真剣で衛宮士郎を愛しなさい!   作:Marthe

73 / 127
皆さんこんばんにちわおじいちゃんのように腰が痛い作者でございます。

今回ようやっと大和達が到着し、激突します。

大和達はハードモードですが頑張ってくれることでしょう…というわけでよろしくお願いします。


親子激突

大和達が到着し、フリードリヒ邸に襲撃をかけ始めた頃。士郎は屋敷の人の目を盗んでクリスを連れ出していた。

 

「ストップ」

 

「・・・!」

 

何度も士郎の掛け声で静止したり、駆け抜けたりと。まるで何処かの密偵のように自分の家を駆ける。

 

「士郎。ここまでする必要があるのか?」

 

「・・・そこのメイドの会話を聞いてみるといい」

 

そう言われてクリスは回避しようとしているメイドたちの会話に耳を傾けた。

 

『クリスお嬢様は?』

 

『お部屋でじっとしていますよ』

 

『中将の指示でお嬢様を屋敷から出さないようにと言われています。お嬢様には酷ですが・・・気を緩めないように』

 

「!?」

 

穏やかならざる会話にクリスはぎょっとした。

 

「なんで・・・」

 

「これが中将のやり方というわけだ。自分が説き伏せるまで余計な接触をさせない・・・実に効率的ではあるな」

 

「・・・。」

 

「だが俺は大和と共に説得に望んでもらいたいと思う。クリスだけを見ているフランクさんには悪いけどな」

 

「父様は・・・やっぱり話を聞いてはくれないのだろうか・・・」

 

今の会話に余程ショックを受けたのだろう。いつもの元気を失うクリス。

 

「クリス。これは戦争じゃないんだ。対話しようと望めばいくらでも対話できる。こんな所で立ち止まっている暇はないぞ」

 

「わかってる。分かってるけど・・・」

 

クリスにも、フランクの行動が意味不明に思えるのだろう。何故そうまでして自分を否定しにかかるのか。

 

親の心子知らずとはよく言うが今回ばかりは逆パターンだった。

 

「ショックを受けている所悪いが、行くぞクリス。とにかく大和達に合流するんだ」

 

「うん・・・」

 

何とか彼女の苦悩が報われると良いのだが、と士郎は思えてやまないのだった。

 

 

 

 

――――interlude――――

 

 

 

士郎がクリスを先導しているころ、大和達は屋敷の外で足止めをくっていた。

 

「姉さん来るよ!」

 

「パーンチ!!」

 

ドゴーン!と百代にコジマのパンチが炸裂する。

 

「かわいこちゃんのわりにすごい力だなー。ええい、川神流奥義、無双正拳突き!」

 

ゴヒュン!と空気を裂いてコジマの数段早い正拳突きが彼女を襲う。

 

「わっと!?」

 

タンッと咄嗟に後ろに跳んだ彼女にギリギリ当たらなかったがコジマは冷や汗をかいた。

 

「すごいなー武神。ここまでやるんだ。今の食らってたらコジマはお星さまになる所だった」

 

「本当なら愛でたいところなんだけどなー。邪魔されるのは困るんだ」

 

「それはこっちも同じなんだよ。今お嬢様の所に行かれるのは困るんでね」

 

「なんでこんな総出なの!?」

 

「・・・もともと編成前だったのがテロ事件のせいで編成済みだったんだ」

 

ギリッと拳を握り込む大和。この精鋭だろう部隊とぶつかり始めて数分。本来なら百代が外で暴れてその間に自分たちは中へと突入するはずだったのだが。

 

事前に士郎から連絡があった通り、一筋縄ではいかないようだ。

 

「マルギッテさん!俺はクリスと合流しなきゃいけないんだ!そこをどいてくれ!!」

 

「・・・それはできません。中将の命令はお嬢様を外に出さないことと――――」

 

感情の無い顔でマルギッテは言った。

 

「直江大和。貴方と接触させないことです」

 

「やっぱりあの中将か・・・!」

 

