ホロライブオルタナティブ~彗星に捧げる星詠みの詩~ 作:星夜見流星
マスターの店を出た鏡華と彩歌は彩歌の家に行く為に喫茶店近くにある駐車場に向かっていた。
向かっている最中に鏡華はまだ疑問に思っている事を聞くことにした。
「そういえば師匠、なんで急に行くなんていい出したんですか?」
「んー?」と言っている彩歌に鏡華は顔を向けずに話を続ける。
「だってそうでしょう。最初から行きたいなら師匠がこの依頼を受ければいいじゃないですか。」
鏡花が一番引っかかっていたのはそこなのだ。
これでも彩歌は魔術戦闘に関して右に出るものは数人しかいないと言われるほどの実力者。そんな人がわざわざ弟子の仕事について来るというのだからそれ相応の理由があるはずなのだ。
「弟子の成長を確認しに行くって事じゃだめ?」
「疑問形の時点で誤魔化す気満々じゃないですか。」
鏡華は「本当のことを話してください」といい彩歌の方を見る。彩歌は観念したのかため息を吐く。
「はぁ、わかったわかった。ただここじゃ話せないから車で話すよ。」
「ほらあれ」と彩歌が指を刺した方を見ると駐車場には真紅のスポーツカーが止まっていた。
「目立つなぁ…」
車に乗り込み彩歌がエンジンをかけ、駐車場を出る為にアクセルを踏んだところで鏡華は口を開く。
「それで?理由はなんなんですか?」
やはり彩歌はあまり言いたくないのかいい顔はしなかったが諦めたのか喋り出した。
「今私が引き受けてる仕事覚えてる?」
「確か魔界と現世で起きてる異常事態の調査ですよね」
この世界は鏡華たちが住む現世、悪魔などが住む魔界、天使が住む天界などいろいろな世界が存在する。ほかにもカクリヨというところも存在するらしいのだがその世界はまだ全てが謎に包まれているという。
「そうそう、それで調査してたら気になる結果を見てね。今世界的に大量の悪霊やら死霊やらが出現してるのは知ってるわよね?」
「知ってるも何も今魔術師の大半がそれの処理をしてるんじゃないですか。」
「まぁ、そうなんだけどね。それで知り合いに頼んでその出現区域と対象の出現総数を調べてもらったの。そしたらね…」
「この街が一番多かったわけですか」
「正解…と言いたいけど少し違うのよね」
そう言う彩歌はかなり複雑な顔をしていた。
「どうもこの街が事件の中心になってるっぽいのよ」
「…は?」
今この人なんて言った?この街が事件の中心?こんな何処にでもあるような街が?
「ちょっ、ちょっと待ってくださいよ師匠!この街が中心ってどう言う事ですか!」
「落ち着きなさい鏡華。何事も冷静にって教えたでしょ」
「こんなこと聞いて落ち着けると思いますか?!だってこの街は!」
「あなたの両親が守り続けた街だから?」
「…っ!」
「私だって見た時は驚いたわ。だって至って普通の街が事件の中心になってるんですもの」
「でもね」と言い話を続ける彩歌
「もし敵の狙いが街じゃなくて別のことだとしたら?確かに一般の人から見たら普通の街だけどこの街に流れてる地脈は質がいいしマナも豊富なのはあなたもわかるでしょう?」
確かにこの街は地脈もマナも揃っているが仮に敵が一人だとしたらそれならわざわざ死霊などを各地に出すだろうか。確かにこの街から他の魔術師を遠ざける事はできるがこの事件が起き始めたのは約3年前。明らかに期間が長すぎる。そうなると狙いは…
「ねぇ鏡華、もし今回の黒幕が貴方を狙ってるとしたらどうする?」
「…それを言うって事は根拠があるんですよね?」
「そう言う貴方も思い当たる事あるんじゃない?」
そう問いかける彩歌に鏡華は考えていた事を話す。
「擬似的とは言え永遠の命が手に入る焔家が代々受け継いできた禁術指定の魔術」
鏡華自身も術名は知らないがとある場所に焔家当主が行く事でその詳細が分かると母親から聞いたことがある。
そして両親が殺された事で現焔家当主は焔鏡華ただ一人。
もし両親が殺されたあの日とこの事件が繋がっているのだとしたら辻褄が合う。
とは言え禁術がある場所なんて鏡華が知らないことは相手もわかっているはずなので黒幕が場所を知らなければ話にならないはずだ。
「結局家柄のせいでこんなことになるのか…」
今まで家系のせいで辛いことが沢山あったため鏡華は家系というものが好きではない。これが普通の家系なら良かったのだろうが先祖代々焔家は魔術の家系であり詳細不明とは言え禁術まで所持している。
そのため悪意のあるものに狙われたことが記された文書がかなり残されていた。
「魔術家系に生まれた宿命ね。こればかりは諦めなさい」
そう言いながら彩歌はハンドルを握る手を強める。
「師匠は…」
「ん?」
「師匠はこういう時どうしてきましたか?」
ほんの数秒の沈黙。それでも鏡華は自分の師がこのような状況をどうやって乗り越えたのか気になって仕方がなかった。
