真剣で衛宮士郎を愛しなさい!   作:Marthe

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みなさんこんばんにちわ。マジ恋プラスディスクがほしい作者でございます。

今回は入学式!波乱万丈(士郎だけ)の卒業式を終えたら入学式。さて遠坂と桜、セイバーの三人組はどうなるのか?そして何やら様子のおかしい九鬼。今回からも新しい波乱の毎日を士郎に味わってもらうべく頑張ります!


入学式/編入

――――interlude――――

 

迎え入れの春が到来してすぐ。九鬼家では新たなプランや新プロジェクトに向けての会議が行われていた。

 

「次の議題はこちらです」

 

「うむ・・・やはり難問だな」

 

「我にこのプロジェクトの適任者が思い当たります!」

 

小さな体に元気を詰め込んだような九鬼紋白が挙手する。

 

「紋、そう興奮してはならぬぞ。して、適任者とは?」

 

「直江大和です!母上!」

 

元気いっぱいの紋白を嗜めるのは九鬼家を支える頂点の一人。九鬼局だ。彼女はいち早く派遣業をなした傑物で現在は九鬼揚羽や英雄、紋白の父である、九鬼帝の妻だ。

 

世界を股にかけて東奔西走する夫に代わり、彼女はこの九鬼本社で九鬼を支えている。

 

「直江か。確かにこの議題にうってつけではあるが・・・」

 

「まだ学生であろう?学業の傍ら依頼してもいいものか?」

 

「大丈夫です母上。大和は何より人を使うのが上手いです。なるべく年の近いものを配置してやれば必ずや成功させるでしょう!」

 

紋白は自信あり気に言うが事は九鬼の今後にも関わる。そこで局は紋白の護衛たるヒュームにも聞いてみることにした。

 

「ヒューム。お前はどう見る?」

 

「問題ないかと。直江大和は一度、紋様の依頼で大規模なパーティを構築しました。補助は必要でしょうが問題なく事に当たるでしょう」

 

「そうか。では、前向きに検討を進めるとしよう。他に案のある者は?」

 

しんと静まり返る。特に問題なしという事だろう。

 

「それでは続いて・・・揚羽様と英雄様の婚約についてですが」

 

「っ・・・」

 

「あずみよ。どうかしたのか」

 

「いえ、何でもございません」

 

一瞬苦し気な気配を見せたあずみだがなんとか表情を取り繕った。

 

「そうか。だが無理はするなよ。これだけ長い会議だ。一息入れるのも悪くない」

 

「うむ。あずみには人一倍苦労を掛けているからな。ヒューム、クラウディオ」

 

「「はい」」

 

うやうやしく頭を下げて二人が退出する。一呼吸入れるべく茶を準備しに行ったのだろう。

 

「しばし、寛ごう。紋、金平糖があるぞ」

 

「ありがとうございます!母上!」

 

地に足が着かない椅子から飛び降りて局の下に走って行く紋白。その様子を見てホッと一息つく揚羽と英雄。

 

「一時はどうなる事かと思ったのだがな」

 

「これも直江大和の力だな」

 

最近まで局は紋白を帝が浮気した相手と重ね、嫌っていたのだが、大和の人材紹介で多くの部下を参入させ、彼女の見方が変わったのだ。

 

それからというもの、これまでを取り戻すように可愛がっている。

 

「あずみよ、お前も座れ。体調が優れぬのなら休むべきだぞ」

 

「いえ英雄様。あずみは体調不良などではありません」

 

「強情な奴よ。しかしそのプライドが頼もしいぞあずみ」

 

揚羽が苦笑してそう褒めるが、あずみは静かに一礼するだけだった。

 

「して、揚羽。お前の好いた男というのが・・・」

 

「はい。衛宮士郎です」

 

その言葉に頭が痛そうに嘆息する局。

 

「大層な人間だと聞いている。実績も問題なかろう。だが随分と気の多い男ではないのか?」

 

