麗しき挑戦者と聡明な道標   作:ふかむらさき

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初投稿です。

筆者ウマ娘から改めて競馬の情報を漁り始めたタイプです。
その結果、中々勝てない、同期の強者の影を必死に追った馬たちが好きになりました。
強者とそのライバルというか追い縋るものの関係がすごく好きです。
最近だとクロノジェネシス等の猛者に一矢報いたいカレンブーケドールや暴君オルフェーヴルに追い縋ったウインバリアシオン
ステイゴールドやナイスネイチャ、メイショウドトウ、そして同期の桜と葦毛の怪物の陰に隠れてしまったメジロライアン。


そんなこんなで小説漁るとライアンメインが全然ない!

なんでや!→自分で書いたる!!
となった訳です。

長文駄文で史実もそこまで詳しくありません。
お目汚しになるかと思いますが読んで頂けたら幸いです。





1話

 

 

時々夢に見る光景がある。

 

緑の芝生を駆ける私、いや多分私なのだろう。

駆ける自分の足はヒトの物ではない、ちらりと見える自分の姿はやはりヒトの姿ではない。

 

それでも懐かしく感じ、夢の中のこの生き物は「私」であると理解出来た。

 

そして目の前には同じ姿の生き物が2頭、どちらも葦毛の様な色合いで「私」の前を駆けている。

必死に追い縋ってもその差は縮まらず、離されていく。

 

あの背中に並んだ時、何かが変わるのだろうか?

あの背中を追い抜いた時、何が見えるのだろうか?

 

そんな事を思いながら必死に駆けていると目が覚めるのであった。

 

 

 

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『ウマ娘』別世界の名前を受け継ぎこの世に生まれるウマ耳と尻尾を持った女の子の総称だ。

彼女たちは見た目こそ人間、所謂「ヒト」と似ているが同時に大きく違う部分もある。

 

それは『力・筋力』である。

 

ヒトの成人男性がベンチプレスを100㎏上げるとまぁ、立派だね。賞賛されるのに対して

彼女たちは軽々と300㎏は持ち上げる。

ヒトの成人男性がレッグプレスが平均200㎏に対して、彼女たちは1t近くを上げ下げしている。

最早理外の存在なのだ。

他にも聴力嗅覚等様々な違いはあるが割愛する。

 

彼女達はその理外の力を特に『走る』事に使う傾向があり、そんな彼女達は誰よりも速く、一番を目指す場所がある。

 

『トゥインクルシリーズ』

 

URAと呼ばれるウマ娘競バ協会が開催しているトゥインクルシリーズは彼女達の織りなす熱く、感動的なレースによって世界的人気を持つ一大スポーツエンターテイメントとなっている。

そのトゥインクルシリーズを駆ける彼女達が勉学、トレーニングに励む全寮制の教育施設が『日本トレーニングセンター学園』通称トレセン学園である。

 

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「アイネスー?私、先に出ちゃうよー!」

トレセン学園に通うウマ娘たちが共同生活を行っている美浦寮の廊下にハツラツとした声が響く。

女の子にしては短くスパイキーなツンツンヘアーな鹿毛の髪、その中心には白い流星がまっすぐに流れている。

右耳には2連のピアスを付け短めの眉毛に吊り目、瞳は薄紫。

トレセン学園の制服見える手足はスッキリとしながらも確かに見える鍛え抜かれた筋肉。

 

彼女の名前は『メジロライアン』。

『メジロ』、代々続くウマ娘の名門でありトゥインクルシリーズにも数多くの名バ達を輩出している。

一見ヤンチャそうな見た目だが彼女は所謂ご令嬢である。

 

「ライアンちゃん~!まってほしいなの~!」

メジロライアンが声をかけていた部屋から少し気の抜けた返事と共にバタバタと一人が出てきた。

黒鹿毛の髪の毛を左側のみポニーテールのように纏め上げ、白地にピンクのラインが入った

サンバイザーを付けている。翡翠色の瞳にソバカスがチャームポイントである。

 

彼女の名前は『アイネスフウジン』

実家が裕福ではない彼女は全寮制にしては珍しく日夜新聞配達等バイトを特別に許可されている稀有なウマ娘。

一部屋に二人というスタイルの寮生活でメジロライアンの同室である。

 

