前回に引き続き焔の大筒を作っていきます。一瞬焔の大筒は鉄なのだろうか?と疑問も覚えましたが鉄製という事で進めます。
今回も賑やかに切磋琢磨していきますのでよろしくお願いします!
では!
激動の大乱闘の翌日。ルールによって今日の体育はバスケットとなっているので体育館集合だ。
「セイレエェェツゥ!!!」
十勇士も慣れたもので川神の生徒と同じように入念なアップを行い、レオニダスの一言でピタリと列に並ぶ。
「十勇士も慣れたなぁ・・・」
「この体育に慣れてしまう自分が怖いわ・・・」
「宇喜多も細くなるのではないか?」
「うちがこれ以上美少女になったら世界がどうにかなってまうやろ?」
「・・・そんなわけがあるまいよ阿呆め」
「御大将、レオニダス殿の前ですぞ」
「今日はバスケ、だったな」
「そうですぞ。重りは付けますが関節保護の為、軽めを設定いたします。一列にお並びください!」
「こんなの、着けてない組の勝利だろう」
「そうとも限らないよ」
慢心する龍造寺にモロが待ったをかける。
「ではぁ!男子から行きますぞ!」
ピー!
「ぬおおおお!」
「りゃあああ!」
背の高いガクトと長曾我部がジャンプボールをする。
ところが、
「お、おお、うおおお!?」
長曾我部は重りによりそれほど跳ぶことが出来ず、それどころかコケてしまった。
「長曾我部殿!怪我はありませんか?」
「お、おおう!大丈夫だ!」
「では続行ですぞ!」
「大丈夫か?」
今回は同じチームの士郎が問いかける。
「大丈夫だ!心配をかけたな!」
「ならいい。・・・来るぞ!」
士郎と長曾我部がディフェンスに入る。
突っ込んできたのは華麗なドリブルでやってくる龍造寺だ。
「悪いな。今回俺に縛りはない。決めさせて――――」
パン!と長曾我部がカットした。
「んな・・・」
「このバカタレめ!俺たちは力があるから重りをつけているんだ!何もつけてないからって余裕こくなんてあり得ねぇぜ?」
「ぬぐ・・・この・・・」
「長曾我部!」
「応よ!」
素早くマークを外した士郎が声を張り上げる。それに応答した長曾我部がドリブルをやめ、遠投した。
「はぁあ!」
バスン!!
遠投をキャッチした士郎がダンクシュートを決めた。
ピー!
「得点!赤チーム!!」
得点ボードがめくられ、赤チームが3になる。以前のバスケットを鑑みて、特別ルールとして重りをつけた生徒がダンクシュートを決めた場合、一点多い3点が入るようになった。
「やるじゃねぇか!」
「くぅー!ジャンプじゃ勝ったのによう!」
「ドンマイだガクト!次は俺が決めてやるぜ!」
ガクトと同じチームのキャップが前に出てくる。
だが、
「よっと」
「ああ!?」
「モロ!テメェー!」
目立たないように接近していたモロがボールを奪った。
「これでも演技は得意なんだよ!」
「演技関係ねーべ!?」
完全に意表を突かれたキャップ、ガクトは出遅れてしまった。
「はぁ、はぁ、でもドリブルキッツイなぁ・・・」
「師岡殿!」
「島さん!はい!」
鋭いパスを受けて島は驚いていた。
(それほど強い印象を受けない師岡殿ですらこの痺れるようなパス!恐るべきは川神学園!)
そこからドリブルし、スリーポイントを狙うが、
「わかっていたぞ島!」
「御大将!」
今回は敵同士になってしまった石田がディフェンスに入った。
「お前がこのポイントを狙うのは見えていた。さぁどうす――――」
「こうする」
「鉢屋ぁ!貴様!」
とんと足の下をくぐらせた島のボールを鉢屋が受け取った。
「やべーのがくるぞ!」
「ディフェンス!」
「鉢屋流忍術・・・」
「「ああ!?」」
ブンとドリブルする鉢屋が二人になった。
(くっ・・・この状態では一人分が精々か!)