「いえ、本人は至って純朴です。我らが率先して増やしているのです」

 

「そこが分からぬ。お前は自らと結婚しておきながら他の女とうつつをぬかす男を愛するというのか?」

 

一度浮気をされた局としては考えられないことだろう。

 

「しかし母上。我らは多重婚の世に身を置く身。世界の九鬼がその先頭を行かずしてどうしますか」

 

「ああ・・・そんな話もあったな・・・具体的にいつ頃公表となるのかはわかっておるのか?」

 

「衛宮士郎が卒業する来年にはって話だぜ」

 

「「「父上!」」」

 

なんと、九鬼帝が姿を現した。

 

「ようお前ら。元気にやってたか?」

 

「はい!父上はなぜこちらに?」

 

「やっと時間が出来たんでよ。一日くらい家で過ごしてぇじゃねぇか」

 

「では今日はこちらに泊られるのですね」

 

「おう。そしたら面白い話をしてるもんだからよ。つい顔出しちまった」

 

「帝様も衛宮士郎をお知りに?」

 

「ああ。あいつはすげえ奴だぜ。多彩な技術もなによりだがあの眼。自分を貫き通す覚悟をした奴の目だ。それがこえーから揚羽は他にも嫁を見繕ってる。違うか?」

 

「はい・・・衛宮士郎は正義の味方という生き方から離れられぬ人。いつか人の手を振り払って遠い所へ行ってしまう・・・そう思えてならないのです父上」

 

「正義の味方か・・・それは大層なお題目だ。それがどういうもんか知っててやってるんだろう?」

 

「うむ。兄上はいつでも困っているものを放っては置けぬ人柄だ。だからこそ、川神の英雄なのでしょう」

 

英雄までもがそう断ずる事に局も驚きの眼で見る。

 

「英雄もこの衛宮士郎という男を評価しておるのか?」

 

「無論です。兄上が居なければ今頃どうなっていたか分からないこともありますし、何より人柄です。姉上が兄上を囲う包囲網を作るのも納得がいく男です」

 

「本当なら一人で押さえ込めりゃいい。それでも無理だから他の手を借りる。商売と一緒じゃねぇか」

 

「父上。我の恋を商売と一緒にされては困ります」

 

少し怒った様子の揚羽にカラカラと笑い、

 

「なんにせよ、お前がそれでいいってんならそうしな。俺もあいつならお家騒動なんか起きないと思うしよ」

 

「帝様・・・」

 

「あ、局は心配すんなよ。俺は局一筋だから」

 

「・・・もう。子の前ですよ」

 

そっぽ向く局に笑いかけて帝は英雄にも問いかける。

 

「英雄はどうすんだ。好きな奴とかいんのか?」

 

「我は・・・」

 

一瞬苦い顔をしたがそれは苦笑に変わり、

 

「フラれました。これ以上ない程完璧に」

 

「英雄様・・・」

 

そう。この男以前に一子に告白したことがあったのだ。しかし、一子は武に生きるのだときっぱり断られていた。

 

「それに、我は一人を愛したいと思います。兄上や姉上が間違っているというわけではなく、我自身がそうしたいと考えています」

 

「・・・そっか。お見合いパーティでもこさえるかぁ」

 

「それが良いかと。我の結婚は九鬼家の為。尽力する次第です」

 

「・・・。」

 

英雄が清々しい顔で宣言する。その横顔をあずみは・・・悲し気な顔で見ていた。

 

「皆さまお茶が入りました」

 

そうして九鬼家の長い会議は進んでいく。

 

「・・・。」

 

一人の女性の想いを置き去りにして。

 

 

――――interlude out――――

 

「士郎、もういかないと」

 

そうせかしてくるのは林冲だ。

 

「ああ、今行く」

 

鞄を背負い呼ばれた士郎はパタパタと出て行く。

 

「忘れ物は無いか?戻る時間はなさそうだけど」

 

「問題ない。今日は新入生の入学式だからな。気合入れて行かないと」

 