「その割には泣きそうな面構えじゃないかマルギッテさん。本当はこんなことしたくないんだろ?」

 

「・・・。」

 

「その無言が既に答えですよ。大和さんをクリスさんに会わせてください!」

 

「できません」

 

「むむ~クリにそっくりの頑固さね・・・」

 

「ガクト。あのコジマちゃんの相手できるか?」

 

「え」

 

百代の問いにガクトはピキリと固まった。

 

「モモ先輩、マジで言ってる?」

 

「マジだ」

 

「俺様、強くなったけどあそこまで理不尽じゃないんですけど!?」

 

「男だろ。腹くくれ。それに攻撃はまだしも、完全に受けに回れば耐えられるはずだ」

 

「なんだ!?武神じゃなくてそこの兄ちゃんとやるのか!?いいぞ、コジマは全力で相手する!」

 

ドン、と地面を蹴り、コジマがガクトへと飛来する。

 

「うおおおおお!?」

 

慌てて横っ飛びに回避してガクトは百代に吠える。

 

「モモ先輩!何てことしてくれてんだ!?」

 

「うるさいなー、ちゃんと回避できたじゃないか」

 

「そうゆう問題じゃな、い!」

 

鋭いコジマの拳を辛うじて紙一重で避け続けるガクト。

 

「中々やるじゃないか!コジマはもっといくぞ!」

 

うおおー-!?と悲鳴を上げながら遠ざかっていくガクトとコジマ。何とか予期した通りになってくれたようだ。

 

「残るは銀髪の人と・・・なんかからくり?背負ってる人」

 

「からくりって言わないで!」

 

鎧を士郎に破壊されてしまったので予備の防衛機構を背負ったテルマが叫ぶ。残念ながら、容姿はからくりを背負った女性なので否定できない。

 

「コジマを取られたな。問題はどのくらいで戻ってくるかだが・・・」

 

「へっ!うちのガクトを舐めるなよ!この戦いが終わるまで戻っちゃこねぇよ!」

 

キャップがそう吠える。腕利き揃いの猟犬部隊を相手に彼は一切怯えていなかった。

 

「まゆまゆは銀髪の人頼めるか?」

 

「はい。承りました」

 

スラリと士郎の鍛えた刀を抜く由紀江。

 

「京はあのからくり背負った人・・・って言ってもあんまり前には出てこないだろうから周りの援護だ」

 

「・・・いいけど、こういう時は大和が指示するんじゃないの?」

 

不思議そうに聞く京に百代は獰猛な笑みを浮かべた。

 

「私はマルギッテさんと一騎打ちだ。多分あんまり加減出来ないからみんなに任せたい」

 

「そう言う事なら・・・ワン子、京、キャップ。よろしく頼む。なんとか道を切り開くぞ・・・!」

 

方針の決まったファミリーが本格的に動き出す。一方でマルギッテは、

 

「――――」

 

やはり感情の無い顔で百代を見つめていた。

 

「学生と侮ったのが失敗だったか。少尉、私達は――――」

 

「テルマとフィーネは後衛。私とリザが出ます。それと・・・私も加減が利かないので指揮はフィーネに託します」

 

黒い眼帯を捨て堂々とトンファーを構えるマルギッテ。

 

「武神。いざ――――」

 

「尋常に――――」

 

「「勝負ッ!!!」」

 

ズドン!と互いが地面を蹴った。

 

 

 

――――interlude out――――

 

 

 

「やれやれ、もう少しのはずなんだが」

 

士郎は広い敷地の中ゆっくり、着実に前へと進んでいた。

 

「ここを抜けたら玄関口の広場だぞ。・・・本当に大和達が来ているのか?」

 

中半怪しくなってきたのかクリスが責めるような口調で言う。

 

「間違いなく来てるよ。一夜明けたのがネックだが・・・多分・・・」

 

そう言って士郎はクリスの服の襟元を探った。

 

「わっ!?な、なにを――――」

 

「あった」

 

すぐに目的のものを発見したのか士郎の手がするりと離れる。

 

「大和はこれを頼りに来ているんだ」

 

