「ここだよヒカルっち!さ、入って入って〜」
椛が案内したのは、いわゆる古民家カフェといったものだった。古めかしい雰囲気の漂う建物だが、それ故に落ち着きが感じられる。少なくとも、さっき行ったメイド喫茶に比べたらマシだと思う。騒がしくないし。
「やっほーおばあちゃん!」
「あら、椛ちゃん。今日も元気ねぇ」
「まぁね!今日は友達も一緒だし!」
「そうなの?もしかして、後ろの人達かしら」
「はじめまして、花家星と言います。椛と同じ学部に通ってます」
「俺は環です。俺は椛さんとさっき会ったばかりなので、友達と言えるか微妙ですけど」
「やだなぁマッキー!ヒカルっちの友達ならアタシの友達でもあるんだから、気にしない気にしない☆」
「ま、マッキーって俺ですか?」
環さんと椛が話しているのを横目に、僕は環さんとの関係について考えていた。友達……なのかな。でも椛との関係とは違う気がする。仕事仲間?の方がしっくり来るな。うん、それで行こう。
「……っち、ヒカルっち?」
「え?な、なに?」
「なんかボーッとしてたから。考え事?」
「そんなとこかな」
「具合悪かったら無理しないでくださいね」
「大丈夫ですから」
「ふふ、仲が良いのねぇ。妖怪と人が仲良くしてるのは良いことだわ」
「「え?」」
僕は環さんと顔を見合わせた。椛のおばあちゃんは変わらずほけほけと笑っている。一方で椛は首を傾げていた。
「ヨーカイ?って、あの妖怪?」
「あ、えっと、椛ーー」
「やっば!妖怪ってほんとにいたんだ!?テンション上がってきたんだけど、記念撮影しても良い!?」
「え、あの、その、も、椛さん?……怖くはないんですか?」
「え、怖い?なんで?むしろ出会えたことに感謝的な?だって色んな人と会えた方が楽しいじゃん?」
……そうだった、椛はこういう子だった。僕はなんだか嬉しくなって、思わず頬が緩んでいた。
「!」
「椛はやっぱり良いやつだね」
「えへ、そうでしょー?」
「そうね、椛ちゃんは良い子よ。だからこれからも仲良くしてあげてね」
「そういえば、なんで環さんが妖怪だってわかったんですか?」
「ここね、妖怪もたまに来るのよ。昔からある家だものね。それで自然と妖怪と人が見分けられるようになったの」
「へぇー……」
僕は隣に立つ環さんに目をやった。パッと見は人と変わらないように見えるけどな。でもわかる人からすればわかるんだろう。
じーっと見つめていたら、環さんはなぜかそわそわし始めた。落ち着きがないというか、目をきょろきょろ泳がせているというか。
「あ、あの、星さん。そんなに見られたら、その……困ります……」
「え?あ、すみません不躾に見てしまって」
「いえ……」
環さんは頬をほんのりと赤くしている。珍しいな、環さんがこんな顔するの。あたふたしてる顔ならよく見るけど。
「ねぇヒカルっち!アタシとお話しなくて良いの?元はアタシと話すために来たんでしょ?」
「おっとそうだった。じゃあ僕達話してますんで、環さんも好きにしててください」
「は、はい……」
「じゃあ私とお話してましょ?妖怪用のメニュー持ってくるわ」
僕と椛が話してる間、環さんは椛のおばあちゃんと話していることになったようだ。手持ち無沙汰にならなくて良かったな、と思いつつ僕達は大学の研究について話し合った。