真剣で衛宮士郎を愛しなさい!   作:Marthe

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皆さんこんばんにちわ。スマブラがやりたい作者です。

今回も旅館の話になりそうです。葵ファミリーもあまり出ていなかったのでしっかり書いていきたいですね。

では!


堪能

英雄達とズマブラで遊んだ後、葵ファミリーを除く風間ファミリー+αは女子部屋で旅館の心づくしを頂いていた。

 

「ぐまぐま!ぐまぐま!」

 

「ワン子、そんなに慌てて食べると喉につっかえるぞ」

 

「平気よ!あれもこれも美味しいわ~」

 

「今回、料理もすごい気がするね」

 

「そうなのですか?もしや、九鬼でシロウが料理を振る舞ったからではないですか?」

 

「その可能性あるね。九鬼は貪欲だから」

 

「・・・あれもこれも俺のせいにされても困るんだが」

 

と、当の本人は苦笑い。だが士郎もなにか感触の違いを感じ取っていた。

 

(英雄が来ているからか?なんだか無料券にしては豪華だな)

 

「まぁ前もこんなだったし九鬼系列は外れが無いね」

 

「だなぁ。この前な?依頼で準備された宿に行ったんだが・・・それはもう酷かったぞ」

 

一応護衛依頼自体は達成したそうだが、もうその相手とは依頼を受けないことにしたんだそうな。

 

「浮気も襲われもしてないから大丈夫だぞ?」

 

「何の確認だよそれは・・・」

 

「ナニが、だよね」

 

「京?」

 

「なんでもない。はい貴方。あーん」

 

「あーん・・・」

 

「ずるいぞ京!ほら大和!あーん!」

 

「まだ食べてるぞ」

 

「ぐぬぬ・・・次は自分だからな!」

 

「士郎~あーん」

 

「・・・いつもと変わらないじゃないか」

 

適当に刺身を口の中にそっと入れてやる士郎。

 

「むふー」

 

そしてこのドヤ顔である。

 

「む・・・」

 

「先輩!あーん!」

 

「行きますよ!松風!」

 

「おっしゃー!いけーまゆっちー!戦じゃー!」

 

桜と由紀江がこぞって自分の口元に料理を運んでくるので、

 

「もがもが・・・」

 

口の中がいっぱいな士郎。

 

「・・・なんだか自分達があさましいな」

 

「!?クリスがまともなことを・・・」

 

「おい今のどういう意味だ!」

 

「彼女いない組は肩が狭いなぁ・・・」

 

「組も何もモロとキャップだけじゃね?」

 

「そういうとこだよガクト!」

 

「俺は興味ねぇなー・・・うん!美味い!」

 

「なによみんなして」

 

「リンは加わらないのですか?」

 

「誰があんなピンク色の世界にいくもんですか!」

 

「だ、そうです。シロウ」

 

「ピンク色ってなんだ?遠坂」

 

「なんでもないわよ!!」

 

「おおう・・・わかった。わかったからガンドはやめろ、な?」

 

「ったく。なんで私こんな奴を・・・」

 

「なんか言ったか?遠坂」

 

「なんでもないっつうの!!」

 

バキューン!

 

「ぐわあ!?」

 

「姉さん!?」

 

「遠坂さーん!?」

 

撃ち殺されたかに見えた士郎であったが、

 

「・・・あれ?」

 

「!?」

 

士郎は至ってぴんぴんしていた。

 

「確かにガンド食らったよな・・・」

 

「もぐもぐ・・・士郎は私と同じで状態異常系は効かないぞ」

 

「なんでよ!?魔術よ!?」

 

「耐性がつく鍛錬してたから・・・」

 

「頻繁に撃っていたのが仇になりましたね。リン」

 

と我関せずと食事を進めるセイバー。

 

「お前はどこぞのバーサーカーか!」

 

ブン!ひょい!

