真剣で衛宮士郎を愛しなさい!   作:Marthe

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皆さんこんばんにちわ。キーボードに先駆けて、マウスまで新調してしまった作者です。

今回はマルさん…というかドイツ軍関係が主軸かな…時々思うのですが、私の書く士郎は無事三年生になれるのでしょうか?(笑)時間結構飛ばしてますけどめっちゃ休んでますが…

それはともかく今回もよろしくお願いします。では!


恋の行方

――――interlude――――

 

日本とは違い、一段と寒さが増すドイツ、リューベック。ここのある邸宅である人物が大声で感情を露わにしていた。

 

「クリスが・・・!男子に告白しただと!?」

 

信じられんと、ダン!と机をたたくフランク・フリードリヒ。彼はドイツ軍中将の座を頂く軍人だが、今一つ、子育てに関して問題を抱えていた。

 

娘の事を大事に思うあまり、過保護過ぎる気がある、所謂、親バカである。

 

だが、たかが親バカと侮るなかれ。この男には地位と権力があり、その権力を娘の為に惜しまず投入するので非常に危険な面がある。

 

「少尉。君からは何も言わなかったのかね?」

 

「私が目にした時にはもう告白されていたので・・・失礼ながら、私にはあの時どうお声をかければよかったのか考えつきません」

 

「むう・・・クリスはドイツの宝・・・!有象無象の小僧になどくれてはやれん!少尉!その男子の情報は!」

 

「はい。風間ファミリーというお嬢様が属する仲良しグループの直江大和という男の子です」

 

いきり立つフランクとは裏腹に、マルギッテは至極冷静に報告を上げていた。

 

「直江、大和・・・直江・・・もしやヨーロッパで金を動かしている化物(けもの)か・・・!」

 

大和の両親、直江景清と直江咲は日本を捨て、諸外国で金を稼ぐ凄腕のビジネスマン。その手腕は見事と言う他なく、彼が関与する地域では大きく金の動きが変わる。

 

フランクも会ったことは無いが、相当なキレ者だと言う噂だ。

 

「・・・告白はクリスからしたという事だが、本当かね」

 

「はい。直江大和からではなく、お嬢様からです」

 

「くっ・・・青春を謳歌してほしいと言う私の甘い脇を突かれたか」

 

「・・・。」

 

憤るフランクだがマルギッテはどこか冷たい気持ちが溢れていた。

 

(士郎の言う通りですね・・・どちらかが決めつけてはいけない・・・私も、中将と同じだったわけですか)

 

自分も、自分を姉のように慕うクリスに甘い面だけを見せていたことに今更ながらに気付くマルギッテ。

 

「これは対処を考えなければならんな・・・」

 

そうして長考に入るフランクをマルギッテは見ることが出来なかった。きっと、自分が今どんな目で中将を見ているか悟られてしまうから。

 

幸い、フランクは本気で悩んでいるようで、マルギッテの視線には気付かなかった。

 

「よし。少尉。多少強引でも構わない。クリスを私の下へ連れてきてくれたまえ」

 

「・・・!お嬢様のお気持ちを無視して、ですか?」

 

それは、とても横暴な気がした。しかし、過保護なフランクはそれに気づかず。

 

「クリスの気持ちは私が確かめる!とにかく娘をその男から引き離すのだ!」

 

「・・・っ。分かりました」

 

と、致命的な命令をするのだった。

 

「それと猟犬部隊に召集を。クリスが認めるほどの男なら奪還に来る可能性がある。迎え撃つ準備だ」

 

「はい」

 

最後はもう冷たい返事だけだった。どれ程彼女の事が大事でもやはりやりすぎな想いでいっぱいだった。そしてその命に否を言えない自分にも苛立ちが募った。

 

「では、私はもう一度日本に戻ります」

 

「ああ。よろしく頼む」

 

そう言って彼女はその場を後にした。

 

コツコツと廊下を歩く音が虚しい。

 