厄介だが、鉢屋も普通には分身出来ない様子だ。それを、
「美しくカット!」
「ぬ!毛利」
毛利がカットした。
「なぜ分身を見破れた!?」
「鉢屋にしては美しくないと思っただけさ」
「く、無念」
「スリーポイント来るぞ!」
「うおおお!」
長曾我部と士郎が跳んだがスリーポイントを入れられてしまった。
そんな激戦を繰り広げているころ女子では、
「相変わらず激しいわね」
「分身したりしてるわ」
「あれはルールとしてありなのか?」
「個人のスキルだからOKなんじゃない系」
意見は様々だが女子たちも男子の活躍に目を見張る。
「あ、士郎がボール取ったわ!」
「あの位置は・・・スリーポイントか!」
「士郎はスポーツになるとガンガン攻めるね」
京がスリーポイントを放つ士郎を見てそう言った。
「・・・まぁ前回も攻めてたけど・・・」
「あははは・・・強かったわ、士郎」
「犬は最後まで残ったんだもんな」
「ワン子も強くなってきてるね」
「まだまだ勇往邁進よ!」
「ちょっといいかな」
晴が会話に参加した。
「衛宮って昔からあんなに強いの?」
「強さは・・・どうなんだ?犬」
「元々ピカ一よ!でも最近気に目覚めてからは正直、理不尽の塊になったわね・・・」
クゥンと鳴く一子に、
「最近気に目覚めたの?元から強かったのに?」
「ああー・・・」
「その辺は秘密なの。複雑な事情がある」
一子だけでは誤魔化しきれないだろうと京が助け舟をだした。
「ふぅん。そうなんだー・・・」
「どうしたのだ尼子」
「あ、ほむ。ちょっと衛宮の事が気になって・・・」
「「「・・・。」」」
もしかして、またなのか?と思う女性陣。
「ほむは衛宮の所に通い詰めてるよね。どう?」
「どう、と言われても・・・素晴らしい鍛冶師だと思うぞ!鉄を扱うのがとても巧い。まさに匠の技だ!」
「ほうほう。・・・ほむも好印象と・・・」
「・・・大丈夫なのか?」
「士郎次第かしら?」
「まぁ揚羽さんが管理してるから・・・」
ぼそぼそと会話する一子達には気付かず、春はとにかく士郎の事を焔に問いただすのだった。
その後女子も激しいバトルを繰り広げ、結果同点という事で収まりをみた体育。
今日は終わったら癒しの昼である。
「衛宮定食だ」
「はいよ。トッピングは?」
「俺と島はいい。長曾我部は?」
「生卵付きだぜ!」
「大友も生卵付きぞ!」
「俺も生卵付きだ」
「んーどうしよっかな・・・」
晴は何にしようか悩んでいるようだ。
「おれはなまたまご付きだぞ!」
「おおハル、成長期だねぇ・・・じゃあ私もそれで」
「ひのふの・・・五人が生卵だね。他は?」
特に必要なしということで11人分を士郎に流す。
「それで、今日のデザートはなんだ?」
「デザートをハントしてるのは石田だったか。今日は抹茶プリンだよ」
「この前もそうではなかったか?」
「ああ、抹茶プリンは人気商品の一つでねぇ・・・毎度嘆願書が・・・」
「納得だな。あれは良きものだ」
「抹茶と玉子の黄金比!今日は確保せねば」
「無論俺とて参戦するぞ。毛利、残念だったな」
「御大将とは言え美の化身たるあのデザートは渡せないな」
「ここで言っててもしゃあないやろ。決闘の時まで我慢しとき」
「お待たせ。できたぞ。弁慶、手伝ってくれ」
「はいよー」
