今回は燕の話です。女たらしの士郎を見続けてきた彼女の行きつく先とは…?
では!
痛いほどの静寂の中、互いに竹刀を持つ二人。片方は衛宮士郎。短めの竹刀を両手に持ち、自然体で立っている。
もう片方はセイバー。通常の竹刀を正眼に構え、冷静な表情を見せている。
互い見合って――――疾駆した。
高速の世界の中、先手を取ったのは衛宮士郎。
右手の竹刀を振り上げながらの振り下ろし。まるで鋭い蛇のような一撃に、セイバーはというと、
「――――」
冷静にその一撃を弾いた。鋭い一撃だったというのにさらに一歩踏み込み衛宮士郎の領域に踏み込む――――!
「・・・ッ」
初撃をかいくぐられて一瞬の隙をさらしたが、負けじと左手の竹刀を振りかざす。思考する余裕はなかった。なぜならセイバーの竹刀が間近に迫っていたのだから。
パアン!と竹刀が打ち合う。そして互いの位置が入れ替わる。次に攻めたのはセイバー。素早く態勢を整え、素早い連撃を繰り出す。
その一撃は苛烈で、士郎も受けの態勢を取らざるを得ない。
何度も繰り出されるそれを、逸らし、弾き、避ける。
ただでさえ速いというのにどんどん加速していくセイバー。
仕切り直しが必要か。そう思った瞬間、
「やあ!」
その場で宙返り。強力な大上段切りを放つ。竹刀を頭上でクロスして堪えるがギリギリと押し込まれる。
「・・・ッ」
これ以上は無理だと、腕を集中強化、竹刀をはじき返し、蹴りを見舞う。
弾き返しからの蹴り。流石に入るだろうと思われた攻撃は、高速で引きもどされた竹刀によって打ち合った。
その反動で士郎は間合いをあけ、嘆息した。
「今のはアウトだな。セイバーなら俺の足ごと切り捨てられた」
「そうですね。竹刀という縛りがなければ成立しませんでした」
この一瞬のやり取りで士郎は激しく精神力を使いどっと汗をかく。
二人は奇跡の七日間から続く鍛錬を行っていた。
「しかし見事です士郎。この世界にきて一層腕を上げたのではないですか?」
「ん、まぁ鍛錬は欠かさずやってたし家は凄腕ぞろいだからな。おまけに英霊までいたんだから多少なりとも強くならないとな」
ふぅと一心地付けた士郎は変わらず遥か高みにいるセイバーを絶賛した。
「セイバーは相変わらず強いな。これでも少しは追いついた気がしていたんだが」
「事実追いついていましたよ。ですがまだまだ。私を超えるには足りません」
負けず嫌いのセイバーだ。受肉したのもあって一層鍛錬に打ち込むだろう。
相手役であろうレオニダスに少しばかり同情した。なにせ彼とやるならば本来の剣でやるだろうから。
「まだやりますか?」
「無論だ。俺も強くならなきゃならない。もっと・・・セイバーと肩をそろえられるように」
「嬉しいことを言ってくれますね。では――――!!」
今一度、強烈な激突が始まった夢も実力もまだまだ先は長い―――――
冬休みが明け季節はもう春。出会いと別れの季節、川神学園では高等部三学年の卒業式が行われていた。
「3年S組京極 彦一!」
「はい」
次々名前を呼ばれる中二年生のファミリー(大和除く)は咎められない範囲でこそこそと互いに話していた。
「京極先輩だぜ」
「これでエレガンテクアットロも崩壊だねぇ・・・」
「なんだ?そのエレガンテなんちゃらっていうのは」
「女子がつけた最もイケメンな人」
言葉少なく教えてくれる京。当の彼女は大和のことで頭がいっぱいなので大して興味はなさそうだった。
卒業証書授与は人数の関係でクラス代表一人が受け取ることになっているため通常の学校よりも早いかもしれない。
「F組は誰だろうね」
「モモ先輩以外いねぇだろ」
「まぁクラスの象徴的な奴ではあるだろうからな・・・」
受け取るにしても素直に受け取る気がしない士郎である。
やたら静かな元気いっぱい組はというと、
「「ZZZ・・・」」
百代の時に起こしてくれと言いおいて眠りの中だった。
「犬もキャップも不謹慎な・・・」
「行動力ガン振りの二人には耐えられんだろ」
「幸い梅先生のムチが飛んでこないからいいものを・・・」
流石の士郎も困ったものだと匙を投げる。
「3年F組、川神百代!」