(どうして中将はお嬢様のお気持ちを御認めにならないのか・・・これから恋を育むと言うのに強制的に国境をまたいで引き離すなど、確認と言いながら諦めさせることが前提だ)

 

ぎゅっと手を握り、手袋の下にある愛しい人からもらった指輪を感じて少しでも気を落ち着ける。

 

――――もし自分がクリスで、直江大和が士郎だったのなら――――

 

自分は失意のどん底に落ちるだろう。この先、男を傍に置くことも拒むかもしれない。

 

そのくらい、彼女は今回の命令に異議を申し立てたかった。

 

(ですが結果はこの体たらく・・・お嬢様・・・)

 

この後の展開に暗い気持ちになるマルギッテ。そこに、

 

「お、マルじゃん」

 

「リザ・・・」

 

銀髪をなびかせて現れたのは彼女の部下、猟犬部隊のリザ・ブリンカーだ。

 

「なんだー?そんな浮かない顔して。らしくないなー」

 

「そうですか?私とて――――」

 

そこまで言ってマルギッテは、ハッとした。今までの自分なら、こんな弱みは見せなかったはずだ。

 

「・・・これも彼のせい、ですね」

 

「んー?なんだって?」

 

「なんでもありません。近々猟犬部隊に召集がかかります。貴女も、準備しておくように」

 

「おーっす。なになに?今度の獲物は」

 

「それは・・・」

 

その言葉にマルギッテはまた暗い顔をしてしまう。

 

「・・・なんかマル、日本に行ってから表情豊かになったよな」

 

「え?」

 

リザの言葉に思考が真っ白になった。

 

「なんつーか・・・丸くなった?こう、角が無くなった感じ」

 

そう言って彼女は言った。

 

「今回の獲物、捕まえたくないんだろ」

 

「・・・。」

 

彼女は何事にも鼻が利く。好きなギャンブルにはからっきしだが、物事に対する嗅覚が尋常ではない。

 

そして偵察を得意とする彼女は欧州ニンジャ、西洋ニンジャなどと言われているが――――

 

(今は、明かせません)

 

「私が標的を選ぶのではありません。選ぶのは中将です」

 

そう言って彼女はその場を後にした。

 

(とにかくお嬢様を中将の下にお連れしなければ・・・)

 

ともすれば悲壮な空気を漂わせるマルギッテにやっぱりらしくないなーと首を傾げるリザ。

 

「リザ」

 

「んあ?フィーネ」

 

「どうしたこんな所で。コジマ達と訓練だろう?」

 

続いて現れたのは猟犬部隊の参謀。フィーネ・ベルクマンだ。彼女達とマルギッテは親友として、部隊を越えた絆を築いている。

 

「なんかマルの奴、任務に乗り気じゃないみたいでさ」

 

「なに?マルが?」

 

今まで一度もそんな姿を見せたことが無い同僚に驚きを隠せないフィーネ。

 

「任務の内容は聞いたのか?」

 

「いんや。とりあえず近々俺らに召集がかかるってことは聞いたけど、獲物についてはなーんも」

 

「ふむ・・・」

 

リザの言葉を聞いたフィーネは一時考え、

 

「まだ未確定情報なのだが・・・」

 

そう言って最近彼女が独自に調べていた調査の内容を話すのだった。

 

「ウッソ!?マジ!!?」

 

「マジだ」

 

それを聞いた彼女がただ座して待つわけもなく。この日、日本行きのチケットがもう一枚とられるのだった。

 

――――interlude out――――

 

日本では、

 

「んー!早く焼けないかしら!」

 

フンフン、フンフンと犬のように枯れ葉を集めて付けた焚火の周りをうろうろする一子。

 

「こらこら、火傷するぞ」

 

頭の両サイドに獣耳が見えそうな一子に士郎は苦笑して言う。

 

「悪いわね士郎、一子さん。評議会の手伝いをさせて」

 

そう言って黒髪をいじるのは最上旭。今日は彼女の要請で川神学園に植えられている樹木の枯れ葉除去作業に従事していた。

 

「いや、これぞ秋って感じだし・・・風物詩らしくていいじゃないか」

 

「お芋!お芋ー!」

 

嬉しそうに駆けまわる一子に童話の一節を思い出す士郎。

 

(犬は喜び庭駆けまわり・・・ってか?)

