真剣で衛宮士郎を愛しなさい!   作:Marthe

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皆さんこんばんにちわ6月30日が恋しい作者です。

今回は前回のあとがき通り、義経ちゃんとの一幕を書こうと思います。

ドイツ編であんまり書けなかったからね!そこに隠し味をパラパラと…

では本編行きます。


幕間:義経と

その日、士郎は追試の試験対策に、心から借りたノートを見て必死に書き写して頭に入れていた。

 

「うーん・・・」

 

辛そうに目を擦る士郎。ここの所、家でもこうしているので中々に疲労が溜まっている。

 

本当は、梅子の言う通り根を詰めなくてもいいのかもしれないが、何かあってからでは困るので士郎は必死に勉強していた。

 

そんな折、

 

「ほら主、予想通り大将、根を詰めてるよ。今がチャンス!」

 

「で、でも折角勉強してるのにそれを邪魔するのも・・・」

 

チャンスと言われて思わずニヤニヤしそうになる義経。

 

この二人は、根を詰めているだろう士郎を楽しいデートに誘って息抜きしつつ、最後は美味しく頂こうという大胆な計画を立てていた。

 

もちろん役者は義経なのだがこうも引っ込み思案だと前に進まない。

 

という事で、

 

「なーに今更照れてるのさこの牛若丸!そぉれ!」

 

「弁慶、何を!?」

 

ふんわりと押し出されて勢いで教室の真ん中くらいに踏み出してしまった義経。

 

「ん?義経?」

 

「はう!」

 

ドッキンと胸が高鳴る。決意とか覚悟とか色々すっ飛ばして彼の前に出てしまったので、カチコチに固まってしまった義経。

 

「生憎今は俺しかいないけど・・・また心配して来てくれたのか?」

 

「う、うううん!士郎君がまた無茶してないかって・・・」

 

と咄嗟に嘘をついてしまった義経。

 

(あああ・・・不甲斐ない)

 

しかしそこは最近女難の相にもまれている士郎。義経が何か用事があることまでは見抜けた。

 

「心配は嬉しいけどそれだけじゃないな?ちゃんと話した方がいいぞ」

 

「えーと・・・ッ」

 

遂に追い詰められた義経はたしてその結果は・・・

 

 

 

 

「・・・デート?」

 

ようやく聞き出した内容は簡単に言えば、士郎と夜通し遊びたい、という事だった。

 

「うん・・・勉強してる士郎君には悪いけど根を詰め過ぎだなって。一日くらいしっかり休んでまた頑張ったらいい成績取れるんじゃないかって・・・」

 

「・・・。」

 

「うう、迷惑だった?」

 

次の言葉に戦々恐々の義経。しかし、返答は暖かい手で頭を撫でられることで返ってきた。

 

「ごめんな。ちょっと根を詰め過ぎたみたいだ。それにデートって男から誘わないといけないよな。悪い」

 

「そ、そんな!義経こそ勉強の邪魔をしちゃって・・・」

 

「そんなことないさ。いい加減勉強のし過ぎで疲れたしな。有難く受けさせてもらうよ」

 

「ほ、本当!?」

 

「ああ。行くところは決まってるのか?」

 

「うん!映画行って中華街を探索して・・・夜はライトアップされた七浜の客船でパーティがあるんだ!最後はホテルに泊まって・・・どうだろう?」

 

「いいんじゃないか?それにしても義経、客船のチケットなんてよく手に入ったな」

 

「あのね。適当に応募したら二名様の券が明日か、明後日のが当たっちゃって、折角なら士郎君と行きたいなと思って・・・」

 

「そうかそうか。ありがとう。明日、明後日は休みだからゆっくりできそうだ。ありがとう、義経」

 

「ブンブン(首振り)」

 

嬉しくて言葉も出ないのか義経は無言でゼスチャーしていた。

 

「あはは。義経固まってるぞほらほら」

 

「むむむ・・・」

 

解きほぐしてもらって義経はやる気を滾らせた。

 

「明日行く?明後日にする?」

 

「特に予定はないから明日でいいぞ。デート、楽しみだな」

 

「うん!」

 

そうして弁慶の援護もあり、何とか義経は、デートを取りつけることに成功したのだった。

 

 

 

 

帰り道、ジークと合流をはたした彼は、一日家を空けることを最初に謝るのだった、

 

「すまない。こちらの都合で一日空けることになってしまって・・・」

 

