真剣で衛宮士郎を愛しなさい!   作:Marthe

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皆さんこんばんにちわ。最近また寝不足の作者でございます。

今回は士郎がついに猟犬部隊の面々とお目見え!

今回も楽しんでもらえたら幸いです。

では!


猟犬部隊

チュンチュンという鳥の軽い鳴き声に士郎は目を覚ました。

 

「ん・・・朝か」

 

どうにも日本時間が体に染みついているので変な感覚だ。

 

「スゥ・・・スゥ・・・」

 

「・・・。」

 

ふっと、隣で眠る赤髪の女性を見て、士郎はガシガシと頭を掻いて彼女を起こさぬようベッドからそっと出た。

 

「すぅー・・・」

 

窓を開けた士郎は深く深く息を吸った。そして吐き出せば鈍った感覚はもうなくなっている。

 

「いい朝だな」

 

空気は冬の到来を示すように冷たく、透き通っている。

 

「大和はもう着いたか?」

 

パチリと携帯をつけるとそこにはもう間もなく到着の文字が。大和達も順調のようである。

 

予想が正しければ今日、中将と激突することになるだろう。

 

「・・・。」

 

そんな中、士郎は自分に何が出来るのか考えていた。

 

(中将は今だにクリスの言葉を聞きはしないか)

 

昨日、夜中までクリスとフランクは言い合いをしていたが、結局、二人は平行線のまま一日を終えた。

 

「俺も挨拶しなきゃいけないから早くまとまるといいんだがな」

 

クリスと大和の事で自分がでしゃばるのは何か違う気がして、士郎はずっと二人のいいようにさせていたが、本来なら士郎もマルギッテの事を挨拶せねばならなかったのだ。

 

だが、何事にもタイミングというのは大事で、特に士郎の場合特殊な環境となるので冷静さが求められる。

 

今話しても火に油を注ぐことになりかねないだろう。

 

「ん・・・士郎?」

 

「ああ。おはよう、マル」

 

冷たい空気に気付いたのか眠っていたマルギッテが起きた。

 

ぱたりと窓を閉めて士郎はベッドに座る。

 

「まだ寝ててもいいんだぞ。ちょっと早起きが過ぎる」

 

「そう・・・ですね。では――――」

 

ポヤポヤと眠気を残したままのマルギッテはそう言って士郎の腰に抱き着くようにまた眠ってしまった。

 

「すべては今日、だな」

 

いつもの凛とした姿はなく、無邪気に眠るマルギッテの頭を撫でて士郎は波乱に満ちるであろう一日を開始するのだった。

 

 

 

 

「おっはーマル。衛宮」

 

「・・・。」

 

「おはようございます、リザさん」

 

ふあーと欠伸をして厨房に来たのはリザだった。

 

「何してんの?」

 

「朝食の準備ですよ。な、マル」

 

「・・・。」

 

問われたマルギッテはツンとそっぽを向く。

 

「・・・またマルの不思議な面が見れたな。なんだ、昨日の夜、喧嘩でもしたのか?」

 

「していません」

 

「あはは・・・朝、寝顔を見られたのが恥ずかし・・・おっと」

 

額を狙った軽い一撃を躱して士郎はやはり笑うのだった。

 

「なんだー犬も食わない夫婦喧嘩かよー。それより今日の朝飯何?」

 

そうと分かれば問題ないとリザは朝食を覗く。

 

「昨日のリザさんのジャムが美味しかったのでシンプルにパンにスクランブルエッグ、ベーコンサラダですかね。何処であんなに美味しいジャムを覚えたんです?」

 

士郎が聞くがリザは面白そうに、

 

「昔からの取り柄だよ。マルは・・・スクランブルエッグか」

 

士郎がサラダの準備をしている間にマルギッテがスクランブルエッグとベーコンを焼き上げている。パンは、リザ謹製のジャムで食べてもらうのでトーストにはしない。

 

「なんです。じろじろ見て」

 

「いやーマルが仲睦まじく料理してるのが不思議でさ。いつもこうなのか?」

 

「ええ。基本食事の準備の時マルは手伝ってくれますよ」

 

