真剣で衛宮士郎を愛しなさい!   作:Marthe

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皆さんこんばにちわ。新調したメカニカルキーボードがカチカチなるのが楽しい作者です。

今回は一応の決着になる・・・かな。士郎の奮戦を見届けてください。

では!


その名は――――

「ハッ!」

 

「やああ!」

 

「そおい!」

 

夫婦剣が、刀が、薙刀が、錫杖が舞い踊る。

 

援軍として現れた揚羽率いる従者部隊と、マルギッテ達ドイツ軍。そして大和達風間ファミリーに林冲と清楚によって、魔術書から絶えず召喚される影が蹂躙される。

 

「んは!呂布はこんな武器を振るっていたのか!実にいい!爽快だ!」

 

「おい!ギアを上げ過ぎるな!敵はまだまだ湧くんだぞ!」

 

気炎万丈とはこのことか。清楚は己の力を惜しみなく振るって一度に数十体の影を葬り去る。

 

「やるなー清楚ちゃん。私も負けられないな!」

 

ゴヒュン!と巨大なハルバードを振るって百代は獰猛な笑顔を浮かべる。

 

この影と戦いだしてついには夜が明けた。士郎が素早く狙いは自分だと判断してこの源氏大戦の行われた山に潜伏したので街中にはもう影はいないらしい。

 

しかしその代わりに山中はこの影共で溢れかえっており、四方八方から敵が絶えずやってくる。

 

「由紀江嬢!一子殿!時間です!一度撤退を!」

 

「わかりました」

 

「わかったわ」

 

言葉少なく二人が目の前の一体を切り裂いて戦線を離脱する。

 

百代や清楚、レオニダスはまだまだいけるが、彼女等は休息を挟まねば危うい。なにせ相手は無尽蔵。元凶を仕留めるまで湧き続けるのだから常人の体力では持たない。

 

「義経嬢は大丈夫ですか!」

 

「はい!さっき仮眠を取ったので大丈夫です!」

 

「私も眠いけど大丈夫だよ。それより大将、本当に大丈夫?」

 

大丈夫だ、とだけ返ってくる言葉に弁慶は驚愕する。

 

(大将は私達が来る前から戦い続けてるんだろう?一体どれだけ無理するつもりなのさ)

 

士郎自身が囮となり、影の軍勢の出どころを探るという作戦がとられてから士郎は一度も休息をとっていない。

 

それもそのはず。影は元来、彼しか狙わないので必然的に士郎は戦い続けなければならない。

 

百代達に攻撃しているのはあくまで攻撃されたからであり、何もしていなければ士郎だけを狙う。

 

その特性を利用して戦うすべのないものは山中のどこかにある魔術書の捜索に当たっていた。由紀江と一子を除くファミリーも捜索側である。

 

『揚羽さん、そちらはどうだ?』

 

戦いながら士郎の念話が揚羽に届く。

 

『まだ良い報告は出来ぬ。捜索できたのは約三割と言った所だ』

 

「・・・。」

 

それは絶望的な数字だった。このまま戦い続けることは可能かもしれないが、士郎とて人間。いずれ体力の限界はくる。

 

その前に見つけなければ勝機は無いというのにこれだけ戦って三割とは。

 

(体力はまだ持つ。だがこのままではいずれ押し切られるな)

 

最上旭が言うには、魔術師を核として何かを顕現させるものだろうという事なので士郎が取り込まれれば一巻の終わりだ。

 

何が出てくるにせよ、ろくでもないものなのは確信できる。

 

(もう少し効率を上げる方法は・・・)

 

あるにはある。だがそれは使えば自分はその後動けなくなってしまう。ならば使用できない。ここで衛宮士郎の敗北は全ての敗北を意味する。

 

そんな時だった。

 

「顕現の弐・持国天」

 

ゴファン!!!という音と共に影共が数百体吹き飛ばされ空白が出来た。

 

「なんだ?今のは・・・」

 

「ジジイ!」

 

「おうおうやっておるの」

 

「学園長・・・」

 

