真剣で衛宮士郎を愛しなさい!   作:Marthe

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皆さんこんばんにちわ。やっと書きたい場面が書けて嬉しい作者です。

今回は凛たちの事を書きたいと思います。

士郎はもう帰る気はなさそうですがはたして…?


では!


状況把握

護送されて来た書物から遠坂の声が聞こえてから衛宮邸では緊急会議が行われていた。

 

「それで、なんでまた魔導書と接続したんだ?」

 

『そうね、そっちは魔導書なんだっけか。私は普通に水晶で言葉を飛ばしてるの。一応中身を向けてくれたら姿も映るわ』

 

何という偶然か、美鈴なる女性が覚醒させた魔導書は遠く離れた、次元すらも越えた遠坂凛の下へ接続したのだ。

 

もはや奇跡に近い、いや、奇跡が重なって今があるのだろう。だから護送車だったわけだ。

 

『士郎が帰還できるように魔術を組んでいるのだけど全然機能しなくて・・・やっぱり次元の壁を越えたのね』

 

「ああ。なんとも愉快な川神という場所に飛ばされたよ。そっちでいう神奈川県川崎市あたりだな」

 

『・・・位置も異なっているのね・・・どう帰還の陣を組もうかしら・・・』

 

凛の声に反応する声があった。

 

「遠坂さん・・・でいいのか?私は林冲。貴女は士郎を自分の世界に呼び戻そうと言うのか?」

 

『ええそうよ。林冲さん。士郎は元々私達の世界の人間。呼び戻すのが道理でしょう?』

 

当然の如くきっぱり言う凛に士郎は難しそうな顔をして、

 

「あー・・・遠坂。俺はもうこっちで生きることに決めた。帰りの魔法陣だって安全の保障はないんだろ?それなのに無理やり戻るのは良くないと思うんだ」

 

と、士郎は真っ当そうなことを言ったが、

 

『・・・女ね?』

 

「・・・(ギクッ)」

 

的確に急所を射抜いた。

 

『これで何人目かしら衛宮君』

 

「ちが、誤解を生む言い方はよせ遠坂!おれはいつも誠実に断ってただろう!?」

 

『はん、どうだか。次元を跨いで好き放題やってたんじゃないの?』

 

ジト目で言う凛だったがぶわりと闘気が広がった。

 

「遠坂さん、だったか。私は川神百代。士郎の婚約者の一人だ」

 

「「!!!」」

 

見かねた百代が爆弾を落とした。

 

『婚約者・・・?それより『の一人』って言ったわよね貴女』

 

士郎はなんだかこたつに入っているのに寒気を感じた。

 

「そうだ。いまこっちでは重婚の話が正式に出てる。だからさっきの林冲さんも私も婚約者だ」

 

「ふっはっは!我も婚約者よ」

 

「というか今衛宮邸にいる女はすべてそうではないか?」

 

「・・・。」

 

「・・・ん?ちょっとま『ぬあああああ!!!』!?」

 

『やらかしたわね!ついにやったわね!いいじゃない聞かせなさいよ。一体何人と婚約したのかしら衛宮君?』

 

「えっと・・・」

 

言えない。もう優に二桁行っているとは言えない・・・!

 

しかし、こちらも頭に血が上っており見せつけるように数える百代。

 

「私と、林冲さんだろ?揚羽さんに「私もだ」・・・史文恭さんマルギッテさんにまゆまゆに・・・」

 

『もう結構!なによこっちは必死に呼び戻そうと動いてたのに、目当ての男は嫁沢山作って平和にしてました―なんて、なんか言えることがあるなら言ってみなさいよ!』

 

「・・・。」

 

「遠坂嬢。少々落ち着きください」

 

『なによ!って英霊!?』

 

ぬうっと出てきたのはレオニダスだった。

 

「サーヴァント、ランサー。スパルタ王レオニダスです。お見知りおきを」

 

『自力でサーヴァントを現界させてるなんて、どうやったのよ』

 

