真剣で衛宮士郎を愛しなさい!   作:Marthe

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みなさんこんばんにちは。短いようで長い再入院から帰ってきた作者です。

このタイトルも三回目ですね。今回はもちろん燕と士郎の激突という事で書かせていただきます。

圧倒的戦力の士郎にどう立ち向かうのか、見届けて貰ったら嬉しいです。

では!


飛燕の如く(真)

――――interlude――――

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

 

流れる汗をそのまま地面に吸い込ませる。とても、拭う余裕などなかった。

 

「やるじゃないか。これならいい勝負できそうだ」

 

立っているのすら辛い。今この瞬間地面に倒れ伏したらどれだけ楽だろう。

 

そう思わずにはいられなかった。

 

「倒れるなよ。今お前は本来と違う立ち位置にいる。足は止めてもいいが・・・横になったら何歩か後退するぞ」

 

 

 

 

――――よく言ってくれる。

 

 

 

 

彼女は視線だけで訴えた。これほどまでに酷使しておいて倒れる事すら許されぬとは。

 

「そう怒るな。その状態をキープしながら鍛錬すれば地力が上がって何段か飛び越えられるはずだ。それともこの絶好の機会を棒に振るか?」

 

ニヤニヤと笑う恋敵に唾の一つでも吐きかけてやろうとにらみ返す。

 

彼女は負けられない戦いに身を置いている。なんとしても彼を張っ倒さねばならないのだ。

 

「いいぞ・・・そら」

 

ゆっくりと。ゆっくりと自分に拳が迫ってくる。

 

なんだ、この舐めた攻撃は。立っているのがやっとだからと手を抜いているのか?

 

「アアアアアァッ!!!」

 

その攻撃に怒りを覚えた彼女は全身全霊で拳を躱し、向けられた拳よりさらにのろのろとした一撃を見舞う。

 

その姿に相対している彼女は一際ニヤリと笑い、

 

「やったな。ここ一番だ」

 

届いたかどうかも分からず意識が薄れていく。

 

ただ、満足気に笑った恋敵の顔だけを残して。

 

 

――――interlude out――――

 

 

その日川神スーパーアリーナは多くの人で溢れていた。

 

「あずみ!警備の様子はどうだ?」

 

「はい!英雄様!万全の体制です!」

 

インカムをつけたあずみがビシっと報告する。

 

事実、九鬼の警備体制は万全だった。何せ、英雄・衛宮士郎の決闘だ。約定に従い、キッチリとした対応をしている。

 

「それにしても、兄上がまた決闘とはな。ヒュームの件で大怪我を負わせてしまったのもあるし、あまり気乗りせんな」

 

「今回の対戦相手の松永燕は・・・その」

 

言い辛そうに顔を伏せたあずみに、わかっていると頷いて英雄は言った。

 

「紋が川神百代に仕返しを企んで呼びつけた西の武士娘だったな。今では契約も破棄したという話だったが・・・」

 

「はい。契約は破棄されたようです。しかし、松永燕にも思う所があるらしく・・・」

 

「そうか。なんにせよ、兄上の花舞台よ。余計なチャチャは入らぬようにな」

 

「かしこまりました英雄様!」

 

 

一方で風間ファミリーと凛たちは

 

「遠坂さーん!」

 

「こっちこっち!」

 

クリスと一子に呼ばれて凛達は近くの席へと座った。

 

「はい、ジュース。間桐さんとセイバーさんも」

 

「ありがとう。それにしても大盛況ね」

 

見る限りの人、人。まるで野球観戦かの如く、席は満員だった。

 

「なんてったって士郎だからな!」

 

「士郎は川神では英雄なんだ。その士郎が決闘するならこれくらい当然だよ」

 

「・・・士郎は色んな伝説の武器を使う。今回はどんな伝説に出会えるか期待してる人もいるらしいよ」

 

「好き放題やってると聞いてたけど、本当なのね」

 

「先輩大丈夫でしょうか・・・」

 

「大丈夫ですサクラ。今朝の鍛錬から見ても、士郎に負けはありません」

 

自信ありげに言うセイバーにファミリーは笑顔を浮かべた。

 

「でもまた決闘の理由について考えてそう」

 

モロの言葉にセイバー達は、

 

「仲が悪かったんじゃないの?」

 

「それがそうでもないんだ。よく笑って一緒に居ること多かったし・・・」

 