「衛宮君の危機と聞いてわしも来ちゃったぞい」

 

「学園はどうされたんです?」

 

「不審者出没という事で休校にしたわい。現に義経ちゃんが襲われとるしのう」

 

何度も何度も手のようなものが叩き飛ばしている。ダメージは無いだろうが隊列が崩れるので援護としては最適だ。

 

「しかし最上幽斎とやらも余計なことをしてくれたもんじゃ。これが川神に対する試練?わし、割と本気で怒っちゃったぞい」

 

パパン!と影が吹き飛ばされる。やっていることは痛快だが、その表情は実に険しいものとなっている。

 

「おいジジイ!こいつらに気の技は効かないぞ!」

 

「わかっておるわい。まるで木偶人形でも打ち据えているかのような感触。こりゃわしの技は通じんのう」

 

しかし彼は撤退する気は無いようだった。

 

「衛宮君。わしにも武器をくれるかの。清楚ちゃんと同じ奴でいいぞい」

 

――――投影、開始(トレース・オン)

 

返事はなく、行動によって返されるこの空気に鉄心も獰猛な顔を覗かせた。

 

「ふぉふぉ!良い武器じゃのう。さあこの翁、まだまだ現役なの知らしめちゃおうかの」

 

さらに影の殲滅速度が上がる。それまでぎりぎりを維持していたのが広い空間が出来るようになった。

 

「ジジイの本気とかレアだなー。しかも武器使ってるの初めて見たぞ」

 

「なにも素手だけで武神と呼ばれたわけではない。武器の扱いもそれなりに学んだわい。その点、モモは未熟じゃのう」

 

「うるさい!・・・でも正直、単純な武器で助かってるよ」

 

ハルバードはその巨大さと重量で叩き切るか叩き潰す武器である。使い方は至極単純だからこそ、百代は振り回すだけで助かっている。

 

「衛宮君。今川神院の修行僧も総出で例の魔術本を探しておる。もう少しの辛抱じゃ」

 

「・・・なぜそこまでしてくれるんです?」

 

士郎には分からなかった。わざわざ危険を冒してまで自分なんかを助けに来てくれるのが。

 

「それはお主自身に聞いてみたらどうじゃ?この中の誰かが君と同じ状況なら?」

 

「もちろん助けに・・・あ」

 

そこまで言って士郎は納得出来てしまった。

 

「そういうことじゃよ。困っておるものを助けるのに理由などいらん。じゃが、君には沢山のものをもらった。今ももらい続けておる。その恩に報いたいというのもあるのう」

 

「――――」

 

士郎はこのこみ上げる感情が何なのか理解できなかった。だが決して悪くないものだとも理解できた。

 

「感謝します」

 

「ふぉふぉ!君は本当に意固地じゃのう・・・じゃがそれも君の美徳かの。さあ、まだ舞は始まったばかり。どんどんいくぞい」

 

「はい!」

 

戦いは激化の一途を辿るが、思わぬ援軍に戦いは支えられていた。

 

 

――――interlude――――

 

士郎達が激闘を繰り広げている中、大和達も慎重に山の中を探していた。

 

「本当にやべぇな・・・周りが影人形だらけだぜ・・・」

 

「攻撃しなければ襲われないと分かっていても恐ろしいな・・・」

 

「お嬢様。絶対にレイピアを抜かないようにしてください。私のトンファーでも防ぐのは難しいです」

 

護衛としてマルギッテがついてきているが彼女の存在はあくまで保険に過ぎない。神秘の宿った武器を持たない彼らでは太刀打ちできないのだから。

 

「しかしキャップよ。どこに向かって歩いてんだ?」

 

「んー・・・お宝の気配つーか・・・なんかあるような気がして歩いてる」

 

「この後に及んでお宝かよ!つってもそれが目的のものの可能性もあるしな」

 

『モロ、俺たちがいるところは既に捜索されたか?』

 

『ううん。まだ手付かずだよ。大分奥まで・・・しかもグネグネ歩いてるけど大丈夫?』

 