 

「危ないぞ遠坂」

 

「キー!」

 

「なんか見覚えのある光景だな」

 

「そうそう、クリスもこんな感じで・・・」

 

「うわあ!?京、言わないでくれぇ・・・」

 

なんて懐かしい話を語ったりする。とても穏やかな食事会だった。

 

 

 

 

 

食事が終われば風呂だと一目散に露天風呂へと突撃する一同。

 

「あー染みる―・・・」

 

「士郎、また古傷増えたんじゃない?」

 

「まぁな。やばいのは宝具で治してるけど最近はもっぱら瞬間回復だからなぁ・・・」

 

瞬間回復はあくまで細胞の活性化なので治るとしても通常に治るのと大差ない。ただ、細胞分裂の回数は限られているというが、その辺どうなっているのか不思議な技である。

 

「ふふーん。これで士郎も私と同じで、いつまでも若いままだな」

 

「そう言えばそういうのもあったか」

 

風呂の仕切り越しに百代が言う。気とは本当に不思議な力である。

 

「所でシロウ、大和達はいないのですか?」

 

「そっちを覗きに行ったぞ」

 

「え!?」

 

「あわわわ!」

 

「百代、探知できるだろ?」

 

「ああ。風呂に入った時からやってる。私の裸を見ていいのは士郎だけだからな」

 

「はいはい。で?位置は?」

 

「むー、適当に返すなよぅ・・・えーっとなんだ?サウナ室か?」

 

「当り。そこで説教中」

 

「なんでまたサウナ室なんだ」

 

「ここの女将さんにバレて、いかついお兄さん達につれて行かれたから知らない」

 

ふーと静かな男湯を堪能する士郎。

 

唯一覗きにいかなかったモロもゆっくりと息を吐いている。

 

「俺の古傷もだけど、モロも大分筋肉ついたな。逞しいぞ」

 

「!」

 

「そりゃあ定期的に体育してるし・・・最近ボイストレーニング始めたんだ」

 

「へぇーなに、モロ、歌手にでもなるの?」

 

一子が意外そうに言う。しかしそうではないらしく、

 

「ううん。演劇部に最近入って・・・発声の練習してるんだ」

 

「モロは女の子もいけるからね。ありだと思います」

 

京がすかさずOKを出すが凛たちは何のことかわからない。

 

「師岡君って女装が趣味なの?」

 

「ち、違うよ!?」

 

「モロは卓世ちゃんていう別側面があってだな・・・」

 

「女装すると女の子に見間違われる」

 

「だから、女装が趣味じゃないよ!?ねぇ聞いてる!?」

 

「そう・・・士郎、友達は選ぶのよ」

 

「なんだその親目線は。モロの変装は大したものだぞ。非合法組織を潰しに行った時、なんの違和感もなく潜入出来たからな」

 

「あら・・・それはちょっと見てみたいわね」

 

「卓世ちゃん入りまーす!」

 

「入らないよ!絶対やらないからね!?」

 

「とか言ってニコニコ笑顔で女装するモロ・・・」

 

「話聞いてよ!?」

 

「お、いい感じに男してるな?」

 

「なんだ、もう出て来たのか」

 

サウナ室で説教を食らっていたガクト達が戻ってきた。

 

「目の保養になるはずが・・・」

 

「むさ苦しい空間だった・・・」

 

げっそりとした表情のガクト達。

 

「ガクトは分かるけど、なぜそこにいつもキャップがいるのか分からない」

 

「ホントだよね・・・」

 

「だって楽しそうじゃん!こう、メインイベント的な?」

 

「疑問形じゃないのさ・・・」

 

「大体、今の百代達の目を欺けるはずが無いだろう?」

 

「念のために気の探知しててよかったわー」

 

「気配ならいくらでも追えます」

 

「わ、私は士郎先輩なら・・・」

 

「あら、面白いことを言う娘がいますねぇ・・・」

 

「ピャ!?」

 

「この!これで先輩を誘惑したんですか!このこの!」

 

「桜さん、やめてくださいー・・・!」

 

「あー・・・桜。その辺にしといてくれ」

 

「だって!」

 

「男湯にもダイレクトアタックしてるから」

 

静かに水風呂へ去って行くガクト達を見ながら士郎は言った。

 

「士郎はたたないのか?」

 

「セクハラ禁止!」

 

「あいたー!」

 

「・・・。」

 

「エッチなのはNO!」

 

「妹よ~まだ女の子なのはワン子だけだぞ?」

 

「お、おおおお姉さま!?」

 

「だからやめろというのに・・・」

 

率先してセクハラをする百代であった。

 

 

 

 

夜。土産物を下見すべく歩いていた士郎だが、

 

「「あ」」

 

あずみとバッタリ出くわした。

 

「~~~~~ッ。」

 

「狙ってない。狙ってないからその拳は下せ!」

 

ボカ!