「え?先輩が、ですか?」

 

「士郎が、というより松永先輩がちょっかいかけてるというか・・・」

 

「登校するとき士郎は変質者を弓矢で撃退してるんだけど、その時一緒に居ることが多いかなぁ」

 

「モモ先輩が何か知ってそうだけど・・・」

 

そう言って石畳の引かれたフィールドを見る。

 

「今回審判だからなぁ」

 

「審判は川神さん一人なの?」

 

「いや、実際には九鬼の従者さんも審判としているみたいだ」

 

「選手控室には九鬼お抱えの医師もいるし、至れり尽くせりだね」

 

「なるほど・・・ではなぜマツナガがシロウに決闘を挑んだのかは結局分からずじまいですか・・・」

 

セイバーがうーんと唸るが、ファミリーと凛は実にテキトーな顔をしていた。

 

「女でしょ」

 

「女だ」

 

「女よねぇ」

 

「え?え!?女!?姉さんどういうことですか?」

 

「簡単な話よ。想いを秘めていたのが何かをきっかけに爆発した。それだけよ」

 

不機嫌そうに凛は言った。

 

「そんな・・・どこで口説き落としたんですか・・・?先輩・・・」

 

「な、なんか間桐さんが黒くなってないか・・・?」

 

「物理的に黒く・・・服が・・・」

 

危険を察知してセイバーが音もなく席を交換し桜を外側に置いた。

 

「いいですか、皆さん。なにも見なかった。そうですね?」

 

「いや、向こう側が「いいですね?」はい・・・」

 

セイバーの鬼気迫る顔に、流石のキャップもコクコクと何度も頷いた。

 

『試合開始まで残り10分です』

 

そのアナウンスと共に様々な広告が特大ウィンドウに表示される。

 

「うわぁ、随分色んな会社が入ってるね」

 

「松永先輩やるな」

 

米のCMが多いのがなんともわかりやすいチョイスである。しかし、事情を知らない凛は隣の席の京に聞いた。

 

「なんで米のCMが異様に多いの・・・?」

 

「松永先輩は、松永納豆っていう納豆を売るから。納豆小町って呼ばれてる」

 

「なるほどね。自営業の宣伝も兼ねてるわけか」

 

自然と会話する凛と京。その姿は、人見知りする京にしては随分とフランクなものだった。

 

「京が普通に会話してるぜ」

 

「いつもなら慣れない相手は適当に濁すんだけどなぁ」

 

「大和絡まないからじゃない?」

 

「ああ、確かに」

 

「・・・。」

 

余計なことを言い始める一同に凛がスッと手を向ける。

 

「うわわわわ!ガンドよー!」

 

「お前らが余計なこと言うから・・・!」

 

「遠坂さん、勘弁してくださいー!」

 

「やるなら俺っちをやれー!その呪い返したるぞー!」

 

「松風!」

 

「・・・気になってたんだけど。その子、腹話術よね?」

 

狙いをつけていた手を降ろし、由紀江と手の上の馬のストラップを見る。

 

「いえ。これはある日神様がですね・・・」

 

「天野原走ってたらさー・・・むぐぐ」

 

「腹話術じゃない」

 

すかさず由紀江の口をそっと手で塞ぐ凛。情けも容赦もなかった。

 

「そ、それよりほら!始まるよ!」

 

(ナイス!モロ!)

 

(まゆっちのあれは、立証されたら精神崩壊起こしそうだからなー)

 

ズーン、とショックを受ける由紀江だった。

 

『大変お待たせいたしました!今より衛宮士郎氏と松永燕氏の決闘を始めます!両者入場!』

 

プシュ―!という煙の向こうから両名が壇上に上がる。

 

『扱う技は数知れず!現総理を救い、川神の治安を鷹の目で見守る男!衛宮士郎!』

 

ワアアアア!!!と大きな歓声が上がる。しかし彼の方は仏頂面だ。なぜこんなことに、と顔に書いてある。

 

しかし、彼もこの決闘の意味は分からないまでも必要性は感じているのだろう。彼の誇りの外套は身に付けられていた。

 

「シロウも己の誇りを掲げていますね」

 

「意外だったかな。士郎のことだから身に付けないと思ってた」

 

「『剣を振るう理由』がないと先輩は外套を身に付けないですからね」

 

「そうなんだ・・・」

 