「これは・・・」

 

明らかに、発信機だった。クリスがどこに居るのかを示すもの。

 

「なんでこんなものが自分の服に・・・」

 

「マルギッテさ」

 

「!!!」

 

「マルギッテは全てわかった上で、クリスに発信機を付けていた。もちろん自分の為でも命令の為でもないぞ。そこはわかるな?」

 

「うん・・・」

 

マルギッテは命令に反して大和がクリスを追いかけられるようにしていた。もしこれがフランクの耳に入ったら軍法会議にかけられるかもしれないことを知っていて。

 

「マルさんは・・・自分と大和を信じてくれてるんだな」

 

「そうだ。そんなクリスが取るべき行動は、わかるな?」

 

今度こそ、クリスはしっかりと頷いた。

 

「わかってる。自分は、大和と合流して何としてでも父様を説得する!」

 

「その調子だ。さ、多分大和達は猟犬部隊に足止めされてるんだろうからそこまで・・・ん?」

 

ふっと、士郎が不思議そうに敷地を見た。

 

「どうした?」

 

「あれは・・・ガクトがコジマちゃんと戦ってるのか」

 

「なんだって!?」

 

そちらの方を見やったクリスの目にガクトが所々ボロボロになりつつも、必死にコジマを相手取る姿が見えた。

 

「早く援護に行かないと・・・!」

 

「ダメだ」

 

駆けつけようとするクリスの手を掴んでとめる。

 

「士郎!」

 

「今はダメだ。とにかくクリスと大和の合流が先だ。問題ない。ガクトはそこまでやわじゃない。だろ?」

 

「・・・。」

 

納得がいかないという顔だが士郎の言う事も理解できるのかクリスは押し黙った。

 

「彼女はガクトに任せていくぞ。ガクトが居るんだからみんないる」

 

「そうだな・・・!」

 

パチン!と両頬を叩いてクリスは気合を入れた。

 

それからほどなくして、クリスは大和達が必死で戦っている場所へとたどり着いた。

 

「大和!」

 

「クリス!?屋敷に居たんじゃ・・・」

 

「仲間のピンチにはやって来ないとな?」

 

「士郎!」

 

頼もしい味方に大和達は歓喜した。

 

「やっと来た」

 

「手厳しいな京。状況は?」

 

「姉さんがマルギッテさんと一騎打ちしてて・・・あのグレーの髪の人はまゆっちが対応してる」

 

大和の言葉を聞いて見れば、マルギッテと百代は離れた所で激しくぶつかり合い、由紀江はリザと高速戦闘に入っていた。

 

「京と一子でこの数を凌いでたのか。コジマちゃんがいないとはいえ、よくやったな」

 

「川神院師範代を目指すのに弱音なんて吐かないわ!」

 

「・・・将来のママ友の為だから」

 

「ま、ママ友・・・!?」

 

カーっと顔を赤くするクリスに苦笑を浮かべた一同は敵を捌きながらこれからの事を考える。

 

「クリス、戦えるか?」

 

「もちろんだ!レイピアは無いが自分も戦えるぞ」

 

「本場軍人相手に気を抜くな」

 

 

――――投影、開始(トレース・オン)

 

 

士郎の手にいつも彼女が振るっているレイピアが現れた。

 

「流石士郎!」

 

「彼女等は命令に従ってるだけだ。怪我をさせるなよ」

 

「多少ならば仕方ないだろう。自分も、鍛えてもらうつもりで行く!!」

 

「こらこら。防衛目標が前線に出るな。まずは俺たちでこの包囲を突破するぞ」

 

「「了解!」」

 

「キャップ。先に中に行ってガクトの支援を頼む。こちらは何とかする」

 

「任せろ!」

 

Pause(止まれ)!」

 

「なんだかわかんねぇけど止まるかよ!」

 

ボン!とキャップ謹製の煙玉を炸裂させてキャップは居なくなった。

 

「さて、こちらはどうしようか」

 

士郎はキャップが行ったのを見送って無手ながら構える。

 

「士郎、双剣は?」

 