季節は春。別れの季節を過ごして今は出会いの季節。百代達三年生を見送った士郎達は三年生となり、川神学園の最高学年となった。

 

そんな士郎達は入学してくる学生の誘導という役目があり、今日は早く登校しなければならないのだ。

 

「普段通りの時間だけどな。休みが長かったから新鮮に思えるな」

 

「そうだな。今日は橋の監視、しなくていいのか?」

 

「するべきなんだろうが・・・新入生にあの光景はちょっと――――」

 

「ああ、ここにいたか」

 

士郎と林冲の横に車が一台止まった。下げたウィンドウから顔を覗かせたのは学園長だった。

 

「よかったよかった。二人とも早く乗りなさい。早く学園に行くぞい」

 

「学園長?」

 

「なぜ迎えを?」

 

「そりゃあ衛宮君に橋を狙撃してもらうためじゃよ。モモのチンピラ退治が無くなってちょいと刺激がないからのう・・・。その点衛宮君ならバッチリじゃ」

 

「俺の弓をなんだと思ってるんですか・・・」

 

バッチリじゃ、のあたりからカクリと肩を落とす士郎だが、

 

「何を言うとるんじゃ『神弓の衛宮』。もう知れ渡っているぞい?その手腕を楽しみにしている新入生も多いじゃろうて」

 

「・・・わかりましたよ」

 

はぁ、とため息をついて士郎と林冲は車に乗った。

 

「実際の警備はどうなんですか?」

 

「今日ばかりはのう、学園に悪い印象を持たれないよう修行僧と九鬼の二段構えじゃ」

 

「それでは・・・士郎の弓は必要ないのでは?」

 

「まぁの。学園の警備を学生一人に任せるのはいくら何でもよくないじゃろ。じゃが、いくら人員を配置しても穴はあるもの。それにこれから一年間は流星の中登校するのじゃからな。早いうちに慣れた方がよかろうて」

 

「それが一番よくないんじゃないかと思ってたんですが・・・」

 

これから一年は流星の中登校する。実に不可思議な言葉である。

 

「まぁそういうな。今日はお主の連れ合いも入学なのだから張り切って、な?」

 

そう。凛達もこの不思議な学園に入学するのである。

 

「試験結果はどうだったんですか?」

 

「三人とも文句なしのSクラス相当じゃった。新2-S組の誕生じゃな」

 

「そうですか。・・・ん?遠坂は三年ではなかったんですか?」

 

「む?普通に二年生で申請があったぞい?」

 

「・・・。」

 

「確か凛は試験結果がSなら三年生に編入じゃなかったか?」

 

「俺もそう聞いていた。・・・遠坂も何か考えがあるんだろうな」

 

考えてもわからぬと二人は頷き、しばし学園長と会話しながら学園に向かって行った。

 

 

 

 

 

学園到着後は休み前とは変わらない変態の橋の警備だ。

 

そして林冲は槍を片手に扉を守っている。

 

「今日はいつにもまして変質者が多いな・・・」

 

パシュン、パシュンと次々矢を射ながら士郎は困惑の声を上げていた。

 

「やはり百代が居ないからだろうか?」

 

と林冲は心配するが、

 

「いや、どうやらお呼びなのは俺の方みたいだ」

 

そう言って士郎は矢を新たに(・・・)投影した。

 

「あれ士郎、矢はまだ・・・」

 

「いやこれは特別だ」

 

そう言って士郎は新たに投影した矢を番え、放った。

 

「・・・中ったのか?」

 

「ああ。まったく。妙な呼び名がついたからあんな馬鹿が出てくる羽目になった」

 

またもや、はぁとため息を吐く士郎。

 

 