ついに彼らの待ち人来たりだ。
「おい犬!モモ先輩だぞ」
「キャップ起きろって!」
クリスとガクトの声でようやく目を開ける二人。
「うにゅ~・・・お姉さまだわ!」
「おおー・・・モモ先輩かー」
一子はすぐに覚醒したがキャップはまだ眠そうである。
「F組じゃがしっかりの」
「わかってるって」
コソコソと壇上で釘を刺す学園長。
「卒業、おめでとう!」
すっと決められた動作で証書を受け取る百代。
「えー以上を持ちまして卒業証書の授与を――――」
「ちょっとまった!」
「「「ええ?」」」
長い授与式を眺めていた生徒全員が思っただろう何をするんだと。
当然、士郎もそっち組なわけだが、ともかく百代は大きく息を吸い込み、
「士郎ー---!!!大好きだー----ッ!!!」
気迫もろともに宣言した。
「・・・え?」
唐突に何を言い出すのかと思う士郎。
困惑する本人をよそにあちらこちらでコソコソとつぶやきが囁かれる。
『衛宮だってよ』
『嫁にしたっていうのは本当だったのね』
『正直無理って思ってたけど美人なんだよなぁ・・・』
等々。ファンの女子達も百代をほのかに想っていた男衆もみんな一斉に士郎を見る。
「ちょっ・・・」
呪いでもかけられそうな怨恨に士郎はたじたじ。しかし行った本人は満足そうにその光景を眺めていた。
「はぁ・・・やりよって・・・」
「あー・・・授与されたら降壇してねー・・・」
進行係の巨人もドン引きである。
卒業式まで破天荒にしてしまう百代に皆きれいな笑顔を浮かべていた。
「「「おい衛宮面かせぇ!!!」」」
「やかましい!絡んでくんな!」
ドゴーン!と嫉妬に狂う男たちが空を舞う。
「あれ、大丈夫なん?」
「そのうち収まるでしょ」
「むしろ今なら士郎に挑み放題だぞ」
大和が腹黒くけしかける。
「!それは盲点だった!おい犬!」
「うーん士郎は師匠だしー・・・挑みかかったら後が怖いわー・・・」
「ワン子にしては理性的な判断だな」
「組み手と称して結構ボコられてるんじゃね?」
「ああーそれわかるかも。ワン子のことだから果敢に攻めて行って・・・」
『キャイーン!!』
ありそうだとうんうん頷く一同。
「どいつもこいつも・・・そんなに嫉妬するなら自分で口説きに行けよ」
「「「うぐ・・・」」」
その一言がぐさりと刺さり、男たちは撃沈した。
そんな白熱した場に件の百代が現れた。
「よう!お前たち」
「モモ先輩お疲れ様」
「お疲れ様、姉さん」
「お疲れ様です・・・」
各々労うファミリー。由紀江は先ほどの一大告白で複雑そうだが。
「いやぁでも、本当にモモ先輩卒業なんだねぇ・・・」
「変態の橋もちっとは静かになるんかな」
「そうねー。でも変態が減らないのは問題だと思うわ」
「犬のいう通りだな。モモ先輩がいなくなることだし私達でパトロールしてみるか?」
「お前たちが三年生の間は大丈夫だろうさ。なにせ士郎がいるからな」
「あれもこれも俺の責任にされちゃ困るんだがな」
士郎は複雑そうに言った。
「大体、授与式で何てことしてくれてるんだ。おかげで恨みを買うことになったぞ」
「いいじゃないか、私という極上の美女が傍にいるんだから」
そういう問題じゃない、と士郎は言ったがファミリーは百代の言葉に違和感を覚えた。
「モモ先輩今・・・」
「美女って言った?」
「そりゃそうだろう?もう学生は終わりなんだ『美少女』は卒業だ」
「なんだかんだ意識はしてるんだな」
士郎の言葉にしっかり頷く百代。
「これからは川神院も背負うんだからな。大人、意識しないと」
と、しっかりしたことを言う百代だが、
「姉さんまだ貸付金あるからね」
「うぐ・・・」
「そうだったそうだった!」
「期待してますモモ先輩」
京まで言うので、とほーと肩を落とす百代。そこに燕がやってきた。
「あーこんなとこにいた。モモちゃん私らまだ同窓会のこととか話あるんだよ?」
「うわーん!燕ー」
「よいしょと」
絡みに行った百代を回避する燕。
「その手には乗らないよーん」
「ちぃ・・・完璧だと思ったのに」
「さっきの会話聞いてないだろう・・・」
士郎のツッコミもその通りであった。
