今回は戦闘後の士郎と主に5人の絆を書いて行ければなと思います。最上パイセンももう大盤振る舞いですのでお見逃しなく!では!
――――interlude――――
この世のものとは思えない光景はほんのわずかな時間だけだった。それでも確かに残る死闘の感触があの戦いは、あの景色は偽りではなかったのだと訴える。
「・・・あれが衛宮の魔術の本当の姿か。常識外れにもほどがある」
撤収作業に取り掛かる従者達を見下ろしながら揚羽は言った。
あの後。衛宮士郎は固有結界と呼ばれる魔術が解かれたと同時に気を失い、九鬼の病院へと運ばれた。
最上幽斎も視力を失いはしたものの、一命はとりとめたとの報告があり、結果的に士郎の無茶は実を結んだ結果になった。
(だが、これからが厄介だ。最上幽斎の取り扱いもだが、この世界にも魔術たりえる存在が確かに存在していることが分かった)
それは士郎が危惧した通りの結果をもたらすこととなった。洞窟での急な活性化は最上幽斎が心停止した瞬間と一致している。
そして限定的ではあるが、一般人にも被害が及び、その成果は特定の一人だけが得られるという魔術師の本質ともいえる形も明らかとなった。
(我ながら魔術というものを甘く見ていたと言わざるを得ないな。そして衛宮の異常性。確かに魔術師からしたらどうやってでも確保したくなるだろう)
後にレオニダスが証言したのは、固有結界とは最も魔法に近いものの一つであり、万人が持ち得るものではなく、ごくわずかな存在が持ちうるものだということ。
(人の舌に戸は立てられぬが・・・極秘事項とせねばなるまいな)
元より士郎との契約で魔術の秘匿は確約しているが、今の従者達の様子を見れば一層厳しいものにしなければならないことが伺える。
誰もが、誰もが夢うつつのような雰囲気が出ているのだ。緘口令は敷いているものの、まるで夢でも見ていたかのような空気は今だに現場には残されていた。
(仕方のないことではあるのだがな・・・我とて夢でも見ていたかのような気分だ)
だが、これこそ彼の隠したがっている情報なのだから厳しくせねば。
「残党の気配は?」
「今のところありません。あの・・・剣の丘で全ての者が駆逐されたように思います」
今回の原因も切り伏せ、消滅したという事だし、やはり残党は残されていないように思う。
「では撤収作業に取り掛かれ!」
「はっ!」
揚羽は脅威は去ったと判断して撤収命令を出す。
『・・・衛宮』
『・・・。』
今回の件で使えるようになった念話で問いかけても返事はない。今だ彼は眠り続けているのだろう。
(無理もないか・・・とにかく、魔術の類には気を付けねばなるまいな)
彼をしてこの状態なのだ。もしまた別な形で最上幽斎のような人物が勝手をしたらとんでもないことになる。それだけは間違いなかった。
――――interlude out――――
九鬼の病院。ここには最上幽斎が入院していたが、士郎が戦闘終了と同時に倒れたため、一同は病室に集まっていた。
「外傷はそれほどでもないですが・・・酷く疲労状態にあります。しばらくすれば目を覚ますかと思いますが、彼の事ですから油断なく診ていきましょう」
「ありがとうございます・・・」
「士郎・・・」
病室には風間ファミリー。林冲、マルギッテ、清楚、義経達、そして燕と心もお見舞いに訪れていた。
「衛宮はどうしてこうなったのじゃ?」
「それは・・・」
「この件については緘口令が敷かれています。内容を話すことは出来ません」
「ふーん・・・でもよほどのことがあったんだよね?衛宮君はモモちゃんともやり合えるわけだし・・・」
「士郎先輩は今回、力の限りを振り絞ったんだと思います」
「確かに。アレを使った後崩れるように倒れたからな」
「ただでさえ一日戦い続けて最後に大技出してたからね・・・」
「あれは相当に消耗する技のはずだ。私でもあれは出来ない」
「モモちゃんがそこまで言う技かー・・・ちょっと見て見たかったなー・・・」
「それはダメよ」
