真剣で衛宮士郎を愛しなさい!   作:Marthe

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皆さんこんばんにちわ。遂にハーレムルートに本格的に進行したことが嬉しい作者です。

今回は士郎の秘密(危険なモノ含む)暴露会を迎えて次の日と言った所です。まだまだ書きたい話があるのでゆっくり書いて行ければなと思います。
では!


一夜明けて

「・・・。」

 

ムクリと死屍累々の中、士郎が体を起こす。

 

「うっ・・・太陽が・・・黄色い・・・」

 

昨晩の乱痴気騒ぎ(18禁)を乗り越えた士郎はげっそりとしながら、満足そうに眠る彼女達をみてため息を吐く。

 

(ヤバイどうしよう手出しちゃったこんなにたくさん責任とれるか取らないと)

 

回転の鈍い頭がやっちまった、どうしようと回転する中一人の女性が大きな欠伸と共に起き上がった。

 

「・・・うむ。夜通しは少し辛いものがあるな。次はしっかりと時間を取ってすることにしよう」

 

「何を言ってるんだあんたは馬鹿か!?」

 

クワッ!と覇気のない顔で怒る士郎。

 

「なんだ、我は一夜限りの女か?」

 

「・・・。」

 

それは卑怯だろうと士郎はカクリと肩を落とした。

 

「どうやって責任取ればいいんだ・・・」

 

「なにも難しいことは無かろう。正室、側室システムが来るのだから全員娶れ」

 

「命令形!?・・・いや他に方法なんかないんだけども・・・」

 

ガシガシと後ろ頭を掻いて士郎はとりあえずシャワーを借りることにする。

 

「・・・なんでついてくるんですか?」

 

「未来の旦那との二人きりというのも・・・」

 

「少しは自重しろたわけ!」

 

世迷言を言う揚羽にそう言捨ててバタリとドアを閉める。

 

「ああ・・・一応学校が休みで良かった・・・」

 

疲労困憊と言った様子の士郎。今日は川神祭の翌日という事で振替休日となっている。それというのも最上幽斎の事件のせいで川神祭が延期になり、日程調整が必要となるからだった。

 

「あー・・・」

 

ぼんやりとしながらも浴びるシャワーは心地よかった。のだが、

 

「おい衛宮」

 

バタン!

 

「なんでさ!?」

 

問答無用で侵攻してきた揚羽に驚きの声を上げて浴槽に隠れる。

 

「何を隠れておる。我は今日オフではないのでな。我もシャワーを借りるぞ」

 

「じゃあ俺は出るんで・・・」

 

そう言う士郎の肩をがっしりと揚羽が掴んだ。

 

「我の髪はこの通り長いのでな。ここは一つお前にも手伝ってもらおう」

 

「・・・はい」

 

ニヤニヤとしているのが完全にからかい半分であることを理解しつつ士郎は揚羽とシャワーを浴びるのだった。

 

 

 

 

 

 

揚羽はシャワーを浴びた後すぐにシャキリとして色々な所に電話をかけている。

 

「仕事の電話か。確かに、大手のキャリアウーマンだもんな」

 

と、フライパンを返しながらつぶやく。彼女が仕事に戻ると言うので勝手知ったる他人の家という事で適当に朝食を作っていた。

 

「ん・・・士郎?」

 

「おはよう。林冲」

 

規則正しい生活をしているからだろう。林冲の次に目を覚ましたのは義経。そして清楚と徐々に皆が目を覚ました。

 

「えっと・・・義経は・・・うわあ!?」

 

「んん・・・あら?おはよう、義経」

 

「よ、義仲さんまで!し、士郎君!こっち見ないで!」

 

「わかってるぞー。そのためにこうして朝飯作ってるんだから・・・」

 

ジューとコンビニで買ってきた安物のベーコンと玉子が音を立てる。その匂いに釣られたのか百代と由紀江も目を覚ました。

 

「おはよう・・・士郎・・・」

 

「あ、あわわわ!おはようございます士郎先輩ひゃー-!!!」

 

みな変わらずの反応に思わずクスリと笑ってしまう士郎。

 

「あとはマルだけ「おはようございます」うおわ!?」

 

彼女は既にいつもの軍服姿だった。

 

「ま、マルはいつ起きたんだ?」

 

「・・・貴方が九鬼揚羽とシャワーに入っている間にです」

 

「あー・・・」

 

嫉妬丸出しのマルギッテにどう答えたものかと悩む士郎がおかしかったのかマルギッテもクスリと笑い、

 

「ッチュ」

 

「あ」

 

「ああああ!」

 

「朝食、楽しみにしています」

 

困り果てる士郎の頬にキスを落として彼女も電話を取った。

 

「士郎!私も!私も!」

 

「士郎先輩私もです!!!