 

そろそろ雪でも降るんだろうか。彼もまた、一子が元気な子犬に見えてしまう一人であった。

 

「ねぇ士郎、指輪の事なんだけれど・・・」

 

「ああ。要望があるなら聞くぞ」

 

透き通った白い肌にキラリと光る指を見て彼女は将来の要望を彼に話す。

 

「こんな感じなのだけれど・・・出来るかしら?」

 

「問題ないぞ。でも意外だな。こういうのはみんなダイアモンドを選ぶかと思ってたんだけど」

 

彼女の要望では裏面にエメラルドを据えてほしいというものだった。

 

「エメラルドにも色々な意味があるけれど、新たなスタート、という意味もあるのよ。私達は色々あったけれど・・・士郎とのこれからを新たなスタートにしたいの」

 

「そう言う事か・・・わかった。よく調べてるんだな」

 

「それはそうよ。未来の結婚指輪に興味を持たない方が難しいわ」

 

そう言って機嫌良さそうに左手を見る旭に、士郎は何とも言えない顔で、

 

「それにしても本当に俺なんかでいいのか?」

 

「それは言いっこなしって決めたでしょう?・・・それに、士郎を繋ぎとめるには私一人じゃ足りないもの」

 

衛宮士郎を繋ぎとめるにはたった一人では足りないのだと彼女は結論付けている。彼を人の身のまま留まらせられるのは一人しかいない。

 

だが、それには彼の背負った業全てを捨てさせなければならないのだ。

 

武士娘たる自分達にそれは出来ない。だから複数人で士郎を繋ぎとめる。それが、あの夜残った彼女達の決意だ。

 

「わかった。もうこの話はしない。問題は、正室、側室システムがちゃんと機能すればいいけど」

 

口に出しながら、士郎はその辺心配していなかった。なにせあの総理だ。言ったなら必ずやり遂げるだろう。

 

(しかし我ながら結婚式とかどうするんだ?九回別々に?いくら何でも懐が持たないぞ・・・)

 

世知辛い悩みにうーむ、と悩みながら火掻き棒で枯れ葉の山を突く。

 

「ねぇねぇ士郎!お芋!焼けた!?」

 

「もうちょっとだな。・・・これなんかは良さそうだ」

 

しれっとアルミホイルに包んだサツマイモを解析して火の通り具合を確認する士郎。

 

こういう平和利用ならばいくらでもやっていいと思う士郎である。

 

「わーい!ちょうだいちょうだい!」

 

「わかったわかった。・・・熱いぞ。気をつけてな」

 

「ぐまぐま!ぐまぐま!」

 

熱いのもなんのそのと、勢いよく食べ始めた一子に微笑ましいものを感じる士郎。

 

「おう。やってるな」

 

「鍋島館長。学園長との話し合いはすんだんですか?」

 

全ての焼き芋が出来上がった辺りで鍋島が姿を現した。

 

「一応な。まだまだ詰めなきゃなんねぇとこがあるけどよ。ずっと座りっぱなしじゃ頭も回らねぇしな」

 

「左様。そういうことで、わしらも焼き芋食べたいぞい」

 

と、その後ろからひょっこり学園長もやってきた。

 

「構いませんよ。沢山焼いて配るつもりでしたし・・・なぁ、旭」

 

「ええ。折角ですから食べて行ってくださいな」

 

評議会の生徒に配ってもまだ余る焼き芋を二人にも渡す。

 

「おお、甘いな。やっぱ頭使った後は甘いもんにかぎるぜ」

 

そう言って葉巻を取り出そうとした鍋島の手を学園長がペシ、と叩いて落とした。

 

