真剣で衛宮士郎を愛しなさい!   作:Marthe

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見てくださった皆様の感想がうれしくて勢いで書いてしまいました。時間はまた少し飛び、ようやく士郎がクラスの一員として認められてきたそんな矢先に、という感じです。


赤髪の弓兵

日が長くなり暖かい陽気がつづくある日のF組。

 

「次の体育S組と合同だってよ」

 

「げぇ・・・」

 

合同授業と聞いて嫌悪感を口にするヨンパチ。

 

「前にやった時は決闘になったもんなぁ・・・今回は何をするんかね?」

 

「どんな種目になっても結局決闘になりそうな気がする・・・」

 

「そん時は頼むぜ、知力100」

 

「まかせろ武力100」

 

そんな軽口を言いながら更衣室にて着替える男性陣。

 

「そいや士郎、お前何が得意なんだ?」

 

登校を始めて随分立ち、名前で呼び合うようになったキャップは士郎にそう尋ねた。

 

「一応弓の心得があるくらいかな。翔一は?」

 

「断然走ることだな!スピードなら誰にもまけないぜ!」

 

「それはいいな。合同ってことならマラソンとか走り込みだといいな」

 

そんな普通の会話をしてグラウンドに出る。すると女子は既に着替終えて担当であるルー師範代(先生)のもとに集まっていた。

 

「ハイはーい!今日の体育は射撃だよー!弓とライフルがあるから好きな方で組み分けするヨー!」

 

「はぁ?」

 

思わず疑問符を口にする士郎。体育で射撃。しかもライフルと弓とは。普通は陸上競技のいずれかだろうが、と言いたくなるところである。

 

「射撃かぁ・・・」

 

「ライフルと弓って・・・ライフルはともかく弓引ける奴いる?」

 

ふるふると首を横に振る男一同。

 

「しかもこれどのくらいまで測るんだよ・・・」

 

設定されている的はグラウンドの端から端まで準備されているようであり、相当な距離がある。

 

「あーこれあれか。前に京達がS組と決闘したからか?」

 

「体育で決闘?」

 

ようやく馴染んできたとはいえ、いまだこの学園の奇天烈具合に時折ついていけない士郎が大和の言葉に反応する。

 

「そーいやそんなこともあったな」

 

「あの時はライフルだけだった気がするが・・・」

 

「多分弓のほうが得意な奴がいるからじゃない?京とか」

 

確かにとうなずく一同。それを見てなんだか遠い眼をしてしまう士郎。

 

(本当に早まったかもしれない・・・)

 

「まぁなんだ・・・元気出せよ」

 

「源・・・」

 

ポスリと肩を叩かれて我に返る士郎。この健康系ヤンキーと言われる源忠勝だが妙に士郎と気が合い普段から一緒にいることが多い。

 

「よーし!今回も勝つわよー!」

 

「その意見には自分も同意だ」

 

「この勝利を大和に捧げる。だか「お友達で」むぅ・・・」

 

どこかあきらめムードの男子とは違い、おせおせムードの女子たち。

 

「雪辱戦というわけか・・・今度こそあの猿共めに一泡吹かせてやるのじゃ」

 

「まったく・・・こんな玩具の射撃など何の役に立つのか」

 

そう言いながら手元でライフルを解体するマルギッテ。

 

「コラー!銃を解体しナイ!」

 

「すぐに元通りになります。・・・後から不備が見つかっても困りますので」

 

そう言って解体したライフルを元に戻すマルギッテ。軍人の彼女からすればお手の物だろう。だが・・・

 

「・・・。」

 

「・・・なんか士郎の方見てない?」

 

「見てるな」

 

「お前ー!いつからあんな美人と視線で語り合う仲になってんだよー!」

 

ギャーギャーと騒ぐヨンパチだが、士郎はこの時またもやハメられたのではと思考を走らせていた。

 

(登校初日に剣と弓のことを話したからか?剣はまだしも弓か・・・)

 

担当教師であるルーは学園長、川神鉄心のもう一つの顔、武道の川神院の師範代ということが分かっている。ここの所妙に探りを入れられている感が否めない。

 