 

「振り下ろせとは言ってない!?」

 

叩かれた頭を痛そうに摩る士郎。本当に、この女性の恥ずかしがり方には体を張る必要がある。

 

「・・・(クイッ)」

 

「はいはい。お付き合いしますよ」

 

バーのような場所があり、そこにつれて行かれる士郎。

 

「ようこそお客様。なにになさいますか?」

 

バーテンダーが恭しく一礼する。

 

「黒糖焼酎。ロックで」

 

「川神水を」

 

「かしこまりました」

 

カラン、とグラスに氷が入れられる。

 

「さ、最近どうよ」

 

唐突にどもった問いかけだった。

 

「最近もなにもよく九鬼へ行っていただろう?変わらず、鍛錬の毎日だよ」

 

先ほども飲んだ(クリス達が暴れるだけ暴れて寝た)川神水を一口飲んでそう答える。

 

「・・・あたいが言うのもなんだけどよ。その、辛くねぇか?」

 

「んー元から鍛錬はしていたからな。あずみは辛いか?」

 

「・・・あたいは」

 

複雑そうな顔を見せるあずみ。

 

「あの状態は他の奴に見せたくねぇ。お前にしか・・・みせたくねぇ」

 

カラン、とグラスが鳴る。

 

「そっか。そう言ってもらえて嬉しい。俺もあんなあずみは他の奴には見せたくないな」

 

「「だから」」

 

互いに視線が合った。

 

「もっと強くなりてぇ」

 

「ああ。そうだな」

 

ゴクリと川神水を一口。状態異常無効化を会得した自分では意図的に酔わなければ酔えない。酒を飲んだら酔う。そんな当たり前を失って初めてわかる寂しさ。

 

「・・・なぁ」

 

「ん?」

 

「あたいを嫁にして・・・後悔してねぇか・・・?」

 

いつになく弱気だった。

 

「後悔なんてない。どうしたんだ?何かあったか?」

 

「英雄様の嫁さんが決まりそうでよ。ちょっと感傷に浸ってる」

 

「・・・。」

 

「お前はすげぇよ。気の開放なんか無くたってあたいには過ぎた男さ。だから、心配になっちまう」

 

いつか、この手を手放して何処か遠い所へ行くのではないかと。

 

「マル・・・マルギッテの両親にさ」

 

「・・・。」

 

「言ったんだ。俺は家族の味方になるって」

 

「・・・正義の味方は廃業か」

 

「そういうわけじゃない。誰もが当たり前に取る行動って奴だよ。それすら俺には無かった。正義の味方は味方した方しか助けられない。だから俺は――――」

 

家族を守る正義の味方になるのだと。士郎は言った。

 

「・・・。(なんだ・・・そういう顔も出来るんじゃねぇか)」

 

何故かは知らないが、自分も安心できる顔だった。

 

「マスター。黒糖焼酎ロックで二つ」

 

「・・・よろしいので?」

 

「こいつは特別だよ。大丈夫だから出してくれ」

 

「かしこまりました」

 

「おいおいあずみ・・・」

 

「お前、ほんとはあたいと同期だろ。嫌とは言わせねぇぜ」

 

「・・・仕方ないな」

 

ほんのり温かい空間に二つの(いろどり)が加えられ、

 

「「乾杯」」

 

チン、とグラスが鳴った。

 

 

 

 

夜は明け。川神水で酷いことになった子らも目を覚ます。

 

「いやー昨日はなんだかはしゃいでしまったな」

 

「(あれではしゃいだ・・・?)」

 

死屍累々だったような気がする士郎。

 

「おはようございます。士郎君」

 

「おはようなのだー」

 

「おはよう。昨日の借りは今日返すぜぇ」

 

「いきなり威嚇してくるな、井上」

 

実を言うとこの男が宿泊しているのでランサーは自由に旅館内を歩けずにいた。

 

『大丈夫です。こうしてサクラと居られますから』

 

と、昨夜はそう言っていたが本当のところどう思っているのだろうか。

 

「士郎君はなにか予定があるのですか?」

 

「ああ。俺たちは釣りに・・・」

 

「一緒!なのだー!」

 

「こらこら待ちなさい雪。ゴホン。俺達も釣りに行くところなんだけど一緒にいかないかね」

 

「・・・いいけど、みんな来てからな」

 

「それは良かった。どうです?皆さんが来るまであちらで飲み物など・・・」

 

「井上と榊原も一緒ならな」

 

「もちろんです(フラれましたね)」

 

「朝から快調だなー若」

 

「?準も今日は快調だよー(キュッキュ)」

 

「無造作に頭をキュッキュするのやめなさい!」

 

なにはともあれ士郎は葵冬馬達と席に着いた。

 

「いらっしゃいませーなににしますか?」

 