渡された定食を持って席を探し座る。
「飲み物が欲しいな」
「水なら無料だぞ」
「大友はコーラぞ!えっと小銭小銭・・・」
焔が小銭を探している間に鉢屋は人数分の水を確保してきた。
「ふむ。足りるな!ちょっと行ってくるぞ!」
軽快な足取りでドリンクコーナーに行く焔。
「・・・あの体育の後に軽快に動けるのはなぜなんだ?」
「普通足も腕もプルプルになるよな」
「俺達も大分川神に慣れてきたという事か・・・」
「鉢屋なんかはもうメダル渡してたもんね。よかったの?」
晴に聞かれた鉢屋は、
「悔いなどない。衛宮はそれに値する人物だ。それに・・・改めてこんなものを貰った」
そう言って鉢屋は首にかけられたチェーンを取り出す。
「それって鉢屋のメダルの?」
「うむ・・・持っているだけで特殊な効果のあるペンダントだ」
士郎はファミリーに贈った物のように、鉢屋のメダルを細かくコピーしたペンダントを贈っていた。
付与された能力は俊敏性の向上、幸運、防御力向上など忍者としてやっていく彼にはうってつけのものだった。
「作りは見事だが・・・特殊な効果とは?」
「・・・すまぬが言えぬ。これは友の秘奥にまつわる話。それがしには口にできない」
「そっか・・・でも鉢屋がそう言うってことは本当に特殊なものなんだね」
「新しくオーダーした愛刀もだが衛宮は特殊な鍛冶師だ。故に作る一品は名刀となる。衛宮がなぜあそこまで常軌を逸脱しているのか、ようやくわかった」
そう言って鉢屋は大事そうに懐にしまった。
「・・・(特別な贈り物か・・・いいなぁ・・・)」
それを羨ましそうにみる春。
「戻ったぞ!なんぞ話題があったのか?」
「あ。ほむ、衛宮の事なんだけど・・・」
「なんだか春にはよく衛宮の事を聞かれるな。なんだ?」
「あ、いや・・・ほむの大筒、どうなったのかなーって」
「それがな・・・秘密だ」
「なんや、大友も秘密かいな」
「ただ、新しい秘伝の物になるという事は言えるぞ」
「衛宮士郎。秘密の多い男だな」
「御大将とか多分気が合うぞ」
「なに・・・?」
「御大将、今度風間翔一達と衛宮の家を訪ねてはいかがか?」
「ふむ・・・それも悪くない・・・のかもしれんな」
石田は考え込むように言った。
――――interlude――――
授業を終え、十勇士は焔と春を除いて決闘(デザート)とレオニダスの訓練に行った。
二人はと言うと、
「これが中々難しいのだ」
「そうか・・・なんとか認めてもらえるといいな」
「・・・。」
士郎にくっついて衛宮邸にお世話になっていた。
「おい、林冲」
「なんだ?史文恭」
コッソリと覗く林冲に呆れたように、
「そこまでしなくともあの褐色の娘は黒なのだろう?」
「・・・多分」
「ならさっさと話しを進めんか」
「ど、どうしろというんだ?」
「別に事情を話して諦めるのかそうではないのか聞けばよかろう?」
「・・・。」
ブツブツと何事かを呟く林冲。
「なんだ。嫉妬か?」
「!!!」
ババっと顔を隠す林冲。
「ついに豹子頭にも限界が来たか」
カラカラと笑って林冲をからかう史文恭。
「わかる。分かるぞ。いい加減自分の物にしたいものなぁ?その点あの男は鈍くて困る」
「史文恭はいいのか?その、あの娘と・・・」