「・・・。」

 

「へぇ・・・マル、ぞっこんだなー」

 

うるさい。と返してマルギッテは最後の分も皿に取り分けた。

 

「士郎、こちらは終わりました。私はお嬢様を起こしに行ってきます」

 

「了解。後はこっちで準備しておくよ」

 

「リザ。士郎の邪魔はしないように」

 

「わかってるわかってる。んじゃー俺は食卓に運ぶよ。こっちは持って行っていいんだろ?」

 

「はい。後はパンをバスケットに入れて・・・」

 

パンは数種類準備した。通常の食パン、食べやすいように切ったフランスパン、バターロール。この三種類だ。

 

どれもジャムに合うだろう。

 

食卓に皿などを準備しているとまずはフランクが起きて来た。

 

「おはよう諸君。今日も冷えるが、良い朝だね」

 

「おはようございます」

 

「おはようございます。勝手ながら、朝食の準備をさせていただきました」

 

「いやいや。助かるよ。うちはクリスやマルギッテ、リザもいるが、私も朝食はしっかり取る方でね。実に美味しそうだ」

 

そう言って嬉しそうにするフランクだが若干の疲れが見える。昨日、夜遅くまでクリスと言い合いをしていたのが響いているのだろう。

 

「おはようー・・・」

 

「おはよう、クリス。もう目を覚まさないと食事が出来ないぞ」

 

「わかってるー。父様もおはようございます」

 

「うむ。おはよう」

 

それっきり言葉を返さなくなった二人に苦笑して士郎は各々が席に着いた所で手を合わせて食事を始める。

 

「うむ、うむ・・・リザ君のジャムはどのようなパンにも合うな」

 

「そうですね。マル、玉子もベーコンもいい塩梅だな」

 

「ありがとうございます」

 

「この料理はマルギッテも作ったのかね?」

 

「ええ。スクランブルエッグとベーコンは彼女が焼きました」

 

「た、ただの玉子とベーコンですよ」

 

「いやいや、スクランブルエッグなど火の通し方が絶妙だ。こういう簡単な料理こそ腕を試されるものだ」

 

「同感です。マル、世の中にはスクランブルエッグすら作れない奴もいるんだぞ」

 

「そういうものですか・・・」

 

ちなみに作れなかったのは冬木の虎である。玉子を焼くだけだというのに不思議調理を施して謎のどんぶり飯を作ったのは懐かしい。

 

お味のほどは、セイバーが無言になった、とだけ言っておこう。

 

「うん!玉子とベーコンもいい味だな!これを野菜と一緒に挟んでも美味しいぞ!」

 

「お、クリスは野菜もしっかり食べて偉いじゃないか」

 

「それは自分を子供扱いしすぎだろう!」

 

「じゃあ嫌いなものないのか?」

 

「うぐ・・・」

 

閉口するクリスにあはは!と笑ってからフランクは今日の予定を話した。

 

「食事を続けながら聞いてくれたまえ。今日は衛宮君と猟犬部隊の視察をする。少尉、通達はしてあるかな?」

 

「はい。実戦形式の摸擬戦をする予定です」

 

「うむ。そこで衛宮君には色々と感じたことを教えてもらいたく思う。なにも遠慮することは無いので、どんどん意見を言ってくれたまえ」

 

「私が思ったことを話せばよろしいのですね?」

 

「そうだとも。テロリストを捕縛した際の指示は君がしたと聞く。我々も意外な弱点を抱えているかもしれないからね。ぜひ遠慮せず指摘してほしい」

 

「わかりました」

 

「クリス。話し合いは昨日で終わりにできなかったが、私は依然納得はいっていない。だが軍務に出なければならないのでその話はまた今夜だ」

 

「わかっています。軍務の邪魔をしようとは思いません」

 

「ではまずは猟犬部隊の紹介だな。食事を終えて少し落ち着いたら始めるとしよう」

 

「「了解しました」」

 

揃って返すマルギッテとリザに士郎は何やら不思議な感慨深さを感じていたが、その気持ちはひとまず置いておくことにした。

 

 