「あ、そうそう。衛宮君には重大発表」
「なんで・・・イテ!」
ぺチンと投げつけられたものを拾うそれは・・・
「「「あ」」」
「・・・なぜこのタイミングで」
突きつけられたのは川神学園のエンブレム。つまり決闘のサインだ。
「燕・・・」
「私たちは今日卒業。つまり今日までは川神学園の生徒。効果はありでしょう?」
「そうじゃの。今日が有効期限日じゃな」
「じいちゃん!」
音もなく現れたのは学園長だった。
「どうする?衛宮君」
「・・・。」
燕はいつになく本気になっていた。理由は少し巻き戻る。
『いやー俺らも明日で卒業かー』
『悔い残るようなことしないようにしないとな』
『悔い・・・か』
生徒の言葉がするりと入ってきた。そうして考えるのは衛宮士郎のこと。
公式の嫁がたくさんいるらしい。
燕はすでに衛宮士郎に多数の思い人が存在し、絆を深めているということを知っていた。
『・・・。』
自分もあの日初めて手合わせした日からどうにも彼の横顔が頭を離れない。
抱き上げられた記憶がいつまでも残り続けている。
『恋・・・だよね』
あの時、松永燕という少女は、衛宮士郎に一目惚れしてしまったのだ。その後も懲りずにバレバレの観察をしたり、ちょっかいをかけたり。
あれはそう――――自分を見てほしいという合図だった。
だというのに。彼は気づくどころか百代やマルギッテを筆頭に次々と誑し込んで。今では二桁の嫁がいるという噂だ。
『む・・・』
そう考えたらなんだか無性に腹が立った。自分は必死なのになぜ彼はこう―――――
『士郎ー---!!!大好きだー----ッ!!!』
ブチ、と彼女の中で何かが切れる音がした。どう考えても彼女の勝手な都合というか自己満足なのだが・・・
あの顔面に一発くれてやりたい。
そういう思いが頭を占めたのだった。
「どうする?受けるかの?」
学園長はどこまでも柔和に微笑みながら言った。
「・・・。」
「士郎・・・」
戦いが好きじゃない彼。乗ってくる確率は限りなく低かった。
しかし、
「なぁ士郎。受けてやってくれないか?お前の気持ちはわかってるつもりだけど、燕もこのままじゃ終われないと思うんだ」
百代が援護してくれたことにより確実なものとなった。
「・・・いいでしょう」
感情を感じさせない顔で彼は懐からエンブレムを出して重ねて返した。
「内容は実戦形式の戦闘。日付は一週間後。川神スーパーアリーナで」
その言葉に士郎は眉を吊り上げた。
「観客を入れるのか?」
口調も既に戦闘思考になっていった。
「そう。私達の・・・私の最後の挑戦をみんなに見届けてもらう。過信しないでね。もうあの時の私じゃないから」
「お、おい燕!」
そういって彼女は百代を連れて行ってしまった。
「ふぉふぉ。面白いことになりそうじゃの」
「面白いとか言わないでください・・・」
はぁ、とため息をついて士郎は改めて彼女の背中を見たのだった。
「へぇ、決闘ね。なかなか面白いシステムしてるじゃない」
帰ってきて一週間後の決闘の話をすると凜は至極面白そうに言った。
「面白いもんじゃないぞ。なんでみんな本気で挑みかかってくるのやら・・・」
士郎はさっぱりだ、なんて言っているが、今回のことは自分に何か原因があるのではと思っていた。
「懐かしいですね。私も何度も決闘は経験しましたが今もこうして白黒つける文化があるとは」
セイバーはにこやかに言っていた。彼女とて様々な決闘を行ってきただろうことはわかるので笑顔の理由も納得がいく。
「でも、観客を入れてなんて随分自信のある方なんですね」
「いや。そうじゃない」
桜の言葉を士郎は否定した。
「俺はこの世界にきて宝具を何度か見せてる。その対策だ」
そう士郎は分析していた。
「はぁ!?あんた一般市民に宝具なんて使ったわけ?」
「一般市民・・・とは言い切れないな。それだけ加減ができない時があった。今のところ宝具を防げるものは存在していないから、観客を入れることでこっちの火力を制限するのが目的だろう」
「シロウが宝具を展開するとは・・・この世界の住人もやりますね」
「せ、先輩、その時は大丈夫だったんですか?」