 

~~~~矢を射る前の変態の橋~~~~

 

「神弓の衛宮!見えているならこの牙城を崩してみるがいい!」

 

ガシャン!と身の丈以上の鋭い棘のついた盾を構える偉丈夫。

 

(奴は川神学園から放っている!この盾ならば万が一にも崩されはしない!)

 

そうしてじりじりと学園に迫って行けば無視されることもない。

 

はっきり言えば修行僧と九鬼の餌食なのだがあえて手を出されず泳がされていた。

 

「さぁどうく――――」

 

一瞬の出来事だった。パン!という音と共に首筋に固い矢が突き立ったのは。

 

(まさか!真っ直ぐしか飛ぶはずのない矢を裏から!?)

 

超弾性ゴムでできた矢は盾を越え、急所に突き立つと同時に上からもまたパン!という音と共に降りかかる。

 

「ぐぬ・・・ぬああああ!」

 

耐え切れず偉丈夫は盾を振り払った。その瞬間、

 

ガガ!と額に二発矢が撃ち込まれた。

 

(神弓の衛宮・・・恐るべし)

 

ズズン、と崩れ落ちる偉丈夫。かくして変態の橋に現れた変態は退治されたのであった。

 

 

 

~~~~矢を射る前の変態の橋 終~~~~

 

 

新入生の登校が完全に終わるまで狙撃を続けた士郎は、呼びに来たマルギッテによって弓を下すことになった。

 

「全校生徒の登校が終わりました。体育館で朝礼をするそうです」

 

「了解」

 

スゥっとその手から弓が消え士郎は給水塔の上から降り立った。

 

「今日の射撃も見事でした」

 

「そうか?そう言ってもらえたら俺の弓にも意味があるな」

 

苦笑して謙遜する士郎。ただ、彼の弓への認識は何も変わってはいなかった。

 

「そういえばマルギッテ。凛が2-Sに入るそうなんだが・・・なにか聞いているか?」

 

「遠坂凛が?いえ、特に何も相談は受けていませんが」

 

「遠坂の事だから何か考えがあると思うんだよな・・・」

 

「ここで首をひねっても答えは出ません。入学式を終えたら聞いてみてはどうですか?」

 

「それもそうか。しかし妙な感じだ。遠坂が後輩なんて」

 

「元の世界では同級生だったんだろう?」

 

「ああ。それも高嶺の花っていうか、憧れる子が多そうな女の子だったよ」

 

「それで桜がミス・パーフェクトがまた、なんて言っていたのか」

 

凛や桜も大分、林冲達と馴染んでいた。ただ士郎は警告する。

 

「あいつ、学校では猫被るからな。注意した方がいいぞ」

 

「そうなのですか?」

 

「ああ。それもとびきりのをな。何でも家訓が、余裕をもって常に優雅たれ、らしくてな。それはもう別人みたいだ」

 

士郎は肩を竦めて言った。それでも呪い級のうっかりはどうにもならないのだが、と。

 

「それよりも、遅れないように行こう。マルが呼びに来てくれたってことは、もうすぐなんじゃないか?」

 

「そうですね」

 

「急ごう」

 

三人は体育館へと急いだ。

 

 

 

 

 

『新入生諸君!川神学園へようこそ!』

 

学園長の長い挨拶がそう締めくくられて進行がいよいよ転入生に移る。

 

『新入生に続きまして転入生を紹介します』

 

『では紹介するぞい。二年S組に三人入る。この三人じゃ』

 

並んだのは凛、桜、そしてセイバーだ。

 

「なんだ?また外人さんか?」

 

眠そうにしていた忠勝がびっくり眼で言う。

 

「俺の知り合いでセイバーって言うんだ。やんごとなき出身なんで本名は言えないんだ」

 

「セイバー・・・ね。そういう事なら仕方ねぇが、その名前じゃここの連中を焚きつけそうだな」

 

今のところは金髪美少女キター!と男子が盛り上がっており、女子も、有名絵画のように整った顔つきのセイバーに見とれている。

 

『順に挨拶をしてもらおうかの。まずは遠坂凛!』

 

『はい』

 

壇上のマイクに向かって一歩前へ出る凛。

 

