それでも私は、お前の事が好きだよ」

 

そんな当たり前(本心)を口にした。

 

「え?」

 

「おやすみ」

 

戸惑う士郎を置いて百代は立ち去って行った。

 

残された士郎は自分の口元に手をやり、

 

「それは、反則なんじゃないか・・・?」

 

咄嗟の事に頭が真っ白になりつつ帰ることになるのだった。

 

 

 

 

 

翌日。川神学園は川神祭(文化祭)で大忙し。何せ準備期間はあと三日しかない。しかしながら、規律順守のスケジュールの鬼がいる2-Fで慌てる事態に等ならない。

 

なのだが、

 

「士郎、士郎!」

 

「え?なんだ?」

 

「なんだ?じゃねーよ!箒持ったまま固まってんな!もうハロウィンは終わったっつうの!」

 

翌朝から士郎の様子がおかしい。実を言うと家でもこんな感じだったので、林冲は休息を薦めていた。しかし、文化祭の準備で休むわけにはいかんと言いながら、それでもぼーっとしたままなのだ。

 

「なんだぁ?士郎の奴様子がおかしくね?」

 

「昨日は特に何もなかったよね?」

 

「だな。京何か知ってる?」

 

「わからない。でも私達と別れる時までは普通だったからその後だと思う」

 

「俺様とモロの時も普通だったよな?」

 

「う、うん。ちょっと考え事はしてたみたいだけどね。あんな風になるほどじゃなかった」

 

「となると・・・」

 

「・・・。」

 

皆の視線を集めた一子が全力で目を逸らした。

 

「ワン子なんか知ってるな?」

 

「ダメよ!私は何も聞いてないし見てない!」

 

「って言う事は知ってるんだな。キリキリ吐きやがれ」

 

「ダメ!約束だから・・・」

 

「約束?」

 

 

 

 

 

百代が士郎の前から立ち去った時。百代は背中で眠っているはずの妹に声をかけた。

 

『ワン子』

 

『・・・。』

 

『起きてるんだろ。分かってるぞ』

 

『うぁう・・・』

 

奇妙な声を出して黙秘できなかったと悲鳴を上げる。

 

『お姉さま、怒ってる?』

 

『まさか。起きたのは今さっきだろう?私が士郎と・・・その』

 

強引にキスをした時に一子は目を覚ましたのだ。

 

『とにかく!今の事はナイショにしてくれ』

 

『それはいいけど・・・お姉さま、大丈夫?』

 

『・・・正直大丈夫じゃない。けどなんとかする』

 

顔を真っ赤にして耳まで赤くした百代がそう言う。

 

『私もだけど、きっとあいつも心の準備が出来てないと思うんだ。だからその時までは・・・』

 

『・・・うん。分かったわ。頑張って!お姉さま』

 

というやり取りがあったのだ。故に一子は彼女なりに必死に口を(つぐ)む。

 

「なんだよー。ワン子が知ってるってことはモモ先輩か?」

 

「ぽいなぁ・・・こりゃあ藪蛇になりそうだ」

 

「一つ確認。悪いことではないんでしょ?」

 

京の言葉に一子はブンブンと頷いた。

 

「なんだ。じゃあ士郎が勝手に頭回らなくなってるだけか」

 

「それもそれで異常事態だけどね・・・」

 

またぼーっとしている士郎にレオニダスが心配そうに問いかけている。

 

「マスター。どうにも心ここにあらずという様子。ここは一度休息して心を整理した方が良いのではありませんか?」

 

「・・・そうだな」

 

さしもの士郎もレオニダスにまでそう言われては仕事にならんと決めて皆に準備を頼むことにした。

 

「心配ないぜー。準備はもうほぼ終わってるしな」

 

「残ってるのは飾りつけだけだから非力な俺たちでも問題ない」

 

ヨンパチとスグルはそう言って快く引き受けてくれた。

 

「みんなすまない。今日はちょっと休ませてくれ」

 

「気にしない気にしない。衛宮君はいつも働き過ぎなくらいなんだから」

 

「こういう時こそ、お姉さんを頼ってください!」

 

「車に引かれるなよー」

 

「でもって車壊すなよ」

 

「そっちの心配!?」

 

今の士郎ならば無条件に反射して壊しそうである。

 

「みんな、ありがとう。この礼は必ずする」

 

そう言って士郎は足早に荷物を持って帰って行った。

 

「・・・悩み事か?」

 

「馬鹿ね。どう見ても女の子関係でしょ」

 

「!」

 

千花の言葉に一子が反応するがそれ以上は何も言わなかった。

 

 

 

――――interlude――――

 

その日百代はとにかく気がふれたのではないかと思うほど顔色を変えまくっていた。

 

「!・・・ッ!!」

 

「百代、気色悪いで候」

 

赤面したかと思えば体をブンブン振り回して、かと思いきや一気に顔色が真っ青になり・・・とにかく喜怒哀楽が暴走していた。

 

そんな友の様子に流石の弓子も苦言を呈した。

 

「だってユーミン!私、やっちゃったんだぞ!」

 