心配げに桜が言うが、それは川神という土地に慣れていないからだろう。
「ああ。むしろあって助かったくらいだ。今回、松永先輩も本気で来るだろうから必要になる可能性は高い」
「なんでもいいけど、あんまり奇跡の大安売りしてんじゃないわよまったく・・・」
「遠坂。そうは言うがな?この世界の人たちは信じられない現象を何度も引き起こすんだ。油断ならないぞ」
士郎は改めて凜に言った。
「まぁ観客を入れるんでしょう?丁度いいから観戦させてもらおうじゃない。この世界の住人のパワーってやつをね」
「シロウ。やるからには―――――」
「大丈夫だセイバー。勝つよ。こんなところで負けられないからな」
――――interlude――――
一週間後の戦いに備えて、燕はある準備をしていた。
「もしもし、おとん?」
『やぁ燕ちゃんどうしたんだい?』
「一週間後、
燕の言葉に父親であろう電話口の男性は、
『ええ!?依頼はキャンセルされたんだろう?なんでまた―――――』
「私の一世一代の大仕掛けなの。いいから準備して」
『ちょ、燕ちゃん!?』
プチ、と電話を切って燕は制服を脱ぎ、着替えながら別なところに電話をかける。
「もしもし、モモちゃん?」
『おう燕。どうした?』
学業がなくなって暇をしているだろう友人に告げる。
「訓練相手のお願いなんだけど、いい?」
『っはは。この私が訓練相手か。いいぞ。本気なんだな?』
「本気も本気。絶対負けたくない」
『でも士郎だぞ。手はあるのか?』
百代の問いに燕は秘密兵器を使うことを告げる。
『!それは面白そうだな!いいぞいいぞ。勝ち筋が見えてきたな』
「それで報酬の件だけど」
『さぁて、初仕事だ。燕はいくらの値打ちをつけてくれるのかな?』
「0円」
『そういう冗談好きくない』
「はは、だよね。スポンサー噛ますから・・・」
そうして燕は膨大な情報を処理していく。
(絶対吠え面かかせてやるんだから!)
士郎の知らないところで事態は急変していくのだった。
――――interlude out――――
士郎は決闘に備え、セイバーとの濃密な戦闘訓練をしていた。
「そこです!」
「それは、どうかな――――!」
ビュンビュンと、常人の目には映らない速度で振るわれる竹刀に見学に来ていたファミリーは舌を巻いた。
「なにあれ」
「セイバーさんには悪いけど・・・人間?」
「いやまずいだろあれ。いくら竹刀でもあの勢いで打ち付けられたら・・・」
吹き飛ぶだけでは済まないだろう。良くて複雑骨折の即入院レベルだ。
「本当にモモ先輩レベルだな・・・」
「いや、あれは士郎の反応速度ちょい上に設定してるらしいから本来はもっと行くだろう」
「マジで?普通に見えないんですけど」
目をごしごしと擦るガクトだが、景色は相変わらずだった。
と、
「ッ・・・!」
ドカンと、鈍い音を立てて士郎が吹き飛んだ。
「「「士郎!!」」」
「ぐう・・・」
左手を抑えながら荒い息を吐く士郎。状況はわからないが、士郎がセイバーの攻撃を受け損ねたことは理解できた。
「見事です。虚実交えた攻防。鉄壁のカウンター。隙をあえて入れることで相手の攻撃予測を立てる戦術眼。シロウ、貴方は確かに私たち英霊の域に到達しようとしている」
「そういいながらも勝たせてはくれないんだな」
悔し気にいう彼にセイバーは、
「これでも私は剣の英霊。剣術で負けるわけにはいきません」
「そうだな・・・やっぱりセイバー相手じゃ手段は選べないな」
「例えどんな手を使おうとも、我が剣にかけて突破いたしましょう」
そんなやり取りを見て一同はぽかんと口を開けていた。
「手段を選ばない士郎もだけど」
「なにがなんでも剣で突破するセイバーさんもすげーな・・・」
「んー!自分も鍛錬したくなってきた!」
二人の鍛錬模様にあてられて、クリスが鼻息荒く言った。
「あたしもやりたくなってきたわ!」
「なんだなんだー?クリスもワン子もそろいもそろって」
「あんなの見せられたら武士娘として燃えないほうがおかしい」
京も鋭い目つきで士郎とセイバーを見る。
「俺らは勝てっこないしなー・・・」
「だね・・・始まった瞬間細切れになってるよ・・・」
