今回は前回のフラグ回収と共にまた士郎の安寧とした日々を壊す(?)話になります。
今回も頑張っていくのでよろしくお願いします。
では!
――――interlude――――
雪が山をなすほどの豪雪の中。曹一族の一員である美鈴は護衛(見張り)をつけられ空港へと護送されていた。
「・・・ねぇちょっと離れてよ」
「貴女がもう馬鹿なことをしないと誓えるならそうしましょう」
一緒に護送車に乗っているのは華凛(かりん)という女性。今回の事件で美鈴の護衛兼お目付け役を命じられた曹一族の傭兵だ。
「馬鹿なことって・・・あたしは「そんなことしてない。ですか?」むぅ・・・」
「貴女の馬鹿は数ありますが今回は特級の馬鹿な行いだったと思いますが、違いますか?」
「・・・。」
ぐうの音も出ないとはこのことだった。何せ立ち入り禁止の祠に入り、数ある罠を突破して奥にあった本・・・魔導書を起動させ祠を崩壊させたのだから。
『………。……………。』
「ええ。分かっています。これで衛宮士郎に作った多大な『借り』は返せるでしょう。今の私達は友好関係を築いているのですから貴方の望み通りにします。しかしそこのバカ娘は別です。何度もこのようなことをしでかされても困ります」
華凛の言葉に返す言葉はなかった。
「もうすぐ空港です」
「了解。新年早々やってくれますね、美鈴」
たっぷりと嫌味をこめて言ったのだが、
「やった!いよいよ史文恭お姉さまに会いに行けるのね!」
『…………!……………。』
「わかっています。貴方はそこのポンコツの代わりにきちんと私が送り届けます」
慌てた声にそう答えて彼女は座り直した。
――――interlude out――――
「新年あけまして」
「「「おめでとうございます!!」」」
士郎の音頭に合わせて皆が新年を祝う。波乱万丈な一年を越えて無事新年を迎えられたのはとても感慨深い事だった。
「みんな揃って新年を迎えられて嬉しい。今後もよろしくな」
「ああ。私は士郎を守る。それはゆずれないからな」
「林冲は変わらぬな。まぁ今年も降りかかる火の粉くらいは払ってやる」
「私は今年から人らしい生き方が出来そうだよ。今年もよろしくお願いする」
各々今日までの感謝と抱負を胸に新年を迎える。
ちなみに清楚はまだ帰ってきていない。だが、後日、大器さん達と会食をする予定だ。
マルギッテもクリスと共にドイツである。
「じゃあ初詣に行こうか。ついでに挨拶もしときたいしな」
という事でやって来たのは川神院。仏寺ではないものの、川神の人達はここで初詣をするらしい。
「あ!士郎ー!」
「やっと来たな!とう!」
「一子も元気のわぁ!?」
飛びつかれて危うく倒れそうになるが巫女服の彼女等を見てギリギリで踏ん張った。
「おおっ倒れなかった!」
「・・・ッ。もう少しおしとやかさを身に付けろ!」
「ふふん、十分おしとやかだろう?」
「得意げにしてるけど答えはNOだからな」
何ー!?とぐわんぐわん絡まれながらも士郎は中に入って鉄心とルーにも挨拶する。
「新年あけましておめでとうございます」
「うむ。明けましておめでとう」
「おめでとうダネー!」
二人はいつもの格好だが、雰囲気が少し異なっていた。
「どうしたんですか?」
「年明け早々ダラダラするわけにもいくまいて。それなのにこの孫ときたら・・・」
「良いだろうーまだ川神院継いでないんだから」
「継いだ後も、士郎君と出会ったら同じなような気がするネ」
「それにジジイも嬉しいだろ?ひ孫が抱けるかもだぞ」
「これ!堂々と言うでないわ!」
「百代・・・もう少し空気を読んでくれ・・・」
相変わらず真っ直ぐな奴だなと苦笑を浮かべて言う。
「士郎がお兄ちゃんになるのね!」
「そう・・・だな。うん」
そう言えばそうだったと今更ながらに気付く士郎。
友達が妹になるとは思いもよらなかった。