燕が軽口を叩いたと同時に最上旭が入ってきた。
「旭ちゃん」
「お父さんは大丈夫ですか?」
大和の言葉に旭はゆっくりと頷いた。
「ええ。みんなのおかげで一命は取り留めたわ。ものを見ることは出来なくなってしまったけれど、命あってこそですもの」
「え?」
「最上先輩のお父さん、目が見えなくなっちゃったの!?」
「極度の衰弱による失明ね。でもいいの。これはお父様への罰。あんなものを軽々に使用してみんなを・・・町の人達を危険に遭わせた罰よ」
「最上幽斎がどのようなものを使おうとしたのか分からぬが・・・緊急性の高い不審者の出没で学校も休校になったからのう。そのすべてが最上幽斎の責任ならば、罰も必要か」
実を言うと不死川にもある程度の情報は流されており、万が一には手を貸すよう要請が来ていた。なので詳しいことは分からないまでも、最上幽斎が恐ろしいことをしでかしたことを心は分かっていた。
「それはそうと衛宮じゃ。これほどまでに酷使されたのは総理官邸事件以来ではないのか?いや、あの時はその後も動けていた。今回は昏睡などと・・・一体何をどうしたらこんな状態になるのじゃ」
「だからそれは言えないんだって。心配なのはわかるけどそう何度も同じことを言っても仕方ないだろう?」
キャップがお手上げ、とばかりに手を上げた。
「疲労に魔力欠乏症になっているわね・・・早く誰かが魔力を供給してあげないと危ないわ」
「ええ!?」
旭の言葉に騒然とする。
「い、今先生は問題ないって・・・」
「それは体の話でしょう?これは魔術の話。士郎は今最低限必要な魔力すら失っているのよ。そのままだと固有結界の暴走が起きるから本能的に意識を落として消耗を防いでいるの」
「なぁ、旭ちゃん。旭ちゃんが士郎の事をよく知ってるのは後で聞くとして・・・固有結界の暴走ってなんだ?」
「百代達は士郎の固有結界を目にしたのよね?」
うんうんと頷く一同。
「なら簡単なことよ。あの中のモノが士郎の体を突き破って出てくるのよ」
「なっ・・・」
「おい、あそこにはたくさんの剣が・・・!」
「それで前に左腕がズタズタになってたのか!最上先輩、何とかする方法は無いんですか!?」
大和の言葉に、旭は困惑したように言った。
「方法・・・というか解決方法は三つあるわ。一つは士郎がこのまま自力で持ち直すこと」
「でもそれは厳しいんだよね?」
清楚の言葉に旭がうなずく。
「ええ。だから有力なのは二つ目の方法。士郎に魔力を供給してあげること。ただしこれは相当に高度な技になるわ。士郎が意識を取り戻していれば適当に供給しても問題ないけれど今の士郎に必要な分を必要なだけ送るのは至難の業」
魔術回路が傷ついている可能性もあったが旭はあえてそれは言わなかった。
「うーん・・・ちょっと難しいね」
「え?弁慶どうしてだ?」
「今魔剣を本気で扱えるのって、キレた主だけだよね」
「そう・・・ですね」
「私もまだ光ってるわー・・・」
気落ちしたように由紀江と一子が俯く。
「てことは微細なコントロールが出来てないわけだ。それにえーと・・・あれ、パス、だっけ。あれが繋がってる人じゃないと供給出来ないんじゃない?」
「あ・・・」
そうなると必然的に士郎を救えるのは5人しかいない。その中で満足に魔剣を扱えたのは義経だけだ。
だが・・・
「パスが繋がっているのね。でも多分駄目よ。貴女達が送れるのは『気』であって『魔力』ではないでしょう?」
「ぬぬ・・・それじゃあ士郎はこのままなのか・・・?」
「「「・・・。」」」
クリスの言葉に黙ってしまう。
「あ、でもまって。最上先輩は三つって言ってたよね?」
「そうだ!旭ちゃん、最後の一つってなんだ!?」
がばりと旭の両肩を掴んで必死に問う百代。その表情に旭はいたたまれなくなって目を逸らした。
「三つめは・・・実質無理よ・・・」
「確かめて見なきゃわかんないだろう!」
「痛・・・百代、痛いわ」
「モモ先輩押さえて押さえて!」
