ホロライブオルタナティブ~彗星に捧げる星詠みの詩~   作:星夜見流星

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みこち誕生日おめでと〜


stardustmemory〜続逃走の記憶〜

〜鏡華side〜

 

星街を抱え全速力で来た道を引き返しさっきまで居た公園を目指しながら約束通り賭けに出る経緯を話していた。

 

「お前は知らないだろうがここ数日で何人もの人間が魔力を奪われて昏睡状態になる事件が多発しててな、多分だがアイツはこの事件の元凶で何人もの人間から魔力を喰らってる」

 

「かなりヤバいって事?」

 

「あぁ、しかもあって欲しくなかった誤算もあった」

 

「誤算?」

 

疑問を浮かべる星街が見つめてくるが、これを知れば彼女の人生が大きく変わってしまう。それ故に言うのを躊躇ったがここまで巻き込んでしまった以上話さなければならないと思い意を決して話す事にした。

 

「なぁ星街、お前って自分の魔力適性検査の結果覚えてるか?」

 

「結果?Cだけど」

 

この世界では中学生になると魔力を扱えるかを判別する為に魔力適性検査が義務付けられており、上から順にA、B、CのランクがありAは最適性、Bは適性、そしてCは適性なしに分類される。

 

「やっぱりか」

 

彼女から答えを聞いた事で点と点が繋がり確信に至る。

 

「星街、今から言う事は他言無用で頼む」

 

「…わかった」

 

「実は公にはされてないんだがこの世界に魔力を持ってない人間なんていないんだよ」

 

「え!?」と驚愕して声を上げたすいせいは一つ矛盾している事を尋ねてくる。

 

「じゃ、じゃあCの適性なしって」

 

「公表できない魔力適性者、つまり魔術師の素質を持った人間の事だ」

 

「魔術師…私が」

 

そんな大事な話をしている二人の後ろから木々が折れる音が聞こえ、キマイラが追ってきている事を知らせてきた。

 

「チッ、もう追ってきたか。後少しだってのに」

 

音のする距離的にまだ距離はあるのだろうがあの巨体ならばすぐに追いつかれてしまうだろう。

 

(あまり使いたくないけど仕方ないか)

 

門よ開け(ゲートオープン)

 

そう言うと抱えて走る俺の少し先に黒い門のような物が出現し、その中は離れていてもわかるぐらいに黒い世界が広がっていた。

 

「あれに入るぞ。少し浮遊感あるけど我慢してくれ」

 

門に飛び込むと外から見えていた様に内部は暗闇に包まれておりこの世界には何もない事がわかる。

 

「ここなら少しは安全だ」

 

抱き抱えていた星街を下ろそうとするが彼女は下が見えない状態だったのもあり戸惑い始める。

 

「ちょっと待って足場ないじゃん!」

 

星街はどこを見ても不気味なほど暗い空間であり下を見ても先が見えない為訴えてくる。

 

「ちゃんと立てるから大丈夫だって。第一俺がちゃんと立ててるだろうが」

 

「あ、そっか」と言ってからゆっくりと見えない足場を確認してからおりると自分でもちゃんと立てる事に安堵していた。

 

「改めて、ようこそ俺の世界(闇の世界)へ」

 

つま先で不思議そうに見えない足場を蹴っていた星街は首を傾げる。

 

「君の世界?っていうかここどこ?」

 

「今言ったろ、ここは俺の固有世界。俺の許可なく出入り出来ない異空間だよ」

 

「じゃあ本当に安全なんだ」

 

「少しは、な」

 

頭に疑問符を浮かべてそうな仕草をする彼女に説明をする。

 

「最初に言っておくとここに長いはできないんだよ。この世界に居続けると時間感覚が狂い過ぎて肉体年齢と精神年齢に差ができちまう。あとは詳しくは言えないけど俺の身体がもたない」

 

「君の身体って…」

 

「それにあんな化け物放っておけないしな」

 

「あ、誤魔化した」

 

「俺の事はいいんだよ。それよりそろそろ行くぞ」

 