『正直、携帯のGPSが無いと帰れなくなりそうだな』

 

そのくらい大和達は山の奥地へと足を踏みいれていた。場所としては源氏大戦の行われた隣の山付近だ。

 

「待って」

 

京の言葉に一同が止まった。

 

「どうした京?」

 

「あそこ。影が集まってる」

 

洞窟のような物がある場所に多数の影が集まっていた。

 

「もしかして・・・」

 

「当りじゃね?」

 

まるで守るように洞窟の前からピクリとも動かない様子は目的のものを守っているように思えた。

 

「よし、じゃあ中に――――」

 

「待ちなさい」

 

意気揚々と突撃しようとするキャップの襟首をマルギッテが掴んだ。

 

「ゲホ、なにすんだよー」

 

「声は押さえなさい。あそこにいる個体は我々にも攻撃してくる可能性があります」

 

「マルギッテの言う通りだと思う。守衛が何もせず通してくれるとは思えない」

 

「・・・試してみよう」

 

そう言って大和が近くの小石を拾ってかなり遠くに投げた。

 

ガサッ

 

「!!!」

 

影が物凄いスピードで石を投げた方に走っていった。

 

「・・・まずいな」

 

石ころにもこの反応だ。間違いなく自分達が行けば戦闘になる。

 

しかも、

 

「おいおい、居なくなったと思ったら奥からすげえ出てきたぞ!」

 

わらわらと洞窟の奥から影たちが大量に出てきた。

 

「やべぇ!一旦逃げるぞ!」

 

影で溢れて逃げられなくなる前に大和達は脱出した。

 

「ふう・・・まさか小石一つでああなるなんて・・・」

 

「大和にしては迂闊だったんじゃねぇか?」

 

ひやりとしたガクトが責め気味に言うが、マルギッテが否定した。

 

「直江大和の確認は間違ったものではありませんでした。ですがあの量を見るに洞窟内は影で溢れていることでしょう」

 

「マジか・・・どうする?」

 

「誰かが囮になる・・・のは禁止だな。流石に危険度が高すぎる」

 

うーん、と悩む一同だが、マルギッテはすぐに念話で状況報告をしていた。

 

『こちらマルギッテ。影の集まっている洞窟を発見しました。ですが守衛の影が我々にも反応します』

 

『ようやく見つけたか!落ち着いて対処するとしよう。守衛は何体だ?』

 

『二体ほどですが反応すると奥から影が無数に現れます。囮は無理かと』

 

『それに、うまく入れたとしても戦いながら道を切り開く必要がありそうですね・・・』

 

『由紀江の言う通りだ。俺がそこに行く。戦線をそこまで押し上げよう』

 

『うむ。では衛宮は一時休め。本丸打倒にその疲労では心もとない。川神鉄心と百代、義経、弁慶でかく乱するのだ』

 

『いいでしょう。では全軍に通達を・・・』

 

『待ってくれ。皆が大丈夫ならもう攻めた方がいい』

 

士郎が焦りを含んだ声で言った。

 

『またお前は無理を『違う』・・・ではなんだ』

 

『魔術書は最上幽斎の生命力を吸い上げていると聞いた。こいつらが出現してから一日は経つ。このままだと最上幽斎の命が危ない』

 

『はぁ・・・お前はこの事件の発端にも慈悲をかけるか』

 

呆れた、というように言う揚羽に皆も同意だった。

 

『被害は無いに越したことは無い。だがそれだけじゃない。この手の術式は術者の手を離れるとどんな反応をするかわからん。万が一無差別に人を襲うようになったら目も当てられない』

 

『でも士郎君本当に大丈夫なの?もうまる一日戦い続けてるんだよ?』

 

心配そうな義経の声に士郎は力強く頷いた。

 

『問題ない。皆が来てくれたおかげで大分楽が出来ている。やるならこの機会しかない』

 

いずれにしろ体力は削られていくのだからすぐにでも攻めるべきだと士郎は考えていた。

 

『・・・よかろう。だが衛宮、その代り武器をいくつか提供しろ。戦力としては申し分ないが万が一の場合自衛する手段がほしい』

 

