真剣で衛宮士郎を愛しなさい!   作:Marthe

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皆さんこんばんにちわイベント周回に追われている作者です。

今回はドイツ陣営の話です。本格的な強化は士郎が冬休みに入ってからにしようと思ってましたが意外と話の進行が遅く、辿り着けてないので導入だけでもしようかなと思います。
では!


ドイツ奮闘

――――interlude――――

 

士郎が清楚と遊んでいるころ、リザはジークに手当されていた。

 

「士郎君からもらった薬を使ったからすぐよくなると思うよ。でも治るまで訓練は禁止」

 

「・・・でもジーク、俺だけ成果出せてないんだ」

 

そう言って深刻そうな顔をするリザ。

 

それもしょうがない事だった。ジークは士郎から秘蔵の薬を手に入れ、コジマはレオニダス王とのスパーリングでぐんぐん成長している。

 

テルマも最近は微調整に入っていると言うし、副長のフィーネを除けば自分が一番出遅れていたのは事実だった。

 

「でもその怪我を無視して訓練したら手が駄目になっちゃうよ?」

 

「わかってる・・・けど」

 

やはり納得がいかないとリザは思った。

 

「それに、士郎君に相談したの?」

 

ジークの言葉にリザは難しい顔をして、

 

「何とかアドバイスはもらおうとしてる。けど、これは技術だから日々精進するしかないんだ。衛宮はなんとか鉄甲作用の感覚を説明してくれてるけど・・・」

 

そちらも芳しくない。という事だった。

 

「うーん・・・士郎君がそんなに中途半端で終わらせるかなぁ・・・」

 

「え?」

 

ジークの言葉にぽかんとした表情を浮かべるリザ。

 

「多分士郎君の事だからリザちゃんに合う解決方法を考えてるんじゃないかなぁ」

 

「解決って言ったってどうするんだよ」

 

「それは私にもわからないよ。でも最近リザちゃんや副長のことよく聞かれるよ?」

 

「え?そうなのか?」

 

「うん。無理してないかーとか進捗はどうだろう、とか。第三者視点で教えてほしいって」

 

「・・・意外だ」

 

リザはまだどこか、女を侍らす八方美人にしか思っていなかったのだが、まさかそこまで気にしてくれていたとは考えもしなかった。

 

「すごいよね。隊長含めてお嫁さん沢山いるのに、私達の事もちゃんと見てくれてるんだよ」

 

「・・・。」

 

このゴム礫もテルマの失敗作を標的にするのも、全ては衛宮士郎が整えた環境だ。

 

話しを聞くに、彼がこの技術を学んだ時はひたすら剣を投げ続けていたのだろう。

 

それに比べればなんとやり易い環境か。

 

(浮かれて休暇だ、なんて言うんじゃなかったな)

 

彼は気にしていないだろうが実に失礼な態度だった。

 

リザはなんだか自分に嫌気がさしてきた。

 

そんな時だった。士郎が清楚を連れて衛宮邸に帰ってきたのは。

 

「すまん!晩飯に間に合わなかった!」

 

「ごめんなさい!」

 

滑り込みのように帰ってきた二人に、おうおうやってんな、とお門違いの感情も頭をもたげる。

 

だが、もう言う事はしない。きっとこの面倒見の良さが彼の魅力の一つなのだろうと考えを改めて。

 

 

 

 

 

次の日、リザはぼーっと座り込んで慣れぬ左手で投げては拾ってを繰り返す、なんとも益のないことをしていた。

 

といっても仕方ないのだが。何せ利き手が使えなくなった以上、不得意な左手を使えるようにするくらいしか残されていなかったのだから

 

「近接ならいけるんだけどなぁ・・・投げるのはなんとも・・・」

 

これも修練かね、と気落ちしながらも投げる。

 

「おはようございます、リザさん」

 

と、げっそりな顔をした士郎が起きて来た。

 

「おはようさん。どうしたんだ衛宮ー?げっそりな顔して」

 

これは昨晩はお楽しみでしたね、という奴だなと考えて表に出さないように気を付ける。

 

「ああー・・・色々ありまして。修行の方はどうですか?」

 

その言葉に、何か嬉しいという感情が走ったが、リザはそれを押し殺し、

 

「ジークに治るまで禁止って言われた。分かってたことだけどどうしたもんかなぁ・・・」

 

と、ついいつもなら吐かない弱音を吐いた。

 