「ううん。いいんだよ。リザちゃんやコジちゃんも休養が必要だと思った頃合いだし、丁度いいんじゃないかな?」

 

桃色の髪の毛を揺らしてニッコリ笑うジーク。

 

「確かに二人は休まないとな・・・俺と同じで根を詰めてもしょうがない。ジークとフィーネさんは普段何してるんだ?」

 

「私達はひたすら本や文献を読んでるよ。副長は戦術、戦略書。私は薬草学や薬の本かな」

 

「・・・あの書斎にはそんな物騒なものまであるのか」

 

思わずため息を吐く士郎。そう言う彼も数度、フィーネに頼まれてチェスをしたりしている。

 

結果は勝っては負けての繰り返し、いわば同点という感じだったが。

 

そんな話をしていたら薬局に着いた。

 

「さ、到着だ。なにが必要かな?」

 

「うんと、ガーゼに消毒液・・・」

 

流石腕利きの衛生兵。テキパキと必要なものをカゴに入れていく。中にはこんなものまで買うのか、というものもあった。

 

「ふう・・・荷物持ちさせてごめんね?あとちょっとだから・・・」

 

とにかく多いのは傷口を覆うガーゼ。そしてそれを止めるテープ、包帯、などなど。一般家庭でも一、二回分は準備しているものや、専門家にしか分からないものなど。実に様々なものがカゴに入れられていた。

 

費用はドイツから出るという事でジークはカードを持参していた。

 

「それにしても沢山買ったな。衛生兵って感じだ」

 

「あはは・・・これが私の役職だからね。士郎君も何か役立ちそうなものがあったら教えてね」

 

「役立ちそうなものか・・・一応俺個人が使ってる薬はあるけど・・・」

 

「え!?どんなの?」

 

「主に外傷に効く薬で・・・」

 

その後根掘り葉掘り聞かれた士郎は自宅に帰り、一番いつもお世話になる霊薬を紹介し、彼女の傷を癒す工程が分かるという先天的な能力に直撃したらしく、譲ってほしいと言われ、抵抗したのだが・・・

 

「ふふ、ありがとう」

 

結局根負けして備蓄のいくつかを渡すのだった。

 

 

 

 

 

その日の夜、士郎は翌日、一日空けることをみんなに話した。

 

「義経ちゃんとデートねー。いいなぁ」

 

「すまないな清楚。今度俺から誘うから」

 

「今回ばかりはゆずる。客船のパーティなんて中々ないぞ」

 

「ああ。義経の日ごろの行いが良かったからだろうな。俺もまさか、と思ったよ」

 

夕食を食べながらデートの話をする。その様子に疑問を覚えたリザは聞いてみることにした。

 

「なぁ、本当は他人の俺が言うのもなんだけどそういうの聞いて嫉妬したりしないのか?ここにいるほとんどの奴が衛宮の婚約者なわけだろ?」

 

当然と言えば当然の話しだった。だが、

 

「士郎はみんなのものだから」

 

「何も感じないわけじゃないけど、士郎君は色々な面で私達を愛してくれてるから」

 

「そうだな。衛宮はいつもいつも誰かの為に苦心している。それを考えれば、今更デートくらいどうのこうのいうほどでもない」

 

「それに義経もまた、私達と同じ婚約者ですから。隠し立てしているわけではない方がスッキリします」

 

と、各々が言うのでリザは目をぱちくりさせた。

 

「本当に衛宮は好かれてるんだな・・・」

 

「士郎は強いし優しい!コジマも納得!」

 

「それこそ我々が言う話ではないがな。堕落せずにいるのが不思議ではある」

 

「フィーネ・・・」

 

「俺が言うのもなんだけどみんな俺の事心配してくれて・・・得難い人達だと思ってるよ」

 

「はは。最初は面食らったけどみんな幸せそうだからな。士郎は本当に大した男だよ」

 

色々言われて困り顔な士郎だが彼自身も幸せそうに微笑んだ。

 

 

 

 

 

デート当日。七浜にある映画館前で待ち合わせした二人。士郎は30分前に到着したのだが・・・

 

「もう来てる・・・!」

 

映画館前でナンパの対象になっているのを見て慌てて義経の下に駆けよった。

 

「あん?なんだテメ「俺の彼女に何か用か?」ひっすみませんでしたー!」

 

素人のガン付けなど、裸足で逃げ出す殺気を叩きつけて追い払う。

 