「わーい!おにいちゃーん!」
バフ、と一子まで飛びついてくる。
(これは忠勝にも英雄にも見せられないな)
やっぱり苦笑を浮かべて士郎は姉妹をくっつけたままよっこらせと動き出す。
「それよりも、俺たちは初詣に来たんだが。案内はしてくれないのか?」
「武神自ら案内してしんぜよう」
「そうか、ここで祈ると百代に祈ることになるのか・・・」
「なんだよぅ微妙な顔するなよぅ」
ギリギリ
「あたたた!?分かった。冗談だから!」
「・・・本気だったと思うんだが」
「武神がこれでは仕方あるまい」
はぁ、と林冲と史文恭はため息を吐いた。
などと絡みつつ、まずはお賽銭を投げ入れて手を二回叩く。
(今年こそみんな平穏無事にいられますように)
大事な、士郎にとって特別な意味を持つ願いを込めて祈る。きっとそれは儚い、すぐに壊れてしまうものなのかもしれない。でもと。そうあることを願うくらい罰は当たらないだろうと士郎は顔を上げた。
「続いてはこちらのコーナー!定番のおみくじだ!」
「みんなで引こうか」
「ちなみに大凶がでたら罰ゲームな」
「コリャモモ!人の運で遊ぶでない!」
あはは・・・と笑い流していざ。
「・・・残念だったな百代。大吉だ」
「私は中吉」
「私もだ」
「末吉だ!私にも運が!」
喜びの舞を披露する天衣。
「レオニダスは引かないのか?」
「え?レオニダスさん何処に・・・」
「まさか私の背後じゃ「今日くらいは影法師としてなりを潜めていようと思ったのですが」ギャー!!!」
フゥっと霊体化を解いたレオニダスに百代は悲鳴を上げ、一子は目をぱちくりさせていた。
「レオニダスさんて、えいれい、何だよね?つまり幽霊なの?」
「そうですぞ。私は昔生きていた英霊。本来は肉体を持たないのです。魔力を用いて肉体を形成しているのですよ一子殿」
また消えて少し離れた所で出現するレオニダス。
「なるほどのう・・・元来は肉体を持たず、必要な時に魔力を用いて形成しておるのか」
「・・・道理で気配がしない訳でス。これはある意味問題ですネ・・・」
それは教師として雇う場合の事だろう。ルーは難しい顔をするが鉄心はむしろ頼もしいと笑った。
「ふぉふぉ。むしろ良い事ではないか。気付かれず護衛も潜入もでき、儂等では相手が出来ぬ相手と戦える。頼もしい限りじゃ」
「そう言っていただけると助かります。霊である私が運を占うというのも不思議な感じがいたしますが、では」
小銭を渡して引かれたくじは―――――
「おや、大吉ですぞ」
「おおー流石スパルタの王様。運もついて回るのね」
「はは。一子殿は上手いですな」
カラカラと笑ってレオニダスは一子の頭を撫でた。
それを微笑ましく見ていた士郎はふっと自分の引いたくじを見る。
「なになに・・・失せものが見つかる。運命の出会いあり、か」
そういえば遠坂達はあれからどうしているのだろうか?一応は自分を見つけたようだし、あれから毎日第二魔法を利用した術式で魔力を打ち上げているのだが。
今のところ応答はないしどうしたものか。
「士郎は何かいいことが書いてあったか?」
「ん?ああ。なくしたものが見つかって、運命の出会いがあるらしい。林冲は?」
「・・・安泰、好敵手と切磋琢磨」
「安泰なのに好敵手が出来るのか?」
なんとも不思議なくじである。
「好敵手の出現も良い刺激になるとかじゃないか?」
「そうもとれる・・・か?」
「士郎は争いが好きじゃないから」
「まぁライバルと切磋琢磨出来るのは幸福なことか」
今一納得は出来ないが一応そう言う事だと納得して士郎はお守りを数点買ってその場を後にすることにした。
「それじゃ俺たちは帰るから。売り子、頑張れよ」
「あいさー!」
「もちろんだ(後でお前んち行く)」
「なんだ今の」
「隠密性に優れた耳打ち?」
「耳打ちになってないじゃないか・・・」