 

 

 

食事を終えて気を落ち着けた後、いよいよ猟犬部隊の紹介である。

 

「衛宮君、こちらに。今から摸擬実戦を行う。それを見学しながら紹介しよう」

 

「はい。・・・かなり本格的にやるようですね」

 

流石大国と言うべきか、日本の自衛隊とは違うれっきとした『軍』だからか。空気がガラリと変わっていた。

 

「もちろんだとも。我々は軍だ。祖国ドイツを守る精鋭足るもの油断は無くしたいのでね」

 

『摸擬戦!始めッ!!!』

 

左右に分かれた部隊が一斉に激突する。

 

「暴風!」

 

硬さが売りだろう巨大な鎧を身に纏った人物が、棍棒で強力な風を巻き起こす。

 

その勢いは強烈で、防御態勢を取り損ねた数人が吹き飛ばされる。

 

「今強力な風を起こしたのはテルマ・ミュラー。見ての通り防御力を活かした前衛であり殿だ。あの子は中々に強力だぞ」

 

「ふむ・・・」

 

布を巻いたメイスで向かってくるものを弾き飛ばし、堅実に後ろのもの達を守る。だが、

 

(鎧の接合が甘い部分があるな。あれは・・・他の出来を見るに、間に合わなかったという所か)

 

解析した結果、あの鎧には現在とても弱い部分があることを見抜く士郎。

 

しかしそれは今ここで指摘してもしょうがないので黙っておく。

 

「コジマパンチ!」

 

ドゴーン!と映画か何かのように小柄な少女の一撃で中を舞う。

 

「・・・あれは?」

 

「彼女はコジマ・ロルバッハ。部隊の攻撃担当だ。彼女は先天性の怪力を持っていてね。あのように小柄ながら攻撃力は絶大だ」

 

「コジマ・・・失礼ですが、彼女はドイツ出身・・・ですか?」

 

名前からしてコジマとは小島をさしているように思えてならない。

 

「ああ。彼女は少々特殊な出自でね・・・あまり詮索はしないでもらいたい」

 

「わかりました。彼女をサポートするのがリザさんですね」

 

コジマと呼ばれる少女が突撃するのに合わせてリザが戦場を駆け巡っている。

 

「ああ。彼女は偵察、斥候部隊のリザ・ブリンカー。彼女はとても優秀でね。日本の忍者に触発されて、独学で忍術を修めている。そして偵察部隊を駆る彼女は物事の機微によく気が付く」

 

「こらテルー!あんま高く舞い上げるなって!!」

 

「それは私に手加減をしろという事か?」

 

「違うぞー!あんなに高く舞い上げたら着地で怪我しちゃうからだぞ!」

 

「それは仕方のないことだろう」

 

「まったく、相変わらず頭の中身まで鉄でカチカチなんだから・・・」

 

「やかましい!ゆくぞ!」

 

ズンと鎧の人、テルマが前に出る。意外と機敏に動くあの鎧を突破するにはコジマの攻撃力が必要だろう。リザの投げるクナイや手裏剣では話にならない。

 

そんな中、稲妻のようにテルマの横に陣取る赤髪。

 

「テルマ。無理をするなと言ったでしょう。コジマとリザ相手は一人では止められません」

 

「マルギッテ少尉・・・」

 

コジマを要に本陣側に入り込もうとしていたリザを止めたのはマルギッテだ。

 

「マルギッテは司令官ではないのですか?」

 

士郎の問いにいい所に気が付いたとフランクが頷く。

 

「マルギッテは司令官だが、前線で戦闘もこなす旗印だ。いうなれば戦闘指揮官、と言った所か」

 

「ではあちらの女性が参謀ですか」

 

前線には出てこない眼鏡をかけた切れ目の女性を見る。

 

「流石だな。彼女はフィーネ・ベルクマン。猟犬部隊を支える参謀だ。彼女も剣術を修めてはいるが、情報解析と作戦立案が主だ」

 

「やはりマルギッテが出てくると拮抗してしまうな。ジーク!怪我人はどうだ?」

 

「うん・・・大丈夫だよ」

 

