ホロライブオルタナティブ~彗星に捧げる星詠みの詩~ 作:星夜見流星
「オラァ!」
戦闘が始まり一時間が経とうとしている中開戦時と変わらず鏡華と彩歌は連携しながら敵を倒していた。この間に倒した数はざっと二百は超えているだろう。
彩歌は細剣で斬りながら器用に魔術を詠唱し、鏡華は自身に身体強化を施し得意な近接戦闘と多彩な戦法で敵を殲滅していく。しかし敵の数が一向に減る気配がなくこちら側の体力と魔力だけがなくなっていくジリ貧な戦況になりつつあった。
「ちっ、消しても消しても湧きやがって。こいつらあと何体いるんだよ!」
「明らかに消してる速度に対して増える速度が追いついてる、とするとどこかに何かしらの仕掛けがあるって考えた方がいいわね」
背中合わせで話す鏡華と彩歌の周囲には大量の骸骨兵がいるのだが二人が言うようにその数は減る事なく包囲している状態だった。
「仕掛けって言っても場所が分からなきゃ話にならないですよッ!」
鏡華は自分達目掛けて特攻してくる奴らを宙に待機させていた銃を手に取り引き金を引く。引いた瞬間に銃口からはレーザーが照射され特攻兵の上半身が塵と化しその奥にいた骸骨兵もおまけと言わんばかりに消えている。
それを見た彩歌は一瞬だが奥に光るなにかがあることに気づいた。そしてそれを見せないように道を塞ぐ動きをする骸骨達。
「鏡華!今の出力と範囲2倍にして撃てるわよね?同じ方向に撃ちなさい!」
「撃ったら当分近接しかできなくなるんですが!?こっちの魔力量考えてくださいよ!」
「勝算があるから言ってるの、私を信じなさい!」
鏡華は叫ぶ彩歌の目をちらりと見ると確かに何か策があるようだった。
「了解、カバー頼みますよ!」
鏡華は飛ばしていた武器を全て自身の周りに引き戻しその中から二丁の銃を手に持ち魔力を込める。その間に戦斧は二つに戻り双剣と共に鏡華の周りを浮遊する。ビットコンビネーション、鏡華の持ち得る遠距離択の一つにして最強の守りである。
攻撃は最大の防御という事を追求し自律稼動のビットと化した武器4つが敵を切り刻む、その間に鏡華自身は遠距離からの攻撃に徹する事が出来る為チャージに時間がかかるこの状況で唯一の自衛手段だった。
「いけ、ソードビット!」
鏡華の掛け声と共に四基のビットは近くにいる敵を切り刻み遠距離からの狙撃兵は彩歌が魔術を使い鏡華に飛んでいく矢や弾丸を炎の壁で溶かし尽くし鏡華自身も孤立している奴らを足や銃による打撃で倒していく。
軽く二十体倒した頃だろうか、銃のマガジン部分が蒼白く輝き出し充填完了を知らせてきた。
「師匠スイッチ!」
その言葉を聞いた彩歌は思いっきり後ろに高くジャンプで後退し、それを見た鏡華は二丁の銃を彩歌が指定したポイントに向ける。
「フルバースト!」
引き金を引いた瞬間銃口に魔法陣が浮かび上がりそこから蒼白い巨大なレーザーが照射され正面の敵を呑み込んでいく。
「はぁ…はぁ…はぁ、今のでざっと五十…だけど俺は魔力ギリギリだ…」
鏡華のレーザー照射が終わるとその方向の奥に何か黒いものが見え.それは地面にあり黒一色で描かれた魔法陣だった。
「ナイス鏡華、あとは任せなさい!」
そう言った彩歌は自分の細剣を黒の魔法陣に投げる。剣は見事に魔法陣に突き刺さりそれを確認した彩歌は魔術の詠唱を始める。
『我はこの地を拒絶する!』
魔法陣無力化の魔術。初歩的なものだが最も効果的な術で唱え終わると同時に魔法陣から黒い電撃がはしり陣は消滅していった。
「もしかして今の…」
「そう、アンデット系の再生魔法陣ね。誰だか知らないけど魔力探知も阻害されてて厄介だわ」
指を鳴らし自分の剣の近くで小さな爆発を起こしその風圧で剣を飛ばしてキャッチする彩歌。それを見た鏡華は「相変わらず器用な」と呟きながら骸骨の頭部を打撃で粉砕する。
「もしかしてまだあったりします?正直今の射撃で魔力ギリギリなんですけど」