「今ここで最上旭を害しては本当に手立てが無くなります。・・・最上旭。最後の方法は?」
マルギッテの言葉に言いずらそうに彼女は言った。
「士郎の体に埋め込まれた聖剣の鞘を起動させることよ」
「聖剣の・・・」
「鞘?」
「そう・・・騎士王の剣、その鞘の実物・・・聖遺物と言えばいいかしらね。それが士郎の中にある可能性がある」
「ある
「そうよ。聖剣の鞘は絶大な回復能力を持つ。それを起動させることが出来れば士郎を救えるかもしれない。でも、鞘は失われている可能性もあるのよ」
「ええ・・・」
「どうしてです?」
「騎士王に返還されているかもしれないからよ。士郎は騎士王とかつて主従関係にあった。返していてもおかしくないの」
「マスターは聖杯戦争経験者でありますからな・・・何とかして鞘の存在を確かめられれば・・・」
「あ!」
「モモ先輩!」
「ああ!この目なら・・・!」
フオン、と百代の左目に剣の文様が浮かび上がる。
「あら?それは・・・魔眼・・・?」
「そうでした!百代先輩には解析の魔眼がありました!」
「そう・・・なら百代にかかっているわ。士郎の体を解析・・・それも魔術的なものを解析して彼の中に聖剣の鞘が残されているかどうか探って頂戴」
「まかせろ、士郎、今助けるぞ・・・!!」
そうして解析を始める百代だが、次第に頭痛に呻くようになる。
「モモ先輩?」
「姉さん!」
「大丈夫だ・・・ちくしょう、魔術ってこんなに複雑なのか・・・!」
百代が情報量に耐えられないのである。衛宮士郎の体の構造は分かっても魔術関係ともなればそうはいかない。
なんとか分かったのは旭が言った通り魔力が不足し、危険が迫っているということだけ。
「百代。もっと奥よ。彼の根源たる場所まで辿って」
「わか・・・ってる・・・!」
目から涙を流しながら百代は呻いた。
――――体を走る魔術回路。
――――それが繋がっているたった一つのものへと手を伸ばす・・・!
「・・・ッ!あった!!!」
「よくやったわ!後は鞘を起動させるだけ――――」
しかし、百代が突如悲鳴を上げた。
「うあああ!!?」
「百代!?」
「モモちゃん!?」
ブワリと闘気が病室に溢れて慌てて皆で百代を止める。
「姉さんどうしたんだ!?」
「モモ先輩落ち着いて!」
「百代!落ち着きなさい!」
そうして百代は目に見えない何かに怯えるようにバタバタと暴れた後、魔眼を消してしまった。
「はぁ・・・はぁ・・・」
「モモ先輩一体どうしたんだよ」
「ただ事じゃなかったぞ」
「ああ・・・悪い・・・」
と言いながらも顔色は青いままの百代。
「川神百代。一体何を見たのですか?」
マルギッテの問いにゴクリと喉を鳴らし、
「竜だ・・・」
「竜?」
「ああ。信じられないかもしれないけど、巨大な、自分がちっぽけに映るほど巨大な竜が見えた」
ブルリと百代は体を震わせて言った。
「あれは・・・本気でかからないと食われる。そう思った。そのくらい巨大で強力な気配を放つ竜だった」
「・・・騎士王の竜の因子ね。鞘に残っていたのかしら・・・でも困ったわ。それを突破しないと鞘にはたどり着けないわよ」
「突破って・・・どうするんだ・・・?」
問う百代は弱弱しい。それほど彼女はあの竜に恐怖を抱いた。
「戦うことは出来ないわ。貴女が見ているのはあくまでそうあるもの・・・写真のような物のはず。だから意識を強く持って。写し絵を突破するのよ」
「そう言ったって・・・」
物理的に戦えないものに対して百代は非常に弱い。これは彼女への試練であるのかもしれなかった。
「・・・それがどんなものであるのかわかりませんが、貴女一人でできないというのなら私達も行きます」
「はい。モモ先輩、私達もつれて行ってください」
「そうです!士郎君を助ける為なら・・・義経は恐怖を克服します!」
「お前達・・・」
「そうだぞ百代。お前一人でどうにもならぬのなら我も行こう」
「揚羽さん!」
「これで五人揃いましたね」
「うむ。話は念話で聞いていた。その竜とやら、我らで突破してくれよう!」