ジークと呼ばれた女性にしては背丈の大きな女性が医療班として動いている。その手腕は見事なものであり、士郎の目を引いた。

 

「もしやあの女性も猟犬部隊の要ですか?」

 

「君の洞察力には恐れ入るよ。そうだとも。彼女はジークルーン・コールシュライバー。傷の治療に非常に長けた衛生兵だ。彼女は特殊能力とも取れるほど治療に長けていてね。病気の類には弱いが怪我に関するものなら大抵は治療可能だ」

 

「・・・。」

 

どうやら猟犬部隊はエリートと言われるだけあり特殊能力持ちが多数いるようだ。

 

「編成としては特殊能力持ちと高い実力の持ち主を組み合わせている感じですね」

 

「その通りだ。特殊能力を持った者は確かに強力だが、一辺倒になってしまうからね。そこは地力の高い者を組み合わせることでバランスを保っている」

 

「ふむ・・・」

 

戦闘は佳境に入った。マルギッテと鎧のテルマがリザとコジマを上手くかく乱し、他の部隊が雪崩れ込んでいる。

 

しかしそれも意外な方法で戦線を維持した。フィーネと呼ばれた女性が剣を抜き、戦いに参加したのだ。

 

「あれ!?フィーネも来るの?」

 

「作戦と違うけど、こっち旗色悪いからなー」

 

「コジマの言う通りだ。このままではわが軍は押し切られる。私は部隊の維持に回ろう」

 

結果的に猟犬部隊の演習は互いに消耗し、どちらが押し切ることもなく収束した。

 

「見事な練度ですね」

 

「君に言ってもらえて光栄だ。では、問題点はどうかな?」

 

「そうですね・・・」

 

士郎は腕を組み考える。

 

「正直、私が敵ならば、と考えればいくらか出てはきますが」

 

「ほう。君自身が仮想敵か」

 

「はい。自分が敵ならば末端から攻めていくでしょう。そして最初に行きつくのは――――」

 

背丈のある衛生兵の女性、ジークを見た。

 

「彼女に行き当たるでしょう。見た所、彼女に武の心得は無い様子。なら制圧するのは容易い」

 

「ふむ。分かり切っていたことだがそこを突かれるか。そして?」

 

「異変に真っ先に気付くのはマルギッテかリザさん、もしくはフィーネ・ベルクマンさんですかね。斥候としてリザさん一人が出てくるならこれを撃破。猟犬部隊は強力ですが分断して、単体撃破ならある程度の腕があれば可能性は出てくる」

 

「リザ君を単体撃破か・・・君にそれが出来ると?」

 

鋭い眼光で言うフランクだが士郎は何も気を負うことなく頷いた。

 

「彼女とは日本で戦闘になっています。その時の事を考えれば、私は難しくないです」

 

「なんと・・・既にリザ君とは交戦経験があったのか」

 

不幸な巡り合わせだったが彼女との戦闘経験はここで生きた。

 

「残るはコジマ・ロルバッハ、テルマ・ミュラー、マルギッテ辺りですが・・・テルマ嬢については特に問題はありませんね」

 

そう言う士郎にフランクは驚いた顔で振り返った。

 

「なぜテルマが女性だと?」

 

「猟犬部隊は全て女性でしょう?となればあれは機動兵器だと想像が付きます」

 

半分は嘘だ。士郎は猟犬部隊全てが女性とは知らない。だが、解析結果、中に女性が搭乗していることは理解できた。

 

「恐ろしい観察眼だな・・・だがあの鉄のミュラーをどう攻略する?」

 

「問題ありません。確かに彼女は鉄の鎧を身に纏っていますが、中身は人間です。いくらでも対処のしようはあります。例えば――――」

 

そう言って士郎は手近な石を拾った。

 

「こんなものでも」

 

ポン、ポンと手で遊びながら士郎は言った。

 

「鉄を石の礫で、か・・・それは是非見せてもらいたいものだな」

 

「まぁ特殊な技法ですので私なら、と言った所ですが。しかし、あの鉄の鎧は見事な作りですね。鉄をよく鍛えている。それ故に、今回の戦闘に間に合わなかった不備が気になりますが」