「それを話すと長くなります故、今はマスターの事でしょう。マスターは何も言いませぬがマスターとて遠坂嬢の、そちらに居る皆さん(・・・)の事を密に考えておりました。しかし、様々なことを乗り越えるうちに自分は帰ることが出来ないだろう。ならば精一杯この世界を生きようと覚悟したのです」

 

『諦めてたんじゃない』

 

「そうではありませぬ。いつか皆さんが来た時に、とマスターは必死に準備をされていました。色恋沙汰も最近の話なのです。マスターはある事件から英雄と称されるようになりました。しかし、命の危機に陥ることも数多く。そうなって想いを秘めていた奥方様が一斉に婚姻を望むようになったのです」

 

『・・・。』

 

「マスターはいつも口にしていました。魔術の少ないこの平和な世界に遠坂嬢達がくることはできないかと。しかし自分とて帰る事の出来ない身。考えるのは無駄なのだろうかと」

 

本は何も返さない。

 

「時のずれがあるかもしれませんがこちらのマスターは約一年、一人で必死だったのです。そのことを理解してもらえませんか?」

 

『・・・通信を代わります、シロウ。そこに居ますか?』

 

「ああ。セイバー。俺はここにいるよ」

 

『よかった。何度も鞘への接触があったので気が気ではなかったのですが、貴方が無事でよかった。つまりシロウ的には帰るのではなくそちらに来てほしいという事ですね?』

 

「あ、ああ・・・出来るのか?」

 

『リン達も手詰まり感が否めません。そこで士郎、レオニダス王がそちらに居るという事は聖杯があるのではありませんか?』

 

「!!」

 

「士郎!あるじゃないか聖杯!」

 

『やはり。それならばなんとか都合がつきそうですね』

 

「しかし・・・また冬木の聖杯のようだったら・・・」

 

『ふむ。まずはそれを見せてください』

 

セイバーに言われて土蔵へ歩いていく士郎。

 

「これだ」

 

本に映し出されたのはボロボロの聖杯。見た目はボロボロだがとんでもない魔力が滞留している

 

『確かに聖杯ですね。映像越しでも多大な魔力を感じます。リン、リン。この聖杯は使っていいのでしょうか?』

 

『なによう、グス・・・聖杯?』

 

『そうです。聖杯です。これを用いればこことあちらを繋げられるのではないですか?』

 

『呪いの類は無いようね・・・こちらは魔法陣を固定。聖杯でそこにゲートを繋いでくれれば・・・!』

 

「話は纏まったようだな。今すぐやるのか?」

 

『・・・いえ、私達も準備があるし、そもそも魔法陣の方向性を変えなきゃいけないから・・・一週間よ。それだけあれば全部準備が整うわ』

 

「そうか。実際に会えるのを楽しみにしていよう」

 

『衛宮君。今桜出かけてるの。覚悟しときなさい』

 

「・・・ッはい。」

 

士郎はゾゾゾ、と背筋が寒くなった。

 

『後は、世話になったわね華凛』

 

「いえ大したことは。貴女のすこぶる焦る声に耐えるくらいでしたから」

 

『う・・・それは言わないで頂戴。おかげで士郎に会うことが出来たわ。長さんにも礼を言っておいて』

 

「わかりました」

 

「俺からも礼を言わせてくれ。ありがとう」

 

「いえいえ。元はそこのバカ娘の盗掘ですからあまり感謝されてもむず痒くなってしまいます」

 

バカ娘・・・と皆の視線が史文恭の足元に行く。

 

「と、とりあえず中に入ろう。遠坂の方は気をつけなきゃいけないことはあるか?」

 

『水・・・かしら。中の文書がそのまま通信機能になっているようだからそれくらいかしらね。損傷も当然ダメ』

 

「後は・・・」

 

「メイの事なら任せろ。全く、結果的には良かったものを何をしているんだか」

 

史文恭も安心したという顔をしていた。

 

 

 

 

 

 

皆が改めて衛宮邸に入った後、個人の挨拶と華凛による新年のあいさつがされていた。

 

『ふうん・・・そっちはいま年明けなんだ。こっちは夏真っ盛りよ。暑くてしょうがないわ』

 

「川神の夏も暑いよな・・・」

 

「イベント盛りだくさんだからな!屋台に花火に武闘会!暑くならなきゃおかしい!」

 

百代が楽しそうに言った。そう言えば百代は卒業後はどうするんだろうか?

