ホロライブオルタナティブ~彗星に捧げる星詠みの詩~ 作:星夜見流星
それとすいちゃんのPC治れぇー!
年も明け一ヶ月以上が経った二月半ば。
家主が留守の中一人の少女が上機嫌に鼻歌を歌いながらキッチンに立っていた。
「〜〜〜♪」
鍋で沸かしたお湯に砕いたチョコレートを入れた耐熱ボウルを重ねてヘラを使いかき混ぜ溶かしていく。
いつもサイドテールにしている髪は解いており水色のエプロンをしている少女、星街すいせいは来たるべき日に向けて準備をしていた。
「よし、後は型に流してと」
用意した型にチョコレートを流し込み、冷やし固める為に冷蔵庫に入れる。
「鏡君喜んでくれるかな」
チラリと近くにあるカレンダーを見れば二日後に赤い丸で目印がつけられていた。
その日は二月十四日で世間ではバレンタインと呼ばれる女性が好きな異性または仲のいい友達などにチョコレートを贈る日であり、彼女も例外でなく自身の思い人である焔鏡華に渡そうと市販のチョコを溶かして作っているのである。
「そういえば最初に渡した時はただの板チョコだったっけ」
そう言って記憶を遡り中学の時に渡したのはコンビニで買ったただのチョコだったのを思い出した。
(確かあの時は何も考えずに渡したんだよね)
-数年前-
「はいこれ」
放課後になり部活がある生徒は部活に行き、なにもない生徒はさっさと帰宅しているぐらいの時間。
他に生徒がいない教室の窓際にある自分の席で寝かけている彼に私はチョコを差し出すと、彼は顔を上げて不思議そうにこちらを見てくる。
「なにこれ?」
「なにって、バレンタインのチョコだけど?」
そう答えると彼は「あー、そういえばそんなイベントあったな」と言ってチョコレートを見ていた。
「バレンタインですら覚えてないって、本当に今までどんな生活してきたの?」
「それについてはこの前教えただろ。ふわぁ〜あ、寝みぃ」
大きな欠伸をして目元を擦る彼からはかなり疲れている事が感じられるので私はさっさと要件を済ませる事にする。
「ていうかなに?要らないの?」
「誰も要らないなんて言ってないだろ」
そう言って彼はチョコレートを受け取ると自分の鞄にしまう。
私は目的を果たしたのを確認してこれ以上彼の邪魔をしないように教室の出入り口に歩き出すと「星街」と呼ばれ振り返る。
「ありがとな」
その時自分に向けられた彼の表情はとても優しく何故か自分の顔が熱くなるのを感じていたが、今思えばこの時から彼に惹かれていたのかもしれない。
その時の私は素直に感謝されたからか恥ずかしさのあまりすぐに出入り口の方に向き直し歩き出す。
「お返し…忘れないでよ」
出て行く前に一言だけ言うと後ろから「任せとけ」という言葉が聞こえてくる。
それを聞き届け扉を開けて教室を出ると私は自然と笑みを浮かべて家に帰った。
(確かあの後お菓子の詰め合わせもらったんだよね。嬉しかったけどかなり貰ったから申し訳なかったんだよなぁ)
思い出に浸っていたすいせいはふと我に帰り時計を見てみると時刻は午後五時になりかけていて後一時間もしないうちに鏡華が帰ってくる。
「やば!?もうこんな時間じゃん!急いで片付けないと…」
「ただいまー」
「!?」
ガチャッ「帰ったy、ってどしたのすいちゃん」
鏡華はリビングの扉を開けた途端目の前にすいせいがいた事に驚いているが「あははは…」と笑っている彼女を見て何かを察したのか「ふーん」とだけ言って話を続けた。
「まいっか、それより少し寝るから七時に起こしてくれる?」
「う、うんわかった。オヤスミー」
自室に向かう鏡華を見送り姿が見えなくなるとすいせいは安心して溜息が出る。
「ハァ…片付けよ」
そして迎えたバレンタイン当時。
「はい、鏡華君。ハッピーバレンタイン」
「ん、あずきか。ありがとう」
昼休みになりいつもと変わらず机で寝かけていた鏡華は誰かが声を掛けて来たことで顔を上げて見てみるとそこには包装紙に包まれたチョコレートを渡してくるAZKiの姿があった。
「こうしてると昔を思い出すな」
「ふふ、そうだね。あ、それとこれはそらちゃんから」
「そら先輩から?」
新たに渡されたチョコレートを受け取ると裏面に手紙が貼り付けられており、それを剥がして見てみると手紙には『いつも手伝いありがとね』とだけ書かれており彼女の忙しさが伺えた。
「仕事が忙しくて渡せないからって」
「なるほどな。てか無理に今日じゃなくても」
「女の子はそうはいかないの、それじゃあ私は席に戻るから」
「ああ、ありがとな」
「どういたしまして」と手を振りながら自分の席に戻るAZKiは途中で近くにいたすいせいとすれ違うとすれ違いざまに「頑張れ」と言って遠ざかって行く。
それを聞いたすいせいは一瞬ドキリとするが意を決して鏡華に近づき声を掛ける。
「きょ、鏡く「鏡華とすいちゃんみっけ!」
