真剣で衛宮士郎を愛しなさい!   作:Marthe

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毎回サブタイトルがネタバレ感あって申し訳ないです。

今回は例の如くドイツの親ばか軍人が出てきます。


ドイツ軍人

目を閉じ、手に馴染む夫婦剣を持ち立つ。

 

構えはなく。両腕はだらりと下げられたまま。

 

―――イメージする。己の人生で出会った最速を誇る英霊。呪いの朱槍を携えた因縁の相手。

 

 

目を開く。

 

相手が動く。さながら閃光のような刺突を両の手に握られた夫婦剣で迎え撃つ―――!

 

双剣が閃く。槍を防ぎ、弾き、逸らす。ひたすらに双剣を振るう。

 

上下左右―――

 

叩きつけられる一撃を双剣を交差することで受け反撃に槍を蹴り上げる。

 

蹴り上げられたことで体制が崩れたはずの相手は槍を高速で引き戻し横薙ぎに一閃。

 

それをバックステップで躱し―――そのまま槍ごと体を回転させこちらの領域を侵略する槍を弾き返す。

 

距離が開く。それは彼ならば一息で詰めることのできる距離。未だ槍は自分を射程内に収めている。

 

先ほどよりも数倍速い刺突が迫る。それまた躱す、弾く、逸らす

 

優雅さは無く。華やかさは無く。ただ武骨に鍛え上げられた剣が舞う。

 

冷静に。冷徹に。迫りくる必殺の一撃を双剣を手に捌き続け―――

 

 

 

「―――」

 

 

 

ピタリと彼の動きが止まる。

 

呼吸を忘れていたかのように体は酸素を求め、酷使され生じた熱を冷却しようと汗を流す。

 

「・・・負けか」

 

そう呟いて彼はピタリと止められた双剣を下す。

 

この地に来て二月。日課となった鍛錬はいつも衛宮士郎の敗北で幕を閉じる。

 

そうして改めて実感する。あの七日間はまさに奇跡の連続だった。今でこそ振るえる双剣も当時はガワだけの玩具に過ぎず。何のために戦うのか。何のために剣を振るうのかすら定まらない小僧が。

 

よくもまああの死地を潜り抜けたものだと思わずにはいられない。

 

「・・・感傷だな」

 

一つ頭を振って呼吸を整える。世界を渡り歩いたことはあるが世界を通り抜けた(・・・・)のは初めてだ。これもホームシックと呼べるのだろうか。

 

ふうっと両手に握られた夫婦剣が消える。そして彼は取り合えず見つけた衛宮邸に似たごく普通の家の庭を後にする。

 

そして向かうのは土蔵。残念なことにこの物件には土蔵がなかったのだが後から建造したそれに向かい、厳重にかけられた鍵を外す。

 

一面のブルーシート、それをまくり上げ、

 

同調、開始(トレース・オン)

 

何も映らぬ地面に魔力を流す。そうして現れたのは土蔵の地面を覆う魔法陣。最近わかった霊脈から魔力を吸い上げ、近く、遠い何処かへと魔力を送る。

 

本職の魔術師からすれば無駄もいいところの魔力を発信する魔術。本来であればそんなことをすれば本来潜むはずの自分の位置を教えるようなもの。だがこの術式は少し用途が異なる。

 

―――それは、第二魔法の運用

 

その一部を刻んだ術式。衛宮士郎に第二魔法は使えない。こと剣に特化している彼にそんな奇跡は発現させられない。

 

だが、一度見た術式。それも念入りに、これ以上ないほど詰めに詰めたのだから詳細は頭の中に叩き込まれている。だが、こともあろうにあのうっかりは―――

 

『繋がった!繋がったわ!』

 

『本当か!?』

 

『おめでとうございますリン』

 

『おめでとうございます姉さん!』

 

ついに第二魔法、その(一端だが)を成功させたことに歓喜すると遠坂と一同。長かった研究もこれで報われると。予算と予算と予算とたまに犠牲(士郎)が報われると思ったのだが―――

 

『あの・・・開いたままなのですが、どこへ繋がったのですか?』

 

『・・・あ』

 

やっちまったとでもいうような声を皮切りに、周囲を巻き込むように急速に収縮を始めるそれに巻き込まれそうになった当の本人(遠坂凛)をとっさに突き飛ばし―――

 

『シロウ!』

 