 

「あの鎧に不備?」

 

「ええ。あの鎧は今回鎧の部分を新調したのでしょう。接合が甘い部分があります」

 

士郎の指摘通り、そのことに気付いたのであろうコジマが一点を集中して狙い始めた。

 

「彼女は部隊全体の前衛だ。撃破可能ならば逆に標的となってしまうな・・・それで、次はどうするのかね?」

 

「残るは――――」

 

そうして弱点を洗い出すフランクとその都度どうやって攻略するかを語る士郎。そんな二人の前で遂に摸擬戦終了の笛が鳴った。

 

「時間まで休め。フィーネ、行きますよ」

 

「わかった」

 

言葉少なく会話する二人はフランクと士郎のいるところまでやって来た。

 

「少尉、見事な訓練だった。これならば我らドイツも安泰だな」

 

士郎との話は置いておいてフランクは代表である二人を褒めた。

 

「いえ。まだまだ至らぬ所ばかりです。今後も油断なく鍛えていきます」

 

「マルギッテ少尉の言う通りかと。今回何点か指摘すべき場所があったように思います」

 

マルギッテに続きフィーネと呼ばれる女性がバインダーを手に眼鏡をクイっとあげた。

 

「うむ。こちらの衛宮士郎君とも話したが我々にも改善点は多いようだ。しかし、今の君達が心もとない、というわけではない。今後も用心していこう」

 

「「はっ」」

 

ピタリと敬礼する二人を見やってフランクは振り返って士郎を見た。

 

「彼は日本の英雄、衛宮士郎君だ。小休止を挟んだら彼とも摸擬戦をしてもらいたい」

 

「構いませんが・・・私達に思う所が?」

 

恐る恐る聞くマルギッテだがフランクは悪戯を思いついた子供のように、

 

「いや。彼が自分を仮想敵として色々教えてくれたのでね。是非見せてもらおうというわけだ」

 

「・・・士郎。双方共に危険は無いのですか?」

 

黙って話を聞いていた士郎にマルギッテは問いかける。

 

「問題はない。マルギッテを除く5人は私単騎で制圧可能と説明しただけだ」

 

「!」

 

「ほう、ただの強がり・・・というわけでもなさそうですね」

 

マルギッテは不安の色を瞳に宿し、フィーネは面白いと獰猛な笑みを浮かべた。

 

「では衛宮君、頼むよ」

 

「わかりました」

 

はっはっは!と笑ってフランクは士郎を連れ出した。

 

 

 

 

 

「それでは。猟犬部隊、部隊長と衛宮士郎氏による摸擬戦を始めるッ!」

 

マルギッテのよく通る声が響き渡る。

 

「うげー・・・衛宮とかー」

 

「あの男の人なんだ!?強いのか!?」

 

「私達を単騎で仕留められると豪語したそうだ」

 

「なんだと・・・!!」

 

それを聞いたテルマが怒気を露わにするが、

 

「やめときなーテル。ありゃ本物の化け物だぜ。俺の時も一瞬嫌な想像が過ったからなー」

 

「リザがそう言うなら強いんだな!ワクワク!ワクワク!」

 

「この鉄のミュラーが叩き潰してくれる・・・!」

 

「みんな、怪我しないようにね?」

 

一人、ジークだけが落ち着いて注意を促していた。

 

「それでは双方――――」

 

五人、それもドイツ一腕の立つ猟犬部隊の部隊長と士郎がにらみ合う。

 

「始めッ!!」

 

合図と共にリザが駆けた。

 

「リベンジマッチだ!今度はそうやられは――――」

 

と言った矢先だった。

 

ビシ!

 

「痛!?」

 

突然額を襲った痛みに何事かと思うと、士郎の手、正確には右手が不自然に動いていた。

 

ビシビシビシビシッ!!!