「まぁ逃れられないことではありますね。・・・んー。でもこのままだとリザさんだけ成果が上げられなくなりそうですし、何か考えます」

 

頷いて思考を走らせる姿にまた嬉しい、という感情が巻き起こって、

 

「ホントか!?いやー頼りになるねぇ」

 

そんな言葉を返してやり過ごしたのだった。

 

――――interlude out――――

 

 

朝食を食べ、学校に向かう間も士郎は色々考えていた。

 

(指ぬきした手袋・・・いや薄手のグローブか?それに術式を組み込んで――――)

 

「士郎。学校に遅れるぞ」

 

「あ、ああ、悪い。もう行かないとな」

 

林冲の一声で思考の海から現実に引き戻されて、鍛造所から出てくる士郎。

 

「それじゃ、」

 

「「「行ってきます」」」

 

「「「行ってらっしゃい」」」

 

沢山の声で行って来ますを言い、沢山の声に行ってらっしゃいを言ってもらえる環境に、なんだか胸がほんわり暖かくなって士郎は元気に登校することが出来た。

 

「士郎君、悩み事?」

 

「悩みなら私達が聞くぞ」

 

「筋肉の事ならばおまかせを!!」

 

「ああ・・・って筋肉じゃない。ちょっと新しい武装を考えてて・・・」

 

「もしや、リザの為、ですか?」

 

「正確にはリザさんとフィーネさんだな」

 

うーんと唸って、

 

「リザさんはこのままだと何も得られずに帰りそうだし、フィーネさんも今一成果が見えないからな。何かないかと模索してるんだ」

 

「・・・部下の為にすみません、士郎」

 

「マルが謝る事じゃない。元々引き受けるか否かは選べたんだからな」

 

「それで何かいい案は浮かんだの?」

 

「ああ。リザさんは新武装で対処するとして、フィーネさんは九鬼と相談するつもりだ」

 

「九鬼と?一体何をする気なんだ?」

 

「それは出来てからのお楽しみ。まぁ、出来るのかわからないけど」

 

そればかりは九鬼の技術者頼みだ。

 

そんなこんなで登校である。

 

「おはよう、士郎」

 

「おはよう、旭」

 

今日は最上旭が待っていた。

 

「どうしたの?なにか悩み事?」

 

「いや、もう解決・・・出来る自信はあるんだけどまだまだ空想の段階でな。手を付けるのは今日からなんだ」

 

「そう。ならいいわ。悩み事があったら遠慮なく言ってね?」

 

「もちろんだ」

 

そんな会話をして清楚と旭とは教室で別れ、士郎はF組の扉を開いた。

 

「おはよう」

 

「あ、衛宮君おはよう」

 

「おはよう、です!」

 

「はよーっす」

 

「皆さま!今日も良き日ですな!」

 

「レオニダスさんもおはよう・・・っていうか夏服のままなの違和感あるわ・・・」

 

「私には筋肉がありますからな。冬服が入らないのです」

 

士郎含めクラスの全員が冬服なのに対しレオニダスは今でも夏服だ。理由はさっきも言った通り純粋に入らないからだ。

 

(まぁ英霊だし風邪ひくこともないからな)

 

そんなことを考えながら士郎は無地のノートを広げ、何かを書き連ねてゆく。

 

「士郎ー何してるの?」

 

ぴょこりと赤毛を揺らして手元を覗いてくる一子。

 

「ん?機密事項だ。あんまり覗いてくれるなよ」

 

「そう言われると」

 

「覗きたくなる!」

 

わっとみんなが士郎の机に殺到する。

 

「ちょっ・・・クリス!猟犬部隊案件だぞ!」

 

「なに!?じゃあ駄目だ!犬!見るんじゃない!」

 

「久しぶりだけど衛宮君らしいわよね」

 

「英雄だなんだ持ち上げられても、超お人よし系」

 

「衛宮君はまた人助けなんですねぇ・・・」

 

なんとも賑やかな日々が始まろうとしていたが、間もなく冬休みがくる。仲間達は置いといて、クラスの皆とはしばしの別れである。それが分かっているのか皆ぐいぐいと士郎に近寄っていく。

 

「これは・・・グローブか?」

 

「なんかFFの巨乳キャラが装備してそうな外見」

 

「FFって言えばさ――――」

 

「だー!もう覗くなってのに!」

 

今日もまた、騒がしい一日になりそうだった。

 