「まさか。こんな組手で使うわけにもいかないさ」

 

そう言って士郎は足元の石を拾った。それを見た猟犬部隊は戦々恐々とした面構えで士郎を見る。

 

「石で戦うのか?」

 

「そうしてもいいんだが、あの反応はちょっとよろしくないな」

 

士郎は拾った石を捨てた。代わりに両手を握って構える。

 

「衛宮殿!なぜ我らと――――痛い!?」

 

文句を言いに来た愚か者をゴム弾の指弾で追い返す。

 

「何を言うかと思えば。私は一度もドイツ軍の味方だとは言っていない。それを無防備に何をしているのかね?」

 

「・・・ッフ。確かに、味方だ、とは一度も言わなかったな」

 

フィーネが珍しくクッと笑って士郎を見た。

 

「衛宮士郎。君は我々と事を構えるという事でいいのかな?」

 

「事を構える?何を物騒な。私は仲間が中将と話す機会を望んでいるだけだ。それなのに武器を持ち出してまで攻撃とは、過剰防衛なのではないかな?」

 

不敵に笑ってフィーネを見る士郎。この絶望的な戦力差でも、彼は決してあきらめない。その意志が感じ取れた。

 

その姿にテルマはギリ、と歯を軋ませる。

 

「愚問だったな。ドイツが誇る猟犬部隊の技、味わうがいい」

 

「大和!離れるなよ」

 

「わかってる。クリスも捕まるなよ!」

 

「たとえマルさんの部隊相手でも自分は負けないぞ!」

 

クリスと士郎が駆けつけたことによって、ぐんと殲滅力が上がる。問題はテルマとフィーネだが、

 

「・・・。」

 

「前に出るなよテル。今のお前では無理だ」

 

「くっ・・・!」

 

図星を突かれて唸って止まるテルマ。

 

「こちらは早々に決着がつきそうだな。あとは少尉だが――――」

 

絶えずドン!という腹の底から響くような音を立てて激突する二人を見やる。

 

「あまり無理をしないでもらいたいのだが・・・」

 

彼女はそのように思うがはたしてその願いが届いたのかは、わからず終いだった。

 

 

 

――――interlude――――

 

トンファーと拳が激しく激突する。もうどのくらいそうしていたか。数分か、あるいは一時間程か。全霊で対峙するマルギッテと百代はただただ無言で互いの技を繰り出していた。

 

「ふッ!!」

 

「はあぁ!!」

 

ガン!と、とても肉体と武器が奏でるようではない音を響かせて二人は戦場を舞う。

 

「・・・見事だマルギッテさん。もし昔の私なら手こずっていたかもしれない」

 

額に汗を掻き、ジンと痺れる拳を見て百代は言った。

 

「でも今の私ならそうでもない。確かに強いけど壁超えしたくらいじゃ勝てませんよ?」

 

「・・・。」

 

ふーっふーっと、荒い息を何とか鎮めようとしているマルギッテ。

 

この結果は最初から分かっていた。何故なら、マルギッテは士郎達との鍛錬で既に壁超えの強さを手に入れたが、百代もまた、彼の影響で強くなっていたのだから。

 

このまま戦っても埒が明かない。そこでマルギッテは隠し玉を披露することにした。

 

「武神。このままでは貴女を倒せないことは分かりました。ですが、私も後に引くつもりはありません。・・・決着と行きましょう」

 

それまで荒い息を吐いていたマルギッテが大きく息を吸い込み、息を整え姿勢を低くする。

 

「いいでしょう。受けて立ちます。これがほんとの大一番だ」

 

コキ、コキと手と首を鳴らし、百代も受けの態勢を取る。

 

「士郎・・・この技を貴方に」

 

「川神流・生命入魂。タイプ・ウルフ――――」

 

ぶわりとマルギッテの赤い闘気と百代の金色の闘気が収束する。

 

叫ぶは偶然、いや、必然。互いに衛宮士郎の技を習って――――

 

「「フルンディングッ!!!」」

 

互いを食い破らんと赤き狼と金色の狼が疾駆する――――!

