ホロライブオルタナティブ~彗星に捧げる星詠みの詩~ 作:星夜見流星
面白かったです。
「焔君!?」
それはほんの一瞬の出来事だった。急に彼がふらついたと思ったら目の前で倒れたのだ。
「焔君!焔君ってば!」
私は急いで彼の元に行き直ぐ仰向けにして安否を確認する。
(息はしてるけど意識がない…)
息があるだけマシなのかそれとも何かした方がいいのか混乱して上手くまとまらない頭で考える。
「そうだ!ちょこ先生なら…」
自分の知り合いで医師でもあるちょこ先生ならなんとかしてくれるに違いないとスマホを取り出し通話をかける。
『はいはーい、すいせい様どうかした?』
「ちょこ先生!友達が急に倒れて意識がなくて!」
数コールしたあたりで通話に出たちょこ先生に一通りの事情を説明しひとまず迎えに来てもらう為場所を聞かれたので答えてちょこ先生が来るのを待ちつつ彼の容態を確認する。
「熱っ!?凄い熱…さっきは全然だったのに」
体感で軽く四十度はあるだろうその身体は外傷は無いもののいたる所に内出血をしているのか肌の色が変わっている。
「《力無き者に癒しの風を》」
兎に角今はさっき教えてもらった魔術で応急処置をした方がいいと思いやってみるが。
「全然治らない…ッ!。なにいまの…?」
発動はしているが全く効果がなく、それどころか治療をする為に手を翳している所から黒い稲妻が出た瞬間静電気が流れる様な感覚に襲われる。それはまるでこちらを拒絶しているかの様な。
(諦めない)
例え拒絶されようが目の前で苦しんでいる人が居るのに助けない方がどうかしてる。
そんな思いを胸に治療を続けていると広場の入り口辺りに魔法陣が出現する。
念の為預かっている銃を手に取り銃口を魔法陣に向けるが現れたのは先程通話で助けを求めた癒月ちょこその人だった。
「ちょこ先生こっち!」
「遅くなってごめん!って誰かと思えば鏡華様!?ガチィ?!」
自分達の場所まで走ってくるちょこ先生は彼の事を知っているのか驚いていた。
「それで容態は?」
「凄い熱があってそれと内出血もしてるみたいで…ずっと応急処置はしてるけど効果なくて…」
容態を話すとちょこ先生は彼の身体に手を当てて何かの魔法を使い始める。
「何かの負荷に身体が耐えられてない状態ね。熱と内出血はそのせい。私もこんなに弱ってる鏡華様を見るのは初めてだから何が原因かわからないけど」
「どうにか出来ないの?」
「こればっかりは鏡華様の許容量の問題だから時間をかけるしかないかな。ちょこに出来るのは症状を和らげてあげるぐらい」
ちょこ先生は手を離して首を振った後に一つ提案してくる。
「とりあえずここにいてもなにもできないしちょこの診療所に行きましょうか。一通り準備はしてきたから転移したら直ぐに始めれるし」
「なら荷物だけ取って来る!」
一言声をかけて自分の荷物と焔君の荷物を取りに行く。
「あった」
さっきまでいた茂みの奥に私のバッグと彼の道具を見つけて拾い上げ急いで戻る。
「お待たせ!」
「それじゃあちょこの近くにきて」
そう言うとちょこ先生は来た時と同じ転移魔法を使って私達を自分の診療所の一室に転移させる。
「それじゃあ急いで治療しちゃうから終わるまですいせい様は部屋の外で待っててもらえる?」
ちょこ先生に「うん…」とだけ返事をして病室を出ると直ぐ目の前に椅子が置いてありそこに腰掛けて一息つく。
彼が助かる事を祈りながらしばらく休んでいると病室のドアが開き中からちょこ先生が出てくる。
「ちょこ先生焔君は!?」
「症状は酷いけど命に関わるような状態じゃないから大丈夫」
私は命に別状がないと聞いて「よかったぁ…」と胸をなで下ろした。
「それですいせい様はどうする?だいぶ暗くなってしまったけれど」
恐らくこの後どうするかについてだろう。彼の事も心配だがそろそろ帰らないとお姉ちゃんが心配してしまう。
「私は…」
直ぐに返答できない私にちょこ先生が話しかけてくる。
「お姉さんも心配してるだろうし起きたら連絡してあげるから帰った方がいいんじゃない?」
専門家であるちょこ先生がそう言うならば大丈夫なのだろう。私は「ちょこ先生がそう言うなら…」と言って渋々頷き帰り支度をする。
途中ちょこ先生が少し待っててくれれば送っていくけどと言っていたがそこまでしてもらうのは気が引けるので断り診療所を後にした。
「ハァ、寒」
外に出て上を見上げれば気温が低い事で星が輝きを増して綺麗な夜空になっておりそろそろ冬になる事を告げていた。