「悪い義経。待たせたな」

 

「う、うううん!義経が早く来ただけだから!士郎君も早く来てくれてありがとう!」

 

ちなみに義経は楽しみ過ぎて一時間前に到着していたことは内緒だった。

 

「時間はまだあるな。ゆっくり何を見るか決めようか」

 

「・・・。」

 

「義経?」

 

彼女もまた、士郎の外行の姿に見とれていた。

 

(わぁ~・・・カッコいい・・・)

 

士郎の姿は黒いカッターシャツにブルーのダメージシーンズ、アウターは白のモノトーンの見た目だった。

 

士郎の高身長な上に引き締まった体が単純な見た目に良いアクセントを見せていた。

 

(こ、こんな人が義経の婚約者なんだ!)

 

改めて感じ入る義経だが、

 

「義経?義経!」

 

「はわう!?」

 

「どうしたんだ?固まったりして。・・・俺、何処か変か?」

 

「ぜぜぜ全然!カッコいい!!・・・あ」

 

思わず考えていたことが口をついて出た義経は俯いてモジモジしてしまった。

 

「はは!そうか。義経も可愛いぞ。俺、見劣りしなくてよかったよ」

 

(あああ・・・義経は、義経は幸せ者だ・・・)

 

屈託なく笑う士郎に義経はどう返したらいいかわからずモジモジしているだけだった。

 

「それは良かったとして、映画館、入らないか?」

 

「うん!」

 

自然と手を繋いで二人は映画館に入って行った。

 

館内は上映中の作品が多い時間なのか、それほど混んではいなかった。

 

「んーっと・・・なんだ?ネコアルク最後の猫缶・・・路地裏同盟の奇跡・・・」

 

なんだか見てはいけないものを見た気がした。

 

「義経、何見る?」

 

キョロキョロと周りを見ていた義経は慌てた様子で、

 

「うんと、源氏伝裏忍風帖っていうタイトルなんだけど・・・」

 

「ああ、あれか。こっちだ義経」

 

源氏なのか忍者なのか判断がつかないがともかくチケットを買いに受付へと向かう。

 

「源氏伝裏忍風帖、大人二枚お願いします」

 

「いらっしゃいませ!承りました。お席はどうされますか?」

 

30分も早くついてしまったため、席はまだ空いていた。なので遠慮なく、

 

「真ん中のこことここで」

 

一番いい席を取った。

 

「かしこまりました!今発券中ですので今の内にお会計を」

 

「はい。お願いします」

 

「し、士郎君・・・!」

 

義経も可愛らしい財布を出したが士郎が素早く二人分出してしまったので、義経は面食らってしまった。

 

「士郎君お金・・・」

 

「いいんだ。彼女とのデートくらいカッコつけさせてくれ」

 

「はう・・・」

 

士郎の清々しい笑顔とデートという言葉に義経は抵抗することも出来ず、士郎のジャケットをちょこんと掴むことしかできなかった。

 

そうしてチケットを入手した二人は、映画館だけでなくショッピングモールになっている館内をぶらついて時間を潰し、いよいよ映画上映時間に入場し、映画見るならこれだろうというポップコーンとジュースを席にセットし映画を見た。

 

(なるほど。源氏に凄腕の忍者が存在したというフィクションなのか)

 

横を見れば義経のワクワクとした目がスクリーンを映している。映画館ならではの大音響と大きなスクリーンに二人とものめり込んでいくのだった。

 

 

 

 

 

「映画、楽しかったね!」

 

「ああ。まさかあの忍者が・・・」

 

上映後、二人はあそこが面白かった、ここがワクワクしたと話しながらまた館内をウィンドウショッピングしていた。

 

「そういえば義経。客船のパーティチケットちゃんとあるか?」

 

今ならまだ取りに戻れる時間なのでそう聞くと、義経はじゃーん!とバッグから二枚のチケットを出した。

 

「これがチケットだよ!」

 

「ほう。なになに・・・七浜豪華客船パーティのご案内・・・」

 

本当にそんなものがあるんだなと思いながら士郎はチケットを読み上げる。

 

と、一か所で気になる単語を発見した。

 

「・・・義経。着替え、持ってきたか?」

 

「うん!明日着る服を「そうじゃない」?」

 

そう言って士郎はチケットの一部を指さした。

 

「・・・ドレスコード必須?」

 

「そうだ。私服じゃ多分入れないぞ」

 

「・・・。」

 