「私はまだ様子見よ。私の勘が正しければ黒髪絆創膏娘も落ちる。今更嫁の一人や二人増えても構わん。ただ、いい加減にせよ。とは言いたいな」
「史文恭だってそう思ってるんじゃないか・・・」
ぷくりと頬を膨らませて林冲は言った。
「マルギッテのご両親に正義の味方ではなく、家族の味方になるのだと宣言したらしい」
「ほう?では我々の目的も達成されたと言えなくないな」
「だから、その・・・」
「だがあの小娘らは士郎と親睦を育んでいる。それどころか恋愛感情まで抱いていると。そういうことだな?」
「・・・うん」
「ならばこうすればよかろう」
ピ、
『揚羽だ。どうした?』
「豹子頭が悶絶している。そろそろ良いのではないか?」
『その口ぶりからして西の娘か?』
「ご明察。我らの目的は知っているが・・・士郎はもう覚悟を決めたのだろう?もうよいのではないか?」
『ふむ。我もそう思っていたところよ。そろそろ締め切りとするか・・・』
「今来ている西の娘たちはどうする?」
『・・・そこまでとしよう。二人・・・であろう?それを受け入れて最後の一枠を残して終了だ』
「最後の一枠?」
『まだ確実ではないのだがな。百代の妹が無意識に恋愛感情を持っているやもしれん』
「なに?」
それは初耳だった。
『我も最近百代に聞いたのよ。鍛錬中も、鍛錬後も、遊んだ後も、士郎の事ばかり喋っているとな』
「それは興味深い話を聞いた。武に生きると決めた心が認めたくないのかもな」
『かもしれん。だが、次世代に引き継ぐのも立派な勤め。なので一枠は残しておこう』
「そうか。林冲。揚羽だ」
「・・・もしもし」
『話は聞いた。そこで・・・』
士郎の知らない所で締め切りが迫っていた。それもそうだろう。目的はもう達せられたのだから。だが後に。この判断がまだ甘かったことを知る揚羽達だった。
――――interlude out――――
「それじゃあ大友さんの大筒作りを始めるか」
「うむ!そう言えば衛宮。前々から思っていたのだが・・・」
「ん?」
「その『大友さん』というのは止めぬか?なんだか無理をしているようだぞ」
「!?」
「そ、そうか?」
「うむ。なんだかこう・・・無理にかしこまっている感じだ」
「・・・よく言われるよ」
んー・・・と後ろ頭を掻く士郎。
「じゃあ名前でいいか?俺のことも士郎でいい」
「うむ!これからは『焔』と呼べい!」
かーかっかっか!と笑う焔。しかし、
「ほむ。ちょっと来て」
「うむ?なんぞ・・・うわあ!?」
「?」
焔は春につれて行かれた。
「鍛造の準備、しとくか・・・」
なんだかわからないが訳ありという事で士郎は鍛造の準備に入るのだった。
――――interlude――――
「昨日はここまで作ったからここまでを今日のマストにする。いいか?」
「うむ!よろしく頼むぞ!」
事前に温めていた炉に鉄をくべてハンマーでたたく。
カン!カン!
いよいよ鍛造が始まった。
(この調子でいけば三日後には組み立てに入れそうだな)
工程は順調。今回は新たな秘伝の武器にするため色々と手を入れることになっている。
その為、部品をいくつか分割して砲塔に接続する。
「――――」
一心に鉄を叩く士郎。その様子を焔と春が見守っていた。
(やっぱりかっこいいなぁ・・・)
ほう、と吐息を吐く春。
(よし。もう行こう!)