「いっつも本気で戦ってる時はあの格好だったからな。自分たちは珍しいものを見ていたのか」

 

考えるように俯くクリスを見て凛は思い返していた。

 

 

 

――――『最初はどうしたらいいか悩んだんだけどな・・・今では気のいい仲間達だよ』

 

 

 

 

 

――――『大黒柱として賄っていかないといけないんでな』

 

 

 

「・・・やっぱりあいつ、変わったわよね」

 

「姉さん?」

 

「リン。シロウは――――」

 

「うん。別な形の正義の味方になれたのかもね」

 

そう言って舞台に立つ愛する男を見るのだった。

 

 

 

 

 

『続いて挑戦者!納豆の事なら私にお任せ!栄養満点の食事を貴方に。納豆小町、松永燕!!!』

 

同じく煙幕から出てきたのは黒いフィットタイプスーツを身に付け右手に見慣れない装備とベルトをつけた燕の姿が現れた。

 

表情は硬い。いつもの余裕はなく軽口一つ口にはしなかった。

 

「いいなぁ燕。今のお前なら昔の私をとらえてたのに」

 

百代は心底楽しそうに言った。

 

「こりゃモモ。不謹慎だぞい。両者共に構え」

 

「・・・。」

 

「――――」

 

「はじ――――」

 

「!」

 

鷹の目はとらえていた。学園長が『め』を言う瞬間に全身のバネを利用した俊足の拳が迫るのを。

 

「・・・チッ」

 

「やれやれ。これはまた随分と嫌われたものだな」

 

しかしその一撃も左手で逸らすことで一瞬の膠着となった。

 

「この程度で私を――――」

 

『スタン』

 

バチン!と電撃が手甲を走る。その一撃は強力無比で士郎の左腕が不自然に跳ね上がった。

 

「ッ!スタンとはよく言ったものだ。まさか初手で片手を潰されるとは思わなかったよ」

 

雷撃を流された左腕を押さえてトンと地を蹴る士郎。

 

本来は間合いを空けるつもりだったのだろう。しかし、燕は鋭く急接近した。

 

「!?」

 

彼女のバトルスタイルは良く知っている。鋭い観察眼と戦術理論を組み合わせた知恵に富んだ戦い。士郎の見立てでは彼女もバックステップを取るものと思っていた。

 

そして理解する。彼女はやりに来ていると。観察をやめ、仕留めるための行動に移ったのだと。

 

(たわけが。一体いくつの技を見せた?動きを、体捌きを見せた?この体たらくは笑えんな)

 

勘違いをしていた自分に罵倒を浴びせ、思考を切り替える。彼もまた、仕留める戦術を組み始める。

 

『スタン』

 

「ぐぅ!」

 

役立たずとなった左腕を体の勢いで強引に手甲にぶつけて弾く。しかし雷撃が左腕にとどまらず、全身へと広がるのを感じて士郎は危機感を覚える。

 

(まずいな・・・このままではあの雷撃だけで仕留められる。初手の差がこうも出るか)

 

鷹の目にはしっかりと燕の動きが映っている。しかし、あのスタンという攻撃はどう防いでも放電する以上避けるしか方法がない。

 

ならばと士郎が取った行動は目を見開く動きだった。

 

『スタン』

 

「!?」

 

燕が黙してわが目を疑う。

 

居ない。今まで距離を空けず、怒涛の連撃を浴びせていたはずの敵がいない。

 

「二手そちらに譲った。次からはそうはいかない」

 

「ッ!!」

 

いつの間にか背後にいた敵に燕が最短、最速で右手を振りかざす。

 

『スモーク』

 

パシュンと何かが切り離され煙幕が焚かれる。攻撃を嫌ったのだろう。すかさず視界を遮り距離を空ける燕。しかし、

 

「何処へ行くのかな?お嬢さん」

 

「!!?」

 

またも背後を取られた燕。分からない。分からないが、彼は自分を正確に認識し、理屈の分からないスピードで接近している―――――!

 

『ネット』

 

ピーン、と蜘蛛の巣状の網がひかれる。逃がさない。向こうが攻撃できない(・・・・・・)ことを利用して攻め続ける!