セイバーの悲痛な叫びを最後に彼はこの地へと叩きつけられたわけだった。

 

「今日も応答なし・・・か」

 

はぁ、とため息をついてブルーシートを掛け直す。

 

門外漢である彼にはこの方法であっているのか、そもそもこれは意味のある事なのか判断はつかない。

 

しかし、彼にできるのはこうして第二魔法の術式を使用し己の魔力を何処かもわからないところに打ち上げその存在と座標となる導を発信するしかない。

 

運が良ければ今頃必死になっているだろう(でなければ困る)遠坂に届くか、キャッチしてもらい、迎えに来てもらう他ないのだ。

 

「そろそろ夜が明けるな」

 

明るくなってきた空を見て今日も一日の始まりだ。と屋敷に戻っていく。こうして彼の日常は幕を開ける。皮肉なことに、それが自分の望んだ平和な時間だということに気づかぬまま―――

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、状況を説明してくれるのかね?」

 

嫌味をたっぷりと込めて隣に座る赤髪の女性。マルギッテに問う。

 

「無論です。貴方をある人物に会わせるのが今回の任務です」

 

「・・・君が軍人で、任務なのはわかるがな。私はただの一学生で今日は通常通り登校日なのだが」

 

「御冗談を。天下五弓の椎名京を下し、武神・川神百代と渡り合う貴方が一般人?とんだ笑い話だ」

 

ビリビリと車内を支配する。ちなみに運転しているのは彼女の部下らしいが、後に彼女は二度とあんな状況はごめんだとコメントしている。

 

「手荒な真似はしません。貴方には私の上司とあって頂くだけです」

 

「手荒もなにもこうして車内に問答無用で押し込められている時点で手荒だろう・・・ドイツには礼儀というものが存在しないのかね?」

 

「ッ・・・・!!!」

 

ビキリとマルギッテの額に青筋が浮かぶ。祖国ドイツを侮辱されて今にも一触即発の雰囲気である。

 

「・・・そう言う貴方は年上に対する礼儀がなっていないようだ」

 

「はて、君は私と同学年の2-S所属の留学生ではなかったかな?多少の違いはあるが、対等な立場だと思うのだが」

 

もはや売り言葉に買い言葉状態である。マルギッテはそれはもう今にも射殺さんばかりの殺気を向けているが士郎はどこ吹く風。皮肉気な笑みすら浮かべている。

 

(ヒィ――早くついてください!!!!)

 

内心悲鳴を上げる運転手の心しらず車は走る。

 

「と、言葉遊びはこのくらいにして・・・もう少し情報が欲しい。君の上司とは?」

 

「っ・・・・フランク・フリードリヒ中将です。クリスお嬢様の御父上であり、私の上司になります」

 

上手く乗せられた自分に屈辱を感じながらそう答える。

 

「中将殿・・・そんな人物が私に一体何の用事だというのだ。わざわざ学校をサボらせてまで」

 

「学園には連絡済みです。具体的な内容は私にもわかりません。ただ中将はお忙しいのでこの機会しかなかった」

 

「・・・まさか、お忍びで来日しているのか?」

 

ますます意味が分からないと士郎は頭を振る。中将ともなればそうそう軍務を離れて他国へなど来られないだろうになぜそんな手間をかけてまで。

 

「とはいえ、こうして車に乗せられている時点で私に拒否権はない。精々、初めての旅行を楽しむとするさ」

 

そうして窓枠に頬杖をついて外を見る。景色は全く見慣れないものに移り変わってしまっている。はてさてどこまで連れていかれるのやら―――

 

 

 

「着きました。ここです」

 

そうして結構な時間車に揺られてついたのはなんと箱根の旅館だった。

 

「これは随分・・・」

 

高そうな旅館だな、という言葉を飲み込む。なにせ軍の中将との面会ともなれば選ばれる場所も相応の場所だろう。

 

「いらっしゃいませ」

 

「お世話になります」

 

恭しく礼をしてくれる女将にこちらも頭を下げる。

 

そして案内された先にいたのは―――

 

「やあ。君が衛宮士郎君だね。遠い所ご苦労だったね」

 

黒い軍服を着た壮年の男性だった。

 

「初めまして。衛宮士郎といいます。」

 

そう言って礼をする。歳は40代後半といった所か。ぴしりとした佇まいに本場軍人の気配。これは難敵だぞと内心思う。

 

