摩天楼が魅せる煌めき   作:筋肉同盟カフェ推し

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いつのまにか評価バーに色ついてたんですね、皆さまありがとうございます。というか誤字報告なんかも物凄く助かってますので有難い限りですね


担当/発光/マッドサイエンティスト

 今から過去最高に意味のわからないことを言うが、どうか許していただきたい。隣では目の前の惨状にマンハッタンカフェは"うわぁ……"と、言葉にして言わなくても聞こえてくるような、所謂ドン引きの表情を浮かべている。

 黒崎に至ってはもう表情が読めないほどブラックアウトしてしまっている始末だった。

 

 友人ーー白戌の全身は約1680万色に発光して、ゲーミング白戌へと進化していた。

 

「よう黒崎! どうしたんだよそんな顔して」

「その台詞、そっくりそのまま返させてもらうが!?」

 

 絶望する黒崎と現実から目を逸らすマンハッタンカフェ。

 対照的に、快活な癖のある笑い声をあげる白戌と狂気的な瞳をした彼の担当バ。

 

 マッドサイエンティストにして、可能性を追い続ける異端のウマ娘ーー[アグネスタキオン]がそこに居た。

 

「あーーーッはッはッはッ!まさか新薬を全部飲み干した副作用が全身の発光だなんて!いやあ傑作だ、モルモット君には悪いが笑わざるを得ないとも!」

 

ーーー☆ーーー

 

「……僕も担当の人間関係にまで口出しはしたくないが、友人は選べよ、マンハッタンカフェ。」

 

「…………いえ、友達では……タキオンさんにもアレで良いところもあるんですが。どうにもマッドすぎるのは私もちょっと……。」

 

 シリウスの部室、頭を抱える黒崎とマンハッタンカフェ。傍らではアグネスタキオンが我が物顔でーーシリウスの部室なのだから、実際彼女のものでもあるのだがーーフラスコを使って紅茶を淹れていた。ついで言えば白戌は元に戻った。  

 万が一、戻らなければこの駄バを張り倒していたかもしれないので、懲戒免職/暴行罪/友人が一生ゲーミング状態という三重苦を味合わずに済んだ。

 

 どういう巡り合わせか、黒崎と白戌が友人であるようにマンハッタンカフェとアグネスタキオンも友人らしい。カフェ本人は友人である事を否定していたが、距離感やお互いの遠慮のない態度は間違いなく"友人"のそれだった。

げんなりした表情のマンハッタンカフェを尻目に、片手で優雅に紅茶を飲み下してからアグネスタキオンが大袈裟に息をついた。

 

「……ふう、落ち着くね。という事で、モルモット君の担当になったアグネスタキオンだ。当然、所属はチーム・シリウス。宜しく頼むよ、カフェとそのトレーナー君。」

 

「まだ一人しかいないからチームでもないし、更に言えば俺、鼠ってか名前に"戌"ついてるけどな。」

 

「おッ、口答えとはモルモット君にしては良い度胸だ。もう一回光ってみるかい?今度はプラネタリウムチックに。」

 

「やめてください、私の目が痛いので。」

 

「えっ、そこ俺の心配じゃないの!?」

 

 収集が付かない。マンハッタンカフェまでボケに回り始めるとどうにも手に負えない事になるだろうと予感した黒崎は、手を叩いて強引に騒がしい流れを打ち切った。 

 

「……そこまでだ、そろそろ本題に入ろう。白戌、本当にアグネスタキオンとトゥインクルシリーズに進むんだな?」

 

「おうよ、まあちょっとした問題とかあるけど、それは何とかするわ。最悪、源さんとか沖野さん頼る事にするしさ。」

 

「………そうか、僕も可能な限り手を貸そう。本当なら合同で色々トレーニングしたいところだが、そうもいくまい。」

 

 その言葉には返さず、白戌は意味深ににやりと笑ってみせた。この男、これで結構血の気が多い。大方のところ、お互いの担当バを何方がどこまで輝かせられるか競争心にでも駆られているのかも知れない。

 トゥインクル・シリーズでぶつかる相手に最初から手の内を晒す阿呆も中々いないだろう、そういう意味で合同トレーニングは暫く無し、と言った。

 