決意した様子の彼女は、
「ほむ。私ちょっと先に帰るよ」
「うむ?よいのか?士郎と・・・モガモガ・・・」
口を封じられて焔は頭に?と浮かべる。
「えみ、“士郎”!」
「ん?」
「私先に帰るね。また明日」
「・・・ああ。また明日な“晴”」
去り際にガッツポーズをして春はするべきことを決行に移す。
「最初は直江君かな」
彼の良き人になるには条件があると春は事前に調べていた。
その足掛かりとして明日大和にコンタクトを取ろうということにした。
「絶対ものにしてみせる」
もはや誰も聞く人のいない場所で春は決心するのであった。
――――interlude out――――
「よし、ここまでにしよう。焔」
「うむ。やっていたのはほとんど士郎で大友はほぼ何もしていなかったが・・・」
「そんなことないさ。適時汗を拭ってくれたり後片付けをしてくれただろう?」
「よ、よく見ていたな・・・」
「鉄に集中してはいるが他をおざなりにはしていないさ。ありがとう」
「!」
ドキンと士郎の透明な笑顔に胸が高鳴った。
(いかんいかん・・・士郎は春の・・・)
後片付けをする士郎を見やって焔は、
(晴・・・の・・・)
「焔?」
「え?」
「なんで泣いてるんだ?」
ポロポロと涙を流していた。
「こ、これは、その、ごみでも入ったのかもしれぬ!」
「・・・そうか。じゃあよく見せて」
「う・・・」
ヒュバ!と焔はガード体勢になった。
「うう、み、見るな!」
「焔?」
「また明日!また明日な!士郎!」
そう言って焔は走って行った。
「・・・。」
ふうと天井を見上げる。
「俺、なにかしたかな・・・」
そう呟いて炉の火を落とした。
翌日。士郎は変わらず橋を狙撃していた。
「士郎、朝の依頼はいいのか?」
「もうこっちが本業みたいなもんだからなぁ・・・」
彼としては落ち着いて依頼に没頭していたいのだが。
パシュンと今日も流星は流れる。そして終われば、
「ふう、おはよう」
「おはよう!」
「おはようございます!」
「お、おはようなのだ!」
教室に戻る。すると若干気まずげな焔が居た。
「なんや大友。何かあった?」
「なんでもない!なんでもないぞ!」
わーっはっはっは!と明らかに空元気なのが伺える。
そんなところに、
「なんだ大友。空元気の笑いなどあげよって」
「・・・。」
「御大将・・・」
空気の読めない奴がいた。
「ここは空気を読め」
「右に同じく」
「同じくだ。ニンニン」
「謎の語尾つけるのやめろ!」
忠勝がしっかりツッコミを入れていた。
「尼子。後で話があるのだが・・・」
「いいよ。(ほむも魅力に気づいたかな)」
恋する乙女は今日も逞しかった。
授業の合間の時間、士郎は修理の依頼に勤しんでいた。
「士郎、なにしてるの?」
晴が問いかける。
「見ての通り修理だよ。依頼だな」
「こんなものまで!?」
士郎が分解しているのは腕時計だった。
「うわぁ・・・細かい部品がいっぱい」
「ただの電池切れかと思ったんだけどな・・・どうにもおかしい」
なんでも、思い出がたくさん詰まった時計なのでどうにか動くようにしてほしいという依頼だった。
「あ」
「あった」
分解していくうちに欠けてしまった歯車が出て来た。
「これは見事に欠けちゃってるね。修理不可?」
「いや・・・
そう唱えると士郎の手に欠けてない歯車が現れた。
「!?」
「そのまま口は閉じててくれ。秘密、な?」
「(コクリ)」
慌てて出そうになった声を、手で口を覆う事で止める春。
(そっか。鉢屋が特殊な鍛冶師だって言ってたっけ)
しかし、手元になにがしかの術で物を作れるとして、鍛治に関係があるようには思えない。
「よし。動いてるな」
さらりとあれだけ分解したパーツをすんなり組み立てる士郎。時計の調子もいいようだ。
「依頼主さんは何処かで強打でもしたんだろうな。中身が欠けてちゃ動くものも動かない」
チキチキと時間をぴったりに合わせ、しまう。
「すまない、晴。何か用事があったのか?」
「え?いや、黙々と何してるのかなぁって」
「そっか?休み時間なんてこんなものだぞ?」