 

「百代、卒業後就職先あるのか?川神院を受け継いでも、もろもろかかるだろう?」

 

今は川神鉄心が指導と、支えとなる運営費を学園と二本柱でやることで維持している。

 

はたして百代は・・・

 

「そう!それ!見ろ!」

 

バーン!と百代が立ち上がった。

 

黒い着物を動きやすく改造したものだろう。どうやら仕事服らしい。

 

「詳しくはみなとそふとオフィシャルサイトをチェックだ!」

 

「急に何を言ってるんだよ」

 

メタなことはさておき、

 

「えーっと百代が来たタイミングだったな。改めて「「新年あけましておめでとうございます」」

 

挨拶をしてこたつに入りほわ~としている。

 

「これで皆揃ったな。マルギッテだけがまだドイツだが」

 

「中将とその娘だからな・・・挨拶回り大変そうだ」

 

『ドイツ軍中将って・・・あんたも好きねーそういう所と接触するの』

 

「接触って言うか、娘さんの方が学園に来てるんだよ」

 

『学園ねぇ・・・ん?士郎、あんたもう29でしょ?』

 

「だな」

 

『なんで学校何て行ってるわけ?』

 

「遠坂の妙な亀裂に入ってこの川神に叩きつけられた時、肉体年齢だけ18歳になったんだよ。気をつけろよ。遠坂達もこうなる可能性があるぞ」

 

『マジ?』

 

「マジだ」

 

二人(本?)の会話で頷く声が聞こえた。

 

「なるほど。だから士郎は歪なのか」

 

「史文恭?」

 

「不思議だったのだ。年端も行かぬ高校生がまるで戦場を渡り歩いてきたかの如きいで立ちをしていることをな」

 

「そうか、史文恭には言ってなかったな。悪い」

 

「別に気にもせん。お前はお前だ。それだけわかればいい」

 

「男前だなー、史文恭さん」

 

「我との権利関係の時もよくやる奴だと思ったものよ」

 

『あ、そっか。士郎その辺うまくやってるんでしょうね?』

 

「うまくやったんだがな・・・」

 

「あれでは九鬼とマルギッテの目を欺くのは無理よ。っはっはっは!

 

「ということで九鬼財閥が俺たちの存在を証明してくれることになりました」

 

『はぁ・・・流石へっぽこ魔術師ね。聞いてる感じそこにいる人には魔術を明かしてるんでしょ?』

 

「えっと・・・」

 

「遠坂凛とやら。我々以外にも知るものは多いぞ」

 

『なんですって!?』

 

「遠坂嬢、そこは問題ないかと」

 

『ランサー・・・だったわよね?』

 

「はい。名前呼びでもクラス呼びでも構いません。こちらの世界には時計塔も教会も何もかも存在しないのです」

 

『はぁ!?じゃあなに、魔術の秘匿も封印指定も存在しないっていうの?』

 

「ああ。その辺は厳重に調べた。恐らくこちらの世界での魔術は衰退したんだ。魔術の他に気と異能があるだけなんだ」

 

『・・・だから平和な世界だなんだ言っていたのね・・・ふうん、いいじゃない。そしたら魔術基盤も・・・・・・』

 

ブツブツと言い始めたので話し相手がセイバーに変わった。

 

『士郎、改めてもう一度貴方に会えて本当に良かったです。私も未だ現界し続けて良かった』

 

「急にいなくなってすまないセイバー。だけどもう少しで会える。その時はご馳走、たっぷり作るから」

 

『そ、それでは腹ペコキャラみたいではないですか!訂正を求めます!』

 

あはははと笑いながら会話する士郎。ここにいる彼女達は少し胸が痛かった。何せ彼は今までに見たことがないくらいリラックスした良い笑顔だったのだから。

 

(絶対)

 

(私にも)

 

(その笑顔を浮かべてみせる!)

