ホロライブオルタナティブ~彗星に捧げる星詠みの詩~ 作:星夜見流星
※姉街の表記は普通に姉街にさせていただきました。
すいせいが自分の姉がいたことに驚いた後、彩歌がとりあえず座って奈々実が来るのを待とうと提案しとても気まずい雰囲気のなか四人は座りながら待っていた。
鏡華の隣には相変わらずお茶を楽しんでいる彩歌が座り、正面には星街姉妹が座っている。
片や出されていたお菓子を食べている姉、片や情報の処理が出来ておらず座ってからピクリとも動かなくなった妹。そんな目の前に座る姉妹を見ながら鏡華自身も何故姉街がここにいるのかずっと考えているが全く分からなかった。
なにせ彩歌と姉街の接点がなんなのかが不明だからだ。流石に自分の知らないところで起こったことまでは知りようがない為こればかりは直接本人達の口から聞くしかない。
鏡華の考えがまとまったところにドアがノックされ「失礼します」と一礼して追加のお茶とお菓子を持ってきた奈々実が入ってきた。
「お待たせいたしました」
「やっと来たわね」
彩歌は持っていたカップとソーサーをテーブルに置き、待ちくたびれましたといった感じだ。
「それじゃあ奈々実も来たし始めましょうか」
彩歌の声かけによって固まっていたすいせいも我に返り顔を上げ、そんなすいせいに奈々実がお茶を淹れたティーカップを差し出す。
「まずは鏡華、今回の件はご苦労様。貴方に任せて正解だったわ」
「そりゃどうも」と答え奈々実が淹れて差し出したお茶を飲む鏡華に彩歌は力強く「ただし」と付け加え話し続けた。
「封印を解いたのだけは許さないわよ。あなた、自分がなにをしたのか本当にわかってるわけ?」
やはりこの話になると明らかに不機嫌になる彩歌を見てすいせいは不思議に思うが今はまだ聞く時ではないと黙って聞き続ける。
「わかってるうえでやったんですよ。あそこで出し惜しみなんてしたら今頃葬式ですって」
「それとも死んで帰ってきたほうがよかったですか?」と言う鏡華に彩歌はそういう訳じゃないと言って席を立ち、近くにある自分の仕事用デスクに置いてある書類を手に取る。
「ほら、これが頼まれてた今回の調査結果よ」
「助かります。てか珍しく仕事が早いっすね」
「珍しくは余計よ!」
資料の束をペラペラ捲りながら一言余計に言った鏡華に怒りつつ彩歌は小さく咳払いをしてすいせいに話しかける。
「さて、星街すいせいさん。どうせそこの馬鹿は大した話はしてないだろうしあなたも聞きたいことが沢山あるんじゃないかしら」
「誰が馬鹿だって?」
黙って聞いていたすいせいに今回の一件について聞きたいことがないか尋ねる彩歌に当の本人は少し考える素振りを見せ口を開いた。
「なら…お姉ちゃんがここにいる理由を聞いてもいいですか?」
すいせいは自分と一緒に来た鏡華も同じことを考えているだろうと思い何故姉街がここにいるのかを尋ね、それを聞いた彩歌は姉街を見ると頷き話し出す。
「実はね、昔鏡華君のお母さんに助けてもらったことがあったの。」
「母さんに…?」と聞く鏡華に姉街は首を縦に振り話を続ける。
「あれはまだ私が小学生だった時、遊びに出かけた帰りに何かに呼ばれてる様な気がして細い路地に入ったらね」
「ゴーストに襲われたと」
「うん、鏡華君大正解」
そのまま話を続ける姉街によるとその後偶々近くにいた鏡華の母親がゴーストの気配を察知し直ぐ様駆けつけ、ゴーストを倒して姉街を保護したことでその時鏡華の母親の助手をしていた彩歌と知り合い今に至るという。
「それでその事件がきっかけで私が探知系魔術に適性があるってわかって今に至るってわけ」
「なるほど。師匠が言ってた協力者はお姉さんだったわけか」
「そういうこと〜」
鏡華は以前彩歌から協力者がいると聞いていたが誰かまでは教えてもらえず、その正体が誰なのか気になっていたが今回話を聞けた事で悩みが一つ消えてすっきりしていた。
しかしこの場で唯一納得してない人物が一人。
話が終わるや否や呑気にお菓子を食べている姉の隣で目つきが変わったすいせいだ。
「お姉ちゃん。こんな大事な話すいちゃん聞いてないんだけど?」
姉街は自分を睨み警戒しているすいせいの頭を撫で始める。
「すいちゃん、魔術の話はその人が魔術を知らない限り絶対に言っちゃいけないの。例えそれが大切な家族であってもね」
頭を撫で続ける姉街に不満なのか顔をむすっとさせるすいせい。
鏡華はそんな微笑ましい光景を見て寂しげな表情を浮かべ眺めていた。
「ねぇ鏡華、二人に大事な話があるの。私の工房好きに使っていいから少し席外してもらえないかしら」
