「星さんって何者なんですか?」
「何者なんでしょうね……」
環さんが来たついでに近況を話したら、先の言葉を言われた。僕も自分のことがわからなくなってきたので、誰か教えてほしい。
「一般人でファンクラブある人って初めて聞いたんですけど」
「僕も聞いたことないですね……。読者モデルやってる友達にもいませんし」
「読者モデルやってる友達がいるんですね」
「そうですね。秋咲椛って子なんですけど。調べたら出てくるのでは?」
環さんがスマホを取り出したので、僕は椛の名前の漢字を教えた。
「この派手めな子ですか?」
「そうですね。僕と同じ学部の子なんですけど」
「……少し意外ですね。星さんはこういう子苦手なのかと」
「僕は中身を重視するので。椛はギャルに見えて真面目な良い子ですよ」
そういえば前に、椛に「ヒカルっちは見た目で判断してくれないからマジ助かるよ〜」なんて言われたっけ。……椛も椛で苦労してきたんだろうな。
「それにしても、星さんってたくさんエピソード持ってますね」
「まぁ色んな経験してきたって自負はありますよ」
「俺の周りでもこんなにキャラの濃い人見たことありませんよ」
「それ褒めてます?」
「褒めてます褒めてます」
僕はじとっと環さんを睨みつけた。それだけで環さんはビクッと体を揺らした。……この人ヘタレすぎないだろうか。
「そろそろ僕の話に移っても良いですかね?」
「あ、はい。どうぞ。研究テーマ、まだ決まりそうにないですか?」
「そうですね。文化を調べるのも語学を調べるのも面白そうだなって」
「どちらも面白そうだから決められないって良いですね。星さんは良いところを見てるんだ」
「……そうですか?」
「ここが面倒くさそうだから決められないって考えよりは良いと思いますよ」
……そんな風に褒められたのは初めてだ。少し照れくさくなって、僕はそれを隠すようにお茶に手を付けた。
「さっき出てきた星さんの友達はどうするって言ってたんですか?」
「椛ですか?最近連絡とってないので、ちょっとわからないですね」
聞いてみるか、とスマホを取り出しメッセージを送る。するとすぐ返信が返ってきた。
『アタシもまだ迷い中なんだよね〜!良かったらまた話さない?アタシ、ブロッサムって喫茶店にいるから!』
「……うーん」
「どうしました?」
「喫茶店で話さないかと言われました」
「あ、それなら一緒に行っても良いですか?読者モデルの人の話聞いてみたいです」
「ちょっと聞いてみますね」
僕は環さんを連れて行って良いか椛に尋ねた。
『オッケーだよ!てか漫画家さんとお話できるとかチョー貴重じゃん!』
「良いそうです。じゃあ一緒に行きますか」
「そうですね。……あれ、そういえば」
「?どうしました?」
「いえ、何でも無いです」
環さんは何か言いたそうだったけど、僕が聞いても何も答えなかったので僕は深く聞かないことにした。
「……ブロッサムって喫茶店ってたしか、メイド喫茶だったような……?」