 

「授業始まっちゃうよ!行こう!」

「OKなの~!じゃぁ教室まで競争なの~!」

 

寮の廊下から階段を降り、玄関を駆け抜けていく。

『廊下は静かに走る!!』という意味が分からないポスターが風に揺れていた。

 

 

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トレセン学園内には様々な施設が揃っている。

筋トレ用のトレーニングルーム、ライブ練習用のダンススタジオ、プール、スポーツ栄養学等に精通した栄養士が常駐しているカフェテリア。

そして勿論だがレース場も完備している。

実際のトゥインクルシリーズが行われる府中の東京レース場と同じコースでダート、芝が揃い更には坂路トレーニング用の坂まである。

だが、設備が揃っているだけでは彼女達は一流のアスリート、トゥインクルシリーズを駆け抜ける事はできない。

 

『トレーナー』この職種のヒトの力が必要不可欠となっている。

トレセン学園に在籍している彼女達ウマ娘は2000名を超える。そしてトゥインクルシリーズを走る彼女達が目指す重賞と呼ばれる

レースは凡そ140試合程しかない。更に誰もが挑戦できるというというわけでもなく、更に細かく条件が決まっている。

その最初の難関は『学内選抜レース』と呼ばれる凡そ四半期に2回、年間8回行われる学内レースである。彼女達はここで勝利、または好走することによってトレーナー達からのスカウトを受けて契約をする。それがトゥインクルシリーズへ挑戦する資格でもある。

 

簡単にいえば素人走りでスポーツエンターテイメントの檜舞台は踏ませてもらえないという訳である。

 

 

「あなたも今年から正式に自分の担当を受け持つのよね?」

学内のレース場で自身の受け持つチーム『リギル』の朝練を眺めながら東条ハナは隣でタブレットを弄っている男性に話しかける。

 

『東条ハナ』

トレセン学園には2種類のトレーナーがいる、1つは担当ウマ娘と専属契約を結び、マンツーマンで指導していくトレーナー。

これは良く言えば1人の担当に集中して充実した指導を行う、悪く言うならば多人数を見る実力が無いとも取れる。

そしてもう1つはチームを率いて多人数を指導するチームトレーナーである。

東条ハナという女性は後者の部類である。髪をきっちりと纏め、切れ長の目に赤いフレームの眼鏡、パンツスーツに高めのヒールと如何にもキャリアウーマン、出来るOLの雰囲気を出している彼女は学園内最強と呼ばれる『リギル』のチーフトレーナーである。

 

「本当ならとっくに専属かチームかを選べる成績を出しているのに、ずっとフラフラしてるから上からせっつかれるのよ?」

 

「ふらついていません。それに実績もありません、彼女は東条先輩が育てたんです。私はリギルからお零れを頂いただけですよ。」

 

「そうやって意固地になって!シリウスに失礼よ?」

 

自分の愛弟子とも言えるこの男の相変わらず謙遜、いや捻くれっぷりには困る。

私が率いているリギルのサブトレーナーとして着任、その後サブトレーナーを卒業し、その後の担当バを決めかねている時にリギルチームメンバーの『シリウスシンボリ』が名乗りを上げた。

 

「アイツには世話になったんだよ!だからおハナさん!!アイツの初めてのウマ娘にさせてほしい!!」

圧倒的なパワーとスタミナを武器にとしながらも気性難で問題児なシリウスシンボリと私が育てたせいで理論とデータに基づいた指導を行う彼は、サブトレーナーの時から散々ぶつかりあっており、お世辞にも相性が良いとは言えなかった。

だからこそ許可を出した。

 

愛弟子には私と違い柔軟性を持って欲しいと思っている。気に食わないがの元に一度研修に出すというのも考えた、でも自分とソリの合わない担当バと実際にぶつかって学んでほしいとそう考えていた。

 

その結果、彼は新人としてデビューした一年目に『ダービートレーナー』になってしまった。

 