「そうね、簡単に言えば正面から全部叩き潰したわ。私にはそれが一番早かったの」
「ほら、着いたわよ」という彩歌の顔を見た鏡華は思う。例え素がポンコツでもやはりこの人は自分の尊敬する近代の天才と謳われる東郷彩歌その人なのだと。
だとすれば自分がやる事は一つだ。
「師匠」
「なーにー?」
「俺も正面からぶつかりますよ。師匠の弟子ですから」
そう宣言した鏡華の顔を見た彩歌は微笑んで鏡華に告げる。
「よく言った。それでこそ私の弟子ね。」
彩歌の家で準備を終わらせた二人は時刻を見れば丁度昼過ぎあたりだったため昼食を食べに彩歌お気に入りのイタリアンレストランに行った。
店に入り席につきメニュー表を見るとかなり高めの値段だったが師匠の奢りだしいいかと思い遠慮なく頼む鏡華。
店を出たあと彩歌が泣きかけていたのは言うまでもあるまい。
その後は予定地に行き戦闘用のトラップやら人払いの結界の準備をしていたら辺りは薄暗く時刻は午後十八時。
「師匠、準備はいいですか?」
鏡華は右手の指輪を確認しながら彩歌に問う。
「ええ、いつでもいいわよ」
愛用の細剣を腰に下げ魔術用のカードを持つ彩歌。
「それじゃあ、焚きますよ」
そう言うと鏡華は死霊を誘き出すために彩歌が用意した香にパチンと指を鳴らし火を付けた。
香が焚き始まり五分ぐらい経った頃だろうか。
周りに霧が立ち込み始め遠くからガシャガシャと何かが近く音が聞こえ始める。
「師匠…」
「囲まれてるわね…」
周りを見れば霧の中から骸骨がうじゃうじゃ出てきている。
「二百弱なんて嘘つけ…索敵に五百はかかったぞ」
「これは少しまずいわね。退避は空からすればいいとしてこの数を野放しにはできないし」
二人にとって骸骨達が持つものがぱっと見近距離でしか使えない武器ばかりなのが唯一の救いだろう。だが後続に遠距離持ちがいないとは限らないため物量で一気に攻められたら全滅は免れない。
それに相手は死者なのだ。もう死んでいる身だからこそ死に対する恐怖がない分捨て身も考慮しなくてはならない。
「めんどくさい事になったな…」
「それでも私達がやるしかないのよ」
そう言う彩歌はいつも通り冷静に周りを見て手持ちのカードを宙に並べる。
「それもそうですね。帰りを待ってる奴もいますしさっさと片付けて帰りますか!」
そう言った鏡華はコートの内側から匣を一つ取り出し右手の指輪に藍色の炎を灯す。
「それは帰りを待つ人がいない私に対する皮肉かしら?」
「違いますって、それより来ますよ」
前を見れば骸骨達が少しずつ距離を詰めてくる。だが二人はこの状況だからこそ笑っていた。
「師匠と共闘なんて久しぶりでワクワクしますよ」
「奇遇ね。私もよ」
やはりこの師弟は似たもの同士の戦闘狂である。鏡華は笑ってはいるが決して油断はせずに最善の手を脳内で導き出し目の前にいる骸骨の大軍に叫ぶ。
「こいよ亡者共!またあの世に送り返してやる!」
鏡華は叫ぶと同時に指輪の炎を匣に注入する。すると中から炎の刃を備えた片刃の戦斧が二つ出てきた。鏡華はそれを掴むと持ち手の先を繋げ一つの武器にする。鏡華はカードを並べ終わった彩歌と視線を交わし彩歌は反対側の敵と向かいあう。
お互いに背中を預けた瞬間彩歌の魔術が発動する。
「さぁ!開演よ!『我が魂は業火の如く、我が道を阻む愚か者共を焼き尽くせ!』」
詠唱が終わると同時に彩歌の前にいた骸骨の一部の真下に魔法陣が浮かび上がりそこから火柱が現れる。
火柱は敵を飲み込み中にいた奴らは一瞬で灰と化していた。
今の攻撃で大体二十体前後は倒しただろうか、これを合図とばかりに周りの骸骨達は一斉にこちらに侵攻を開始する。
「さて、こっちも開戦だ!」
鏡華はそう言うと敵群目掛けて戦斧を投げそれに着いていく様に駆け出す。戦斧が敵の胴体を真っ二つに切断しなおも前進を続けている間に鏡華は指輪に炎を灯残り二つの匣を開ける。
中から出てきたのは一組の双剣と二丁の銃。だがそれらは落ちる事無く鏡華の近くで宙に浮遊している。
鏡華は双剣の方を持つと目の前にいる骸骨を一体切り裂き近くにいたカトラスを振りかぶる奴の足を蹴り骨を砕く。
「ショット!」
叫ぶ鏡華に反応し両脇に待機していた銃からレーザーが照射され閃光は足が砕かれバランスを崩した奴の後ろにいた敵諸共消滅させる。
そして双剣を別の奴に投擲すると自身の右側から敵を切断しながら戻ってくる戦斧を片手で受け止める。
「今のでざっと二十…さぁて後何体だァ?」
鏡華はそう呟くとまた敵目掛けて駆けていく。
こうして街の片隅で誰も気づくはずのない二人の戦いが始まる。
だが鏡華は気付かないだろう、ただ一人この戦闘に気づき全力で向かってくる人物がいる事を。
戦闘描写は本当に難しい…次回はすいちゃんsideになります。出来れば近々鏡華の設定も公開したいですね。