「だから何をで候。さっきからそれを聞いているのに百代ははぐらかしてばかりで候」

 

「だから・・・!」

 

と言って、その先が続かない。そして赤面して・・・のループである。

 

「モモちゃんも川神祭の準備やってよねん。いつまで軟体生物ごっこしてるの?」

 

「燕!別にそんな難儀な遊びをしてるわけじゃ・・・」

 

「じゃあどうしたのさ。らしくないよモモちゃん。ここはズバーッ!と言っちゃいなよ」

 

「う・・・」

 

燕の言葉にいい加減観念したのかボショボショと何事かをつぶやく。

 

「なに?聞こえないよん(あれ、これまさか)」

 

「聞こえないで候(もしかして)」

 

「だから!コクハク…したんだ!」

 

その言葉に二人は頭が真っ白になった。一人は想像もしなかった友の行動に。もう一人はまさかの事態に気を持っていかれて。

 

(告白?百代ちゃんが!?ウソ!?キャー!!!)

 

(・・・出遅れたねん。まさかモモちゃんがそんなにアクティブに攻めるなんて)

 

「この美少女なら問題ない・・・はず・・・あああ・・・でも士郎はそう言うの考えられないって言ってたし・・・ていうかなんでそんな状況でコクハク…したんだ私ッ!!!」

 

「え?衛宮君がなんて?」

 

「それは・・・」

 

言えなかった。それは彼の秘密にも直結すること。軽々しく口にしてはいけないことだ。

 

「言えないので候?」

 

「うん・・・とにかく士郎は自分が幸せになっていいかわからない、むしろなってはいけない的なことを話してて・・・」

 

「それ明らかに自爆ポイントじゃん。でも断られはしなかったんだ?」

 

「いや、私が返答を聞かずに帰ったんだ・・・で、でも!今日の朝は断られなかったぞ!?」

 

「それは本人が百代にどう接していいか分からないからで候」

 

「だねん。だって今日のモモちゃんずっと挑戦者の相手してたじゃん」

 

「う・・・そ、そうだけど・・・」

 

また顔を青くして机に突っ伏す百代。

 

「やっぱりダメかなぁ・・・初恋なんだけどなぁ・・・」

 

「応援してやりたいところで候が、本人がそこまで思いつめているならば覚悟は必要で候」

 

「うう・・・ユーミン~・・・」

 

しとしとと涙を流す百代に弓子も困り顔である。

 

「・・・とにかく状況整理したほうがよさそう。いつ告「わあああ大きな声で言うなぁ!!!」・・・したの?」

 

「昨日・・・」

 

「時間は?」

 

「夜・・・」

 

「(雰囲気はいいわね)どこで?」

 

「家の前で・・・」

 

「どうやったの?(ここ重要)」

 

「その・・・無理やりキスして・・・それでも私は、お前が好きだって・・・」

 

「「はああぁぁ?」」

 

思わずイラついた声を上げる二人。

 

「な、なんだよう・・・わかってるよ、やりすぎたっていうか・・・」

 

「雰囲気大事にしようよ百代ちゃん・・・」

 

「折角それだけシチュエーション揃っててなんで強引に行ったの(セーフ!唇奪われてるけどとにかくセーフ!)」

 

「ううう・・・だって我慢できなくて・・・」

 

「これは・・・接し方にも困るで候」

 

「そうだよん。モモちゃんが好きな人がそんな風にしてきたら嫌でしょ?」

 

「・・・士郎ならいいというか・・・士郎ならむしろ来いというか・・・」

 

「「・・・。」」

 

とにかくぞっこんなのはわかった二人。

 

(これは想像以上にまずいかなぁ・・・)

 

ふといつかの真っ直ぐな眼差しの彼を思い浮かべる燕。カッコよかった。そして強かった。あの眼差しが何を見ているのか見届けたくなった。

 

それが奪われる。そう考えた瞬間、

 

「?どうしたんだ燕。殺気なんか出して・・・」

 

「・・・ッハ!」

 

思わず殺気が漏れていたことに燕は気づき、慌てて引っ込める。

 

「とにかく、士郎君がどう返事するか待つしかないんじゃない?」

 

「そうで候。とにかくどんな答えでも受け止める覚悟をしておくで候」

 

「それって返答は絶望的ってことじゃないかー!」

 

「「それは貴女が悪い」」

 

うわーん!と泣き出した百代にため息を吐く二人。

 

とにかく命運は衛宮士郎に託された。彼がどう返事をするのか、二人も気になる所だった。

 

 

 

――――だが、その願いは叶えられない。何故なら彼は。翌日レオニダスと共に行方不明となったのだから。

 

 

 

――――interlude out――――




はい。最近短編が続いて申し訳ありません。次は長くなりそうなのでここで一度切ります。

皆さんは百代の今回の告白、どう思いますか?ロマンチックでしょうか?それともやばい奴案件?作者的には男がやったらやばい奴案件な気がします。女性はどう思われるでしょうか?良ければ感想で教えてください。

では次回!
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