義経は顔色を青くした。

 

「持ってきてないんだな?」

 

「うん・・・」

 

義経は泣きそうになっていた。

 

(折角の士郎君とのパーティが・・・)

 

当たったことに浮かれて参加条件をよく見てなかった自分が情けないと義経は涙目になる。

 

「ごめんなさい・・・義経が・・・」

 

謝ろうとしたその時、士郎はキュッと義経の手を握った。

 

「なら買わないとな。俺も準備してないしこの際だから揃えよう」

 

「え・・・?」

 

義経はポカンと士郎を見上げた。

 

「泣くことないぞ義経。今からドレスを買いに行こう。すぐに着れるやつだから選択肢は少ないけど大丈夫だよ」

 

「でででも!義経はドレスを買えるほどお金を持ってない・・・」

 

「カッコつけさせてくれって言ったろう?さ、早く決めないとパーティに遅れちまう」

 

「え?え!?士郎君!?」

 

士郎はそう言って義経の手を引いた。

 

「義経はどんなのが似合うかな・・・」

 

「あわわわ・・・」

 

幸いここはショッピングモール。フォーマルな衣服もあるだろう。それになくても他の店に買いに行く時間はある。

 

あわあわする義経をよそに士郎は歩き出した。

 

 

 

 

 

「源義経様ですね?」

 

「は、はい・・・」

 

義経は士郎の買ってくれたドレスに身を包み客船の受付へとやって来た。

 

「もう一方はお隣の・・・」

 

「衛宮です」

 

「衛宮様と・・・はい。受付が完了しました。当客船のお料理は無料ですので味わっていただけたら幸いです。お飲み物もお二方は未成年ですので・・・ノンアルコールのカクテルなど用意しておりますのでどうぞ、ご賞味ください」

 

「わかりました」

 

「当客船ではドレスコードが適用となっております。中に入られてから私服にならないようお気を付けください。では、どうぞ!」

 

色々な注意事項を教えられ、いよいよ士郎と義経は豪華客船へと足を踏み入れた。

 

「流石豪華客船のパーティだな。富裕層の坊ちゃんや令嬢が入り乱れてる。義経、はぐれないように手を繋ごう」

 

「う、うん」

 

恐る恐る士郎の手を握る義経。

 

(ゆ、夢じゃない・・・よね?こうして士郎君の暖かい手があるし・・・)

 

現実離れした光景に義経は呆然としていた。自分はきらびやかなドレスを身に纏って、士郎もスーツに身を包み夜景がきれいな豪華客船で食事し、優雅な曲に合わせて踊る。まさに夢のような時間だった。

 

「義経?」

 

「ひゃい!」

 

緊張のし過ぎで声がひっくり返るも士郎は落ち着いて義経を見た。

 

「大丈夫か?無理してないか?」

 

「う、うん。大丈夫。ただその、夢みたいだなって・・・」

 

「俺もそう思うよ。潜入でこういう所に入ったことはあるけど、純粋な客として、それも婚約者となんて想像もしなかったよ」

 

「潜入?士郎君はこういう所来たことあるの?」

 

「あー・・・なくはないけどこうしてのんびりと楽しめはしなかったかな。義経は楽しいか?」

 

「うん。士郎君と一緒で義経は嬉しい」

 

「そうか。夕飯はここで済ませちまおう。あっちのテーブルに・・・」

 

と士郎が義経を連れて行こうとした時だった。

 

「おお!兄上ではありませんか!」

 

「ん?英雄?」

 

何ともこういう場に相応しそうな男と出くわした。

 

「兄上もこのパーティに参列されていたとは、奇遇ですな!」

 

「ああ、義経が俺を誘ってくれたんだ。というか英雄。兄上なんて呼ばないでくれ。同級生だろう?」

 

「確かにそうであるが・・・我にとっては兄上同然なのだ!やめる気はないぞ!」

 

断固拒否、という形の英雄に士郎は苦笑をこぼし、お互いのグラスをチン、と鳴らした。

 

「義経も実に愛らしい!ドレスを選んだのは兄上か?」

 

「ああ、よくわかったな?」

 

「九鬼で義経にドレスを所望されたことはないからな。すぐにわかった!兄上は良い目をしておられる」

 

「お世辞でも嬉しいよ。英雄はなんでこのパーティに?」

 

「これくらいの規模のパーティとなると九鬼の長男として出なければいかんのだ!なに、あいさつ回りは既に済んだのでな。少しばかり語ろうではないか!」

 