『川神学園の皆さん。そして新入生の皆さん初めまして。私の名前は遠坂凛です。この度こちらの学園にお世話になりに来ました。至らないところもありますがよろしくお願いいたしますわ』

 

『間桐桜です。私も至らないところがあるかもしれませんが仲良くしてくださいね』

 

『私は故あって本名が言えませんので、セイバーとお呼びください。この学園には強者が多いと聞きます。名前の通り剣を振るうのが得意ですのでどうぞよろしくお願いします』

 

三人の挨拶は無難な所だった。唯一セイバーだけが特徴的だったが。

 

「セイバーさんか・・・」

 

「俺ブロマイド出たら買うぞ!」

 

「宴が・・・また盛り上がるな」

 

「セイバー・・・剣士ってことよね」

 

「私手合わせ頼もうかな」

 

等々、意見は様々であるようだった。

 

『セイバーさんは家の事情で名前を伏せておる。クローンではないので失礼のないようにのう』

 

何とか無事に朝の朝礼&入学式はトラブルもなく終えるのだった。

 

「・・・あれ?ヨンパチが静かだな」

 

「猿の事だからまたスリーサイズとか聞くのかと思ったわ」

 

「ふくもっちゃん静かですねぇ・・・」

 

「どうしたんだろう・・・うわあ!?」

 

「~~~~~~!」

 

問題視されていた福本少年は既に梅子の鞭の餌食になっていたのだった。

 

 

 

「はぁ~朝は酷い目に遭ったぜ」

 

「まさか初手梅先生の鞭食らってたなんてな」

 

「福本少年は正直ですからなぁ」

 

「そうだね。・・・って!レオニダスさん!?」

 

「?なんでしょうか師岡殿」

 

「先生も進級っすか?」

 

「当然でありましょう。私は二年F組の同級生。しからば三年生になっても変わりませんぞ」

 

「セイバーさんも気になりますけど、レオニダスさんが居るのも不思議ですねぇ」

 

「甘粕嬢、私は無知な一個人なのです。どうか一緒に学べる場を設けていただきたいですぞ」

 

「あ、いえ、嫌とかそういうのじゃないんですが・・・」

 

「まーよ。気にしてもきっと仕方ないわよ」

 

「チカちゃん・・・」

 

「まぁ頼もしくていいんじゃない系」

 

「体育が怖いぜ・・・」

 

「武闘派ではない俺に筋肉がついてどうするんだ」

 

「福本少年、大串少年。筋肉はあった方がいいですぞ。どんな時も己の鍛えた筋肉は裏切りません。この先使わないことはほぼ無いのですから基礎トレーニングだけでも続けると良いですぞ!」

 

「そうよねぇ・・・私も腰のくびれが出来たし・・・」

 

「レオニダスさんの言う事もわかる系」

 

女生徒にもこの通りだ。相変わらずの人気である。

 

「皆揃っているな」

 

「はーい」

 

「ちゃんといまーす」

 

「うむ。三年生も私が受け持つことになった。今朝のように不届き者には遠慮なく鞭を振るう。よく覚えておけ」

 

「こわいわー・・・」

 

「規律を乱すものは自分も許さないぞ!」

 

「梅先生。今年一年よろしくお願いします」

 

「同じく。よろしくお願いいたします」

 

「真っ当なのは衛宮とレオニダス王だけか・・・」

 

嘆息する梅子。だがその気も新たに、

 

「では出席を取る!呼ばれたものは返事をするように!」

 

梅子の声でHRが始まるのだが、

 

「あれ?誰か足りない気がしない?」

 

「椎名が居ないな」

 

忠勝の言葉にああ、と皆が気づく。

 

「京ならS組に行ったよ」

 

「ああ・・・そういえば直江がSだもんな」

 

「犬のお目付け役がいないんだな・・・」

 

ちらりと寂しそうにしている一子を見るクリス。

 

「まぁ大丈夫だろ。俺がいる」

 

「!うん!」

 

「余計なお世話だったな」

 

そう言ってクリスは笑った。

 

「さてお前達。今日は入学式なので授業などはないが・・・」

 

梅子が何やらごそごそと取り出した。

 

「先生、それは?」

 

「整理券だ」

 

「整理券?」

 

一体何の整理券だろう?