「あれ、みこちじゃん。今までどこに行ってたんだよ」
すいせいが声を掛けようとした時、急に教室の入り口からみこの声が響き渡る。
「ちょっと買い物。はいこれ」
早歩きで鏡華のところまで来たみこは右手に持っていた白い紙袋を鏡華に差し出す。
「なにこれ?」
「ふっふっふ、聞いて驚け。これはみこ行きつけのたい焼き屋さんで今日限定で売ってるチョコレートたい焼きだよ!」
「ふーん。で、貰っていいのね」
「うん、二つ入ってるからすいちゃんと仲良く食べてね」
「はいはい。で、そのすいせいさんは俺になんか用で?」
みこの話を聞き終えたので近くに来ていたすいせいに問うと「う、ううん。なんでもない、気にしないで」と言うので二人は首を傾げると昼休み終了のチャイムが鳴るのだった。
結局渡せなかった。
あの時みこちが鏡君に渡した時に渡しておけばよかったとすごく後悔したがもう遅い。
お昼休みが終わり午後の授業を受けた後の放課後に渡そうとまた話しかけたのはよかったのだが。
「鏡く「すいちゃんごめん!少しの間逃げ回ってくる!」
そう言って鏡君は自分の席から立つと全速力で教室から出ていきほどなくして廊下から男子の騒がしい声が聞こえてくる。
「いたぞ!焔だ!」
「逃すな!追え!」
「今年も大量に貰いやがって!」
「「「「「ホムラァァァァァァァァァ」」」」」
「ほんと懲りねえな!お前らだって貰ってんだから別にいいだろ!」
「「「「「義理だわバカヤロウ!」」」」」
「んな贅沢な!?」
自分の彼氏自慢になってしまうが実際鏡君はこの学校に来てからかなりモテるようになった。確かにいざという時にカッコいいし頼りになる自慢の彼氏だけどこうも目に見える事があると私も妬きそうになるがこればっかりは仕方がないと割り切っている。
聞こえてきた感じ今年も女子から沢山のチョコをもらった鏡君に嫉妬した男子が数十人で追いかけているみたいだが逃げてる本人曰く、この中の何人かはただ面白そうだから混じっているだけらしい。
声が遠くなり窓の外を見ると鏡君はどうやら校庭に逃げたらしく上から見ると動物の群れが集団で狩りをしている様な光景だった。まぁ狩れないだろうけど。
「あぁもうめんどくせえな、テメェら全員まとめて
やはりというか案の定誘き出されたとも知らずに追いかけていた連中は鏡君の起こした爆破に巻き込まれて吹っ飛んだ。
そもそも何故外に逃げた時点で校舎を壊さない為の場所移動である事に気がつかないのだろうか。
「「「「「まだまだァ!」」」」」
あ、これ長くなるやつだ。そう思いながら私は仕事の時間ギリギリまで爆音が鳴り止まない校庭を眺め続けた。
そして時間が経ち仕事に行く時間になり仕方なく下校する為校庭に出ると遠くからまだ爆音が鳴り響いていた。
「まだやってるんだ…」
こうなると当分終わらないだろうからスマホで仕事に行きますとだけメッセージを送る。その後事務所に向かい収録などを終わらせて家に帰ると鏡君は帰ってなかった。
スマホを見てもメッセージは無く仕方ないのでリビングに行くとテーブルの上に置き手紙が置いてあり急な仕事で遅くなるとの事。
「メッセージでよこせっつうの…」
手に持った置き手紙をくしゃくしゃにしてチョコレートをテーブルの上に置き椅子に座る。
時刻は夜の十時を回っているが鏡君が遅くなると言う時は大体日付けが変わるぐらいになる。
せっかくのバレンタインなのに好きな人にチョコを渡せないと思うと自然と涙が出てくる。泣いても仕方ないのはわかっているのだが付き合い始めてだいぶ経つのに今更勇気が出ず渡せなかった自分が惨めでたまらなかった。
「グスッ、早く帰ってこいよバカァ…」
顔を俯かせ泣き出したすいせいは仕事の疲れもあり数分後には意識を手放していたのだった。
そして数十分後。
辺り一面暗闇に包まれたた夜の住宅街を街灯に照らされながら走る鏡華の姿があった。
(ハァ…ハァ…ったくまた仕事貯めやがって)
すいせいが仕事に行った十分後に追ってを全て倒した鏡華は屋上で休憩がてらにスマホを見ていると二つのメッセージが来ており、一つはすいせいから仕事に行くというものでもう一つは自分の師である彩歌から仕事を手伝って欲しいとの事だった。
返しきれない恩があるのとそんなに時間がかからないだろうと思い引き受けたのだが余りにも書類の量が多く結局時間がかかってしまった。
そして鏡華は自分の大切な彼女であるすいせいに早く会いたいと思い本来なら歩いて三十分ぐらいかかる彩歌の家から全速力で走って自宅に向っていたのだ。
(絶対怒ってるだろうなぁ)
いくら鈍感な鏡華でも今日という日を考えれば彼女が何を言いたいか分かっていたが多くの妨害によって話す事も出来ずに気がつけば日付けが変わりかけていた。
やっとの思いで家の前に着き玄関ドアに手を掛ける。
「スゥ、た、ただいまー…」