(15分で時計をばらして修理するなんて士郎にしか出来ないよ・・・)
常識外れの技術に呆れてしまう晴。
「休めてないじゃないか」
「休めてるよ。これは半分趣味なんだ」
「時計の修理が?」
「ガラクタ修理が、さ。確かここのエアコンも去年直したな」
「それって業者に頼む案件じゃ・・・」
「ああ。確かにその通りだってことで今は急な依頼以外は来ないな。まぁ、去年散々直して回ったから依頼自体無いのかもしれないけど」
「士郎はすごいね」
柔らかく微笑んでいう晴。
「俺が?いやいや、できることをやってるだけだし・・・」
「それでもだよ。思い出の詰まった時計なんでしょ?それもパーツを補充しなきゃいけないものなんて本来修理不可能じゃないか」
「それは秘密が・・・」
ピタリと士郎の口に人差し指を当てて閉じる晴。
「こんなこと誰も出来ないよ。それにこの依頼を受けてくれるのだって高級時計店か士郎くらいなものだよ」
「そうかなぁ・・・」
「そうなの!ねえねえ、また放課後行っていい?」
「いいけど鍛錬があるんじゃ?」
「その後に行くから!よろしくね?」
「あ、ああ」
そう言って晴は離れて行った。
「なんだか晴に良く話しかけられるな」
「恋なのでは」
「恋じゃないかしら」
「恋だね」
聞き捨てならぬ言葉にばっ!と振り向くが、
「・・・。(ホヒューフォヒュー)」
「Zzz・・・」
「・・・。」
「・・・クリス、ダウト」
「な、なんで自分が!」
とまぁ、からかわれたりもしたが。
彼らが来て以来、随分と平穏な一日だった。
「さて、頑張るか」
焔達は来るのが遅くなるという事で士郎は一人大砲の砲身作りに励んでいた。
「・・・。」
士郎は無心で砲身に向き合う。
しばらくして。
「お邪魔しまーす」
「お、お邪魔します・・・」
堂々と入ってくる春と、もじもじした焔が入ってきた。
「・・・。」
しかし士郎は手が離せなかったので彼女等が来るまで鉄に集中していた。
――――interlude――――
「お邪魔しまーす」
「お、お邪魔します・・・」
一方春と焔は天衣の手引きで居間へと案内されお茶を出されていた。
「ふう・・・レオニダスさんの訓練はキツイね・・・」
「だな。だが、ああまでしないと大友は新しい国崩しに耐えられんだろうからな!それより尼子・・・いや、春。本当に良かったのか?」
「なにが?」
「だ、だから、そのー・・・」
真っ赤になって俯いてしまった焔。
「婚約の事?」
「ストレートだな!?」
「だってほむ、赤くなってるし」
その言葉にまた赤くなる焔。
「ほむってば可愛い。恋を自覚したほむは最強だね」
「茶化さないでくれ。大友は初めてなのだ。そ、それも多重婚なんて・・・」
焔は自分の気持ちを正直に春に告げ、自分は身を引く。そう言ったのだが、
『ほむ。絶対ダメ』
『な、なにが?』
『諦めるの』
言葉少なくとがめるように言う春に焔は混乱し、
『い、一緒に嫁にしてもらう!?』
『そ。士郎はもうたくさんの婚約者がいるんだって。それに、もう結婚に動いてるらしい』
『まことか!?いやー・・・士郎は侮れんな・・・』
『だからほむも一緒に婚約しよう?この機会を逃したら次は無いかもだって』
『・・・。』
そんな会話があった。そして、
「来ているな」
「「!」」
すっと二人の背筋が伸びる。史文恭だ。
「婚約の話を聞いたと思うが・・・お前達は了承するということでいいな?」
「はい!」
「大友も了承している」
「そうか。では後は士郎に気持ちを打ち明け、その判断を仰ぐ。行くぞ小娘共」
そう言って史文恭は二人を連れて鍛造所へと向かうのだった
――――interlude out――――
鍛造所に着くと士郎は一心に鉄と向き合っていた。
「焔と春か。すまない、今手が離せな――――」
「士郎。嫁希望者だ」
「・・・。」
史文恭の歯に衣を着せぬ言い回しに士郎は一瞬真っ白になりかけた。
「・・・まった。ちょーっとまった。今本当に手が離せないからちょっとだけ待ってくれ」
熱した鉄に圧力をかけている所だったので手が離せないのだろう。