 

「いいから百代と由紀江は服を着ろ・・・!ぬわあ!!」

 

ポーンと熱々の玉子とベーコンが空を飛んだ。

 

「いただきます」

 

「「「いただきます」」」

 

手を合わせて簡単な朝食に手を付ける百代達。

 

「ちぇー。なんで私だけパンだけなんだよう」

 

「モモちゃんが先走ったからでしょう?」

 

「そうだ。朝からなんて・・・は、は、ハレンチな!」

 

「何もしてないからね・・・」

 

そう言って疲れたように言う士郎。

 

「うむ。この家庭的な味がなんとも言えんな・・・常々父上の言っていることが分かった気がするぞ」

 

「家庭的もなにも・・・ベーコンサラダに玉子焼きとパンだけだろう?」

 

「でも士郎が私達の為に作ってくれた料理でしょう?それだけで違うものよ」

 

旭の言葉に、そうか?と士郎は首を傾げてパンに玉子焼きを乗せて食べる。

 

「さて・・・我は一足先にお暇するとしよう。スケジュールが埋まっているのでな」

 

「ああ。こんな朝食ですまない」

 

「いや、実に美味であった。それではな士郎(・・)

 

最後に柔らかく微笑んで揚羽は去って行った。

 

「むー・・・」

 

「あはは・・・」

 

士郎は困ったように笑うしかないのであった。

 

 

 

波乱万丈あった最上邸を出て一度自宅に帰り、士郎は九鬼の病院を訪れていた。

 

「大丈夫か?史文恭」

 

「問題ないと言っているだろう?お前は心配性だな」

 

袈裟懸けに切られた史文恭のお見舞いだ。彼女は戦闘不能となってしまったものの、傷自体はすぐに治療されたのと、切られた時、咄嗟に後ろに跳んでいたことで比較的浅い怪我で済んだようだった。

 

シャリシャリと士郎の剥いたリンゴを食べながら本に目を落とす史文恭だが、

 

「・・・衛宮。お前昨晩何かあったな?」

 

「うっ・・・」

 

サッと目を逸らすが、それは何かあったと言っているようなものだった。

 

「それと嗅ぎ慣れぬこの女の匂い・・・ついに手を出したか」

 

「・・・襲われたんだ」

 

とほ―、と肩を落とす士郎に面白そうに史文恭は言った。

 

「では私も傷が治ったらしてもらわねばな。なあに。私も女としては捨てたものではないと自負しているぞ?」

 

「そう言う問題じゃない!・・・ていうか、史文恭もなのか・・・?」

 

「あのな。誰が好きでもない男の家にホームステイするというのだ」

 

「・・・。」

 

士郎は正直もう一杯一杯なのだがまだ増えるらしい。

 

「それに・・・私だけではなかろうよ。学園にも私達と同じ人間が居るだろうし・・・んん。これからも増えないとは言い切れないからな」

 

「増えたらだめだろ・・・」

 

「そうでもなかろう?多重婚が可能になるのだから気にせず娶れば良い。お前ほどの男ならきちんと愛を注げるだろうさ」

 

「いやそういう意味じゃなくて・・・」

 

「ではお前は私達の中から一人に絞れるのか?」

 

「・・・。」

 

史文恭の問いに士郎は口を噤んだ。

 

「俺はそう言うの分からないし・・・元の世界では経験したこともないんだ」

 

「なら尚更幸運だったと喜べ。これだけの女から想いを寄せられ、すべて断るか、一人を選ぶかだけでなく、全て受け入れるという道が存在することをな」

 

「・・・。」

 

「それに、私としても私が認めた女がどこの誰とも知れぬ男と一緒になるなど考えもしたくない。それならば、愛する男に揃って愛を注いでもらった方がいいと私は思うがな」

 