 

「なんだ。セイバーと決闘したいものはおらんのか?折角一番台からもらってきたのだがな」

 

「はいはい!!アタシ一番!」

 

「犬!先生!自分も!」

 

「はっはっは!皆元気が有り余っているようですな!」

 

「はぁ・・・」

 

ただでさえスパルタが侵食しているというのにブリテンまで混ぜ込んだらどうなる事か。

 

士郎は深いため息を吐いたのだった。

 

 

 

 

 

帰り道。今日は予定外の依頼があって帰りが遅くなっていた。

 

「学園は士郎が居なくなってしまったらどうなるんだろうか・・・」

 

林冲の心配も仕方がない事だろう。今日は学園から依頼があったのだ。

 

「そう言うな林冲。学園長も頼みたくて頼んでるわけじゃないんだろうさ」

 

苦笑をこぼして言う士郎。なにしろ、

 

「ああ・・・また旭ちゃんに叱られるわい・・・」

 

と言っていたからだ。

 

「評議会も三年生・・・直江大和に引き継がれたんだよな?」

 

「ああ。ただ、いままでの議長のカリスマがすごかったらしいからな。すぐにとは言わず、OBとしてしばらく支えていくんだそうだ」

 

最上旭は士郎の言う通り評議会をすぐ後にはせず、少しずつ現体制を構築することに東奔西走していた。

 

「武神や松永燕が居なくなったこともあって、学園は少し混乱気味だな」

 

「インパクトが強かったからな。・・・とは言え、現三年生もとんでもないんだけどなぁ・・・」

 

スパルタにブリテンが混ざり合って、こう、化学反応を起こすのではと心配になっている士郎。

 

「そういえば凛の事は分かったのか?」

 

「聞いて来たよ。遠坂めまた揚羽に無理難題を突き付けてからに・・・」

 

その内容とは、安くて質のいい宝石商を紹介してもらう事。

 

「・・・?そんなことでよかったのか?」

 

「林冲。宝石はとても高価で貴重なものだ。それは分かってるよな?」

 

「うん。でも川神学園の三年生にねじ込むよりかは断然楽なように思う」

 

「・・・宝石を学生が定価で買えると思うか?」

 

「あ・・・」

 

何とか資金を調達したとしよう。だがあの赤い悪魔は相当に値切り交渉をすることだろう。

 

最悪、関係が悪化してもおかしくない。

 

「それにな。詳しくは言えないけど、遠坂は宝石が必需品かつ消耗品でな。一つや二つじゃきかないんだ」

 

「宝石をか!?」

 

「だから林冲。遠坂にお金は貸すなよ」

 

士郎は財布の紐をきつくするように釘を刺した。

 

「ただいま」

 

「おかえり」

 

「おかえりなさい、シロウ」

 

「おかえりー!」

 

パタパタとやって来たのは天衣だ。

 

「橘さん?確か新しい寮に移り住む予定じゃ・・・」

 

「私もそう思ってたんだが・・・平日の朝と夕食の時間だけでいいみたいなんだ。島津寮もそんな感じだったし」

 

「なるほど・・・橘さんの脚力なら往復も容易いですしね。でもなぁ・・・やっぱり車、必要だよな」

 

人一人がものを運べる量などたかが知れている。そこで、

 

「史文恭!代理で車買ってきてくれないか?」

 

「代理?予算はお前が出すのか?」

 

「ああ。将来的には二台は必要だろう?俺は学園長に掛け合って免許取得できないか聞いてみるからさ。清楚は今通ってるんだっけ?」

 

「そうだな。天衣は運転しろと言っても「無理無理!!!」この有様だからな。いいだろう。車種はどうする?」

 