それを聞いた士郎は遂に最後の切り札を使うことを決心した。

 

『いいだろう。ただし特殊な形で貸し出す。一度に大量の武器が現れるからそれを使用してほしい』

 

相手が無限ならばこちらも無限をぶつけるまで。

 

士郎は己の秘奥を顕現させることを決意した。

 

――――interlude out――――

 

マルギッテの報告からさらに夕刻。士郎達は戦いながら大和達の見つけた洞窟を目指していた。

 

「マスター、無理をなさらず・・・」

 

「――――」

 

レオニダスの言葉にも何も返さないまま士郎は戦い続ける。

 

本当は返事をする余裕もないのだ。それでも彼は、これ以上の悲劇が起きないようにと戦い続ける。

 

戦闘しながらの移動はゆっくりとしたものにならざるを得ない。一息に向かおうものなら全ての影が攻撃態勢になる可能性すらある。その為に、移動の間に一度、修行僧と従者部隊を安全区域まで下げていた。

 

「士郎先輩、あれが例の洞窟です!」

 

由紀江の声にちらりとそちらを見る。確かに洞窟の中から大量の影が湧き出ていた。

 

「百代、学園長。5秒でいい時間を作ってくれ」

 

「まかせろ!」

 

「あいわかった」

 

「カウントだ!5秒後に突撃するぞ!!」

 

そう言って士郎は黒い洋弓を投影し、

 

――――I am the bone of my sword.(我が骨子は捻じれ狂う)

 

捻じれた一角剣を弓に番える。

 

それは総理官邸前で巨大ロボを穿った彼の得意とする武装。

 

「5!4!」

 

揚羽の響き渡る声でカウントがなされる。そして螺旋剣に魔力が込められる。

 

「3!2!1!」

 

0。その声と共に、

 

「――――“偽・螺旋剣”(カラドボルグⅡ)ッ!」

 

豪!と矢が放たれた。

 

「「「!!!」」」

 

影たちは狭い空間に溢れていたため、一体残らず螺旋剣の餌食になった。

 

「突撃ッ!!!」

 

一斉に洞窟へと駆け出す士郎達。影たちも狙いを看破したのか何とか回り込もうとしてくるが、

 

「顕現の弐・持国天!」

 

パァン!!!と一気に蹴散らされる。

 

「今じゃ!」

 

「――――!」

 

士郎は一気に洞窟内へと駆けこむ。この機を逃せば自分に後はない。そう感じているからだ。

 

「影だわ!」

 

しかし流石源流。すぐさま影たちが出てくる。

 

「足を止めるな!!影は適当にあしらえ!」

 

――――工程完了。全投影、待機(ロールアウト・バレットクリア)

 

士郎の背後に27の剣弾が待機する。

 

「――――停止解凍、全投影連続層写(フリーズアウト・ソードバレルフルオープン)………!」

 

 

ダンダンダンッ!!!

 

強烈な一撃が影を蹴散らしていく。

 

「士郎!あそこだ!」

 

もうもうと立ち込めるような影を一掃した先に見えたのは魔法陣を展開する魔術書。

 

――――投影、開始(トレース・オン)

 

投影するはかの裏切りの魔女の宝具。あらゆる魔術を初期化するその効果が効けばこの騒動は終わりを告げる。

 

「――――破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)!!」

 

魔術書に向かって士郎は宝具を振り下ろした。

 

 

 

 

――――interlude――――

 

九鬼の病院。ポ、ポ、と心音計が静かな部屋に鳴り響く。

 

「――――」

 

最上旭はじっと、父親の手を握っていた。

 

「お父様・・・」

 

彼は自分の勝手でこうなっている。それは分かるものの自分に愛情を注いでくれたのは事実。

 

もちろん暁光計画なんていう自分を犠牲にする計画を練ったりもしたけれど。それでも父なのだ。

 

「旭・・・そこにいるんだね・・・」

 

「お父様・・・!」

 

眠っていた最上幽斎が突然口を開いた。

 