「史文恭・・・」

 

何気ない日常を送りながら彼女もそこまで考えていてくれたことに士郎は感謝した。

 

「それより、お前昨晩何人相手にしたのだ。酷い面構えだぞ」

 

「ソウデスネ・・・」

 

今だ何処かげっそりな顔をした士郎であった。

 

 

 

 

史文恭の見舞いをした後は自宅に戻りある作業をする。

 

「士郎、帰って来たばかりで大丈夫か・・・?」

 

「大丈夫ですよ橘さん。昼飯挟んで大分回復しましたから。それにコレ(・・)は今日中に仕上げたいんです」

 

そう言って士郎が作っているのはこの世界に来てすぐに作った第二魔法の術式を刻んだ魔法陣だ。

 

「それも魔術・・・なんだよな?」

 

「ええ。魔術師としては無駄もいいところの代物ですけどね。前の世界に残してきた戦友が、俺を見つけ出したっぽいので」

 

カリカリと土蔵の床に魔法陣を書いていく。一度書いたことがある魔法陣なので士郎からしてみればお手の物だ。

 

「魔法陣なんて初めて見た・・・思った以上に科学的というか、規則性があるんだな」

 

「これは特に特殊な魔法陣ですから・・・でも、大体の物も規則性があるものですよ」

 

この作業に士郎は一日掛けとなってしまうのだが、百代達が鞘を通して自分を見つけたと証言していた以上、もう一度この方法を試すのが有意義な気がしたのだ。

 

(多分遠坂達はあらゆる方向性で探しているはずだ。今回の鞘だけが決め手になったとは考えにくい)

 

そう信じて士郎はもう一度一心に魔法陣を書き込む。

 

「それじゃ、今日の夕飯は私が準備するよ。士郎はゆっくり作業に励んでくれ」

 

「ありがとうございます。夕飯までにはキリのいいところまで書き込むので」

 

本当は完成させてしまいたいが、それをすると天衣や他のメンバーが心配するのだ。なのでキリのいいところまでにしておかないといけない。

 

そうして夕食まで書き終えた士郎は天衣とマルギッテと林冲が作ってくれた夕ご飯にありついた。

 

「いただきます」

 

「「「いただきます」」」

 

今日のメニューは一般的な唐揚げ定食だった。サラダは大皿にたっぷりと用意してあり、くどく感じてきたらさっぱりとしたドレッシングと共に頂く方式だ。衛宮邸に野菜嫌いはいないのでこちらの方が効率的だった。

 

「将来、野菜嫌いな子がいたら工夫を考えなきゃいけないな」

 

「う・・・それは私も思っていたことなんだ。家では好き嫌いする人いないから自由に作れてしまう」

 

「こんなに美味しいのにね。でもトマトとか嫌いな人は多いかも」

 

「清楚せ・・・清楚もトマト嫌いだったのか?」

 

清楚からも先輩も敬語も要らないと言われてしまったので通常通りに喋る。

 

「ううん。私は嫌いな物ないよ。でも島のクラスの子には何人か居たから」

 

「この野菜はマスターの家庭菜園のものですからな・・・普通に買うものと取り立てではやはり味も違うでしょうし、悩ましいところですな」

 

「そういうレオニダスは嫌いなものないのか?」

 

「もちろんですとも!全ては我が筋肉となるのですから野菜も肉も、そしてミルクも!!嫌うものなどありません!!!」

 

ムン、とマッスルポーズをするレオニダスの筋肉は確かにすごい。鍛えているはずの士郎以上である。

 

「好き嫌いをするなんて私には考えられないな。それを食べないと食べるものが無い時もあったから・・・」

 

「梁山泊の修行時代か?」

 

「うん。春や秋は良いけど冬は特に深刻だった。きちんと蓄えておかないと食べるものが無くなってしまう」

 

「買うことは出来なかったのですか?」

 

「できなくはないけど、私達は隠れ里だから、日本や他の国のようにいつでも買えるわけじゃなかったんだ」

 

しんみりとそう言って彼女は唐揚げを食べる。

 

「こんなに豪華な料理が食べられるのはありがたいことだ」

 