「俺がいちゃまずいんですか?」
真剣な眼差しで鏡華を見つめ「お願い」と言う彩歌に鏡華はため息を吐きながら「わかりました」と席を立つ。
「話が終わったら連絡ください。俺から出向きます」
「えぇ、わかったわ。奈々実、鏡華を工房まで連れて行きなさい」
「かしこまりました」
ドアを開け外に出ていく鏡華と奈々実を見送り、彩歌はすいせいに話しかける。
「さてと。すいせいさんは鏡華について聞きたいのよね?」
唐突に聞かれたすいせいは身体をびくつかせる。
「やっぱりね。あなた達が来る前にお姉さんから聞いていたのよ、妹が鏡華の話で何か思い詰めてるってね」
すいせいは自分の知らないところで姉が勝手に話していた事実を知り再度姉を睨むが当の本人は目を逸らし窓の外を眺めていた。
「すいせいさん、あなたもしかして鏡華から何か感じとったんじゃない?」
実をいうとすいせいがここに来た理由がまさにこの話だった。あの日あの場所で鏡華と話、家族絡みの話になった途端暗くなった表情。そしてあのとても辛そうな叫び。
あれを見て聞いたすいせいは居ても立っても居られず鏡華に言ってついてきたのだ。
「彩歌さん教えてください。焔君に何があったんですか?。あの日、私は焔君と話して楽しかったのと同時に彼が生きてるのが辛そうに感じたんです…」
言葉が終わるにつれ小声になって行くその声に姉街はすいせいを抱き寄せ彩歌は少しの沈黙の末何かを決心し二人に話す。
「いいわ。ここまであの子に関わってしまった以上あなた達二人は知る権利があるでしょうし。ただし、この話は誰にも言わない事。いいわね?」
厳重注意を聞いたすいせいは頷き、彩歌は席を立ち自分のデスク近くにある窓際に移動する。
「あの子の両親は一流の魔術師だったの。特に母親、焔家の先代当主だった
窓枠に手を掛け、外を眺める彩歌。
「どんな時でも冷静沈着、それでいて誰にでも優しく誰よりも強かった。後輩だった私は運良くあの人のパートナーとして魔術を教わりながら一緒に仕事をこなしたわ」
淡々と喋る彩歌はデスクの引き出しを開けて中から一枚の写真を取り出しテーブルに向かって歩き出す。
「まだ未熟だった私はあの人に憧れて自分もあの人みたいになろうって思った。ほら、この右に写ってる人が聖那さんよ」
二人に写真を差し出し指を指した先には満面の笑みを浮かべ鏡華に似た容姿をしたロングヘアーの女性が立っていた。
「仕事をこなしていくうちに気がついたら年月も経って、あの人が結婚して鏡華が生まれた。その頃には私も独立してフリーの魔術師になってよく遊びに行ったり相談を聞いてもらったりしてとても有意義な時間だったわ」
思い出に浸る彩歌。
しかし「でもね」と言う一言で場の雰囲気が一気に変わってしまう。
「私にとっても、あの子にとっても幸せな時間は唐突に終わりを告げたの」
悲しげに言う彩歌にすいせいは「それって…」と聞くと彩歌は頷いた。
「えぇ、今から七年前にあの子の両親は死んだわ。それもたった一人の男に殺されるかたちで」
あまりの内容に言葉を失うすいせいとそれを黙って聞いている姉街。
そんな二人に彩歌は話を続ける。
「私は両親に逃された鏡華を保護してから助けに行ったけど間に合わなかった。家は焼かれて二人は殺され…残されたのは鏡華ただ一人。勿論放って置けない私はあの子の保護者になって必要なものは全て与えた。でもそれは与えただけにすぎなかったのよ」
悔しそうに吐き捨てた彩歌の手は血が出てもおかしくないぐらい力強く握られる。
「すいせいさん、鏡華の炎の色を見たわね?」
「は、はい。急に赤から黒に変わってびっくりしましたけど」
「魔術には属性があるのだけれど、中にはとても希少な属性があるの。その一つが闇。幼少期に過度な精神的ショックを受けた人間が使えるようになる属性よ。と言っても全員が全員使える様になるわけじゃないけど」
話を聞いたすいせいは自分の想像より遥かに超えていた内容に理解が追いつかず何も聞く事が出来ずにいた。
そんな思考が追いつかない状況のすいせいにさらなる追い打ちがかかる。
「闇属性は全属性中トップの破壊力を持つ代わりに使用者の精神を狂わせる。記録が残ってる闇属性の使用者は例外なく全員が精神崩壊による暴走で死んでるわ」
明かされる事実にすいせいは「なんとかならないんですか?」と聞くが彩歌は首を横に振り「無理ね」と答える。
「そうならない為に私が開発した封印術を施しておいたのだけどあの術はあくまで気休め、三回までしか掛けられないのよ。そして今回解いた封印が三回目だった」