「ああ。義経、大丈夫か?」

 

「う、うん・・・」

 

どうにも疲れが見え始めている。どうしたものかと思っていたが、

 

「英雄様」

 

「どうした、あずみよ」

 

「英雄様が語らっている間、私は義経様と語らおうかと」

 

「良い案だな!では兄上、男同士あちらで語らいましょう」

 

「わかった。忍足あずみ。すまない」

 

「気にすんな気にすんな。それより英雄様の護衛、頼むぜ」

 

分かっていると頷く士郎。そうして二人は去って行った。

 

「ぷはあ!」

 

思わず大きな息を吐いて義経はあずみに頭を下げた。

 

「あずみさん。ありがとうございます。まさかこんなに緊張するなんて・・・」

 

「さしもの源義経も未来の旦那と夜更かしは堪えるか?」

 

「み、みみ未来の旦那様って・・・」

 

かぁっと顔を赤くして恥ずかしがる義経をケラケラ笑いながら、あずみはワインを飲み干す。

 

「あの、お仕事中なのはわかるんですけど、お酒、大丈夫なんですか?」

 

「あたいは風魔の鍛錬で毒は効かない体なんだ。酒も言わば毒。酔えねぇのさ」

 

そう言って追加のワインを手に取ってあずみは話す。

 

「しっかし、あの銀髪の英雄様、すっかりお前らのこと誑し込んでんだな」

 

「・・・うん。義経は士郎君しか愛せないです」

 

「はっはっは!小娘が一丁前に言うじゃねぇか。あたいもなー、英雄様と任務じゃなくて奥方として参列したいぜ・・・」

 

「その、あずみさんは九鬼君に告白しないんですか?」

 

「あたいが?出来る訳ねぇだろ。あたいは英雄様の苦労を知ってる。将来誰とも知らぬ奥方を迎えて九鬼に貢献なさる。そいつが分かっていながら、身勝手に告白なんか出来ねぇよ」

 

「でも・・・!」

 

「いいんだよ。あたいはそれで。まぁ、義経達の衛宮みたいな存在が出来れば変われるかもしんねぇけど?あんな男は一人いりゃ十分だわな」

 

そう言って二杯目のワインを開けて彼女は先を促す。

 

「そら。十分休めたろ?早く合流しようぜ」

 

「は、はい・・・!」

 

義経も遅れまいとあずみについていく。

 

「遅れました英雄様」

 

「よい!我も兄上と心置きなく話し合えた!」

 

「だから兄上はやめろっていうのに・・・」

 

頭が痛そうに額を抑える士郎。

 

「士郎君!ごめんね」

 

「いや、義経の元気が戻ったのならいいさ。ありがとう、二人とも」

 

「礼には及ばぬ!あずみが気づいてくれたのだから礼ならあずみにな。我は兄上と十分に益のある話が出来てうれしいぞ!」

 

「そうか。じゃあ二人とも。お互いパーティを楽しめると良いな」

 

「うむ!ではな!」

 

「失礼します」

 

英雄とあずみがその場を後にして士郎は改めて義経に向き直った。

 

「義経、大丈夫か?無理してないか?」

 

「うん。もう大丈夫だよ。心配をかけて義経は申し訳なく思う・・・」

 

「そんなこといいさ。とにかく義経に元気が戻ってよかったよ。あっちのテーブルの料理が美味しかったんだ。行かないか?」

 

「うん!義経も食べる!」

 

手を取り合って歩む二人には決して砕けぬ情愛が溢れているのであった。

 

 

 

 

 

 

色々な料理を食べ、テラスの椅子で小休止を挟んでいた士郎と義経。そんな二人に意外な二人が声をかけて来た。

 

「あの、衛宮さんと義経さん・・・ですか?」

 

「はい。そうですが・・・って」

 

「・・・よう」

 

「「ガクト(君)!?」」

 

何ともパーティに不釣り合いな人物が眼鏡をかけたドレス姿の女性と現れた。

 

「ほら、ガクト君、お友達なんでしょ?」

 

「あ、ああ・・・二人とも元気か?」

 

「元気も何も・・・ガクト、そちらの女性は?」

 

士郎はびっくり眼で二人を見比べた。

 

「初めまして。京都市立威風学園の『松本 南』です。ガクト君の彼女でーす!」

 

「初めまして。川神学園2-Sの源義経です」

 

「おなじく2-Fの衛宮です・・・」

 

呆然と目が行ったり来たりする士郎とガクト。士郎は説明しろと目を追っかけるが、

 

「・・・。」

 

(おいこら、説明くらいせんか!)