「そうだな・・・今日史文恭の見舞いに行ってきたけど、病院食は少なくて薄味で困るって言ってたな」

 

「史文恭さんもう大分いいの?」

 

「ああ。林冲は知ってると思うけど俺の秘密の薬を処方したからな。医者もびっくりな速度で回復してるみたいだ」

 

「あれか・・・!あれは素晴らしい薬だと思う。私も使ったからよくわかる」

 

「ただ、あんまり使うと訝しがられるからな。ちょっとずつ、秘密で使ってるんだ」

 

「よかった・・・それじゃすぐに出てこられそうだね」

 

「マスターから史文恭殿が凶刃に倒れたと聞いて気が気ではなかったのです。明日にでも見舞いに行きましょう」

 

大好きな鶏肉でご飯をもぐもぐとしながらレオニダスは頷いた。

 

「それでは、今日は私がお風呂を頂きます。ご馳走様でした」

 

「お粗末様。今日はゆっくり浸かってくれ」

 

「ええ。一緒に入りますか?」

 

「ゲフォ!?」

 

「士郎(君)!?」

 

さらっと言うマルギッテに士郎はご飯を詰まらせた。

 

「ふふ・・・冗談です」

 

「ゲッホッゴッホ・・・やってくれたな、マル」

 

「仕返し、です」

 

ルン、と機嫌が良さそうに去って行くマルギッテに苦笑して士郎は茶碗を片付けた。

 

「また作業に戻るのか?」

 

「ええ。後一時間もすれば完成するでしょうから後で・・・あいや、鍛造の仕事があったな・・・」

 

何気に納期が迫っているというか、できれば早くとせっつかれているのがあるのを思い出した士郎はうーむと考える。

 

「とりあえず魔法陣を完成させて、いくつか鍛造して寝ます」

 

「あまり無理をしない方がいいぞ。もう11月なのだから冷え込む。風邪なんか引いたら目も当てられないだろう?」

 

「そうですね。まぁでも、鍛造所は暑いくらいですから。それに今日は・・・早く寝たいですし・・・」

 

遠い目をして語る士郎に天衣は何かあったのかなと首を傾げるのだった。

 

「・・・。」

 

一人、よし、と気合を入れるのを見逃して士郎は土蔵の方へと歩いて行った。

 

 

 

 

ザパアと風呂の湯がこぼれる。バシャバシャと顔にかけてぷはぁ!と一息。

 

「今日と言うか昨日から色々ありすぎたな・・・」

 

流石に疲れもピークなのか、ぼーっと士郎は露天風呂で空を眺める。

 

「・・・。」

 

自分を好いてくれた9人の女性の事を考える。

 

「一人だって過分なのに9人も俺は幸せに出来るのだろうか・・・」

 

彼女達の気持ちは聞いた。そして例え断られても一生衛宮士郎を愛し続けるとも言われた。彼女達の決意は固く、結局士郎は折れる形(襲われた)でいたすことになったわけだが・・・。

 

「今更断る事なんかできないよな・・・」

 

もう手を出してしまった以上、それは許されないと思った。

 

「むー・・・」

 

だがしかし、衛宮士郎という男はどうしても考えてしまうのだ。自分にそれほどの価値があるのかと。元よりわが生涯に意味は要らずと考えているのだが、そんな男にこれだけの女性が気持ちを向けてくれるのだ。

 

そんな考えがグルグルとしているときパタンと表側の方で扉を開く音がした。

 

「あれ、俺掛札したよな・・・おーい。入ってるぞー」

 

露天風呂と本来の浴場は扉で隔たれているので事故にはならない。

 

ならないのだが・・・

 

「えい!」

 

「せ、清楚!?」

 

思い切りのいい言葉と共に清楚が露天風呂のドアを開けた。

 

「いたいた。うー寒い!」

 

「まって俺が出るからうわあ!?」

 

バシャーン、と彼女が湯船に飛び込んでくるそして、

 

「・・・アノ、セイソサン、ナンデウデヲツカムンデスカ?」

 

「もちろん、士郎君が逃げないように」

 

えへへ、と屈託なく笑う清楚に士郎は困り顔だ。

 

「今更恥ずかしがることないでしょ?私達、恋人だよ?」

 

「恋人・・・」

 