「それじゃあ焔君は…」
「本人次第だけど私の予想はもってあと二年。それが鏡華が精神を保っていられる限界ね」
鏡華が鏡華でいられる時間は僅か二年。
話して日は浅いがそれでも受け入れたくない自分がいる。
せっかく気が合う知り合いに会えたと思えばたったの二年で別人になってしまう。
すいせいは自分の中で渦巻く感情に戸惑い、考えながら渇ききった口を開け彩歌に問う。
「本当に残り二年以内に解決策が見つかる可能性はないんですか…?」
「私も手当たり次第に試してみるけど今までの封印ですら奇跡に近かったレベルだから見つかったとしたらあの子は神に魅入られてると思った方がいいわね」
カップを持ち冷めきったお茶を飲み終えた彩歌はすいせいに一つの提案を持ちかける。
「すいせいさん、よければ鏡華のパートナーになってもらえないかしら」
「え?」
「鏡華が例外なだけであって基本的に魔術師は成人するまでの間二人一組で行動するのよ。そこであなたさえよければ私の元で修行してあの子の隣にいてあげて欲しいの。勿論あなたはアイドルとしての活動があるから断ってもらっても構わないわ」
急な誘いに困惑するすいせいは一つだけ彩歌に尋ねる。
「どうして…私なんですか?」
「鏡華が初めて興味を持った相手だから」
彩歌の考えてる事が全く読めないのもあり、どうすればいいかわからない。
そんな時、混乱するすいせいに今まで何も言わずに聞いていた姉街の口が動き優しく言った。
「自分のやりたい様にやっていいんだよ?。お姉ちゃんは応援するから」
姉からの一言もあって勇気づけられたすいせいは一つの結論に達する。
「ありがとうお姉ちゃん。彩歌さん、私に魔術を教えてください」
迷いを吹っ切れたすいせいは真剣な眼差しで彩歌の顔を捉える。
「魔術師になったらあなたの人生は大きく変わる。それでもいいのね?」
「はい、覚悟のうえです」
彩歌から見てもすいせいの目は本人も言っている通り覚悟を決めた者の目をしていた。
(鏡華…いい子と知り合えてよかったわね)
そう心の中で思い「わかったわ」と言う彩歌の顔は笑っていた。
「それじゃあ日程はそっちに合わせるから連絡先交換しましょうか」
こうしてすいせいは魔術の世界に足を踏み入れるのだった。
〜すいせいside〜
たった今魔術師になる正式な手続きを終わらせた私は焔君を探しに中庭に来ていた。
本人にはまだ黙っておきたいのもあって気を利かせてくれた彩歌さんが
奈々実さんに連絡して何処にいるか聞いたところ中庭に行ったとのこと。
周りを見渡すと意外にも彼は直ぐ見つかった。
「寝てるし」
木陰で気持ち良さそうな寝顔で寝ている焔君。
今思えば学校での彼は寝ているイメージしかないが本当の彼を知った今なら疲れと寝不足によるものだとわかる。
寝ている彼の隣に座ってスマホを取り出し時間を見ると十七時になろうとしていた。ここに来たのが十六時前だから一時間以上経っていたらしい。
(可愛い寝顔)
興味本位で焔君の頬を突くと「んぁ?」と言う声と共に瞼が少しだけ開く。
「なんだ星街か…。話は終わったのか?」
「うん。ごめんね、寝てたのに起こしちゃって」
「別にいいよ、どうせ呼ばれるまで暇だったから寝てただけだし」
「よっと」と身体を起こす焔君。
その姿を見て思うのはどうしてこの人がこんな苦労をしなきゃならないのかということ。
自分でもなんでこんなに気にかけるのか分からないけど今の私がやりたい事がこれなのは間違いがない。
「私頑張るから…」
小声で呟く私に「ん?なんか言ったか?」と聞いてくる彼になんでもないと返して別の話題に切り替える。
タイムリミットまであと二年、それまでになんとしてでも救う方法を探し出してみせる。
私はそう胸に誓うのだった。
ご無沙汰してます作者です。この前のオルタナティブとアースのPVかなり凄かったですね。オルタナティブは世界観がだいぶわかるPVになっていたのであの背景をこちらにも組み込んでいく予定になります。
そろそろ回想編も終わる予定なのでキャラ設定は回想編が終わり次第になると思います。
それでは次回もよろしくお願いします。
すいちゃんのキャラ崩壊について
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流石にし過ぎ
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いいぞもっとやれ