「行くって、出口なんてないじゃん」

 

星街がそう言うと指を鳴らし目の前に入ってきた時と同じ門が出現する。

 

「言ったろ、俺の許可なく出入り出来ないって」

 

鏡華は目の前に出てきた門に躊躇いなく入り置いて行かれるのは嫌なのですいせいもその後に続く。そして門を出て周りを見るとそこには見慣れた風景があった。

 

 

 

「もしかしてここって」

 

「ああ、さっきいた広場だ。俺の(ゲート)は長距離じゃなければ記憶した場所に開けるんだよ」

 

「俗に言うテレポートだな」と付け加えると右手を胸の前に持ってきて炎を纏わせる。すると本来はただ紅く燃えるはずの炎に少しだけ黒い炎が混じっていた。

 

「侵蝕はまだ軽症か」

 

右腕を振り下ろし炎を消してコートのポケットから魔力結晶を取り出して地面に擦り付けると上から不思議そうに覗き込んでくる姿があった。

 

「何してんの?」

 

「迎え撃つ準備。あれ相手に何も仕掛けなしで殺り合うのは無謀だからな」

 

コンクリートに擦る事で結晶が削れてそれによって出来る粉を魔力で固定し魔術文字にする。一通り書いたら後は未使用のカードに魔力を込めて文字と接続すれば任意で起爆できる簡易地雷の完成というわけだ。

 

「ねえねえ、私にも何か手伝える事ない?」

 

「は?」

 

あまりにも唐突過ぎる発言に思わず口が開いてしまうがそれが彼女の癪に障ったらしくキレ気味に言ってくる。

 

「何?喧嘩売ってる?」

 

「いや売ってないけど急に言ってくるもんだからさ」

 

「私だってただ守られっぱなしは嫌なの。で、何かないの?」

 

「何かって言われてもなぁ…」

 

正直なところ素人に任せられる事なんて…ない事もないな。

 

「ならこのカードやるよ」

 

星街にカードを差し出しそれを受け取った彼女は何かを察したのか尋ねてくる。

 

「私に渡されても使い方わからないんだけど」

 

「まぁ見てな」と言って自分用に新しいカードを出して目の前に持ってくる。

 

『燃えろ』

 

その瞬間ただ一言言っただけで手元にあったカードから炎が上がり燃え始める。

 

「魔力持ちならイメージしながらそれに対応したキーワードさえ言えば予め対象に組み込んだ魔術が起動する。お前に渡したのは『起爆』っていうワードで爆発する様にしてある」

 

「そんな事言われても…」

 

「物は試しだからやってみろ」と新しいカードを星街に手渡し受け取った星街は深呼吸をして同じ様にキーワードを言った。

 

『燃えろ』

 

星街が発した言葉をトリガーに彼女が持っていたカードの先端から炎が出現して燃え始める。

 

「できた…」

 

「だろうな。職業柄イメージなんていくらでもしてるだろ?」

 

(それでも普通はこんな直ぐにできないけどな…)

 

それだけ目の前にいる星街すいせいという人間の魔術適正が高いという事だろう。

 

「じゃあ後は置きたいところにカード置いて隠れとけ。設置しとけば勝手に固定されるから」

 

「了解」と言ってカードを置きに行く星街を見送りこちらも罠の準備を急ぐ事にする。

 

(残ってるのは主力の匣が三つ、未使用のカードが十枚に大アルカナの戦車、愚者、世界が一枚ずつ…か。こんな事になるならケチらず持ってくればよかったな。マガジンも十発入りが実弾二セットに魔力弾が三セット、魔力弾は期待できない事を考えると実質二十発。それと棒状の簡易閃光弾が一本と。あいつ相手に遠距離を挑むには心もとないな…)

 

罠を設置しながら手持ちに残っている道具の確認しているとカードを設置し終えた星街がこっちに走ってくるのが見える。

 

「終わったよ!」

 

「なら後は出来るだけ遮蔽物がある所に隠れとけ。それと何かあった時の為にこいつも渡しとく」

 