家に入り声を掛けるが家の中はしんとしていてかなり静かだった。
とりあえず荷物を置いて洗面所で手洗いうがいを済ませてリビングに行く。
「すいちゃーん…って寝てたのか」
リビングを見渡せばキッチンの前にあるテーブルで眠っているすいちゃんがいた。
「いつもなら部屋で寝てるのに珍しいな」
このままでは風邪をひきかねないので部屋に運ぶのに近づくとテーブルの上に何かが置いてあり手に取ってみる。
「これって…」
持ち上げてみると微かにだが甘い匂いが漂い中身がお菓子である事がよく分かる。裏面には『鏡君へ』と書いてあり自分のだという事、そして寝ている彼女の上着の袖が濡れている事も。
「やっぱり寂しい思いさせちゃってたか。ごめん、一緒に居てやれなくて」
自分のせいで彼女が悲しい思いをして泣いていた事を正直に受け止めていつもと同じ撫で方で頭を撫でる。
「んぅ、鏡君?」
撫でられる感覚で起きたのか目を細めながら顔を上げてこちらを見るすいせい。
「あぁ、ただいま」
「グス、ただいまじゃないよ…すいちゃんを一人にさせて、何様の…つもりで…」
聞きたかった声を聞いた事で安心したのか急に泣きだすすいちゃんを静かに抱きしめて「ごめん」とだけ言うと彼女も抱きしめ返してくる。
そして泣き続けて数分経ったあたりで落ち着いてきたのかすいちゃんが口を開く。
「明日…」
「ん?」
「明日一日付き合ってくれたら許す…」
「デートって事?」
聞き返すと「聞くなバカ」とだけ言って腕の力を強めてくる。
「それぐらいお安い御用ってかこっちから誘うつもりだったし。いいよ、明日一日付き合う」
元々バレンタイン当時にすいちゃんが仕事だった事もあり、それなら次の日に埋め合わせで出かけようと前もって事務所側に二人分の休暇を申請しておいた。
「そういえばこれ食べてもいい?」
そう言って彼女が作ったであろうチョコレートを見せる。
「え?別にいいけど」
本人から許可が下りたので包装紙を開いて包まれていた小さな箱を開けると中には星やハートなど様々な形をしたチョコレートが6個入っていた。
「じゃあいただきます」
試しに星型のチョコレートを摘み口に入れると自分には丁度いいぐらいの甘さが口の中に広がり彼女のこだわりが窺える。
「ど、どう?」
「甘さも丁度いいし美味しいよ」
「よかったぁ」
「ほらよ」と言ってハート型のチョコを摘んですいちゃんの口の中に入れると「むぐっ」と言う声がした後に口を動かして食べ始めた。
「…甘いんだけど」
「作った本人がそれを言うか」
口直しにリンゴジュースを取りに行くすいちゃんを眺めながら貰ったチョコを食べ進めていく。
(そういえばみこちから貰ったたい焼きがあったな。ま、後で食べればいいか)
そんな事を考えるとストローを刺した紙パックを片手にすいちゃんが戻って来る。
「ねぇ鏡君。明日何処か行きたいところある?」
「んー?特にないけど」
「じゃあ久しぶりに星見に行こうよ。明日雲ひとつない快晴なんだって」
すいちゃんが星を見に行きたいと言う時は何かしら悩んだり後悔したりした時が多い。そう考えると今日の事で何かあったのだろう。
「わかった。いつもの場所行こっか」
そう返すとすいちゃんは笑みを浮かべ、この表情を見るだけで癒されている辺り自分も大概彼女に依存しているのだなと思い知らされる。
「あ、見に行く前に買い物行くから覚悟しといてね?」
どうやら癒された代償はとても大きかったらしい。明日のデートで街中を振り回される自分の姿が想像出来たが自業自得だから何も言えず「…はい」と答えて二人揃って部屋に戻るのだった。
そして翌日。
「鏡君こっちこっち!」
「ちょっと待てって!」
午前中から街に出かけた二人はショッピングモールの中におり、服やアクセサリーを見て回りたいと笑顔で生き生きと鏡華を連れ回す幸せそうなすいせいの姿があった。
弱めなすいちゃん如何だったでしょうか。
作者自身もあまり想像出来なかったのでキャラがブレてますが多めに見てもらえればありがたいです。
あずきちと鏡華の関係は本編がもう少し進んだ時に明かす予定です。現在進行形で本編も少しずつ出来てきたので遅くても来月の半ばぐらいまでには上げれればと思います。
02/24訂正
今回の騒動は大変悲しい結末に終わりましたがこの様な悲劇が繰り返されない事を祈りながら作者自身も前に進もうと思います。
そして最後に彼女がホロメンである事実は決して消えないし消させたくないという僕自身の意志もあるのでこのタイトルにおける出演をお約束致します。
すいちゃんのキャラ崩壊について
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流石にし過ぎ
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いいぞもっとやれ