その言葉に士郎はまた難しい顔をする。

 

「清楚。俺は・・・」

 

「モモちゃんから聞いてるよ。自分が幸せになっていいか分からない、でしょ?」

 

「・・・。」

 

「私達は士郎君と居るだけで幸せなの。特別なことをしてほしいなんて思わないし、士郎君の思うままにすればいいんだよ?」

 

「俺は・・・」

 

それは、あまりに都合のいい話ではなかろうか?甲斐性以前に、自分にその権利があるのかも分からない。

 

「そ・れ・に。私達はもう士郎君だけを愛するって決めたんだから士郎君が悩むことは関係ないの。私達がそうするって決めて、私達は昨日の夜、士郎君に勝って認めさせたの!もう取り返しなんかつかないよ?」

 

「ぬぬ・・・それは反則だろう・・・」

 

だがそれも事実だった。本当に嫌なら本気で拒めばよかったのだ。そうしなかったのはやっぱりこの世界に来てからの変化のせい、なのかもしれなかった。

 

「・・・後悔するぞ。こんな男なんか選んだら」

 

「してないよー♪」

 

楽し気にぎゅうっと抱きしめる清楚。

 

(俺も、年貢の納め時、なのかな)

 

もう士郎は受け入れてしまったのだ。故に、断ることなどできない。誰かを選ぶなんてできない。史文恭の言う通り、自分は幸運だったと思うべきなんだろう。

 

・・・こんな空虚な自分を受け入れてくれた彼女達に。

 

「・・・もう。折角飛び込んだのに。何もしてくれないの?」

 

「イマハチョットムリデス・・・」

 

色々と心の整理が必要だった。そもそも衛宮士郎には多人数の女性を受け入れるような機構はついていないのだから。

 

「ふふ・・・私、士郎君の家に来てよかった。こうしてみんながいない時も一緒に居られるもんね」

 

「・・・ああ。そうだな」

 

抵抗するのを諦めたように、士郎は笑った。

 

 

 

 

翌日。士郎は色々と心の整理をつけ、学園へと向かっていた。

 

「・・・林冲。そんなにくっつかれると歩き辛いんだが・・・」

 

「士郎はみんなのもの。でも独り占め出来る時間が限られてるから・・・」

 

より一層くっつく林冲に困りながらも士郎は川神祭の終わった学園へと登校する。

 

「おはよう、士郎」

 

「おはよう、旭」

 

ふわりと髪をなびかせてやってきたのは最上旭だ。

 

「士郎に会えるかしらと思って待っていたのに、残念。林冲さんがいたわね」

 

「私は構わないから二人になるといい。私の時間は十分に取らせてもらったから」

 

「あら、そんなこと言わないで林冲さん。私は士郎を取り合う気はさらさら無いの。それよりも、私は貴女達とも絆を深めたいわ」

 

「・・・そういうことなら」

 

ガシッ

 

「うふふ。そうそう」

 

ガシッ

 

「なんで両腕を掴むんだ・・・」

 

「士郎が」

 

「逃げないように♪」

 

清楚と同じことを言われて士郎は乾いた笑いを上げるのだった。

 

今日は朝のうちにするべきことは無いので屋上に上がって多摩大橋の見張りである。今日も今日とて変質者は現れるらしく、九鬼従者部隊の皆さまがあちらへこちらへ忙しく対応している。

 

その中でも目に付いたのは大橋に多数の逆さ吊りを量産している百代であった。

 

「何してるんだあいつ」

 

「モモちゃんは卑怯な手を使ってくる相手にはよくああしてるよん」

 

「おはようございます。松永先輩」

 

「おはよー。それでそれで、師匠何かあったんですか?」

 

ニヤニヤとしながら近づいてくる燕にジト目になりながら士郎は矢を射る。

 

「何もありません」

 

「ふんふん・・・これは旭ちゃんの香り・・・恋ですな!?」

 

「・・・。」

 

ズビシ。

 

「あいたー!」

 

チョップを下された頭を悲鳴を上げて押さえる燕。

 

「暴力はんたーい(これは予想以上にまずいかなぁ)」

 

「正当防衛だ。と、おや?あれは・・・」

 

「なになに?」

 