「ウーロン茶を」

 

「俺達も同じのでいいよな」

 

「えー・・・炭酸が飲みたいのだ」

 

「じゃあサイダーね。ウーロン茶三つとサイダーをください」

 

かしこまりましたーとウェイターが下がっていく。

 

「で?そっちはどの辺で釣りする気だったの?」

 

「芦ノ湖で手ぶらでできるっていう所にするつもりだった。ほら、この辺の・・・」

 

「へぇ・・・意外と通じゃん。なかなかに穴場だぜ、そこ」

 

「そうなのか?」

 

キャップが探し出してきたので士郎はあまり詳細を知らない。

 

「私達も同じ場所に行くんです。士郎君もどうですか?」

 

「さっきも言ったけどみんなが来たらな」

 

「(手堅い守り・・・こりゃ若の黒星かね)そんで、そのみんな、ってのは?」

 

「今、身支度中だよ。昨日どんちゃん騒ぎになってな」

 

言外に時間がかかると士郎は言った。

 

「まぁいいんじゃね?こっちも急いでないし。予定もその都度決めるつもりだったし」

 

「そう言えば英雄が居ないな。一緒じゃないのか?」

 

「英雄は何かの会談に行きましたよ。夜にはまた合流するはずですが」

 

「そうなのか。それで付いてきた葵達も予定が無い・・・ってとこか?」

 

「当り!マシュマロ食べる?」

 

「もらっておくよ。ありがとう」

 

と士郎は笑顔で言った。

 

「・・・。」

 

「雪?」

 

「君、友達多そうだねー」

 

「?いや、友好関係はそれほどでも・・・」

 

ある、のだろうか?正直嫁が多すぎて嫁の関係者とか言ったらすごいことになりそうである。

 

「お待たせしました!ウーロン茶三つとサイダーです」

 

「ありがとうございます。(サッ)」

 

「ごゆっくりどうぞ~(サッ)」

 

「・・・。」

 

士郎の目には交わされた白い紙が見えたがそ知らぬふりをした。

 

「それで何狙い?」

 

「それはもちろん――――」

 

それからしばらくは葵冬馬達と会話を楽しんだ。

 

 

 

 

 

 

 

飲み物が無くなる頃、やっと身支度の終わったファミリーが姿を現す。

 

「お待たせしました、シロウ」

 

「お待たせー!」

 

「待たせたな」

 

「ガクト、似てない」

 

「あれ?葵冬馬・・・先輩?」

 

危うく呼び捨てにしかけた凛だが何とか持ち直した。

 

「なんだなんだ?なんで士郎が葵と一緒に居るんだ?」

 

随分ないい口に士郎は、

 

「お前達が準備に時間がかかったからだよ。葵達も同じ場所で釣りするらしいぞ」

 

どうする?と視線で問う。

 

(いいじゃないか)

 

(実力の差を見せてやろうぜ!)

 

「じゃあ今日はよろしくってことで!」

 

ガシ!

 

「ええ。お手柔らかに」

 

バチバチと稲妻が走った気がする。

 

釣り、という事でセイバーもいつものお嬢様服ではなく活動的な服装だった。

 

「どう?衛宮君。感想は」

 

凛や桜も普段とは違う服装だ。凛が活動的なのに対し、桜は春の日差しを上手く取り込むような服装だった。

 

「ああ。みんな似合ってる」

 

「シロウ・・・!」

 

「士郎先輩・・・」

 

「セイバーさんは分かるけどまゆっちはいつもと同じじゃ・・・」

 

「そういうとこは見逃すんだよ空気読めやクリ吉コラ」

 

「!?今松風がバグったぞ!?」

 

「オラがバグったりするわけねーべ?」

 

「はいはい。乗るぞー」

 

まるで引率の先生かのように指示を出す士郎。

 

(しっかしこの子たちは放っておいたら何処まで行くんだろう・・・)

 

葵冬馬たちはきちんと統率が取れているのだが・・・

 

「まぁいいか」

 

自分が引率すれば問題なかろう。

 

という事で釣り場に到着。

 

「さあ釣るぞー!」

 

「おー!」

 

「最下位は今日の夕食一品抜きな」

 

「抜いた一品は何処に?」

 

「もちろん私に「一番の釣った奴な」むう・・・」

 

「判定は?」

 

「巨大さ!」

 

「重さ!」

 

「という事で分からないので聞きましょう」

 

「今の時期だとニジマス、オオクチバスが釣れるね。その中でも飛び切りのと言えば・・・ヤマメだ」

 