「私はシリウスシンボリさんをダービーの後、一度も勝たせてあげれませんでした。詰まる所、シリウスシンボリさんの勝利は彼女自身が掴んだ勝利。更に言えばその下地を作った貴方の勝利ですよ。先輩」

 

手にしたタブレットを鞄にしまい、こちらに向き直しながら愛弟子は自嘲気味笑っていた。

所謂ツーブロックで残したトップの髪は七三に流している。私に少し似た切れ長の目にフレームが太い黒縁眼鏡をかけている。

スリーピースのスーツスタイルというスタイルまで私そっくりな愛弟子の姿に少し笑いそうになる。

 

「ハイハイ、あなたには何を言っても無駄ね。でどうするの?今日も手伝いをしてくれるの?」

こめかみに手を当てやれやれといったポーズを見せて彼に問い掛ける。この様子では担当を持つ気を無さそうに思えたからだ。

 

「いや、今日は失礼致します。この後は模擬レースを見に行くつもりなのでその準備するつもりなので。」

眼鏡の位置を直し、少し困った様な笑みを浮かべながら彼は伝えてきた。

 

「あら?さっきの様子じゃ担当を取らないつもりに聞こえたけど?」

彼の意外な言葉に少々驚きながら聞き返す。

 

「本当はそのつもりでしたが、少しばかり興味がある子がいまして、可能ならば声掛けしようかと思いまして」

そう言って彼は会釈をすると踵を返し離れていった。

 

愛弟子の始動に少しばかり期待しながら再びターフに視線を移した。

 

 

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「ライアンちゃんは今日の模擬レース走るの?」

授業が終わり、校内のカフェテリアで昼食を食べながらアイネスが聞いてきた。

 

「そのつもりだよ!選抜レースも近いから、アイネスは?」

私は向かいの席に座り、鳥のささみのソテーに豆腐と煮豆の小鉢(小鉢と言いながらも量は御茶碗ほどではあるが)、ご飯と味噌汁という定食に箸をつけながら答える。

 

模擬レースとは本番前に調整を兼ねて有志が集まって行うレースであり、選抜レースが近くなると開催される。

トレーナーの付いていない私達にとっては選抜レース前にトレーナーへのアピール出来る機会であると共に自分がどの位置にいるのかを把握できる場でもある。

 

「あたしも出るつもりなの〜!ライアンちゃんと一緒に走る!」

 

「ならライバルだね!負けないよ!」

ガッツポーズをしながら笑顔で答える。

アイネスが出る、それだけで私の内心に焦りと不安が生まれる。

勝てるのかな?アイネスに。彼女は私なんかよりずっと努力をしている。決して裕福ではない家庭の為に少しでも多くのレースに勝って賞金を仕送りすると良く彼女は言っていた。

私にはそんな目標は、無い。ここに来れば何かが変わるかも、私自身が変われるかもなんて甘い考えでここにきた。

レースに勝ちたいという思いは勿論ある、それでも私なんかより勝利に対して思いが強いアイネスに私が勝つのは良い事なのだろうか?

 

表情には出さず穏やかにアイネスと会話をしつつ、心の中は粘度の高いタールの様な感情がゆっくりと堆積していく。

ふとカフェテリアの入口に目線を移すと、良く見知った姿を見つけ更に心の中を揺さぶられた。

 

透き通るような白い肌に薄紫のロングヘア―、意思の強そうな少し吊り上がった目に私と同じ薄紫の瞳。

身長こそ高くはないが持ち前のお嬢様オーラで周囲から高嶺の花の様に見られてる私の親戚、そして私がここにいる理由の一人でもある。

 

『メジロマックイーン』

同じメジロ家にしておばあ様から続くメジロの直系。叔母様が静養の為にお屋敷から離れている時に生まれたのもあり幼少期は一緒に暮らしていなかったが小学生くらいからずっと一緒に遊んだ幼馴染でもある。

 

「あら?ライアンじゃありませんの。アイネスフウジンさんも御機嫌よう。」

 

「やぁマックイーン、お昼?一緒に食べる?」

 

「あ!マックイーンなの~!御機嫌ようなの~」

 

目が合いこちらに気づき近寄ってくる。穏やかに手を振りながらマックイーンが話しかけてきた。

 