 

 

 

「うーん・・・こんな所か」

 

帰り道、士郎は必要なものを買いそろえ、帰宅しようとしていた。

 

「しーろーうー」

 

「・・・なんだ藪から棒に」

 

突然百代が現れた。

 

「小遣いちょうだい!」

 

「誰がやるか!?」

 

「えーいいだろー・・・お腹すいたにゃん・・・」

 

「本音は?」

 

「あそこのハンバーガードカ食いしたい・・・あいたっ!」

 

士郎はそのままチョップを落とした。

 

「まったく。いつもそんなことに小遣い使ってるのか?」

 

「美少女にはカロリーが必要なんだ!」

 

「程度を考えんか!」

 

と言いつつ、結局数個は買ってあげる士郎であった。

 

「それにしても百代は鍛錬休みなのか?」

 

「んー今日は朝だけの日ー」

 

「ならバイトしろよ」

 

彼女なら引く手数多だろうに。主に力仕事で。

 

「ちょくちょくやってるー。じゃないと返済に間に合わないから」

 

「結局借りてるんじゃないか・・・」

 

この武神様にも困ったものである。

 

「それならちょっと新兵装の調整に付き合ってくれ」

 

「お?いいぞ。どんなだ?」

 

百代を引き連れて家に帰る士郎。

 

「ただいま」

 

「おかえり、士郎」

 

「百代、どうしたんだ?」

 

出迎えてくれた林冲と天衣。百代を連れて来たので何事かと思う。

 

「ちょっと遊びに来ました」

 

「仕方なく連れてきました」

 

「なんで仕方なくなんだよー!可愛い彼女だぞぅ!」

 

「わかったわかった。それより早く行くぞ。橘さん、夕食任せていいですか?」

 

「もちろんだ。士郎は鍛造所にこもるのか?」

 

「はい。集中して時間忘れてたらお願いします」

 

「わかった。それじゃ買い物してこないとな・・・」

 

「天衣。私もついていこう」

 

「ありがとう。それじゃ百代、ごゆっくり」

 

「はい。よし、やるぞー」

 

「まずは作ってからな」

 

そんなこんなで鍛造所。中ではテルマが一心に鉄を鍛えていた。

 

「帰ってきたのね」

 

「ええ。でもまだいいですよ。俺はこっちで作業があるので」

 

小さな座敷にテーブルがある区画をさす士郎。テルマは一言、分かったわ、と返して鉄を鍛えるのに集中した。

 

「で、何を作るんだ?」

 

「端的に言うと・・・『電磁加速砲(レールガン)』だ」

 

「は?」

 

百代は士郎が何を言ってるのか分からなかった。

 

設計図を作り、(これは学校で済ませた)実際に布を編み込み、そこに複雑な文様を編み込んでいく。手のひら部分には薄いゴムの滑り止めを張り付け、所々に伝導体の役割をする宝石を砕いて練り込む。

 

簡単に言っているが、これだけでも相当な時間がかかっており、全体が完成するのは夜遅くであった。

 

「百代、百代!」

 

「フガ!?」

 

夕食をご馳走になってすっかり居眠りしていた百代を叩き起こして完成品を渡す。

 

「まだまだ不格好だけどとりあえず機能はするはずだ。使ってみてくれ」

 

「使えって・・・どうするんだ?」

 

「手袋を身に付けてこの金属の礫を投げつけるんだ。グローブに僅かな気を流してな」

 

「へぇー、それでそのレールガン?みたいなことが出来るのか?」

 

「一応はな。ただ気のコントロールが難しいはずだ。最初は本当に微量から始めてくれ。言っとくけど、百代換算の(・・・・・)微量じゃ火傷するぞ」

 

「さらっと怖いもの押し付けるなぁ・・・」

 

「ほらほら、今日は遅くなっちまったんだ、早速テストだ」

 

そう言って中庭につるされている練習用鉄板に向かう。

 

「術式は組み込んだ。投げる力はそんなに要らない。微小な気を流しながら放つことを意識してくれ」

 

「了解。じゃあいくぞ」

 

第一射目。

 

「ふっ!」

 

カツン、コロコロ

 

「失敗か?」

 

虚しく転がる鉄の礫に百代はそういうが、士郎は至ってまじめに検分していた。

 

「・・・いや、今のは気が足りなかったらしい。もう少し上げてくれ」

 

「いいぞ」

 

一段階ギアを上げる百代その際、

 

ジリ・・・

 

「!?」

 

手を疼くようなしびれが走る。

 

「はっ!」

 

ガツン!

