第1話 接触
中央歴1639年1月24日午前8時 クワ・トイネ公国軍 第6飛龍隊 哨戒任務中の竜騎士
「今日も異常無いな…」
快晴の青空の中、愛騎のワイバーンに乗る竜騎士マールパティマは、いつも通り北東側の空域を退屈にしながら哨戒していた。
(暇すぎる…何も起こらないのは、良いことだけども話し相手が相棒しかいなしな~)
「よし、そろそろ変針地点だ。帰るぞ相棒!」
そうして、祖国がある大陸へ帰ろうと進路を変えようとしたその時
「ん…?!?なんだ、あれ」
マールパティマは、帰還する祖国であるクワ・トイネ公国から、反対側の島すらもほとんど無い海の空から光る何かが見えた。
それは、マールパティマから見たら謎のものだった。この星での飛行手段は、ほとんどがワイバーンなのに、近づいてくるものは、
「は、羽ばたいてない!?!?」
驚いた表情で、呟いた。
そうした間にも、それは、とてつもない速さで横を通った。それは、相棒のワイバーンよりも大きい翼を持っていた。
口を開けながら唖然しているマールパティマは、我に返って慌てて“それ”を追い始める。
「くそっ!追いつけないっ!」
ワイバーンの最高速度は235キロ出るのに“それ”に追いつけないということは、相棒以上の速さを出すということを物語っていた。
(そうだ!)
彼は急いで通信用魔法具を使い叫んだ。
「司令部!我、未確認騎を発見!追跡を行おうとするも、速度が段違い過ぎて追いつけない!未確認騎は、本土『マイハーク』方向に進行中!繰り返すマイハーク方向に進行中!至急、応援を求む!」
クワ・トイネ公国 第6飛竜隊基地
基地通信員のカルミアは、マールパティマからの報告に耳を疑った。
「国籍を送れ、ロウリアのワイバーンか古竜等ではないのか?」
『国籍不明!ロウリアのワイバーンですらない、古竜等の生物かどうかも不明です!大至急応援求む!!』
カルミアは、近くにいた上司に報告した。
「国籍不明の未確認騎だと?!」
「はい、速度は我々のワイバーンを遥に凌駕し、羽ばたいてすらいないそうです。」
「未確認騎は、あの速さだと進行方向にあるマイハークにすぐに到達します」
「すぐに第6飛竜隊を全騎あげろ!偵察の可能性もあるが、もし攻撃でも受けたら、軍の威信にかかわるぞ!」
数分後
基地では、未確認騎迎撃のため第6飛竜隊の全騎12騎が青空に飛び立って行った。
数分後
第6飛竜隊は、未確認騎を発見したが全員は、驚いた顔をした
「なんだ!?あれ!」
「なんて面妖な」
「聞いた通り大きいな…」
各々が感想を述べてた後、隊長のイーネが叫ぶ
「全騎、導力火炎弾発射準備!」
「発し…うわぁ!」
あまりの速さで全員が吹き飛ばされる。なんとか体勢を立て直すも未確認騎は、もう迎撃不可能の距離にいた。
「まずいぞ!」
日本連邦空軍所属 23式偵察機 紫雲
「さっきから竜に会いますね、自分の目を疑いますよ。」
「俺もだよ。そして見たところ技術レベルは、中世ヨーロッパ並みだな。1度旅行してみたいところですw」
「にしてもなんで竜が昇ってくるんだ?」
「あっ!機長!さっきから会う竜に紋章みたいなのが描かれています。多分我々が領空侵犯したから昇ってきたんじゃないでしょうか?」
「それまずいな…本国に引き返すぞ!」
クワ・トイネ公国海軍第二艦隊所属軍船ピーマ
経済都市マイハークの港、【マイハーク港】から76km離れた海域にピーマはいた。
ピーマは、帆をいっぱいに張って風を受け、太鼓の音に合わせてオールを漕いで、未確認船に接近していった。
船長のミドリは、単眼望遠鏡で未確認船を見ながら、乗組員に臨戦態勢の指示を出した。
「船長、未確認船は我々に気づいたのか、速度をかなり落とした様ですね」
「あぁ、そうだな。臨検は私が先陣を切るので、副船長、もしものことがあったら頼むぞ。」
「了解」
数分後
「副船長、私は幻覚を見てるのだろうか…あれは、船なのか?どう見ても1つの島にしか見えないんだが。」
「私もです。あの船は、1つの島にしか見えません…」
「それになんだ?あの旗は?白地に赤い丸が描かれたのと似たように丸から赤い線が延びている旗なんて、見たこともないんだが、」
「あの大きさだと、パールパディアの100門級戦列艦よりも大きいですよ…」
(この高さにこの長さだと、乗組員は2万人位はいるんじゃないか…)