 白戌のトレーニングにおける体調管理はかなり上手く、無理をさせずに故障確率を極限まで下げることでシリウスのサブトレ時代にも有名だった。事実、彼がサブトレに携わってからシリウスの故障率は大きく下振れていた。それを失うのは少しばかり痛いが、向こうもお互い様か。

 

 これもまた反対に、黒崎はメンタル的、フィジカル的なことはさておき、効率的なトレーニングを組むのが得意だった。何をどこまでにどう鍛えれば良いのか、見えているように指示できたのだ。この二人に自覚はないが、サブトレとして同時に動いていた時期のシリウスはトレセン内部でも5指に入るほどの名門チームとして有名だった。前シリウストレーナーの腕ありきとはいえ、ほんのわずかな期間でもレジェンドウマ娘/女帝エアグルーヴもシリウスに属していたほどだ。

 

 一度彼女の走りを見た事があるが、トリプルティアラを取った実力は伊達ではない。おそらく、マイル以下に限ればシンボリルドルフですら超えているだろう。

 

「……まあ、勝つのは俺のタキオンだよ。ジュニアの間は朝日杯に出すつもりだから、当たんないだろうけど。」

 

「マイルに出すのか。流石にそれは無理だな。そうなると……」

 

「当たるのは皐月賞か、弥生賞だろうな。」

 

……流石にウマ娘か。皐月賞の名前を出した途端、マンハッタンカフェとアグネスタキオンの間に一瞬、火花が散った。

 4月前半に行われる、クラシック三冠と呼ばれる絶対的な栄光ーーその最初の冠となるのが皐月賞だ。無論、クラスはG1であり、"最も速いウマ娘が勝つ"と言われている。

 アグネスタキオン以外にも、有望なウマ娘も出走するだろう。距離は2000、ジュニアの最後に挑むG1と同じ距離で、カフェにとっては短すぎる距離だ。不利と言わざるを得ないが、それでも勝たせるのがトレーナーというものだ。

 気合を入れるように頰を両手でぱしんと叩き、白戌が立ち上がった。話し込んでしまったから気づかなかったが、かなり良い時間も経ってしまっていたらしい。

 

「……っし、じゃあ行くか、トレーニング!タキオン、第3レース場に集合な。なるべく遅れるなよー。」

 

「……僕たちもいくか。マンハッタンカフェ、今日は少し別の場所でトレーニングする。1時間もあれば用意が終わるから、ゆっくりしてから駐車場で待っていろ。」

 

 二人のトレーナーがシリウスの部室を後にした。程なくしてタキオンも、ではさらばだよ、と袖に隠れた腕を振って出て行ってしまった。

広い部室にぽつんとマンハッタンカフェだけが残された。やけに響く時計の音に、コーヒーの香り。大好きな雨も降っていないが、それでも彼女には"話し相手"が其処にいる。

 

「……今日は、どんなトレーニングなのでしょうね。」

 

虚空に向かって、彼女は微笑んだ。

 

ーーー☆ーーー

 

 コンクリートを蹴る音が響く。必死の形相、美しい顔を歪めて髪を振り乱し、マンハッタンカフェが凄まじい速度でハロン棒の隣を突っ切った。

 

「……ぐ、うぅううぅっ……!」

 

「恐れてスピードの流れに無駄に逆らうな、逆に危険だ!いいか、『速い』状態の脚を身体で覚えろ。短い期間でスプリントを覚えるなら……最早、これしかあるまい。」

 

 わざわざ車を使ってでもマンハッタンカフェを連れてきたのは、広大なとある山道、その一区画。

 たづなや寮長、そして山の持ち主にトレセンから出る許可、山道を使う許可をとる時間が面倒だったが、その面倒を割くだけの価値があるトレーニングだと黒崎は思っていた。

 

 坂路と呼ばれるような急斜面。黒崎はマンハッタンカフェの身体に、『短距離でスピードに乗る状態』というものを力技で覚えさせようとしていた。

 

 "直下降"、と呼ばれる技術の応用だ。マンハッタンカフェの趣味はコーヒーと登山と聞いただけあって、速度の落ちがちな坂を駆け上がるとは意外と悪くないタイムだった。

 

 では、その反対ならどうなるのか?