 

「!?マルギッテ・・・!」

 

「マルギッテ少尉!?」

 

強くなっているとは思ったが、まさか赤き狼に変じるとは思いもしなかったフィーネとテルマが驚愕を露わにする。

 

冠する名はどちらも真正の魔剣、『フルンディング』。狙った獲物を決して逃がさぬ魔性の獣。その獣が互いにぶつかり、赤光と金色を散らせて何度もぶつかり合う。

 

「一度見せた技をこうも昇華させられると・・・いやはや、困ったものだな」

 

それを見た士郎も苦笑を浮かべざるを得ない。これは正真正銘、赤原猟犬のオマージュだ。

 

「ああああああぁぁぁッ!!!」

 

「はあああああぁぁぁッ!!!」

 

裂帛の気合と共に何度も何度もぶつかり合う。命を燃え上がらせて戦う二匹の狼は神聖ですらあった。

 

だが勝敗は必ず付く。勝敗は――――

 

 

 

――――interlude out――――

 

 

ケフッとどちらともなく口内に溜まった血を吐き捨てる。

 

「まさかの」

 

「相打ち、ですか」

 

ボロボロになった百代とマルギッテが組み合うように立っていた。

 

「やるじゃないですかマルギッテさん。これでも武神ですよ」

 

「勝たなければ意味はありません。・・・ですが、貴女を打倒することも不可能ではないと知りました」

 

そのまま二人は離れるようにバタリと倒れた。

 

「一応聞きますけど、大丈夫です?」

 

「これが大丈夫に見えますか?まぁ、今回ばかりは私も力を出し尽くしました」

 

もう一歩も動けんとマルギッテは言った。それを聞いた百代も楽し気に笑って同意した。

 

「まったく・・・随分と物騒なことをしているな」

 

「士郎!」

 

「士郎・・・すみません。貴方を勝ち取れなかった」

 

「やっぱりそういうことかー。マルギッテさん容赦なかったもん」

 

「容赦なかった、ではない。こんなことをして私が喜ぶとでも思ったのか?」

 

責めるように言いながら二人の介抱をする士郎。

 

「ていうか士郎。こっちに来ていいのか?大和達は――――」

 

「あそこ。俺の任務は達成だ」

 

そこには指弾で倒された隊員達と、やって来たフランクと対峙するクリスと大和の姿が。

 

「お嬢様・・・」

 

「断固拒否って感じを出しながらなんか試す素振りも見せてるな」

 

「百代の言う通りだろう。フランクさんも多少は考えてくれたんだろうさ」

 

そう言いながら心配そうに三人を見つめる士郎。だが、もう大丈夫だろうと目を逸らした瞬間、

 

「メフィストフェレス!」

 

突然若返ったフランクが現れて度肝を抜かれた。

 

「・・・あれは?」

 

「中将の秘儀です。なんでも、フリードリヒ家に伝わる奥義なのだとか。私も見るのは10年ぶりです」

 

「クリスの親父さんって歳のわりにどこか老けてる印象だったけど、そうか。むしろあの技の為に日々温存してるのか」

 

「そう言う問題じゃない。しかし気による若返りか。大和とクリスはどう出る?」

 

戦闘力も爆発的に上がっているだろうフランクに対して大和が取った行動は――――

 

ガン!

 

「ぐっ!?」

 

「ぬあ!」

 

足を止めてのヘッドバットだった。

 

「ば、馬鹿かね君は!?この状態の私に対して足を止めるなど――――!」

 

「馬鹿で結構!こちとら真剣にクリスを想ってるんです!!ここで逃げることも、引くこともしませんッ!!!」

 

またガツン!と額がぶつかり合う。

 

「・・・おかしいな。大和って頭脳派じゃなかったっけ?」

 

「あはは!誰の影響だろうなー。頭脳派のリアリストの癖に、ここ一番は愚直に前に進むのって」

 

「直江大和はリアリストではありませんが、確かに、あの姿には見覚えがありますね」

 

