ホロライブオルタナティブ~彗星に捧げる星詠みの詩~ 作:星夜見流星
目が覚めたら知らない天井だった…というのはよく聞く話だがまさか実際に体験するとは思わなかった。
「何処だここ」
「よかった。意識が戻ったのね」
急に聞き慣れた声がしたのでその方向を見ると見知った人物が立っている。
「ちょこ先生がいるって事は」
「えぇ、ちょこの診療所よ」
やっぱりか。
最後の記憶がふらついた所だからもしかしてとは思ったがどうやら意識を失ってたらしい。
「俺どれぐらい寝てました?」
「大体三日ぐらいね」
結構寝てたのか。おおよそ力の解放で身体が耐えきれなくてパンクしたってとこか。
久しぶりなうえに一気に解放すればこうなる事は予想できたがあの状況で生き残れたと考えれば安いものだろう。
「すいせい様に感謝しなきゃだめよ?」
「星街に?」
「ちょこが行くまで治療し続けてくれたおかげで回復が早かったんだから。それに毎日お見舞いにも来てるし」
知らない間にだいぶ迷惑かけてたのか…。
「そういえば今何時ぐらいです?」
「17時過ぎよ」
「ちなみに今日中に退院とかって…」
「んー、本当は経過観察で後一日はいて欲しいんだけど昨日の時点で症状も治まってるし本人の意思次第かしら」
起きたばかりの患者が退院するかしないか決めるって本当にプロの医者かよ。
「ただし、ちゃんと検査だけはしてってもらうけど」
遅かれ早かれ検査はしなきゃいけないだろうし「まぁそれぐらいなら」と了承してちょこ先生に連れられて診察室に行く。
検査というからなにをするのかと思えば魔力検査と身体検査の二つだけであまり時間はかからなかった。
寝てる間に着替えさせられていたらしく貸出用のパジャマを着ていたので洗われていた自分の服に着替え椅子に座って検査結果が書かれた書類を見ているちょこ先生の前に座る。
「うーん。身体の方は問題ないけど魔力性質が変わってるわね」
「あまり話せないんですけど変わったというか戻ったというか。これに関しては俺の意思なんで問題ないんで」
「まぁそういう事情があるなら詮索はしないけど。はい、検査終了。後は帰っても大丈夫よ」
「すみません無理言って」
「別にいいから気にしないで。調子が悪くなったらいつでも来ていいから」
前言撤回。やはりこの人は一流の医者だ。
「助かります」
「それじゃあお大事に」
診察室を出る時に会釈をして診療所から出ると走ってきたのか肩で息をしている星街がいた。
「よっ、今から帰るってよくわかったな」
「ハーハー、ちょこ先生から、連絡もらって」
「だからってわざわざ走って来なくても」
「だってキミの連絡先知らないし」
「別に明日学校で会えるだろ」
「学校じゃ怪しまれるだけだし。変な噂が広まったら困るでしょ?」
「お前は困るだろうな」
「お前はって…キミは困らないの?」
首を傾げる星街に断言する。
「学校の噂なんて気にしてないからな。第一そんなあることないこと言われて振り回される程俺は暇じゃねぇ」
「はぁ…キミが羨ましい。私なんて少しでも噂になるだけで大騒ぎだし」
溜息混じりで羨ましがられても困るんだが彼女はアイドルとしての面があるから仕方ないか。やれやれと言った感じの彼女は面倒だと言わんばかりにスマホを取り出して操作しSNSの画面を見せてくる。
「ほら、ちょっとそれっぽい事で検索かけたら直ぐに出てくる」
画面を見れば『すいちゃんって彼氏いるの?』やら『誰かと待ち合わせしてるの見かけたけどもしかして男?』など彼女の心境などお構いなしのチャットで溢れかえっていた。
「私に彼氏がいたらなんだっての。あんたらには関係ないだろ」
「口悪くなってんぞ」
画面を見て機嫌が悪くなった星街に指摘するとキレ気味に返事が帰ってくる。
「うるさい、ていうか私に彼氏がいたらそんなに駄目か。アイドルが恋愛しちゃいけないなんて所属事務所が決める事であってファンが決める事じゃないんだが?」
「それはそうだな。で、お前の所属事務所は?」
「うちは禁止されてないよ。暗黙の了解で社内恋愛は禁止って聞いたけど」
「ふーん」
アイドルといえば恋愛禁止ってイメージがあるが禁止してない事務所なんてあるんだな。それよりもここまでの会話で疑問に思う事が一つある。