 

その激しい戦いを見ながらファミリーは目を回しながらスクリーンとフィールドを見る。

 

「なになに!?どうなってるの!?」

 

「士郎が痛手をもらうなんて・・・」

 

「理屈は分からねぇが背後を取りながらなんで攻撃しねぇんだ?」

 

と、?マークが多く出ているので凛は言った。

 

「あの子、上手いわね」

 

「え?遠坂さん分かるんですか!?」

 

「解説はよー!」

 

という大和とガクトにはぁ、とよりつまらなそうに凛は言う。

 

「あいつ、理由なく女に手を上げると思う?」

 

「「「あ」」」

 

それだけでファミリーは理解した。

 

「自らを囮にした電撃戦。それが彼女の戦いですね」

 

「そ。ただ確かに目を見張るものはあるかな。体術もなかなかだし何より、」

 

「ふっ!」

 

戦闘不能を狙った手刀。間違いなく当たると思われたそれは、

 

『シールド』

 

「!?」

 

カン!とささやかな音を立てて防がれた。

 

「アアアアアァ!」

 

『スタン』

 

「チッ・・・」

 

またもバチン、と音が鳴る。何とか左腕を盾にしたものの動きが鈍る。

 

「追い込まれてる!?」

 

「士郎!頑張って!」

 

「気張りやがれ士郎!」

 

「負けないでー!」

 

思わぬ苦戦に士郎派の応援が激しくなる。

 

その様子にクッ、と笑い、

 

「君がまるで悪者のようだな」

 

「・・・。」

 

返事はなかった。

 

(どうにもおかしい。まるで血に飢えた獣のような・・・全くの別人だ)

 

「!!」

 

「またそれか!」

 

『スタン』

 

今度は当たらないように避ける。紙一重を狙いたいところだが、放電している以上油断はできない。慎重に士郎は時が来るのを待つ。

 

「狙ってますね」

 

「よね。何をぐずぐずしてるんだか」

 

「え?士郎が不利じゃないの?」

 

一子がぎゅっと手を握りながら振り向く。

 

「当然でしょ。たかだが片腕動かなくなったくらいで諦める玉じゃないわよ。それに弱点だって分かり切ってる」

 

「弱点・・・」

 

「あのベルト・・・?」

 

「モロ?」

 

何かに気付いたようにモロが呟く。

 

「モロ、今なんて・・・」

 

「ベルトよ!」

 

一子が些細な呟きを拾い上げた。

 

「あの声がするベルト?」

 

「もしかして右手の手甲と繋がってる?」

 

「そうか!後は士郎が気づいているか「「「気付いてる」」」・・・だな」

 

「でもよう、ならなんでそこ狙わないんだ?」

 

キャップの言葉に凛が問うた。

 

「ねぇ、あの松永?って子は普段からああなの?」

 

「ふぇ?」

 

「そういえば・・・」

 

「もしかして士郎、松永先輩を元に戻そうとしてる?」

 

そこまで考えが至ったファミリーは何処か安堵した顔になった。

 

「なんだ。士郎いつもみたいに・・・」

 

「松永先輩を救おうとしてるんだね」

 

「なら負けはねぇな」

 

「ガンガン応援しちゃうわよ!」

 

「うむ!士郎ー!」

 

一切の不安を無くして応援するファミリーに凛はため息を吐いた。

 

「目的があると分かったらすぐ元気になっちゃって。子供ねぇ・・・」

 

「シロウは負けません。それが救いを賭けた戦いならば」

 

セイバーは静かに目を閉じ、桜はそれでも、きゅっと手を握って士郎の無事を祈った。

 

 

 

 

 

 

 

それから一時間は経っただろうか。燕は疲弊し、士郎は感電で動きの鈍った泥沼の戦いと化していた。

 

「休憩を入れた方が良いかの」

 

「そうだ。早速コールを――――」

 

「まだだ」

 

学園長とヒュームが話し合っていたが、審判の百代は拒否した。

 

「モモや。かれこれ一時間になるのじゃぞ。これ以上は・・・」

 

「ジジイもヒュームさんも黙っててくれ」

 

腕を組んでじっと戦いを見続ける百代。

 

「もう少しだ」

 

そういう彼女の目には何が映っているのか。

 

ただ彼女の目には、確かに何かが見えているようであった。

 

「開始60分と言った所か」

 

自由の効かなくなってきている体に喝を入れてどれだけの時間が経ったか。

 

ちらりと見た時計は既に一時間を回っていた。

 

「疲労具合からしてそろそろだが・・・」

 