 

今度は鉄板にめり込む程度の威力が出た。

 

「上々だな。これを指で挟んで複数投擲出来れば大した威力になるだろう」

 

「でもちょっとビリッとした」

 

驚いたのか百代が涙目だった。

 

「そうか・・・そうすると内側にゴム加工をする必要があるな・・・指ぬきとはいえ少しばかり不格好だな・・・」

 

だが、実験は成功した。あとは細かい部分を詰めていくだけだ。

 

「なあ士郎。これ指弾でも使えるんじゃないか?」

 

「!それは盲点だった。百代は指弾行けるか?」

 

「行けるけど・・・私の威力でやったら実験も何もないな。普通に鉄板ぶち抜く」

 

「わかった。それは俺がやろう。魔力でも多少反応するはずだ」

 

はぁとため息を吐いて士郎は百代に感謝の念を届けた。

 

「すまないな、こんな遅くまで。きちんと送っていくから・・・」

 

「あー・・・今日は帰んないって言っちゃった」

 

「・・・まさか」

 

「今日は士郎とイチャイチャするのだ!」

 

がばっと士郎に抱き着く百代。その姿に苦笑して、

 

「わかった。先に風呂入っててくれ。俺は後片付けしてから行くから」

 

「早く来いよ!」

 

そう言ってぴゅーっと風呂場に向かう百代。

 

「・・・。」

 

昨日は清楚で今晩は百代か・・・と遠い目をする士郎。

 

「・・・腹上死・・・しないよな、俺」

 

毎度毎度彼女達は激しく求めてくるので、死んだ後も笑われるような事態にならないでほしいと、士郎は思うのだった。

 

 

 

 

翌日も士郎はレールガンのグローブ、電磁加速グローブの作業に取り掛かっていた。

 

「鍛治仕事そっちのけで何作ってるの?」

 

テルマが不思議そうに覗きに来た。

 

「ちょっとした兵装ですよ。これならリザさんも成果を出せるんじゃないかなと・・・」

 

「ふぅん」

 

ここ最近のやり取りですっかり前のような刺々しさが無くなったテルマ。だが、士郎に興味はないというスタンスは変わらず、こうして猟犬部隊に関係ありそうなことだけ聞いてくるようになった。

 

「・・・。」

 

「なんです?」

 

妙にじっと見てくるテルマに士郎は見かねて問いかけた。

 

「それ、レールガンがどうのって言ってたわよね」

 

「ええまぁ」

 

「同じ加工を鎧でやれば出来るかしら」

 

唐突な質問に士郎は考えた。

 

「・・・あまり向かないと思いますよ。これは投げる・・・投擲前提の武装です。あのテルマさんの鎧では投げるのは難しいでしょう?」

 

「専用の兵装を開発すればどう?」

 

今日は妙にぐいぐい来るなと思いながら士郎はしばし考える。

 

「可能でしょうが・・・それでは普通の科学兵装と変わらないのでは?第一、タンクが役割のテルマさんに一撃必殺の武装は噛み合わないでしょう?」

 

「それでも、いざという時に役立つかもしれないじゃない」

 

「うーん・・・」

 

どうやら彼女の中の琴線に触れてしまったらしい。かなり綿密に計算しているようだ。

 

「ならこうしましょう。テルマさんが専用の兵装を作れたらそれに合わせた出力の術式を編みます。それでどうですか?」

 

「いいわ」

 

言葉少なくそう返してプイッと鉄に目を向けるテルマ。

 

(なんか素直じゃないというか・・・)

 

しばらく一緒にいる機会が多かったので警戒心のようなものは薄れた気がするが、どうにもツンケンするのは変わりない。

 

(ま、男嫌いって言う事だしこれでも譲歩している方か)

 

そう結論付けて士郎はグローブの調整を進める。例の万能薬を使っているなら明日にはリザの手も治っているだろう。

 

「なんとかなりそうだな・・・」

 

汗を拭ってグローブを完成させようと微笑む士郎を横目で見たテルマは、

 

「・・・。」

 

少しだけ、見方が変わるのだった。

 

 

 

 

 

グローブの完成も間近という事で士郎はもう一つの鍛錬成果を上げられるものとして、英雄に聞いてみることにした。

 