普通に林冲に気付かれて隠密性もあったもんじゃない。
「修行中の技なんじゃないか?」
「ストライカーが耳打ち練習してどうするんだよ・・・」
なんとも無駄にすごい修練である。
「じゃあ帰ろう」
士郎の一声で一同は帰り足を向けるのだった。
――――interlude――――
羽田空港に着いた美鈴と華凛。ここからも護送車で移動だ。
「美鈴。はしゃいでいないで早く来なさい」
「だって史文恭お姉さまに会えるんだよ!お土産買っていこうかなぁ!」
「貴女にそんなお金はありません」
ぴしゃりと言う華凛そのことに疑問を感じて、
「なんで華凛が私の財産把握してるの?」
「今回の護送費に決まってるじゃないですか。貴女の私財から出して、足りない分を長が負担しているのです。貴女個人の財産なんてありませんよ」
「・・・。」
ドシャ!と美鈴は倒れた。
「あの本見つけてからこんなんばっかりなんだけどー・・・私悪いことしたー?」
ルールーと涙を流す美鈴だが、
「それは当然、立ち入り禁止の祠に入って中を盗掘したからじゃないですか。他に何があると?」
「盗掘なんてしてないー!私はただ長に認めてもらおうと・・・」
「規律が守れない人間が出世できるわけがないでしょう」
華凛の追い打ちにドシャ!と再び倒れる美鈴。
「くっそー・・・あの本めぇ・・・」
『…………!……………。』
「わかっています。ほら美鈴行きますよ。それともここで路頭に迷うのが本望ですか?」
「乗る乗る乗ーりーまーすー!はぁ・・・これからどうしよう」
「これに懲りたら一から学ぶことですね」
それが目的で長もこの対応にしたのだろうから。
でなければうん百万かかる護送費を個人の私財から出させるなど長はしない。
「はい。乗りましたね。出してください」
了解、と返事が返ってきて護送車が動き出す。
『……………。』
「大丈夫です。ここからそう遠くはありません」
心配げな声にそう答えて華凛は目の前のタブレットに目を落とす。
(順調ですね。このままいけると良いのですが)
行程は至って順調そのものだ。襲ってくる敵勢力もいない。
(あとは彼との邂逅がどうなるかですね。史文恭様がいらっしゃるという事ですから問題はないように思いますが)
もう日本国内に入ったのだ彼・・・衛宮士郎との邂逅は近い。
残りの道も油断なく神経を尖らせる華凛だった。
――――interlude out――――
士郎達が衛宮邸に着くと、
「ふはははは!九鬼揚羽、降臨である!」
「九鬼英雄である!」
「ふっはは!九鬼紋白、顕現であるぞ!」
九鬼姉弟が待ち受けていた。
「事前に連絡をくれればいいのに・・・寒かったでしょう?」
「む・・・それは少々短慮であったかもしれぬ」
自分は平気だが紋白が僅かにくしゃみをしていた。
「なにこの程度!我が熱く燃える市民愛に比べればどうという事もない!」
「我もへっくち!」
「ほら風邪をひきそうじゃないか。林冲、そこにあるストーブをこっちに向けてくれないか?」
「わかった」
「おお・・・すまぬな」
「後はあったかい紅茶でも「承っております」・・・。」
なんともまぁ手際のいい執事だこって。
ある程度場の準備が整った所で、
「新年」
「あけましておめでとうございます!!!」
ドドン!と外に控えた従者部隊が全員唱えた。
「なんでまたこんな人数を・・・」
「いや、本当は我だけでも良いかと思ったのだが、英雄も紋も義兄に挨拶をしたいと言ってな」
揚羽はもちろんの事、英雄も紋白もそれなりの恰好をしている。私服の自分が少し恥ずかしいが気にしないことにした。
それと、
「へぇ・・・ここが揚羽の旦那の家か。中々いいじゃねぇか。あの幽霊屋敷とは思えねぇぜ」
確か大器さんと話していた時少しばかり話した揚羽達の父親だ。カジュアルな服を着崩して物珍しそうに見て回っている。