「さっきはあいつらがやたらとあそこの守りを固めてたからわかったけど見た感じもうなさそうね」
「それじゃああとは」
「えぇ、この残党を倒すだけよ」
鏡華は周りを見回して一つ思う。ぱっとみで敵は百五十体ぐらいだろうか、遠近中距離の武器持ちが多種多様におり自分はさっきの一撃で消耗が激しく戦力外になりかけている。そうなると師匠がやるのだろうがこの足手纏い状態の自分を守りながらは流石にきついだろう。
「俺…死にます?」
「何馬鹿な事言ってるの。もうすぐ援軍来るから頑張りなさい」
「援軍とは」
「それはきてからのお楽しみ」
「心配しかねぇ」
鏡華は残り少ない体力と魔力を使い武器の形態を元に戻し自分に突撃してくる敵を対処していくが奴らもそれをわかっているのか彩歌を最小限の数で足止めし鏡華に戦力を集中させる。
「はぁ…はぁ…きっついナァ!」
流石の鏡華も限界に達し大振りに振った拍子に身体の力が抜け、剣が手から離れてしまいそれをみた奴らが一斉に襲い掛かる。
「しまっ!?」
『青く煌めく星々よ、降り注げ!』
急に声が聞こえると同時に鏡華に向けて剣や斧を振り上げていた骸骨数体は突如として頭上に出現した水色の光に飲み込まれ光が消えるとその場には何も存在していなかった。
「鏡君!」
膝をつく鏡華が声のする方を見るとそこには今一番見たくない人物がこちらに走ってきていた。
「すいちゃん…なんでここに…」
ふらつく身体を無理やり動かし立ちあがろうとする鏡華の元に駆けつけたすいせいは倒れそうになる鏡華の身体を支える。
「君が心配だからにきまってんじゃん!彩歌さんから倒れるかもって連絡きて急いできたんだから」
「俺はまだやれるから早くここから離れろ…」
「そんな身体で戦うなんて無茶だから!」
「そうよ鏡華。貴方は十分働いたんだからあとはこっちに任せておきなさい」
二人が話していると離れて戦っていた彩歌が応戦しながら近づいてきた。
「それでもっ!」
「数は多い方がいいって?」
「っ!?」
自分の言おうとした事を言われて言葉を詰まらす鏡華に彩歌は続ける。
「はぁ…全く馬鹿言わないの。弱ってる弟子を無理矢理戦わせるほど私は人でなしじゃないわ。それに貴方を心配してるパートナーもいるのよ?」
彩歌に言われた鏡華はすぐ隣で自分の身体を支えてくれている彼女を見る。その顔は頼られていないからか怒っている様にも見えるが何より心配のほうが勝っていた。
「はぁ…分かりました。ただ援護だけはさせてください」
「それでよし」
観念した鏡華は脚につけているホルダーから実弾用のマガジンを取り出し二丁あるうち片方の銃のマガジンと交換しもう片方をすいせいに渡す。
「使い方は前に教えたからわかるだろ?」
「誰にものを言ってんの?」
「ふっ、それもそうか」
銃を受け取ったすいせいは左手に持ち替え武器生成の魔術を唱える。
『剣よ、我が元に来たれ』
右手に愛用のハルバードが現れそれを掴むすいせいを見た鏡華はコートの内ポケットから錠剤の入ったケースを取り出し中に入っている錠剤を三粒ほど口に放り込む。
「これでタイムリミット十五分ってとこか」
「今の薬何?」
「緊急時の魔力摂取剤。一時的に回復できるけどあくまで増やすだけだから効果切れたら増えた分減るけどな」
ケースには[安心安全こよ印]という如何にも詐欺っぽい文字が書いてあったが本人が気にせず飲んでいるのを見るに大丈夫なのだろうと思い何も言わないすいせいの肩に彩歌が手を置く。
「張り切るのはいいけど油断だけはしない様にね、何かあったら鏡華に殺されかねないし貴女も私の教え子なんだから。後は練習通り思いっきりやりなさい」
「ま、気楽に行けばいいさ」と言う鏡華に「わかった」と返すすいせいだったが微かにだがその手は震えていた。
それに気づいた鏡華は彩歌に「師匠、先に行ってもらってもいいですか?」と言い彩歌はそれを了承すると敵に向けて歩き出した。
それを確認した鏡華はすいせいに向かい合いハルバードを握っている彼女の右手に自身の左手を重ねる。