(マルギッテ・エーベルバッハ・・・はまぁ、クリスのことで目の敵にされているんだろう。だが―――)

 

チリッと背後から感じる殺気にどうするか。

 

(九鬼の人間だな。それも相当の手練れ)

 

この世界における巨大企業九鬼財閥。その跡取り息子と護衛役の女性(子じゃない)に挨拶されて以来度々感じるこの微細な殺気。わざと自分に向かって飛ばしてきているのを無視し続けているのだが、

 

(監視の目が止まらないのはある意味慣れているんだが・・・)

 

正直、やりづらくてたまらないのだ。

 

「それじゃあハジメルよー!」

 

(適当なところで留めておこう)

 

そう結論付けて弓を取る。

 

 

だが士郎はこの時決定的なミスを犯した。何でもないように弓を取ってしまったが実力を隠すならばライフルを取るべき(・・・・・・・・・)だったのだ。これは本人の異常性。衛宮士郎の弓に対する意識が足りていなかったのが原因だ。

 

パスン!

 

「ぬぁー!外した!」

 

「うう~んやっぱり難しいねぇ」

 

開始して数発。男子は早々に的から外し始めていた。

 

「素人ならこんなもんだろ」

 

「まぁうちの戦力はワン子や京だからなぁ」

 

圧倒的に武士娘のほうが実力が上なので彼女らは既に男子から遠く離れたところにいる。

 

タン!

 

そんな中一人だけ。女子と男子の中間で弓を射る男がいた。誰あろう衛宮士郎である。

 

「いやーすげぇな弓が得意とは言ってたけどよ」

 

ほぼすべての男子が脱落した中一人だけ、的を正確に射抜いていた。

 

「京とどっちが上手いんだろうな」

 

「そりゃあ京の圧勝だろ。場所も女子ほど離れてねぇしそろそろ外すんじゃね?」

 

そんなのんびりとした会話をする男子陣。

 

対する女子陣は―――

 

「士郎君すごいわねー」

 

「男子であそこまでできる系いなくね?」

 

「ていうか佇まいからして並の腕じゃないぞ」

 

射法八節という言葉がある。弓を射る上での動作を、足踏み、胴造り、弓構え、打起し、引分け、会、離れ、残心という八つに分けるのである。

 

とりわけ彼の弓はこの八節が恐ろしく研ぎ澄まされていた。

 

タン!

 

と、また彼の矢が的を射るその様子に焦りはない。まるでただ虚空を見つめるように空虚。

 

(ただもんじゃねーな)

 

その様子を見ていた忍足あずみは思わず冷や汗を流す。わかるのだ。彼が弓を弾く前から射るのが。的の中央に矢が突き立つのが。

 

(あれは外さねぇ。すくなくとも、あたいらの所でも外さねぇ)

 

彼は自分たちより前で射っているがそれは所詮手抜きだろう。そう確信させるほどに彼の弓は異常だった。

 

そこに、

 

(忍足あずみ)

 

(!?ヒューム!?)

 

突然の声に衛宮士郎に注視していたあずみがぴくりと肩を動かす。

 

(奴を推し量れ。奴め相当に手を抜いているぞ。命令だ)

 

 

そう聞いたあずみは思考する。この状況であいつの手中を図るには―――

 

「先生☆!」

 

「ンー?ナンだい?」

 

「このままじゃ埒があきませんしあそこの(・・・・)衛宮士郎君を含めてクラス別対抗などいかがでしょう☆」

 

相変わらず勝負の様相を見せていたのを機に彼を勝負へと引きずりこんだ。

 

「イイネ!僕も彼の実力が気になっていたトコロだしそうしようカ!」

 

それを快諾するルー。彼もまた衛宮士郎を探る一人だった。

 

 

 

 

「おい、また対抗戦だってよ!」

 

「やるからにはかーつ!」

 

「焦っちゃ駄目だよワン子」

 

「うむ。焦りは禁物だな。とくに長距離射撃はほんの少しのズレがあらぬ方へ行ってしまう」

 

そうして始まる対抗戦。F組男子は不得手の者が多く軒並みすぐに外れる。S組男子も健闘するが女子ほどは振るわない。

 

そんな中、

 

タン!