「おや?士郎ではないか。此方が恋しくなったか?」

 

「おはよう、心。しばらく心とも話してないな。今度街に出かけないか?」

 

「!い、いいじゃろう!此方も家中事業ばかりで外に出かけていないから付き合ってやろう」

 

ヒュホ、ヒュホホと、なんともわかりやすい声を上げる心だった。

 

「それはそれとして、英雄は居ないか?」

 

「ぬ!」

 

ガタッ!と席の一つが音を立てた。

 

「何やら兄上に呼ばれた気がしたぞ!!」

 

「寝てたのか・・・」

 

これは隣にいる怖いお姉さんにガンつけられそうだと思えば、

 

「・・・。」

 

やっぱりガンつけられていた。

 

「寝てるとこすまないな英雄。例の件、どうなりそうだ?」

 

「ああ、兄上!順調だぞ!もうすぐ試作第一号が出来るところだ!」

 

「そうか。助かる」

 

「いやいや、兄上もやるなと見直した所だ!兄上はゲームなどにそこまで詳しくないと思っていたのだが・・・」

 

「いや、実際詳しくないよ。俺は知力を尽くした戦いに新しい形があってもいいなと思っただけだ」

 

知力による戦いは将棋やチェス他にも多々あるが、今回のは本格的なものである。

 

仮想戦場を舞台にしたリアルタイムオンラインシミュレ―ション。

 

リアルタイムもさることながら、兵士もエリートから純粋歩兵まで居る、稀に見る力の入れ具合。

 

敵陣も斥候を放たねば見えない、兵士にも疲労値があったり、衛生兵を組み入れないといつまでも戦場復帰できないなどなど・・・

 

戦場遊戯、とでもいうようなコアさである。もちろん兵全てをエリートには出来ないし、設定されている武力よりも低い相手に負けたりもする。

 

ほかにも様々な設定がなされているがなにより重要なのは、より実戦的なこと。士郎が提唱した時はそんなにコアな設定にして一般人が楽しめるか、という事だが、

 

『ほら、専用のカードとか作ってさ。ゲームやアニメ、実在の軍を率いるみたいな・・・』

 

その一言で英雄の脳内はフル回転。これなら一般ユーザーも楽しめるし、九鬼も色々な所と繋がれると判断。

 

よって、技術者が星の図書館、ミス・マープルの知恵を借りて様々な工夫を凝らしている所なのだ。

 

「すまないな。無理させたか?」

 

「なんのこれしき。こちらは今までにない着想を得て邁進している!兄上が気にすることはない!」

 

九鬼としても、マープルがこのゲーム機に熱を上げていたのだ。なにせ実在する、もしくは実在した戦術家、そしてゲームやアニメという架空の人物というものを現実にするのだから。

 

あの老婆が食いつかないわけがない。一応そこまで計算づくで士郎は申し立てたわけだが、いい具合に進んでいるようで何よりだ。

 

「先も言った通り、間もなく試作一号機が完成する。その時のサンプルとして兄上を呼びたい」

 

「もちろんだ。それとなんだが・・・一人随伴者を連れて行っていいか?」

 

「ふむ。随伴者とは?」

 

士郎は英雄の耳元に顔を寄せ、

 

『ドイツ軍、猟犬部隊の参謀だ』

 

と告げた。

 

「なんと!これは腕に力が入るな!!あずみ!筐体の構築書をもてい!」

 

「かしこまりました英雄様ぁぁああ!」

 

休みの邪魔をしてしまったがこちらも上手く行っているようでほっと一息つく士郎。

 

こちらは英雄に任せて良いだろう。よろしく頼むぞ、と声をかけて士郎はS組を後にした。

 

 

 

 

 

 

そしていくつかの授業を受けたら昼休みである。衛宮定食は今日も快調。まだ始まって30分という所なのにもう売り切れそうである。

 

「大将ー定食の数増やさないの?」

 

「んー・・・増やしてもいいんだけど俺と弁慶が昼飯食べる時間が無くなるぞ?」

 

「あー・・・そっか。この売れ行きなら二倍に増やしても売り切れるだろうけどね。そっか、それは嫌だなぁ・・・」

 

と言いつつ、士郎は弁慶だけでも昼食をきちんととれるようにしているのだが。それでも難しくなるだろう。

 

現在は売るのに30分、食べるのに30分といい具合に半分なのだ。これ以上の増加は無理だった。

 