「すまないね・・・僕はこの試練を乗り越えられそうにない・・・」

 

「嫌・・・!そんなこと言わないでお父様!」

 

「はは・・・旭を犠牲にしようとした僕が・・・先に天に召されるなんてね・・・本当にバカなことをしたものだ・・・」

 

もはや彼の目には何も映っていないのだろう。ぼうっと天井を見つめる目は白く濁っていた。

 

「まだよ。まだ士郎は戦い続けてる!だからお父様も・・・!」

 

「ああ・・・そう・・・だね・・・」

 

ピー、という音が無情にも鳴り響いた。

 

「お父様ー--!!!」

 

――――interlude out――――

 

士郎は確かにルールブレイカーを振り下ろした。だが、

 

ドクンッ!

 

「!?」

 

洞窟に響き渡るほどの鼓動が鳴り響く。そして強烈な衝撃波が士郎の体を打ち据えた。

 

「ぐはっ・・・!」

 

「「「士郎(衛宮君)!!!」」」

 

ドガン!と壁面に叩きつけられる士郎。壁面には罅が入り、如何に強烈だったか物語っている。

 

「士郎!しっかりしろ!」

 

「ぐっ・・・」

 

めり込んだ体がクタリと力を失い倒れる。

 

「士郎先輩!!」

 

「士郎!!」

 

それまで援護に回っていた由紀江と清楚も駆け寄る。

 

「どうしたことじゃ・・・この鼓動は・・・」

 

「恐らく・・・最上幽斎が死んだ」

 

「士郎!!」

 

ぐったりとしながらなんとか立ち上がる士郎。その目に映ったのは・・・

 

「聖・・・杯・・・?」

 

まるで今まさに出来上がったような綺麗な聖杯が宙に浮かび上がっていた。

 

(まさか、聖杯を鍛造する術式だったのか・・・?)

 

だがそれはおかしい。人一人、それも魔術師でもない人間の生命力を吸い上げたとて、聖杯は完成しない。ではあの聖杯の形をしたものは何なのか。

 

「まずい・・・!脱出だ!」

 

士郎の言葉に鉄心を殿として胎動で崩れる洞窟を何とかはい出る士郎達。

 

『無事か衛宮!』

 

『無事とは言い難いな・・・揚羽さん最上幽斎は・・・』

 

『・・・たった今、心停止したそうだ。だがまだあきらめてはおらぬ!必死の蘇生措置が行われている!お前達も諦めるな!』

 

その言葉にクッと士郎は笑った。

 

「諦める・・・?私は生憎諦めの悪い人間でね。まだあきらめてなどいないさ」

 

百代に肩を借りていた士郎がある言葉をつぶやく。

 

「――――I am the bone of my sword.(体は剣で出来ている)

 

傍でその言葉を聞いた百代は士郎を見て驚愕した。

 

「士郎・・・!お前、髪が・・・!」

 

「――――Steel is my body, and fire is my blood(血潮は鉄で心は硝子)

 

ゆっくりと。まるで赤髪を侵食するように銀髪へと変わっていく。

 

「――――I have created over a thousand blades.(幾たびの戦場を越えて不敗)

 

「士郎!姉さん、士郎は一体何を――――」

 

駆けつけた大和が変わりゆく士郎を見て百代に問うが百代もわからないというように首を振る。

 

「わからないんだ!ただ士郎が呪文みたいのを唱えてて・・・」

 

「――――Unaware of loss.(ただ一度の敗走もなく、) Nor aware of gain(ただ一度の勝利もなし)

 

「モモ!衛宮君を守るのじゃ!周りの影はこちらで何とかする!」

 

そう言って鉄心はより一層激しく舞う。

 

「――――With stood pain to create weapons.(担い手はここに独り)

            waiting for one's arrival(剣の丘で鉄を鍛つ)

 

 

「士郎!」

 

百代の手をすり抜けて彼に影の矢が左腕に突き刺さる。しかしそれでも彼はただじっと、

 