「お父上も一緒か・・・」
「なに、案ずるな。父上は物珍しさで来ただけよ。とはいえ少しばかり破天荒なので――――」
「お!あれが鍛造所か!作った奴は・・・あっちだな!」
「・・・。」
なんだかとても身近な存在がやって来たようである。
「衛宮士郎」
「はいよヒューム爺さん」
現れたヒュームにポテ、とカギを渡す。
「言っとくけど変に手をかけて怪我しても知らないからな」
「無論だ。話が早くて助かる」
それだけ言い残して物凄いスピードでいなくなった。
「兄上!兄上は今ヒューム爺が来るのが分かっていたのか?」
「ああ。三人がここにいるのに護衛として入ってこなかったからな。別な人物の護衛・・・紋白達より上なら紋白達のお父さんあたりだろうと思ってた。後は気配を辿れば――――」
またヒュームが現れて士郎は驚きもせずその手からカギを受け取った。
「後程従者が伺う。いいか?」
「問題ない。なにかお眼鏡にかなったかね?」
「量が多い。後程説明させてくれ」
「はいよ」
流れるような会話に紋白がおおー、と感心している。
「いやーすごかった!あんなの見たこともねぇ!」
やっと外を検分していた九鬼帝が上がってきた。
「よ!いつぞやぶりだな。九鬼帝(くき みかど)だ。あれ全部お前が作ったんだろ!?すげぇなマジで」
「衛宮士郎です。俺などまだまだ、恐縮です」
「あれで満足いかねぇのか!将来が楽しみだなぁ・・・それに堅物の揚羽まで落としやがって、このこの!」
「ち、父上!恥ずかしいのでやめてください!」
「なーにが恥ずかしいもんかよ。最初会った時は一瞬だったから分からなかったが・・・いいねぇ夢に向かってる目だ。そして技術力もある!腕はヒューム並み!これほどの物件はいないぜ揚羽」
「それは・・・その」
「胸張りな揚羽。お前、ぜってぇ逃しちゃいけねぇのに惚れたぜ」
「・・・。」
なんだか台風のようにやって来て色々なものをひっかきまわす御仁だなと士郎は思った。
「っとすまねぇな俺ばっか喋ってよ。新年あけましておめでとうございます、てな」
「いえ、今年もよろしくお願いします」
士郎としては大人になったキャップみたいなので驚きはしなかった。
「帝様・・・」
「もうそんな時間か!えーっと、ひのふの・・・」
急に人を数えだした帝。そういえばもう昼だなと思った。
「帝様、ここは衛宮様に腕を振るっていただいた方がよろしいかと」
「え?マジ!?お前料理も出来んの!?カーッ!いかしてるねぇ」
「衛宮様。私共もお手伝いいたしますのでどうかお願いできませんか?」
「構いませんよ。じゃあパパっと作っちまおう」
そう言って士郎は席を立った。
(今日はおせちにしようと思ってたからそれにしよう。それと・・・)
ただ待たせるわけにもいかぬとクラウディオに問いかける。
「帝さんは今日お酒のほどは・・・」
「今日は会議などもないので大丈夫かと」
「ではこれを出していただけますか?市井の物で申し訳ないですが・・・」
あるメーカーの大吟醸酒であった。士郎は貰い物で恐縮だったのだが、一年に数本しか出ない貴重なものだったりする。
「これは・・・わかりましたグラスは、こちらですね」
流石、何度か衛宮邸のキッチンに入ったことがある御仁だ。素早く現場を把握していた。
「帝様。清酒があるようなのですが暖かいものと冷たいものどちらになさいますか?」
「酒まで出てくるか・・・やべぇすっげー無茶振りしたくなる」
「父上!」
「わかってるって。んー冷で」
「かしこまりました」
すぐにクラウディオは準備に入った。
と、
「む?士郎、清酒とはあれか?あれを開けるなら私も飲むぞ」
「では史文恭様の分も準備いたしましょう。同じく冷、でよろしいですか?」
「うむ。頼もう」
せっせと準備している間に、
(クラウディオさん)
(どうされました?)