「今更だけどお前って恋愛に興味あんの?」
「え?」
予想してない質問を投げかけられたからか不機嫌だった目の前の少女はぽかーんとしている。
「だって興味なかったらこんなに熱くならないだろ?」
星街は少し吃った後に渋々と言った感じで話し始めた。
「すいちゃんだって興味無いわけじゃないよ。そりゃ女の子なら誰だって憧れるし目標でしょ、でも今はアイドルとしていろんな人に歌を届けたいから叶わぬ夢かな」
アハハと苦笑いしながら話す彼女は何処か悲しげで寂しそうだった。
そんな彼女に問いかける。
「両方やろうとは思わないのか?」
「今は忙しいし片方しか出来ないかな。それにアイドルと付き合える人なんてそうそういないって」
言われて思うが確かにアイドルである彼女と付き合う人がいたとして間違いなく彼女のスケジュール、マスコミの殺到、挙げ句の果てには良く思わないファンからの嫌がらせなどもある筈だ。そんな状況になったら普通の人間なら精神が壊れてしまうだろう。
それでも恋愛関係になりたい人はいるだろうが最終的にその相手を決めるのは彼女であって俺達ではない。
「いつか叶うといいな」
小声で言ったからか聞こえなかったらしく星街が「なんか言った?」と聞いてくる。
「なんでもねえよ。それよりそろそろ行くか」
「それもそうだね」
「今日こそ送ってくからな」
この前はアクシデントで家まで送ってやれなかったが今日は違う。二度あることは三度あるということわざがあるが三度目の正直というのもある。なにより今回は体調も回復して少しすれば住宅街だ、何かあっても救援を呼べば誰かしら来てくれる。
「それじゃあお願いしようかな」
数日前とほとんど同じ会話をして二人並んで歩き出す。
帰り道お互いに最近の出来事や好きな事を話して笑ったり共感したり殺伐とした日々を送る俺にとって久しい体験だった。
焔君との帰り道。
時間にすれば二十分ぐらいだろうか、初めて話したあの日と同じくただ他愛もない話をしただけなのに楽しくて仕方がない。
こんな気持ちになるのはお姉ちゃんと事務所のみんなだけだったはずなのに…。
「星街。おい星街ってば」
「え!?な、なに?」
「なに?じゃなくて、家に着いたぞ」
考え事をしていたことでぼーっとしてたらしく彼に呼ばれて初めてマンションの前にいるのに気づいた。
「あ、本当だ」
「なんだ考え事か?危ないから一人の時は周りに気をつけろよ?」
「うん、気をつける」
「ならよし、じゃあ俺は帰るな」
そう言って彼は背を向けて歩き始め私はその背中を見続ける。
「あれ?鏡華君来てたの?」
背後から聞こえた声に驚き振り返るとそこには右手に買い物袋を持ったお姉ちゃんが立っていた。
「お姉ちゃん出かけてたんだ」
「うん。それより〜鏡華君となにかあったの?」
ニヤニヤしながら見てくる姉にイラッとくるが今は外にいるので我慢する。
「ただ送ってもらっただけだから」
「なんだつまんないの。もう少し早く帰ってこれたらご飯のお誘い出来たんだけどなぁ」
「いや急に言っても無理でしょ。家の事あるだろうし」
「それもそうかぁ、ちょっと残念」
うちの姉は人に料理を振る舞うのが好きな為残念がっているが彼には彼の生活があるしこればかりは仕方ない。
「そんなことより早く入ろうよ。すいちゃんお腹減った」
「そうだね。それと今日のご飯はハンバーグだよ〜」
こうしていつも通りのやり取りをしながら家に帰るがこの時の私は知らなかった。
彼の過去がとても残酷だということを。
UA10000越えありがとうございます、おかげ様で執筆のモチベが保てているのでありがたい限りです。
それとV最協お疲れ様でした。自分は極度のバトロワ嫌いでエペはやって無いのですが三人がとても楽しそうにしていて見ているこっちも楽しかったです。
そしてすいちゃんの努力の成果を見て自分も新しい挑戦をする勇気をもらったのでこれからも頑張りたいと思います。
すいちゃんのキャラ崩壊について
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流石にし過ぎ
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いいぞもっとやれ