「はっはっはっ・・・」

 

短く息を吐き肩を荒げて呼吸する燕。

 

限界だった。いくら士郎に攻撃が通せても本来あり得ない高速戦闘を行ったため、酷使され過ぎた体は酸素と休養を欲していた。

 

頃合いを見た士郎は声をほとばしらせる。

 

「聞こえるか!松永燕ッ!!俺の声が!!」

 

「!!!」

 

 

 

――――interlude――――

 

 

苦しい暴風の中にいる。ちっぽけな自分は、体を打ち付ける風を丸まって、縮こまって耐えている。

 

 

 

――――苦しい

 

 

誰でもいい。この場から解放してほしかった。

 

最初こそ足掻いていたものの苦しさに、痛みに負けて私はずっとこうしてる。

 

このままじゃいけないのは分かってる。でも苦しいのだ。辛いのだ。

 

「誰か・・・」

 

ポソリと言葉が口から出る。

 

「誰か助けてよ・・・」

 

いもしない誰かに。

 

「ねぇ、誰か・・・」

 

胸元を痛いほど握りしめて。

 

「誰か助けてよ!」

 

その瞬間風がやんだ。

 

 

――――interlude out――――

 

 

 

士郎の叫びに何事かと観客たちは騒然とした。

 

だが、舞台上では、

 

「あれ?」

 

それまで血に飢えた獣のようだった松永燕がぽかんとしていた。

 

「ここどこ?川神スーパーアリーナ?」

 

まるで今までの記憶が無いかのようにキョロキョロとする。

 

「やっと戻ってきたか。随分遅いお帰りじゃないか」

 

「衛宮君?そうだ、私――――」

 

ゆっくりと今までの事を思い出す。確かそう、あれは一週間前――――

 

 

―――― 一週間前 ――――

 

 

『んーいいセンスしてるんだけどなぁ』

 

『届かない?』

 

『そりゃもう。月と~なんだっけ』

 

『スッポン?』

 

『そうそうそれ』

 

百代はお手上げと言った。

 

『変な言葉はプライド傷つけるから言うけど、全然無理。コンマ一秒で試合終了』

 

『十分傷つくんですケド・・・』

 

はぁ、とため息を履いて地面に大の字になる燕。

 

『ダメかぁ・・・』

 

そう呟く燕に百代は、

 

『もしかしたら・・・うーんでもなぁ』

 

何やら問答している。

 

『何?何か方法でもあるの?』

 

やけくそ気味に言ったら百代は真剣な顔をして、

 

『燕、絶対に勝ちたい?』

 

『そりゃもう』

 

さらに真剣な顔で、

 

『死んでも勝ちたい?』

 

『なに急に。死んでも勝ちたいよ。今回ばかりはぜーったい』

 

『・・・。』

 

『・・・方法、あるの?』

 

『ないこともない』

 

そう言って百代は手に気の塊を作り出した。

 

『これは私の気の欠片だ』

 

『そうだろうねん』

 

『コレ、飲むんだ』

 

『・・・え?』

 

『コレ飲んで鍛錬したら届くかも』

 

その言葉に燕は苦虫を嚙み潰したような顔をした。

 

『確実に死ぬ気がするんだけど』

 

『だな。適応出来なかったら死ぬ。マジで』

 

『・・・。』

 

『これ飲むと燕の身体に私の気が解放される。一種のドーピングだな』

 

『それで?』

 

『ドーピングとはいっても気だから依存性はない。でも無理やり加速された体は限界をこう、ドーン!とぶち壊して動く』

 

『・・・それで?』

 

『めっちゃ動く。でも苦しいと思う。最後は破裂するか無理の反動で体壊れる』

 

『・・・ダメじゃん』

 

『でも成功したら限界突破した景色になる。気もすっごく増えると思う』

 

『・・・。』

 

『どうする?私も友達殺したくないからあんまりやりたくないんだけど・・・』

 

『成功する可能性は?』

 

『1%。後は燕のセンス次第』

 

『・・・やる』

 

彼女は言った。

 

『1%でも、自分次第で成功率は上がるんでしょ?ならやるよん』

 

『・・・よし燕、遺書書け』

 

『死ぬ前提!?』

 

『だから死ぬんだって!やだよ私のせいにされたら。というか事実でもやだよ』

 

『・・・しょうがないなぁ』

 