「誰だって戦うのは怖いよな。ただな、俺が絶対死なせないし怪我もさせないから!」
鏡華は重ねていた手を離し後ろを向くと右手に持っている銃の照準を正面の敵に合わせトリガーを引く。射出された弾丸は真っ直ぐ敵の骸骨型の頭部に直撃し骨を粉砕する。頭部がなくなった骸骨は後ろに倒れ、その衝撃でバラバラになりやがて灰になる。それを見た鏡華はすいせいに向き直すと彼女の目を見て真剣に言う。
「誰かの為じゃなくていい、お前はお前の為に戦え」
それを聞いて自信がついたのか手の震えは収まりその目は真っ直ぐと鏡華を捉えて苦笑いするすいせい。
「心配してくれてありがと、もう大丈夫だから」
「それでこそ俺のパートナーだ」
「初めてだけど連携出来るか?」と鏡華が聞くと「勿論」と返すすいせい。
すいせいは鏡華の横に移動しお互いの銃を敵に向ける。
「それじゃあ」
「行きますか」
鏡華が言ったのを合図に二人で同時に引き金を引き、敵群に向かって走り始めた。
骸骨の群れは先行していた彩歌からこちらに向かってくる二人にターゲットを変えたがすいせいは接敵した瞬間銃の魔弾を乱射し近接になれば自身のハルバードで敵を薙ぎ倒す。
鏡華はすいせいの少し後ろに位置し彼女が対処しきれない奴等を実弾で的確に撃ち抜いていく。
それを遠目で戦いながら見ていた彩歌は素直に感心していた。
(流石鏡華ね。すいせいが前線で派手に動き回って暴れてるのに自分に来る奴を対処しながら誤射するどころかあの子が動きやすいように一発一発最善手で狙撃してる。それにあの子もあの子よ、初めてのコンビネーションなのに鏡華を完全に信用しきって自分のペースで戦ってる。それも実戦は初めてなのに。全く二人揃って逞しくなっちゃって)
彩歌がそんな事を思ってるなんて全く知らずに二人は淡々と敵群を処理していく。
鏡華が「左!」と言えば右の敵をハルバードで粉砕しながら左手の銃を感覚で敵に向け引き金を引くすいせい。鏡華もすいせいが撃った魔弾が当たらなかった場合を想定し自身も他の敵を倒しながらいつでも撃てるようにしている。その姿はまるで長年コンビとして戦ってきたプロに匹敵していた。
「コイツでラスト!」
そうしているうちに気づけば最後の一体となりすいせいがハルバードでとどめを刺すと彩歌の方からも爆炎が上がり戦いの終わりを知らせる。
「すいちゃんお疲れ様」
鏡華はすいせいに近づき右手を上げた。
「鏡君も」
すいせいも右手に持っていたハルバードを消し右手を上げ鏡華の右手を叩く。
「本当二人ともよくやったわ、お疲れ様」
そこに彩歌も合流し二人の頭を撫でる。
「師匠撫でるなよ子供じゃあるまいし」
「私からしたら貴方達はまだ子供よ?」
鏡華は撫でられるのが嫌で彩歌から離れ背伸びをする。
「さーて帰るかぁ。もう当分こんな仕事はこりご…り」
「鏡君!?」
帰る為に歩き始めようとした鏡華は急に意識が朦朧とし倒れだした所を彩歌に受け止められる。
「全くやっぱり無茶してたんじゃない」
「彩歌さん、鏡君は!?」
「大丈夫、薬のタイムリミットによる魔力切れね。多分十分ぐらいで起きるわ」
彩歌が症状を説明してくれた事で一安心のすいせいに彩歌は鏡華を預け急に預けられたすいせいは「えっ!?」と言いながら戸惑った。
「それじゃあ鏡華をよろしくね?私はマスターに報告してくるわ」
「ちょっとまっ!」
呼び止めようとしたすいせいの口を人差し指で塞いだ彩歌はすいせいに「いい機会なんだから二人で過ごしなさい?」とだけ言いこの場を後にする為歩き始める。
彩歌の姿が遠くなるまで眺めていたすいせいは鏡華を近くの芝生に寝かせ自分も座り彼の頭を膝に乗せた。
「本当に今日はお疲れ様」
そう言うとすいせいは鏡華の頭を撫でながら満点の星空を眺めるのだった。
鏡華の薬は一体誰が作ったのか…何とは言いませんがデビューおめでとうございます。作者のドラクエXは5.5後期で止まっております。