ちなみに、卒業後は学食の人として正式に入れてほしいという嘆願書がいくつも学園に提出されているらしい。

 

「え、衛宮定食をお願いします!」

 

「お?黛さん・・・だったかな?」

 

「は、はいー・・・」

 

ピキリと固まる由紀江をカラカラと笑って、

 

「大将ならもうすぐ出てくるよ。通常定食でいいかい?」

 

「はい。あの弁慶先輩、士郎先輩は・・・」

 

「大丈夫、無理はしてないよ。丁度その話をしてたとこなんだ。大将もこれ以上は増やせないってさ」

 

「そうですか・・・」

 

「黛さんはもっと増やした方がいい?」

 

「いえいえいえ!それでは士郎先輩が昼食を取れなくなってしまいます!」

 

「そこだけはゆずれねー!」

 

「はっはっは。いい後輩じゃないか大将?」

 

「ん?由紀江だったのか」

 

「士郎先輩!」

 

下級生の所にはあまり行かない(百代は何処からともなく絡みに来る)ので何気に学校で会う機会が少ないのだ。

 

「金曜集会、今日だよな?今日も何か作っていくから・・・」

 

「士郎先輩、その・・・」

 

「まゆっちがね、一緒に献立決めて、一緒に作りたいんだって」

 

「松風ー!?」

 

周りの人間は首を傾げているが士郎は笑って、

 

「そうか。じゃあ放課後、一度うちに集合だな。楽しみだ」

 

「は、はいー・・・」

 

真っ赤になって固まる由紀江の頭を撫でて待ってるぞ、と言いおく。

 

「大将は罪作りだねぇ・・・」

 

「ぬ・・・」

 

もう言い返せなくなってしまった士郎は唸る事しか出来ないのだった。

 

 

 

 

 

学校が終わったら秘密基地に集まる。今日は金曜集会の日だ。

 

「みんなに喜んでもらえたらいいな」

 

「はい。きっと大丈夫です!士郎先輩の力作ですから!」

 

「こらこら、俺と由紀江の、だろう?」

 

「は、はい!」

 

士郎の言葉にニッコリ笑顔を浮かべて頷く由紀江。

 

「・・・。(モジモジ)」

 

「どうした、由紀江」

 

「士郎先輩そのー・・・」

 

「まゆっちの乙女心察しろ馬鹿ー!」

 

「おおう・・・」

 

馬のストラップに馬鹿呼ばわりされて思わずのけぞる士郎。

 

「なんだ・・・手、繋ぐか?」

 

「・・・!」

 

ブンブンと頷いていそいそと手袋を外す。

 

「はぁ・・・冬だなぁ・・・」

 

しんしんと降る雪に士郎はこの世界に来て初めてのクリスマス、そして年越しが待っている。

 

「その前にはなんとかしてやりたいものだがさて」

 

「士郎先輩?」

 

「ん?ああ、寒いか」

 

握り合った手をポケットに押し込む。全く見当違いであるが、由紀江は満足そうであった。

 

「いちゃこらしやがって!」

 

「なんだ、ガクトはそうじゃないのか?」

 

「いやーなんだな、そのー・・・」

 

「ええ!?ガクトに彼女出来たの!?」

 

一番に驚いたのはモロだった。それもそのはず、彼らは小さな時から一緒の友達。モテない同士だなんだと言っていたがついにこの時が来てしまったのである。

 

「ねぇねぇ、もしかして修学旅行の時の人?」

 

「ワン子にしては鋭い」

 

「一子らしくないな」

 

「同感だ」

 

「なによー!クリなんかガクト達が抜け出してたのも知らないくせにー」

 

「なんだと!?秩序を乱す輩は自分が成敗してくれる!」

 

「おいおいもういつの話だよ。クリス、ちょこっとだけ息抜きも必要なんだぜ?」

 

「それ、この前客船で南さんが言ってたことだろうが」

 

「あはー。そうだったそうだった」

 

「ガクトの奴、ニヤニヤして気持ち悪い」

 

「まぁまぁ、みんなそう言うなって。ともかく、ガクトにもめでたく彼女が出来たという事で乾杯」

 

「「「乾杯~」」」

 

チン!とグラスを鳴らして一斉に飲み物を飲み干す。

 

「はぁ、美味い・・・ただのお茶だけど」

 

「勢いはビールジョッキだったね」

 