 

「いたたた!?うわー!!?」

 

連続で体のいたるところを攻撃されてリザはテルマの後ろに隠れた。

 

「痛ー・・・な、なんだったんだ今の」

 

「指弾だ。両手でゴム弾を放っていたようだ」

 

「リベンジどころか初手で撃破されるリザー」

 

「うるさいよ!?」

 

当然実弾だった場合、もしくは士郎が本気で撃った場合、リザは死亡である。

 

という事でリザは離れることになった。

 

「リザちゃん大丈夫?」

 

「大丈夫だけど・・・ひえー、ヒリヒリする」

 

指弾を受けた場所は赤くなっていた。

 

「ふん。指弾とは姑息な。だがその程度でこの鉄のミュラーは――――」

 

「あ」

 

完全にフラグである次の瞬間テルマはとんでもない衝撃に襲われることとなった。

 

ドガン!

 

「ぬう!?」

 

「て、テルー!?」

 

「テルマ!!」

 

鎧が少しばかり陥没した。今度はなんだとみると、

 

「石・・・?」

 

ドン!ガン!ガガン!

 

「この、く、ぬわ!!」

 

もはや両手をクロスして防ぐしかないテルマ。この音の正体は士郎が投擲している石。士郎はただの投擲ではなく、黒鍵の鉄甲作用を利用して石を投げているのだ。

 

その一撃は強力無比。まるでトラックか何かが激突しているかのような衝撃を味わうテルマ。

 

「パーンチ!!」

 

何もない眼前をコジマが殴り飛ばすと強力な風が吹き荒れた。しかしその程度では鉄甲作用の効いた石を阻むことは出来ない。結果的にコジマの行動は虚しい結果となり、

 

ガコン!ヒューン・・・

 

「テルマ!」

 

鎧は膝をつき動かなくなってしまった。

 

「これで二つ」

 

そして士郎はその場を跳んで避ける。丁度そこにコジマの拳が着弾した。

 

「ぬー・・・リザとテルを倒すだけあるな!避けられた」

 

「そう易々と食らいはしないさ。だが、君のその怪力は賞賛に値する。故に――――」

 

バサ!と赤い布が走った。

 

「なんだなんだ?布に包まれたぞ?」

 

しかしコジマはそれをビリビリと破り拘束を解く。

 

「あきれた怪力だ。だが十分届く」

 

狙いはフィーネ。彼女を取れば必然的に勝敗は決まる。

 

「コジマを謀ろうなんて出来ないぞ!」

 

ドン!とコジマのいる地面が爆発する。彼女は地面をその怪力で殴りつけて飛んできたのだ。

 

「やれやれ、本当に呆れるな」

 

取り出したるはまた赤い布。

 

「闘牛士にでもなった気分だな」

 

バサ!

 

「もが!?」

 

今度は包まず、受け流すことで位置を入れ替える。

 

「あれ?あー!!!」

 

「コジマ!?」

 

まさか勢いを殺さずに自分に向けてくるとは思っていなかったフィーネの足が一瞬硬直し、

 

「わぷ!」

 

「ぬ!」

 

ドシャ、と二人はもつれ合って倒れた。

 

「そこまでッ!」

 

結局彼女等は衛宮士郎を攻略できず、あっさりと負けてしまった。

 

 

 

 

 

「くぬー・・・悔しい!強いのは分かってたけどこんなに圧倒的なんて!」

 

「リザは初手すぐやられたからなー。コジマはフィーネとごっつんこ」

 

「あの勢いのコジマを受け止めるのは私には出来ない。テルマは?」

 

「今マルと二人でコクピットこじ開けてるよ」

 

リザの言葉にそちらを見ると確かに士郎とマルギッテがテルマの鎧によじ登って何かをしていた。

 

「流石、と言いたいところですが、今回は私が不参加だったのでこの程度とは思わないでください」

 

「わかってるよ。今回は中将に、隊を分断することと、マルが居なければ勝てると言ったからあの形になったんだ。マルはレオニダスの体育で一回りも二回りも強くなっただろう?」

 

「確かにそうですが・・・それでも、彼女等に欠点があったようには思えません」

 

バンバン!と内側から叩く音が聞こえてそこを何とかこじ開けようとするマルギッテ。

 

「欠点なんて無かったさ。だからそこを突いたんだ」

 