 

的を射る音が響く。それを行っているのは衛宮士郎だった。

 

「ひゅほほ。猿にしてはなかなかやるではないか。だがこの距離ならば・・・!」

 

妙な笑い声をあげながら着物姿で弓を射る不死川心。

 

「うーん。ギリギリセーフだねぇ・・・心にしてはよくやったと思うよ!」

 

「にしてはとはなんじゃにしてはとはー!」

 

それをおちょくる榊原小雪。

 

「でもぉ。今回は一人勝ちかなぁ」

 

「榊原小雪。それはどういうことですか?」

 

一人勝ち。その言葉に違和感を覚えたマルギッテが問う。

 

「だって―――彼、外さないよ?」

 

「なにを―――」

 

瞬間、空気が変わった。

 

タン!

 

また的を射る音。それまでは賑やかになっていた周囲がいつの間にか静まり返っていた。

 

「なにあれ・・・」

 

「いつ構えたんだ・・・・!?」

 

それはあまりに自然に。まるで風景に溶け込むように。番え、射られた矢はやはり中心を射抜く。

 

「京・・・!京・・・!今の何!?」

 

「まるで当たるのが最初から分かってたみたいだったぞ!?」

 

「・・・。」

 

ワン子が京の袖を引く。だが、彼女も訳が分からないと首を振った。ただ一つわかるのは

 

(((こいつ)の人本物だ・・・!))

 

そこからはもはやクラス対抗ではなく衛宮士郎対他の生徒という体を擁してきた。

 

「ちっ!ここまでか」

 

忍足あずみが外す。

 

タン!

 

「ぬぬぬ・・・ダメ!」

 

一子が外す。

 

タン!

 

「むぬー・・・猿のくせに・・・にょわあああ!」

 

不死川心が外す。

 

 

その後も彼の矢は的を射続ける。その顔に焦りはない。ただ空虚な瞳があるのみ。

 

クリスが外し、

 

「この距離では・・・!」

 

ついにマルギッテが外した。

 

残るは京と衛宮士郎のみ。

 

「この勝負F組ノー「先生」」

 

勝利を告げようとしたルーを京が止めた。

 

「京・・・?」

 

「まだ終わってないです」

 

そういう京の額に一滴の汗が垂れる。

 

「クラス対抗ということならすでに勝利を収めているが?」

 

そう言う士郎に京は頭を振る。

 

「うん。でも―――」

 

タン!

 

京も的の真ん中に当てる。だがその表情は険しい。

 

「コレは負けられないから」

 

その姿を見た士郎はフッと微笑むと、

 

「了解した。ならば全霊でお相手しよう」

 

彼もまた矢を射る。

 

矢は的へ。それが当たり前のように吸い込まれる。

 

「京が真剣になってるぞ・・・!?」

 

「京・・・」

 

京が射る。そして士郎が射る。

 

それを何度も何度も繰り返し、ついに

 

「・・・。」

 

京が、中央を外した。

 

それを

 

タン!

 

まるで意も解さぬように。彼の矢が中央を射抜いた。

 

「いい腕だな」

 

「負けた・・・」

 

スッと彼が弓を下す。

 

「先生」

 

そして息をするのも忘れていたように。ルーははっと我を取り戻し、

 

「クラス対抗はF組ノ勝利!」

 

そう告げた。

 




勢いに任せて書いてしまったのでなんだか不完全燃焼気味です。今回は彼の異常性を書きたかったんですが伝わったでしょうか・・・作者が読み取った衛宮士郎の弓に対する異常性はやはり当たると分かっているから当たるというぶっ飛んだ意識なのかなと思います。もちろんそれが間違った魔術鍛錬の副産物というのは理解しているのですが。

感想を書いてくださったみなさんありがとうございます。未熟者ですが誠心誠意書いていきたいと思うのでよろしくお願いします。
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