さらさらと紙に書いて折り畳み表紙に『遺書』と書いた。

 

『そんなんでいいのか?』

 

『いいよん。死ぬ気ないしというか・・・』

 

そこまで言ってえへへ、と笑った。その笑いにいいものを感じなかった百代は、

 

『というか?』

 

『衛宮君が助けてくれる気がするし』

 

『・・・もうちょっと気込めようかなぁ』

 

『わああ!?ストップストップ!いくらセンスある燕ちゃんでも限界あるからぁ!!』

 

 

―――― 一週間前 ――――

 

 

という事があったわけだ。

 

「どうです?天井ぶち壊した気分は」

 

士郎の言葉に燕は目を細めて、

 

「体、かっる~・・・」

 

シュッと二人が舞台から消えた。

 

「消えた!?」

 

「上よ」

 

上空ではいつの間にか二人が常人の目では追えないほどのハイスピード戦闘をしていた。

 

「は、」

 

「早え!!?」

 

「なかなかね」

 

「素質はあるようですから」

 

真剣に上空での戦いに目を向ける凛とセイバー。

 

「でもこれで」

 

「枷は無くなりました」

 

「サクラ」

 

じっと祈っていた桜が顔を上げた。

 

「せんぱーい!!!」

 

そして宣言するのだ。いつもの様に。

 

「勝ってくださーい!!!」

 

「さて、お姫様は目覚めたようだし、終わりにしようか」

 

「ええー!ここまで焚きつけておいて・・・」

 

「焚きつけるも何も私は何もしていないのだが?」

 

「あ・・・」

 

よくよく考えたら今回のことの発端は。

 

『士郎ー---!!!大好きだー----ッ!!!』

 

「モモちゃんじゃん!!!」

 

ヒュー!という風を切る音を聞きながら彼女は下を見た。

 

 

――――イイ笑顔だった。

 

 

親指立ててサムズアップしていた。

 

「にゃろー・・・」

 

「隙あり」

 

「ないよん!」

 

ガン!といつの間にか握られていた白剣、莫耶と手甲が鬩ぎ合う。

 

「そろそろ終わりにしてほしいんですけどね!」

 

言うと同時に一回転し強烈な一撃を見舞って、燕を地面に叩きつける。

 

「いたた・・・もう!言う通りラストにしてやろうじゃないッ!!」

 

『フィニッシュ』

 

空から巨大な何かが降ってくる。

 

「なっ・・・」

 

士郎が驚くのも無理はない。

 

恐らく蜘蛛の形をしたそれは、表面を赤熱化させて降ってきているのだ。つまり大気圏外からの投射。

 

降ってきたそれは地上の燕と連結、巨大な砲身となった。

 

「これが燕ちゃんの全力、だーッ!!!」

 

ドシュンと極太のビームが発射される。

 

「あれは流石にやばいのではないか!?」

 

慌てるクリスだが他の面々は慌てた様子も無かった。

 

「大丈夫よ!」

 

「だって・・・」

 

ファミリーはスッと目を閉じて

 

「体は・・・」

 

「「「剣で出来ている」」」

 

“熾天覆う(ロー)・・・」

 

「いっけー!!!」

 

七つの円環”(アイアス)ッ!!!」

 

強力なビームを七枚の花弁の盾が防ぐ。

 

「うっそ!?」

 

成長した分を上乗せされた砲撃がたった七枚の花弁を破ることが出来ない。

 

 

――――刮目して見るがいい。これこそ大英雄の投擲すら防いだ友情の盾。花弁一つが古の城塞に匹敵するこの神秘をいかな現代兵器で破れようか。

 

 

「んぎぎぎ・・・!うおー!!!」

 

ドン!と更なる威力がビームに加算されるが花の盾は依然健在。結局、平蜘蛛の一撃は花の盾を突破できなかった。

 

「まだやりますか?」

 

「無理ーぎぶあーっぷ」

 

そうして決着と相成るのだった。




はい。今回はこんな感じです。カッコよく書けてたかな…不安ですが私の回らない頭を回して書いたつもりです。

今回まーたうちの士郎君は大怪我(左腕)したわけですが…そりゃそうよね対百代兵装の雷撃なんか食らったらひとたまりもないわけで…絶対スタンじゃないよね。

という事でその辺も次回書けたらなーと思います。それではまた次回!
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