白いスーツを着た恰幅の良い男が豪快に笑いながら歩いてくるのが見えた。

 

「あれは確か天神館の・・・」

 

「鍋島館長だねん。こんな早朝にどうしたんだろ?」

 

「西の天神館でなにかあったか?いや、良くないものを抱えた表情はしていないが」

 

「・・・ふむふむ。ここから表情が読み取れる、と・・・」

 

「個人情報を記録しないでもらいたい。・・・ん?」

 

帽子を取ってこちらに手を振る鍋島館長。

 

「ほう。どうやらあちらも私に気付いたらしい」

 

「あれでも川神院の出だからね。気で気づいたんじゃないかな」

 

「そうか。ではこれからは気配を殺して狙撃するとしよう」

 

「・・・衛宮君の気配遮断ってシャレにならないんだよねぇ・・・」

 

まだまだ勝ち筋はなさそうだとため息を吐く燕。そんな間にも士郎は次々と矢を射っている。

 

「ほっほ。衛宮君はおるかのう」

 

「学園長。おはようございます」

 

「おはようございまーす!」

 

「うむ。おはよう。今、白いスーツの恰幅のいい男が来ておらんかのう?」

 

「ええ。来てますよ」

 

士郎は狙撃を再開しながら言う。

 

「ではこれを届けてくれんか」

 

「・・・矢文ですか」

 

渡されたのは学園のレプリカの矢に文書が結びつけられた矢文だった。

 

「あやつ、ちいとばかし奔放じゃからたまには試してやらんとな」

 

「・・・それは、それなりに本気で射って良いと?」

 

「構わん。あれでも無敵を誇った男じゃ。どうにかするじゃろ。というか、どうにかできるのか試したい」

 

「わかりました。・・・では」

 

ふっと。空気が変わった。痛いほどの静寂と、異常なまでに研ぎ澄まされた八節を踏み、

 

パシュン、と矢は放たれた。

 

「・・・どうじゃ?」

 

「まぁ一応は受け取れました」

 

実際は額に当たってからキャッチしていたのでアウトと言えばアウトだが、しっかり握っていることから致命傷ではなかろうと判断した。

 

「そうかそうか。では迎えてやるとするかのう。衛宮君ありがとう」

 

「いえ、この程度でしたらいつでも」

 

ふぉっふぉと愉快気に笑いながら学園長は去って行った。

 

「・・・今の手加減したの?」

 

「もちろん。射手が敵に気付かれるような狙撃をするわけがないでしょう?」

 

言外に、本気なら頭を射抜いていたと言う士郎に冷たい汗が流れる燕。

 

(士郎君が本気なら、狙われた時点でアウトってことだね)

 

相変わらずの腕前に冷や汗をかきながらも、今日も士郎の狙撃を観察する燕であった。

 

そうして朝の狙撃を終えたのならいつも通りの学校生活・・・だったのだが。

 

「衛宮。なんか雰囲気違くね?」

 

ヨンパチが急に言い出した。

 

「な、なんだよ藪から棒に」

 

「なんか女を知った男の気配を感じる」

 

「どんな気配だそれは」

 

思わず額を押さえる士郎。

 

「なになに?衛宮君、彼女出来ちゃった?」

 

「九鬼の姉ちゃんと個室対応してたからな」

 

「九鬼君のお姉さんと?それはおめでとう衛宮君」

 

千花の声を皮切りに、スグルが言い出し、クマちゃんは純粋におめでとうという。

 

「こらこら勝手に話を進めるな。あれは仕事の話をしてたんだよ」

 

「でもなにかあったんでしょ?」

 

「・・・。」

 

何もなかった、とは言えない士郎は押し黙った。

 

「いーい根性してるじゃねぇか。今の内に、ゲロっといた方が良いぜ?」

 

「いや猿じゃ衛宮君に勝てないでしょ」

 

「衛宮君はモテモテですねぇ・・・でも、女の子とは真摯に向き合わないといけませんよ?」

 

「あはは・・・」

 

ヨンパチは置いておくにしても真与の言葉は中々にぐさりと来る士郎だった。

 

(あの後何人残ったんだ?)

 

(分からないけど、弁慶はすぐにきたよね)

 

(それだけかよ!くー、流石エロゲの主人公、8人とかやってくれるじゃねぇか!!!)