「生徒の前で吸うでない馬鹿者」

 

「こいつはいけねぇ。いつもの事だからよう、ついな」

 

あっはっはと笑いながらポケットに葉巻をしまう鍋島。

 

「そういえば、鍋島館長はなぜ川神にいらしたんですか?」

 

ふと気になっていたことを問う士郎。

 

「あーまだ秘密なんだがよ・・・逆に意見も聞きてぇし、ここだけの話ってことでいいかね?」

 

「・・・まぁいいじゃろ。確かに生徒の意見も聞きたいしの」

 

もぐもぐと焼き芋を頬張りながら頷く鉄心。

 

「実はよ、うちの西方十勇士を川神に合宿させようかと思っててな」

 

「ほう。それだけ、川神を買ってくれた、ってことですか」

 

「かうもなにもねぇだろ。東西戦、あれだけボコられて何も思わない方がおかしいぜ。他の生徒も来させたいけどそれは流石にってことで、代表の十勇士を預けたいわけだ」

 

「焔も川神に期待していたからいいと私は思います」

 

「焔?」

 

旭は基本名前読みなので親しくないと誰だか伝わらない。

 

「そいつは大友だ。ほら、爆撃が得意の」

 

「ああ、あの子ですか・・・そう言えば、源氏大戦で旭は十勇士を数に入れてたんだったな」

 

最近の事なのに何処か懐かしい源氏大戦である。あの戦いで彼女は、大友、鉢屋、長曾我部、毛利を外部助っ人として数に入れていた。

 

ちなみに最後の一枠は揚羽だったので、士郎は控室でかなり肝を冷やしたそうな。

 

「十勇士は俺が選りすぐった特別なやつらでよ。これでも自信があったんだがそれも木っ端微塵にされちまった。だから、川神に頭下げて鍛えてもらおうと思ったわけだ」

 

「なるほど・・・西との交流という事でもいいことかと。戦いあり気なのが何処かいただけませんが」

 

「そういや初日の矢はお前さんが射ったんだよな?あれには肝を冷やしたぜ。あの距離をあの速度、あの正確さで射れるのはお前さんぐらいだ。天下五弓のいいとこ全部合わせたような奴だよお前さんは」

 

「衛宮君に五弓の称号はちと物足りん気がするがの」

 

「ちげぇねぇ!うちでは『神弓の衛宮』って恐れられてるぜ?」

 

「また大それた名前を・・・」

 

面倒ごとが増えねばいいがと士郎は頭を抱える。

 

「実際、初手お前さんの弓でほぼ壊滅したんだからな。それも手加減ありきでだ。あれほどの恐怖は中々無いって評判だぜ」

 

なにせこれから進軍しようとした矢先に急所に矢が飛んでくるのだ。ばらまくようにならまだしも、正確無比に次々にやられるのはホラー映画並みに恐怖を覚えたらしい。

 

「士郎の射程内で外すことはないもの。鍋島さんも、もしかしたら中ったのではなくて?」

 

「恥ずかしいぜ。この俺が額に当たってから掴んだんだからな」

 

「衛宮君が手加減していたから良かったものを。本気なら撃ち抜かれとるぞい」

 

「学園長、それ以上は・・・」

 

魔術の事に直結しかねないので話題を変えてもらう。

 

「うむ。分かっておる。しかし、今日は一段と冷えるのう」

 

「だな。焚火があったけぇぜ」

 

枯れ葉が非常に多い上、サツマイモも結構な量が準備されているので第二陣が焼かれている。

 

「士郎ー」

 

「お疲れ様ー」

 

「お?大和にモロ。そっちも終わったのか?」

 

士郎とは別の区域を掃除していた大和達が帰ってきた。

 

「終わったぞ。意外と範囲広くて大変だった」

 

「甘い匂い・・・焼き芋してるの?」

 

彼らもフンフンと鼻を鳴らしていい匂いを出している焼き芋に目が止まる。

 

「焼きたてがあるぞ。食べるか?」

 