ガツン、ガツンと何度も額をぶつけ合う大和とフランク。何も大和が一方的に襲っているのではない。フランクがクリスが欲しければ自分を越えて見せろというので彼はああしているのだ。

 

そして奇しくも、頭突きという戦闘スタイルは彼の母、元は暴走族の頭だった直江咲の得意戦術。彼は教えてもらうことなく、最も可能性のある肉弾戦を選んでいた。

 

「や、大和!もうやめるんだ!それ以上は馬鹿になってしまうぞ!?」

 

「何をいまさら!クリスがもらえるなら多少馬鹿になったって構うもんか!それに!この程度で俺たちのど根性は折れな、いッ!!!」

 

ガツン!と、また凄まじい音を立てて大和はヘッドバットをかます。両手はがっしりフランクの頭を掴んでおり、相手が参ったと言うまで離さんとばかりだった。

 

「ぐう・・・そうまでしてクリスが欲しいか!なぜだ!なぜこんなにも痛みを伴う行為をしてまで・・・!!」

 

「そぉれぇはぁ!!」

 

グオンッと大和が頭を振りかぶる。

 

「クリスの事が――――!」

 

そして溜め、溜めに溜めて――――

 

「好きだからに決まってんだろうがッ!!!」

 

ガイン!!!

 

ここ一番の一撃が二人の間で炸裂する。

 

しんと静まる中、フランクはふっと笑って、

 

「まさか君一人の力で降参させられるとは思わなかったよ」

 

「ちゃんと話し合いましょう。お義父さん」

 

「ああ。そうだね。君の言う通りだ」

 

そして遂に諦めたフランクから手を離しフラーっと後ろに倒れる大和。

 

「や、大和!!」

 

倒れる大和をクリスが抱き留めた。

 

「なんて無茶なことを!」

 

「あー・・・誰かの馬鹿がうつったかな」

 

はっは。と力なく笑う大和にクリスは涙を浮かべて、

 

「・・・!!」

 

大和をぎゅっと抱きしめた。

 

 

 

――――interlude――――

 

翌日、大和はクリスと正式にお付き合いを始めて、ファミリーは川神に帰ることになった。

 

「・・・あれ?俺様の活躍は?」

 

「活躍・・・なのか?」

 

あの後、持ち前の怪力でガクトとキャップを乗せて運んできた小柄なコジマは泥にまみれた顔で、

 

「コジマ負けた!やるなこの兄ちゃん!」

 

と天真爛漫に笑っていた。

 

「最後敵に運んできてもらうのは活躍って言えるのか?ガクト」

 

「ぐぬぬ・・・」

 

「大和はラブロマンスだったけどねぇ・・・」

 

「詰めが甘い・・・」

 

「だー!いいじゃねぇか勝ったんだから!いいか、俺様はあの後だな――――」

 

「はいはい。それより、士郎は?」

 

百代が空港を見渡すが、姿が無い。

 

「なんか後便で帰ってくるらしいよ」

 

「なにー!?折角甘えようと思ったのに・・・」

 

そんなことを言う百代だが、マルギッテと相打ちになったものの、瞬間回復ですぐに立ち直りドイツ陣営を驚かせた。

 

「大和も馬鹿だけどモモ先輩も大概だよな。わざわざ同系統の技で挑むなんて」

 

「でもあれでこそお姉さまよね!」

 

「今回は大和坊とモモ先輩に全部持ってかれたよねー」

 

「松風!?」

 

「そう言えばまゆっちも隊長と戦ってたんだっけ」

 

「どうだったんだ?実際余裕・・・でもなかったんだろ?」

 

「はい。真剣勝負なら危うかったと思います」

 

「まゆっちが本気になる事なんてまずない。ってことは・・・」

 

うーんと悩む一同。だが時間は有限で。

 

「あ、俺たちの便アナウンスされてるぞ」

 

「マジか!・・・って大和、ドイツ語分かんの?」

 

「いや英語でもアナウンスしてるだろ・・・」

 

「あたし、英語もドイツ語もわかんないわ」

 

