ホロライブオルタナティブ~彗星に捧げる星詠みの詩~ 作:星夜見流星
月日が経つのも早いもので日付はもう大晦日である十二月三十一日。
後数時間で日付が変わり新年を迎えるという中、ここ焔家では激戦が繰り広げられていた。
「おら、死ねぇ!」
「あぶねぇな!」
「私の前にいるんじゃねぇ!」
「お前性格変わりすぎ!?」
約一名による暴言が飛び合う中それでもなお戦い続ける二人。
片や逃げ続ける鏡華、片や追いかけ続けるすいせい。そんな二人の戦いも長くは続かず決着の時が近づいていた。
「鏡君逃げるなぁぁぁぁぁぁ!」
「いや逃げるって!」
「これでもくらえぇぇぇぇぇ!」
すいせいの手によって何かが投げられるが鏡華は培った技術でそれをかわす。
「すいちゃん、俺の勝ちだ」
「クッソォォォォォォ」
鏡華は操作をやめてすいせいの方を見ると彼女が本気で悔しがっている姿が見える、自身が手に持つ端末の画面に映る2ndの文字を見ながら。
そう、二人はレースゲームをやっていたのだ。
ことの発端は三時間前に遡る、鏡華が自室にあるパソコンで調べ物をしているとドアがノックされると共にすいせいがきてゲームの練習相手になって欲しいと頼まれた。なんでも事務所内で大会があるとかなんとかで前回は優勝出来たのだがかなり接戦だったという事もあり練習したいとの事だった。
鏡華もやった事のあるゲームだったので断る理由もなく練習に付き合い始めたのだがそこからが長かった。
始めた当初はブランクもあり鏡華が負け越していたのだが慣れ始めると接戦になり今となってはすいせいが負け越していた。そして負けず嫌いな彼女の闘志に火がつき今に至るというわけだ。
「流石に疲れたから休憩するか」
「やだ、勝つまでやる」
「じゃあ手抜くぞ?」
「それは駄目、本気でやって」
「はぁ、じゃあ後一回だけな」
あまりにも譲らないすいせいに鏡華は折れてコースを選択する。コースを決めるルーレットが回りコースが決まるとそのコースはすいせいの得意コースだった。
「今度こそ勝つ」
そう意気込むすいせい。
スタートの合図が始まり画面にGOの文字が出ると共に二人はスタートダッシュを決め最初は抜いて追い越してを繰り返すのだがどんどん差がついていき最初から飛ばす鏡華に追いつけずまたしてもすいせいは二位に停滞してしまいそのまま一周目が終わり二周目に入る。
「さっきの意気込みはどこいった?」
「くっそぉ」
二周目に入っても抜かせないすいせいはチャンスを伺うが隙を見せない鏡華。一向にチャンスが来ないままゲームは最終ラップに突入するのだがコースが残り半分というところですいせいに勝機が訪れる。後ろにいるNPCが鏡華に対してアイテムを使ったのだ。
「まじかよ」
「今だぁぁぁぁぁ!」
攻撃は鏡華に命中しスタンさせられている脇を抜けて遂にすいせいは1位に躍り出る。鏡華はアイテムを使い追撃をするがすいせいもアイテムを駆使して防御していく。
「いっけぇぇぇぇ!」
そして鏡華は勢いのある彼女を止める事が出来ず、すいせいは1位でゴールする。
「勝ったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「流石に今回は完敗だわ」
やっと勝てた事で大はしゃぎのすいせいを見て苦笑いし立ち上がり、キッチンに行き冷蔵庫から紙パックのりんごジュースを取り出すとすいせいに投げる。
「ほら、追加のりんご」
すいせいは投げられたりんごジュースをキャッチするとストローを刺してちゅうちゅう吸っていく。
「ぷはぁ、生き返る〜」
「もう二十二時過ぎか、風呂の準備終わってるし入ってこいよ」
「んー、じゃあ行ってこようかな」
「…着替え忘れんなよ」
「はーい」
同棲を始めた頃に自室に着替えを忘れた彼女が家を彷徨いた結果バッタリ会って殺されかけた事があるので一種のトラウマになっていた。
それが一回ならまだいいのだが割と高確率であるから困っているのだ。
そんな鏡華の苦労を知ってか知らずかわからないがりんごジュースを飲み終えたすいせいは立ち上がり早足でリビングを後にする。
鏡華はそれを見送るとズボンのポケットから自分のスマホを取り出して起動する。
画面を見ると彩歌から『救援求む』というメッセージが来ていたがどうせ山の様に溜まった書類仕事の手伝いだろうと思い『元旦と正月ぐらいゆっくり休ませてください』と返す。すると直ぐに悲しそうな顔文字だけが送られてくるがいつものことなら書類の山は自業自得でできたものだろうから手伝う理由がない。
「みこちに連絡だけしとくか」
連絡先からみこを選択して『明日の朝お前ん家の神社に初詣しにいく』とだけ送りスマホの画面を閉じて座っていたソファに勢いよく横になる。
「あー疲れた」
久しぶりの長時間プレイで脳が疲れているのか急激な眠気に襲われるが時計を見れば時刻は夜の二十二時前、今寝たら年明け前に起きれる気がしないがそれでも眠いものは眠い。
「三十分だけ寝よ…」
鏡華は天井を見上げて大きな欠伸をして目を閉じる、目を閉じれば後は早いもので寝息をたてて眠りについた。