「「もちろん!!」」

 

そう言って彼らも枯れ葉の入った大きな袋を置いて焼き芋にかぶりつく。

 

「んー!甘い!」

 

「だね!品種は何だろう・・・」

 

サツマイモは品種によって食感や焼き上がりが変わる。今回は食通のクマちゃんが準備したサツマイモで、ホクホクではなくねっとりとした焼き加減になる品種である。

 

甘みが強く、少し重たい食感が、疲れて甘味を求めていた体に染みる。

 

「士っ郎ー♪」

 

「ごふっ」

 

丁度芋を口に運んでいたところに百代が抱き着いた。

 

「お疲れ様ですモモ先輩抜け駆けはいかがなものかと私もいきます!」

 

怒涛の早口で文句を言って由紀江も士郎に突撃する。

 

「なんだよぅ今は遠慮しろよぅ」

 

「モモ先輩こそ遠慮してください!」

 

「まゆっちだってやるときゃやるんだぜ?」

 

「うがが・・・」

 

二人にこれでもかという力で抱き着かれて窒息寸前な士郎。

 

(桃源郷の向こうは死か・・・)

 

なんてくだらないことを考えつつ、士郎は大和に話題を振る。

 

「大和。あの後結局どうしたんだ?」

 

「う・・・」

 

それまで焼き芋を堪能していた大和が止まった。

 

「なんだ、先送りか?」

 

「士郎にだけは言われたくない!・・・その、京が自分とクリス両方を恋人にすればいいなんて言うから・・・少し考えさせてくれって頼んだ」

 

「なんでぇ。随分果報者な兄ちゃんじゃねぇか」

 

「もっとすごい人が身近に居るから忘れがちだけど、大和も相当だよね・・・」

 

ここにガクトが居たら殺気をあらわにしそうであるが、彼は今レオニダスブートキャンプに参加しているので今回は不在。キャップもいい加減冒険がしたいと旅立ったので不在だ。

 

「そうか。俺はむしろ大和に賛成だぞ。いきなり多人数を恋人になんて考えられないよな・・・」

 

そう言って士郎は遠い目をした。

 

(ちなみに士郎はやっぱり既成事実か?)

 

(・・・襲われたんだ)

 

はぁ、と深いため息を吐く士郎に、なんとなく会話の内容が分かる旭はクスクスと笑っていた。

 

「後は義経、弁慶ペアの所と林冲、椎名さんペア。マルギッテ、クリスさんペアの所ね」

 

「・・・。」

 

旭の言葉にふと考える士郎。

 

(マルギッテはどうするつもりなんだろうな)

 

出来れば実力行使などしないでほしいが、きっとそれは叶わぬのだろうと士郎は思う。

 

 

 

――――interlude――――

 

落ち葉集めをしていたクリスとマルギッテは大きな袋を持って皆が集まっている場所へと帰ろうとしていた。

 

「いっぱい取れたな!」

 

「はい。少々寂しい風景ですが春にはまた花をつけるでしょう」

 

きれいさっぱりと片付けられた担当区を見てほっと息を吐く二人。

 

「さ!マルさんみんなの所に戻ろう!焼き芋が楽しみなんだ!!」

 

そう言って袋を持って行こうとする彼女に、

 

「あの、お嬢様」

 

と、マルギッテは声をかけた。

 

「んー?なんだ、マルさん」

 

「少し、お時間を頂けますか?」

 

「?」

 

マルギッテにそう言われて引き返すクリス。

 

「なんだー?」

 

「その・・・直江大和とのことなのですが・・・」

 

「あう・・・大和の事か・・・」

 

恥ずかし気にクリスは俯いた。

 

(こういう時、どう聞けばいいのでしょうか・・・)

 

聞いておいて困ったように口を噤むマルギッテ。

 

「多分・・・いや、自分の初恋だ」

 

「・・・っ!お嬢様・・・」

 

「大和は凄いんだ。いつもたくさんの事を気にかけて、それで私にも気を使ってくれて・・・」

 