 

(それ、本人には言わないようにね・・・)

 

自分が18禁ゲームの主人公としれた日には悶絶死する自信が湧くモロであった。

 

「ん?どうした一子」

 

「お姉さまが張り切っちゃって抑えるのが大変だったのよう・・・」

 

「あー・・・朝のあれか?」

 

「そうそ。モモ先輩、そりゃもう大張り切りでなー」

 

「俺様とキャップで何とか押しとどめたんだ」

 

「大和は?」

 

「用事があるとかで先にS組に行ったぞ」

 

「またなにか情報を仕入れたのかもね」

 

「なるほど。よく二人で止められたな」

 

「それが聞いてくれよお代官様!」

 

「誰がお代官様だ」

 

意味不明のノリにツッコミを入れて士郎は改めて話を聞く。

 

「モモ先輩、なんか男子に触られるの嫌がってるみたい」

 

「なんだって?」

 

京の言葉に首を傾げる士郎。

 

「そうなんだよ。俺たちだって軽いド突き合いくらいはするだろ?なんかそれもタンマ!って言われた」

 

「その後はガクトとキャップがほどほどにしないと触るぞーって言ってお姉さまを止めたの」

 

「その代り女子好きがまた始まったみたいでなー」

 

「またお姫様抱っこしてたね」

 

「・・・。」

 

何とも言えない表情の士郎。どうやら百代は極端な方向に走っているらしい。

 

(浮足だってる?いや、そう言えば返事がまだだったな)

 

気持ちを聞いた後の返事がまだだったと気づく士郎。恐らく、気持ちを確かめる前にあんなことになったので距離感がおかしくなっているのだ。

 

(俺ももう腹をくくらないとな)

 

史文恭と清楚に言われてようやく自分も何かつかめたような気がするのだ。それが、いつまでもこのままではいけないと囁いていた。

 

「皆おはよう!」

 

「「「おはようございまーす」」」

 

考えることは出来たがまずは朝のHRだ。

 

「今日は皆に紹介したい人が居る!・・・どうぞ」

 

「あ!」

 

「朝のおじさん!」

 

「おうおう。朝はありがとな。俺は天神館の鍋島正ってんだ。敵情視察じゃねぇけど、ちょいと用事があってここに来てよ。ちょっくら見学させてもらいてぇんだ。一つよろしくな」

 

「ということだ。鍋島館長が授業を見学することがあるので恥ずかしい真似はしないように!!」

 

「西の天神館か」

 

「あの時は拍子抜けだったからなぁ・・・」

 

「だからこそ、我々の観察に来たのでしょう・・・今日の体育(訓練)は気合を入れませんとな!!」

 

「・・・ゲン。聞いたか?」

 

「ああ。お前もヘマするんじゃねぇぞ」

 

レオニダスの言葉を聞いて戦々恐々のガクトと忠勝であった。

 

「俺は川神名物の体育を期待してるからよ。その時間になったらまたくるぜ」

 

そう言って彼は去って行った。

 

(ねぇねぇ士郎)

 

(なんだ?一子)

 

こそこそと話しかけてきた一子に士郎は耳を傾ける。

 

(朝の矢。士郎でしょ?なんであんなことしたの?)

 

(あれは学園長に頼まれたんだ。なんでも、気が緩んでないか確かめるためだとか)

 

それを聞いてなるほど、と納得した一子。

 

(そんなことより、次の授業は大丈夫なのか?課題、あったろ?)

 

「うぐ・・・」

 

「川神!何をしているか!」

 

パシン!

 

「ひゃん!」

 

鞭を打たれてしょぼーんと気を落とす一子。

 

「やれやれ・・・」

 

相も変わらずで困ったものだと士郎は首を振る。

 

――――様々な変化はあったが。一つ一つを受け入れて士郎は前に進む。変化は彼を待ってはくれないのだから――――




という事で翌日編でした。なんかこういうのって書いてて自分が恥ずかしくなりますしあまりに甘いシチュエーション書くと砂糖吐きたくなります…今回はコーヒー飲みながら書いてました(笑)

最後の方にはフラグを一つポンとおかせてもらいまして今回は〆にさせてもらいます。

では次回!
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