「鏡君お風呂あがったよーってあれ?」
風呂から上がりリビングに戻ってきたすいせいは部屋を出る前まではいた人物がいない事に気づき部屋を見渡していた。
「鏡くーんいないのー?」
呼びかけるが返事はなくリビングはシーンと静まり返っている。
「部屋かな」
鏡華の自室に行こうとした瞬間微かだがソファの方から何かが聞こえて来るのに気づき、すいせいはソファまで近づき覗いて見るとそこには気持ちよさそうに寝息をたてて寝ている鏡華の姿があった。
「またソファで寝てるし」
「おーい起きろー」と声をかけて頬を突いても起きる気配はなく、仕方がないので身体を揺すってみると寝ている彼はこちら側に寝返りを打ってきた。
「あっ」
勿論彼を抑える物などなくソファから綺麗に落下し床に激突する。
「いってぇ!」
「やっぱり落ちた」
「いてて、すいちゃんいたのか」
「いたのか、じゃなくて思いっきり落ちてたけど大丈夫?」
「まぁなんとか。それより今何時?」
ぶつけたところをさすっている鏡華はすいせいに時間を聞くと身体をおこす。
「二十三時になるとこ」
「てことは大体一時間ぐらい寝てたのか」
「よかったね、年明けまでに起きれて。起きなかったら二度と起きてなかったかもよ?」
「えっ?もしかして寝過ごしてたら首切り落とされてた?」
鏡華が急な命の危機に怯えてる隣で「さぁ、どうだろ」と微笑みながら言う。
「まぁいっか、俺も風呂行ってくるわ」
「いってらっしゃ〜い」
すいせいはリビングから出ていく鏡華を見送ると「さーて練習練習」といいながらゲームを始める。その後風呂に入り休憩した事もあってかミスも少なく安定したプレイをする事ができ、上位を取り続けたすいせいは時間を忘れてゲームに没頭し気がつけば年明けまで残り三十分をきっていた。
そんな時リビングの扉がガチャリと開き、風呂から帰ってきた鏡華が現れる。
「戻ったぞー」
リビングに居るであろう人物に声を掛けると
「またやってんのかよ」
「やれるだけやっておきたいし」
そう言いながら操作を続けるすいせいを横目に飲み物を取りに行く。
「すいちゃんなんか飲む?」
「んー、じゃあココア」
「はいはい甘くないやつね」
要望を聞きケトルでお湯を沸かしてココアを作る。
鏡華は慣れた手付きでココアを作り終えると中身の入ったマグカップを二つ手に持ちリビングに行き、ゲーム中の彼女に片方を差し出す。
「ほらよ」
「ありがと」と言った彼女は丁度区切りがついたのか、ゲーム機を置くと差し出されたマグカップに口をつける。
「ふぅ、美味しい」
ココアを飲むすいせいの隣に座り自分の分を少し飲み、隣にいる彼女に話しかける。
「はー、もうすぐ今年も終わりか」
「すいちゃん来年は忙しくなるから覚悟してね」
「わかってるよ、誰がスケジュール確認してると思ってんの」
鏡華は自分のスマホを開くとすいせいと共有しているスケジュール表を開き、現段階で決まっている来年の予定を確認する。
しばらく予定表を見ているとすいせいが自分の顔を見ている事に気づいた。
「どしたの?」
「いや鏡君が死ななくてよかったなって」
「なんだそれ、俺が死ぬと思った?」
笑いながらそう言うとすいせいは真顔で「うん」と言って来たので「即答かよ」と返してやる。すると彼女は身体を斜めにし、こちら側に預けてきて一言言ってくる。
「生きててよかった」
目を細めて微笑むすいせいにふと疑問に思った事を聞く。
「逆に俺が死んでたら?」
「死んでも追いかけたかな」
鏡華は明らかにやばい事を断言するすいせいの額にデコピンをする。
「ばーか、自分の命は大事にしろよ」
やられた本人は痛かったのか涙目でやられた場所を押さえていた。
「うぅ、痛いしその台詞そっくりそのまま返すから」
「いつも言ってるけど俺だって死ぬ気はないよ。ってもう日付変わるじゃん」
スマホで時間を見ると後一分で日付が変わるところだった。
そして鏡華はどうせならと隣に居る最愛の彼女の名を呼ぶ。
「すいちゃん」
「なーに?」
「ありがとな、こんな俺の隣にいてくれて」
珍しく自分の彼氏が素直になったのが嬉しかったのか、言われたすいせいは笑みを浮かべると目を閉じ顔を近づけてくる。
いくら鈍感な鏡華といえどここまでされたら彼女が何を求めているか察しがつくので自分も顔を近づける。
そして二人の姿が重なった時外から鐘の音が聞こえ、年が開けた事を知らせてくる。鐘の音が聞こえなくなると二人は顔を離し目の前にいるパートナーに言うのだった。
「「今年もよろしく」」
遅くなりましたがあけましておめでとうございます。本当は三ヶ日に出したかったんですけど思ってたより長くなってしまった…
今年ものんびり書いて更新していこうと思います。
すいちゃんのキャラ崩壊について
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流石にし過ぎ
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いいぞもっとやれ