(なんでこんな事になったんだろ)
ただ気分転換に星を観に行っただけなのに気づけばとんでもない事に巻き込まれていた。
あまりにも非現実的過ぎて実感がないけれどわかったのは自分が今まで平和に暮らしていた中で『焔鏡華』という一人の人間が命に関わる危険な仕事をしているという事。
そしてそれのおかげで私達は平和に生活出来ているという事。
「焔君大丈夫かな…」
思い浮かぶは死に物狂いで戦う彼の姿。
負ける気がしないって言葉は本当だったが少しでもミスを犯せば死んでいたであろう行動がかなり見られた。実際最初に戦った時は死にかけている。
それでも再度戦いに挑んだのは彼のプライドなのかそれともただの自己犠牲か。
そんな彼を放っておけないと思うのは何故だろう。
人柄に惹かれたから?いや、まともに話したのは今日が初めてだからそれはない。なら死にに行く様な彼を見過ごせないから?いや、これも違う。
柄にもなくあんな事言ったが彼が勝たないと生きて逃げれる気がしなかったから仕方なくという面が強い。
それならなんであんな風に助けに入ったのか。いくら考えても答えに辿り着けないまま歩き続けていると目の前に見知った建物が見える。
「いつの間に帰ってきたんだろ」
考えながら歩いていたら気付けば自分が住んでいるマンションの前に立っていた。
マンションに入りエレベーターを使って部屋がある階まで上がり自分の部屋の前に立つ。
時刻は夜の二十二時を回ろうとしておりかなり遅くなってしまった。きっと姉も心配しているだろう。
何か言われるのを覚悟し鍵を使い扉を開けて中に入る。
「ただいま…」
「あ、おかえり〜」
リビングからお姉ちゃんが顔を覗かせて出迎えてくる。
「遅いから心配したよーって何かあったの?」
「えっ、なんで?」
「なんでってそんな思い詰めた顔してたら誰だってわかるよ」
誇らしげな顔をするお姉ちゃん。いつもはこういうのに疎いのだけど何故か今日はバレてしまったらしい。
「それで何かあったんでしょ?お姉ちゃんでいいなら話聞くよ?」
お姉ちゃんが話を聞くと言ってくれるがこんな話信じてくれるのだろうか。それより約束もあるしあまり話したくはない。
でもこの気持ちを打ち明けたらどれだけ楽になるだろうか。
「じゃあ…少しだけ」
そうしてお姉ちゃんに迎えられリビングに行く。私が晩御飯を食べてないのもあってお姉ちゃんは料理を作りながら話を聞いてくれる。
仕事が上手くいかなくて気分転換してた事、そこで彼に会って話をした事、思いの外それが楽しかった事、そして事件に巻き込まれた事。
流石に約束があるから彼が魔術師で私も適性があるというのは言わなかったけどお姉ちゃんは真剣に聞いてくれて一通り話し終わったぐらいで口を開く。
「つまりすいちゃんは危ない目にあった代わりに王子様に会ったわけだ」
「うん。危ない目にはあったけど全然違うから」
この姉は事の重大さをわかっているのだろうか。普通なら自分の妹が死んでもおかしくない事件に巻き込まれたと聞いてこんな反応は返ってこないはずだが。
いつも通りふわふわした口調で喋る姉に一発何かしてやりたいが今はグッと堪える。
「でもすいちゃんを守りきった鏡華君は王子様だと思うけどな〜。鏡華君かっこよかった?」
「…いや、別に」
「あー図星だー!」
「もーうっさい!」
やっぱりこの姉一発ぶん殴ってやろうか。
「まぁまぁすいちゃんはこういう普通の女の子がしてる青春に程遠かったんだからいいじゃん。はい、ご飯できたよ」
お姉ちゃんはテーブルの上に晩御飯を並べながら話を続ける。
「兎に角鏡華君が目を覚ましたらちゃんと御礼言わなきゃ駄目だよ?」
「わかってますよーだ」
私は適当に返事をした後ご飯を並べ終わり席に着いたお姉ちゃんを見て大事な事を思い出した。
「そういえばお姉ちゃん。焔君を家に入れてたらしいじゃん」
正面に座る姉は急にバレたくない秘密がバレたからかビクッと身体が跳ねる。
「エッ。ナ、ナンノコトカナー?オネエチャンワカンナイナー」
目を逸らしていい逃れようとするお姉ちゃんに圧をかけながら「食べたら少し話そうか」と言うと「ハイ…」と返って来るのだった。
すいちゃんのキャラ崩壊について
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流石にし過ぎ
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いいぞもっとやれ