未確認船から人が出てきて手を振っている。
「どうやら敵対の意思は無さそうだ」
「そのようですね」
「諸君これから同船に臨検を行う、新興国の可能性が高いため、失礼の無いようにしろ!」
「了解!」
日本連邦海軍第三艦隊所属*1 鳳翔型空母『千歳』
千歳は、レーダーで捕捉した小さな船を異世界の船舶だと断定し接近していた。
そして数分後、千歳の艦長宇垣含め乗組員全員は驚いた。その船は、歴史の教科書に出るような形をしていたのだ。
「初めての連邦構成国以外の国家との接触かもしれない。総員臨検に備えろ」
「了解しました。しかし艦長、ここは異世界ですから言葉の壁が問題になってきますね…」
「そうだな…そこが私の1番の気がかりだよ…」
数分後、千歳の甲板に降り立ったミドリ率いる臨検隊は唖然だった。
(なんという広い甲板なんだ…これじゃあ騎馬戦ができてしまうではないか…)
そう思っている間に、これから自分達(ミドリ)が話をするであろう黒色のしっかりした服を着た人と白色の軍服のようなものを着た人達が近づいてくる。
「私はクワ・トイネ公国第二艦隊所属、軍船ピーマ船長ミドリです。ここは我がクワ・トイネ公国の近海であり、このまま進むと我が国の領海に入ります。貴船の国籍と航行目的を教えていただきたい。」
「なんと!日本語が通じるんですね!」
ミドリ達は首をかしげる。
「失礼。私は日本連邦外務省の田中と申します。突然ですが、我が国日本連邦は、貴国のクワ・トイネ公国と交流を持ち、状況によっては国交締結を考えています。」
「なるほど、貴君は一国の使者ということですね。」
「その通りです。後ろの皆さんも緊張なされていますが、我々の目的は、国交締結のため、攻撃などの敵対意思はありませんのでご安心ください。」
(よかった…こんな巨大な船で攻撃されたらと思うと…)
「了解しました。その件は本国に報告いたします。それと1つ質問があるのですが、今日の朝方に公国の経済都市マイハークに飛来した騎は、貴国の騎士でしょうか?」
田中は、後ろにいた千歳の乗組員にこそこそと話す 「すいません。皇国の偵察機だと思うんですけど名前なんでしたっけ?」
「23式偵察機の紫雲ですよ。公国側の空域を偵察したの紫雲だけだったんで」
「なるほどありがとうございます!」
「そうですね、我が国の偵察機で、名前は紫雲です。貴国の領空を侵犯したことを改めて公式に謝罪をお伝えしたく存じます。」
(シウン?そんな名前の竜種聞いたことが無いな…)
「我が国日本連邦は、突然この世界にやってきました。この世界のことを多く知るために、多方向に偵察機や哨戒機を飛ばしていたので、そのうちの1機が貴国の領空を侵犯してしまったようです。大変ご迷惑をおかけしました…」
(国がまるごと世界を移動するなんて、そんな馬鹿げたことが有り得るのか?だが田中殿やその周りの人達も態度から見て、冗談を言っているようには見えないな…)
「…わかりました。その事も含めて本国に伝えますのでしばらくお待ちください。」
「何日くらい待てばよろしいでしょうか?」
「いえ、魔信ですぐに伝え、判断を本国に仰ぎますので、我々では判断しかねますゆえ」
「ほう…通信手段があるのですね」
クワ・トイネ公国 政治部会
政治部会では、朝方に飛来した飛行物体の話で持ちきりだった。
「ムーの開発した飛行機械でも最高速度は350キロだが、あの飛行物体は900キロを越えているというのか…」
…………………………………………………………
ガチャ!
外交部の若手幹部が息を切らして突然入ってきた
「何事だ!」
「報告です!」
若手幹部の報告を要約すると
・全長300m越えの超大型船と海軍が接触し臨検を行った。
・国籍は日本連邦。
・目的は国交締結
・大型船には外交官が乗っている
・国ごと突然世界にやってきた
・世界を知るため多方向に哨戒騎を飛ばし、そのうちの1騎が公国領空を侵犯してしまったので公式に謝罪したく会談をもうけたい。
「国ごと転移などそんなこと信じろというのか!!」
外務卿が怒鳴る
「落ち着いてください外務卿、ここは1度話の場を設けてみましょう。」
「わかりました。」
次回第2話 会談
感想をお願いします!
会話文にいちいち人物名書く書かないか
-
「名前無し」
-
○○○○「名前有り」