 

「どうぞ楽にしてくれたまえ。今回は急に呼び出して悪かった」

 

「いえ、学園への手続きもしていただいたようですしこんな立派な所に連れてきていただいて感謝しています」

 

特に後ろめたいこともないので通常通り挨拶する。―――流石に、ドイツ軍中将を敵に回すのは避けたいところだ。

 

「・・・うむ。その佇まい。乱れぬ姿勢。こうして私と話す胆力。学生にしておくのは惜しいな」

 

「中将殿にそう評価してもらえるとは、恐縮です」

 

話してみればそこまで険悪ではない。娘さんをコケにした仕返しにでもきたのかと思ったのだがそうでもないらしい。

 

「一応君のことを調べさせてもらった。もちろんプライベートなことは控えさせてもらったが・・・いささか気になることがあってね。こうして君と直接会うことにしたのだよ」

 

「はぁ・・・気になることとは?」

 

自分のことを嗅ぎまわっている輩がいるのは知っていた。それはそうだ。こんな一切経歴の存在しない人間がこの世にいるわけがないのだから。だが、そこは曲がりなりにも魔術使い。疑われはしても立証できない程度にはしたが―――

 

「短刀直入に聞こう。君はクリスを・・・娘のことをどう思っているのかね?」

 

「は?」

 

思わず士郎はポカンとしてしまった。

 

(娘のことをどう思っている・・・?なんだ?何が聞きたいんだこの人)

 

思わず素で思考してしまう士郎。だがとりあえず無難な返答をしておくことにする。

 

「失礼。初めこそよくない出会いでしたが、今では良い同級生だと思っていますよ」

 

「そうだったね。あれはクリスの抑えきれぬ遊び心といったところだろう。君には大変失礼をした。クリス共々謝らせてもらうよ」

 

「いえ、もう過ぎたことですから・・・」

 

さっぱり状況の読めない士郎。幾千の戦場を渡り歩いた彼だがここまで意図の読めない対談は初めてである。

 

「それで君はクリスのことをどう捉えているのか教えてほしい。―――なにせ留学をさせている身なのでね娘の近況をよく知りたいのだよ」

 

(言葉は違うが聞いていることは同じじゃないのか!?)

 

思わずツッコミを入れたくなる士郎。

 

「そうですね・・・私はクリスティアーネさんとはあまり接点を持たないのですが・・・他国という環境にめげずに頑張る笑顔の素敵な娘さんだと思いますよ」

 

「ふむ。それで」

 

(接点がないと言っただろう!他に何を話せというんだ!)

 

もういい加減にしてくれと頭を抱えたくなる士郎。かくなる上はこちらから聞くことにする。

 

「失礼ですが・・・フリードリヒ中将のお聞きになりたいことが私にはわかりません。貴方は何を聞きたいのですか?」

 

ピクリと後ろに控えるマルギッテが反応する。

 

「・・・そうだな。君には話してもいいだろう。クリスは美しい。ドイツの宝だ。それ故によくない虫をおびき寄せてしまう」

 

そうして語られたのは如何にクリスが美しくそれ故に男を引き付けてやまないのかをこんこんと説かれた。

 

(つまり娘に恋人ができないか心配なのかこの人)

 

みっちり一時間聞かされてようやっと理解に至ったのはなんとも馬鹿らしい親バカな一面だった。

 

「それで改めて聞きたい。君はクリスのことどう思っているのか」

 

(接点ないって言ったよね!大丈夫かドイツ軍!)

 

本当に頭を抱えたくなる士郎。大体にして話しかけようとする度にそこのマルギッテが殺気を飛ばして警告してくるので満足にコミュニケーションを取れなかったのだ。

 

(そうだな・・・)

 

:仮定1

 

『クリスティアーネさんとは同級生ですが恋愛感情は持っていませんよ』

 

『それはクリスに一切の魅力がないということかね?』

 

バン!

 

(!?)

 

目の錯覚か・・・何故か銃で撃たれる未来が見えた。

 

:仮定2

 

『クリスティアーネさんはとても魅力的な女性ですね』

 

『貴様のような得体のしれない男にクリスはやれんな!』

 

バン!

 

(!!?)

 

おかしいな。また撃たれる未来が見えた。

 

(というかどっちで答えてもこの親バカは撃ってくる・・・アレ?詰んでないか!?)