「お昼は減量中なので軽くで済ませてしまいましたの。それよりライアン、本日の模擬レースは出走するのかしら?」

模擬レースについて聞かれドクンと心臓が跳ねた。

 

「うん・・・走るつもりだよ!マックイーンは?」

平常を装い聞き返す。最悪な回答が返ってこない事を期待しながら。

 

「そうでしたか。わたくしも出走しますわ!負けませんわよ?」

穏やかに微笑みながらもこちらを射抜く瞳で見据えてくる。

 

 

その答えを聞いた瞬間、私の頭は真っ白になった。

 

私はマックイーンには勝てない。

 

 

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撮影用のビデオカメラとデータ入力用のタブレットだけをもって改めて学内レース場に足を運ぶ。

レース場には観客席が併設されており最上段の一番端に腰掛けカメラのセッティングを始める。

 

ターフには徐々に本日の模擬レースに出る予定であろうウマ娘達が集まり各々アップを始めていた。

どうやら目当ての子も来ているようだ。

 

去年の目まぐるしい一連の動きの中で自分が集めたデータ、知識、理論もだいぶ形になっている。

ならば後はトライ&エラーの繰り返し、最終目標に進める為のPDCAを回すだけである。

 

培った物を返したい相手はまだ日本に帰ってきてはいない。

『シリウスシンボリ』、彼女のおかげで自分は成長した、その成果は彼女の後輩になるであろう子に必ず引き継ぐ。

 

「『ダービートレーナー』さん?隣いいかい?」

自分の思考に潜っていると、声を掛けられる。

 

「嫌な渾名が付きましたね。『シリウスのサブトレーナー』さん?」

目線を移すと無地のTシャツにチノパン、どっからどう見ても優男という言葉当てはまる男がコーラを2本持ちながら笑っていた。

 

『シリウス』

学園最強が『チームリギル』ならば学園最高は『チームシリウス』か『チームアンタレス』だろう。

東条ハナ率いるリギルは『怪物:マルゼンスキー』『皇帝:シンボリルドルフ』『神バの継承者:ミホシンザン』『サクラの二冠バ:サクラスターオー』といったクラシック路線の覇者達を主として現代の最強チームである。

 

対するシリウスはトレーナーとしては最古参になる『剛腕』六平トレーナーをチーフトレーナーと由緒正しきチーム。

所属バの歴代所属バもすさまじく『関西の快速バ:コダマ』『神バ:シンザン』『鹿毛のアイドル:ハイセイコー』『幻のウマ娘:トキノミノル』といった伝説にも等しい名バを輩出しており現在は『葦毛の怪物:オグリキャップ』『100年に1人の美女:ゴールドシチ―』を有している。

 

目の前の優男は自分と同期でひたすら六平トレーナーの元で研鑽を積んでる『二代目剛腕』などと呼ばれている。

 

「そんな目で見ないくれよ、はい差し入れ。で君が模擬レースを1人で見るなんて珍しいね?」

コーラを横に置きながらすぐ隣に腰掛けてくる。人懐っこい笑顔に少し辟易する。

 

「今年の担当バを探していますよ。もう目はつけていますが、貴方は?六平さんとは一緒ではないのですか?」

 

「いやぁ、師匠にさ「おめぇもそろそろ独り立ちだろが!!!自分で担当バの1人くらい見つけやがれぇ!!」ってさ。」

 

「あー言いそうですね、あの方は・・・」

プルタブを引きコーラで喉を潤しながら苦笑いをしてしまう。

 

「で、だれがお目当てなの?俺は秘密だけど。」

 

「なら私も秘密ですけど、ヒントはこの中で"一番自分が速く走れると気づいていない子"ですね。」

隣で彼は頭に?を浮かべていたが自分は気にせずターフに視線を移す。

素晴らしいバ体を持ち他と比べても頭一つ抜けた風格を出しながらも耳は横に折れ、短めの眉毛と吊り目が下がってしまっている彼女を見つけフッと軽く笑った。

 

 

 






お読み頂き有難うございました。

メンタルゴミなので感想もらえると泣きます。

もっと読みやすくできる様に努力致します。
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