(冷蔵庫の二段目端にタッパーに入ったお通しになりそうなものがあります)
背中越しに言う士郎に驚いて、
「かしこまりました・・・これですね」
タコの煮つけがタッパーに入っていた。
普段は準備しないのだが、最近史文恭が酒の肴を求めるのでもう作り置きしてあるのであった。
(他の方にはジュースと紅茶をお出しして構いませんか?)
(はい)
まるでプロの料理人のように小声で背中越しに意思疎通する士郎。普段はこんなことはしない。だが、今日はクラウディオがいるので最短、最高効率で回していく。
そしてあっという間におせち料理が出来上がり並べられる。
「すっげ。さっきお通しと冷が来たと思ったらもう来たぜ」
「ある程度は先に作っておいたんですよ」
士郎は謙遜するが、ちらりと帝がクラウディオをみると首を振っていた。ほとんど今作り上げたということだ。
「冷める前に食べましょう」
「お、おう」
さしもの九鬼帝も驚いて声も出ず、揚羽はしてやったりと笑っていた。
「「「いただきます」」」
「こりゃあ・・・」
おせちを食べて帝は思わず唸ってしまった。
「士郎、だったよな?」
「ええ」
「お前、食べ物系の店長やらねぇか?」
帝の心から自然に声が出た。だが、
「嬉しいですが俺は鍛治もしてますから」
そっと断った。
「だよな・・・すまねぇお前さんの生活を考えねぇで言っちまった」
「ふはは!それだけ父上も兄上に胃袋を掴まれたということだな!」
羽織袴の英雄が愉快そうに笑って言う。
「ああ、ぐうの音も出ねーぜ。第一声は美味い!二声目で商売だったわ」
「士郎の腕前には前々から驚かされていたのです。今日父上が来られて本当に良かった」
「あむ・・・んー!この栗きんとん美味しいー!我も感服ですぞ兄上ー」
「美味いって言ってもらって嬉しいですよ。紋白もありがとな」
そっと頭を撫でられて満面の笑みの紋白。
「姉弟そろって口説かれちまってら。こりゃあ天下の九鬼も、うかうかしてらんねぇな!」
物凄い勢いで食べ始め、おかわりもしっかりしてから、
「慌ただしくてすまねぇな!もう次の所行く時間でよ。またな!」
「お気をつけて」
「父上、行ってらっしゃい」
「「行ってらっしゃい!」」
おーう!と返事だけ返して走り去っていった。
「台風みたいな人だったな」
「あれが我らの父上だ。引いたか?」
揚羽らしくなく顔色を伺うような声に、
「全然。ああいう一日が数時間しかない人もいるさ。逆に逞しいなって思うよ」
「士郎・・・」
「揚羽たちもそうだろう?体、壊さないようにな」
「うむ・・・」
腕を抱き込んで頭をコテンと肩に乗せる。それだけで幸せいっぱいな様子の揚羽だった。
「それでは姉上、兄上、先にお暇させてもらいます」
「うむ。紋を頼んだぞ」
紋白は居心地の良さにすっかり寝入ってしまった。
「護衛は必要ないのですね?」
「うむ。悔しいが衛宮邸の防犯レベルは我らより上だ。案ずるな」
「わかりました。では衛宮様、よろしくお願いします」
「はい。・・・え?揚羽、泊まっていくのか?」
「うむ。我は明日の午前までオフなのでな。何故かは・・・言わせまいな?」
「・・・そうか。ゆっくりして行ってくれ」
「では失礼いたします。件の件に関しましては明日、従者がお伺いいたしますので」
「わかりました。御足もと気を付けてください」
最後の執事も頭を下げて帰って行った
「揚羽・・・だから先に連絡をだな・・・」
「楽しみだったのだ許せ!っと・・・」
揚羽がそっと士郎を右にずらした。
「ああー--!!?」
上空から悲鳴が聞こえてくる。次の瞬間、
ドン!