 

この超ド級の子離れできない親バカを一体どうやっていなせばいい!?

 

考えに考え、どうやっても回避不可能な死(道場行き)を衛宮士郎はかつてないほど思考を回転させてこの場を凌ぐ方法を考える。

 

大丈夫だ!俺には心眼(真)Bスキルがある!窮地だ!発揮しろ俺!

 

(残念ながら鈍感(超ド級)のスキルを保有してるから無理だにゃ~)

 

(黙れ!この万年愉快犯の穀潰しが!!!)

 

僅かに見えたなにやら虎の毛皮を纏った女性に心の中で罵声を浴びせ、

 

ふっと。真っ赤な美しい髪が目に入った。

 

(これだ!!!)

 

活路を見出した士郎はその言葉を口にする。

 

「クリスティアーネさんは大変魅力的な女性だと思いますが・・・」

 

「・・・・ふむ」

 

「私としては、そこにいるマルギッテさんの方が魅力を感じますね」

 

「・・・は?」

 

虚を突かれたようにそれまで不動だったマルギッテが狼狽えた。

 

「え、衛宮士郎それはどういう―――」

 

「言葉通りの意味ですが。美しい赤髪。凛とした佇まい。そして時折みせる可愛さが私はクリスティアーネさんより素敵だと思います」

 

(巻き込んだのはお前だ!責任を取れ!)

 

内心は車内の言葉遊びの延長線上のつもりで言う士郎。

 

「か、可愛い?私が・・・?」

 

(・・・アレ?)

 

罵倒の一つでも飛んでくるのかと思いきや、なにやら呆然としているマルギッテ。

 

「そうか!うむ!マルギッテは私の部下の中でも飛び切りの美人だからね。彼女に見惚れるのも無理はないな」

 

「ちゅ、中将!?」

 

「いや疑ってすまなかった。そういうことならば私は応援させてもらうよ。マルギッテも私の娘のようなものでね・・・っと続きは風呂に入りながらでも」

 

「えっとはい・・・」

 

(アレ?間違えた?え?アレ!?)

 

大混乱に陥る士郎。本当ならば、「誰がお前のような奴に!」とか、「私と貴様が釣り合うとでも?」とかそういうのを想定していた士郎。

 

同じように混乱するマルギッテをそのままにフランクと士郎は室内を出る。

 

(・・・やっちまったかもしれん)

 

と遠い目をする士郎。その目に映るのは風を巻き上げフル武装のセイバーと、笑ってない笑顔で微笑む赤い悪魔。そして―――なぜか。真っ黒に染まった桜の姿が―――

 

(―――ふん。理想(フラグ)を抱いて溺死しろ)

 

ゴミムシを見るかのように吐き捨てる赤い弓兵の姿が映った。

 

 

(てめぇにだけは言われたくねぇーーー!!!)

 

と、どこかで人類の救済をしているだろう背中に叫んだ。

 

 

 




親バカドイツ軍人と飛ばされた経緯など書かせていただきました。

飛ばされた経緯については単純明快で、第二魔法(一部)を成功させたい!→世界の壁に穴を開ける!→そこから魔力を持ってくる!というHFを見た方ならばわかる流れなのですが、肝心の座標を指定していなかったので無作為に穴が開き並行世界というくくりではない所に穴を開けてしまったという感じです。そして士郎は付き合わされた研究の一部を使ってSOSの信号弾を毎日打ち上げている感じですね。

そしてこの親バカドイツ軍人に関しては気持ち悪いかもしれませんが相当にニヤニヤしながら書かせてもらいました(笑い)私個人としてマルギッテさんはちょろい所があるということと、エミヤ口調のやり取りからのギャップ、そして今後の予定で落ちてもらう予定です(確定)というかクリスに接触するたびに殺気飛ばしているということは常日頃から彼を陰から観察しているわけで・・・

フランクの問いがさっぱりわからないのは衛宮さんお得意の鈍感スキルの発動です。大和は鈍感系主人公ではないので展開がすぐに行きましたが、我らが衛宮士郎はそんなものお空の彼方においてきてしまったのでフランクの意図が読めませんでした。

感想いつもありがとうございます。皆様本当にfate、マジ恋好きなんだなぁ・・・うれしいなぁと見させてもらってます。fateもマジ恋も私が作ったものではありませんけれど、同じものが好きな皆様と一緒に頑張っていきたい所存です。
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