「速さなら負けねぇつもりだったけどあれは無理だな・・・」
「あがくだけ無駄というか・・・姉さんと同じだな・・・」
自信を無くす男子一行。そんな時、
「いけません!実にいけませんぞ!男子たるもの立ち向かっていかねば!」
暑苦しい人物が姿を現した。
「レオニダスさん!」
「いやー流石に無理だぜ先生・・・」
「むむ。いけませんな。男子たるもの勇敢であらねば・・・しかし英霊と比べるのも愚の骨頂・・・むう」
と、無茶振りした当の本人も考え込んでしまう中、一子が特級の爆弾を落とした。
「そういえばレオニダスさんとセイバーさん、どっちが強いの?」
「「・・・。」」
「あ、バカ!ワン子!」
互いに鋭い視線で見つめるレオニダスとセイバー。確実にやばい爆弾だった。
「二人とも待った。二人が戦うのは許さないぞ」
「シロウ!?」
「マスター!何故・・・」
「なぜもなにも周囲への被害が大きくなりすぎる。セイバーはエクスカリバーで戦うだろうしレオニダスだってしかりだ。二人が戦ったら見物人もただじゃすまない」
「ぬ・・・」
「しかし・・・」
互いに負けず嫌いなのだろう唸って固まってしまった。
「二人の強さは俺がよく知っているよ。今はそれで良しとしてくれないか?」
「「・・・。」」
ひとまずはそれでまとまりを見せたようだった。
「でも実際見てみたいよな。英霊同士の戦いっていうのも」
大和がどこかうずうずした感じで言った。
「じいちゃんに言えば結界とか張ってくれるんじゃないかしら」
「「「それだ!!!」」」
皆がウキウキとした表情で言った。だが、
「ダーメ。覚えてないかもだけど川神院の天陣・・・だったか?あれじゃ紙切れ同然だ」
「ええー」
「いいじゃねぇかよう・・・」
大和とキャップがしょげる。だが士郎は断固として譲らなかった。
「英霊同士の戦いは神話の中だけでいいんだよ」
「しかし、シロウ。純粋な戦力確認としてもいずれは戦わなければならないのではないですか?」
「私もそう思いますぞ。騎士王を侮っているわけではありませんがしっかりとした戦力分析は必要かと」
二人の言葉に士郎も思うところがあったのか、
「わかった。遠坂に相談してみよう。結界という意味でも『観測』という意味でも遠坂ならなんとかできるかもしれない」
「ホントか!?」
「イエーイわかってるぅ」
貴重な機会が体験できると一同は喜んだ。
戦う二人も、
「誇り高いスパルタの王と手合わせできて光栄です」
「なんのなんの。名高き騎士王と手合わせできて恐悦至極」
がしりと握手を交わして互いを称えた。
――――interlude――――
一方燕は百代と激闘・・・にもならない模擬戦をしていた。
「ぐっ・・・」
「おーいギブアップか?まだ二割くらいだぞ」
対衛宮士郎訓練なのだが燕が全然追いついていけないからだ。
「容赦ないねん。本当に衛宮君はその戦闘力なのかな?」
息を荒げながら苦し紛れに言う。
わかっている。衛宮士郎はまだ遥か高みにいることを。
「冗談だろ燕?お前ほどつぶさに士郎を観察してたやつはいない。今まで出てこなかったのも、ずっと戦力分析してたんだろ?」
「・・・。」
図星だった。彼を取り巻く様々な戦いがあったが、そのどれにも参加しなかったのは彼の実力を図るため。
弓を射る時も、剣をふるう時も、すべてを彼女は見てきた。
その情報が囁くのだ。彼はこんなものではないと。
「悔しいけど、これが現実か・・・」
「どうだ?あきらめるか?」
返答なんてわかってるくせにニヤニヤと友は言った。
「まだまだぁ!!!」
「お、いいぞ三割には届きそうだ。もっとだ燕!もっと上がってこい!」
その手に力が入るのはなぜなのか。それすらわからず、燕は今この時を駆け抜けた。
――――interlude out――――
いかがだったでしょうか。あの先輩の第二ボタンキャッキャウフフとはいきませんでした。
久しぶりに描く燕になかなか苦労しました。セイバーたちのことも書かなきゃと思い、結構時系列がめちゃくちゃになりかけました。もっと精進せねば…
ということで次回、燕ちゃん、舞う!