 

彼女達は密かに決意した。この笑顔を、きっと自分達にも、と。

 

 

 

 

 

そうして夕ご飯時、士郎は晩飯を作るべく立ち上がった。

 

『俺は晩飯作るから、しばらく本をよろしくな』

 

「うむ。セイバー・・・さんとやらの正体当てゲームでもするか」

 

『ほほう。なぜ我々サーヴァントがクラス名で呼ばれるのか分かっているようですね』

 

「百代達は回答しちゃだめだからな」

 

「ええ!?今言おうと思ったのに・・・」

 

百代には昔彼女の真名について話したことがあるので秘密だ。

 

「ほら、桃が準備出来たぞ。これでも食べて落ち着け」

 

「ピーチ!もぐもぐ・・・うーん!生ピーチもいいなぁ・・・」

 

「うむ。英霊とは過去の偉人やおとぎ話の人物と聞く。そうなると死因があるはず。そこを突かれないように、だな」

 

『そうですね。ただし私の死因は特に弱点となるものではありません』

 

うーんと、悩むあの夜ゲームを見なかった一同に苦笑し、士郎は晩飯の準備に取り掛かった

 

相変わらずの調理速度であっという間に作ってしまった士郎。

 

「いただきます」

 

「「「いただきます!」」」

 

今日は一段と冷えるので鍋だ。大きな鍋を二つ準備し、カセットコンロにセット。味は魚介と鳥塩鍋。

 

魚介は大きなハマグリが目立ち、鳥塩鍋は大きく作られた鳥団子が魅力だ。

 

「今日も美味そうじゃないか!」

 

「うむ。まだまだ冷えるからな。良いチョイスだ」

 

「士郎、先日の清酒がまだ残っているだろう?それも頼む」

 

『・・・。』

 

盛り上がる一同に一人(本?)が無言になって鍋を直視する。

 

『シロウ、貴方の所では常にこんなに豪勢なのですか?』

 

念でも飛んできそうなほどじーっとみられる料理の数々。

 

「ん~?セイバーさんは腹ペコキャラじゃないんだろう?」

 

『そ、それはそうですが!こうして目の前に準備されると・・・ですね・・・』

 

「セイバーはよく食べるからな。でも本が濡れると怖いからこっち」

 

『あっ!シロウ!もう少しで・・・』

 

「遠坂ーセイバーが水晶丸かじりしないようにな」

 

『不名誉過ぎますシロウ。誰が水晶を丸かじりなど・・・』

 

じゅるり、と音が聞こえた。

 

『な、なによセイバーよだれなんか垂らして・・・』

 

『た、垂らしていません!』

 

二人のやり取りが聞こえてきてクスクスと笑う一同。

 

セイバーはさておきここにいる面々もとても食べるのであっさりと具が無くなってしまう。

 

「それじゃ、〆作るぞー」

 

魚介の方には溶き卵に麵を、鳥塩鍋には溶き卵とぬめりを取られたご飯をそれぞれ入れる。

 

と、丁度入れ終わったタイミングで、

 

『先輩!先輩!!顔を見せてください!』

 

魔導書がまた別人の声を発した。

 

「あー今行く。橘さん後を頼みます」

 

「わ、わかった、ゆっくりして来てくれ」

 

士郎は自室に戻って本を開いた。

 

「久しぶりだな桜」

 

『ああ・・・先輩・・・ずっとこの日を待ってました・・・ぐすっ・・・本当に良かった・・・!』

 

「俺も桜とこうして通信出来て嬉しいよ。・・・桜、少しやせたか?」

 