「どういう事ですか?」

 

引っ張ってもどうにもならないと感じたマルギッテはどうしようか迷いながら問う。

 

「彼女等に欠点らしいものは無かった。だから――――単騎にならざるを得ない瞬間を突いたんだ」

 

 

 

――――投影、開始(トレース・オン)

 

 

投影するのはデュランダル。恐ろしい切れ味と、折れず、曲がらずという逸話を持つそれなら如何に鉄の塊と言えどひとたまりもない。

 

キン!とコクピットの一部が切り裂かれた。

 

「きゃあ!?」

 

見えたのは青髪の女性。彼女がこの鎧の操縦者だったのだ。

 

「テルマ。姿勢を低くしなさい。今上部を切ります」

 

「ま、マルギッテ少尉・・・」

 

「今は良い。・・・士郎」

 

「ああ」

 

スパン! と鎧の首の付け根が切り開けられ、ようやくテルマという女性が出てこられるようになった。

 

「最初リザさんが仕掛けてくるのは分かってた。だからあらかじめゴム弾を準備した。彼女がそれに晒されれば盾役の彼女が出てくる」

 

マルギッテの手を取って出てきたテルマを見て言う。

 

「ゴム弾はあくまで非殺傷目的。あれが銃やコインなどの実弾ならリザは最初の一撃で額を射抜かれていますね」

 

「俺がゴム弾を撃つとなれば被弾を避けるにはテルマさんの鎧しかない。そこで既に標的は絞れるだろう?」

 

士郎のゴム弾を避けるにはテルマを盾にするしかない。その時点で士郎が相手をしなければいけないのはテルマのみだ。

 

「しかし、テルマの頑強な鎧を穿ったあの一撃は・・・」

 

「あれは『鉄甲作用』というれっきとした投擲技法だ。対象物の衝突威力を格段に跳ね上げる。だから石だったのさ」

 

「・・・そのなんでも切れそうな剣を投げればよかったじゃないですか」

 

閉じ込められていたとは思えない元気さで士郎を睨みつけるテルマ。

 

「それじゃあ殺しちゃうでしょう?見た感じ・・・コクピットには一人分の余裕しかないようですし」

 

「・・・っく」

 

涙目になりながら尚睨みつけてくるテルマに困ったように苦笑を浮かべて士郎は言った。

 

「テルマさんをやれば、必然的に出てくるのはコジマちゃんだけだ。まぁ、聖骸布を易々と破られたのには驚いたけどな」

 

「今回は完全に士郎の手のひらの上だったわけですか」

 

何とも言い難い表情をするマルギッテだが士郎は、

 

「悲観することはない。今回手合わせしたのは命令系統にある隊長だろう?隊を率いてこその隊長なんだから実戦でこうはいかないさ」

 

「そうです。今度こそ私の鎧の頑固な汚れにしてやります」

 

じっと睨みつけてくるテルマにあはは・・・と笑って、

 

「まぁそんなところだよ。部隊として強いからって一人一人がそうであるとは限らない」

 

「完璧であることは出来ません。・・・が、レオニダス王がドイツに来れないのをこれほど悔しく思うことになろうとは」

 

「レオニダスは置いておこう・・・うん」

 

またThis is Sparta!されても困るので士郎は引きつった笑みを浮かべた。

 

撤収作業が進められる中、マルギッテとフィーネは今回の感触をフランクに聞かれていた。

 

「恐ろしい観察眼と戦闘倫理ですね。そして武神にも匹敵するその力が糸を通すような作戦を可能にしています」

 

「うむ。私も最初聞かされた時はそれほどうまくはいかないと思ったのだが・・・いやはや。すっかり脱帽だ」

 

「今回の件、猟犬部隊としては重く受け止め、訓練をしていく所存です」

 

「そうだな。意外な・・・それこそ衛宮君のような敵が居ないとも限らない。十分に気を付けてくれたまえ」

 

「「はっ!」」

 

そうして訓練は終わりを告げた。

 

 

 

 

朝の訓練を終え、士郎はクリスの部屋を訪れていた。

 

コンコン

 