「――――I have no regrets.This is the only path(ならば、我が生涯に 意味は不要ず)

 

 

そうして最後の句が読み上げられる。彼を象徴する魔術。その名は――――

 

 

 

 

 

「――――My whole life was “unlimited blade works”(この体は、無限の剣で出来ていた)

 

 

 

 

瞬間、炎が走った。山一帯を包み込むように生じた炎は輝きを増し、一同の眼を眩ませる。

 

「むむ・・・眩しい・・・」

 

「おい犬!早く目を開け!」

 

クリスの慌てた声に一子は目を擦って何とか目を見開いた。そして、

 

「・・・え?」

 

全く見たこともない景色に心を奪われた。

 

 

 

――――interlude――――

 

「電気ショック行きます!」

 

バチン!と最上幽斎の干からびた体が跳ねる。しかし、心音計は以前鼓動を記録しない。

 

「もう一度だ!」

 

必死の心肺蘇生が行われている中、最上旭は両手を合わせて天に、士郎に祈っていた。

 

(どうか、どうかお父様を助けて・・・!)

 

電気ショックによる心臓マッサージは3回までとされているが今現状行われているのは一回目。そして二回目がバチン、という音共に鳴り響く。

 

「心肺は!」

 

「復帰しません!」

 

残されたのはあと一回。あと一回で蘇生しなければ・・・

 

「いくぞ!」

 

(士郎!)

 

バチン!と最後の電気ショックが鳴り響いた。

 

ピ・・・ピ・・・

 

「心肺戻りました!!!」

 

「よし!」

 

まだ緊張は残っているが最上幽斎は何とか持ち直した。

 

「士郎・・・」

 

唯一それがどういうことか分かっている旭は崩れ落ちるように涙を流した。

 

「ありがとう・・・!!!」

 

――――interlude out――――

 

 

それは見たことのない景色だった。一面に剣が突き立つ果ての無い荒野。黄金の朝焼けの中立つのは衛宮士郎。

 

「・・・衛宮。これはなんだ」

 

現実離れした光景に揚羽が呆然と問う。

 

「――――固有結界・無限の剣製。己の心象風景を現実に侵食させる魔術。俺の魔術はそれが武器ならば複製しここに貯蔵する。それだけが俺に許された魔術だ」

 

九鬼も川神院も風間ファミリーも、その光景に絶句していた。

 

「心象風景の具現化・・・」

 

「これが士郎の本当の魔術・・・」

 

「なんという・・・なんという光景じゃ・・・」

 

剣の丘から影共を見下ろす士郎。――――その髪の毛は全て銀髪へと塗り替わっていた。

 

「ご覧の通り。貴様らが挑むのは無限の剣。剣戟の極致」

 

手近な剣を引き抜くと共に荒野に突き刺さる剣が号令を待つように中空へ浮かび上がる。

 

「恐れずしてかかってこいッ!!!」

 

その言葉と共に士郎は荒野を駆ける。

 

ダンダンダンッ!!!

 

剣の豪雨が降る中士郎は戦場を駆ける。砕けた剣に目もくれず、全ての剣と共に前へと進む。

 

「マスター・・・まさか貴方が・・・このような戦士であったとは・・・!」

 

レオニダスは歓喜に振るえていた。己が仕えたマスターは、何処までも誇り高い男なのだと。

 

「ならば私も駆けましょう。この剣の大地を共に!!!」

 

レオニダスは駆け抜けていく士郎の背を追う。

 

「ま、まて!お主まで行っては・・・!」

 

「果て無き荒野に並び立つ剣か・・・」

 

「なあ。これあれだよな」

 

「そうだね。あれだね」

 

「あれだな」

 

彼らは知っている。この光景を。このあり方を。

 

到達地点もなく、歩くはずの道もない。ただただなにもないこの荒野をただ前へと歩いていく。通ってきた場所に誓いという剣を突き立てて。

 

風間ファミリーがゆっくりと前へ出る。

 

「上等じゃないか。駆け抜けるぞ!お前達!」

 

「待て百代!ここは何処だ!?我らは」

 

「揚羽さんともあろう人が忘れたんですか?」

 

ニィと獰猛な笑顔を浮かべて振り返る。

 

「何をだ!」

 

「「「川神魂ッ!!!」」」

 

ファミリー達も飛び出していく。

 

「行くぞお前達!武器はそこらに好きなだけある!私達も士郎の後を――――」

 

追う。きっとそう言いかけた百代に赤い背中が映った。その前進していく背中が言っていた。

 

 

――――“ついてこれるか?”