それは、彼女がこの学園に来てからどんなふうに接してきたのか語ってくれた。

 

「最初は姑息な奴だなって、嫌な奴だなって思ったんだ。でも――――」

 

マルギッテはその想いを聞かされる度、胸が締め付けれる思いだった。

 

(そうです。私もお嬢様と・・・)

 

彼女もクリスと同じだった。正体不明の謎の人物である衛宮士郎に苛立ちを覚えながら、彼の不思議な魅力に取りつかれて行った。

 

そしていつしか――――

 

「好きに・・・なってたんだ」

 

「お嬢様・・・」

 

ここに来てマルギッテはどうしようもない泣きたくなるような気持ちに襲われていた。何故彼女の気持ちを摘み取るようなことをしなければならないのか。

 

(私と同じ・・・私と同じではありませんか)

 

恥ずかしそうに、でも嬉しそうに片思いの彼の事を話すクリスにマルギッテは辛くてたまらなかった。

 

だがそんな時だった、

 

「だから、自信を持って父様に紹介するんだ」

 

「え?」

 

クリスは眩しい笑顔で、

 

「この人が自分が好きになった人ですって」

 

「――――」

 

どこまでも真っ直ぐな、クリスらしい言葉だった

 

(・・・それなら)

 

マルギッテはクリスを信じることにした。たとえそれが上司であるフランクを裏切る行為だとしても。

 

――――interlude out――――

 

学園の掃除を終えて帰路に着く士郎と林冲。他の面々はこの後予定があるという事で別れた。

 

「川神学園は広いから、思った以上に時間がかかってしまった」

 

「そうだな。でも、林冲と京も随分早く帰ってきたじゃないか」

 

「椎名が早く大和に合流したいと言って猛スピードで片付けたんだ。私は無理しないように言ったんだけど・・・」

 

大和ー!と叫びながら大急ぎで掃除する京が容易に想像できて士郎はあはは・・・と乾いた笑いを上げた。

 

「京らしいな」

 

何せクリスが告白してしまったので尚更危機感を覚えているのだろう。今のところ、大和は返答を保留としているようだが・・・

 

「大和も、私達と同じようにすればいいのに」

 

「え」

 

林冲の言葉にピキリと固まる士郎。すかさず士郎の腕を抱きしめる林冲。

 

「・・・士郎っ」

 

固まる士郎に素早くキスが落とされた。

 

「り、林冲!人前でなんてことを・・・!」

 

人気(ひとけ)ならないぞ」

 

そう言って笑う林冲に士郎はカクリと肩を落とした。

 

「俺はこういうの慣れてないから本当に人が居ない時にしてくれ・・・」

 

「そうだな。バレたら大変だからな」

 

クスクスと楽し気に言う林冲に、本当にこれでいいんだろうかと思う士郎。

 

そんな時、

 

(殺気!?)

 

突如感じた殺気に士郎は干将を投影。林冲の手を引いて投擲されたそれを叩き落す。

 

キキン!

 

「・・・っ士郎?」

 

「これは――――」

 

クナイだ。それもきちんと手入れのされた。

 

「あーあ。黙ってチクろうと思ったのに手ぇ出しちゃったよ」

 

そう言って銀髪の女性が姿を現した。

 

「・・・お前は」

 

士郎を害されたとあって林冲の相手の名を問う声は冷たかった。

 

「折角マルに男が出来たって言うから期待したのに。こんな浮気野郎だったなんてね」

 

「マル・・・?マルギッテの知り合いか」

 

黒いライダースーツに身を包んだ女性がさらに手にクナイを構える。

 

「手も出しちゃったことだし、ちょっとばかし痛い目に遭って貰いますかね!」

 

「まて!君はマルギッテの・・・くっ!」

 

キィン!と次々と投擲されるクナイを干将で叩き落す士郎。

 

「士郎!」

 

カシュン!と林冲の手元で士郎が開発した携帯如意棒が展開し、彼女も彼に飛来するクナイを弾く。

 

