ホロライブオルタナティブ~彗星に捧げる星詠みの詩~   作:星夜見流星

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ライブまでに間に合った…


オフの日の三人

鏡華が家を出た後すいせいは用意された朝食を急いで食べて食器を片付けると時刻は九時半になろうとしていた。

集合場所の駅前は徒歩二十分ぐらいなので丁度いいぐらいだろう。

いつも使っている黒のショルダーバッグを肩に掛け玄関で靴を履き扉を開く。

外に出ると春になったばかりのためまだ少し寒いぐらいの風が吹くが日差しは暖かくすいせいを照らしていた。

「行ってきます」と言い扉を閉め鏡華から譲り受けた合鍵で鍵をかける。

同棲を始めた頃は見慣れなかった景色も今では見慣れた景色になっている。

少し時間があるとはいえ待たせるわけにもいかないので少し早足で目的地に向かう。

そんな中考えるのは一緒に住んでいる彼のことだった。

 

(鏡君大丈夫かなぁ…)

 

あの家の家主である鏡華は仕事に行くと必ずと言っていいほど負傷して帰ってくる。

負傷と言っても大小様々で軽い時は切り傷で済むが酷い時は全身血塗れで打撲などもしていてかなり酷かった為鏡華がいつも世話になっている病院に駆け込んだ程だ。治療の後余りにも自己犠牲が酷かったので泣きながら頬を叩いた。

その時にこれ以上自分を傷つけるのはやめる様に注意したがそれでも怪我して帰ってくる事はまだある。

やっている事がやっている事のため怪我をするのはわかるのだが万が一があった時に泣くのはこっちなのだから無理はしないでほしい。

それでも止められないのは初めて助けられ、話したあの時が原因なのだろう。あの時の自分の様に彼のした事で誰かが救われるのならそれが彼にとっての幸せなのだろうから。

そう思いながらすいせいは駅まで間早足で行くのだった。

 

 

 

 

 

駅前に着くと少し遠くにあるベンチに見覚えのある人物が見える。

 

「おーいみこちー!」

 

「にぇ?」

 

スマホを弄っていたらしい彼女の名はさくらみこ、すいせいの同期であり本人達曰くビジネスフレンド。そしてさくら神社の巫女でもある。

 

「みーこーちー!にゃっはろー!」

 

「すいちゃんにゃっはろー!」

 

そう言いながらすいせいはみこのもとに駆けて行く。

そして…

 

「喰らえーーー!!!!!!」

 

抱きついた瞬間にみこの背後に腕を回し死なない程度に絞め始めた。

 

「死ねオラァァァァ!!!」

 

「なんでぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

「ちょっ待ってギブギブ」と言うみこにすいせいは満面の笑みで一言

 

「自分の胸に手を当てて聞いてみな?」

 

「本当に記憶にないにぇ!」

 

「なら死ぬしかないね」

 

「なんで!?ちょっ本当に苦しい死ぬ死ぬ!」

 

みこはじたばた抵抗はするもののすいせいががっちりと拘束している為意味はなかった。

 

「あはは、本当に二人とも仲がいいね〜」

 

そんなやり取りをしている二人に一人の少女が話しかけてきた。

 

「あ!助けてそらちゃん!すいちゃんに殺される!」

 

すいせいがそらと呼ばれた人物に意識が向いた事で腕の力が弱まった瞬間みこは器用に脱出するとそらの後ろに待避した。

ときのそら、すいせい達より少し先輩で所属事務所の看板アイドルでもある。

 

「一瞬三途の川が見えた気がするで…」

 

「ちっ逃げたか」

 

「逃げたか、じゃないよ!一体みこがなにしたってんだよ!」

 

「みこちが人の同居人に変な事教えるからでしょ!」

 

「ぐぬぬぬ」と唸りあってる二人にそらは「まぁまぁ」と言いながら間に割って入る。

 

「とりあえずすいちゃん原因を教えてもらえる?私今来たばかりだから全くわからないし」

 

そう言われたすいせいは事の発端を説明し始める。それを聞いたそらは「なるほどね〜」と言っているが当の本人はと言うと。

 

「みこ…そんな事言ったっけ?」

 

完全に忘れていた。

 

「ん〜鏡華君がそう言ってるなら言ったんじゃない?」

 

「全く覚えてないにぇー」

 

そう言っているみこにすいせいは強めに言う。

 

「とにかくこれに懲りたら鏡君に変な事教えない様に」

 

「りょ、了解しました(圧がすごいにぇ)」

 

「はぁ、全く。鏡君も鏡君で人の話を鵜呑みにし過ぎなんだよ」

 

ため息混じりに呟くすいせいにそらはフォローを入れ始める。

 

「でも鏡華君も悪気があったわけじゃないんでしょ?」

 

「そりゃあそうなんだろうけど…」

 

「鏡華君から聞いたよー?鏡華君昔から人付き合い苦手だって。多分だけどまだそこら辺の苦手意識あるんじゃないかな?」

 

「そういえばみこも鏡華から同じ話聞いた事あるにぇ」

 

昔から鏡華は生まれが魔術家系という事もあり周りと関わろうとしなかった。二人が言う様に人付き合いが苦手だったのもあるが関わったら遅かれ早かれその人に影響を与えると思ったからである。

そのため一般的に鏡華が魔術師という事はごく一部しか知らずここにいるメンバーでもすいせいしか知らない。

現代では魔界などから魔法と呼ばれる技術が広まったため使う人は多いが魔術はこの世界のごく一部の人間が先祖代々受け継いできた物。

受け継がれた物には焔家の禁術の様に表には公表出来ない様な物も存在するためこの世界では魔術師の存在は秘匿されていた。

例外としてすいせいの様に本人から教えられた、または偶然にも事件に関わってしまった人物は口外しない事を条件に知っていたりする。

 

そんな事を話した後少し暗い話をしたからか話題を変える為にそらが口を開く。

 

「とりあえずここで立ち話もなんだしどこか行かない?近くにケーキが美味しい喫茶店があるんだ〜」

 

そう言うとそらはスマホの画面で地図を開き二人に見せる。

 

「あ、ここ私も知ってる!いこいこ!」

 

地図を見るや否やそう言ったすいせいは一人店を目指し歩き始める。それを見た二人は笑みをこぼし話し出す。

 

「すいちゃんもだいぶ変わったね〜」

 

「恋は人を変えるって本当だったんだ」

 

「だね〜」

 

「すいちゃんは気付いてるのかな」

 

「どうだろうね〜でも」

 

みこはそう言うそらの顔を見るとそらは優しい眼差しですいせいの背中を見る。そして思った事をそのままみこに伝えた。

 

「今のすいちゃん凄く幸せそう」

 

「だにぇ」

 

二人がそう言うとついてきてない事に気づいたすいせいが振り返る。

 

「なにしてるの二人共!早くしないと置いてくよー!」

 

「はーい!今行くよー!」と返すそら。

 

「それじゃあみこち、行こっか」

 

「うん!」

 

みこはそらに笑顔で返事をして二人はすいせいのもとに歩き始める。

二人が追いつくと今度は三人仲良く人混みの中に消えていった。

 

 




今日無事に一回目のワクチンが終わりました。副作用が出ると思いますがすいちゃんのライブで元気を貰おうと思います。
皆さんも良き推し活ライフを。

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