 

 

「おいおい言ってくれるじゃないか!」

 

百代がファミリーを置いて真っ先に士郎に並び立つ。

 

「百代?」

 

「この私を置いていこうなんて100年早い!」

 

「僭越ながら私も。剣ならば負けません!」

 

いつの間に間合いをつめたのか。由紀江も士郎の隣へ。

 

「由紀江・・・」

 

「士郎先輩。伝えたいことは山ほど。でも今は――――」

 

由紀江が刀を構える。

 

「共にこの剣戟の極致を駆け抜けましょう!」

 

「ああ!」

 

影を切り裂き吹き飛ばし、叩き潰す。進む先にあるのは黄金の杯。その嘘で塗りたくられた黄金を破壊する・・・!

 

「モモ先輩行っちまったよ」

 

「まゆっちもだね」

 

「キャップ?俺らは・・・」

 

「すげぇ・・・」

 

フルフルとキャップは震えていた。

 

「きゃ、キャップ?」

 

「すげぇ!すげぇぞ士郎!ワクワクが止まらねぇ!俺も行くぞー--!!!」

 

「あ!こらまてキャップ!」

 

そう言ってキャップとガクトも走って行ってしまった。

 

「ああ!ったく。リーダーが無策で突っ込むなよもう・・・」

 

「まったくだよ・・・あれ、大和」

 

「なんだ・・・おわ!?」

 

いつの間にか大和の目の前に鋼の剣が浮いていた。

 

「なんだ?手に取れってか?」

 

恐る恐る手を伸ばして柄を握った瞬間剣は浮力を失い、それを支えられなかった大和は尻もちを付いた。

 

「あいた!本物はやっぱり重いな・・・」

 

でもなぜか大和はこの剣を持つべきだと思っていた。

 

「おりゃああ!!!」

 

気合を入れて剣を引き抜き立つ。そうすると、

 

「剣が!」

 

ふわりと辺りにある剣が浮かび上がる。

 

「そうか!これは直接切り結ぶんじゃなくて・・・」

 

フオン、と一振りすると浮かび上がった剣達も連動するように動く。これは士郎が準備した大和が戦うための手段。

 

「でも重い・・・モロ!手伝ってくれ!」

 

「うん!」

 

「これなら自分も戦える!行くぞ犬!」

 

クリスも手近にあったレイピアを引き抜き、突撃の構えを取る。

 

「犬じゃないわ!猛犬よー--!!!」

 

一子も己の薙刀を手に突撃する。

 

「クリスとワン子も行っちゃった。私は・・・」

 

京が呟いて足元を見ると、

 

「だよね」

 

これを使えとばかりに黒い洋弓と鋼の矢が散らばっていた。

 

「私は士郎と違って剣は射れないんだけどなぁ・・・」

 

そう言いながらも鋼の矢を番えて放つ京。はたしてその矢は・・・

 

「ギィ!?」

 

見事影の眉間を射抜いた。

 

「これならいけるね。大和!右翼に影来てるよ!キャップ達が囲まれそう!!」

 

「わかった!モロ、ちょっと頑張れ!」

 

「う、うん!」

 

おりゃあああ!!!と高めを薙ぎ払う大和とモロ。

 

剣群は一本の剣になるように連なって影を薙ぎ払う。

 

「キャップ!囲まれるって・・・」

 

「お!?あれ乗れるんじゃね!?」

 

キャップとガクトは同時にジャンプし、連なった剣群に乗った。

 

「あっぶねぇ!!」

 

「いいぞー!俺は風になる!!うおおおお!!!」

 