「ヤマメ?」

 

「別名サクラマス。体長はここだと何センチですか?」

 

「70cmを超えるものもいる。警戒心が強くそうかかることはないが、力強い引きと速さに、ここを訪れた人の大半が一度は釣ってみたいという魚だ」

 

「だって」

 

「うーんじゃあ狙いはそのヤマメか?ニジマス大量に釣って塩焼きもいいなぁ」

 

「百代、それは良いですね。実にいい・・・」

 

じゅるりとするいつもの腹ペコ王をみんなで笑っていざ釣りの準備開始。

 

「俺たちは道具借りに行くけど葵達はどうするんだ?」

 

「少し休んでから行きますよ」

 

「ああー・・・若、また寝てないな?」

 

「冬馬はいつもそうなのだー・・・」

 

複雑そうにする準と小雪。

 

「なんだ、不眠症か?」

 

「最近は寝られるようになっているので心配ありませんよ」

 

「そういう問題じゃないんだけどなぁ・・・まぁ若がこの調子だから俺たちはのんびり行くわ」

 

「ウェーイ!蝶々~」

 

「・・・そうか。無理するなよ」

 

そう言って士郎はみんなが居る場所へと駆けて行った。

 

すると、何やら問題が生じているようだった。

 

「どした?」

 

「俺様ら超団体様じゃん?数が足りねぇんだと」

 

「すまないねぇ・・・他のお客さんも居るから」

 

「構いません。ご迷惑をおかけします」

 

貸してもらえたのは釣り竿と魚を入れる網が5セットだった。

 

「え?数足りないぞ。どうするんだ?」

 

大和が不思議そうに言うが凛たちは呆れた顔をしていた。

 

「こうするのさ。――――投影、開始(トレース・オン)

 

残りの8セットが士郎の手元に現れた。

 

「うおっ!?」

 

「すげぇ!」

 

「これで人数分だろ?早くやろう」

 

「・・・あんたねぇ・・・こんなことで投影使ってんじゃないわよ」

 

「まぁまぁ、みんなもう知ってるから」

 

「よし!俺はエミエモンが出した奴でやる―!」

 

「誰が二足歩行狸型ロボットだ!」

 

「僕も・・・えへへ、何か同じ物のはずなのに特別感あるね」

 

「魔術に携わるものとして少しでも数を減らしましょう・・・セイバー、桜」

 

「はい。お借りします、シロウ」

 

「私も借りますね」

 

ほどよく分けていざ釣りを――――

 

(そんな装備で大丈夫か?)

 

「・・・。」

 

何か、赤いアングラーがカーボンナノファイバーの竿を持って言うのが見えた。

 

俺は――――

 

このまま使う/一番いいのを投影する

 

 

「なんだ今のは」

 

ブンブンと頭を振って釣り場へと行った。

 

 

 

空は晴天。優しい春風が流れる中ポチャンと、竿を投げる。

 

「空気が良いな・・・」

 

パチャン、と浮が沈む。

 

「それ!」

 

魚がかかったのを見てクイッと竿を引き針をかける。

 

「・・・ニジマスだな」

 

そこそこに肥えたニジマスが釣れた。

 

網に入れて、またポチャンと竿を投げる。

 

次は何がかかるかな、と思っていると百代がものすごいスピードでやって来た。

 

「し、士郎!?どうやって釣ったんだ!?」

 

「どうやって?どうやっても何も普通に――――」

 

そこまで言って士郎は気づいた。

 

「百代。気配断ってないだろ」

 

先ほどまであった魚影が見えなくなった。

 

「気配を断つ?どういうことだ?」

 

「あー・・・」

 

某ランサー曰く釣りとは鍛錬でもあると言っていたのを思い出した。気を静め竿を微動だにせず、タイミングを計る。

 

なるほど、確かに鍛錬だ。

 

「百代には隠形って言えばわかるか?とにかく百代は強者の気配を駄々洩れにしてるから魚が寄ってこないんだよ」

 

「なにー!?じゃあ今まで私だけ釣れなかったのって・・・」

 

「気配遮断してなかったからだな」

 

士郎はその辺とてもうまく、鉄心にもヒュームにも褒められた。

 

・・・能ある鷹は爪を隠す、とはよくいったものだと。

 

「ぬぬ・・・放出ならまだしも断つのか・・・」

 

「ま、気長にやることだな。気を静めるのが重要らしいぞ」

 

そう言って士郎は立ち上がりポイントを移動する。

 

「あ!どこ行くんだよ!?」

 

「どこもなにも百代が気配遮断覚えないと魚が居なくなる。俺だって負けたくないからな。頑張れ」

 

「んな・・・薄情者ー!」

 

こりゃ時間がかかりそうだと士郎は思った。

 

さて釣り再開。

 

今度は何が釣れるかな・・・

 

パチャン!