「私はもうすぐ解禁なんだがなー。それより士郎!そのバッグの中身を寄越すのだ!」

 

「わかってる。わかってるからこっちに来るな!ひっくり返すだろ!」

 

「今日もまゆっちと士郎のお弁当なのね!じゅるり」

 

「今回のは合作だ。大いに食ってくれ」

 

「マジか!どれから手を付けようか迷うな」

 

「そういえばキャップは?」

 

「なんか冒険の帰り足みたいだよ。冒険家のお父さんと落ち合って古代遺跡の調査するとか・・・」

 

「・・・。」

 

キャップの父も彼のような剛運の持ち主なのだろうか?そうするとまた士郎の胃がピンチである。

 

「なんで士郎真っ青になってんだ?」

 

「ほら、前のみたいなものを持ってこないか心配なんじゃない?」

 

「ああ、あれな。あんときは士郎相当慌ててたもんな」

 

モグモグと士郎と由紀江作の弁当を口に運びながらいうガクト。

 

「士郎、結局あれは何だったんだ?」

 

「・・・。」

 

言っていいものか。この一言で仲間達の絆にひびが入るような気がして嫌だった。

 

「細かいことは言えない。ただ、とんでもなく危険のあるものだ」

 

「秘密を明かしてくれた士郎がそういうならそうなんだろうな」

 

「最上幽斎さん、だっけ。最上先輩のお父さん。あの人が起こした事件みたいになるの?」

 

「断定は出来ないけどな。知らない方が身のためだぞ」

 

そう警告する士郎に仲間達は頷いた。

 

「もうあんなのはこりごりだ」

 

「同感ね~。アタシも戦ったけど、正直精神的なダメージが大きかったわ」

 

「数で来られると精神との戦いになるからな。あの時は良く戦ったな」

 

一子の頭を撫でて士郎もお茶をゴクリ。プロでもない一子や由紀江は本当によく戦ったものだ。

 

本来あんないつ終わるかも知れない戦いなど、精神がついていかない。

 

人間、緊張、集中できるのは30分~1時間と言われている。ただでさえそうなのに、命を賭けた戦いとなればさらに集中する必要がある。

 

どれだけ大変かは想像がしやすいだろう。

 

「お、キャップだ」

 

「本当だわ」

 

ぺらりとカーテンを捲るがそこに人影はない。というか、

 

(俺の視力じゃないと普通わからないぞ・・・)

 

士郎の目には原付に乗る彼の姿がくっきりと映ったが、

 

普通の人間にはさっぱりだろう。程なくして原付の音がして音が止み、

 

ダダダ、と階段を駆け上がる音が聞こえる。

 

「みんな!たっだいまー!」

 

「おかえりキャップ」

 

「おけーり」

 

「おかえり」

 

「おかえりなさい、キャップさん」

 

「あ!ずるいぞ!俺も食べる!」

 

何やらジャラジャラと音のなる袋を片手に士郎と由紀江の心づくしにありつくキャップ。

 

「・・・それで、何持ってきたんだ?」

 

ゴクリと一同が喉を鳴らす中、キャップはあっさりと、

 

「冒険でゲットしたお宝だ!ちょっと早いけどクリスマスプレゼント、ってことで」

 

じゃらりと出されたのは何かの牙でつくった首飾りや簡素な指輪など様々だった。

 

「毎度思うけどさ。これ、呪われてない?」

 

「見た目が完全にそれなんだよなぁ・・・」

 

「先生、お願いします」

 

「お、おう・・・」

 

京に言われて解析を施す士郎。

 

「・・・呆れた。これだけあって全部呪い無しか」

 

「だろう!いやー今回もやべえトラップばっかりだったぜ。ほんで・・・」

 

ドドン!とキャップは爆弾を置いた。

 

「まーたこんなのなんだけどよう・・・士郎、わかる?」

 

さーっと士郎は血の気が引く感じがした。

 

「せ・・・」

 

「「「せ?」」」

 

「聖杯だ馬鹿野郎!!!」

 

ドーンと士郎の叫びが冬空に響くのだった・・・。

 




はい。ここまでです。前半はドイツ組用の武器や戦略をオンラインで試せるゲーム作りなど、様々な備品を作り、集めました。リザの弱音もちょっとだけ。テルマさんもちょっと棘がなくなりました。

そして日常パートだ!と思ったんですがあるぇ?展開がおかしいぞぅ。という事で次回もお楽しみに。では!
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