楽しそうにはしゃぐキャップに困り顔のガクトであった。

 

 

 

 

一方義経達は・・・

 

 

「揚羽さん。義経も行きます」

 

彼女もまた士郎の背中を見て追いかけるつもりだった。

 

「・・・はぁ。止めても行くのだろう?良い。英雄の裁きをくれてやれ!!」

 

「はい!」

 

「なら私は殿かねぇ!」

 

ドン!と弁慶の錫杖が影を穿つ。

 

「んは!お前達!力が入ってないぞ!!」

 

さらに影をなぎ倒す清楚。誰もが、誰もが衛宮士郎の為に駆けてゆく。

 

タタタタ!!!と鋼の矢が降り注ぐ。

 

「与一!」

 

「行け!周りは俺が引き受ける!」

 

いつの間にか来ていた与一も黒い洋弓を手に参戦した。

 

「わしらもいっちゃおうかの!!」

 

「学園長!」

 

「ここが最後の踏ん張り時じゃ!気を引き締めよ!!!」

 

「「「応ッ!!!」」」

 

修行僧達も各々武器を引き抜いて戦いに赴く。

 

「やれやれ・・・元から指揮をとるのは無茶があったか」

 

「揚羽様、どうしますか?」

 

「そんなもの決まっている」

 

揚羽も獰猛に笑って言う。

 

「従者部隊展開せよ!武器はそこらじゅうにある!!好きに引き抜き戦え!」

 

「「「はい!!」」」

 

全ての人間が衛宮士郎の後に続き駆けてゆく。

 

その光景を遠坂達がみたらどう思うだろうか。誰かの為にと動く士郎。

 

たった一人。荒野を歩く男を。自分達の認めた仲間を。守るために、これからも共に歩むために。

 

「お前はいかぬのか?林冲、マルギッテ」

 

「行くつもりだった。でも私の役割も見つけてしまったから」

 

「そうですね。全ての者が突撃では守れるものも守れません」

 

マルギッテも近場の剣を抜き、林冲はヒュンと槍を振るって戦場を見る。

 

「私達の役目は押し負けそうなところへの加勢。士郎は最上幽斎も、この場にいる全ての人も守りたいんだろうから」

 

「お前は賢いな林冲。さぞ旦那を支えるのが上手い女になるだろう」

 

「ふん。同じ男を狙うお前に言われても嬉しくない」

 

憎まれ口を叩きながらも顔の赤い林冲だった。

 

 

キン!と士郎に迫る影を切り裂く由紀江。

 

「っ!士郎先輩無茶・・・!?」

 

その横顔に心臓を握られたような感覚に陥る。

 

(見えていない・・・!士郎先輩の目にはもう敵なんて映ってない!!)

 

「びっくりするだろ?」

 

前へ

 

「こういう奴なんだ」

 

前へ

 

「普段何でもするリアリストのくせにさ。認められないって。認めたくないって」

 

前へ!

 

「相手なんか見ちゃいない。敵なんか視界にすら入ってない」

 

前へ!!

 

「あるのは小さな想いだけ。それを否定したくなくて進むんだ」

 

前へ!!!

 

「士郎先輩らしいです」

 

前へ!!!!

 

「ははっ!でもさ、カッコイイだろう?」

 

「反則だと思います・・・」

 

お互いに顔を赤くして一心不乱に前へと進む士郎についていく。

 

そして・・・

 

「見えた!」

 

「行ってください!士郎先輩!!」

 

「うおおおお!!!」

 

遂に、偽りの黄金を切り裂いた。

 




はい。第二次決戦決着、と言った所でしょうか。感じるままに、思うままに書いたのでごちゃってないか心配です。

何気に学長が戦場で一緒に戦ってくれるのって珍しい気がします。めっちゃ強いんですけどね。

今回はもうエミヤ鳴りっぱなしで書かせてもらいましたやっぱりエミヤと無限の剣製の組み合わせは最高です・・・

決着はしましたがまだまだ続くのでよろしくお願いします。では!
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