「クリス。いるか?」

 

「いるぞ!士郎」

 

ガチャリと開けられたとの先には色とりどりのクマの人形が見えた。

 

「ちょっと作戦会議に来たんだが・・・入ってもいいか?」

 

「もちろんだ。どうぞ」

 

そう言って士郎を招き入れた部屋は天蓋付きのベッドがある、いかにもお嬢様な部屋だった。

 

「そこに座ってくれ」

 

「ありがとう」

 

用意されている小さなテーブルに着く士郎。

 

「マルさんの部隊、どうだった?」

 

「想像以上に強かったよ。今回も隙を突けたから勝てただけで、馬鹿正直に真正面から戦ったら危うかったな」

 

「自分もここから見ていたが、今回士郎は真正面から戦ったじゃないか」

 

不思議そうに言うクリスに士郎は頭を振って、

 

「なにも挑発や隙を突くことだけが戦闘じゃないんだ。上手く誘導したりするのも立派な兵法だぞ」

 

今回はテルマを起点として作戦を組み、彼女の『鎧』という部分を終始利用して単騎戦に持ち込んだのだ。

 

それを説明しようかとも考えたが・・・

 

「それより、クリスはどうだ?一晩明けて気持ちは変わったか?」

 

士郎の言葉にクリスは近場のクマを抱いて、

 

「・・・変わらない。大和と添い遂げたいという気持ちは変わらない。正直、士郎とマルさんに嫉妬したんだ」

 

「俺とマルに?」

 

「うん・・・士郎とマルさんは本当に幸せそうだから・・・自分も、大和とそうなりたいと思ったんだ」

 

クリスは士郎とマルギッテに自分と大和を重ね合わせていたのだ。

 

「二人のようになれたらどんなに幸福だろうって。だから必ず。父様を説得する」

 

「安心したよ。一夜言い合ってくじけてしまったんじゃないかと思ったんだが・・・問題なさそうだな」

 

士郎は安心したと頷いた。

 

「ただ、士郎やマルさんの言う通り父様は話を聞いてくれなくて・・・まだ早いとかもっと後でドイツで探せばいいとか・・・今の自分の気持ちを認めてくれないんだ」

 

「ふむ・・・」

 

分かり切ったことと言えばそうだった。どうやらこちらも士郎の考える通りの戦いの状況のようだ。

 

「それで、何だが・・・士郎、何かアドバイスをくれないか?父様は全然話を聞いてくれないし、マルさんは味方にはなってくれないし・・・困ってるんだ」

 

「俺が言えることはそんなに多くないんだけどな。俺自身女性との関係は今回が初めてだし・・・それこそ、大和と二人で訴えかけるしかないと思うぞ」

 

一人ではダメなのだ。クリス一人ではどうしてもフランクは話を聞かない。大和とクリス、二人そろってこそ説得の余地があるのだろう。

 

そんな時だった。外が何やら騒がしい。

 

「どうしたんだ?」

 

「クリス。携帯見てみるといい」

 

「あ、うん・・・大和!」

 

文面は省くが、到着した、という事と、今行く、と書かれていたようだ。

 

「外の猟犬部隊がまた空を舞っているな。なにも殴り込みのような真似をしなくてもいいだろうに」

 

クック、と士郎は笑って立ち上がった。

 

「士郎、その・・・」

 

「大丈夫さ。俺は仲間の、クリスの味方だ。ここは一つ囚われのお姫様を逃がす裏切者でも演じよう」

 

そう言って士郎はクリスの手を掴んだ。

 

「さあ行くぞ。ここからが正念場だ」

 

そうしてクリスは士郎の手引きで外に出ることとなる。これからが正念場。フランクを説得できるか否かはこの瞬間にかかっていた。




猟犬部隊との出会いでした。引き続き士郎には猟犬部隊と親交を深めてもらいますがその前にクリ吉と大和坊を何とかしないとね。絶望的に話し進んでないですが!なんでだー(苦笑)

次回は大和達が乗り込んできますでも原作よりもハードモードかな。士郎いるからね、仕方ないね。という事で次回お会いしましょう。
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