 

「ん?」

 

引きの初速が早い。しかも中々手ごたえのある引き。

 

「・・・ヤマメか?」

 

となると馬鹿正直に相手をするとバレてしまう。慎重に慎重に引き寄せる。

 

「ッ・・・これはタモが必要だな・・・!」

 

――――投影、開始(トレース・オン)

 

片手にタモを投影してタイミングを見計らって救い上げる。

 

「・・・っし!」

 

60cm前後の大物を釣り上げられた。

 

「収穫収穫・・・」

 

とほくそ笑んでいると、

 

「シロウ!こちらもタモが必要です!」

 

「せんぱーい!」

 

「・・・。」

 

そう言えば自分の幸運のランクはEだったなとカクリと肩を落とす。

 

「今行くぞー」

 

タモを持ってセイバーと桜の待つ方へ行く。

 

「シロウ!糸が・・・!」

 

「わかったわかった。少し緩めて・・・よいしょ」

 

ざぱん、と上がったのはなんと、80cm越えのヤマメ

 

「おお!大物じゃないか!」

 

「やはりそうでしたか。ニジマスとは明らかに違う手ごたえでしたので」

 

セイバーの言葉に引っかかりを覚えて網を見ると。

 

(うわあ・・・)

 

ピチャンピチャンと跳ねるニジマスが多数。どれも大きい。

 

「これは確かに癖になりますね。独特の引きごたえに駆け引き。実に楽しいです」

 

笑顔で次を投げたくてウズウズしているセイバー。

 

「これだけいると逃げられそうだから網を変えて捌いちまおう。セイバーは引き続き頑張ってくれ」

 

「はい!お任せを。油断すると翔一に負けてしまいますからね」

 

セイバーはキャップをライバル視しているようだ。それも仕方ないだろう。二人は生まれついての幸運持ち。なにか感じるものがあるのかもしれない。

 

「士郎ー!」

 

「タモ、タモー!!」

 

「ったく、俺はタモ係か?」

 

今使っていたものをセイバーのところに置いて新たに投影したものを持っていく士郎。

 

「誰だ!?」

 

「遠坂さんよ!」

 

「頑張るんだ凛!」

 

一子とクリスが、糸が絡まないように竿を上げている中凛がなにやらファイトしている。

 

「ぐぬぬ・・・この・・・」

 

「あ!遠坂、そんなに無理やり引っ張ったら・・・」

 

プツン。

 

「「ああ!?」」

 

「てい!」

 

糸を切って魚が安心したその瞬間を士郎は見逃さなかった。

 

「あっぶなかったー」

 

「ありがとう、士郎」

 

「流石ね!」

 

「うむむ・・・自分も早く釣りたいものだ」

 

ヤマメではなかったが大きく太ったニジマスだった。

 

「これは中々楽しかったんじゃないか?遠坂」

 

「ええ。魚の癖によくやるわ。釣りなんてほとんどしてこなかったけど、楽しいわね」

 

満足気だが今のところセイバーがトップなことを伝えてやる。

 

「うう・・・セイバーさん強過ぎよぉ・・・」

 

「嘆くな犬!まだ勝機はある!」

 

「そうよね。そう思うわよね。普通」

 

ハハハ、と固まった笑顔を浮かべる凛。

 

「それより、俺はセイバーの釣った大量のニジマス捌いてくるから。タモ、置いていくぞ」

 

「OKー!分かったわ!」

 

「負けないぞ、凛!」

 

「はいはい。頑張りなさい」

 

忙しく去って行く士郎の方にも手をひらひらと振って追加の浮を結び直す凛。

 

士郎はさっぱり釣りが出来ないでいたがそれでも仲間達との時間は楽しい。

 

「士郎先輩、捌くんですか?」

 

キャップ達の方をハラハラと見ていた由紀江がそう言って近づいてきた。

 

「ああ。セイバーがもうこんなに釣るもんだから・・・網がいっぱいになる前に塩焼きにしちまおうと思って」

 

「なら手伝います!」

 

「北陸娘なめんじゃねぇぜ?」

 