 

ガクトは頑なに視線を合わせようとしなかった。

 

「もうガクト君たら。彼女の紹介くらい出来なきゃだめだよ?」

 

「お、おう・・・」

 

それでも口が重いガクトに代わり、士郎が聞くことにした。

 

「京都市の学園という事は・・・もしや、修学旅行の時の?」

 

「そうそう!私、あの時ガクト君に助けられてからずっとメールのやり取りしてて・・・仕事でこっちに来たからガクト君をパーティに誘ったんです」

 

背丈は小柄なので生徒かと思いきや、仕事で、という単語に気付く士郎。

 

「失礼ですが、お仕事は何を・・・?」

 

「威風学園の教育実習生です!」

 

「「・・・。」」

 

ここはいくら大きな学園の教育実習生と言えど、それだけで来れる場所ではない。

 

(おいガクト。いい加減ちゃんと説明しろ)

 

義経と楽し気に会話している中、士郎はガクトを肘で小突いて説明を促した。

 

(前に修学旅行で女の子助けたって言っただろう?)

 

(それが彼女なのはわかった。教育実習生という事だからガクト達とバッティングした生徒を諫めにその場に居たってとこだろう?)

 

士郎の予想は的中していた。士郎の言う通りあの場は威風学園のオリエンテーションだったのだ。その付き添いという形で彼女が同行していたが、夜、抜け出す生徒を追っかけてその場にいた、という事だった。

 

(それよりもあの人、本当にただの教育実習生か?このパーティに出れるなんてそうないぞ)

 

(あ、ああ・・・南さんは大手スポーツ用品メーカーのご令嬢なんだ。俺様も戸惑ってる)

 

(なんだって?)

 

どうやらガクトは生徒と間違えてすごい人と繋がりを持っていたらしい。

 

「男の子同士の秘密の会話は終わりましたか?」

 

「ああ・・・えっと。松本、さん?はなぜこのパーティに?」

 

「それねー・・・私の仕事も関係するんだけど、いろんな人への挨拶って感じ。私は威風学園の実習生なのにねー」

 

納得がいかぬという顔の南。だが、

 

「まぁその代り、ガクト君とこうしてデート出来たんだから儲けものかな!」

 

「松本さんは凄いですね。教育実習に加えてご実家のスポーツ用品メーカーの仕事もなさってて、義経は、いたく感動しました!」

 

「もう、義経ちゃんたらー!うちの学園の子達に爪の垢でも飲ませてやりたいわ」

 

そう言って近くのバーテンダーからワインを受け取る南。

 

「み、南ちゃん。一応仕事中だから酒の飲み過ぎはまずいと――――」

 

「ぷはぁ!大丈夫だよガクト君。お仕事でも適度に力抜かないと続けるの大変だよ?」

 

そう言って機嫌良さそうにガクトの腕を抱きしめる南。

 

「それじゃ、私達は残りの挨拶を済ませてくるから。義経ちゃん!ファイト!だよ?」

 

「は、はい!南さんも!」

 

そうしてガクトと南は去って行った。

 

「・・・。」

 

「士郎君?」

 

ぼーっとその後ろ姿を見つめる士郎にどうしたのかと声をかけると、

 

「いや、あまりにも友人の違う面が見えてしまったというか・・・。義経は俺とガクトが風間ファミリーっていう仲良しグループなのを知ってるだろう?」

 

「うん。そんなに意外だったの?」

 

「ああ・・・俺も、モテたいモテたい言うガクトに、何度もお前は普通にしてればモテるから、って言い続けてたんだが・・・遂に恵まれたって感じだ」

 

「あはは。そんなになんだ?」

 

「そりゃあもう何せな――――」

 

と最後は意外なエキストラの登場で場をかき回して行ったが、二人は仲良くその話題で楽しい一時を過ごすのだった。




今回はこんな感じになりました。ホテルの描画が無いぞって?無理です砂糖吐きまくる自信があります(白目)

意外なオリジナルキャラ、松本南ちゃんは学生と間違われるほど小柄な設定です。威風学園もフィクションなのであしからず。

次回は何しようかな…清楚との一幕を書けたらいいなって思います。

では!
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