「へぇ。マルを騙すだけあるじゃん。彼女(・・)さんも腕利きってことか」

 

「・・・士郎を傷つけるのは許さない」

 

「二体一だけどいっかー。そこはそれこっちも数を増やしてっと」

 

銀髪の女性が分身する。

 

「・・・忍者か」

 

それにしては彼女は日本人の顔つきをしていない。

 

とにもかくにも士郎はこの突然の訪問者と急な戦闘を強いられることになった。

 

 

――――interlude――――

 

時間は少し巻き戻る。銀髪の女性、リザ・ブリンカーが川神を訪れて、マルギッテが思いを寄せているという衛宮士郎を彼女は探していた。

 

「んー参ったなー。知名度がありすぎて逆に見つからないと来た」

 

道端を行く人に、このあたりで衛宮という名の人物を知らないかと聞けば大体返ってくる赤い英雄という単語とレッドの兄ちゃん!という声。

 

何でも、過去に衛宮士郎なる人物は英雄的な行動により市民に愛される有名人となっていた。

 

「衛宮?ああ、衛宮士郎君ですね。彼は川神の誇りですよ」

 

「知ってるー!レッドの兄ちゃんでしょ?俺サインもらったんだー!」

 

と、とにかく大人気の人物。川神学園に通う生徒の一人だという事は分かったが、有名過ぎてそれ以上の情報は得られなかった。

 

「川神学園かー・・・あそこはちょっと嫌な予感するんだよなぁ・・・入ったら速攻で見つかりそう」

 

彼女の予想は的を射ていた。川神学園には士郎や百代以外は分からない川神鉄心の気の結界が張り巡らされている。入ればすぐに素性確認の人物が現れるだろう。

 

「それは西洋ニンジャとしちゃ名折れなんでね。ひょっこり出てきてくんないかなー」

 

出会ったら、男達を魅了してやまない、ともすれば若干迷惑なこの体を使って色仕掛けしてちょっと危ない薬を飲ませて事実確認するだけ。

 

十分に危ない計画を彼女は立てていたのだが。

 

「それじゃあ士郎、林冲さん、また明日」

 

「ああ。また明日な」

 

「またねー!」

 

思わずそっと近くの木に気配を殺して隠れる。

 

(あそこは川神学園の校門。士郎って言う言葉。あれが目当ての衛宮士郎くん、かな?)

 

銀髪の背の高い青年が同級生だろう少年少女に手を振って帰路についていた。

 

『大和も、私達と同じようにすればいいのに』

 

『え』

 

何やら二人は腕を組んで恋人のようである。

 

(ほーう。マルともあろうものが浮気するような奴と婚約したのか)

 

その様子を見て大体の事を察したリザは冷たい感情と共にそう思った。

 

フィーネの情報では、マルギッテは衛宮士郎なる青年と婚約を結び、仲睦まじくしているという話だったが、自分はどうやら見てはいけないものを見てしまったようだ。

 

しかも、

 

『・・・士郎っ』

 

『俺はこういうの慣れてないから本当に人が居ない時にしてくれ・・・』

 

『そうだな。バレたら大変だからな』

 

「・・・。」

 

そのやり取りにリザは怒りがこみ上げてきた。

 

(へーほーん。分かっててやってるわけ。これはちょっと許せないなぁ)

 

ここまで見せつけられるようにやられたら、親友である彼女も怒りを抱く。すっと手にクナイをもって、

 

「シッ!!!」

 

渾身の力を込めて投擲した。

 

――――interlude out――――

 




今回はここまでです。詰め込みきれなかったなぁと恥じております。結構interludeも含めて話の方向性を一本か二本にしないと、話しがごちゃりそうになりますね。

このまま書き続けても良かったのですがキリのいいところを見失うと危ないのでここで一区切りさせていただくことにしました。

次回も引き続きドイツ関連です。では皆さま次回もよろしくお願いします!
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