「・・・本当に怖いですよ」
「愚問よ!ここで衛宮に死なれる方が困るのだ!早く連れていけ!」
「・・・。」
揚羽の言葉にもう一度奮起して魔眼を開放する百代。
「五人はパスが繋がっているのね?なら百代と一緒に士郎の中に潜れるはずよ」
「私も参りましょう。百代殿達と直接パスは繋がっていませんが、私とマスターも令呪で繋がっておりますので」
「先生が居れば百人力だぜ!」
「レオニダスさん、お願いします!」
「任されました。では皆さん互いに手をつなぎましょう。意識を集中するにはまず形から入るとやり易いはずです」
そうして五人とレオニダスの手が結ばれた。百代の片手は士郎の胸へと当てられている。
「いくぞ・・・!」
瞬間、六人の意識は真っ暗闇に包まれた。
暗闇の中、まるで青い鎖が繋がっているのを辿っていく百代達。
『確認です。みなさん意識ははっきりしていますな?』
『はい』
『問題ありません』
『はい!』
『我も異常はない』
内心レオニダスはほっと息を吐く。これでまたいつぞやの時のように五人の意識が混濁してしまっては目も当てられない。
『もうすぐだ・・・くるぞ!』
百代の言葉の直後だった。
『ギャオオオオンッ!!!』
巨大な、人間などちっぽけにしか思えない巨大な竜が現れた。
『『『!!!』』』
『うあ・・・あ・・・』
先ほどまでの決意が粉々に砕かれる。それだけ竜は存在感が大きかった。
『皆さんお気を確かに!あれは幻影!竜の因子が見せる本来の姿の写し絵ですッ!!!』
『そう・・・よな。あんなものが現実に――――』
そう言う間に竜は羽ばたき、彼女等を視界に捉え、顎が迫る。
『た、食べられる!!!』
『落ち着け!落ち着け!!幻影だ!幻だ!』
恐怖に包まれながら彼女等は竜の顎に飛び込んだ。
――――interlude――――
川神祭開催の二日前からの休校により川神祭の日程が延期されることになった川神学園。中には早くやりたいと思う者もいれば開催が遅れて一安心という所もある。
幸いなことにF組は準備面では問題なかったが、メインである士郎の入院という事も相まって延期されて一安心という組だった
「それにしても衛宮君、どこでまた大怪我したのかしらね」
「士郎はいつでも人助けしてる系。また誰かを助けてたんじゃない系?」
「羽黒さんの言う通りかもね。直江君に傷の回復が良くなる食材を渡してて正解だったかな」
クマちゃんこと満が納得したように頷いた。
「それにしてもこの頃物騒ですね・・・源氏大戦も終わったばかりですのに・・・」
「真与は襲われないようにしないとね?」
「むー!それを言うなら千花ちゃんだって!私の方がお姉さんなんですからね!」
「はいはい。・・・と休憩はこのくらいにして作業始めましょう?」
「だな。士郎の奴がどんな状態でも川神祭が出来るようにしとかねぇと・・・ったく。あいつどんなドジ踏んだんだか・・・」
そう言う忠勝も心配そうな顔だった。
(無事に戻って来いよ。出ないと殺す)
主役が居ないながらも、なんとか準備を進めるF組だった。
S組では、
「うむ!我の考えた本格派のセットも完成であるな!」
「期日ぴったりに作業を終える采配・・・流石英雄様ですぅ☆」
「ふっはっはっは!この程度、何のことは無いわ!・・・しかし、義経やマルギッテ達が居ないのは些か痛いな」
「直江君と不死川さんもですよ英雄。なにやら衛宮さんが入院したとのことですが・・・」
「うむ。我もその話は聞いている。本来であればあずみの手も借りなければならない所であったと聞く。だが案ずるな!衛宮には姉上がついている故な!検査入院とのことであるからすぐ復帰しよう!」
「敵方の心配をなされる英雄様!流石民衆を支える王の中の王!あずみ、感服いたしました!!!」
「敵などと思っておらぬからな!衛宮もまた九鬼が守らねばならぬ子の一人よ!・・・あずみ!連絡が入り次第皆に伝えるのだ!」
「了解いたしました英雄様ぁああ!!」