「さんせー。わかりません!隊長!」

 

「誰が隊長だ!」

 

「隊長はキャップたる俺・・・ンガー」

 

「そこだけは寝ながらでも反応するんだ・・・」

 

と、かしましく騒ぎ立てながら大和達は帰還するのであった。

 

 

――――interlude out――――

 

 

 

ドイツでは士郎に対するお願いという名の軍からの嘆願が出されていた。

 

「マルギッテ少尉以下隊長の育成、ですか」

 

「そうだ。今回の件で我々はまだまだ危ういという事が分かったからね。君の所で鍛えてほしい」

 

「しかし、任務があるのでは?」

 

「現在火急の任務は無い。マルギッテ少尉と同じでその都度赴く形で問題ないだろう。猟犬部隊は精鋭だが、なにも軍は猟犬部隊だけではないのでね」

 

「私は構いませんが・・・」

 

これは軍事機密となるので総理の許可が必要になるのでは?と考える士郎。

 

「問題ない。日本の総理と九鬼財閥にはもう知らせてある。そして受けるか受けないかは君の一存に任せるともね。どうだろうか?もちろん報酬はきちんと払わせてもらうよ」

 

「・・・確認ですが。鍛えるのが目当て、という事で間違いないですか?」

 

「ああ。なに、教官のまねごとをしろとは言わないさ。君の技術を少しでも伝授してほしい。君の訓練と同じ環境下に身を置けば自然と強化されるのではと我々は思っている」

 

「そこまでかって頂くほどでは・・・まぁ、特殊な環境ではありますが」

 

主にレオニダスとかスパルタとか。実に悩ましい問題である。

 

「では受けてもらえるという事でいいかね?」

 

「はい。幸い家には部屋がまだ余ってますし・・・問題ないかと」

 

「はっはっは!宿の事まで頼むつもりはなかったのだが、君がそう言ってくれるなら安泰だな。もちろん生活費として報酬に幾分か上乗せしよう」

 

「ありがとうございます。――――してこの後の予定は?」

 

「思わぬ来客者で大分予定を乱されてしまったからね。今日もわが家に泊って明日改めてチケットを取ろう。娘も居なくなってしまってさみしいことこの上ないがね」

 

「そうですか・・・あの、よろしければ行く前にパーティなど開いて親交を図ろうと思うのですが、いかがでしょう?」

 

「それはいい提案だ!彼女等としっかり親交を深めて任務に支障が無いようにしてもらいたい。準備は頼めるかな?」

 

「はい。車さえ出していただければ問題ありません」

 

「そうかそうか。わかった、手配しよう。それでは以上となる。他に聞きたいことはあるかね?」

 

「マル――――いえ、何でもありません」

 

つつけば藪蛇になるだろうことを悟って士郎は聞くのをやめた。

 

会議室を出るとマルギッテとリザが待っていた。

 

「ご苦労様です。中将はなんと?」

 

「ああ。部隊長を家にお招きして訓練だとさ」

 

「マジ?それって実質休暇じゃん。ヒャッホウ!」

 

「何言ってるんですか。今回はきちんと報酬が約束されてるのでしっかりやりますよ」

 

「しかし、場所は士郎の家なのでしょう?限りなく休暇に近い合宿となりそうです」

 

「そう言われると複雑なんだが・・・まぁ、無理せず行きましょう」

 

そうしてマルギッテと猟犬部隊もまた、日本にやってくることとなった。これがどんな効果を発揮するのかは士郎もマルギッテもわからない。

 

――――ただ、

 

「・・・。」

 

マルギッテだけは、また士郎の女難の相が発揮されるのでは、と考えているのであった。




中将激突編でした。ここでいうのもなんですが大和の母、咲さん、元ゾッキ―なんですよね。その戦闘スタイルはどんな相手にも頭突きで仕留めたとか。頭突きキャラってなんか好きなんですよね。ガクトの声優さんのバスケットマンとか(笑)

次回は日本に帰ってきて・・・の前にパーティします。もう少しドイツ編続きます。

では次回!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。