『はい・・・食事も喉を通らなくて・・・でも大丈夫です。姉さんから聞きました。一週間後にそちらに行くんですよね?』

 

「ああ。こちらの聖杯が使えそうだからな。なんとか来てもらいたい。桜は嫌か?」

 

『いえ!先輩がいるなら私も行きたいです!川神・・・どんな街なんだろう・・・』

 

「まぁ飽きない・・・でいいのか・・・・?街だよ」

 

なんとも微妙な言い方をする士郎。正直、愉快と言っていいのか不安である。

 

『大丈夫、もう足手まといにはなりませんから・・・』

 

本に映っている桜の姿が白髪に変わり、顔に黒と赤いラインが走る。

 

『ねぇ先輩・・・私聞いたんです。先輩がハーレム作ってるって・・・それも公式的にって・・・間違いありませんか・・・?』

 

「そ、そうだな!ハーレムって言い方は酷いけど多数婚約者がいる。がっかりしたか・・・?」

 

『・・・いいえ。先輩の状況を考えたらそうなるかもとは思ってました。だから先輩。私もハーレムに入れてくださいね?』

 

「桜・・・いいのか?」

 

『はい。この機を逃さずにはいられません。ツンデレの姉さんよりも、奥ゆかしいセイバーさんよりも、私は先に先輩の物になるんです!』

 

「あ、あの桜・・・?速さで優劣は決めないからな・・・?」

 

それを言ったら百代が一番である。総理もそうならない法作りをしているはずなので一応断っておく。

 

「なんだろうな、会えたら話したいことが沢山あったのに・・・」

 

『こういう時って何を言えばいいかわからなくなりますよね』

 

クスクス笑っている桜はいつもの桜だった。

 

随分と桜と話した後、居間に戻ると天衣はせっせと片づけをしていて、林冲は手伝い、他の皆は一息ついている所だった。

 

「すまない林冲、橘さん」

 

「いや士郎はもう会えないかもしれなかった友人と話しが出来たんだから気にしなくていい」

 

「私もこれが仕事みたいなものだから気にしなくていいぞ」

 

「ありがとう。お礼にデザートでも「ピーチ!!!」聞かれたな」

 

仕方なく士郎は桃を剥いて二人には冷蔵庫の中にあるデザートを食べてもらった。

 

そして天衣にそっと耳打ちする。

 

(橘さん、今晩本を頼めますか)

 

(いいけど気をつけるんだぞ)

 

コソリと言い返されて苦笑する士郎。

 

彼はこれから男の戦いに赴くのだった・・・

 

 

 

 

 

 

 

翌日士郎はこちら側で必要となる手続きのチェックを揚羽としていた。

 

「では、こちらに来るのは・・・遠坂凛、間桐桜、セイバーに後・・・」

 

揚羽は困ったように最後の一人を見た。

 

「バゼット・フラガ・マクレミッツ・・・昨日の通信では出てこなかったな。どういう人物なのだ?」

 

問われた士郎も返答に困り、

 

「なんて言うか・・・堅物・・・いや無神経・・・?とにかく腕の立つ女性だ」

 

「遠坂凛達は分かるのだが、この女性はなぜこちらに来るのだ?」

 

「ああー・・・その」

 

士郎は言い辛そうに、

 

「言っても怒らないか?」

 

「申してみよ」

 

揚羽の返答に苦虫を嚙み潰したような顔をして、

 

「そんなに武闘派の街なら一から適応してみるのもいいかもと・・・」

 

「・・・。」

 

はぁ、とため息を吐いて、

 

「前職は?」

 

「元・封印指定執行者」

 

「お前の天敵ではないか!」

 

緩やかな空気がキュウっと締まった。

 

「なぜお前の天敵を迎えねばならぬ!」

 

「落ち着けって。バゼットはもう敵じゃないんだよ。魔術協会ってとこの元執行者で馬鹿みたいに強い。ただ・・・」

 

士郎は一つ心を落ち着けるようにして。

 