右手のリングに魔力でできた炎を灯して匣を開けると中から先程使った二丁の銃が出てくる。出てきた銃の片方に魔力弾のマガジンを装填して星街に渡すと彼女は恐る恐る銃を手に取った。

 

「残弾は十発、安全装置は外してあるから撃ちたい時はトリガーを引けばいい。おまけにこれもつけてやるよ」

 

星街は持っていた銃から目を離した新たに渡したものを見ると何かわからないのもあり「これは?」と首を傾げる。

 

「棒状の閃光弾だ。真ん中にあるスイッチを押すと五秒後に爆発するから投げた後は直視しない様に気をつけろよ」

 

俺は閃光弾をポケットにしまった星街を見て立ち上がると目の前にいる少女は何を思ったのかこんな事を言ってきた。

 

「ねぇ、どうしてキミはこんな危ない事してるの?」

 

「ん?急にどうしたし」

 

「だってそうでしょ。キミと私は同い年でまだ中学二年だよ?私はアイドルしてるけどそれは命が関わる様な事はないに等しい。でもキミは違うじゃん。こんないつ死ぬかもわからない仕事なんて…」

 

彼女がいいたい事はなんとなくわかる。確かに俺はまだ中学生であり自分でもよくこんな仕事をしているのはおかしいと思う。

 

「それでも誰かを守る為には誰かがやらなきゃいけないんだよ。例えそれが自分の知らない人だとしてもな。俺は他の同業者の人に比べてそれが早かっただけだ」

 

「早かっただけって…本当にキミはそれでいいの?」

 

「いいんだよ。どうせ俺が死んでも悲しむのなんてうちの師匠ぐらいだしな」

 

 

 

 

 

〜すいせいside〜

 

私の目の前にいる人は今なんて言った?死んだって別にいい?

確かに私はこの人と初めて会ったのはこの学校に入学してからだしちゃんと話したのも今日が初めてだ。学校ではいつも眠そうにしてるか寝てるかボーっとしてるかしかしていない彼も今日話してみたら意外と気が合う事がわかった。

だからなのかも知れない。今私は自分でもわかるぐらいすごく怒っていた。

 

「フザケンナ…」

 

「ん?なんか言ったか?」

 

「ふざけんなって言ってんの!あんたどんだけ自分の事大事じゃないの?!死んでもいいだって?馬鹿な事言うのも大概にして!」

 

私が急に怒鳴り出したからか彼は驚いて「な、何キレてんだよ」と言っているが今そんな事は関係ない。

 

「さっきから聞いてれば自分の事は何も話さないで!そんなに私が信じられないの?!」

 

「いや信じる信じないの問題じゃなくてだな」

 

「じゃあ答えてよ!あんたは何者でなんでこんな事してるのか!」

 

息を切らしながらいい終えた私はストレスが溜まっていた事もあって頭に血が昇っていたのか言い終えると冷静になり行き場の無かったストレスを彼にぶつけている事に気がついて申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

 

「ごめん…言い過ぎた…」

 

「いやいいよ、言わない俺が悪いんだし」

 

私が謝ると逆に彼が謝ってきてもうよくわからなかったが彼が優しい人だって事はわかる。

 

「でもごめん。やっぱり言えないや」

 

悲しそうな表情でまた謝ってきた彼の目はどこか遠くの虚空を見ている様でとても辛そうだった。

 

「…言えない理由って?」

 

「…もう誰かを失うのは嫌なんだ。身近な人も、知らない人も。俺の事を知ってもしもの事があったら俺は一生後悔する」

 

後ろを向いて夜空を見上げる彼の右頬には一雫の涙が流れていてそれを右腕で拭うとこちらに向き直る。

 

「さて、らしくない事言ってる場合じゃなさそうだな。下がってろ」

 

今話していた優しい雰囲気からさっきまでの真剣な雰囲気の彼になると私を庇う様に前に出て立つと戦闘体制に入っていた。

 

「もう二度と…二度とあんな思いはしたくねぇ!」

 




次回はこのまま本編進めるかサイドストーリー出すか未定になります。

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