そんな会話がされていたが。実を言うとあずみは既に揚羽から士郎の状態があまりよくないと聞かされていた。
(・・・テメェが居なくなると面倒ごとが増えるんだよ。早く回復しやがれ)
口では言わずとも、あずみも士郎の事を心配していたのであった。
――――衛宮士郎がおらずとも日常は過ぎていく。だが、その日常に大きな存在として残っていた士郎は、浅くない傷を日常に刻んでいたのであった。
――――interlude out――――
士郎とパスが繋がっている5人とレオニダスが士郎の精神に潜ってから一時間が過ぎようとしていた。
「そろそろやべぇんじゃねぇか?」
ガクトがそんなことを言いだした。
「確かに。こうしてからもう一時間じゃ。本当に返ってこられるのじゃろうな?」
心はキッとキツイ目で最上旭をみた。
「・・・わからないわ。私には百代達がどんな状態なのか調べるすべはないもの。でも、百代が怯えるほどの竜の幻影があるなら・・・それを乗り越えられなかったら、精神が崩壊しているかもしれないわ」
「なんだと!?さっきはそんなこと言っていなかったじゃないですか!」
クリスが怒りの声を上げて最上旭を見る。
「言っても恐怖を増幅させるだけだと思ったのよ。そっちの方が危ないわ。強烈な恐怖で引き戻されるはずが、もっと強い恐怖で精神崩壊してしまったらどうしようもないでしょう?」
「言ってることは分かりますけど・・・」
「それにしてもやべぇよな。モモ先輩もまゆっちも、マルギッテさんに義経ちゃん、九鬼の姉ちゃんなんてビックな人が精神崩壊なんかしたら・・・世の中どうにかなっちまうぜ」
「ほんと、そうなんだよなぁ」
「!?誰・・・あ!」
一子が臨戦態勢になる前に気の抜けた声を上げた。
「よう。今を生きる青少年達。ちょいとロートルのおっさんが通るぜ」
花を持って現れたのは総理だった。
「そ、総理大臣?」
「ほ、ほほ本物?」
「いや、そっくりさんだ。世の中ぁ探せば、三人は同じ見た目の奴がいるって言うぜ?」
ちらりと見える外にはガードマンがいることから、なんとも白々しい嘘だと分かるのだが、ここで総理というのはやばいのだと察して一同黙った。
「なんでぇ。どいつもこいつも浮かねぇ顔しやがってよ。兄ちゃんの容体はよろしくないのかい?」
「それは・・・」
正直に言うわけにもいかない風間ファミリーはより一層暗い顔になってしまった。
「それより総「おじさんだ」・・・おじさまはどうしてここに?」
清楚が代表して聞いた。
「元は最上の見舞いだったんだが・・・俺の友達の兄ちゃんもここに入院してるって聞いてな。慌てて来たんだよ」
そう言って切り花を手ずから花瓶に挿す総理。
「あ!やりますよ!」
「いいっていいって。これくらいさせてくれや。俺にはどうしようもないからよ。そこで寝てる九鬼の姉ちゃんたちが頼みの綱なんだろう?」
「!」
「おじさん・・・」
「ただの想像だよ。ただ見舞いに疲れて寝てるだけかもしれねぇし・・・だが、レオニダス王まで一緒となるとな」
確かに、彼が座って患者の眠るベッドに倒れるように眠るなど不自然かもしれない。
「なんにせよ。最上はこっちできっちり裁くからよ。お前さんたちは兄ちゃんの心配をしてやってくれ。・・・最上の娘もな」
「はい・・・」
そう言ってしばらく総理も居座るのだった。
一方百代達は。6人とも真っ暗な空間を漂っていた。
『う・・・』
うめき声を上げて目を覚ましたのは百代だった。
『ここは・・・そうだ、さっき私達竜に食われて――――』
先ほどの事を思い出してブルリと震える百代。よくもまぁあれほどの存在に食われて正気を保っていられたものだと呆れるが、
『あれは・・・おい!みんな!』
目の前で光るそれを見つけて同じように漂っている5人に声をかける。
『百代?』
『ぬう。このレオニダス一生の不覚。幻影相手に気を失うとは・・・』
『モモ先輩?』
『ここは・・・』
『何とか切り抜けられたみたいですね・・・』