「あの物語に出てくるランサーの本来の(・・・)マスターだ」

 

「なに?ランサーは言峰の・・・そうか。裏切りか」

 

「ああ。冬木に入った後、言峰に協力要請を出した時に片腕ごと令呪を奪われたんだ」

 

「腕ごと・・・バゼットはそんなに弱いのか?」

 

「いや、言ったろう?べらぼうに強いって。条件次第ではヒューム爺さん以上だ」

 

「馬鹿を言うな!?そんな爆弾みたいな女が川神に来たら・・・」

 

「まぁ、第二の百代誕生、かもな」

 

「・・・。」

 

開いた口が塞がらないとばかりに揚羽はポカンとしていた。

 

「なぜお前の周りには極端な友しかおらんのだ・・・」

 

「悪い。でもバゼットにもいい経験になると思うんだ。武闘派魔術師として極端な生活を送っていたからか色々大事なものが欠けていてな」

 

「例えば?」

 

「二つのミカンがある。片方は甘いミカン。もう片方は少し甘酸っぱいミカン。二つを食わせたらなんて答えたと思う?」

 

「ぬ・・・人によるであろうが、美味い方を「ミカンだ」は?」

 

「他にもあるぞ。俺の手料理とジャンクフードを比べて『食事だ』としか言わない。あれには中々やられたな。味わうってことを知らないんだ」

 

「・・・。」

 

「執行者時代の金で遊んで暮らせる金額を持っているが、そもそも必要最低限しか必要としない。贅沢も知らないんだ」

 

「それで?」

 

「ここの気風はバゼットに合ってる。それは間違いない。だからさ、もう少し人間らしさを覚えてくれたらなって思うんだ」

 

それは士郎だからこそなのだろうか。人間としての形を失い、機械のようになってしまう姿が目に余るのか。

 

とにかく士郎は、何とか彼女らしさを覚えてほしいと考えているようだ。

 

「相変わらずのお人よしよな」

 

その言葉を聞いて揚羽は優しく笑った。

 

「あとはライダーだな。こっちも英霊だ」

 

「お前の世界では二騎のサーヴァントがいたのだったな。真名は・・・教えてくれんのだろう?」

 

「ああ。あいつにとってそれは色々な意味を持つからな。こっちは桜が契約してるサーヴァントだ」

 

「・・・ん?人が単体でサーヴァントを維持するのは不可能ではなかったのか?」

 

「それも複雑な事情があるんだ。こっちは追及しないでもらいたい。桜はそれ関連で十分に苦しんだ。もう苦しむ必要なんかない」

 

桜は本当にあの辛い時期を乗り越え今こうして毎日を生きているのだ。・・・ただし怒らせると怖いのだが。

 

「そうか。・・・よし、大体の事情は把握した。後は」

 

「後むぐ!」

 

奪うように唇を合わせて押し倒してきた。

 

「ん・・・」

 

「んっ・・・ぷは!急にはやめろ揚羽!」

 

「ん、なに。昔の女が来るのだ。少しばかり嫉妬に燃えても仕方あるまい?」

 

「嫉妬って・・・昔も何もないだろ・・・」

 

「ま、そうよな。良い。それより風呂だ。また頼むぞ」

 

「へいへい。分かりましたっと」

 

そうして二人は風呂へと向かった。ちなみに百代達が起きてこないのは・・・そういう事だ。




ちょっと短いですが説明会なのでこんな所でしょうか。みなさんの思い描いていた修羅場にはならなかったかもしれませんが、凛は別として桜は重婚可であれば素早く士郎と身を固めるんじゃないかと思いました。セイバーはそれこそ重婚普通にあった時代の人なのでやっぱり反応は少ないかなと(ただし人数をまだ確認していない)

ギィネヴィアの事件はあくまで王の正妻を口説いたのが問題なわけでして。

次回はどうしようかな…もう凛たち呼ぼうか…日常も挟みたいですね。では!
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