またもやいないはずの松風にツッコミを入れたくなったがとりあえず我慢して士郎は捌き所に行くのだった。

 

ニジマスを捌いて串にさし、塩を塗り込み焚火のある場所に持っていく。すると男子陣が入れ違いでやって来た。

 

「なんだ?そっちも一杯か?」

 

「キャップがね・・・僕らは全然」

 

「キャップの傍に居れば釣れるかも、と思ったが駄目だ・・・片っ端から釣りやがって・・・」

 

「士郎もいっぱいなのか?」

 

「いや、これはセイバーのだよ。大物釣りあげて網が一杯だったから捌いたんだ」

 

「セイバーさんどのくらいの釣ったんだ?」

 

「大体80cmくらいだな」

 

「なん・・・だと・・・」

 

聞けばキャップのは70cm前後だということだ。

 

「こうしちゃいられねぇ!戻るぞー!!」

 

「あ、おい!ニジマスどうすんだよ!?」

 

小物に用はねぇよー!と彼は走って行ってしまった。

 

「まったく、落ち着きのない奴だな・・・」

 

「じゃあこっちのは俺様達が捌くか」

 

「ガクト、出来るのか?」

 

「鱗取ってワタだして串に刺すだけだろ。こんくらいできらぁ」

 

「じゃあ頼んだ。俺と由紀江は番をしてるから」

 

おーうとガクト達は去って行った。

 

「これはキャップさんとセイバーさんの一騎打ちになりそうですね」

 

「だな。俺と由紀江は番しなきゃだし、由紀江、みんなの所に行ってもいいんだぞ?」

 

「あ、あの!士郎先輩が嫌でなければ一緒がいいです・・・」

 

赤くなって士郎の服をきゅっと握る由紀江に笑いかけて、

 

「そっか。嬉しいよ」

 

「はうっ・・・」

 

「もうどうしようねこの衛宮スマイル・・・」

 

「だから松風いないだろ・・・」

 

苦笑して士郎は焚火に魚をさしていくのだった。

 

 

 

散々行ったり来たりを繰り返すと葵冬馬達が姿を現した。

 

「おーっす釣れたかー?」

 

「もう置くとこねぇよ・・・」

 

百代やガクト達はもう釣りをやめて、焼けた魚に舌鼓(したつづみ)を打っていた。

 

「取れたてはうんめぇな・・・」

 

「塩味がいいね」

 

「まぐまぐ!がつがつ!」

 

「誰かお茶「あるぞ」ナイスだ士郎ー」

 

水筒に入れた熱いお茶を入れてやる士郎。

 

「葵達は釣れたか?」

 

「雪が大物釣ったから引き上げた」

 

「ヤマメさんなのだー!」

 

ドドーンと出されたヤマメは60cm前後。士郎と同じくらいだった。

 

「そっか、良かったな。ニジマス、食べていくか?」

 

「いいのですか?」

 

「いいもなにも余ってるからな。早く食べないと次が焼けない」

 

「じゃあご相伴に預かりますかねぇ・・・」

 

「わーい!お魚ー!」

 

「それにしてもキャップとセイバーさん、いつまでやる気なのかしら」

 

「こんなに釣りあげたらもうトップとか関係なくね・・・?」

 

「二人とも負けず嫌いだからな・・・」

 

よく見ると、二人ともほぼ同じ位置で糸を垂らしていた。

 

「おーい!そろそろ最後にしろよー!」

 

「セイバーさん、士郎先輩が呼んでますよ」

 

「わかっています。翔一、この勝負は・・・」

 

「次がラスト。だろ?」

 

「はい。いざ」

 

「勝負!」

 

パチャン、と二人の浮が同時に沈んだ。

 

「!桜!タモを!」

 

「こっちもだ!ガクト!」

 

バシャバシャと魚が暴れる。そしてどちらも釣り上げたのは・・・

 

「「ヤマメだ!」です!」

 

「公平を期すために測るぞ」

 

「キャップのヤマメは・・・81cm!」

 

「セイバーさんは・・・82cm!」

 

「ぬおおおお!負けたぁ!!」

 

セイバーの勝利に終わるのだった。

 

 

 

 

その日の夜、昼にニジマスを食べ過ぎた風間ファミリーは夕食が食べられず、ほぼ百代、一子、セイバーが食べることになるのだった。

 

「うっぷ・・・腹一杯・・・」

 

「食べ過ぎたねぇ・・・」

 

「これ夜中腹空くパターンじゃね?」

 

「今日は早く寝ちまおう・・・」

 