みな何とか切り抜けられたと一安心している。それほどあの竜は怖かったのだ。
『切り抜けられたのでよしとしましょう。目の前に見えるあれがマスターの身に宿る聖剣の鞘ですな』
ゆっくりと傍に寄っていく一同。輝くそれは一層強い光を放っていた。
『これが・・・アーサー王の剣の鞘?』
『で、あろうな。伝説では魔術師マーリンがアーサー王に忠告している。剣ではなく鞘を手放すなとな。その理由が衛宮の異常な回復能力の秘密というわけだ』
『じゃあ、あれを起動することが出来れば!』
『そう言う事になりますが・・・どうやってやればいいのですか?』
『『『・・・。』』』
マルギッテの言葉に一同は黙ってしまった。彼女等は魔力を扱うことが出来ない。
『ご安心ください。私が魔力を供給します。まさかサーヴァントがマスターに魔力供給をするとは夢にも思いませなんだ』
ゆっくりとレオニダスが鞘に触れ、魔力を流す。そうすると鞘の輝きが増した。それと共にエメラルドのラインが一気に周囲を伝う。
『すごい・・・』
まさに幻想的と言える光景だった。しかし――――
『ぬう!?』
慌ててレオニダスが鞘から後ろにバックステップで跳んだ。
『なんだ・・・あれ・・・』
白い影のような存在が剣を片手に鞘の間に立っていた。
『・・・なるほど。英霊の残滓を聖遺物に封じ込めることで使用可能としているわけですか・・・』
『どういうことだ?レオニダス』
『疑問があったのです。聖遺物とはいえ、騎士王程の人物のものであれば、他人が扱うことなどできないはずなのです』
『でも士郎はよく使ってたんじゃないか?』
『はい。それがあの・・・騎士王の残滓のおかげです。あの存在が鞘に残り続けているからマスターは貸し出しという形で使用することが出来ているのでしょう』
『ということは戦うわけにはいかんな』
『でもあの騎士王、鞘から離れる気一ミリもないぞ』
『それに鞘に起動できるのはレオニダス王だけです。戦うなら、私達で何とかしないといけません』
『いけません!残滓と言えどサーヴァント!そして御身は騎士王の残滓。とても皆さんが相手にできる存在ではありません!』
『なら話は早いな』
そう言って百代はゆっくりと騎士王の残滓に近寄っていく。
『――――』
剣のような物を構える影だが、百代は構わず近寄っていく。
『いけません!』
ガン!とレオニダスの盾が百代を守った。
『何をしているのです百代殿!相手に意識などありません!あのまま歩み寄って居たら切り裂かれている所です!!』
『ここなら怪我しないんじゃないか?』
『愚かなことを!我々は精神体でマスターの中に潜っているのです!ここで死ぬような怪我を負えば現実世界の貴女も死に至りますッ!!』
『まてレオニダス。なにも本気で事を構えようというわけではないのだから、我と百代で足止めをしよう』
『しかし・・・』
『それしか方法は無いのだ。黛と義経は得物が無かろう。マルギッテは体術もいけそうだが・・・三人もいれば何とかなろう』
『そうですね。どの道貴方が鞘に触れなければ解決しないのですからそれで行きましょう』
『私達も戦います』
『うん。何処まで行けるか分からないけど義経も戦う』
彼女達の決意は固かった。レオニダスもこのままでは埒が明かぬと分かっている。
『では決して無理をなさらずに。この中の誰かが没すれば、マスターは生涯己を責め立てることでしょう。そうしないためにも必ず無理をしないでください』
『わかってる。・・・いくぞ!』
あの夜。自分が幸福になって良いのか分からないと言っていた表情を思い出して百代は必ず生きて帰ると決心した。
(いいんだよもう。お前は自分を責めなくていいんだ!)
そうして負けられない戦いが始まった。
――――ここにいる全ての者は、衛宮士郎の為に――――
とりあえずはここまでです。またごちゃごちゃになりそうだったので一度切りました。
次回は最上パイセンのネタ晴らし…かなぁ…そこまで行けると良いなと思います。では次回!