「何するんですか揚羽さん!」
「お前の急降下着地に士郎を巻き込むな!」
「ああー・・・ありがとう揚羽」
あの勢いで来られたら死ねる。回避しなきゃなー、でも避けると百代が拗ねるしなぁと思っていたところだった。
「百代。ほどほどにしてくれ・・・」
「なんだよぅ・・・ほどほどじゃないか・・・」
ぎゅむりと黒い着物姿で抱き着く百代。
「あんなアイア〇マンばりの着地じゃ死ぬわ!」
「ぶー・・・はやりを入れてみようと思ったんだけどな・・・」
何とも危険な娘である。
「学長に言ってお小遣い減額してもらわないと・・・」
チャキン!と最後の手段携帯を出すと、
「あわわわ!私が悪かった!次はこう・・・ソフトに!」
「はなから飛んでくるなという話なのだがな・・・」
「何言ってるんですか揚羽さん!美少女は頭上から「そんな物騒な人間はお前だけだ!」ぶー・・・」
と、揚羽が百代を叱ってくれている内に、
「はい、はい・・・よろしくお願いします」
ピ、と電話を切るその様子を見て、
「おま!お前本当にジジイに電話したのか!?」
グオングオンと士郎の両肩を掴んで振る百代。
「ちが・・・振るのやめろ!」
百代の着物を傷つけないように脱出する。
「うっぷ・・・電話は学長じゃない」
「じゃあ誰と電話を・・・」
「あれではないか?」
いかつい護送車が衛宮邸に向かってきた。
「多分あれだ。梁山泊事件から、曹一族とも懇意にしているのも知ってるだろう?何か届け物があるそうなんだが・・・」
目の前まで来るとウィンドウを下し、知らない女性に声をかけられた。
「貴方が衛宮士郎殿ですか?」
「ああ。さっき電話でも話した衛宮士郎だ。随分物々しいな。一体何を持ってきたんだ?」
「すぐにでもお渡しいたします。車はここでいいですか?」
「問題ない」
一体何を持ってきたのだろうか?
車が停車すると同時に女性が一人飛び出した。
「史文恭お姉さま~!!メイが!美鈴が来ましたよー!!」
「ちょっと美鈴。家主に挨拶くらいしなさい!」
「ん~?・・・中国から来ました美鈴です!史文恭お姉さま~!」
明らかに誰が家主か知らないから適当に挨拶しました。という感じだった。
「なんだこの小娘。士郎そっちのけで・・・」
「抑えよ百代。お前が出張らずとも恐らく・・・」
ゆらりと玄関から出てくる影が。なんとも恐ろしい雰囲気を漂わせて出てきた。
「あ!!史文恭おね「ふん!!!」んが!?」
ドシャ!
渾身の手刀を首に打ち込んで気絶させた。
「「「・・・。」」」
「久方ぶりだな、華凛。長は元気か?」
「はい。史文恭様今日はこのような物々しい来日ですみません」
「一体何を持ってきた?美鈴がいるので大体想像が付くが・・・」
「史文恭様の予想通りかと。ただ、ちょっと事情がありまして・・・」
「もしや士郎関連か?」
「そうなんです。衛宮様、まずこれが長からの手紙です」
「は、はい・・・」
長からという事で慎重に受け取る。
「そしてこれが衛宮様へのお届け物です」
華凛が手元のボタンを押すと、
バッサバッサ!と何かが羽ばたくような音が聞こえる。そして、
『…ろう…しろう!』
「なっ・・・」
古ぼけた本が空中を飛びながら自分の名前を呼んでいるではないか。
しかもこの声は・・・
「遠坂!!?」
元の世界に残してきた遠坂凛のものだった。
はい。遂に凛と通信が可能になりました。もちろん凛だけではありません。正式に向こう側と繋がった、という事になります。日々安寧を祈った士郎、早速爆弾に晒されるの巻き。
作者としてもやっと書けたーという感じですここまで長かった。自業自得ではありますが書きたいシーンを順番に追いかけた結果という感じです。これから怒涛の(?)展開になりますので楽しみにしてくだされば幸いです
では!