彼女を連れてきた山道にハロン棒と安全マットやネットを隙間なく何重にも設置して、"坂から落ちる"ように走らせた。

 誰しも経験があるだろうが、坂を降りると重力によってスピードが上がる。少しの道なら大した事はないが、これがレースの距離ーー1ハロン:200メートルをウマ娘が走ったらどうなるかは、想像に難くないだろう。

 

 マンハッタンカフェが受けているのは慣れない超絶加速によるスピードと姿勢制御だけではない。単純に、駆け降りる事による恐怖心と全身に掛かる風が彼女をさらに苦しめていた。

 僅か四セット、スタミナに自信があるマンハッタンカフェですらたったそれだけで息が上がっている。

 

「……ッ、は、……っ、はぁ…!どうしてこんなに、もう息が……。」

 

「風だ。ウマ娘が本気で駆け降りる事を繰り返しているんだ、体も冷えるし体力も奪われる。その上、これだけ安全対策していても怖いものは怖い。精神的にもかなりキツいだろう。」

 

「……というか、今更ですけれど。山道をこんなにしてしまって良かったんでしょうか。私有地でしょう、此処。」

 

「問題ない。此処を仕切ってる奴とは知り合いで、しばらく貸してもらえる事になっているからな。」

 

 貸してもらえた、などと簡単に言うものの、此処にくる途中で車から見えた限りはかなり立派な山だ。どう言うところで黒崎と、山の持ち主に接点があるのかはまるで分からないが、大丈夫というなら大丈夫だろう。首を傾げながら、マンハッタンカフェは渡された水筒の中身を飲み干した。

 黒崎は頭が硬いだけあって、常識や礼儀にはかなり煩い。礼儀がない、と偶に言われているのは、"礼儀を払う価値がない"と思った相手にだけ。それを態度に隠さないのだから敵も多い。

 

「……地主の方、でしょうか?」

 

「そんなところだ。……いいか、マンハッタンカフェ。その脚の使い方、脚の回転のさせ方を覚えろ。この際タイムなどどうでも良い、脚さえ上手く回れば結果としてスピードというものは付いてくる。さらに言えば風を避けようとするな。疲れるだろうが、敢えて全身で受け入れろ。レースの時、それが役に立つ。」

 

「……分かりました。……【あの子】が熊などが来ないよう見張ってくれていますので、出来るだけ私も頑張ります。」

 

「…………そうだな。」

 

 若干白目を剥きながら、黒崎は五セット目の指示をマンハッタンカフェに出した。

 オカルトチックでミステリアスな、美麗なウマ娘とされているマンハッタンカフェーー彼女には、実際に特殊なものが見えている、らしい。それが幽霊なのか、はたまたウマソウルと呼ばれている謎のものなのか、若しくは……。

 彼女なりに黒崎に言うべきか悩んだが、結局【あの子】の存在を打ち明けた。信頼する相手に隠しごとをするというのは、マンハッタンカフェの感性では"忠誠''を壊すようなもの、とのこと。

 

黒崎は無言で倒れた。

 

 この男、何を隠そうホラー映画やスプラッター映画が大の苦手なのだ。まあスプラッター映画は完全に有り得ないこと、というのは少なくないからまだマシだ。それに、相手が人間だというケースも少なからず。そして黒崎は、幽霊を信じていた。見えたり払ったりはできないとはいえ、信じているが故に幽霊というものが死ぬほど怖かった。これはマンハッタンカフェには伝えていない事で、威厳的な意味で伝えたくなかった。

 

 かたや坂路を駆け降りる速度に。かたや担当バの感性による未知なるものに。互いに恐怖心を噛み殺しながら、トレーニングを終えた時には日が暮れていた。

 翌日のターフトレーニングでは、マンハッタンカフェのスプリントはわずかに上手くなっていた。多少荒療治ではあるものの、間違いなく効果は出ている。これならホープフルに出すのには意外と厳しいが間に合うだろう。そう確信して、静かに黒崎はほくそ笑んだ。

 

 そして二週間後。

マンハッタンカフェの、メイクデビューが始まる。

 




[マンハッタンカフェ]/やる気↑
【バ場適正】
芝A/ダートG/洋芝 “未測定”
【距離適性】
短距離G-/マイルG/中距離E+/長距離C
【脚質】
逃げG/先行C/差しB/追い込み/D+

【速/体/力/根/賢】
118/220/111/108/144

【スキル】
・【Darkness-Blackscraper】Lv1
・昇り龍
・深呼吸
・直下降
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