散々はしゃいだからだろう。キャップも欠伸を噛み殺していた。

 

「自分達は風呂に行く。いいか。風呂に行くからな!」

 

「クリス。あんまり言いすぎると期待されてるのかと思われるぞ」

 

「!?断じて違う!」

 

「わかってるよ。俺は土産屋さんに行く。キャップ達はもう寝てるよ」

 

今日こそ土産を調達するのだ。

 

「えっと・・・何があるかな・・・」

 

餅、大福、プリンなどスイーツ系が多い。

 

「でもなぁ・・・スイーツは帰りに買うつもりだし・・・」

 

はてどうしたものかと悩んでいると、

 

「・・・。」

 

「あずみ?」

 

あずみがやって来た。

 

「(クイッ)」

 

「はいよ」

 

また付き合えという事らしい。

 

「おや、お客様。ご来店ありがとうございます」

 

「黒糖・・・いや、今日はワインがいいな。赤ワイン二つ」

 

かしこまりました。と顔を覚えられたのだろう、二度目の問いは無かった。

 

「どうした。まだ感傷にひたっているのか?」

 

「ちげぇよ。今日は純粋にお前と飲みたかった」

 

「お待たせしました。赤ワインでございます」

 

「ん」

 

「おう」

 

チン、と鳴らして口に含む。葡萄酒特有の豊潤な香りが広がった。

 

「今日は何してたんだ?」

 

「俺たちは釣りに出かけたよ。葵冬馬達も一緒にな」

 

「・・・あいつに掘られるなよ」

 

「やっぱりその気があるのか・・・冗談だと思いたかったが・・・」

 

はぁ、とため息を吐く士郎。

 

「まぁそれでも優秀な奴だ。仲良くなっといて損はねぇ」

 

「損得勘定の付き合いはもう飽きた。もう十分だよ」

 

そう言って士郎もワインをゴクリ。

 

「お客様チーズなどございますがいかがですか?」

 

「もらうよ。二人前頼む」

 

かしこまりました、と下がっていくバーテンダー。

 

「お前に酒だけ飲ませるのが忍びなくなったか?」

 

「恐らくそうだろう。大体あずみ。君の無茶振りだぞ。本当に大丈夫だが法律上は問題ありなんだからな」

 

「こまけぇこたいいんだよ。・・・ん。なんでだろうな特に特別なことはねぇのに酒が美味い」

 

「雰囲気のせいじゃないか?」

 

こうして静かな夜を過ごすのも悪くない。

 

「損得勘定の付き合いは飽きたつってたな」

 

「ああ」

 

「・・・どのくらい戦ったんだ?」

 

「・・・。」

 

その問いに士郎は一度黙して、

 

「何度死んだか分からないくらいだよ」

 

遠く、もう懐かしいことを思い出して士郎は言った。

 

「戦争を止めようと足掻いたこともあった。物資を届けるためにテロまがいの事もした。・・・そうまでしても。救えなかった命があった」

 

「・・・。」

 

「視野が広がるんだよ。1人の次は10人。10人の次は100人。100人の次は・・・どのくらいだったか」

 

「悪循環だな・・・」

 

「本当に、そうだな」

 

「お待たせしました。ハーブチーズとスモークチーズでございます」

 

「もぐ・・・んん。で、それをこの世界でもしようとしてたわけか」

 

「・・・そうだな」

 

士郎は嘘をつくことなく言った。

 

「元々は卒業と実績さえ積めればよかったのにな。いつの間にか大所帯だ」

 

「はは。揚羽様を出し抜けるわきゃねぇよ」

 

それに、とあずみは続けた。

 

「武士娘を甘く見ねぇこった」

 

「それは十分肝に銘じたよ。まったくどんな世界なんだかここは」

 

苦笑交じりに笑って士郎はスモークチーズをパクリ。

 

「む。中々いいチーズを使ってるな」

 

「バーテンの秘蔵だろうよ。味わって食いな」

 

そうして今宵も静かに終わる。真っ赤な葡萄酒が二人の顔を写し返していた。

 




旅館編でした。意外なとこに躓く今回でしたがいかがだったでしょうか?

芦ノ湖では本当にニジマスやヤマメが釣れるそうです。色々調べたんですが季節によってはワカサギつりもできるみたいです。観光予定の方、ぜひ調べて行ってください中々面白そうでした。


あずみさんがめっちゃ出てますがここまで我慢した反動ですはい。もうあずみさん書きたくてしょうがない。

次回は天神館のお話になると思います。では!
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