「わかった。終わるまで待とう」
しばらく待つことになった。その間に焔は、
タッタッタ。ゴソゴソ。フキフキ。
と、ただ待つのではなく士郎の身の回りの整理や汗を拭ったりとサポートに勤めた。
「ほむ、手慣れてるね」
「大友が花火を作っている時にしてほしいと思ったことをしている。全て一人でやるのは大変なのだ」
「じゃあ私汗拭きするよ。それ以外触っていいのかすら分からないし」
「うむ!頼むぞ!」
「・・・。」
史文恭は二人の献身を見て、
(これはよい嫁となりそうだな)
とそんな事を思ったのだった。
そんなこんなで動けない時間を脱した士郎が備え付けの座敷に三人を招き入れお茶を出す。
「それで、婚約の話だったな・・・」
「うん」
「うむ・・・」
春は堂々と焔は若干の怯えがある。
「史文恭が連れてきて言ったってことは俺との婚約について色々聞いたんだな?」
「うん。士郎が多重婚者でもう沢山お嫁さんがいるってこともね」
「・・・それで尻込みしなかったのか?」
「正直お嫁さんの数を聞いた時は驚いたけど、士郎ならそれに値する人だとすぐ納得したよ」
「大友もだ。英雄色を好むというか・・・逆にすごいなと思った」
「私もほむも気持ちに揺らぎはないんだ。どうか嫁入りさせてほしい」
「・・・。」
晴の言葉に考え込む士郎。
「心配せんでもこれが最後の機会だと揚羽も言っていたよ」
「!揚羽にも伝わってるのか・・・」
「むしろそこの褐色娘から連絡があったそうだぞ。中々の胆力だな」
「そうか・・・」
さらに一つ考え、士郎は口を開いた。
「・・・二人にはお願いがある」
「なに?」
「なんぞ?」
「俺は自分を大切にできない奴らしい。意識して直そうとしてるけどそれも雀の涙みたいな効果しかない」
「確かに・・・士郎は他者への献身が異常だね」
「全部拾わなくとも良いのに、とは常々思っていた」
二人の言葉に頷いて、
「だから二人にはどうか俺を止めてほしい。一時期は正義の味方として様々に動いた。それをもうさせないための抑止力になってほしい」
「うん。もちろんだよ」
「大友も、その・・・頑張る。だから・・・!」
焔は怯えていた。ここで断られたら自分は立ち上がれなくなるのではないかと。初めての恋を経験した焔はそう思っていた。
「そんなに怯えないでくれ。了解したよ。二人とも、これからよろしく頼む」
「「!!!」」
その言葉と共に二人の目から涙がポロポロとこぼれた。
「ちょ、ほむダメだって・・・」
「晴こそ・・・ウッグ、ひっぐ・・・」
うわあああんと二人そろって泣き出してしまった。
「ここまで涙を流さなかったあたり、立派だな」
「史文恭、二人で終わりなんだな?」
「いや、実を言うと確定ではないのが一件ある。そちらは後日お前を含めて話し合う。それが最後だ」
「・・・わかった。ほら二人とも、これで涙を拭いてくれ。美人さんが台無しだぞ」
「び、美人・・・」
「大友はそこそこぞ・・・」
ゴシゴシと渡された新しいタオルで涙を拭う二人。
「俺の事を好いてくれた二人が美人じゃない訳ないだろう?」
「「はう・・・」」
またもやポロポロと涙をこぼす二人を見て苦笑する士郎。
「このやり取りも次が最後だな」
「ああ。そちらが纏まったら晴れて結婚式を挙げるそうだ。身構えておけよ」
「了解」
「ほむよかったね!」
「晴こそ!よかったな!」
まるで姉妹のようにお互いの涙を拭う二人を士郎は優しい目で見ていた。
はいこんな感じでした。ちょっと詰め込み過ぎたかな…書きたい場面の乱舞みたいになってるかも。すみません。
ここでも色々語りたいのですがまず最近の誤字報告について。「・・・。」を「・・・」にするような誤字修正が来ています。「・・・。」は私の中の仕様です。沈黙感を強調する表現です。気に入らない方はそっとブラウザバックお願いします。その他の字が違うよーとか表現がおかしいよーというのはその都度手動で訂正するので直って無かったら仕様なんだな、と思ってください。
次回はついに焔の大筒完成!ということで頑張っていきますのでよろしくお願いします。
では次回!