「何かって言うと荷物や人が乗れた方がいいしファミリーカーがいいと思う」

 

「わかった。手配しよう。送迎くらいはしてやるからそれまでその脚力でどうにかしろ。天衣」

 

「朝早いんだが・・・いいんだろうか?」

 

「構わん。基本鍛錬で朝早いからなこの家は。私も朝は早い。万が一用に車にも慣れてもらわんとな」

 

「わわ私が車を運転なんて・・・走った方が早「荷物は?」ううー・・・」

 

「まぁ万が一だ。免許は?」

 

「・・・持っていない」

 

「そういう事なら一緒に通いましょう。橘さん」

 

「それがいいだろうな。代金は即金だろう?」

 

「ああ。その分色々と交渉してくれると助かる」

 

「大きな買い物を即金だ。向こうも張り切るだろうさ」

 

そう言ってヒラヒラと振って史文恭は去って行った。また書斎だろう。

 

「私が車を運転する時が来るなんて・・・」

 

「いいじゃないか。ドライブとかきっと気持ちいいと思う」

 

「林冲・・・うん。がんばるぞ!」

 

思案顔から笑顔を取り戻した天衣に士郎と林冲も微笑みかけた。

 

 

 

 

 

 

家に入るとセイバーと桜がお茶をしながらテレビを見ていた。

 

「あ、先輩」

 

「改めて、おかえりなさいシロウ」

 

「ただいま。何を話してたんだ?」

 

「はい。実は同級生が早速セイバーさんに決闘を申し込んで・・・」

 

桜の言葉に士郎はカクリと肩を落として、

 

「手加減してやったんだよな?」

 

「もちろんです。一撃で決着がついてしまいましたが、中々骨のある女生徒でした」

 

「確か武蔵小杉さん・・・でしたね」

 

「そうです。モンシロがムサコッスなるあだ名で呼んでいました」

 

「なんだそれ」

 

ムサコッス。一体何者なんだ・・・

 

過去にレオニダスが迫力だけで撃退したのは懐かしい出来事だ。

 

「そういえばうちの先生・・・小島梅子先生がセイバー用に整理券渡してたぞ。大丈夫なのか?」

 

「それでしたら問題ありません。テッシン・・・学園長から先に言われていましたから。なんでも、ヨシツネの時の教訓だとか」

 

「あー・・・なるほど。それで最初から統制することにしたのか」

 

あの時も中々の混乱の中九鬼が間に入って何とかしていたのだ。

 

「だとすると、しばらくセイバーは決闘詰めだろうな」

 

「先輩、そんなに決闘が起こるんですか?」

 

「川神学園はそれが特徴の学園だからな。武力だけじゃなく知力や遊びも決闘化することがある」

 

あくまで白黒つける制度なので種目はなんでもありなのだ。

 

「桜も気をつけないとな。その内決闘に巻き込まれるだろうし」

 

「怖いですね・・・」

 

不安そうな顔をする桜だが士郎は、

 

「大丈夫。お互いに了承が無いとまずならないから」

 

だからエンブレムはしっかりと隠すんだぞ、と遠い目をして言う士郎であった。

 

 

 

――――川神学園の入学式はこうして終りを告げた。波乱の満ちた毎日に身を投じる新一年生と新二年生と凛たち。百代達のいなくなった学園は今だ賑やかさを失わず。一日一日刺激を受けて前に進むのであった。

 

 

 




あれ?沙也佳ちゃんとかあずみさんの事とかもっと書こうと思ったのに書けてない…無念。

と、そんなこともありましたが無事入学式編です。遠坂の宝石商の話はとってつけたわけではなく、あの大粒のルビーとか絶対専門店だよなぁと思って追加しました。二年生というわけで彼女達もこの不思議な学園にもまれることでしょう(笑)

次回こそは沙也佳ちゃんとあずみに関して書きたいですね。それでは次回!
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